短絡保護およびシャットダウン機能付き負電圧降圧コンバータ デザインノート1022 Victor Khasiev はじめに 負電圧を ( 絶対値で )「降圧」するために負電圧降圧コン バータが使われることが多くなっています。需要増加の背景 にある主な理由は、一般に 1 つまたは 2 つの 2 次巻線を備 えたスイッチング・トランスの標準化です。たとえば、あるシ ステムが 2 つの 2 次巻線を有するトランスを使用して±12V を生成し、 さらにそのデザインでは –3.3V も必要だとすると、 エンジニアはメイン・トランスの変更が不要な ( 負電圧降圧 のような ) ソリューションを選ぶ傾向があります。 回路の説明と性能 –12V 電源から –3.3V/3A を生成する負電圧降圧コンバー タを図 1 に示します。電力経路には、 インダクタL1、 ダイオー ド D1、および MOSFET Q1 が含まれます。LTC3805-5 コントローラ IC には、( 電流レベルを精密に設定可能な ) 短絡保護、コンバータのイネーブル / ディスエーブル、およ びプログラム可能なスイッチング周波数など、充実した基本 機能の一式が内蔵されています。 内蔵のシャント・レギュレータにより、入力電源から IC を直 接バイアスすることができます。このトポロジーはシンプル なので、多くの設計者にとって魅力的ですが、負電圧降圧 コンバータには設計に際して 2 つの重要な検討項目があり ます。出力電圧の検出とリモート・シャットダウンです。コン トローラは負電圧を基準にしていますが、出力電圧とオン / オフ信号はシステム・グランドを基準にしています ( 図 1 を 参照 )。 レギュレーション・ループを閉じるため、トランジスタ Q3 を ベースにした電流ミラーを使用しています。抵抗 RPRG に よって抵抗 RFB に流れる電流をプログラムし、出力電圧を 設定します。この例では、出力電圧が –3.3V のとき、3.31k の RPRG 抵抗が抵抗 RFB に流れる電流を 1mA に設定し ます。この電流は抵抗 RFB の両端に 0.8V の電圧降下を 生じ、内部誤差アンプのリファレンス電圧に等しくなります。 L、LT、LTC、LTM、Linear Technology および Linear のロゴはリニアテク ノロジー社の登録商標です。他の全ての商標はそれぞれの所有者に所有権があり ます。 R8 4.99k ON OFF 5V 0V 4 5 GND R12 511k 3 1 R9 10k 2 6 GND R11 1k Q2 MBT3906DW1T1 C2 0.1µF R10 511k C1 0.1µF 1 2 C3 2.2nF R5 15k 3 4 5 R7 100k –12V INPUT GND CIN 10µF RFB 800 LTC3805-5 SSFLT GATE ITH VCC FB OC RUN FS ISENSE SYNC GND R4 316 8 OUT 330µF RPRG 3.31k VOUT –3.3V AT 3A MBT39069W171 4 5 Q1 HAT2165H 10 9 D1 PDS1040 L1 6µH +C R3 1k 3 2 1 Q3 6 7 6 R2 3.12k R1 0.015 31.1k –12V INPUT 図 1.–10V ~ –14V の入力から –3.3V/3A を生成する LTC3805 をベースにした負電圧降圧コンバータ 09/11/1022 オプションのシャットダウン回 路は、トランジスタ Q2 を ベ ー ス にし て います。 抵 抗 R8 に 5V を 印 加 す ると、 LTC3805-5 はシャットダウンします。 両方の回路とも、シ ステム・グランドを基準にしています。電力経路の部品に対 する電圧ストレス、伝達関数、およびその他のパラメータは、 良く知られた降圧コンバータと同様です。 の広い温度範囲で±1% より良好です。図 1 の回路の起動 波形と過渡応答波形を、それぞれ図 4 と図 5 に示します。 まとめ 負電圧降圧コンバータは、標準的な –12V 電源から追加の 負電源を生成するためによく使われます。ここに示すソリュー ションは、–12V 電源から –3.3V/3A を生成し、高効率、 過電流保護、高速過渡応答、およびスムーズな起動を特長 にしています。 効率は、図 2 に示されているように約 90% です。 負荷特 性を図 3 に示します。負荷が 4.5A を超えると出力電圧が 降下し始め、5.0A でコンバータは短絡保護状態になります。 この状態では、入力電流は 20mA を超えません。 短絡状 参考文献 態が解消された後、出力電圧は回復します。ライン・レギュ Erickson, Robert, W, Fundamentals of Power レーションとロード・レギュレーションは、–40°C ~ 70°C Electronics , 2nd edition, ISBN 0-7923-7270-0 効率と負荷 92 10V 12V 14V 91 10ms/DIV EFFICIENCY (%) 90 VOUT (1V/DIV) 89 88 87 86 85 84 1 1.5 2.0 2.5 OUTPUT CURRENT (A) 3.0 図 4.最大負荷状態での起動 図 2.効率と入力電圧および出力電流 過電流保護 3.5 VIN = –12V OUTPUT VOLTAGE (V) 1ms/DIV 3.0 VOUT 100mV/DIV IOUT 1A/DIV 2.5 2.0 1.5 3 3.5 4.0 4.5 5.0 OUTPUT CURRENT (A) 5.5 図 3.出力電圧と出力電流 ( 入力電圧は –12V) 図 5.1A から 2.5A への負荷電 流ステップに対する過渡応答 データシートのダウンロード:http://www.linear-tech.co.jp リニアテクノロジー株式会社 102-0094 東京都千代田区紀尾井町 3-6 紀尾井町パークビル 8F TEL(03)5226-7291 FAX(03)5226-0268 http://www.linear-tech.co.jp dn1022 LT 0911 • PRINTED IN JAPAN © LINEAR TECHNOLOGY CORPORATION 2011