Apex-AN13 電圧/電流変換

AN13
APEX – AN13
AN13 電圧/電流変
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電圧/電流変換
電圧/電流変換
電圧制御電流源(VCCS)は、部品の試験やモーターのト
ルク制御で使用する能動負荷などの用途で使用できます。ト
ルクはモーター電流の一次関数のため、トルクの制御は容易
に行うことができます。サーボ・ループで電流を駆動すること
で、モーターのインダクタンスによる位相遅れが減り、ルー
プを簡単に安定させることができます。
パワー・オペアンプを使用している VCCS では、負荷を接
地する必要があるかどうかに応じて 2 つの基本形態のいずれ
かが想定されます。
この基本回路にはいくつかのバリエーションがあります。RS
から反転入力への直接的な帰還接続は不要です。部品を組み
込むことで、回路のゲインを高めることができます。図 2 は、
同等の伝達関数を得られる、よりゲインが高い回路を示して
います。回路のゲインが高いと、精度と帯域幅が多少失われ
ますが、安定化しやすくなります。
RF
Cf
Rd
+VS
RI
電流源: 浮動負荷
図 1A は、浮動負荷に対応した VCCS の基本回路を表し
ています。この負荷は実際には帰還パス内にあります。RS は、
負荷電流に比例した電圧を生成する電流センス抵抗です。
V IN
RB
IO =
+VS
IO
–VS
LOAD
RF
V IN
(1 +
)
RI
RS
RS
FOR: R S << R F or R I
図2. 浮動負荷に対応する、
高ゲイン構成のVCCS回路
LOAD
V IN
RB
図 3 は反転 VCCS を示しています。入力電圧により電流
出力の極性が逆になります。反転電圧アンプの場合と同様、
アンプ入力にコモン・モード変動を持たない利点は、精度が
高まることと歪が少なくなることです。
–VS
RS
図1A. 浮動負荷に対応するVCCS基本回路
RF
非反転 VCCS を説明している図 1A 以降の図に抵抗 R B
が組み込まれていることに注意してください。この抵抗は、
入力電圧源が切断されたりパワー・オン・サイクル中に高イ
ンピーダンスになった場合に、非反転入力が浮動状態になら
ないようにするために存在しています。R B は、アンプの入力
バイアス電流の経路を与えるとともに、V IN が切断されたり高
インピーダンスになったときにアンプの出力電流を強制的に
ゼロにします。図 1B は、浮動負荷に対応した VCCS の実
装を表しています。周波数が低い場合、追加されている部品
Cf、Rd、R F は、いかなる影響も及ぼしません。これらは安
定性を得るためだけに組み込まれています。これらの部品に
関する考慮事項は、
このアプリケーション・ノートで後述する「浮
動負荷 VCCS の安定化」のセクションで説明します。
RF
Cf
Rd
+VS
Cf
Rd
+VS
RI
V IN
IO
–VS
I O =—
V IN
RS
RF
RI
LOAD
RS
FOR: R S << R F or R I
図3. 浮動負荷に対応するVCCS、
反転構成
図 4 は、実際には CCCS、つまり電流制御電流源である
電流入力を表しています。これは実際には電流アンプです。
この回路は、デジタル / アナログ・コンバーター(DAC)と
ともに使用した場合や、電流を入力として使用できる任意の
アプリケーションで役に立つ可能性があります。
RF
V IN
RB
–VS
IO =
IO
LOAD
Cf
RS
V IN
RS
Rd
+VS
I IN
図1B. 浮動負荷に対応する、
安定性が補償されたVCCS回路
アンプのループ・ゲインにより、R S を通過した電圧は、非
反転入力に印加された電圧と同じ値であると強制的に見なさ
れるため、次の伝達関数が得られます。
–VS
I O =—
IO=VIN/RS
I IN R F
RS
IO
LOAD
RS
FOR: R S << R F
図4. 浮動負荷に対応するCCCS、
反転構成
50
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2009
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2009年5月
AN13U
APEX − AN13UREVD
AN13
浮動負荷VCCSの安定化
+VS
RB
100K
OPEN LOOP GAIN, A (dB)
RS
0.5Ω
Feedback
Response
(1/ß)
80
60
0
V IN
120
ßDC =
.5
1.5
Fz =
FB #1
–VS
RL
1.0Ω
RS
0.5Ω
100
80
60
40
LL
50µH
SMALL SIGNAL RESPONSE
FB #1
FB #2
20
0
–20
Aß
1 10 100 1K 10K .1M 1M 10M
FREQUENCY, F(Hz)
RS
= .333 → 1/ß = 9.5dB Fz =
RI
1.0 + .5 = 4.77kHz
2 50µH
IO
V IN
これらの応答の交点では、結合された勾配が 40dB/dec
となり、リンギングまたは大規模な発振が発生します。ここで
は、このポイントを「交点臨界周波数」と呼ぶことにします。
この回路は、その応答が交点臨界周波数で優位となる代替帰
還パスを使用することで最良の補償が得られます。
代替帰還応答に対する適切な基準は次のようになります。
1. 交点臨界周波数で 1 桁(20 dB)以上優位となる応答です。
2. 代替帰還応答には、交点臨界周波数より 1 桁小さい周波
数で発生するコーナー周波数を持ちます。
この応答を提供するために、図 6 に示す補償応答を提供す
る代替帰還部品が選択されています。図 6 の FB は、閉ルー
プ構成時にアンプで見られる支配的な帰還パスです。RF は
単に、代替帰還ループの接地脚リターン・インピーダンスとし
て動作するため、100 ~ 1000 Ωの低い値となります。そ
の後、希望の高周波ゲインを提供する Rd が選択され、代替
帰還のカーブを生成する Cf が選択されています。
なお、
これらの技術は、
Apex Precision Power AN05「精
密磁気偏向」で説明した電磁偏向アンプの安定化に使用され
る技術と類似している点に注意してください。
+VS
RI
図5. 帰還応答のグラフ
AN13U
RB
100K
RF
R L+R S
2πL L
1 10 100 1K 10K .1M 1M 10M
FREQUENCY, F(Hz)
1/ß DC
.047µF 332Ω
PA07
40dB/decade
40 rate of
closure
20
–20
FB #2
Rd
接地された負荷に使用する VCCS は「改良型 Howland
Current Pump」と呼ばれることがあります。これは、実際
には、入力信号と帰還の両方を分けてセンスする差動アンプ
です。
図 7 は、関連する伝達関数を使用したこの VCCS の一般
的な例を示しています。
SMALL SIGNAL RESPONSE
100
Cf
接地された負荷に対する電流出力
LL
50µH
–VS
RL
1.0Ω
120
+VS
図6. アンプの補償
PA07
V IN
RF
100Ω
OPEN LOOP GAIN, A (dB)
負荷は、これらすべての回路の帰還ループ内にあるため、
安定性に多大な影響を与えます。負荷が常に純抵抗であれば、
解析は容易になるため、多くの回路では、安定性を保証する
ために部品(Cf や Rd など)を追加する必要がなくなります。
しかし、現実には通常、これらの回路を使用して、電磁コイ
ルやモーターといった複雑な負荷を駆動することになります。
安定性解析は、帰還応答をアンプの開ループ・ゲインに対
してプロットする「減衰率」のテクニックを使用すれば、最も
簡単に行えます。この技術で使用する情報は、任意のアンプ
のデータ・シートから容易に取得できます。
減衰率とは、帰還応答とアンプの Aol がどのように交差
するかを表したものです。結合された交点の勾配が 20dB/
dec を超えなければ、その回路は安定します。
たとえば、図 1A のアンプについて考えてみます。0.5Ω
の電流センス抵抗を持つ PA07 アンプを使用して、1Ω の直
列抵抗を持つ 50 µH のコイルを駆動すると想定します。図
5 では、PA07 の Aol グラフ上に負荷の応答とセンス抵抗を
重ね合わせています。
–VS
IO =
V IN
RS
RF
LOAD
RF
RI
FOR: R S << R F or R I
図7. 接地された負荷に対応するVCCS
最初に考慮すべきこの回路特有の事項は、2 つの入力抵
抗(R I)および 2 つの帰還抵抗(R F)を厳密に一致させる
必要があることです。わずかな不一致であっても、伝達関数
で大きな誤差が発生し、出力インピーダンスが低下するため、
回路は本来の電流源とはならなくなります。
一致要件の一例として、図 8 の PA07 を使用した実際の
例を考えてみましょう。抵抗を許容誤差にできるだけ厳密に
一致させることで、43K Ωの出力インピーダンスが生成され
ています。1% の不一致で、出力インピーダンスは 200Ω
に低下し、伝達関数に約 20% の誤差が生まれています。
このことから、0.1% より優れた一致率が必要であることが
わかります。一致率が完全で、あらかじめパッケージングされ
ている抵抗ネットワークを使用した場合におそらく最良の結果
が得られます。図 8 の回路では、他の箇所の不一致を補償
するために、2 つの抵抗(R F)での若干の不一致が必要とな
り、最高の性能を得るためにはトリムポットを組み込む必要が
ある場合があることを示唆しています。
51
AN13
R1
RF´
10.0007K
V IN
10K
IO
RS
PA07
RI
+VS
I IN
+VS
RI´
0.1Ω
R*C
10K
–VS
C*C
RF
(MUST BE
TRUE
CURRENT
SOURCE)
Zo =
43KΩ with
EXACT R F, R I
VALUES
SHOWN
I O =—
–VS
R2
IO
10K
I O = -10A/Volt input
R1
I IN
R2
* OPTIONAL COMPENSATION—SEE TEXT
図9. 電流ミラー
図8. 実際のPA07を使用したVCCS
接地された負荷回路を使用した場合の安定性
減衰率および帰還応答
接地された負荷回路は、安定性の観点からいえば、際立っ
て寛容です。一般的に、安定性を保証するために追加の対
策を行う必要はありません。
安定性に関するなんらかの問題が発生した場合、多くは
容量性として見える回路の出力インピーダンスが原因です。
これと等価な容量は次のように表すことができます。
減衰率安定性解析技術とは、帰還応答をアンプの応答に
対してプロットして安定性を判別する手法です。
任意の帰還アンプの閉ループ・ゲインは次の式で求められ
ます。
RI + RF
ここで : Aol はアンプの開ループ・ゲインであり、Acl は結
果として得られる閉ループ・ゲインです。
ß は、出力信号から、入力に帰還された信号までの減衰
を表します(図 10 を参照してください)。つまり、ß とは、
アンプの出力電圧を介してアンプに帰還された電圧の比率
のことです。(Vfeedback=ßVout)
このアプリケーション・ノートで使用している例では、アン
プ回路の対応する閉ループ応答(1/ß)をプロットし、この
応答をアンプの開ループ応答に重ね合わせることで ß をア
ンプの応答にプロットしています。この「対応する閉ループ
応答」はノイズ・ゲイン Av(n)とも呼ばれます。
図 5 の例では、帰還ネットワークはヨークとセンス抵抗で
構成されているため、帰還応答と呼ばれている曲線は、実
際にはアンプの閉ループ・ノイズ・ゲイン応答を表しています。
図 6 では、Cf、Rd、RF の追加帰還応答は、他のすべての
応答とは独立してプロットされています。これらのグラフを
使用する際に注意すべきいくつかの重要なポイントを次に示
します。
Ceq =
Acl = Aol/(1-ßAol)
2πfoRIRS
ここで : fo = アンプのゲインと帯域幅の積
この容量は誘導性負荷と共振できるため、多くの場合、
急激な遷移時にリンギングの問題が発生します。これに対す
る唯一の有効な補償は、単純な「Q スナバ」技術です。こ
の技術では、まず誘導性負荷と回路の出力容量の共振周波
数を決定します。次に、共振周波数時のインダクタのリアク
タンスの 10 分の 1 の抵抗値を選択します。この抵抗値の
10 分の 1 に等しい共振周波数時のリアクタンスを持つ直
列コンデンサを追加します。もう 1 つの方法として、小型イ
ンダクタとダンピング抵抗を R S と直列に組み込む方法もあ
ります。
なお、この式では、R I と R S を大きくし、ゲイン / 帯域幅
が優れたオペアンプを使用して実効容量を減らす方が有利
である点にも注意してください。優れた高周波性能が必要
な回路の場合、浮遊容量およびアンプの入力容量が最も顕
著になる点を上限として、R I および R S のいずれかまたは両
方を増加する必要があります。
この回路の不安定性を引き起こす 2 つ目のまれな原因は、
回路の出力インピーダンス特性における負性抵抗です。こ
の問題は、帰還抵抗を調整して一致率を向上させることで
解決できます。
1.図 1 のように帰還ネットワークが複数ある場合、任意の
周波数で最も低いノイズ・ゲインを有する応答が支配的
な帰還パスとなります。図 6 では、この支配的な帰還パ
スには FB というラベルが付いています。
2.ノイズ・ゲインおよび開ループ・ゲインが結合された傾き
と交差する、つまり減衰率が 20dB/dec を超えるときに
は常に、安定性が悪くなります。40dB/dec の場合には、
180 度の位相変化が起こるため、当然、発振が起こりま
す。この例は図 5 に示されています。
電流ミラー
電流ミラー回路は、入力電流とは比例し、方向は逆とな
る第 2 の電流を生成するのに便利なデバイスです。
入力で柔軟な電圧コンプライアンスを得るために、図 9
のミラーは実際の電流源から駆動する必要があります。任
意の入力電流は、R2 の両端での降下と一致する降下を
R1 の両端で発生させようとするため、R2 を通過した電流
は R1 の電流と比例することになります。たとえば、R1 が
1.0 K Ωであり R2 が 1 Ωである場合、1mA の入力電流
により 1A の出力電流が生成されます。
+V S
VO
V IN
ZF
–V S
V FB
ß=
V FB
VO
=
ZI
ZI
Z I +Z F
図10. 帰還の要素ß
52
AN13U