参考回路:日本語版

日本語参考資料
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回路ノート
CN-0267
使用/参考にしたデバイス
Circuits from the Lab™ 実用回路は今日のアナログ・ミック
スド・シグナル、RF 回路の設計上の課題の解決に役立つ
迅速で容易なシステム統合を行うために作製、テストされ
ました。詳しい情報と支援については
www.analog.com/jp/CN0267 をご覧ください。
実用回路集
ADuCM360
低消費電力の高精度アナログ・マイクロ
コントローラ
AD5421
16 ビット、ループ電源の 4 mA~20 mA
DAC
AD5700
低消費電力 HART モデム
HART インターフェースを備えたフル機能の 4 MA~20 MA ループ電源フィールド計測器
(FSK)で信号を変調します。これによって、リモート・キャリ
ブレーション、故障の取調べ、プロセス変数の送信など、温度制
御や圧力制御等のアプリケーションに必要な機能を実現するこ
とができます。
評価と設計支援
回路評価用ボード
CN0267 回路評価用ボード(DEMO-AD5700D2Z)
設計および統合ファイル
回路図、レイアウト・ファイル、BOM、コード例
この回路は、HCF( HART Communication Foundation)による適
合試験と検証が行われた、登録済みの回路です。正式に登録さ
れているため、この回路のコンポーネントの一部もしくはすべて
を安心して回路設計にご利用いただけます。
回路の機能と利点
図 1 に示す回路は、4 mA~20 mA のアナログ出力と HART®
(Highway Addressable Remote Transducer)インターフェースを備
えた、スマート機能搭載の工業用ループ電源フィールド計測器の
全体像です。HART はデジタル双方向通信方式で、標準の 4 mA~
20 mA アナログ電流信号上で、1 mAp-p の周波数シフトキー
この回路は、ADuCM360(超低消費電力の高精度アナログ・マイ
クロコントローラ)、AD5421(16 ビットの 4 mA~20 mA ループ
電源 D/A コンバータ(DAC))、AD5700(業界で最も消費電力
が少なく最も小型の HART 対応 IC モデム)を使用しています。
AD5421
1.6Ω
L*
10µF
PRIMARY
SENSOR
10µF
10µF
20MΩ
0.1µF
VREF–
GND_SW
AVDD
1kΩ
AIN4
IEXC
0.1µF
1kΩ
PT100 1kΩ
0.01µF AIN3
0.1µF
AIN2
1kΩ
0.1µF
0.47µF
SYNC
SCLK WATCHDOG
TIMER
SDIN
SDO
LDAC
COM
50Ω
LOOP–
L*
LOOP–
CIN
DVDD
4.7V
LOW LEAKAGE
470Ω
0.47µF
AD5700
1µF
VCC
0.068µF
HART_OUT
0.22µF
XTAL1
ADC1
AGND
SOUT
SIN
P0.5
P0.4
EXPOSED
PAD
AGND
DGND
AIN7
SPI INTERFACE
3.8664MHz
0.01µF
RREF
5.62kΩ
10ppm
CS0
SCLK0
CORTEX
MOSI0
M3
MISO0
+
SRAM
FLASH
AVDD_
+
REG
DMA
UART
SPI
DVDD_
I2C
REG
CLOCK
RESET
WATCHDOG
4700pF
TVS
40V
LOW
LEAKAGE
10µF
DAC
ADC0
AIN1
1MΩ
TEMPERATURE
SENSOR
REFOUT1
REFOUT2 VREF
0.01µF
SECONDARY
SENSOR
1kΩ
ADC
10µF
IOVDD
0.01µF AIN0
0.1µF
LOOP+
VREF
UART INTERFACE
REF
XTAL2
TXD
RXD
CD
ADC_IP
RTS REG_CAP
DGND
AGND
1µF
1µF
1.2MΩ
300pF
1.2MΩ
150kΩ
150pF
10551-001
1kΩ
L*
REGIN
VLOOP
DVDD
VREF+
1kΩ
VOLTAGE
REGULATOR
10µF
DVDD
ADuCM360
AVDD
REGOUT
10Ω
NOTES
1. L* = FERRITE BEAD, 0.3Ω @ DC, 1kΩ @ 100MHz.
2. THE ADuCM360 EXPOSED PAD IS CONNECTED TO DGND.
図 1.
HART インターフェースを備えた 4 mA~20 mA ループ電源フィールド計測器(簡略図:接続とデカップリングはすべて省略)
アナログ・デバイセズ社は、提供する情報が正確で信頼できるものであることを期していますが、その情報の利用に関して、あるいは利用に
よって生じる第三者の特許やその他の権利の侵害に関して一切の責任を負いません。また、アナログ・デバイセズ社の特許または特許の権利
の使用を明示的または暗示的に許諾するものでもありません。仕様は、予告なく変更される場合があります。本紙記載の商標および登録商標
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CN-0267
回路ノート
デジタル・データ処理、アルゴリズム、通信
回路の説明
すべてのフィールド計測器のデジタル機能は ADuCM360 の
32 ビット ARM Cortex™ M3 RISC プロセッサが提供します。この
プロセッサには、128 k バイトの不揮発性フラッシュ/EE メモリ、
8 k バイトの SRAM、そして有線(2×SPI、UART、I²C)通信ペリ
フェラルに対応した 11 チャンネルのダイレクト・メモリ・アク
セス(DMA)コントローラが組み込まれています。
アナログ・フロントエンド・インターフェース
ADuCM360 アナログ・フロントエンドには、2 個の高性能 24 ビッ
ト・シグマ・デルタ(ΣΔ)A/D コンバータ(ADC)が組み込ま
れています。また、そのほかにも、プログラマブル・ゲイン計装
アンプ、高精度バンドギャップ・リファレンス、プログラマブル
電流ソース、プログラマブル・マルチプレクサなど多くの機能が
組み込まれています。このフロントエンドを使用すれば、圧力セ
ンサー・ブリッジ、抵抗温度センサー、熱電対といった複数のア
ナログ・センサーや、工業用に使われているその他さまざまなタ
イプのセンサーに直接接続することができます。
デモ・ソフトウェアは、初期化と設定、アナログ入力からのデー
タの処理、アナログ出力の制御、HART 通信を行います。
アナログ出力
AD5421 は、低消費電力の高精度 16 ビット DAC と、4 mA~20 mA
のループ電源を使用する出力ドライバを内蔵しており、フィール
ド計測器のアナログ出力に必要な、あらゆる機能を提供します。
図 1 に示す回路は、プライマリにブリッジタイプのセンサーとセ
カンダリに抵抗タイプの温度センサーの接続例を示しています
が、フレキシブルな ADuCM360 フロントエンドを使用すれば、
ほかにもさまざまな構成が可能であり、あらゆるタイプの高精度
アナログ・センサー・アプリケーションに対応することができま
す。
AD5421 は、SPI インターフェース経由で ADuCM360 コントロー
ラに接続します。
AD5421 には、4 mA~20 mA のループに関係するさまざまな診断
機能も含まれています。補助 ADC は、 VLOOP ピンに接続した
20 MΩ/1 MΩ 抵抗分圧器経由で、計測器のループ端子の電圧を測
定することができます。また、この ADC は、組込みセンサー経
由でチップ温度を測定することもできます。ADuCM360 コント
ローラは AD5421 のすべての診断を設定して読み出すことがで
きますが、AD5421 を自律的に動作させることもできます。
プライマリセンサー入力
ADuCM360 オンチップ ADC(ADC0)はフィールド計測器の
プライマリセンサーの測定を行います。これは、図 1 ではブリッ
ジ・トランスデューサとして示されています。センサーは、シス
テムの電磁干渉耐性を改善するために、RC フィルタ・ネットワー
ク経由でアナログ入力ピン AIN0 と AIN1 に接続します。フィル
タのコモンモード帯域幅は約 16 kHz で、差動モード帯域幅は 800
Hz です。
一例を挙げると、コントローラと AD5421 間の通信に失敗した場
合、所定の時間が経過すると、AD5421 は、そのアナログ出力を
自動的に 3.2 mA のアラーム電流に設定します。このアラーム電
流は、フィールド計測器が正常に動作しなかったことをホストに
知らせます。
ADuCM360 の VREF+および VREF電圧リファレンス入力はブ
リッジの励起電圧を検出し、これによってレシオメトリックモー
ドで回路を動作させ、センサーの電源電圧の厳密な値に左右され
ることなく測定できます。オンチップ・グラウンド・スイッチは
ブリッジ電源を動的に分離でき、必要に応じてアプリケーション
の消費電力を低減します。
HART 通信の乱れを防ぐために、出力電流の値が別の値へ変化す
るときいかなる変化もすべてソフトウェアが制御します(「アナ
ログ変化率」の項を参照)。
HART 通信
セカンダリセンサー入力
AD5700 は、フル機能の HART FSK モデムを内蔵しています。こ
のモデムは標準 UART インターフェース経由で ADuCM360 コン
トローラに接続し、送信要求(RTS)信号とキャリア検出(CD)
信号が供給されます。
この回路は、白金(Pt)の 100 Ω 測温抵抗体(RTD)をセカンダ
リセンサーとして使用しています。RTD はプライマリセンサー
の温度を検出できるため、必要に応じてプライマリセンサーの温
度補正を行うことができます。
HART 出力は 0.068 µF/0.22 µF の容量分圧器によって必要な振幅
にスケーリングされて AD5421 の CIN ピンに送られます。
ここで、
DAC 出力と結合し、出力電流を駆動して変調します。
ADuCM360 のプログラマブル電流源は、AIN4 ピン経由で RTD
に電流を供給します。ADuCM360 の ADC1 は、差動入力設定の
AIN3 ピンと AIN2 ピンを使用して、RTD の電圧を測定します。
RTD を流れる電流の正確な値は精密抵抗(PREF)によって検出
され、AIN7 ピンを使用して ADC1 が測定します。ADC1 は、オ
ンチップのバンドギャップ電圧リファレンスを使用します。
HART 入力は、簡単なパッシブ RC フィルタ経由で LOOP+から
AD5700 の ADC_IP ピンに送られます。RC フィルタは HART 復
調器の第 1 段バンドパス・フィルタとして機能するほか、システ
ムの電磁干渉耐性を向上させます。これは、過酷な工業環境下で
使用される堅牢なアプリケーションにとって重要です。
AD5700 低電力発振器は、3.8664 MHz の外部水晶発振器を直接
XTAL1 ピンと XTAL2 ピンに接続して、HART モデムのクロック
を生成します。
- 2/ -
CN-0267
回路ノート
AD5700 HART モデムの電源は、追加の RC フィルタ(470 Ω/1 µF)
を介して供給されます。ループ電源を使用するアプリケーション
では、このフィルタは非常に重要であり、これによって AD5700
から発生する電流ノイズが 4 mA~20 mA のループ出力に入り込
まないようにします。このノイズを防止しないと、HART 通信に
悪影響が出ます。4 mA~20 mA ループのノイズ性能は、サイレ
ンス・テスト時における HART の帯域内ノイズによって知るこ
とができます。AD5700 モデムは、8.2 pF の接地コンデンサを
XTAL1 ピンと XTAL2 ピンに接続して外付けの水晶発振器を使
用します。これは、消費電力を最も小さくする方法です。
出力保護
過渡電圧サプレッサ(TVS)は、4 mA~20 mA HART インター
フェースを過電圧から保護します。その電圧定格は、REGIN ピン
の電圧が AD5421 の絶対最大電圧 60 V を超えないようにする必
要があります。TVS のリーク電流は、電流出力の精度に影響する
おそれがあります。したがって、この部品を選ぶときは、所定の
ループ電圧と温度範囲におけるリーク電流に注意する必要があ
ります。
ディプリーション型 FET を外付けして使用すれば、AD5421 の
ループ電圧を最大まで高めることができます。
ADuCM360 は極めて柔軟な内部パワーマネジメント機能を備え
ており、すべての内部ブロックに電源とクロックを提供するさま
ざまなオプションを選択できます。ソフトウェアを利用すれば、
特定の計測器アプリケーションに要求される機能と性能と電力
の最適なバランスを実現することができます。ADuCM360 の製
品ページと、アプリケーション・ノート AN-1111 を参照してく
ださい。
回路は、ループ出力と直列に接続した 2 個のダイオードによって
逆極性に対して保護されています。
ループと直列に配置したフェライトビーズは、4700 pF のコンデ
ンサとともにシステムの EMC 性能を改善します。HART ネット
ワークの仕様の関係上、ループ端子間にこれより大きい容量を使
わないようにする必要があります。
低リークの 4.7 V ツェナー・ダイオードは、AD5421 の COM ピン
と LOOPピンの間に誤って外部電圧がかかった場合に(たとえ
ば ADuCM360 をプログラムしているときや回路のデバッグを
行っているとき)、AD5421 のオンチップ 50 Ω ループ検出抵抗
を保護します。
電源ノイズを最小限に抑えて低電圧センサー信号に関する性能
を向上させるために、アナログ・フロントエンドの AVDD への
電源は別のフィルタ(10 µF/フェライトビーズ/1.6 Ω/10 µF)から
供給します。
電源とパワーマネジメント
センサー駆動電流を含むフィールド計測器の回路は、その全体が、
4 mA~20 mA のループからの限られた量の電源で動作しなけれ
ばなりません。これは、ループ電源を使用するあらゆるフィール
ド計測器に共通する課題です。図 1 に示す回路例は、低消費電力
と高性能の両方を実現するソリューションです。このアプリケー
ションに使われている 3 つの IC はすべて低消費電力設計であり、
IC の内蔵機能を利用するこの回路は、柔軟なパワーマネジメン
ト構造と最適なループ電源ソリューションを実現します。
AD5421 は 4 mA~20 mA のループ電圧を電源に使用し、ほかの回
路に安定した低電圧を提供します。AD5421 の REGOUT 電圧は、
回路の要求に応じ、ピンにより 1.8 V~12 V の範囲でプログラム
できます。図 1 の回路では、使用入力センサー用の例として 3.3 V
の電源電圧を使用しています。しかし、ADuCM360 と AD5700
の電源電圧範囲はさらに広いため、アプリケーションに合わせて
異なる電源電圧を使用することができます。
ADuCM360 の GND_SW グラウンド・スイッチ・ピンはプライマ
リ、センサーの励起/電源を制御します。計測器の起動時は、ス
イッチ・オフがデフォルトです。このデフォルト設定により、適
切な電源モードを含め、システムを完全に設定してから初めてセ
ンサーがオンになり、それによって、4 mA~20 mA ループ出力
におけるパワーアップ時のスパイクを抑えます。
同様に、2 次センサーの電源は ADuCM360 のプログラマブル電
流源から供給されるため、ソフトウェアによって完全に制御でき
ます。
ADuCM360 用ソフトウェア
回路の機能と性能をデモする基本的なコード例は、CN-0267 設計
支援パッケージに含まれています。
このコード例には、ハードウェアの機能と能力を示すための基本
的な HART スレーブ・コマンド応答が含まれています。ただし、
このコード例には HART 通信のプロトコル層は含まれていませ
ん。
REGOUT RC フィルタ(10 µF/10 Ω/10 µF)は、ループからセンサー
のアナログ・フロントエンドに干渉しないようにします。また、
回路、特にコントローラやデジタル回路から発生する干渉がルー
プに逆流することも防止します。これは、信頼性の高い HART
通信を実現する上で重要です。
バリエーション回路
ADuCM360 には非常に柔軟な高性能のアナログ・フロントエン
ドが組み込まれており、12 本のアナログ入力ピンと、電圧リファ
レンスおよびグラウンド・スイッチ用の追加ピンを備えています。
そのため、抵抗ブリッジ・センサー、抵抗温度センサー、熱電対
など、タイプの異なる複数のアナログ・センサーに直接接続する
ことができます。したがって、このフィールド計測器ソリュー
ションはほとんどあらゆるセンサー・フィールド計測器に使用で
きる為、温度補正型の圧力測定だけに限定する必要はありません。
アナログ・フロントエンドに必要なシグマ・デルタ(ΣΔ)ADC
が 1 つだけのアプリケーションでは、ADuCM360 の代わりに
ADuCM361 を使用することができます。ADC が 1 つだけである
点を除けば、ADuCM361 は ADuCM360 のすべての機能を備えて
います。
- 3/ -
CN-0267
回路ノート
トランジスタを外付けした ADuCM361 のオンチップ DACを使用
すれば、4 mA~20 mA ループを制御できます。詳細については
CN-0300 を参照してください。
回路評価とテスト
回路ハードウェア
AD5421 は、保護機能を介して直接ループに接続できます。ある
いは、図 2 に示すように、AD5421 とループ電源の間にディプリー
ション型 N チャンネル MOSFET を接続することができます。こ
の構成で追加 MOSEFT を使用すれば AD5421 の電圧降下が約 12
V になり、AD5421 パッケージで消費する電力が減少するため、4
mA~20 mA アナログ出力の精度が向上します。また、ループ内
で許容できる最大電圧が MOSFET の定格レベルまで増大します。
追加の MOSFET が HART 通信に影響を与えることはありません。
LOOP+
10551-003
L
図 1 に示した回路は、図 3 に示す DEMO-AD5700D2Z PC ボード
に搭載されています。
DN2540
BSP129
AD5421
REGIN
200kΩ
図 3. DEMO-AD5700D2Z PC ボード(圧力センサーは含まれていま
せん)
4700pF
DRIVE
20MΩ
VLOOP
DEMO-AD5700D2Z 回路基板には、システム評価を容易にするた
めの追加機能がいくつか含まれています。0.1 インチ・ピッチの
コネクタを使用しているため、オプションでプライマリセンサー
とセカンダリセンサーを接続できます。また、HART 適合テスト
に必要な HART RTS および CD 用のテスト・ポイントが設けられ
ています。
TVS
40V
LOW
LEAKAGE
1MΩ
COM
4.7V
LOW
LEAKAGE
LOOP–
TO
HART
INPUT
FILTER
10551-002
L
LOOP–
図 2. AD5421 のループ電源に接続した MOSFET
この回路では、AD5700 を 3.8664 MHz の水晶発振器とともに使
用しています。これは消費電力を最も低く抑えることができる構
成 で す。 ある いは 、 精 度 0.5 %の 内 部 発 信器 を組 み込 んだ
AD5700-1 を使用することもできます。内部発信器を使用すると、
水晶発振器の場合と比較してモデムの電源電流が最大 225 µA ま
で増加しますが、外付けの水晶発振器が不要になるためコストを
削減でき、ボードの使用面積も少なくなります。
ループ電源を使用しないアプリケーションには、4 mA~20 mA
DAC としては AD5410、AD5420、AD5422、AD5755 が最適です。
DEMO-AD5700D2Z のエッジにあるコネクタを使用すれば、
ADuCM360 のシングルワイヤと UART でダウンロード/デバッ
グ信号にアクセスできるため、ソフトウェアの開発、コードのダ
ウンロード、回路内でのデバッグやエミュレーションが容易にな
ります。このコネクタと、DEMO-AD5700D2Z ボードに同梱され
ている小型のヘッダー・エクステンダは、EVAL-ADuCM360QSPZ
評価キットなど、アナログ・デバイセズの Cortex-M3 をベースと
した すべての開 発ツ ールに 使用で きます(評 価キットは、
DEMO-AD5700D2Z ボードには含まれていません)。
これらの機能は図 1 の簡略図には含まれていませんが、CN-0267
設計支援パッケージの完全な回路図には示されています。この設
計支援パッケージにはフィールド計測器の完全な C コード例も
含まれており、このコードを使用すれば、回路に含まれるすべて
のハードウェア・ブロックと機能のあらゆる検証と評価、および
HART インターフェース機能の一部の検証を行うことができま
す。HART インターフェースの仕様とリソースの詳細については、
HCF(HART Communication Foundation)にお問い合わせくださ
い。
HART 仕様への適合性
DEMO-AD5700D2Z は、HART 物理層テスト仕様(HCF_TEST-2、
Revision 2.2)に指定された方法と装置を使用して、HART FSK
物理層仕様(HCF_SPEC-054、Revision 8.1)への適合性が確認さ
れています。ボードは HCF に提出され、正式に登録されていま
す。
登録された回路は、HFC(HART Communication Foundation)の
ウェブサイトの製品カタログに DEMO-AD5700D2Z という製品
名で掲載されています。
2 つのテストの結果は、サイレンス・テスト時の出力ノイズとア
ナログ変化率に関わるものでした。
- 4/ -
CN-0267
回路ノート
ハードウェア・スルーレートの制限は、AD5421 の CIN ピンに接
続した容量によって設定します。アナログ出力電流値に大きなス
テップ変化が求められる場合は、ADuCM360 のソフトウェアが、
AD5421 DAC に送られる出力電流変化を複数の小さな後続ス
テップに分割します。
サイレンス・テスト時の出力ノイズ
HART デバイスが送信を行っていない(サイレンス)ときは、ネッ
トワークにノイズが混入しないようにする必要があります。過度
のノイズは、そのデバイス自体の HART 信号受信、またはネッ
トワーク上のほかのデバイスの信号受信を妨げる恐れがありま
す。
このテストは、HCF_TOOL-31 フィルタを介して 500 Ω 負荷に接
続したオシロスコープを使用して行いました。
ループ内にある 500 Ω 負荷の両側で測定した電圧ノイズに含ま
れる広帯域ノイズと相関ノイズの合計は、HART の拡張周波数帯
域において 2.2 mV RMS を超えてはなりません。さらに、HART
拡張周波数帯域外でも 138 mV RMS を超えないようにする必要が
あります。
ノイズは、True-RMS メーターを使用し、500 Ω 負荷の両側で測
定しました。このノイズは、帯域外ノイズについては直接測定し、
帯域内ノイズについては HCF_TOOL-31 フィルタを通して測定
しました。また、ノイズ波形を確認するためにオシロスコープも
使用しました。
結果を図 5 に示します。波形 CH1 は 4 mA と 20 mA の間の周期
的なステップを示しています。これは、500 Ω 負荷の両側で直接
測定したものです。波形 CH2 は、HCF_TOOL-31 フィルタ出力か
ら取り込んだ信号で、ピーク値 150 mV の制限値内で 10 倍に増
幅されています。
ノイズは不利な条件、つまり 4 mA 出力電流で測定しています。
測定したノイズ波形を図 4 に、結果の概要を表 1 に示します。
MEASURE
CH1
p-p
44.8mV
CH1
CYC RMS
4.64mV?
CH1
NONE
CH1
NONE
CH1 20.0mV BW
M 100ms
CH1
–8.00mV
<10Hz
回路の消費電力
回路の消費電力性能の評価には、2 つの方法を使用しました。
10551-004
CH2
OFF
NONE
図 5. アナログ変化率の波形
1 つは、AD5421 の内蔵電圧レギュレータの出力を測定する方法
です。
図 4. サイレンス・テスト時の出力ノイズ波形
4 mA の最小アナログ出力電流と 0.5 mA ピークの HART 出力 AC
変調を考慮すると、ノーマル・モード動作における回路の最大消
費電流は 3.5 mA 未満でなければなりません。AD5421 自体の動作
には最大 0.3 mA の電流が必要です。したがって、AD5421 の
REGOUT 出力として使用できる最大電流は約 3.2 mA になります。
表 1. サイレンス・テスト時の出力ノイズ
Output Noise
Measured
(mV)
Required
(mV)
Outside Extended Frequency Range
Inside Extended Frequency Range
4.13
1.03
<138
<2.2
アナログ変化率テスト
この仕様は、デバイスがアナログ出力電流を安定化するときに、
アナログ電流の最大変化率が HART 通信と干渉しないようにす
るものです。電流のステップ変化は HART の信号生成を妨げま
す。
最悪時のアナログ出力電流の変化は、HART の拡張周波数帯域に
おいて 500 Ω 負荷の両側で測定したときに、ピークで 15 mV を
超える擾乱を発生しないものでなければなりません。
回路内の測定を容易にするために、DEMO-AD5700D2Z には、
REGOUT 出力フィルタの 10 Ω 抵抗の両側にテスト・ポイント(T5、
T6)が設けられています(図 6 を参照)。この設定により、抵抗
での電圧降下を測定して電流を計算することができ、電源電流を
遮断したり回路を停止したりする必要はありません。
VOLTMETER
+
T6
REST OF CIRCUIT
POWER SUPPLY
10µF
AD5421 DAC と出力ドライバは比較的高速です。したがって、要
求されるシステム仕様を満たすために、AD5421 に実装される
ハードウェア・スルーレートの制限と、ADuCM360 ソフトウェ
アによって実装されるデジタル・フィルタを組み合わせることに
よって出力電流変化を制御します。
AD5421
T5
10Ω
10µF
REGOUT
VOLTAGE
REGULATOR
10551-006
1
図 6. テスト・ポイントを使用した AD5421 REGOUT 電流の測定
- 5/ -
CN-0267
回路ノート
結果は表 2 に示すとおりです。測定条件を以下に示します。








REGOUT = 3.3 V
ADuCM360 の M3 コア・クロック = 2 MHz
ADC は 2 つとも毎秒 50 サンプルで変換を実行
ADC0 のバッファは両方ともオンで、ゲイン = 8
ADC1 のバッファは両方ともオンで、ゲイン = 16
RTD 励起電流 = 200 µA
SPI と AD5421 はシリアル・クロック = 100 kHz で通信
HART 通信
デモは、HART 通信を介してプライマリアナログ入力からデータ
(kPa 単位で圧力を表す)を転送する形で構成され、100 個のサン
プルを取得して、性能を定量化するための基本的なデータ分析を
実施しました。2 つのテストの要領を以下に示します。


最初のテストは、標準圧力センサー(Honeywell 24PCDFA6D)
をボード上に直接ハンダ付けして実施。
2 つめのテストは、図 7 に示すように、固定抵抗と可変抵抗
のセットによって生成されたプライマリ入力信号を使用し
て実施。
入力センサーを含め、使用するアナログ・ブロックとデジタル・
ブロックはすべて、最小 4 mA のループ電流時に許容されるバ
ジェット内で電源電流を消費します。
表 2.
AVDD
AD5421 からの電源電流、 REGOUT = 3.3V
Input Sensor
None
24PCDFA6D (5 kΩ,
0.66 mA at 3.3 V)
Voltage T5 to T6
Maximum (mV)
Current REGOUT
Maximum (mA)
24.4
31.0
2.44
3.10
ADuCM360
VREF+
27kΩ
1kΩ
10kΩ
0.01µF
1kΩ
18kΩ
AIN0
0.1µF
ADC0
AIN1
0.01µF
VREF–
回路の消費電流を評価するもう 1 つの方法では、HART 通信を行
いながら、アナログ出力電流を最小の 4 mA に設定した状態で回
路が予想どおり機能するかどうかを検証しました。結果は、回路
が 4 mA の電流を供給したことを示しており、HART 出力信号の
歪みは認められませんでした。
10551-007
GND_SW
図 7. 抵抗セットによるプライマリ入力信号の生成
プライマリセンサーの入力性能
ADuCM360 は、大部分のアナログ・フロントエンドをチップ上
に内蔵しています。したがって、アナログ入力の性能は、主に
ADuCM360 の仕様によって決定されます。
アナログ・フロントエンドとボード上のほかの回路の相互作用に
よって影響を受ける可能性がある主な要素は、ノイズ・レベルで
す。したがって、試験にあたっては、ノイズとそれに関係するシ
ステムの分解能を中心としました。
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CN-0267
回路ノート
性能の概要を表 3 に、信号プロットを図 8 と図 9 に示します。
セカンダリセンサーの入力性能
表 3. プライマリセンサーの入力ノイズと分解能
1 次センサー同様、セカンダリセンサー入力の性能は、ノイズ性
能を除いて、主に ADuCM360 のアナログ・フロントエンドによっ
て決まります。
Parameter
Pressure
Sensor
Resistive
Network
Full Scale
Noise RMS
Peak-to-Peak Noise
Resolution Effective (rms)
Noise-Free Resolution (p-p)
207 kPa
1.3 Pa
6.8 Pa
17.2 bit
14.9 bit
246 kPa
0.68 Pa
3.6 Pa
18.5 bit
16.1 bit
このアナログ入力は、HART 通信経路を経由して温度を摂氏(°C)
で伝送するように構成されています。分析は、性能を定量化する
ために、100 個のサンプルからなる 2 つのテストについて行いま
した。
最初のテストはボード上の白金製 100 Ω センサーを使用して行
い、2 番目のテストはボード上のセンサーを標準の(固定)100 Ω
± 1%抵抗に置き換えて実施しました。
40
性能の概要を表 4 に、信号プロットを図 10 と図 11 に示します。
表 4. セカンダリセンサーの入力ノイズ性能
PRESSURE (Pa)
35
30
Parameter
Pressure Sensor
Resistive Network
Noise RMS
Noise Peak to Peak
0.037°C
0.19°C
0.033°C
0.16°C
25.0
25
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
SAMPLE
10551-008
20
TEMPERATURE (°C)
24.5
図 8. 圧力センサー入力信号のプロット
24.0
23.5
23.0
5
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
PRESSURE (Pa)
SAMPLE
図 10.
10551-010
10
RTD(白金 100 Ω)センサーの入力信号プロット
0
1.0
–5
10
20
30
40
50
SAMPLE
60
70
80
90
100
図 9. プライマリ入力が抵抗ネットワークの場合の信号プロット
0.0
–0.5
–1.0
0
10
20
30
40
50
SAMPLE
60
70
80
90
100
10551-011
0
10551-009
–10
TEMPERATURE (°C)
0.5
図 11. セカンダリ入力が固定 100 Ω ± 1%抵抗の場合の信号プロッ
ト
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CN-0267
回路ノート
さらに詳しくは
データシートと評価用ボード
CN-0267 Design Support Package:
http://www.analog.com/CN0267-DesignSupport
ADuCM360 のデータシードと評価ボード
AD5421 のデータシートと評価用ボード
CN-0270, Complete 4 mA to 20 mA HART Solution
AD5700 のデータシードと評価ボード
CN-0278, Complete 4 mA to 20 mA HART Solution with Additional
Voltage Output Capability
改訂履歴
CN-0300, Complete Closed-Loop Precision Analog Microcontroller
Thermocouple Measurement System with 4 mA to 20 mA Output
2/13—Rev. 0 to Rev. A
Changes to Circuit Hardware Section and Figure 3 Caption ................ 4
AN-1111, Options for Minimizing Power Consumption When Using the
ADuCM360/ADuCM361
12/12—Revision 0: Initial Version
HART® Communication Foundation
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