AN03 APEX – AN03 AN03 ブリッジ回路によ Product Innovation From る駆動 ブリッジ回路の駆動 .16mA .16mA +35V R1 T 10K R2 4.99K +5V –10V+ 0/10V VTACH C1 +35V ±5V R4 .08Ω R5 29.5 PA12A A1 .08Ω .065Ω R7 .065Ω C2 .1µ F R10 RV1 2K 250Ω 注: VREF PA12 A2 V = 24V EMF = 12V R = 1.2Ω VCM 5.9V R11 4.99K 5.5 M R6 R3 150Ω +35V R9 150Ω R8 2K R12 C3 10K 1.0 µF VCM +VR1 +VTACH = VREF VIN = +5 : 5.9V + 1.6V + 10V = 17.5Vの場合 図1. 単電源での双方向駆動 概要 2 つのパワー・オペアンプをブリッジ回路に構成することに よって、次のような優れた性能上のメリットがあります。 1. 単電源による双方向出力 2. 2 倍の出力電圧 3. 2 倍のスルー・レート 4. 2 倍の出力電力 5. 電源要件が半分 低電流であれば数キロボルトの領域まで出力可能であり、 大電流の場合でも数百ボルトの電圧を出力できます。しかし、 このレベルの性能を得るには、負荷の両端を駆動する必要が あり、また追加の部品が必要となります。 単電源での双方向駆動 図 1 に、接地の基準双極信号入力を持つ単電源双方向モー ター・スピード・コントロールの一例を示します。電源電圧か ら R3 と R9 によって作られる中点電圧を基準として、A1 と A2 の DC 動作レベルが決定されます。 反転アンプ A2 は、 入力アンプ A1 の出力に対して逆極性の同一振幅で負荷を駆 動します。この構成では、入力ゼロの状態で負荷の両方の端 子が基準電圧と同電位になり、両アンプが早期に飽和すること を防止できます。 この回路の動作を理解しようとするとき、A1 には次に示す 2 種類の入力があることを考慮する必要があります。 1. コモン・モード・バイアス電圧を決定するための電源電圧 分圧器 2. 実際の入力信号およびタコメータからの帰還 電源電圧変動の 6 分の 1 がこのアンプの両方の入力に均 等に現れます。しかし、このオペアンプのコモン・モード除去 (CMR)機能により、出力応答は低周波数においては 4 桁 減少します。C3 のローパス・フィルタ機能により、コモン・モー ド入力が低い周波数スペクトルに保たれ、最適なノイズ除去 16 www.cirrus.com 機能が確保されます。A1 の入力における最小コモン・モード・ バイアスは、アンプのコモン・モード電圧(CMV)領域によっ て決まります。図に示す回路では、電源電圧変動を公称値か らの低下 10% を見込んだ電源レール(接地)に対して公称 5.9V となっています。 実際の入力信号に対して、C1、R1、R2、A1 により積分 器を構成しています(非反転入力は一定) 。R2 の両端に印加 された制御電圧および R1 の両端に印加されたタコメータ電 圧の組み合わせにより、モーター速度が入力電圧に比例する ように働きます。C1 の値は、駆動トレインの機械的特性を含 めたシステム全体のダンピングを適切に行えるように選択する 必要があります。 抵抗 R4 および R6 により A1 の電流制限が 7.5A に設定 されます。A1 で電流が制限された場合、A2 は、A1 の電圧 変化に対して同電圧となるよう出力電圧を減少させます。A2 に先立って確実に A1 が制限することにより、この 2 つのアン プにかかる電力ストレスのレベルは等しくなります。アンプ保 護に加えて、このプログラム可能であるということがモーター の温度上昇を制限するためにも利用されており、それによって システムの期待寿命を延ばしています。図に示すモーターの 連続負荷の最大定格は 10A で、回転子拘束(停止)電流は 20A です。一般的に、回転子拘束定格は異常状態を表して いるので、モーターは、それ自体と駆動回路に対して十分な 安全域を維持しつつ、最大出力付近で使用されます。 この回路における精度の鍵は、A1 の反転入力と非反転入 力に接続された、基準電圧から接地に対する分圧比のマッチ ングにあります。反転入力側の分圧比は、制御信号とタコメー タのインピーダンスに影響されます。通常、電圧出力 DAC のインピーダンスとタコメータの巻き線インピーダンスは無視 できます。このことにより、費用対効果の高い 1% 精度の抵 抗を使用でき、精密調整用のトリムポット RV1 のみが必要に なります。分圧比のマッチング誤差は、タコメータの出力誤差 として現れます。これらの誤差は、基準電圧にミスマッチ率を Copyright © Cirrus Logic, Inc. 2009 (All Rights Reserved) 2009年5月 AN03U APEX − AN03UREVD AN03 掛けたものに等しくなります。 この回路の精度についての 2 番目に重要な事項は、A1 の 電圧オフセットです。この誤差はゲイン 3 のときにタコメータ に現れるので、PA12A はそのオフセット電圧仕様が通常の PA12 では 6mV であるのに対して 3mV と改善されている という理由で選択されました。 入力電圧範囲の変更または RPM 範囲の変更あるいはタコ メータの定格変更に対しては、容易に対応することができます。 R1 と R12 の値を(比率を保ったまま)小さくすることにより、 小さな電圧振幅あるいは低い RPM 範囲のタコメータに対し て±5V の入力レベルに対応するよう再スケーリングできます。 入力信号の増大に対しては、同じ方法で再スケーリングできる のに加えて、R2 と R11 を大きくすることによって、制御信 号駆動の要件を緩和できるというメリットがある一方で必要な 再スケーリングもできます。 高電圧タコメータの電圧範囲に対しては、A1 の入力におけ る CMV の制限のため、別の方法で再スケーリングする必要 があります。25V のタコメータを使用し、電源電圧が 20V まで低下しても A1 に対して適正な CMV を維持できる手法 を図 2 で説明しています。タコメータでの出力を 5 で除算す る回路網の計算には、巻き線インピーダンスが含まれており、 ± 5V の入力信号に対応するためのスケーリングを実現してい ます。誤差を見積もる場合、上述のように、この 5 つの要素 を分圧比ミスマッチ誤差と電圧オフセット誤差の両方に適用す る必要があります。オフセット誤差を計算するための総合ゲイ ンは 10 となります。 10K 175Ω 8.75V 10K 図 3 に示すブラウン管(CRT)では、公称 500Vpp の 駆動電圧を必要とします。± 5% のゲイン誤差と 10%(フ ル・スケールに対して)のセンタリング電圧許容を考慮すると、 偏向電圧は 575Vpp までスイングすることが望まれます。2 つの PA84 高電圧パワー・オペアンプを使用すると、この差 動電圧スイングを実現できます。CRT において 400V/µs のスルー・レートがあれば、 ビームはフェイス・プレートを 1.5µs 未満で横切ることができます。 A1 のゲインは、(R3+RV1)/R1 によって 100 に設定さ れます。この回路では、ゲイン調整(RV1)とビーム・セン タリング(RV2)の両方を行うことができます。正確なスケー リングのため、R4 と R6 でトリムポット RV2 のセンタリング 制御電圧を± 250mV に減衰させます。C2 によって接地に 対する AC インピーダンスを望ましいレベルまで低くして安定 性を向上し、ノイズを除去します。A2 は A1 の出力をゲイン 1(R8/R5 で設定される)で反転し、シングル・エンド入力 信号に対して差動出力で測定した総合ゲインは 200 になりま す。R9 と C4 は、AC ゲイン 100(R8/R9)の A2 への 第 2 の入力となります。入力として接地を使用することで信 号的な寄与はありませんが、両アンプともゲイン 100 におけ る位相補償(20K、50pF)の使用が可能となり、それによっ て、250KHz という広い電力帯域幅を実現しています。 A1 PA84 1K R5 100K 1/2W 2.5V p-p R4 1K C2 R6 .47 47K µF –150V +150V R7 C3 20K R9 +12V C4 .047µF RV2 10K 1K 50pF R8 100K 1/2W A2 PA84 –150V CTR –12V 図3. 静電偏向アンプ 1.5K 1.5K +15V 1.5K 1.5K +15V A2 PA02 Rs 2 -15V 36K 1.5K 0.4 0.3mH 図4. 静電偏向アンプ 磁気偏向用トランス・インピーダンス・ブリッジ 静電偏向 R3 95K 1/2W 100pF 図2. 高電圧タコメータ AN03U 10K C1 50pF -15V REF 10K R1 1.5K ±17.5V ±5V 20K A1 PA02 0/25V 25Ω A1 RV1 GAIN ±7.5V T 50Ω 10K +150V R2 図 4 に示す回路では、 精密 x-y ディスプレイの電磁偏向ヨー クを駆動します。この回路の設計上の課題は次に示す 2 つで す。 1. 電流の大きさと極性を変化させて、終点での高速な表示 過渡時間を実現するために、15V を超える駆動電圧が必 要です。 2. このシステムでは、± 15V 電源のみが使用可能です。 このブリッジ回路では、単電源電圧の約 2 倍の電圧を出力 できるので、CRT 偏向専用の別電源が不要になります。次 に示す定格のディスプレイでは、任意の 2 点間の遷移時間は、 100µs となります。 ヨーク・インダクタンス = 0.3mH フル・スケール電流 = ± 3.75A コイル直流抵抗 = 0.4 Ω インダクタ内の電流を変化させるのに必要な電圧は、電流 の変化量とインダクタンスに比例し、遷移時間に反比例します。 V = di*L/dt V = 7.5A*0.3mH/100µs = 22.5V Apex Precision Power の低電圧パワー・オペアンプ PA02 は、高スルー・レートであり、電源レール付近の電圧 まで負荷を駆動できるため、この回路に対して理想的な選択 肢といえます。図 4 における A1 では、Howland Current Pump が構成されています。回路図上、センス抵抗の下部 17 AN03 の電圧が負荷に直接加わっており、上部の電圧は、負荷にか かっている電圧に、負荷電流に比例した電圧をプラスした電 圧となります。両ポイントとも帰還となっており、アンプには 負荷電圧に依存する成分の同相分が両入力上に見えています が CMR 機能により除去され、負荷電流に依存する成分が差 動で見えています。この回路構成では、A1 は、入力信号に よって指定された負荷電流となるように(飽和限界の範囲で) 負荷を駆動します。A1 を囲む 2 つの帰還パス間の抵抗比は 重要なため、この 4 つの抵抗には、抵抗ネットワークがよく 使用され、精密マッチングと温度への追従性の両方を実現し ています。A2 はゲイン -1 で、 コイルの反対側を駆動します。 A2 のゲイン設定抵抗はさほど重要ではなく、ここでのミス マッチは単に一方のアンプが他の一方より少し厳しい条件で 動作することを指します。R-C 補償回路の初期値は、Apex Precision Power Power Design ツールで入手できます が、ベンチ測定で微調整を行います。 一見したところ、 センス抵抗両端のピーク電圧降下は 7.5V、 つまり電源電圧の半分であるため、センス抵抗として 2Ωとい う選択はかなり大きいように見える場合があります。 コイル抵抗両端のピーク電圧降下(1.5V)とセンス抵抗 両端のピーク電圧降下(7.5V)を合わせると、トータル・ス イングは 31.5V となり、言い換えると各アンプは 3.75A に おいて 15V 以上スイングする必要がある、ということが容易 に想像できます。 この問題に対する解決手段は、電流フローの方向を検討す ることで見出されます。 図 5 の中段のグラフでは、この大きいとみなされるセンス 抵抗であっても回路の駆動能力を超えないことがわかります。 遷移の主たる部分は約 80µs 以内に終了しており、適切に落 ち着いています。 クロスするまでオペアンプに加わることがわかります。この方 法では、コイル両端のピーク電圧は 40V 近くにまで達してい ます。 大きな値のセンス抵抗ですが、電圧駆動の要件に関して問 題はありませんし、次の 2 つの利点があります。まず、内部 の電力消費は小さなセンス抵抗を使った場合より少なくなりま す。次に、帰還信号レベルが大きくなることに伴い、アンプの 閉ループ・ゲインが小さく、ループ・ゲインが大きく、電流出 力の忠実度が良くなります。また、電圧オフセットが電流オフ セット誤差の減少に寄与します。 電源の有効利用 ブリッジ回路の利点を説明するため、図 6 と図 7 に、同じ 最大出力を備えてはいるものの電源要件の大きく異なる 2 種 類の高性能オーディオ・アンプの設計図を示しています。図 6 の回路では、ある瞬間の負荷電流は電源レールの片方にしか 現れません。つまり、それぞれの電源レールが全電力要件を 満たす必要があり、しかもピーク出力時における使用効率は 50% にしかならないということです。対照的に、図 7 に示す、 同等かつ正反対の駆動特性を持つブリッジ回路では、信号の 各半サイクルの間、正負両電源レールに対して等しく負荷を与 えます。この使用効率の改善により、入出力の電力定格は基 本的に同じであるにもかかわらず、図 7 に示す回路のための 電源に対しては、サイズ、重量、コストを削減できます。 C1 C2 C3 V (V) I(RCOIL) (A) 1K .001μF PA10 R5 .18Ω –30V PWR = 30V AT 3A = 180W V (B) 図6. 標準的なオーディオ・アンプ –20 4 2 C1 R1 R2 18K 150K R7 –2 C2 I (COIL) –4 40 C4 1nF 20 V (RSENSE) V (COIL) 0 R4 150K +15V R6 .16Ω .2Ω 2.2K .47µF R3 150K +15V R5 .47µF 0 V (V) R4 .18Ω R7 8.2K 1μF V (A) –10 A1 PA02 A2 PA02 8Ω C3 R8 2.2K 1nF R10 R9 R11 18K .2Ω –15V .16Ω –15V POWER = 15V AT 3A = 90W –20 図7. ブリッジ回路によるオーディオ・アンプ 0 200 400 TIME (s) 600 800 結論 図5. 磁気偏向電圧および電流波形 性能に関する要件が、市販されている電源またはパワー・ オペアンプの電圧限界を超える場合、ブリッジ回路は大きな 威力を発揮します。これらの回路の入力部は、シングル・エン ド負荷を駆動する通常のアンプ回路で構成されます。増設さ れたアンプは、単に反転アンプとして動作するに過ぎません。 大きさが等しく極性が反対の出力を備えることにより駆動電 圧が 2 倍になり、それによって出力は完全に差動になります。 通常、性能向上によるメリットがコスト上昇や複雑化によるデ メリットを上回ります。 上段のグラフにおいては、 (驚きですが) 、両アンプ共に電 源レールの外側まで実際にスイングしていることがわかりま す。PA02 内の出力トランジスタの「さかさま」配置により、 内部保護ダイオードをオンし、インダクタに蓄積されたエネル ギーを放出させることができます。結果として、遷移の最初 の部分でのピーク電圧は電源電圧全体よりも大きくなります。 下段のグラフにおいて、インダクタに蓄積されたエネルギー がセンス抵抗両端に電圧を発生させ、その電圧は電流がゼロ 18 +30V R3 10 –40 R2 150K 1μF 20 0 R1 8.2K AN03U