LT1310 フェーズロック・ループ装備の 1.5A昇圧DC/DCコンバータ 特長 概要 外部同期動作または固定周波数の低ノイズ出力 ■ 最大4.5MHzに同期可能 ■ 広い入力電圧範囲:2.8V∼18V ■ 高さの低い表面実装ソリューション (すべてセラミック・コンデンサ) ■ 低VCESATスイッチ:240mV/1A ■ VIN∼35Vの可変出力 ■ 熱特性が改善された小型10ピンMSOPパッケージ 昇圧DC/DCコンバータLT ®1310は1.5A電流モードPWM スイッチャとフェーズロック・ループを装備しているの で、スイッチング周波数を10kHz∼4.5MHzの範囲でユー ザ設定可能です。スイッチング周波数の正確な制御が求 められるアプリケーション向けに開発されたLT1310は、 5V入力から12V/最大400mAを生成できます。 ■ スイッチング周波数は外付けコンデンサで設定され、デ バイスは自走モードかフェーズロック・モードのいずれ かで動作可能です。取り込み範囲が約2:1と広いので、標 準の 10%精度 NP0誘電コンデンサを使用して自走周波 数を設定できます。 アプリケーション ■ ■ ■ ■ ■ ■ 計測器 アビオニクス機器 データ収集 通信 イメージング 超音波 LT1310は、熱特性が改善された小型10ピンMSOPパッ ケージで供給されます。 、LTC、LTはリニアテクノロジー社の登録商標です。 標準的応用例 L1 5.6µH C1 4.7µF CERAMIC LT1310 SHDN SYNC SYNC LT1310の効率 90 VOUT = 12V 85 80 3.3VIN 5VIN 75 VC 1500pF VOUT 12V 400mA FB PLL-LPF 3.01k 178k SW VIN SHUTDOWN 1.6MHz D1 20.5k CT GND* 15k 100pF NP0 C2 4.7µF CERAMIC 820pF 1310 F01a C1: 4.7µF, X5R OR X7R, 6.3V C2: 4.7µF, X5R OR X7R, 16V D1: MICROSEMI UPS120 OR EQUIVALENT L1: PANASONIC ELL6SH-5R6M *EXPOSED PAD MUST ALSO BE GROUNDED 図1. 1.6MHzで同期させた5Vから12Vのコンバータ EFFICIENCY (%) VIN 5V 70 65 60 55 50 45 40 35 0 100 200 300 LOAD CURRENT (mA) 400 1310 F01b sn1310 1310fs 1 LT1310 絶対最大定格 パッケージ/発注情報 (Note 1) SW電圧 ................................................................................36V VIN電圧 ................................................................................18V SHDN電圧 ............................................................................18V SYNC電圧 ..............................................................................5V FB電圧....................................................................................5V CT電圧 ....................................................................................5V VC電圧 ...................................................................................2V PLL-LPFピン電流 ...............................................................1mA 動作温度範囲(Note 2)....................................... – 40 C∼85 C 保存温度範囲.................................................... – 65 C∼150 C リード温度(半田付け、10秒) ........................................ 300 C ORDER PART NUMBER TOP VIEW FB SHDN PLL-LPF SYNC GND 1 2 3 4 5 10 9 8 7 6 VC CT VIN SW SW LT1310EMSE MSE EXPOSED PAD PACKAGE 10-LEAD PLASTIC MSOP MSE PART MARKING TJMAX = 125°C, θJA = 40°C/W LTRZ EXPOSED PAD IS GROUND (MUST BE SOLDERED TO PCB) さらに広い動作温度範囲で規定されるデバイスについては、 弊社へお問い合わせください。 電気的特性 ●は全動作温度範囲の規格値を意味する。 それ以外はTA = 25 Cでの値。 注記がない限り、VIN = 3.3V、 VSHDN = 3.3V。 (Note 2) PARAMETER Undervoltage Lockout Maximum Input Voltage Feedback Voltage CONDITIONS ● FB Pin Bias Current Reference Line Regulation Error Amplifier Transconductance Error Amplifier Voltage Gain SW Current Limit SW Saturation Voltage SW Maximum Duty Cycle SW Minimum On Time VCO Frequency Frequency Foldback PLL Lock Range Supply Current SW Leakage Current SHDN Pin Bias Current SHDN Pin High SHDN Pin Low MIN TYP 1.242 1.236 1.255 VIN = 2.9V to 18V ΔI = 5µA 1.5 ISW = 1A CT = 220pF CT = 47pF ISW = 150mA, VC = 0.25V CT = 220pF, PLL-LPF = High CT = 220pF, PLL-LPF = High CT = 220pF, PLL-LPF = Low CT = 47pF, PLL-LPF = High CT = 220pF, PLL-LPF = High, FB = 0V CT = 220pF, Maximum CT = 220pF, Minimum (Percent Change from Max) SHDN = High SHDN = Low Switch Off, SW = 3.3V VSHDN = 2.4V Active Mode Shutdown Mode Note 1:絶対最大定格はそれを超えるとデバイスの寿命に影響を及ぼす値。 80 78 ● 0.950 0.800 0.950 –40 60 0.01 350 200 2.1 0.240 84 83 70 1.10 500 3.3 200 1.10 –50 11.5 0.1 35 MAX 2.8 18 1.268 1.268 150 0.05 2.8 0.320 1.25 1.30 630 1.25 15 1 5 65 2.4 0.4 UNITS V V V V nA %/V µA/V V/V A V % % ns MHz MHz kHz MHz kHz MHz % mA µA µA µA V V Note 2: LT1310Eは0 C∼70 Cの温度範囲で性能仕様に適合することが保証されている。 – 40 C∼85 Cの動作温度範囲での仕様は、設計、特性評価および統計学的なプロセス・コ ントロールとの相関で確認されている。 sn1310 1310fs 2 LT1310 標準的性能特性 帰還電圧 帰還ピン電流 FEEDBACK CURRENT (nA) FB VOLTAGE (V) 1.26 1.25 1.24 1.23 140 2.80 120 2.75 UNDERVOLTAGE LOCKOUT (V) 1.27 100 80 60 40 20 1.22 –50 0 25 50 TEMPERATURE (°C) –25 75 0 –50 100 –25 50 25 0 TEMPERATURE (°C) 75 1310 G01 発振周波数とCTコンデンサ FREQUENCY (kHz) FREQUENCY (kHz) 4000 3000 2000 PLL-LPF = HIGH 800 1000 3800 1400 300 700 500 CAPACITOR (pF) 900 75 100 1310 G07 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 FEEDBACK (V) 1.2 100 PLL-LPF = HIGH 90 3200 2900 2600 2000 –50 1.4 最大デューティ・サイクルと 発振周波数 80 100°C 25°C –50°C 70 60 2300 400 50 25 0 TEMPERATURE (°C) 400 1310 G06 MAX DUTY CYCLE (%) FREQUENCY (kHz) 600 –25 600 0 1100 3500 800 200 –50 800 発振周波数(CTピンに47pFの コンデンサを接続) 1000 220pF CT CAPACITOR 1310 G05 PLL-LPF = HIGH 100 200 0 100 100 1200 75 0 25 50 TEMPERATURE (°C) 1200 1200 発振周波数(CTピンに220pFの コンデンサを接続) FREQUENCY (kHz) 1400 400 80 60 CAPACITOR (pF) –25 発振周波数と帰還電圧 LT1372 • G10 1600 2.55 1310 G03 1600 40 2.60 発振周波数とCTコンデンサ 2000 PLL-LPF = HIGH 20 2.65 1310 G02 5000 1000 2.70 2.50 –50 100 FREQUENCY (kHz) 6000 低電圧ロックアウト –25 0 25 50 TEMPERATURE (°C) 75 100 1310 G08 50 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 OSCILLATOR FREQENCY (kHz) 1310 G09 sn1310 1310fs 3 LT1310 標準的性能特性 PLLのロックレンジ(CTピンに 220pFのコンデンサを接続) スイッチの最小オン時間 PLLのロックレンジ(CTピンに 47pFのコンデンサを接続) 100 1400 3500 90 1200 3000 80 70 60 50 40 –50 MAXIMUM 1000 800 600 MINIMUM 400 –25 0 25 50 TEMPERATURE (°C) 75 200 –50 100 FREQUENCY (kHz) FREQUENCY (kHz) MINIMUM ON TIME (ns) MAXIMUM –25 75 0 25 50 TEMPERATURE (°C) 消費電流 500 –50 100 0 25 50 TEMPERATURE (°C) 75 100 1310 G12 スイッチVCESAT 11 VCESAT (mV) 300 10 9 200 100 –25 0 25 50 TEMPERATURE (°C) 75 0 100 0 0.5 1.0 SWITCH CURRENT (A) 1310 G13 過渡応答 起動応答 PLL応答 VOUT 50mV/DIV VOUT 5V/DIV IL 500mA/DIV IL 200mA/DIV IL 1A/DIV 200mA 100mA fSYNC 1.9MHz 1.2MHz VSHDN 50µs/DIV LT1310 G16 1.5 1310 G15 VOUT 100mV/DIV fSYNC = 1.5MHz –25 400 8 ILOAD MINIMUM 1500 1310 G11 12 SUPPLY CURRENT (mA) 2000 1000 1310 G10 7 –50 2500 50µs/DIV LT1310 G17 NO SYNC SIGNAL 20µs/DIV f = 1.2MHz LT1310 G18 sn1310 1310fs 4 LT1310 ピン機能 FB (ピン1) :エラーアンプの帰還ピン。ここに抵抗分割器 を接続し、次式に従って出力電圧を設定します。 VOUT R1 VOUT = 1.255(1 + R1/R2) FB R2 SYNC (ピン4) :周波数同期ピン。外部同期信号をここに入 力します。位相検出器はエッジでトリガされ、同期信号 の立ち上がりエッジにロックさせると、パワー・トランジ スタのターンオンに位相合わせされます。SYNC信号は、 H の振幅が1.2V以上、L の振幅が0.2V以下で、100ns以 上 L である必要があります。 1.2V (MIN) このピンのトレース面積は最小限に抑えてください。 SHDN (ピン2) :シャットダウン・ピン。アクティブ・モード にするには、このピンを2.4V∼18Vの電圧に接続します。 デバイスをディスエーブルして低電流モードにするに は、このピンを0.4V以下にします。 PLL-LPF( ピン 3 ) :フェーズロック・ループのフィルタ・ピ ン。これは、位相検出器の出力であるとともに電圧制御発 振器(VCO)の入力でもあります。ここにRCフィルタを接 続します。通常、R = 3kでC = 1500pFです。PLL-LPFピンの 電圧範囲は約0V∼1.5Vで、1.5Vが最大スイッチング周波 数に相当します。同期の不要なアプリケーションの場合、 このピンにプルアップ抵抗を接続します。プルアップ電 圧は2.4V以上にする必要があります。プルアップ抵抗の 値は次式に従って設定します。 RPULLUP = ( VPULLUP – 1.5V) 300µA 5Vのプルアップ電圧では次のようになります。 RPULLUP (5V – 1.5V) ≈ 11.6k = 300µA 0.2V (MAX) 100ns (MIN) GND(ピン 5 、露出パッド) :グランド。ピン 5 と露出パッド は、どちらもローカル・グランド・プレーンに直接接続し てください。露出パッドまでのグランド・メタルは、熱放 散を良好にするために幅を広くします。 (ローカル・グラ ンド・プレーン-グランド・バックプレーン間の)複数のビ アを露出パッドの近くに配置すると、熱抵抗をさらに低 減させることができます。LT1310を適正に機能させるた め、露出パッドをグランドに半田付けする必要がありま す。 SW(ピン 6 、7 ) :スイッチ・ピン。ピン 6 をピン 7 に接続する 必要があります。インダクタ/ダイオードをここに接続し ます。EMIを小さくしておくため、このピンのトレース面 積を最小限に抑えてください。 VIN (ピン8) :電源ピン。ピンのできるだけ近くでバイパス する必要があります。 C(ピン 9) :VCOのタイミング・コンデンサ・ピン。このピ T ンからグランドにタイミング・コンデンサを接続して、発 振器の周波数範囲を設定します。このピンのトレースを 最小限に抑えて浮遊容量を低減します。 V( :エラーアンプの補償ピン。ここにRCネット C ピン 10 ) ワークを接続して電圧帰還ループを補償します。 sn1310 1310fs 5 LT1310 ブロック図 FB VC CT PLL-LPF 1 10 9 3 – + RAMP GEN. A1 Σ + – SYNC PHASE DETECTOR VCO 4 + + A2 1.255V REF S R Q Q SHDN 2 GND 5 SW SHUTDOWN 6, 7 EXPOSED PAD ×5 0.024Ω 1310 BD 動作 動作を理解するため、 「ブロック図」を参照してください。 LT1310には、外部同期信号にフェーズロックすることが できる昇圧スイッチング・レギュレータが搭載されてい ます。この昇圧レギュレータは電流モード制御を使用し、 1.5A NPNパワー・トランジスタを内蔵しています。この タイプの制御では2つの帰還ループを使用します。メイ ン制御ループは出力電圧を設定し、負荷ステップによる VOUTとFB電圧の変動がわずかになるように動作します。 エラーアンプA1はV Cピンの電圧を高くするか低くする かによって、FBのこの変動に対応します。スイッチ電流は VCピンの電圧に比例するので、VOUT要件が再度満たされ るまでこの変動によってスイッチ電流が調整されます。 ループ補償はVCピンからグランドに接続されたRCネッ トワークによって実行されます。このメイン・ループ内で は、電流制限をサイクルごとに設定する別の補償が行わ れます。このループでは、電流コンパレータA2を使用して ピーク電流を制御しています。各サイクルの開始時に発 振器がフリップフロップにセット・パルスを送出するこ とによって、スイッチをオンします。スイッチがオン状態 の場合、SWピンは実質的にグランドに接続されます。イ ンダクタの電流はV IN/Lの速度で直線的にランプアップ します。スイッチ電流はVCピンの電圧によって設定され るので、RSENSE両端の電圧が電流コンパレータをトリッ プすると、リセット・パルスが生成されてスイッチがオフ します。インダクタの電流が上昇するので、SWピンの電 圧はキャッチ・ダイオード(D1)によってクランプされる まで上昇します。発振器が新たなセット・パルスを送出 し、サイクルが再開されるまで、ダイオードを流れる電流 は(VOUT – VIN)/Lの速度で減少します。 LT1310は4.5MHzまでフェーズロック可能なので、スイッ チング周波数の範囲でユーザーは正確な制御を行うこと ができます。位相検出器は、入力同期信号を内部発振器の 信号と比較します。スイッチング周波数が同期信号より 低下する、つまり位相が同期信号より遅れると、位相検 出器の出力はPLL-LPFピンに電流をソースして高い電圧 にドライブします。PLL-LPFピンは電圧制御発振器の入 力でもあります。スイッチング周波数より同期信号の方 が遅くなると、PLL-LPFピンの電圧が低下するまでPLLLPFピンは電流をシンクします。ロックすると、PLL-LPF ピンは0V∼1.5Vの電圧に留まります。PLL-LPFピンは約 140µAをシンクまたはソースできます。 sn1310 1310fs 6 LT1310 動作 動作周波数に対するCTの選択 外部入力信号に同期させるため、タイミング・コンデンサ およびPLLフィルタ部品は適切に選択する必要がありま す。これは簡単なプロセスで、図2aのグラフを使用して行 うことができます。 PLLのロックレンジは2:1に近いので、標準値に最も近い NP0コンデンサを使用することができます。図1に示すア プリケーションでは、1.6MHzのスイッチング周波数は 100pFのタイミング・コンデンサに相当します。スイッチ ング周波数はインダクタのリップル電流に影響するの で、インダクタもスケーリングさせる必要があります。 様々なスイッチング周波数に対する部品の推奨値を表1 に示します。 図2aでは、タイミング・コンデンサ(CT)に対する動作周波 数がプロットされており、上側の曲線は特定のCT値での 最大ロック周波数に相当し、下側の曲線は最小ロック周 表1. 様々なスイッチング周波数に対する部品の推奨値 波数に相当します。適正なタイミング・コンデンサを選択 (R LP = 3.01k) するには、必要な動作周波数と点線の交点を見つけます。 SWITCHING 次に対応するCT値まで移動します。 FREQUENCY CT CC CLP RC L1 かわりに、出発点として次式を使用します。 600kHz 330pF 1500pF 2700pF 10k 10µH 1MHz 180pF 1000pF 2200pF 10k 6.2µH fLOCK ≥ 2MHzの場合: 1.6MHz 100pF 820pF 1500pF 15k 5.6µH 2MHz 68pF 820pF 1500pF 15k 4.7µH 2.5MHz 47pF 330pF 1500pF 20k 3.3µH 3MHz 33pF 330pF 1000pF 20k 2.7µH 250 • 10 – 6 – 40 • 10 –12 CT = 0.75 fLOCK fLOCK ≤ 2MHzの場合: 310 • 10 –6 – 60 • 10 –12 CT = 0.75 fLOCK 100k VIN 5V CT VALUE (pF) 10k 1k MAXIMUM LOCK FREQUECY C1 4.7µF CERAMIC SHDN SYNC 1M 100k FREQUENCY (Hz) 図2a. CTと動作周波数 FB PLL-LPF VC CLP 178k SW SYNC IN RLP VOUT 12V LT1310 VIN SHUTDOWN MINIMUM LOCK FREQUECY 100 10 10k L1 20.5k CT GND RC CT CC C2 4.7µF CERAMIC 10M 1310 F02a 1310 F02a 図2b. CTの選択に使用する回路 sn1310 1310fs 7 LT1310 アプリケーション情報 インダクタの選択 LT1310との組み合わせに適したインダクタのいくつか を表2に示します。この表は限定されたものではなく、他 にも多くの製造元や使用可能なインダクタがあります。 様々なサイズや形状のものが提供されているので、詳細 情報および全関連部品の選択については各製造元へお問 い合わせください。フェライト・コアは高周波数でのコア 損失が安価な鉄粉コアよりもはるかに小さいので、最高 の効率を得るにはフェライト・コア・インダクタを使用し ます。飽和することなく1.5A以上に対応できるインダク タを選択し、I2R電力損失を最小限に抑えるためにインダ クタが低DCR(銅線抵抗)であることを確認します。各イ ンダクタに全スイッチ電流の半分しか流れないSEPICト ポロジーなどのように、アプリケーションによっては、イ ンダクタの電流処理要件を低減することができます。ス イッチング周波数もインダクタ要件に影響し、周波数が 高くなるとインダクタンス値が小さくなります。インダ クタのリップル電流をピーク・スイッチ電流の3分の1に 設定するのが、妥当な出発点です。 表2に示すインダクタでは小型のものが選択されていま す。効率を向上させるには、より大きな体積で同じ値のイ ンダクタを使用します。 表2. 推奨するインダクタ MAX SIZE L DCR L×W×H PART (µH) (mΩ) (mm) CDRH5D18-4R1 4.1 57 5.7 × 5.7 × 2 CDRH5D18-5R4 5.4 76 CDRH5D28-5R3 5.3 38 5.7 × 5.7 × 3 CDRH5D28-6R2 6.2 45 CDRH5D28-8R2 8.2 53 CR43-2R2 2.2 71 4.5 × 4 × 3.2 CR43-3R3 3.3 86 ELL6SH-4R7M 4.7 50 6.4 × 6 × 3 ELL6SH-5R6M 5.6 59 ELL6SH-6R8M 6.8 62 RLF5018T-4R7M1R4 4.7 45 5.6 × 5.2 × 1.8 RLF5018-1R5M2R1 1.5 25 5.2 × 5.6 × 1.8 RLF5018-2R7M1R8 2.7 33 RLF5018-4R7M1R4 4.7 45 RLF5018-100MR94 10 67 LPO1704-122MC 1.2 80 5.5 × 6.6 × 1 LPO1704-222MC 2.2 120 VENDOR Sumida (847) 956-0666 www.sumida.com Panasonic (408) 945-5660 www.panasonic.com TDK (847) 803-6100 www.tdk.com Coilcraft (800) 322-2645 www.coilcraft.com コンデンサの選択 出力リップル電圧を最小限に抑えるため、出力には低 ESR(等価直列抵抗)コンデンサを使用します。ESRが非 常に小さく、非常に小型のパッケージのものが入手でき るので、多層セラミック・コンデンサが最適です。X5Rの 誘電体、次にX7Rの誘電体が好まれます。これらの材料は 広い電圧範囲と温度範囲にわたって容量を維持するから です。ほとんどのアプリケーションでは4.7µF∼20µFの出 力コンデンサで十分です。ただし、出力電流が非常に小さ いシステムでは1µFまたは2.2µFの出力コンデンサしか必 要としないこともあります。固体タンタル・コンデンサま たはOS-CONコンデンサを使用することもできますが、 セラミック・コンデンサよりも大きなボード面積を占め、 ESRが大きくなります。必ず電圧定格が十分大きいコン デンサを使用してください。 セラミック・コンデンサは入力デカップリング用コンデ ンサとしても最適で、LT1310にできるだけ近づけて配置 します。ほとんどのアプリケーションでは2.2µF∼4.7µFの 入力コンデンサで十分です。セラミック・コンデンサの製 造元のいくつかを表3に示します。全セラミック部品の詳 細については製造元へお問い合わせください。 表3. セラミック・コンデンサの製造元 Taiyo Yuden (408) 573-4150 www.t-yuden.com AVX (803) 448-9411 www.avxcorp.com Murata (714) 852-2001 www.murata.com 補償̶調整 LT1310の帰還ループを補償するには、抵抗とコンデンサ を直列にしたネットワークをVCピンからGNDに接続し ます。ほとんどのアプリケーションでは、220pF∼1500pF の範囲のコンデンサで十分です。1.6MHzのスイッチング 周波数の場合、補償コンデンサ(CC)の出発点として最適 な値は820pFです。補償抵抗(RC)は通常、5k∼30kの範囲 です。新たなアプリケーションを補償する最適な技法で は、RCの代わりに30kΩのポテンショメータを使用し、CC に820pFのコンデンサを使用します。過渡応答を観測し ながらポテンショメータを調整することによって、RCの 最適値を求めることができます。図1の回路で負荷電流を 100mAから200mAにステップさせたときのこのプロセス を、図3a∼図3cに示します。 sn1310 1310fs 8 LT1310 アプリケーション情報 す。補償を必要としない高速の電流ループと補償を必要 とする低速の電圧ループです。標準ボードプロット解析 を使用して、電圧帰還ループを理解し、調整することがで きます。 VOUT 100mV/DIV AC COUPLED IL 0.5A/DIV RC = 3k 200µs/DIV 1310 F03a 図3a. 過渡応答に過度のリンギングが見られる VOUT 100mV/DIV AC COUPLED 図4から、DC利得、ポール、ゼロは以下のように算出でき ます。 IL 0.5A/DIV RC = 6k 200µs/DIV 1310 F03b 図3b. 過渡応答が改善されている VOUT 100mV/DIV AC COUPLED IL 0.5A/DIV RC = 15k 200µs/DIV どのような帰還ループでも同じですが、ループ内の様々 な要素が利得や位相に影響を与えることを認識すること が重要です。昇圧コンバータの主要な等価要素を図4に示 します。高速電流制御ループが使用されているので、デバ イスの電力段、インダクタ、ダイオードは等価相互コンダ クタンス・アンプgmpで置き換えられています。gmpは電 流源として機能し、出力電流はVC電圧に比例します。gmp の最大出力電流はデバイスの電流制限によって限られて いることに注意してください。 1310 F03b 図3c. 過渡応答が十分に抑えられている 図3aはRCが3kに等しいときの過渡応答を示します。出力 電圧とインダクタ電流に過度のリンギングが生じている ことから明らかなように、位相マージンが不足していま す。図3bではR Cの値が6kに増加された結果、より抑えら れた過渡応答になっています。図3cはR Cがさらに15kま で増加された結果を示します。過渡応答が適正に抑えら れ、補償手順が完了します。 補償̶理論 他のすべての電流モード・スイッチング・レギュレータと 同様、LT1310を安定して効率よく動作させるには補償が 必要です。LT1310では2つの帰還ループが使用されていま 2 Output Pole: 出力のポール :P1= 2 Output Pole:2 P1= • π • RL • C2OUT Output Pole: P1= 2 2 • π • RL • COUT 1L • COUT Output Pole: P1= 2 • π •R Error Amp Pole:2 •P2 1 π =• RL • COUT エラーアンプのポール Error Amp Pole:: P2 = 2 • π • RO •1CC Error Amp Pole: P2 = 1 2 • π • RO • CC Error Amp Pole: P2 = 2 •1π • RO • CC Error Amp Zero: Z1= 2 • π • RO • CC 1 Error Amp Zero:2 •Z1= π • RC •1CC Error Amp Zero: エラーアンプのゼロ :Z1= 1 2 • π • RC • CC Error Amp Zero: 1.25 Z1= 2 • π • RC • CC DC Gain: A = •R • gmp • RL 2• 1.25 •gπ ma• R O• C DC Gain: A = VOUT1.25 •Cgma C• RO • gmp • RL DC Gain: A = VOUT • gma • RO • gmp • RL 1.25 DC Gain: •V gOUT DC利得 :A = ma • RO • gmp • RL VOUT 図4から得られる要素の他、電流モード制御では別のポー ルやゼロも得られます。これらには以下のものがありま す。 VIN22 • RL RHP Zero::Z2 = RHPゼロ V • R22L RHP Zero: Z2 = 2 • π •INVVOUT IN 2• •RLL RHP Zero: Z22 =• π • VOUT •L 1 2 Output Zero: Z3 = 2 • π • V1OUT • L Output Zero: 出力のゼロ :Z3 = 2 • π • ESR • 1COUT Output Zero: Z32 =• π • ESR • COUT f Current Mode Pole: P32>• πfSS• ESR • COUT Current Mode Pole: P3 > 3 fS Current Mode Pole: 電流モードのポール :P33> 3 電流モードのゼロは右半平面のゼロで、これは帰還制御 の設計では問題になることがありますが、外付け部品を 適切に選択することによって調整できます。 sn1310 1310fs 9 LT1310 アプリケーション情報 100 – gmp VOUT COUT 1.255V REFERENCE + VC gma RC RO – RL R1 FB 50 GAIN (dB) + 0 R2 CC 1310 F04 CC: COMPENSATION CAPACITOR COUT: OUTPUT CAPACITOR gma: TRANSCONDUCTANCE AMPLIFIER INSIDE IC gmp: POWER STAGE TRANSCONDUCTANCE AMPLIFIER RC: COMPENSATION RESISTOR RL: OUTPUT RESISTANCE DEFINED AS VOUT DIVIDED BY ILOAD(MAX) RO: OUTPUT RESISTANCE OF gma R1, R2: FEEDBACK RESISTOR DIVIDER NETWORK –50 100 1k 10k 100k FREQUENCY (Hz) 1M 1310 F05a 0 図1の回路を一例として使用し、図5に示すボードプロッ トを作成するのに使用したパラメータを次の表に示しま す。 表4. ボードプロットのパラメータ PARAMETER VALUE UNITS PHASE (DEG) 図4. 昇圧コンバータの等価モデル –100 60° –180 COMMENT RL 30 Ω Application Specific COUT 4.7 µF Application Specific RO 2 MΩ Not Adjustable CC 820 pF Adjustable RC 15 kΩ Adjustable VOUT 12 V Application Specific VIN 5 V Application Specific gma 500 µmho Not Adjustable gmp 1.5 mho Not Adjustable L 5.6 µH fS 1.6 MHz Application Specific Adjustable ESR 10 mΩ Not Adjustable 図5から、利得が0dBに達するときの位相は120 で、位相 マージンが60 になります。これは十分すぎるほどです。 クロスオーバー周波数は50kHzで、これは右半平面のゼロ Z2の周波数の約3分の1以下です。十分な位相マージンを 確保するためには、クロスオーバー周波数がRHPゼロの 周波数の少なくとも3分の1以下であることが重要です。 –200 100 1k 10k 100k FREQUENCY (Hz) 1M 1946 F05b 図5. 図1の回路のボードプロット ダイオードの選択 LT1310と一緒に使用するダイオードにはショットキー ・ダイオードを推奨します。MicrosemiのUPS120が最適 です。入力と出力の電圧差が20Vを超える場合、UPS140 (40V用ダイオード)を使用します。これらのダイオード は、1Aの平均順方向電流に対応するように定格が規定さ れています。ダイオードの平均順方向電流が0.5A以下の アプリケーションの場合、ON SemiconductorのMBR0520 ダイオードを使用することができます。 出力電圧の設定 出力電圧を設定するには、次式に従ってR1とR2の値を選 択します(図1を参照)。 V R1 = R2 OUT – 1 1.255V R2の最適な範囲は5k∼30kです。 sn1310 1310fs 10 LT1310 アプリケーション情報 レイアウトのためのヒント LT1310は高速で動作するので、ボード・レイアウトには 細心の注意が必要です。レイアウトに注意を払わないと、 記載されたとおりの性能を得られません。図6に昇圧コン バータの推奨部品配置を示します。 CC R1 R2 RC VIN CIN CT LT1310 SHDN L1 SYNC SW RLP MULTIPLE VIAS COUT CLP D1 GND VOUT 1310 F06 図6. 昇圧コンバータの推奨部品配置。 広いPCトレースを使用した直接高電流経路に注目。ピン10(VC)、ピン9(CT)、ピン1(FB) のト レース面積は最小限に抑える。複数のビアを使用して、ピン5の銅パッドと露出パッドをグランド・プレーンに接続する。スイッチン グ電流がグランド・プレーンに誘導されないように、ビアは1箇所のみで使用する。 パッケージ寸法 MSEパッケージ 10ピン・プラスチックMSOP (Reference LTC DWG # 05-08-1663) 3.00 ± 0.102 (.118 ± .004) (NOTE 3) 10 9 8 7 6 DETAIL “A” 2.06 ± 0.102 (.081 ± .004) 1.83 ± 0.102 (.072 ± .004) 0° – 6° TYP 1 2 3 4 5 GAUGE PLANE 0.53 ± 0.01 (.021 ± .006) DETAIL “A” 0.18 (.007) 1 3.00 ± 0.102 (.118 ± .004) NOTE 4 4.90 ± 0.15 (1.93 ± .006) 0.254 (.010) 0.497 ± 0.076 (.0196 ± .003) REF 露出パッド BOTTOM VIEW・ OF オプションの底面 EXPOSED PAD OPTION SEATING PLANE 0.86 (.034) REF 1.10 (.043) MAX 0.17 – 0.27 (.007 – .011) TYP 10 0.50 (.0197) BSC 2.794 ± 0.102 (.110 ± .004) 0.13 ± 0.076 (.005 ± .003) NOTE:: NOTE 1. DIMENSIONS IN MILLIMETER/(INCH) 1. 寸法はミリメートル/ (インチ) 2. DRAWING NOT TO SCALE 2. 図は実寸とは異なる 3. DIMENSION DOES NOT INCLUDE MOLD FLASH, PROTRUSIONS OR GATE BURRS. 3. MOLD 寸法にはモールドのバリ、 突出部、 またはゲートのバリを含まない。 モールドのバリ、 FLASH, PROTRUSIONS OR GATE BURRS SHALL NOT EXCEED 0.152mm (.006") PER SIDE 突出部、またはゲートのバリは、 各サイドで0.152mm (0.006")を超えないこと 4. DIMENSION DOES NOT INCLUDE INTERLEAD FLASH OR PROTRUSIONS. FLASH OR PROTRUSIONS SHALL NOT EXCEED 0.152mm (.006") PER SIDE 4. INTERLEAD 寸法には、 リード間のバリまたは突出部を含まない。 リード間のバリまたは 5. LEAD COPLANARITY (BOTTOM OF LEADS AFTER FORMING) SHALL BE 0.102mm (.004") MAX 突出部は、 各サイドで0.152mm (0.006") を超えないこと 5. リードの平坦度(整形後のリードの底面)は最大0.102mm(0.004")であること 5.23 (.206) MIN 0.889 ± 0.127 (.035 ± .005) 2.083 ± 0.102 3.2 – 3.45 (.082 ± .004) (.126 – .136) MSOP (MSE) 0802 0.50 0.305 ± 0.038 (.0197) (.0120 ± .0015) BSC TYP RECOMMENDED SOLDER PAD LAYOUT 推奨する半田パッド ・レイアウト リニアテクノロジー・コーポレーションがここで提供する情報は正確かつ信頼できるものと考えておりますが、その使用に関する責務は一切負い ません。また、ここに記載された回路結線と既存特許とのいかなる関連についても一切関知いたしません。なお、日本語の資料はあくまでも参考資 料です。訂正、変更、改版に追従していない場合があります。最終的な確認は必ず最新の英語版データシートでお願いいたします。 sn1310 1310fs 11 LT1310 標準的応用例 効率 3MHz、 5Vから12Vのコンバータ C1 2.2µF LT1310 VIN SHUTDOWN SHDN SYNC IN SYNC PLL-LPF 3MHz D1 VC RLP 3.01k CLP 1000pF R1 178k SW R2 20.5k GND* CT 33pF NP0 RC 10k CC 680pF 5VIN 85 80 75 FB CT 90 VOUT 12V 400mA EFFICIENCY (%) L1 3.3µH VIN 5V C2 2.2µF 3.3VIN 70 65 60 55 50 45 40 1310 TA01a 35 0 C1, C2: TAIYO YUDEN LMK212BJ225MG D1: MOTOROLA MBRM120 L1: PANASONIC ELL6RH2R7M *EXPOSED PAD MUST ALSO BE GROUNDED 100 200 300 LOAD CURRENT (mA) 400 1310 TA01b 関連製品 製品番号 説明 550mA (ISW)、 1.4MHz、 高効率昇圧DC/DCコンバータ LT1613 注釈 効率:90%、 VIN:0.9V∼10V、 VOUT(MAX):34V、 IQ:3mA、 ISD:<1µA、 ThinSOTTMパッケージ LT1618 1.5A (ISW)、 1.25MHz、 高効率昇圧DC/DCコンバータ 効率:90%、 VIN:1.6V∼18V、 VOUT(MAX):35V、 LT1946/LT1946A 1.5A (ISW)、 1.2/2.7MHz、 高効率昇圧DC/DCコンバータ VIN:2.45V∼16V、 VOUT(MAX):34V、 IQ:3.2mA、 LT1961 1.5A (ISW)、 1.25MHz、 高効率昇圧DC/DCコンバータ IQ:1.8mA、 ISD:<1µA、 10ピンMSパッケージ ISD:<1µA、 MS8パッケージ 効率:90%、 VIN:3V∼25V、 VOUT(MAX):35V、 IQ:0.9mA、 ISD:6µA、 MS8Eパッケージ LTC®3400/LTC3400B 600mA (ISW)、 1.25MHz同期整流式昇圧DC/DCコンバータ 効率:92%、 VIN:0.85V∼5V、 VOUT(MAX):5V、 IQ:19µA/300µA、 ISD:<1µA、 ThinSOTパッケージ LTC3401 1A (ISW)、 3MHz同期整流式昇圧DC/DCコンバータ LTC3402 2A (ISW)、 3MHz同期整流式昇圧DC/DCコンバータ 効率:97%、 VIN:0.5V∼5V、 VOUT(MAX):6V、 IQ:38µA、 ISD:<1µA、 10ピンMSパッケージ 効率:97%、 VIN:0.5V∼5V、 VOUT(MAX):6V、 IQ:38µA、 ISD:<1µA、 10ピンMSパッケージ ThinSOTはリニアテクノロジー社の商標です。 sn1310 1310fs 12 リニアテクノロジー株式会社 〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-6秀和紀尾井町パークビル8F TEL 03-5226-7291 FAX 03-5226-0268 www.linear-tech.co.jp ● ● 0103 • PRINTED IN JAPAN LINEAR TECHNOLOGY CORPORATION 2001