ファインピッチ接続技術の開発

技術紹介 4 ファインピッチ接続技術の開発
技術紹介
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ファインピッチ接続技術の開発
Development of Fine-Pitch Connection Technology
西村 貴行
Takayuki Nishimura
中央研究所 研究開発部 木村 龍男
Tatsuo Kimura
中央研究所 研究開発部
南 和幸
Kazuyuki Minami
中央研究所 研究開発部 工学博士
田中 琢
Taku Tanaka
中央研究所 研究開発部 主任
安藤 典浩
Norihiro Ando
中央研究所 研究開発部 マネージャー
佐々木 琢男
Takuo Sasaki
中央研究所 研究開発部 マネージャー
キーワード: ピッチ、平坦性、アラインメント、高周波測定、弾性
Keywords : pitch, coplanarity, alignment, high frequency measurement, elasticity
要 旨
昨今、スーパーコンピュータ、ハイエンドサーバ等
での機器内の部品接続は、高密度化の流れから、低背・
狭ピッチ化が進んでいます。また同時に、近年ますま
す増加する情報容量に伴い、要求されるデータ伝送
レートは急激に増加してきています。したがって、高
密度化・高速化双方に対応する接続技術やコネクタが
強く要求されています。
本開発では、グリッドアレイでピッチ 0.25mm、
厚さ 0.5mm、着脱可能なシート状接続体(シートコ
ンタクト)
を提案し、
その高速伝送特性
(シミュレーショ
ン)と耐環境性について評価した結果、その可能性が
実証できたので本稿にて紹介します。
Copyright c 2008, Japan Aviation Electronics Industry, Ltd.
SUMMARY
Low profile and narrow pitch grid array connection
has been demanded in equipment such as
high-performance computers and high-end servers,
in response to a trend of high density packaging.
M o r e o v e r, e x p l o s i v e l y i n c r e a s i n g v o l u m e o f
information has compelled higher data transmission
rate and higher capacity data processing. Therefore
, connection technologies to satisfy the requirements
of both high-density packaging and high-speed
transmission are strongly required.
We have proposed a detachable grid array sheet
contact with 0.25mm pitch and 0.5mm thickness.
A 25-Gbps high-speed transmission capability was
predicted from simulation. Furthermore, preliminary
environmental durability test has encouraged us to
realize the sheet connector for practical use.
航空電子技報 No.31(2008.3)
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技術紹介 4 ファインピッチ接続技術の開発
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1 まえがき
昨今、スーパーコンピュータ、ハイエンドサーバ等での機器内の部品接続では、低背・
狭ピッチ化が進んでいます。また同時に、近年ますます増加する情報容量に伴い、要求さ
れるデータ伝送レートは急激に増加しています。この市場背景を受けて、接続技術やコネ
クタに低背・狭ピッチ、高速伝送特性が要求されてきています。
従来の接続技術との比較において、ピッチのほかに重要なパラメータとなるのが、基板
の反り等をどこまで許容できるかを表す“高さばらつき吸収能力”です。たとえば、はん
だは狭ピッチに対しては短絡の問題がありますが、高さのばらつきは吸収できます。それ
に対して、狭ピッチ接続を得意とする異方導電材料(ACF など)は、基板とチップに平
坦度(コプラナリティ)が要求されます。
また近年、マルチチップ化の普及によりチップのリペア性の要求も高まっていますが、は
んだ・異方導電材料では残渣の問題があり、どちらも基板再利用が難しいとされています。
このように、各接続技術にはそれぞれ欠点があり、現在これら欠点を改善する新たな接
続技術が要求されています。そこで、航空電子では狭ピッチ対応が可能で、高さばらつき
吸収能力も高く、着脱可能という特長をもつ接続技術を開発してきました。以下に、その
開発状況、評価結果をまとめて述べます。
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2 設計のコンセプト
2.1 基本構造
狭ピッチ対応可能、高さばらつき吸収能力も高く、着脱可能、という要求を満足し得る
構造として、弾性絶縁体中に選択的に導電端子を形成したシート状グリッド接続(シート
コンタクト)を提案します(図 1)。絶縁体は弾性ゴムで形成し、導電端子は弾性を有す
る導電材料で形成します。隣接端子同士が相互に作用し合うと、特性が端子間でばらつく
ため、絶縁体をエンボス形状とすることで端子独立性を高めます。また、端子のピッチず
れやシート全体の歪みを防ぐ目的で、周囲に低伸展性のフレームをインサート成形する構
造としました。
フ レ ーム
弾性 ゴ ム
端子
(a)全体像
( b) 端 子 部 拡 大 像
図 1 シートコンタクト基本構造
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2.2 アラインメント
接続ピッチが狭ピッチ化するにつれて、シートコンタクト端子と上下パッドのアライン
メント誤差の影響が接続抵抗の変化として顕著に現れてきます。アラインメント精度が各
軸方向に± 40 μ m 以内であれば、接続抵抗の変化が現れないことを確認していて、今回、
この値を目標仕様とし、図 2 に示すような基本構造を試作しました。
位置決めピンを介して、シートコンタクトをベースに取り付けると、ベースに対して規
定された位置にシートコンタクトが取り付きます。同様に、②の位置決め機構部品も位置
決めピンを介して、ベースに対して規定された位置に取り付きます。今回、基板はシート
コンタクトに対してアクティブにアラインメント固定しました。チップは位置決め機構部
品に対して外形基準でパッシブに挿入されます。
①はシートコンタクト端子の変位量を一定にする加圧機構部品です。加圧を解除すると、
基板上の残渣等もなく、チップのリペアが容易にできます。
図 2 アラインメント基本構造
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3 基本特性
3.1 シートコンタクトの荷重─ 抵抗値 ─ 変位量特性
まず、基本構造の特性を確認する目的で、10 ×10=100 芯グリッドアレイ、ピッチ=
0.3mm、総厚= 0.1mm のシートコンタクトを作製しました。実測した基本特性を図 3
に示します。(a) は荷重─抵抗値特性を、(b) は荷重─変位量特性をそれぞれ示しています。
また、図 3(a) には、グリッドアレイの中央部∼角部に位置するすべての端子の特性を色
分けして表記しています。エンボス形状の効果で端子独立性が成立し、すべての端子がば
らつくことなく、ほぼ同じ特性を示しています。また図 3(a) において、抵抗が安定する
荷重≧ 0.06N/ 芯の領域を使用する場合、図 3(b) より、変位量⊿= 0.01mm となり、
総厚の 10% に相当する高さばらつき吸収能力が確認できました。
なお、細部寸法の設計にあたり、Neo-Hookean モデルを適用した有限要素法による
構造解析を同時に行いました。解析結果を図 3(b) 中に併記していますが、解析と実測が
一致していることから、本解析で用いた材料定数および境界条件が、以後の設計に適用
可能であることが確認できました。
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(a) Ⲵ㔜㸫᢬ᢠ್≉ᛶ
(b) Ⲵ㔜㸫ኚ఩㔞≉ᛶ
図 3 基本特性
次に、暫定的な目標仕様として接続ピッチを 0.25mm、高さばらつきを 0.05mm
(□ 10mm × 10mm の接続領域内)に設定しました。前述の有限要素法による構造解析
を用いて設計すると、総厚の最適値は 0.5mm となります。この設計に基づいてシート
コンタクトを作製して、その荷重─抵抗値─変位量特性を実測した結果を図 4 に示します。
抵抗が安定となる荷重≧ 0.06N/ 芯の領域で、変位量⊿が 0.05mm となることから、
設計どおり、高さばらつき 0.05mm を吸収できると考えられます。
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図 4 基本特性
3.2 アラインメント精度
図 2 に示すアラインメント基本構造で、実際の精度を評価した結果を以下に示します。
・[ 下側の基板パッドとシートコンタクト端子間 ] ± 10 μm( 1 軸方向)
・[ 上側のチップパッドとシートコンタクト端子間 ] ± 40 μm( 1 軸方向)
シートコンタクト端子に対して、上下いずれのパッドも、目標値である± 40 μ m 以
内のアラインメント精度を達成していることが確認できました。± 40 μ m 以内の位置
ずれであれば抵抗値一定であることから、2.2 節で示す基本構造を用いて位置決め機構部
品にチップをパッシブで挿入しても、常に一定の抵抗値が得られることが確認できました。
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4 シミュレーションによる高速伝送検証
高速伝送性能については、前述の設計に基づいたシートコンタクト(ピッチ= 0.25mm、
総厚= 0.5mm)に対して、シミュレーションによって予測しました。
シートコンタクトを上下 2 枚のプリント基板で挟み、下側基板の片側から差動信号を
印加し、下側基板の内層パターンとビアを経由し、シートコンタクトを介して上側基板に
接続されます。上側基板のビアと内層パターンを経由して再びビアによりシートコンタク
トを介して下側基板に接続し、下側基板のビア・内層パターンを経由して反対側に伝送す
るモデルとしました。(図 5)
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22mm
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(㹠) ഃど᩿㠃ᅗ
(㹟) ᩳどᅗ
図 5 シミュレーションモデル
このモデルにおいて、シートコンタクトを介した場合のインピーダンス特性と BGA
(ボールグリッドアレイ)で理想的に実装した場合のインピーダンス特性を図 6 に示しま
す。シートコンタクトのインピーダンス特性は、ほぼ理想的な BGA 実装と同等であり、
一般的な基準である Z0=100 ±10 Ωの基準を十分に満たす性能です。
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図 6 インピーダンス特性(シミュレーション)
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この解析は、基板の定数をε r = 3.4、tan δ= 0.023 として行っています。このモ
デルに 25Gbps 差動信号を印加した場合のアイ波形と各種計算結果を表 1 に示します。
理想的な BGA 実装に比べ、空気より誘電率の高い絶縁体が入っていたり、コンタクト
長が若干長いことにより、クロストーク性能と Eye Height(Eye Mask の振幅方向)
にごくわずかな劣化が見られますが、高速伝送可能な応答特性が達成できています。
表 1 シミュレーション結果
シートコンタクト
BGA
反射特性 ( ∼ 18.75GHz)
− 35.3dB
− 35.5 dB
挿入損失 ( ∼ 18.75GHz)
− 0.086 dB
− 0.085 dB
差動インピーダンス
98.4 ∼ 101.5 Ω
98.6 ∼ 101.2 Ω
Eye Height
91.3 % (1.83 V)
96.2 % (1.92 V)
Eye Width
98.3 % (39.3 ps)
97.9 % (39.2 ps)
Rise Time (20‐80%)
11.0 ps
11.0 ps
Jitter (Peak to Peak)
0.89 ps
1.07 ps
0.004 %
0.002 %
0.005 %
0.002 %
クロストーク
*1
(NEXT)
(FEXT)
25Gbps アイ波形
H:10ps/div
V:0.5V/div
*1)差動信号クロストーク 差動ペア間距離:1mm
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5 耐環境性評価
高温放置試験(85℃)と高温高湿試験(85℃ /85%)の 2 種類の試験を実施し、耐環境
性を評価しました。試験サンプルは、嵌合状態で各環境下に曝露し、抵抗変化量を測定し
ました。
図 7、図 8 にそれぞれ高温放置試験(85℃)と高温高湿試験(85℃ /85%)の結果を示
します。いずれの試験においても、顕著な抵抗劣化は見られませんでした。
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図 7 高温放置試験結果
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図 8 高温高湿試験結果
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6 むすび
低背、狭ピッチ、着脱可能の接続構造体として、エンボス加工のシートコンタクトを
提案して、荷重─抵抗値─変位量特性を評価しました。その結果、ピッチ 0.25mm、厚さ
0.5mm のグリッドアレイシートコンタクトで、0.05mm の高さばらつきを吸収できる
可能性を実証しました。その他に、同時に提案したアラインメント構造により安定した
接続の実現と、シミュレーションにより高速伝送への適用可能性も確認できました。また、
環境試験で顕著な抵抗劣化もなかったことから、本構成の可能性を実証できました。
今後は、実用化に向けてさらに技術開発を推し進めていく予定です。
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