str-l4xxseries an jp

STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
Rev. 1.2
STR-L400 シリーズ
アプリケーションノート
(Rev.1.2)
サンケン電気株式会社
サンケン電気株式会社
SANKEN ELECTRIC CO., LTD.
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STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
Rev. 1.2
目次
1.
概要----------------------------------------------------------------------------------------3
概要
2.
特長と
特長とシリーズラインアップ------------------------------------------------------------シリーズラインアップ
3
3.
ブロック図
ブロック図と各端子機能 ---------------------------------------------------------------- 4
4.
外形図-------------------------------------------------------------------------------------5
外形図
5.
電気的特性 ------------------------------------------------------------------------------- 6
6.
応用回路例 ------------------------------------------------------------------------------- 8
7.
動作説明 ---------------------------------------------------------------------------------- 9
7.1
7.2
7.3
7.4
7.5
7.6
7.7
7.8
8.
起動動作 ------------------------------------------------------------------------------ 9
定電圧制御回路動作 --------------------------------------------------------------11
ボトムオンタイミング(擬似共振信号
ボトムオンタイミング 擬似共振信号)---------------------------------------------12
擬似共振信号
遅延回路の
遅延回路の種類 --------------------------------------------------------------------16
ラッチ回路
ラッチ回路 ----------------------------------------------------------------------------17
過電圧保護機能(
) -----------------------------------------------------------17
過電圧保護機能(OVP)
過熱保護機能(
) --------------------------------------------------------------17
過熱保護機能(TSD)
過電流保護機能(
) -----------------------------------------------------------18
過電流保護機能(OCP)
設計上の
設計上の注意点 ------------------------------------------------------------------------19
注 意
本書に記載されている内容は、改良などにより予告なく変更することがあります。
ご使用の際には、最新の情報であることをご確認ください。
本書に記載されている動作例および回路例は、使用上の参考として示したもので、これらに起因する当社、もしくは第
三者の工業所有権、知的所有権、その他の権利の侵害問題について当社は一切責任を負いません。
本書に記載されている製品をご使用の場合は、これらの製品と目的物との組合せについて使用者の責任において検
討・判断を行ってください。
当社は品質、信頼性の向上に努めていますが、半導体製品では、ある確率での欠陥、故障の発生は避けられません。
部品の故障により結果として、人身事故、火災事故、社会的な損害などを発生させないよう、使用者の責任において、
装置やシステム上で十分な安全設計および確認を行ってください。
本書に記載されている製品は、一般電子機器(家電製品、事務機器、通信端末機器、計測機器など)に使用されるこ
とを意図しております。
高い信頼性が要求される装置(輸送機器とその制御装置、交通信号制御装置、防災・防犯装置、各種安全装置など)
への使用をご検討の際には、必ず当社販売窓口へご相談をお願いします。
極めて高い信頼性が要求される装置(航空宇宙機器、原子力制御、生命維持のための医療機器など)には、当社の
文書による合意がない限り使用しないでください。
本書に記載された製品は耐放射線設計をしておりません。
本書に記載された内容を文書による当社の承諾なしに転記複製を禁じます。
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STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
Rev. 1.2
1. 概要
STR-L400 シリーズは、パワーMOSFET と制御 IC を 1 パッケージに内蔵した、擬似共振型スイッチング電源
用パワーIC です。
定常動作時に擬似共振動作および PRC*動作に対応しています。
* PRC(Pulse Ratio Control)・・・OFF 時間固定、ON 時間制御の制御方式(弊社呼称)
低背、高圧―低圧間沿面距離 6.5mm 以上(基板上リード端子部)の SIP10L ピンフルモールドパッケージ(弊社
呼称 STA パッケージ)を使用し、充実した保護機能により構成部品の少ない、コストパフォーマンスの高い電源シ
ステムが容易に構成できます。
2. 特長とシリーズラインアップ
特長と利点
• SIP10L プルモールドパッケージ(STA10L パッケージ、2.54mm ピッチ)
高圧-低圧ピン間の基板上リード端子部の沿面距離 6.5mm(基板上リード端子部)
基板上からの高さ 12mm 以下
白物補助電源用途に最適
• 電流モード制御方式
• 低周波動作用発振器内蔵(擬似共振信号が確立するまで、OFF 時間 50µs の低周波(約 20kHz)で動作し、
起動時や、出力短絡時の部品ストレスを低減)
• 擬似共振動作機能搭載
• 過電流点の入力補正機能搭載(部品 3 点を追加することにより、入力電圧変動に対して過電流動作点
のバラツキ補正が可能)
• 保護機能
過電流保護(OCP)-----------------------------パルス・バイ・パルス
過電圧保護(OVP) ----------------------------ラッチオフ *
過熱保護(TSD) --------------------------------ラッチオフ *
*ラッチオフ・・・ラッチオフは、発振停止を継続して保護を行う動作
• 2 チップ構造による、アバランシェ・エネルギ耐量保証 (サージ吸収回路の簡素化が可能)
シリーズラインアップ
1
POUT ※
MOSFET
RDS(ON)
VDSS(MIN)
(Max)
AC100V/AC230V
3.95Ω
STR-L451
650V
30W / 74W
7.70Ω
- / 35W
STR-L472
900V
※1 上記出力電力は熱定格であり、最大出力電力は、熱定格の 120%~140%程度まで出力可能です。
ただし、出力電圧が低い場合やトランス設計時の ON Duty の設定により出力電力の制限を受けること
があります。
製品名
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Rev. 1.2
3. ブロック図
ブロック図と各端子機能
ブロック図
ブロック図
8
VIN
OVP
UVLO
+
REG
-
+
-
Latch
Internal Bias
Delay
TSD
+
-
REG
PWM Latch
OSC
D
1~4
S
6
S
Drive
R Q
INH
INH Latch
Comp.
-
+
Q S
OCP
R
Comp.
Icont
OCP 9
/FB
-
+
GND 7,10
各端子機能
端子番号
記号
機能
1~4
D
MOSFET ドレイン
6
S
MOSFET ソース
7,10
GND
グランド
8
VIN
制御回路電源入力
9
OCP/FB
過電流検出信号入力/定電圧制御信号入力
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4. 外形図
・SIP10L(弊社呼称 STA10L)パッケージ
・下図リードフォーミングは、No.LF 428
b
a
a. 品名標示 STRL4**
b. ロット番号
第1文字
西暦年号下一桁
第2文字
製造月
1~9月
アラビア数字
注記
10月
O
部は高さ0.3maxのゲートバリ発生個所をしめす。
11月
N
12月
D
第3、4文字 製造日
01~31
アラビア数字
端子の材質: Cu
端子の処理: Niメッキ+半田ディップ
製品重量: 約2.6g
単位: mm
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Rev. 1.2
STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
Rev. 1.2
5. 電気的特性
STR-L400 シリーズの電気的特性を、STR-L472 を代表例として示します。
詳細内容は、製品毎の仕様書を参照願います。
5.1
絶対最大定格
特記なき場合の条件 Ta=25°C
項 目
端子
記 号
規
格
値
単位
備 考
ドレイン電流
※1
1–6
IDPeak
2.7
A
シングルパルス
最大スイッチング電流
※1
1–6
IDMAX
2.7
A
V6-10=0.82V
Ta= −20~+125°C
アバランシェエネルギ耐量
※1
シングルパルス
1–6
EAS
50
mJ
制御部電源電圧
8 – 10
VIN
35
V
OCP/FB 端子電圧
9 – 10
Vth
6
V
1–6
PD1
8 – 10
PD2
0.14
W
動作時内部フレーム温度
―
TF
−20~+125
°C
動作周囲温度
―
TOP
−20~+125
°C
保存温度
―
Tstg
−40~+125
°C
チャネル温度
―
Tch
+150
°C
Power MOS FET 部許容損失
※1
制御部許容損失(MIC)
VDD=30V,L=20mH
ILPeak= 2.2A
無限大放熱器にて
12
W
2.5
放熱器なし
推奨内部フレーム温
度 TF= 115℃(Max)
※1 製品によって異なるので、詳細は製品仕様書を参照願います。
※電流の規定は IC を基準として、シンクが+、ソースが-とする。
5.2
MOSFET 部電気的特性
特記なき場合の条件 Ta=25°C
項 目
ドレイン・ソース間電圧
端子
※1
ドレイン漏れ電流
規
記 号
格
値
単位
MIN
TYP
MAX
1–6
VDSS
900
―
―
V
1–6
IDSS
―
―
300
A
ON 抵抗
※1
1–6
RDS(ON)
―
―
7.7
Ω
スイッチング・タイム
※1
1–6
tf
―
―
250
ns
熱抵抗
※1
―
θch-F
―
―
5.05
°C/W
※1 製品によって異なるので、詳細は製品仕様書を参照願います。
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備 考
チャネル-内部
フレーム間
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5.3
制御部電気的特性
Rev. 1.2
特記なき場合の条件 Ta=25°C、VCC=20V
MIN
格 値
TYP
MAX
VIN(ON)
15.8
17.6
19.4
V
8 – 10
VIN(OFF)
9.1
10.1
11.1
V
動作時回路電流
8 – 10
IIN(ON)
–
–
5
mA
非動作時回路電流
8 – 10
IIN(OFF)
–
–
50
µA
–
tOFF(MAX)
41
–
57
µs
9 – 10
tth(2)
–
–
1.0
µs
–
tOFF(MIN)
–
–
1.5
µs
OCP/FB 端子しきい電圧 1
9 – 10
Vth(1)
0.70
0.76
0.82
V
OCP/FB 端子しきい電圧 2
9 – 10
Vth(2)
1.3
1.5
1.7
V
OCP/FB 端子引き抜き電流
9 – 10
IOCP/FB
1.0
1.35
1.5
mA
項 目
端子
記 号
動作開始電源電圧
8 – 10
動作停止電源電圧
最 大 OFF 時 間
最小疑似共振信号入力時間
最 小 OFF 時 間
OVP 動 作 電 源 電 圧
規
単位
8 – 10
VIN(OVP)
23.2
25.5
27.8
V
ラッチ回 路 保 持 電 流
※2
8 – 10
IIN(H)
–
–
70
µA
ラッチ回路解除電源電圧
※2,3
8 – 10
VIN(La.OFF)
7.9
–
10.5
V
–
Tj(TSD)
135
–
–
°C
熱保護動作温度
※2 ラッチ回路とは、過電圧保護(OVP)、過熱保護(TSD)により動作する回路を示します。
※3 VIN(OFF)>VIN(La.OFF)の関係が成立ちます。
※電流の規定は IC を基準として、シンクが+、ソースが-とする。
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Rev. 1.2
6. 応用回路例
D1
T1
D5
VAC
VOUT
PC1
C1
R7
C6
R9
P
Rs
S
D2
STR-L400
Z1
1
2
3
4
8
PC1
VIN
R6
D3
R3
Cont.
D4
OCP
/FB
9
S
6
GND GND
10
7
R4
R OCP
C5
C3
図 6 応用回路例
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Z2
R2
C7 R11
R10
GND
C2
D
CV
R8
Page.8
D
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Rev. 1.2
7. 動作説明
7.1
起動動作
図 7-1 に VIN 端子周辺回路を示します。
起動回路は、VIN 端子電圧を検出して、IC の動作開始、動作停止
を行います。
電源起動時、起動抵抗 RS を介し、C2 を充電し、VCC 端子電圧が動
作開始電源電圧 VIN(ON)= 17.6V(TYP)まで上昇すると、IC は動作を開
始します。RS の値は、入力 AC 電圧の下限時に、ラッチ回路保持電流
IIN(H)= 70µA(MAX) のマージンを考慮し 100µA 以上の電流が流れる
ように設定します。なお、RS の値を大きくしすぎると、AC 入力投入後、
C2 の充電時間が長くなるため、起動時間が長くなりますので、C2 容
量と併せた検討が必要です。
C1
P
Rs
1~4
D/ST
VIN
D2
8
C2
GND
R2
VD
D
7,10
STR-L400
一般的な電源仕様であれば、C2 は、10~47µF 程度、Rs は、
AC100V とワイド入力時は 100k~220kΩ、AC230V 入力時は 470k~
820kΩ 程度になります。
図 7-1 VIN 端子周辺回路
図 7-2 に VIN 端子電圧と回路電流 IIN の関係を示します。VIN 端子電圧が VIN (ON) = 17.6V(TYP)に達すると、
制御回路が動作を開始し、回路電流が増加します。制御回路動作後、VIN 端子電圧が動作停止電源電圧
VIN(OFF)= 10.1V(TYP)に低下すると、低入力時動作禁止 UVLO(Undervoltage Lockout)回路により制御回路は
動作を停止し、再び起動前の状態に戻ります。制御回路動作後は、図 7-1 の補助巻線 D から整流平滑された
電圧が VIN 端子の供給電力になります。
補助巻線電圧は、電源仕様の入出力変動範囲内で、VIN 端子電圧が、
VIN ( OFF ) = 11.1V ( MAX ) < VIN < VIN ( OVP ) = 23.2V ( MIN )
になるように補助巻線 D の巻数を調整します。補助巻線電圧の目安は、18V 程度になります。
IIN
VIN
IIN(ON)= 5mA
(MAX)
IC 動作開始
起動成功
停止
起動
VIN(ON)= 17.6V
(TYP)
VIN(OFF)=10.1V
(TYP)
起動不良時
IIN(OFF)= 50µA
(MAX)
10.1V 14V 17.6V
(TYP)
(TYP)
VIN(OFF)
VIN(ON)
VIN
時間
図 7-3 起動時 VIN 端子電圧波形
図 7-2 VIN 端子電圧-回路電流 IIN
図 7-3 に電源起動時の VIN 端子電圧波形例を示します。図 7-3 のように、VIN 端子電圧が VIN(OFF)に達し、
起動不良になる場合は、C2 容量を大きくします。なお、容量を大きくすると、起動時間が長くなるので、使用上
問題ないか確認が必要です。
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STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
Rev. 1.2
実際の電源回路は、図 7-4 のように 2 次側出力電流 IOUT の値により VIN 端子電圧が変化し、過電圧保護動
作(OVP)になる場合があります。これは、パワーMOSFET がターン OFF した瞬間に発生するサージ電圧によ
って、C2 がピーク充電されるためです。これを防止するには、図 7-5 のように、整流用ダイオード D2 と直列に
数 Ω~数十 Ω の抵抗 R2 の追加が有効です。R2 の最適値は、出力電圧に対する VIN 端子電圧の変化が使
用するトランスの構造によって異なるため、 実際に使用するトランスに合わせた調整が必要です。また、出力
電圧に対する VIN 端子電圧の変化率は、下記の場合に悪くなるため、トランス設計時は、補助巻線 D の巻き位
置に注意が必要です。
• トランスの 1 次-2 次の結合が悪い場合(低出力電圧、大電流負荷仕様など)
• 補助巻線 D と安定化出力巻線(定電圧制御を行っている出力ラインの巻線)の結合が悪い場合
D2
R2 がない場合
VIN
R2
8
VIN
D
C2
STR-L400
追加
GND
R2 がある場合
7,10
IOUT
図 7-5 出力電流 IOUT の影響が
受けにくい VIN 端子周辺回路
図 7-4 R2 による出力電流 IOUT-VIN 端子電圧
トランス設計時の参考として、補助巻線 D の巻き位置の参考例を、図 7-6、図 7-7 に示します。
• 補助巻線 D を 1 次巻線 P1 と P2 から距離を離す(図 7-6 巻線構造例①)。
P1、P2 は 1 次巻線を 2 分割にしたサンドイッチ巻線
• 2 次側安定化出力巻線 S1 で補助巻線 D をサンドイッチする構造とする(図 7-7 巻線構造例②)。
2 出力巻線 S1、S2 中、S1 は安定化出力巻線(定電圧制御を行っている出力ラインの巻線)。
コア ボビン
バリアテープ
P1 S1 P2 S2 D
P1 S1 D S2 S1 P2
バリアテープ
ピン側
P1,P2 1 次巻線
S1
2 次制御巻線
S2
2 次出力巻線
D
VCC 用補助巻線
図 7-6
P1,P2 1 次巻線
S1
2 次制御巻線
S2
2 次出力巻線
D
VCC 用補助巻線
巻線構造例①
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図 7-7
Page.10
巻線構造例②
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7.2
Rev. 1.2
定電圧制御回路動作
定電圧制御回路動作
出力電圧は、過渡応答および安定性に優れた電流モード制御(ピーク電流モード制御)により、定電圧制御
されます。図 7-8 に OCP/FB 端子周辺回路、図 7-9 に定電圧制御動作を示します。
負荷に応じたフィードバック電流は、フォトカプラ PC1 を介して、R4 に電圧降下 VR4 を作ります。
ドレイン電流によって検出抵抗 ROCP に生じた電圧降下 VROCP に VR4 を重畳させた OCP/FB 端子電圧と、
OCP/FB 端子しきい電圧 1Vth(1)= 0.76V(TYP)を、IC 内部の OCP コンパレータ(OCP Comp.)で比較する電流
モード制御により、定電圧制御が行われます。
一般的に電流モード制御は、軽負荷時に VR4 の電圧が上昇し、パワーMOSFET がターン ON する際に発
生する急峻なサージ電流により OCP コンパレータ(OCP Comp.)が誤動作し、パワーMOSFET がターン OFF す
る場合があります。
STR-L400 シリーズは、これを防止するため、アクティブローパスフィルタ回路を内蔵しています。パワー
MOSFET がターン ON するまで、OCP/FB 端子を OCP/FB 端子引き抜き電流 IOCP/FB= 1.35mA の定電流で引
き抜き、バイアス量を約 1/2 まで低下させます。この回路により、パワーMOSFET がターン ON したときのサージ
電圧を C5 に吸収させ、軽負荷まで安定動作が行えます。
R4、R6、C5 の一般的な定数は、R4=680Ω、R6=3.3kΩになり、C5=100p~470pF が目安になります。なお、
C5 容量が大きくなりすぎると、OCP の応答が遅くなるため、電源起動時などの過渡状態時のドレイン電流ピーク
が増大する場合があるので注意が必要です。誤動作が生じる場合は、定数を実働動作で確認して決定します。
D2
R2
PC1
D3
C2
D
R3
STR-L400
S
GND
7 10
6
R OCP
R6
D4
OCP
/FB 9
R4
VR OCP
C5
C3
図 7-8 OCP/FB 端子周辺回路
Latch出力より
タイマーリセット
PWM Latch
OFF信号出力
S
OFFタイマー回路
D
INH Comp.
S
OCP
/FB
D4
補助巻線の
フライバック電圧
6
R4
9
-
+
R
PC1
R6
DRIVE
R Q
INH Latch
Q S
1~4
OCP Comp.
C5
R OCP
Vth(1)
0.76V(TYP)
VROCP
-
+
VR4
GND
7,10
ON幅コントロール
図 7-9 定電圧制御動作
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Rev. 1.2
STR-L400 シリーズの動作モードは、擬似共振信号のあり/なしで以下の 2 種類のモードに切換わります。
PRC 動作(Pulse Ratio Control)
擬似共振動作
7.2.1 PRC 動作
擬似共振信号がない場合、または確立していない場合(OCP/FB 端子電圧が OCP/FB 端子しきい電圧 2Vth(2)=
1.5V(TYP)以下)は、最大 OFF 時間 tOFF(MAX)= 50µs(TYP)固定、ON 時間制御で動作します。
パワーMOSFET がターン ON する場合は、図 7-9 の OFF タイマー回路で内部固定された OFF 時間後、PWM
Latch の Q が “L”にラッチされ、ゲートドライブ条件が満足されると、パワーMOSFET がターン ON します。
パワーMOSFET がターン OFF する場合は、IC 内部の OCP コンパレーター(OCP Comp.)により、OCP/FB
端子電圧が、OCP/FB 端子しきい電圧 1Vth(1)= 0.76V(TYP)よりも大きくなると、PWM Latch の Q が “H”にラッ
チされ、ドライブ回路が OFF し、パワーMOSFET がターン OFF します。
OFF 時間は 50µs(TYP)固定のため、PRC 動作時のスイッチング周波数は約 20kHz になり、擬似共振信号が
確立していない起動時や、出力短絡時の部品ストレスを低減します。
また外部信号により、擬似共振信号をカットする回路を追加することによって、スタンバイ負荷などの微小負
荷時の消費電力を低減できます。
7.2.2 擬似共振動作
補助巻線から作られる擬似共振信号により、OCP/FB 端子電圧が Vth(2)= 1.5V(TYP)以上になると、IC 内部
の OFF タイマー回路は最小 OFF 時間 tOFF(MIN)= 1.5µs(MAX) に切換わり、OCP/FB 端子電圧が Vth(1)=
0.76V(TYP)以下になるまで、パワーMOSFET は OFF を継続します。この動作により、擬似共振動作が行われ
ます。擬似共振動作は、“7.3 ボトムタイミング(擬似共振信号)”項を参照。
7.3
ボトムオンタイミング(擬似共振信号
ボトムオンタイミング 擬似共振信号)
擬似共振信号
図 7-10 に示すようなフライバック方式(パワーMOSFET が OFF のときに 2 次側へエネルギーを供給する方式)
は、2 次側にエネルギー放出後、ドレイン電圧 VDS が、トランスの LP とドレイン-ソース間のコンデンサ CV で決
まる周波数で自由振動します。
Ef
LP
NP
EIN: DC 電圧
NS
ID
IOFF
EIN
CV
図 7-10 フライバック方式
VO
Ef:
CO
NP:
NS:
V O:
VF:
ID:
IOFF:
フライバック電圧 Ef =
Np
× (Vo + VF )
Ns
1 次側の巻数
2 次側の巻数
出力電圧
ダイオードの順方向電圧降下
パワー MOSFET のドレイン電流
パワー MOSFET が OFF 時に 2 次側ダイオードに
流れる電流
CV: 電圧共振コンデンサ
LP: 励磁インダクタンス
VDS の自由振動のボトム点で、パワーMOSFET がターン ON することを、ボトムオンといい、図 7-11 に理想的
なボトムオン時の VDS 波形を示します。
擬似共振動作は、VDS のボトム点でターン ON するため、スイッチング損失、およびスイッチングノイズを低減
でき、高効率、低ノイズが実現できます。
VDS が自由振動の期間にターン ON させる遅延タイミングは、VDS 波形に同期した補助巻線電圧から作ります。
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Rev. 1.2
自由振動の半周期 tONDLY
t ONDLY ≒ π Lp × CV
EIN
VDS
D1
Ef
GND
C1
ボトム点
P
IOFF
Rs
GND
D2
1~4
D
ID
tON
8
PC1
VIN
GND
OCP/FB 端子
絶対最大定格
R6
CV
Vth(2)
Vth(1)
D
R3
D4
OCP
/FB
S
OCP/FB
端子電圧
D3
STR-L400
推奨電圧
3.2~3.6V
C2
R2
6
9
GND
7,10 R4
C5
C3
R OCP
GND
図 7-11 理想的なボトムオン:VDS 電圧共振波形のボトム点でターン ON
図 7-12 擬似共振と遅延回路
図 7-12 の、補助巻線 D と OCP/FB 端子間の D3、D4、R3、C3 が遅延回路になります。
パワーMOSFET のターン OFF 後、補助巻線電圧により、OCP/FB 端子電圧が OCP/FB しきい電圧 2 Vth(2)=
1.5V(TYP)以上になると、IC 内部の INH コンバレーターが動作し、OCP/FB 端子しきい電圧 1 Vth(1)= 0.76V(TYP)
に下がるまで、パワーMOSFET は OFF を継続します。
トランスのエネルギーが放出し終わると、補助巻線電圧は低下し始め、C3、C5 電圧は、IC 内部のアクティブロー
パスフィルタ回路と R4 の合成インピーダンスにより放電され、OCP/FB 端子電圧が Vth(1)以下になると、パワー
MOSFET はターン ON します。
この放電期間が遅延時間になります。遅延時間は、動作波形を観測しながらボトムオンになるように、C3 を
調整します。Vth(1)と Vth(2)の電圧差、およびアクティブローパスフィルタ回路により、擬似共振動作の誤動作を
防止しています。
OCP/FB 端子の擬似共振信号電圧が、
低すぎる場合
電源起動時に、PRC 動作⇒擬似共振動作の切換わりが遅くなり、出力電圧の立上りが遅れ、VIN 端子
電圧が動作電源停止電圧 VIN(OFF)まで低下すると、起動不良が生じます。
高すぎる場合
電源起動時に、誤動作により高周波でパワーMOSFET が ON / OFF 動作する場合があります。パワー
MOSFET の損失が過大になり、チャネル温度を超えると、パワーMOSFET はダメージを受けます。
大きなリンギング波形を含んでいる場合
図 7-13 のように、トランスの結合が悪い場合の
BD 端子波形を示します。
Vth(2)= 1.5V(TYP)
Vth(1)= 0.76V(TYP)
0V
図 7-13 トランスの結合が悪い場合の OCP/FB 端子波形
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STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
Rev. 1.2
1 次巻線と 2 次側制御巻線の巻数比(NP/NS)が極端に大きい場合(低圧大電流負荷仕様)など、パワー
MOSFET がターン OFF する際に、補助巻線を介して OCP/FB 端子電圧にもサージ電圧が発生する場
合があり、リンギング波形を擬似共振信号の入力と認識し、高周波でパワーMOSFET が ON / OFF 動作
する場合があります。このとき、パワーMOSFET の損失が過大になり、チャネル温度を超えると、パワー
MOSFET はダメージを受けます。
このような高周波動作が生じた場合は、R4、C5 を OCP/FB 端子-GND 端子の近くに接続する、
OCP/FB 端子-GND 間のパターンループを大電流パターンと離す、1 次巻線と補助巻線の結合が低く
なる巻き方にする、クランプスナバの定数調整を行うなど、高周波動作が生じない調整が必要です。
なお、OCP/FB 端子の動作波形を確認するプローブは、OCP/FB 端子、GND 端子近くに接続します。
OCP/FB 端子の擬似共振信号電圧の調整は、
遅延回路の選択
・電源仕様により、“7.4 遅延回路の種類”項から選択します。
以下の調整は、“7.4 遅延回路の種類”項の回路例 B(最も応用範囲が広い基本回路)を使った場合で説明
します。
擬似共振信号電圧の振幅、有効期間
・図 7-14 に推奨波形を示します。
・R3 の設定方法
擬似共振動作時の R3 に流れる電流 Is は、OCP/FB 端子電圧の推奨値を 3.4V とすると、R4 とアク
ティブローパスフィルタ回路の定電流 1.35mA が接続されるため、次式(1)になります。なお、ROCP は
R4 より極めて小さいため、無視できるので計算式には入れていません。
3.4V
+ 1.35mA
R4
VD- 3.4V- 2 × VF
R3 =
IS
Is =
------(1)
ここで、VD は、補助巻線電圧、VF は D3、D4 の順方向電圧降下≒0.7V
擬似共振信号の調整は、以下を考慮して、R3 を決めます。
・振幅は、AC 入力電圧 MIN、PO=MAX 時に、3.2V~3.6V に調整します。
OCP/FB 端子電圧は絶対最大定格 6V 以下の設定が必要です。
・有効期間は、AC 電圧 MIN、PO=MIN 時に、Vth(2)= 1.7V(MAX)になる時間を、1µs 以上にします。
短い場合は、スイッチング周波数が高い電源仕様の場合に擬似共振動作が追従できなくなることがあ
ります。有効期間が調整できない場合は、“7.4 遅延回路の種類”項の回路例 D の検討や、トランスの
インダクタンスを増やしてスイッチング周波数を下げるなどの検討が必要です。
なお、ノイズなどによる誤動作がないことや、図 7-15 のように、電源起動時の PRC 動作期間は、OFF 時間が約
50µs で動作している確認が必要です(OCP/FB 端子にノイズが入ると OFF 時間が短くなります)。
推奨振幅
3.2V~3.6V
1µs 以上
tOFF1≒50µs
tOFF2≒50µs
Vth(2)=1.7V(MAX)
Vth(1)=0.76V(TYP)
図 7-15 電源起動時のドレイン電流波形
図 7-14 OCP/FB 端子電圧波形
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STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
VDS のボトム点の調整方法は、VDS、VOCP/FB(OCP/FB 端
子電圧)、ID の実働波形を観測し、図 7-16 に示す理想的な
ボトムオン(VDS のボトム点でターン ON)になるように、C3 を
調整し、遅延時間 tONDLY を調整します。
Rev. 1.2
理想的なボトムオン
ターン ON がボトム点に
合わない場合の調整
図 7-16 ボトムオン設定
AC 入力電圧 MAX、Po=MAX 時に、ターン ON がボトム点より早い場合(図 7-17)
初期接続してある C3 の容量を増やし、ボトム点を確認しておき、ターン ON が VDS のボトム点と一致す
るように調整します。
AC 入力電圧 MAX、Po=MAX 時に、ターン ON がボトム点より遅い場合(図 7-18)
初期接続してある C3 の容量でボトム点を確認しておき、C3 の容量を減らし、ターン ON が VDS のボトム
点と一致するように調整します。
自由振動周波数 fR
fR ≒
ターン ON がボトム点より
ターン ON がボトム点より
早い
遅い
1
2π Lp × CV
VDS
ボトム点
ボトム点
IOFF
ID
tON
tON
VOCP/FB
Vth(2)
Vth(1)
補助巻線電圧
GND
図 7-17 ターン ON が VDS 波形のボトム点
図 7-18 ターン ON が VDS 波形のボトム点
より早い場合
より遅い場合
調整時、ターン ON が VDS のボトム点に合わない場合は、図 7-16 の“ターン ON がボトム点に合わない場合の
調整”のように、ボトム点より手前に設定します。ボトム点の後に設定すると発振が不安定になる場合があります。
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STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
7.4
Rev. 1.2
遅延回路の
遅延回路の種類
遅延回路の構成を、図 7-19 に示します。
回路例 A
部品点数が少なく、サージ電圧の減衰効果が最も高い回路です。
ただし、R3 の損失が大きくなるため、C3 の容量を大きくできず、自由振動周波数の高い電源、またはナロー
入力電源には適しません。
回路例 B
回路例 A に比べ、遅延時間を長く設定できます。
サージ電圧の減衰効果が高く、最も応用範囲が広い、標準回路です。
回路例 C
R3´によって C3 の電荷が放電されるため、フィードバック電流による遅延時間の変化が少ない回路です。
負荷急変、入力電圧急変が大きい場合や、遅延時間の調整範囲が広く必要なワイド入力電源に適します。
R3´によって、R3 に流れる電流がバイパスされるため、R3 の値を補正する必要があります。
回路例 D
部品点数が最も少なく、スイッチング周波数は 300kHz 程度まで追従ができます。
ただし、遅延時間の調整はできません。
自由振動周波数の 1/2 と遅延時間が一致する場合( π LP × CV ≒1.5µs 程度)や、パワーMOSFET の
ターン ON するタイミングは、ずれるが、スイッチング損失が多少増加しても問題にならない場合に適し、
出力電力の小さい AC100V 系電源や、クランプスナバがあり、自由振動周波数が高く、出力電力の小さ
いワイド入力電源などに適します。
補助巻線
補助巻線
補助巻線
補助巻線
D3
D3
D3
D4
R3
OCP/FB
R3
D4
OCP/FB
C3
回路例B
R3'
回路例C
図 7-19 遅延回路の種類
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R3
OCP/FB
C3
回路例A
D4
Page.16
R3
OCP/FB
C3
回路例D
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7.5
Rev. 1.2
ラッチ回路
ラッチ回路
ラッチ回路は、過電圧保護(OVP)、過熱保護(TSD)回路の各動作時に、ラッチモードでスイッチング動作を
停止させます(ラッチオフ)。
Vcc
ラッチ回路が動作し、スイッチング動作が停止すると、VIN 端
子電圧は下降し始め、VIN 端子電圧が VIN(OFF)=10.1V(TYP)ま
17.6V
で低下すると、回路電流は 50µA 以下になり、VIN 端子電圧は
(TYP)
上 昇 を 始 め ま す 。 そ の 後 、 動 作 開 始 電 源 電 圧 VIN(ON)=
17.6V(TYP)に達すると、回路電流が増加するため、VIN 端子
10.1V
(TYP)
電圧は低下し、図 7-20 のように、ラッチ回路動作時の VIN 端子
回路電流小
電圧波形は、10.1V(TYP) と 17.6V(TYP)間を上下する動作
回路電流大
になり、VIN 端子電圧の異常な上昇を防止します。
ラッチ回路保持電流 IIN(H)は、VIN= 9.8V(TYP)時、70µA
(MAX)ですが、マージンを考慮し、100µA 以上流せる起動
時間
抵抗 RS を設定します。
図 7-20 ラッチ時の VIN 端子電圧波形
ラッチ回路の解除は、AC 入力をオフし、VIN 端子電圧が
VIN(La.OFF)= 7.9V(MIN)以下に下がると解除します。
7.6
過電圧保護機能(
)
過電圧保護機能(OVP)
VIN 端子-GND 端子間に、OVP 動作電源電圧 VIN(OVP)= 25.5V(TYP)以上の電圧が印加されると、過電圧
保護機能が動作し、ラッチモードでスイッチング動作が停止します。
VIN 端子電圧がトランスの補助巻線から供給される場合は、VIN 端子電圧が出力電圧に比例するため、出力
電圧検出回路オープン時などの 2 次側過電圧を検出できます。
この場合、過電圧保護動作時の 2 次側出力電圧は次式(2)で概略計算できます。
VOUT ( OVP ) =
7.7
通常動作時出力電圧
× 25.5V(TYP)
通常動作時VIN端子電圧
------(2)
過熱保護機能(
)
過熱保護機能(TSD)
IC の制御回路部の温度が、熱保護動作温度 Tj(TSD)= 135℃(MIN)以上に達すると、ラッチモードでスイッチング
動作を停止します。
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Page.17
STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
Rev. 1.2
過電流保護機能(
)
過電流保護機能(OCP)
7.8
出力電圧 V OUT(V)
過電流保護回路(OCP)は、パワーMOSFET のドレイン電流ピーク値を、パルス・バイ・パルス方式により検出し、
電力制限します。
入力補正によりAC入力電圧による
パワーMOSFET のドレイン電流は、OCP/FB 端子
過電流点の差が低減される
と GND 端子間の電流検出抵抗 ROCP で検出され、
AC入力電圧
ROCP の 電 圧 降 下 が OCP/FB 端 子 し き い 電 圧
が高い場合
1Vth(1)= 0.76V(TYP) に 達 し た と き に 、 パ ワ ー
AC入力電圧
が低い場合
MOSFET はターン OFF します。
過負荷状態で出力電圧が低下すると、補助巻線電
圧も、それに比例して低下します。VIN 端子電圧が動
作停止電圧 VIN(OFF)以下になると、スイッチング動作が
停止し、回路電流が減少するため、VIN 端子電圧は上
昇を始め、動作開始電源電圧 VIN(ON)= 17.6V(TYP)
出力電流 IOUT(V)
に達すると、制御回路が再び動作する、UVLO による
図 7-21 出力過負荷特性
間欠動作になります。
なお、多出力巻線のトランスなどは結合が悪くなるため、過負荷状態で出力電圧が低下しても、補助巻線
電圧は低下せず、間欠動作にならない場合があります。この場合は、2 次側巻線と補助巻線の結合を上げた
トランス構造の検討などが必要です。
7.8.1 過電流入力補正
AC 入力電圧による過電流の補正は、図 7-22 の RA、RB、DZ により、入力電圧が高いときの過電流を早めに
動作させ、図 7-21 のように、入力電圧が低いときとの差を低減できます。
過電流入力補正は、入力電圧が高いとき、パワーMOSFET のドレイン電流ピークを低く抑えるため、トランス
から発生するサージ電圧が少なくなり、電源起動時、および過負荷時のパワーMOSFET と 2 次側整流ダイオー
ドのストレスを軽減できます。
R A 追加
Vin(AC)
C1
P
EIN
RB =
D
Dz追加
Vz=6.8V
D
1~4
STR-L400
6
S
OCP/FB 9
680
R4
C5
GND
R OCP
R B 追加
7,10
図 7-22 過電流入力補正回路
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Page.18
EIN(MAX -
) EIN(MIN )
IDP(MAX)
× 0.76V
IDP(MAX -
) IDP(MIN )
( 6.8V + 0.76V )
EIN(MIN )- (6.8V + 0.76V )
IDP(MAX)
IDP(MIN)
EIN(MIN)
EIN(MAX)
8
V IN
R A = 680Ω ×
:
:
:
:
Vin(AC)(MIN)、PO=MAX 時のドレイン電流
Vin(AC)(MAX)、PO=MAX 時のドレイン電流
Vin(AC)(MIN) 時の C1 電圧
Vin(AC)(MAX) 時の C1 電圧
STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
Rev. 1.2
8. 設計上の
設計上の注意点
8.1
外付け
外付け部品
各部品は使用条件に適合したものを使用します。
• 入力、出力の平滑用電解コンデンサは、リップル電流・電圧・温度上昇に対し、適宜、余裕を設けます。
また、スイッチング電源用の High-Ripple タイプ、低インピーダンスタイプの部品を使用します。
• トランス類は銅損・鉄損による温度上昇に対し、適宜、余裕を設けます。
• 電流検出用抵抗 ROCP は、高周波スイッチング電流が流れるので、内部インダクタンスの大きなものを使
用すると、誤動作の原因になります。内部インダクタンスが小さく、かつ、サージ耐量の大きなものを使用
します。
8.2
スイッチングスピードの
スイッチングスピードのコントロール
STR-L400 シリーズは、ソース端子(6 番ピン)が独立しているため、このピンにフェライトビーズ FB を挿入し、
スイッチングスピードを調整することにより、スイッチングノイズを低減できます。
フェライトビーズ FB を挿入すると、パワーMOSFET のターン ON 時だけでなく、ターン OFF 時のスイッチング
スピードが低下して、スイッチング損失が増える場合があります。
このため、図 8-1 に示すダイオード D6 を挿入することにより、ターン OFF 時のスイッチングスピードの低下を
防げます。挿入するダイオードは、高速で接合容量の小さい小信号用のスイッチングダイオードか、ショットキ
ーバリアダイオード(弊社製 AK03 など)を使用します。
STR-L400
OCP
GND
S
/FB
6
7,10
9
FB
追加
D6
R OCP
R4
C5
図 8-1 ソース端子-GND 端子間の挿入回路例
V6−10
図 8-2 6 番ピン―10 番ピン間電圧
スピードコントロール用のフェライトビーズ FB を挿入した場合は、
この分の電圧降下が発生するため、ソース端子(6 番ピン)-グランド端子(10 番ピン)間の電圧降下が増加して、
パワーMOSFET のゲート-ソース間の VGS 電圧が減少し、ドライブ電圧も低減します。
このため、パワーMOSFET の最大スイッチング電流※が減少するため、ソース端子-グランド端子間電圧を
測定し、製品仕様書に記載されている最大スイッチング電流ディレーティング曲線から、最大スイッチング電流
をディレーティングして使用する必要があります。
ソース端子(6 番ピン)-グランド端子(10 番ピン)間の電圧降下と最大スイッチング電流は、定常動作、およ
び過電流保護動作時に最大スイッチング電流ディレーティング曲線以下に入っている確認が必要です。
※ 最大スイッチング電流
IC 内部のドライブ電圧とパワーMOSFET の Vth により決定するドレイン電流です。パターンの引き回しな
どにより、ソース端子(6 番ピン)―グランド端子(10 番ピン)間に電圧降下が発生した場合は、図 8-2 の
V6-10 によって最大スイッチング電流は低下します、このため、製品仕様書に記載されている最大スイッ
チング電流ディレーティング曲線以下で使用する必要があります。
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STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
8.3
Rev. 1.2
トランス設計
トランス設計
ト ラ ン ス の 設 計 は 、 基 本 的 に RCC 方 式
(Ringing Choke Converter:自励式フライバック
コンバータ)の電源トランス設計と同じです。
ただし、擬似共振動作により、ターン ON が遅
延された分、Duty が変化するため、Duty の補
正が必要です。
D1
VAC
1 次巻線 NP と 2 次巻線 Ns の比より求めた
ON Duty を DON とすると、LP は次式(3)で求めら
れます。
T1
VOUT
PC1
Lp
Rs
D2
Z1
1~4
D
PC1
8
VIN
P
S
Np
Ns
C6
R9
D3
D
D4
S
9
GND
7,10
R4
R OCP
C5
(Ein( MIN ) ⋅ DON )2
 2 ⋅ PO ⋅ f O


+ Ein( MIN ) ⋅π⋅ f O ⋅ DON ⋅ Cv 

η1


C3
-------(3)
2
LP は下記の条件で算出します。
P O:
最大出力電力
fO:
最低発振周波数
η1 :
トランスの変換効率
DON:
Vin(AC)(MIN)時の ON Duty ⇒ DON =
Ef
Ein( MIN ) + Ef
Ein(MIN): Vin(AC)(MIN)時の C1 間電圧
Ef:
フライバック電圧 ⇒ Ef =
VF:
D5 の順方向電圧降下
Np
× (Vout + VF )
Ns
また、ドレイン電流ピーク IDP などの各パラメータは以下の式により算出されます。
t ONDLY =π LP × Cv
----- (4)
Don' = (1 − f O × t ONDLY ) × Don ---- (5)
PO
1
×
η2 Ein(MIN)
2 × Iin
=
Don'
Iin =
----- (6)
I DP
----- (7)
Np =
LP
AL − Value
Ns =
Np × (Vout + VF )
Ef
tONDLY:
Iin:
η2 :
----- (8)
----- (9)
遅延時間
平均入力電流
電源の変換効率
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IDP:
Don´:
Page.20
R8
Z2
R2
R3
STR-L400
OCP
/FB
R7
C7 R11
R10
GND
C2
R6
CV
6
LP =
D5
C1
スイッチング電流ピーク
補正後の ON Duty
STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
Rev. 1.2
NI-Limit(AT)
トランスフェライトコアの AL-Value 値は、NP と IDP から求まる NI-Limit(AT)の値を考慮し、磁気飽和を生じない
AL-Value 値を選定します。算出された NI-Limit 値(=IDP×NP)は、常に図 8-3 の NI-Limit vs. AL-Value 特性曲
線内(斜線)にあることが必要です。また、NI-Limit vs. AL-Value の関係を満足するフェライトコアを選ぶときは、
温度などのバラツキに対する設計マージンを考慮して、算出した NI-Limit 値がコアデータ上 NI-Limit に対して、
30%程度低くなるように設定することを推奨します。
磁気飽和点
磁気飽和マージン=30%程度
NI-Limit 選定ポイント例
AL-Value(nH/T2)
図 8-3 コアの NI-Limit vs. AL-Value 特性例
よって、NI-Limit は以下の式から飽和マージンを考慮した値で設定します。
NI = Np × I DP (130%)
----- (10)
また、補正後の ON Duty から最低発振周波数 fO は以下の式で算出されます。
2


 − 2 PO + 2 PO + 4 ×π× (Ein(MIN) × Don ) × Cv 


η1
η1
Lp

fO = 


2 × Ein(MIN) ×π× Don × Cv






2
----- (11)
トランスの巻線設計考慮点
スイッチング電流には高周波成分が含まれ、表皮効果が影響する場合があります。このためトランスに使用
する巻線の線径は、動作電流の実効値を考慮し、電流密度が 3~4A/mm2 前後を目安に選定します。なお、表
皮効果の影響などで、さらに温度対策が必要な場合は、巻線表面積を増加させるため、下記を検討します。
• 巻線の本数を増やす
• リッツ線を使用する
• 線径を太くする
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Page.21
STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
8.4
Rev. 1.2
位相補正
一般的なシャントレギュレータを使用した 2 次側エラーアンプ周辺部の回路構成を図 8-4 に示します。位相
補正用コンデンサ C7 の容量は 0.047µF~0.47µF 程度を目安に調整し、最終的に実働動作を確認して決定し
ます。
通常、STR-L400 周辺回路は、位相補正用の部品は必要ありません。ただし、出力負荷仕様が振幅の大き
なダイナミック負荷や、2 次側平滑コンデンサのリップル電圧が大きい場合は、2 次側の位相補正だけでは不
十分な場合があります、このときは、図 8-5 に示す C8、D6 を追加して、安定度の確認が必要です。
C8 は、0.01µ~0.1µF 程度が目安になり、C8 を追加した場合は、電流の逆流防止のため D6 を直列に追加し
ます。
動作不安定の場合に追加
D2
1~4
D
8
VIN
PC1
C8
C2
V OUT
D5
C6
CV
PC1
R7
R8
S
D6
STR-L400
D4
OCP
/FB
R11
S
R10
9
GND
6
Z2
R OCP
7,10
R4
C5
GND
図 8-4 シャントレギュレーター(Z2)周りの周辺回路
8.5
図 8-5 OCP/FB 端子周りの周辺回路
パターン設計
パターン設計
パターン配線および実装条件によって、誤動作・ノイズ・損
失などに大きな影響が現れるので、配線の引回し、部品配
置には十分な注意が必要です。
一般的に、図 8-6 のように高周波電流がループを作る部分
は、ラインパターンを“太く”、部品間の配線を“短く”、ループ
内面積が極力小さくなるようにし、ラインインピーダンスを下
げたパターン設計を行います。
また、アースラインは輻射ノイズにも大きな影響があるので、
極力“太く”、“短く”配線します。
スイッチング電源は、高周波、高電圧の電流経路が存在
するので、安全規格面を考慮した部品配置、パターン距離
が必要です。なお、MOSFET の ON 抵抗 RDS(ON)は、正の温
度係数のため、熱設計に注意します。
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D3
R3
R6
R9
C7
R2
Page.22
図 8-6 高周波電流ループ
(斜線部分)
C3
D
STR-L400 シリーズ アプリケーションノート
Rev. 1.2
IC 周辺回路の接続例を、図 8-7 に示します。
(1) ソース端子(S)回り(S 端子~ROCP~C1~T1(P 巻線)~D 端子)
このパターンは、スイッチング電流が流れる主回路パターンのため、極力、太く、短く配線します。IC と
入力電解コンデンサ C1 との距離が離れている場合は、高周波電流ループのインピーダンスを下げる
ため、トランスまたは IC の近くに、電解コンデンサまたはフィルムコンデンサ(0.1µF 程度 / 印加電圧
に適した耐圧品)を追加します。
(2) GND 端子回り(GND 端子~C2(−側)~T1(D 巻線)~R2~D2~C2(+側)~VIN 端子)
このパターンも、極力、太く、短く配線します。
IC と電解コンデンサ C2 との距離が離れている場合は、VIN 端子と GND 端子の近くにフィルムコンデンサ
(0.1µF~1.0µF 程度/ 50V)を追加します。
(3) 電流検出用抵抗 ROCP 周り
ROCP は、ソース(S)端子の近くに配置します。
共通インピーダンスやスイッチング電流が制御回路へ影響を与えることを避けるため、主回路系と制御
系グランドは ROCP 近傍で接続、ROCP から専用パターンで GND 端子へ接続します(図 8-7 の A 点)。
2 次側整流パターン接続例を、図 8-7 に示します。
(1) 2 側整流平滑回路(T1(S 巻線)~D3~C7)
このパターンは、極力、太く、短く配線します。整流パターンが細く、長い場合、パターンに寄生するリー
ケージインダクタンス成分が増加し、パワーMOSFET のターン OFF 時のサージ電圧が増加します。
2 次側整流パターンを考慮したパターン設計は、パワーMOSFET の耐圧マージンを広くとれる、および
クランプスナバ回路へのストレスや損失の軽減が可能です。
クランプスナバ
T1
D5
P
C1
STR-L400
D2
PC1
Z1
1 2 3 4
D
8
VIN
C2
S
R2
D3
C6
D
R3
R6
CV
Cont. O.C.P
D4
/F.B
主回路パターン
制御系 GND パターン
二次側整流パターン
9
6
C3
GND GND
S
7
10
R4
R OCP
C5
A
C11
図 8-7 周辺回路の接続例
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Page.23