2012 年 7 月 こ の 号 の 内 容 プッシュボタン・コントローラ 10 効率が 95% で低ノイズの 15V、 2.5A モノリシック昇降圧 17 簡単な 2 電源での電流分担 20 第 22 期第 2 号 LED ドライバ、大容量バッテリ / スーパー キャパシタ充電器および MPPT* 太陽光発電 アプリケーションをシンプルに実現する 電圧・電流制御ループの組み合わせ Xin (Shin) Qi * 最大電力点追従制御(Maximum Power Point Tracking) 高さが 1mm 未満の 24V、15A モノリシック・レギュレータ 26 最大 60V の入力から 25A/12V を供給 28 定電流 / 定電圧(CC-CV)アプリケーション、特に LED 照明、大容量バッテリ・ チャージャ、スーパーキャパシタ・チャージャの市場が急速に拡大していること により、電源の設計者は、ますます複雑化する電流制御ループと電圧制御ルー プの相互作用に対応するという課題を与えられています。CC-CV 専用に設計さ れたスイッチモード・コンバータには、明確な利点があります。特に、電源の 電力が制限されているか、競合するいくつか の負荷間に電力が割り当てられている場合に 顕著です。 たとえば、電力に限りのある電源から最小限の時間内にスー パーキャパシタを充電するという課題について考えます。一定 の入力電力を維持するには、出力(スーパーキャパシタ)電 圧が高くなるのに応じて充電電流を低下させる必要がありま す。LT®3796 は、電流安定化ループと 2 つの電圧安定化ルー プを継ぎ目なく組み合わせて外付けの N チャネルパワー・ス イッチを制御することにより、制限された電力の問題、つまり 定電流 / 定電圧制御の問題を解決します。補償用のピン(VC) に接続された LT3796 の 3 つのエラーアンプが備えるワイヤー ド OR 動作により、正しいループ(つまり、最もレギュレーショ ン状態に近いループ)が制御の主体となります。 LTC4155 は、小規模なプリント回路基板面積で 3.5A の充電電流を効率的に供給する モノリシック・スイッチング・バッテリ・チャージャです。13 ページを参照してください。 www.linear-tech.co.jp (4ページへ続く) リニアテクノロジーの ニュース この号の内容 COVER STORY LED ドライバ、大容量バッテリ / スーパーキャパシタ 充電器および MPPT* 太陽光発電アプリケーション をシンプルに実現する電圧・電流制御ループの組 み合わせ Xin (Shin) Qi 1 リニアテクノロジー、権威ある賞を受賞 リニアテクノロジーは、過去数ヶ月間にわたり、製品、システム・ソリューション、製造 品質と納期に関するいくつかの重要な賞を受賞しました。ハイライトは以下のとおりです。 DESIGN FEATURES ハンドヘルド機器のプラグを電源に差し込むと自 動的にオンするオプション機能を備えたプッシュボ タン式オン / オフ・コントローラ 10 Vui Min Ho 任意の 5V 電源から大容量バッテリを高効率充電 2 する、パワー素子内蔵の I C 制御リチウムイオン・ パワー・マネジメント IC 13 David Simmons 効率が 95% で低ノイズ動作の 15V、2.5A モノリシッ ク昇降圧 DC/DC コンバータ 17 Eddy Wells 2つの電源の負荷バランスを取る電流制御 IC Pinkesh Sachdev 20 て選定し、リニアテクノロジーを表彰しました。Electronic Products 誌の編集者が、数千 種類もの製品の中から最も卓越していると思われる製品を選定したものです。選定の基 本となるのは、技術やその応用の著しい先進性、設計の革新性、または価格対性能比 の向上です。 編集者は次のように述べています。「データレートの高い 4G(第 4 世代)無線技術であ る LTE を、通信事業者が積極的に展開するため、世界中の基地局メーカは、どのよう な周波数帯域および標準でも使用できるように、現場で簡単に設定できる多帯域、多 モードのプラットフォームを構築して、展開に必要なコストを抑えようとしています。IIP3 が 26.8d Bm のデュアル広帯域 RFミキサ LTC5569 は、26.8d Bm の IIP3、300mW/ チャネ ルの消費電力、300MHz ∼ 4GHz の広い周波数範囲を兼ね備えることによってこの目標 を達成しました。このため、LTC5569 を用いた受信機は、700MHz、880MHz、1.7GHz、 1.8GHz、1.9GHz、2.4GHz、および 2.6GHz 帯のすべての帯域で動作できます。LTE の 犠牲にすることなく受信する必要があります。LTC5569 は、これらの要求の両方を満た 24 コントローラ IC の性能領域に挑む 24V15A モノリ シック・スイッチング・レギュレータ 26 Stephanie Dai 最大 60V の入力から 25A/12V を供給する降圧コン バータ 28 Victor Khasiev 抵抗 1 本で調整を行う 1.5A レール ・ トゥ ・ レール 同期整流式降圧レギュレータ 30 Jeff Zhang back page circuits Electronic Products 誌は、LTC®5569 デュアル広帯域 RFミキサを Product of the Year とし 受信機は、各帯域内で、以前の 20MHz 幅と比較して広い 60MHz 幅の信号を、性能を DESIGN IDEAS LTspice IV の最新情報 Gabino Alonso Electronic Products 誌の 2011 年度 Product of the Year 受賞:LTC5569 RF ミキサ 32 しており、突出した性能を備えています。 」 EN-Genius Network 誌、Products of the Year および Products of the Decade をリニ アテクノロジーに授与 EN-Genius Network(旧 AnalogZone)誌は、リニアテクノロジーの µModule® ファミリを Best Product of Our Decade として選びました。編集者によりますと、「µModule の概念に よって、製品の設計者は、パワー・マネージメントに関する決定を、開発サイクルのか 」 なり後の方に移すことが可能になり、最終的な製品の選択が単純になりました。 「リニアテクノロジーは、この概念を 17 種類の「システム・イン・パッケージ」(SiP)シ グナルチェーン・レシーバ・モジュール・ファミリにも拡張しました。その最初の製品が、 弊社がここで論評した LTM®9001です。12/14/16ビット・ソリューションを特長とするSiPは、 RF の経験の浅い技術者が簡単に設計できるだけでなく、一部の個別 A /D コンバータの 輸出規制も回避します。 「実際に、µModule の概念は、リニアテクノロジーにとって営業的・技術的にも華々し いサクセス・ストーリーとなりつつあります。弊社はリニアテクノロジーの功績を称え、 µModule を Product of Our Decade(10 年間の最優秀製品)として認めることをうれしく 思います。 」 2 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation リニアテクノロジーのニュース EN-Genius Network 誌は、また、リニアテクノ • China Electronic Market 誌:Most Competitive ロジーの 373MHz ∼ 5.79GHz 整数分周方式 Power Product(最も競争力のあるパワー製品) シンセサイザ LTC6946 を Product of the Year の Editor s Choice Award( 編 集 者 特 選 賞 ): for Best Integer-N Synthesizer(整数分周方式 LTC4000 シンセサイザの年間最優秀製品)として選定 しました。同誌は以下のようにコメントしまし た。「このデバイスはリニアテクノロジーの RF 製品のレパートリーを強力に補完する新製品 であり、広い帯域幅の問題をすぐに処理する 必要のない設計者にとっても同様に魅力的で あることが明らかになるでしょう。 」 中国の電子技術関連の各賞 中国での電子技術出版物の主要数誌がリニア テクノロジーに賞を授与しました。 • EEPW( 電 子 産 品 世 界 ) 誌 の Editor s Choice Award(編集者特選賞) :Best Analog Product(最 優秀アナログ製品):LTC6803:ハイブリッド車 / 電気自動車向けバッテリ・スタック・モニタ Best Amplifier(最優秀アンプ):LT1999:高電圧の 双方向電流検出モニタ • Electronic Products China 誌:Annual Award( 年 間 賞) :LTM8047/8048 絶 縁 型 µModule DC/DC コ Enics 社の製造部門賞 電子機器製造サービスの最大規模の提供業者 びパワー・マネージャに対して、Innovation Award の1つである Enics 社は、スイスのチューリヒ を授与 表しました。Ocean Tomo 社の格付けによると、 リニアテクノロジーの特許ポートフォリオは 123というIPQ スコアを獲得しました。これは、 主要アナログ半導体メーカーの中で最高値で す。Ocean Tomo 社は、実績のある統計手法 に基づいて、特許資産を客観的に格付けする としています。リニアテクノロジーの増大しつ つある特許ポートフォリオと強力なアナログ知 的財産が第三者機関によっても高く評価され ました。 ンバータ • EDN China 誌:LTC4000 高電圧コントローラおよ (革新賞) 、Excellent Product Award(優秀製品賞) リニアテクノロジーの強力な特許ポートフォ リオを認知 Ocean Tomo 社は、特許資産の主要企業を発 で毎年開催される Enics Fair で、年間の最優 秀サプライヤを指名し、リニアテクノロジーを Best Component Manufacturer(最優秀部品メー カ)として表彰しました。 会議およびイベント: 第 27 回 電源システム展、東京ビッグサイト、7 月 11 日∼ 13 日、小間番号 6B-301̶リニアテクノロジー は、µModule 製品や FPGA パワー・マネージ メント・ソリューションなどのパワー製品を出 展しました。詳細については、www.jma.or.jp/ tf/en11/electronics/index.html をご覧ください。 EN-GENIUS NETWORK誌、PRODUCTS OF THE YEARおよびPRODUCTS OF THE DECADEをリニアテクノロジーに授与 EN-Genius Network(旧 AnalogZone)誌は、 リニアテクノロジーのµModule製品をBest Product of Our Decadeとして選びました。編集者によりますと、 「µModuleの概念によって、 製品の設計者は、パワー・マネージメントに関する決定を、開発サイクルのかなり後の方に移すことが可能になり、最終的な製品の選択が単純になりました。」 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 3 LT3796 は、入力電圧範囲が広く (6V ∼ 100V)、 レール・トゥ・レール(0V ∼ 100V)での出力電流検出および安定化が可能なので、太陽電池の 充電器から大出力 LED 照明システムまで、幅広いアプリケーションで 使用できます。 (LT3796、1 ページからの続き ) ど、任意の数の機能を設定するために、単独 堅牢な出力短絡保護機能を備えた大出力 LED ドライバ 広い入力電圧範囲で 34W の LED 列を駆動 の電流検出アンプを追加することも可能です。 する昇 圧コンバータとして構 成されている 入力電流制限や入力電圧レギュレーションな の定電圧ループが制御を行なって、出力を 92.5V に安定化します。OPENLED 状態を示す ため、VMODE フラグもアサートされます。 LT3796 は、LED 電流検出回路とは独立した LT3796 を図 1 に示します。入力電圧が低いと LT3796 は、 入 力 電 圧 範 囲 が 広 く(6V ∼ きは、出力のパワー部品が過熱しないように、 100V) 、レール・トゥ・レール(0V ∼ 100V) LED 電流はディレーティングされます。初段 での出 力 電 流 検 出および 安 定 化 が 可 能な 保護回路のしきい値(標準、375mV)は、デ ピンで入力電流を電圧信号に変換することに 照 明システムまで、 幅 広 いアプリケーショ フォルトの LED 電流検出しきい値より 50% 高 より、入力電流をモニタします。 ンで使用できます。固定周波数、電流モー ド・アーキテクチャにより、広範囲の電源電 VCSOUT = IIN • RSNS1 • 圧と出力電圧にわたって安定して動作します。 LT3796 は、ハイサイド電流検出回路を内蔵し 護機能により、過剰なスイッチング電流の発 生を防ぎ、パワー部品が保護されます。短絡 の電流検出アンプは、次式に従って CSOUT ので、 太 陽 電 池 の 充 電 器 から大 出 力 LED 短絡保護回路を内蔵しています。この短絡保 く設計されています。 R6 R5 FB1ピンに分圧抵抗を接続すると、OPENLED ているので、昇圧、降圧、昇降圧(SEPIC) 、 保護回路を実現できます。この回路は、出力 およびフライバックの各構成で使用することが 電圧を制限して、ISPピン、ISNピン、および できます。 いくつかの外付け部品がそれらの最大定格を 超えないように保護します。LED がオープン 状態になるか、LED 列が取り外されると、FB 図 1.堅牢な出力短絡保護機能を備えた 34W LEDドライバ VIN 9V TO 60V 100V (TRANSIENT) R1 1M circuits.linear-tech.co.jp/558 R2 118k R3 499k OPTIONAL INPUT CURRENT REPORTING R4 97.6k VS R6 40.2k PWM SYNC LED CURRENT REPORTING INTVCC R10 100k R9 100k FAULT VMODE GATE M1: INFINEON BCS160N10NS3-G M2: VISHAY SILICONIX Si7113DN L1: COILTRONICS DR127-220 D1: DIODES INC PDS5100 D2: VISHAY ES1C Q1: ZETEX FMMT589 LED: CREE XLAMP XR-E R8 13.7k M1 SENSE RSNS 15mΩ FB1 LT3796 SYNC ISP ISMON Q1 M2 TG FAULT INTVCC VMODE R11 402k (OPT) RLED 620mΩ ISN C4 0.1µF R11 OPTIONAL FOR FAULT LATCHOFF UP TO 400mA GND PWM VREF 4 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation CSN CSP EN/UVLO CSOUT C3 10nF C2 2.2µF ×4 100V R7 1M CTRL CSOUT D1 R5 2k VIN LTspice IV L1 22µH RSNS1 50mΩ IIN C1 2.2µF ×3 SS FB2 RC 10k C6 0.1µF CC 10nF D2 C5 4.7µF RT VC INTVCC 85V LED RT 31.6k 250kHz 設計特集 LT3796 は、電流安定化ループと 2 つの電圧安定化ループを継ぎ目な く組み合わせて外付けの N チャネルパワー・スイッチを制御すること により、限られた電力の問題、つまり定電流 / 定電圧制御の問題を解 決します。 SS 2V/DIV SS 2V/DIV LED+ 50V/DIV LED+ 50V/DIV SSピンと VREF ピンの間に抵抗を接続しない と、コンバータは断続モードに入り、図 2 に 示すように定期的にリトライするようになりま す。VREF ピンと SSピンの間に抵抗を配置して、 LED が短絡している間 SSピンの電圧を 0.2V より高い電圧に保持すると、LT3796 はラッチ FAULT 10V/DIV FAULT 10V/DIV IM2 1A/DIV IM2 1A/DIV オフ・モードに入り、図 3 に示すように GATE ピンが L で TGピンが H になります。ラッ チオフ・モードから抜けるには、EN/UVLOピ ンを L から H に切り替える必要があります。 5ms/DIV 5ms/DIV 図 3.短絡 LED 保護:ラッチオフ・モード (図 1 の R11 がある状態) PWM 調光比の高い LED ドライバ 入力を基準にした LED 列を使用すると、図 LED の過 電 流 が 検 出されると、GATE ピン ドに短絡された場合に PMOSM2 のドレインが ントローラとして機能させることができます。 は GND 電位に駆動されてスイッチングが停 グランドよりも大幅に低い電圧に振られて損 1MHz の動作周波数により、PWM 調光比を 図 2.短絡 LED 保護:一時中断モード (図 1 の R11 がない状態) 4 に示 すように、LT3796 を降 圧モード・コ 止し、TG ピンは H になって LED が電力 傷しないよう、保護するために追加します。ト 高くすることができます。OPENLEDレギュレー の経路から切り離され、FAULTピンがアサー ランジェント短絡電流を制限するため、PNP ション電圧は以下のように設定されます。 トされます。ショットキ・ダイオード D2 は、 ヘルパー Q1 が組み込まれています。 LED につながる長いケーブルの先端がグラン 1.25V • R3 R5 • +1 R6 R4 そのために、CSP、CSN、CSOUT の各ピンの VIN 16V TO 36V 図 4.PWM 調光比が 3000:1 の降圧モード LEDドライバ RLED 250mΩ 電流検出アンプは独立しています。PWM オフ LED+ M2 R3 100k R1 1M VIN R2 100k VS ISN ISP CSP VREF CSN CTRL CSOUT LT3796 R4 100k FB1 R6 124k L1 10µH ISMON SENSE INTVCC R8 100k RSNS 33mΩ R9 100k FAULT VMODE GND FAULT VMODE VC M1: VISHAY SILICONIX Si73430DV M2: VISHAY SILICONIX Si7113DN D1: ZETEX ZLLS2000TA L1: WÜRTH 744066100 LED: CREE XLAMP XM-L M1 GATE INTVCC SYNC RT RC 10k CC 4.7nF RT 6.65k 1MHz SS C4 0.1µF C3 4.7µF を維持します。また、PMOS のスイッチ M2 C2 10µF ×4 25V R5 1M FB2 C5 0.1µF べての内部負荷を切り離し、CC の充電状態 8V LED TG EN/UVLO PWM PWM LED CURRENT REPORTING の間、LT3796 は VC ピンに接続されているす 1A 図 5.図 4 の回路での 3000:1 の PWM 調光比 (VIN = 24V および PWM = 100Hz) D1 C1 2.2µF ×2 50V PWM 5V/DIV IL 1A/DIV INTVCC IL 1A/DIV 1µs/DIV 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 5 配線やケーブルでの電圧降下は、負荷レギュレーション誤差の原因になります。これらの誤差は、リモート センス配線を追加すれば補正できますが、一部のアプリケーションでは配線を追加できないことがあります。 この代替案として、LT3796 では、配線による電圧降下を負荷電流に応じて調整できます。ただし、配線ま たはケーブルの抵抗値が既めわかっていることが条件です。 OUT RSNS1 250mΩ • D1 1:1 C1 10µF • 図 6.この SEPICコンバータは、 コントローラと負荷との間の配線 での電圧降下を補償する (RWIRE) C2 10µF L1A 22µH VIN 12V M1 C3 10µF L1B + RWIRE C4 100µF 25V VLOAD 12V, 1A CURRENT LIMIT RSNS 33mΩ VIN C8 0.1µF VREF GATE SENSE GND EN/UVLO ISP ISMON ISN PWM LT3796 SYNC R3 154k SS VS CTRL VREF INTVCC R7 100k FAULT FAULT TG VC INTVCC RC 24.9k CC 10nF C6 4.7µF RWIRE 補償機能を備えた SEPIC コンバータ 配線やケーブルでの電圧降下は、負荷レギュ ます。これらの機能を組み合わせることにより、 レーション誤差の原因になります。これらの PWMピンの信号が H になったときの LED 誤差は、リモートセンス配線を追加すれば補 電流の回復時間が大幅に改善されます。この 正できますが、一部のアプリケーションでは 降圧モード LEDドライバは、図 5 に示すよう 配線を追加できないことがあります。この代 3000:1 の調光比を実現できます。 替案として、LT3796 では、配線による電圧降 下を負荷電流に応じて調整できます。ただし、 配線またはケーブルの抵抗値が既めわかって いることが条件です。 RWIRE 補償機能を使用した 12V の SEPIC コン バータを図 6 に示します。R SNS1 は、ISPピン および ISN ピンによって 1A の負荷電流制限 6 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation R5 12.4k INTVCC し、出力コンデンサが放電されないようにし に PWMピンの入力信号が 100H z の場合でも、 R4 287k FB1 VMODE RT 19.6k 400kHz をオフにして電力経路から LED 列を切り離 OUT CSOUT RT L1: WÜRTH 744871220 D1: ZETEX ZLLS2000TA M1: VISHAY SILICONIX Si4840DY C7 1µF CSP R6 100k VMODE R2 38.3k CSN FB2 C5 0.1µF R1 38.3k がかかるように選択されています。抵抗回路 網 R1 ∼ R5と LT3796 に内蔵の電流検出アン プ(図 7 の CSAMP)との組み合わせにより、 負荷電流に対して電圧降下分上昇するように OUTノードの電圧(VOUT)が調整されます。 これにより、VLOAD は、負荷の全範囲にわたっ て 12V 一定に保持されます。 LT3796 内部の CSAMP 回路がどのように動 作するかを図 7 に示します。LT3796 の電圧 ループは FB1ピンの電圧を 1.25V に安定化す るので、R5 = 12.4k の場合、I3 は 100µA 固定 で推移します。図 7 では、VOUT = 1.25V + I2 • R4 なので、VOUT は電流 I2 に応じて変化しま 設計特集 28 ピン TSSOP パッケージに封止された LT3796 は、いくつかの制御 IC および制御システムが必要とされる複数の作業を実行します。これ により、シンプルで低コスト、小型の信頼できるシステムが構築できます。 ILOAD R3 2 • (R WIRE ) = R1 R SNS1 RWIRE CSN CSP – I1 CSAMP R4 RWIRE = 0.5Ω VOUT 800mA 12.5 VLOAD LT3796 + R3 12V R2 R1 13.0 I2 VOUT/VLOAD (V) VOUT RSNS1 IOUT 500mA/DIV 12.0 11.5 11.0 VOUT 500mV/DIV (AC-COUPLED) 10.5 10.0 CSOUT FB1 = 1.25V R5 200mA 0 200 400 600 800 1000 1200 500µs/DIV ILOAD (mA) I3 図 7.RWIRE の電圧降下は、LT3796 の CSAMP 回路を 介して補償される 図 8.測定された VLOAD および VOUT 対 ILOAD 図 9.図 6 の回路の負荷ステップ応答 す。I2 • R4 の変化が ILOAD • (RSNS1 + RWIRE) まさにケーブルでの電圧降下を補償するため の変化を相殺できる場合、VLOAD は一定に保 です。 太陽電池パネルのバッテリ・チャージャ 太陽電池は、照度により発生するエネルギー たれます。 測定された VLOAD および VOUT 対 ILOAD のグ 図 7 を参照すると、VOUT に接続された分割抵 ラフを図 8 に示します。ILOAD が 1A の 電 流 抗 R1/R3と、R2 を流れる電流 I1 により、CSP 制限値より小さい場合、VLOAD が ILOAD に依 ピンで安定化される電圧が設定されます。I1 存していないことが明らかに見てとれます。 は、 それがI2と合流するFB1ノードに流れます。 ILOAD が 1A に近づくと、ISP ピンおよび ISN 出力電流が増加すると、R SNS 両端の電圧降 下が大きくなるので、I1 は減少します。この 減少分は、それに一致する大きさだけ電流 I2 を増加させて補償し、FB2 に流れる電流を一 定の 100µA に維持する必要があります。この ように、出力電流が増加すると I2 が増加する ピンでの電流ループは電圧ループに干渉し始 め、それに応じて出力電圧が低下します。負 荷トランジェント応答を図 9 に示します。 が変動するため、装置を常に動作可能とする ためには、太陽電池から得たエネルギーを 二次電池に貯蔵する必要があります。太陽電 池パネルには、最大電力点があります。これ は、太陽電池パネルが最大電力を出力でき る比較的一定の電圧です。最大電力点追従 制御(MPPT)は、通常、コンバータの出力 電流を制限して、パネルの電圧をこの値から 逸脱しないようにすることで実現されます。電 流ループと電圧ループの組み合わせという独 自の方式により、LT3796 は MPPT バッテリ・ チャージャ・ソリューションに最適です。 ことが、VOUT が正の負荷応答特性を示す要 因になります。正の負荷応答が必要な理由は、 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 7 WÜRTH SOLAR PANEL VOC = 37.5V VMPP = 28V C6 2.2µF 100V OUT BAT RSNS1 250mΩ • D1 1:1 C1 4.7µF 50V D2 15V • VIN L1A 33µH M2 R4 301k INTVCC R1 10k C2 10µF L1B R10 30.1k R9 10k NTC VCHARGE = 14.6V VFLOAT = 13.5V AT 25°C + BAT R5 137k R2 475k VIN VS CSN CSP M1 GATE EN/UVLO R3 20k SENSE RSNS 15mΩ CTRL CSOUT C3 0.1µF GND CSOUT R6 100k R11 93.1k FB1 FB2 PWM LT3796 VREF ISP OUT ISN BAT R8 113k M3 ISMON C6 0.1µF R12 10.2k SS C4 0.1µF VMODE SYNC TG INTVCC VC M1: VISHAY SILICONIX Si7456DP M2: VISHAY SUD19P06-60-E3 M3: ZETEX ZXM61N03F L1: COILCRAFT MSD1260-333 D1: ON SEMI MBRS260T3G D2: CENTRAL SEMI CMDZ15L R9: MURATA NCP18XH103F03RB FAULT RT RC 499Ω CC 22nF RT 19.6k 400kHz VMODE R7 49.9k C5 4.7µF INTVCC R13 49.9k FAULT 図 10.太陽電池パネル・バッテリ・チャージャの最大電力点追従制御(MPPT) 太陽電池パネルに接続され、LT3796 によっ 始めます。最後に、充電電流が 100mA より す。この 28Vという値は、図 11 に示すように、 て駆動される鉛バッテリ・チャージャを図 10 少なくなると、VMODE ピンを L にすること CTRLピンの電圧では 1.1V に対応し、フル充 に示します。このチャージャは、3 つのステー により、内蔵の C/10 終端検出機能によって充 電電流に相当します。したがって、 このサーボ・ ジの充電方式を採用しています。第一ステー 電回路がディスエーブルされ、チャージャは ループは、チャージャ・システムの電源要件を、 ジは定電流充電です。バッテリがいったん VFLOAT = 13.5V のフロート充電ステージに入っ 太陽電池パネルが供給できる最大電力まで動 14.35V まで充電されると、充電電流は減少し て、 自己放電によって生じた損失を補償します。 的に低下するよう働き、パネルの電力利用率 充電電流は、CSPピンおよび CSOUT(CTRL) ピンに接続した抵抗回路網により、以下のよ 1.2 うに設定されます。 1.0 VCTRL = R6 • ICHARGE (A) 0.8 FOR VIN ≥ VINTVCC 1+ 0.6 R4 R5 VCTRL = 0 V, 0.4 FOR VIN < VINTVCC 0.2 0 VIN − VINTVCC VINTVCC − , R4 R5 20 25 30 35 VIN (V) 図 11.図 10 の太陽電池チャージャの ICHARGEと VIN 8 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation 40 R4 1+ R5 最大電力点追従制御機能は、最大出力充電 電流を制御することによって実行されます。 充 電 電 流は、 太 陽 電 池パネル 出 力の電 圧 が 28V に向かって下がるのに従って減少しま が 100% に近づくよう維持します。 入力電流制限機能を備えたスーパーキャパ シタ・チャージャ スーパーキャパシタは、ポータブル機器向け の急速充電セルからマイクロプロセッサ向け の短期バックアップ・システムまで、数多くの アプリケーションでバッテリを急速に置き換え つつあります。スーパーキャパシタは、長寿命、 高性能で環境に優しく、長期的に見れば比較 的安価ですが、スーパーキャパシタを充電す るには、システム全体の損傷やスーパーキャ パシタの損傷を防ぐため、充電電流および電 圧制限の高精度の制御が必要です。 設計特集 RSNS1 150mΩ 1.33A MAX R1 20k VIN OUTPUT CURRENT REPORTING CSP CSN PWM VREF SYNC R2 124k C4 0.1µF C2 4.7µF ×2 50V R8 536k R9 24.9k M1 GATE ISMON INPUT CURRENT REPORTING AND LIMIT CSOUT C3 0.1µF VS L1B EN/UVLO VOUT = 0V TO 28V D1 • C1 10µF C7 0.1µF C6 10µF L1A 33µH • VIN 28V SENSE RSNS 33mΩ LT3796 1.67A MAX GND CSOUT FB1 FB2 ISP RSNS2 150mΩ SS ISN SUPERCAP TG INTVCC R7 100k R6 100k INTVCC FAULT FAULT CHGDONE C6 4.7µF VMODE CTRL VREF RT VC RC 499Ω VOUT L1: COILCRAFT MSD1260-333 D1: ON SEMI MBRS260T3G M1: VISHAY SILICONIX Si7850 Q1: ZETEX FMMT591A R3 499k C5 0.1µF R5 1M R10 499k R4 30.1k CC 22nF Q1 RT 19.6k 400kHz 図 12.入力電流制限機能を備えた 28V/1.67Aスーパーキャパシタ・チャージャ 一部のアプリケーションでは、入力電源が故 28 ピ ン TSSOP パ ッ ケ ー ジ に 封 止 さ れ た 障しないように入力電流を制限することが必 まとめ LT3796 は、高精度の電流安定化ループと電 要です。安定化出力電圧が 28V で入力電流 圧安定化ループを結合した、汎用性のある昇 ステムが必要とされる複数の作業を実行しま チャージャを図 12 に示します。入力電流は R SNS1 で検出されて電圧信号に変換され、FB2 圧 DC/DC コントローラです。1 つの電流ルー プと 2 つの電圧ループという独自の組み合わ せにより、複数の制御ループが必要なアプリ ピンに供給されて入力電流制限機能が実現さ ケーションが提起する問題を簡単に解決でき れます。 ます。該当するアプリケーションは、LEDドラ それぞれの充電サイクルでは、スーパーキャ パ シタ は 0V から充 電 され ま す。R3、C5、 R5、R10、R4、および Q1を介して RT に至る VOUT から RTピンまでの帰還ループは、レギュ レーションを制御状態に維持するため、周波 数フォールドバックとして機能します。図 13 では、このチャージャの出力電圧に対する入 力電流と出力充電電流がプロットされており、 入力電流が 1.33A の入力電流制限値に近づく まで、LT3796 が出力電流レギュレーションを 維持していることを示しています。 す。これにより、シンプルで低コスト、小型の 信頼できるシステムが構築できます。n 1800 イバ、バッテリ・チャージャ、スーパーキャパ シタ・チャージャ、MPPT 太陽電池チャージャ や、入力電流および出力電流に制限がある 昇圧コンバータまたは SEPIC コンバータです。 また、いくつかのフォルト保護機能や通知機 能、トップゲート・ドライバおよび電流ループ の通知機能も組み込まれています。 IOUT 1600 INPUT/OUTPUT CURRENT (mA) 制限値が 1.33A の 1.67A スーパーキャパシタ・ LT3796 は、いくつかの制御 IC および制御シ 1400 1200 IIN 1000 800 600 400 200 0 0 5 10 15 20 25 30 VOUT (V) 図 13.図 12 の 28V/1.67Aスーパーキャパシタ・チャージャ の入力電流 / 出力電流と出力電圧 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 9 ハンドヘルド機器のプラグを電源に差し込むと自動的にオンする オプション機能を備えたプッシュボタン式オン / オフ・コントローラ Vui Min Ho 大半の機械式押しボタン・スイッチは、押したときにバウンスが発生 するので、きれいな信号を押しボタンから生成するにはデバウンス回 路が必要であることがよく知られています。デバウンスの解決策は多数 あり、一般的にはフリップ・フロップや R-S ラッチが使用されます。た だし、デバウンス回路を設計して実装するのは思ったほど簡単ではなく、 特にハンドヘルド機器の場合に困難です。 押しボタンのデバウンス回路は常時オンと 入され、オン / オフ・スイッチを押す必要は なっている必要があるので、バッテリ駆動式 ありません。 のハンドヘルド機器では、消費電流が小さい ことが重要です。さらに、この回路は、スタ ンバイ電源からの電圧をリニア・レギュレー タの必要なく受け入れられることが必要です。 それに加えて、押しボタンの入力は、通常、 人間の指が接触する可能性があるので、動作 中に高い ESD レベルに耐えることができる必 要があります。最後に、プリント回路基板の 片隅に配置できるように、回路サイズは十分 に小さい必要があります。 LTC2955 プッシュボタン・コントローラは、こ 応答しない場合(KILLピンが H のままの 場合)には、システムの電源を強制的に切断 することもできます。これは、規定の電源オフ 期間より長い時間ユーザがボタンを押し続け るというよくある状態です。電源オフ期間は、 TMRピンのコンデンサによって調整可能であ り、偶発的なターンオフを防ぐために必要な だけ長くすることができます。 LTC2955 は、各押しボタン・イベント後のブ ランキング時間を備えた設計にもなっていま す。ブランキング時間には、すべての入力が LTC2955 は、LTC2955 の INT(割り込み)出 無視されます。これにより、押しボタンが押 力ピンおよび KILL 入力ピンを介してマイクロ された位置に保持されているか固定されてい プロセッサとのインタフェースをとるように設 る場合、EN 出力がオンとオフを継続的に繰 計されています。LTC2955 の INT 出力は、押 り返すことがなくなります。これらのブランキ しボタンが押されたことをマイクロプロセッサ ング時間により、電圧レギュレータには、そ に通知し、マイクロプロセッサが何らかの電 の出力を完全に充電するか放電するのに十分 源切断タスクを実行できるようにします。これ な時間が確保され、システムまたはマイクロ らのタスクが完了すると、マイクロプロセッサ プロセッサには、電源のオン / オフ・タスク は、(KILLピンを介して)システムをオフに を実行する時間が与えられます。さらに、電 切り替える準備が完了していることを伝達でき 源切断時のデバウンス時間を、外付けのコン ます。マイクロプロセッサが割り込み信号に デンサを使用して調整できます。これにより、 設計者は、一部のシステムが電源切断タスク れらの要件をすべてカバーします。このデバ イスは、ノイズの多い押しボタン入力から、 ラッチされたイネーブル出力を生成します。 イネーブル出力は、 アクティブ H(LTC2955-1) 図 1.機器の電源をプラグに差し込むと自動的に電源が投入される、 バッテリ駆動機器向けの押しボタンによるオン・オフ制御 またはアクティブ L(LTC2955-2)のオプショ ンが用意されているので、あらゆるシステム LT3060 WALL ADAPTER INPUT 12V またはレギュレータのオン / オフ入力を駆動 することができます。 P-CHANNEL MOSFET BATTERY INPUT 3.6V SHDN LTC4412 LTC2955 は、AC アダプタや自動車のバッテ VIN リなどの 2 次電源に機器をプラグ接続した場 GND SENSE VIN 合、システムの自動電源投入に使用できる電 CTL SEL 圧モニタ・ピン(ON)を備えています。これ STAT ON 9.6V THRESHOLD 200k であり、AC アダプタや充電器のケーブルを 電源に差し込むと、機器の電源は自動的に投 circuits.linear-tech.co.jp/559 1M PGD PB TMR LTspice IV EN LTC2955-1 2.21M はハンドヘルド機器で見られる一般的な機能 10 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation GATE INT GND KILL µP 設計特集 LTC2955 プッシュボタン・コントローラは、ノイズの多い押しボタン入力から、 ラッチされたイネーブル出力を生成します。イネーブル出力は、 アクティブ H またはアクティブ L のオプションが用意されているので、あらゆるシステム またはレギュレータのオン / オフ入力を駆動することができます。 を実行するのにより長い時間が必要な場合、 ているダイオード両端の電圧降下を減らす理 ン・ピンに ESD が印加された場合、デバイ 電源切断時間を延長できます。 想ダイオード・コントローラです。 スはその時点でのロジック状態を保持します。 LTC2955 は、昇圧レギュレータや LDO を追 LTC2955-1 の ON ピンは、抵抗分割器 R1 お 加する必要なく、最小 1.5V の単電池バッテリ よび R2 を介して 12V 入 力をモニタします。 から最大 36V の複数段電池までの入力で直 ユーザが AC アダプタを電源に差し込むと、 接動作することにより、部品点数を最小限に 12V 電源が供給されます。LTC2955-1 は、ON 抑えています。静止電流が 1.2μAと低いので、 ピンが H であることを検出し、32ms のデ 多用途の押しボタン入力 LTC2955 が必要とする外付け部品は、図 1 に バッテリの寿命が長くなります。このデバイス バウンス時間後に EN (イネーブル)ピンを H 示すように、ほとんどのアプリケーションでは デバイスはリセットすることもラッチアップす ることもないので、電源をいったん切って回 復させる必要はありません。 は、省スペースの 10 ピン 3mm × 2mm DFN にして電圧レギュレータをオンにし、システム わずか数個です。マイクロプロセッサとインタ パッケージと 8ピン ThinSOT ™ パッケージで に電力を供給します。これにより、ユーザが フェースをとる目的で使用するロジックレベル 供給されます。 AC アダプタを電源に差し込むとシステムに電 のピンを除き、ほとんどのピンは最大電圧で 源を自動的に投入できます。システムの電源 ある 36V に耐えられるので、外部電源や抵抗 プラグを差し込むと自動的に電源が入るハン ドヘルド機器 ハンドヘルド機器向けの標準的な LTC2955-1 アプリケーションを図 1 に示します。3.6V 電 源はハンドヘルド機器のバッテリから直接供 給されますが、12V の 2 次電源は AC アダプ タから供給されます。3.6Vと 12V の入力は、 どちらの電源もシステムに給電できるように、 ダイオード OR を介して LT3060 レギュレ ー タに接続されます。LTC4412 は、P チャネル MOSFET を制御して、3.6V 電源に接続され は、押しボタンを押すことによっても投入でき 分割器を接続する必要がありません。入力電 ます。LTC2955 は、PGD 出力ピンを H ま 源電圧が高い場合、特に、標準的な基板レ たは L にすることにより、それぞれ 12V 電 ベルの電源(5V など)が使用できない場合 源の有無をマイクロプロセッサに通知します。 でも、柔軟な設計が可能です。 押しボタン・ピンの ESD 保護 LTC2955 の PB(押しボタン)入力は、グラン で動作するように設計されています。このピン ドを基準にして最大 ±25kV(人体モデル)の は、±36V まで正負両方の電圧に耐えること ESD レベルに対して保護されています。この ができます。これにより、押しボタン・スイッ 保護レベルは、電源切断、電源投入、電源 チと LTC2955 の間のケーブルの引き回しを長 をバッテリから切り離した場合を含むすべて くすることができます。入力にリンギングが生 の動作モードで有効です。動作中に押しボタ じた場合でも、デバイスは損傷しません。 図 2.LTC2955-1 の波形 TURN ON PULSE 図 3.押しボタンの入力 SHORT PULSE LONG PULSE LTC2955 EXTERNAL SUPPLY PB EN PB 入力は、厳しい環境やノイズの多い環境 TURNS ON STAYS ON TURNS OFF VLDO OPTIONAL PULLUP RESISTOR D1 900k PB 0.8V – + INT INTERRUPT INTERRUPT 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 11 PB 入力は、厳しい環境やノイズの多い環境で動作するように設計されています。このピ ンは、±36V まで正負両方の電圧に耐えることができます。これにより、押しボタン・スイッ チと LTC2955 の間のケーブルの引き回しを長くすることができます。入力にリンギングが 生じた場合でも、デバイスは損傷しません。 VIN LTC2955-1 VLDO LTC2955-2 2µA D2 EN VOUT OPTIONAL PULLUP RESISTOR VIN M1 EXTERNAL SUPPLY OPTIONAL VIN VOUT PULLUP VOLTAGE RESISTOR REGULATOR EN CONTROL 900k EN SHDN EN CONTROL LTC2955-2 図4.LTC2955-1のEN出力 押しボタンのピン接続および内部回路を図 3 に示します。デバイス内部の 900k プルアップ 図5.LTC2955-2のEN出力 多用途のイネーブル出力 電圧レギュレータの SHUTDOWN 入力を駆 抵抗により、このピンを押しボタン・スイッチ 動する LTC2955-1 のアクティブ H EN ピン に直接接続することが可能です(もう一方の を図 4 に示します。LTC2955-1 の EN ピンは、 端子はグランドに接続します)。外付けのプル アクティブ・モードでは内部の 2µA プルアッ アップ抵抗は必要ありません。押しボタン・ プ電流によって 4.3V の H になります。より スイッチに漏れ電流が流れるアプリケーショ 高い値の VOH 電圧が必要な場合は、図に示 ンで、外付けのプルアップ抵抗が望ましい場 すようにオプションの外付けプルアップ抵抗を 合は、図に示すように、このオプションのプル 追加して、このピンの電圧を 4.3Vより高くす アップ抵抗を最大 36V までの任意の電圧に接 ることができます。ダイオード D2 は、外部電 続することができます。内部のダイオード D1 源の電流がデバイスに流れ込むのを阻止しま は、外部電源の電流がデバイスに流れ込む す。ENピンは最大 36V の H レベルにする のを阻止し、不必要な電流消費を防ぎます。 ことができます。 P チャネル MOSFET を駆動してシステム電源 を制御する LTC2955-2 のアクティブ L EN ピンを図 5 に示します。LTC2955-2 の ENピ ンは、 非アクティブ・モードの間は内 部の 900k 抵抗によって H になります。このピン が L になっているアクティブ・モードでは、 この 900k 抵抗が電源から切断され、900k 抵 抗で消費される静止電流が最小限に抑えられ ます。電源電圧より低い値の VOH が必要な場 合は、図に示すように、このピンをオプション 12 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation のプルアップ抵抗を介して外部電源に接続す ることができます。 ON 入力および SEL 入力は、36V までの電圧 に耐えることができます。これにより、抵抗 分割器を接続する必要なく、これらのピンを 高電圧の電源に直接接続することができるの で、抵抗分割器で消費される静止電流を最小 限に抑えることができます。 まとめ LTC2955 は、マイクロパワー(1.2µA)で入 力電圧範囲の広い(1.5V ∼ 36V)プッシュボ タン・コントローラ・ファミリです。これらの デバイスは、堅牢な押しボタン入力、柔軟な イネーブル出力、さらに高度な電源投入およ び電源切断機能を実現する簡素なマイクロプ ロセッサ・インタフェースを集積することによ り、システム・コストを低減し、バッテリの寿 命を延ばします。このデバイスは、省スペー スの 10ピン 3mm × 2mm DFN パッケージと 8 ピン ThinSOT パッケージで供給されます。n 設計特集 任意の 5V 電源から大容量バッテリを高効率充電する、 パワー素子内蔵の I2C 制御リチウムイオン・パワー・マネジメント IC David Simmons 携帯型電子機器の設計者は、あらゆる処理をこなすと同時に、1 回の 充電で無限に動作する装置を作り出すという難題を突きつけられてい ます。この難しい要求を完全に満たすことはできませんが、バッテリの 世代が進むに従って少しずつではありますが、目標に近づいています。 現在、大型で鮮明なタッチパネル式ディスプレイ、マルチコア CPU と グラフィック・プロセッサ、あらゆる場所で高速通信を行うための複数 の無線モデムを誇る装置では、大容量のバッテリが不可欠です。バッ テリ・メーカは、30 ワット時を超える容量を備えた、軽量で小型の電 池により、この目標を達成しました。 大電流充電と USB 給電の両立 LTC4155 は、小規模なプリント基板面積で 3.5A という高い電流で効率良く充電できるモノリ シック・スイッチング・バッテリ・チャージャ です。標準的アプリケーションで必要な部品 を図 1 に示します。2.25MHz のスイッチング 周波数により、小型のインダクタおよびバイパ ス・コンデンサを使用できるので、プリント基 板の総面積を最小限に抑えることができます。 高電流を効率良く充電できるということは、入 力電力の有効活用につながるだけではなく、 携帯型機器の内部の電力損失を抑えることに USB は装置の相互接続、同期、およびデー 場合でも、USB を介して満充電に至るために タ交換について主流の標準規格になりました は、一晩中充電しなくてはなりません。USB が、その電力供給能力は、バッテリ側の要求 は大容量バッテリのメイン電源としては適して に追い付いていません。USB 2.0 で対応でき いませんが、装置がパソコンなどの USB 給 る負 荷 は 最 大 2.5W です が、USB 3.0 では、 電機器につながっている時にバッテリの放電 限度が 4.5W に広がっています。効率が 100% を防ぐための補助電源としては有効です。 ですべての電力が直接バッテリに充電される も役立ちます。効率の悪い充電回路を用い、 密閉された狭い空間で大量の電力損失が発 生すると、機器を手で持つことができなくな る位に温度が上昇してしまいます。LTC4155 の内蔵パワー・スイッチは、100mΩ を十分に 下回るオン抵抗特性を備えており、機器の温 度を上げずに充電することが可能です。 LTC4155 のパワー・スイッチは、USB から供 給可能な電流よりも多くの電流を処理できるサ イズになっており、LTC4155 は、補助的な充 電について USBとの完全な互換性を維持しま 図 1.I2C 制御の大電力バッテリ・チャージャ/USB パワー・マネージャ L1 1µH WALLSNS WALLGT 5V INPUT VOUTSNS VOUT VBUS 10µF TO µC TO µC 3 BATGATE USBSNS ID AC アダプタやその他の電源と併用した場合に は、最大 3A までのその他の電流リミットを任 意に選択することもできます。 100k IRQ OVGCAP CLPROG1 CLPROG2 GND VC 1.21k トが選べます。これらの設定値のうち 3 つは、 900mA という保証最大限度に対応しています。 MP1 BATSNS NTCBIAS I2C す。入力電流は内部で自動的に測定され、 ユー ザがI2C 経由で設定可能な16 種類の電流リミッ USB 2.0 の 100mA および 500mA、USB 3.0 の CHGSNS LTC4155 USBGT 3.6k TO SYSTEM 22µF LOAD SW NTC 2.4A PROG 0.047µF 499Ω Li-ION BATTERY L1: COILCRAFT XFL4020-102ME MP1: VISHAY Si5481DU-T1-GE3 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 13 高電流を効率良く充電できるということは、入力電力の有効活用につなが るだけでなく、携帯型機器の内部の電力損失を抑えることにも役立ちます。 LTC4155 の内蔵パワー・スイッチは、100mΩ を十分に下回るオン抵抗 を備えており、機器の温度を上げずに充電することが可能です。 100 1.75 90 1.50 70 LOAD CURRENT (A) EFFICIENCY (%) 80 60 50 40 30 20 900mA MODE 1.25 1.00 500mA MODE 0.75 10 0 VFLOAT = 4.05V VBAT = 3.9V 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 LOAD CURRENT (A) 3.0 3.5 0.50 2.4 2.7 3.0 3.3 3.6 BATTERY VOLTAGE (V) 3.9 4.2 図 2.スイッチング・レギュレータの効率 図 3.バッテリの放電前に利用可能な USB 準拠の負荷電流 LTC4155 は、ピンでプログラム可能な電源投 が AC アダプタ、専用の USB チャージャ、ま LTC4155 は、その 2 つの電源入力のそれぞ 入時のデフォルト入力電流をサポートしてい たは USB 以外のその他の電源であることをシ れに対して、I2C でプログラム可能な独立した ます。USB 互換性を必要としない大電力アプ ステムが検出すると、入力電流制限の設定値 入力電流制限値をサポートしています。優先 2 リケーションでは、CLPROG1ピンに 1 本の抵 は、I C 制御によって最大 3A のその他の設 順位の高い入力電源を取り外すと、入力電流 抗を接続することにより、デフォルトの電源投 定値まで増加できます。 制限がより小さい新しい値に自動的に減少し、 複数の入力間のシームレスな切り換え LTC4155 は、オプションで 2 つの電源からの マイクロコントローラがリアルタイムに制御す 入時入力電流が設定されます。この抵抗は、 特定のアプリケーション、目的の電源供給能 力などに最適な初期電流制限値に対応するよ うに選択されます。入力電流制限値は、電源 入力を受け付け、2 つの異なる物理コネクタ 充電を途切れずに継続できます。システム・ る必要はありません。 から製品へ高度な判別処理をして電力を供給 入力マルチプレクサの外付け部品の選択に するという課題を解決します。2 つの入力電 よっては、アプリケーションで必要な場合、 源が同時に接続されると、どちらの電源を使 ±77V までの過電圧保護および逆電圧保護 USB アプリケーションの場合は、CLPROG1 用するかの判断は、ユーザがプログラム可能 を 容 易 に 実 現 できます。さらに、LTC4155 ピンおよび CLPROG2ピンを 1 箇所に接続す な優先順位に基づきます。各入力電圧が有 は、 外 付 け部 品を追 加 することなく、USB 投入後、I2C 制御により、3A までの 16 種類 の設定値のいずれかに変更できます。 ることにより、USB 電流制限規則を適用する 効な動作範囲内にある限り、どちらの電圧が On-The-Go 対応の 5V 電流制限付き電源を よう LTC4155 を設定できます。 入力電流制 他方より高いかを気にする必要なく、いずれ USB コネクタに供給できます。 限のデフォルト値は、外部電源を印加すると たとえば、 か一方を選択できます。これにより、 100m A になります。USB ホスト・コントロー 4.5V/2A の AC アダプタを 5V/500m A の USB ラによる確認が正常に完了すると、入力電流 ポートより優先させることができます。この 制限の設定値は、I 2C 制御によって 500m A ま USB 接続を取り外して、同じポートに 5V/3A たは 900m A に増加できます。システム負荷 の AC アダプタを接続すると、入力電源の優 およびバッテリ・チャージャに供給可能な電 先順位は I2C を介して変更され、より電力の 流を図 3 に示します。スイッチング・レギュレー 大きい新しい電源に切り替わります。 タの出力電流は、USB 制限の入力電流より 大きい値であることに注意してください。電源 14 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation 設計特集 LTC4155 は、オプションで 2 つの電源からの入力を受け付け、2 つの異なる 物理コネクタから製品へ高度な判別処理をして電力を供給するという課題を解 決します。2 つの入力電源が同時に接続されると、どちらの電源を使用するか の判断は、ユーザがプログラム可能な優先順位に基づきます。 4.4 84 4.3 72 HOT FAULT 48 TOO WARM 36 NOMINAL 24 IVOUT = 0A, VFLOAT = 4.2V 100% CHARGE CURRENT MODE 50% CHARGE CURRENT MODE 12.5% CHARGE CURRENT MODE CHARGER DISABLED 4.2 VOUT VOLTAGE (V) TEMPERATURE (°C) 60 12 TOO COLD 0 4.1 4.0 3.9 3.8 3.7 3.6 –12 3.5 –24 3.4 0 16 32 48 64 80 ADC CODE 96 112 2.4 2.7 3.0 3.3 3.6 BATTERY VOLTAGE (V) 3.9 4.2 図4.LTC4155バッテリ温度データ・コンバータの伝達関数。 自律的なチャージャ遮断温度のしきい値を強調表示。 図 5.VOUT の電圧とバッテリ電圧 充電アルゴリズムのためのプログラミング性 および遠隔測定 LTC4155 は、I2C ステータスの連続通知機能 バッテリ温度の連続データをシステム・ソフ では、自律的なチャージャ遮断温度のしきい トウェアで読み取って、システムまたはチャー 値が強調表示されています。 を備えているので、入力電源の状態、フォル 極端な動作状態を管理できます。たとえば、 ト状態、バッテリ充電サイクルの状態、バッ テリの温度、およびその他のいくつかのパラ メータをシステム・ソフトウェアによってすべ て表示することができます。 2 重要な充電パラメータを I C 制御によって変 更して、カスタマイズした充電アルゴリズムを ジャの動作を動的に適合させ、制限値付近の フロート電圧または充電電流あるいはその両 方を I2C 制御によって低減し、高い周囲温度 でのバッテリの安全余裕度を増やすことがで きます。同様に、充電電流または全システム 負荷電流は、製品筐体内部でのさらなる発熱 を抑えるため、高温に対応して低減すること POWERPATH 瞬時オン動作 バッテリに直接接続されているほとんどの従 来型ポータブル機器の電源構成では、過放 電のバッテリが問題になる可能性があります。 バッテリ電圧が低すぎてシステムが動作でき ない場合は、入力電源に接続した数分後で あっても、製品が反応しないように見える場 合があります。これによって、サポートデスク 実現できます。マイクロコントローラ・ベース ができます。 の充電アルゴリズムやその他のプログラム可 バッテリ・チャージャのプログラミング性のそ す。供給できる充電電流に比べてバッテリの の他すべての側面と同様に、LTC4155 は、ソ 容量が非常に大きい場合、問題はさらに複雑 能充電アルゴリズムとは異なり、ソフトウェア の I 2C 制御によって設定できる LTC4155 の可 能なすべての設定値は、バッテリにとって本 質的に安全です。4.2Vより高いか、4.05Vよ り低いフロート電圧を設定することはできませ ん。同様に、バッテリ充電電流は、15 種類 の可能な設定値のいずれかに設定できます が、バッテリ容量および最大充電速度に一致 するようにプログラミング抵抗を選択すること によって、設計者が設定したレベルを超える 制限値をソフトウェアで設定することはできま せん。 への無用な電話がかけられる可能性がありま フトウェアによる調整なしで(あるいは調整が になります(たとえば、大容量バッテリを備え あってもそれに関係なく)本質的に安全な充 た USB 給電システムなど)。 電の解決策を実現します。セルの温度が 0℃ より低くなるか、40℃より高くなると、バッテ リの充電は必ず一時停止します。さらに、セ ルの温度が 60℃より高くなるたびに、フォル トによる割り込みを任意に発生させることがで きます。LTC4155 バッテリ温度データ・コン バータの伝達関数を図 4 に示します。この図 LTC4155 な ど、 リ ニ ア テ ク ノ ロ ジ ー の PowerPath ™製品は、システムの電源レールを バッテリから切り離して瞬時オン動作を可能に し、完全に放電したバッテリによって生じる最 も厄介な 2 つの問題を解決します。 最初の問題は、システムの電源レールをバッ テリに直接接続すると、充電電流とシステム 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 15 LTC4155 は、入力電圧が許容できないレベルまで低下し始めると入力電流を自動的に低減する機能を備え ています。充電電流レベルが高いと、細い線で接続された場合、小型のアダプタに接続された場合、軽度 の腐食があるコネクタを介して接続された場合、または設計時には想定していなかったいくつかの条件が重 なった場合に、入力電圧が下がってしまうことがあります。 負荷が区別できなくなることです。バッテリが LTC4155 のバッテリ充電電流は、バッテリ充 完全に放電している場合、セルの電圧がより 電電流の制約を入力電力の制約から切り離す まとめ LTC4155 は、高い電流供給能力と高い効率を 安全なレベルに達するまで、初期の充電電流 ために、入力電流制限値とは無関係に設定さ 兼ね備えたモノリシック IC で、プリント基板 を大幅に減らすようバッテリ・メーカは推奨し れます。入力電流制限値は、入力電源の制 の占有面積が小さい大容量のリチウム・バッ ています。このトリクル充電電流は、システ 限事項のみに基づいて設定できます。同様に、 テリで動作する携帯型機器に最適です。こう ムの負荷電流が最小か流れないと仮定して、 バッテリ充電電流は、バッテリ容量のみに基 した機器では、基板スペースに余裕がなく、 バッテリの安全レベルに設定する必要があり づいて設定できます。LTC4155 は入力電流制 発熱や充電時間が敵となります。USB 互換の ます。 限を常に実施し、必要に応じて、バッテリの 入力電流制限設定値により、汎用性がさらに 充電よりもシステム負荷への電力供給を優先 拡張され、広く普及しているが比較的低出力 させます。 の電源から補助的な充電が可能です。広範な 第 2 に、直接接続のバッテリ・システムでは、 トリクル充電中にシステムが動作している場 合、バッテリに流す予定の充電電流のかなり 遠隔測定により、自律的なバッテリの安全性 の部分がシステム・レールに分流することで 理想的ではない電源であっても堅牢 LTC4155 は、入力電圧が許容できないレベル す。その結果、バッテリの充電電流が減少し、 まで低下し始めると入力電流を自動的に低減 それに比例して回復時間が長くなります。シ する機能を備えています。充電電流レベルが ステム負荷が相当に大きい場合は、正味の 高いと、細い線で接続された場合、小型のア バッテリ電流が逆方向に流れるので、バッテ ダプタに接続された場合、軽度の腐食がある リをさらに放電します。この低電圧バッテリ状 コネクタを介して接続された場合、または設 態の期間中、携帯型システムの電源レールの 計時には想定していなかったいくつかの条件 電圧が不十分なので、システムはユーザに応 が重なった場合に、入力電圧が下がってしま 答できない場合があります。バッテリとシステ うことがあります。 ム電源レールは共通接続されており、ここに 供給される電力が減るので、無応答の期間は 10 倍以上長くなります。 ユーザが介入しない場合、IC への入力電圧 は降下し続け、最終的には低電圧ロックアウ トしきい値より低くなります。IC はその後シャッ LTC4155 は、バッテリが完全に放電されてい トダウンし、入力電圧を回復させてサイクル る場合、システムのレールに 3.5V を供給し 全体を再開できるようになります。LTC4155は、 て、瞬時の起動を可能にします。充電前の段 悪い状況の中で最善を尽くします。入力電圧 階でバッテリ電圧が上昇すると、LTC4155 は、 が 4.3V まで低下すると、LTC4155 は、 入力 継ぎ目なく自動的に高効率モードに移行して、 電圧がさらに減衰するのを防ぐために必要な 充電速度を上げ、熱産生を最小限に抑えます。 大きさだけ入力電力をスムーズに低減します。 システム電源レールに供給可能な電圧をバッ このモードでは、システム負荷およびバッテ テリ電圧の関数として図 5 に示します。 リに供給される電流は設定値より少なくなりま すが、入力電圧が低電圧ロックアウトと回復 をくり返した場合よりも多くなります。さらに、 LTC4155 は、I 2C ステータス・レポートおよび オプションの割り込み信号を発生して、最大 限の充電電流供給機能を復元するために、エ ンド・ユーザが是正または診断することが必 要であることをシステムに通知します。 16 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation を損なうことなく、充電環境やアプリケーショ ンの条件に基づいて、カスタム動作が可能で す。完全に放電したバッテリや細い抵抗性の 入力電源ケーブルなど、よくある問題に面し た場合でも、連続した電力がシステム・レー ルに供給されます。LTC4155 は、4mm × 5mm の 28ピン QFN パッケージで供給されます。n 設計特集 効率が 95% で低ノイズ動作の 15V、2.5A モノリシック昇降圧 DC/DC コンバータ Eddy Wells 消費電力の大きいポータブル機器や産業用計測器では、多くの場合、増大し続ける処理能力を満たすため に、マルチセル・バッテリや大容量バッテリが必要です。電圧範囲が広く高効率の昇降圧 DC/DC コンバー タは、バッテリの稼働時間を長くして複数の入力電源を扱うための理想的な解決策です。LTC3112 は、2.2V ∼ 15V の入力に対応する 2.5A の昇降圧コンバータです。入力電圧範囲が広いので、1 本から 3 本までの リチウムイオン電池、鉛蓄電池、スーパーキャパシタ、USB ケーブル、AC アダプタなど、さまざまな電源 から、2.5V ∼ 14V の範囲の電圧に変換できます。 LTC3112 は、 最新世代の昇降圧 PWM 制御 VIN ピンと FBピンの間に接続されているフィー 方式を特長としており、降圧動作と昇圧動作 ドフォワード回路網(図 2 の CFF、R FF)によ が切り替わるときに発生するジッタを、最小 り、AC アダプタの電圧が印加された場合のト 限に抑えることができます。電流制限、過電 ランジェント応答が改善されます。フィードフォ 圧保護、サーマル・シャットダウン、短絡保 ワード回路網の値は、まず、VIN が 3.6V から 護などの保護機能により、過酷な環境で堅牢 12V に遷移したときの COMPピンでの電圧変 な動作を実現します。 化を測定することで選定します。COMPピンで は 380mV の変化が観測されたので、VIN およ 部品サイズまたは変換効率が重要なアプリ ケーションでは、LTC3112 のデフォルトのス イッチング周波数である 750k Hz を要求に応 じて 300k Hz ∼ 1.5MHz の範囲で同期させる ことができます。 出力電流を制御または測 定する必要がある設計では、出力電流モニ タ・ピンを使用できます。選択可能な Burst Mode® 動作により、装置がスタンバイモード のときの動作寿命が長くなります。 図 1 に示す LTC3112 ベースのコンバータは、 12V の出力で 30W の電力を発生できます。ソ 2 リューションの占有面積は 200mm 未満です。 同様な電力レベルでは、コントローラ・ベー スの昇降圧コンバータや複雑なデュアル・イ ンダクタ SEPIC コンバータでは、このような 大きさにおさめることは到底不可能です。主 な外付け部品は、入力および出力のフィル タ・コンデンサとパワー・インダクタに限られ ています。LTC3112 は、熱特性が改善された 4mm × 5mm の 16ピン DFN パッケージまた は 20ピン TSSOPパッケージで供給されます。 び R FF の最適値は次のように計算できます。 図 1.LTC3112 ベースの 30Wソリューション CFF = 複数の入力電源による動作 LTC3112 は動作電圧範囲が広いので、複数の 電力源から給電できます。LTC4412 PowerPath コントローラ(TSOT-23 パッケージ)が、2 つの 入力電源のうち損失の低い方を選択するアプリ ケーションを図 2 に示します。LTC4412 は、選 択されている P チャネル MOSFET 両端の 20mV の順方向電圧を維持して、損失を最小限に保ち ます。この回路では、1 本のリチウムイオン電池 と 12V の AC アダプタのうち、電圧の高い方を LTC3112 の入力に接続するよう、LTC4412 が自 動的に切り替えます。 2 つの電力源に対する効率カーブを図 3 に示 します。いずれの入力の場合も、90% より高 いピーク効率が実現されます。標準のスリー プ 電 流 が 50µA の Burst Mode 動 作( 破 線 ) では、20 倍を超える負荷電流範囲にわたって 高い効率を維持しています。 RFF = VCOMP • (CFB + CP ) = 33pF VIN RFB • CFB = 681k CFF VOUT のレギュレーションは、 出力コンデン サが 47µF( 図 4)で負 荷 が 500m A の 場 合、 15µs の遷移時間中、300mV つまり 6% 以内 に維持されます。VIN の立ち下がりエッジは 約 10 倍低速なので、さらに小さい過渡変動 になります。 図 2 の 補 償 部 品を 使 用した場 合 の 3.6V 入 力、5V 出力の負荷ステップ応答を図 5 に示 します。この場合、出力コンデンサが 47µF の VOUT では、250mA から 1A への負荷ステップ に対して、わずか 250mV の過渡変動という結 果になります。入力電圧と出力電流負荷ステッ プの両方について、優れた応答を得るために、 LTC3112 のループ応答をどのように設定できる かを図 4 および図 5 に示します。 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 17 LTC3112 は、最新世代の昇降圧 PWM 制御方式を特長としており、降 圧動作と昇圧動作が切り替わるときに発生するジッタを最小限に抑える ことができます。 AUXILIARY P-CHANNEL MOSFET 12V WALL ADAPTER RFF 681k CFF 33pF 0.1µF VIN 図 2.LTC3112コンバータに給 電する最も高い電圧の入力を選 択するLTC4412 PowerPathコ ントローラ BURST PWM GATE CTL STAT 5V バックアップ電源 一部のデータベース・システムでは、1 次電 SW2 BST1 VIN BST2 VOUT LTC3112 47µF OFF ON 1µF 470k PWM/SYNC GND OVP 適です。 47pF 10k 42.2k 47µF 158k 入力に供給されるエネルギーは、次式によっ に、合計 22m F のスーパーキャパシタが 15V て得られます。 に充電されます。ESR の小さい電解コンデン ので、図 6 に示すようなアプリケーションに最 845k RFB 33k TO ADC 1V PER AMP 100pF VOUT 5V 1.5A この回路では、1 次電源が供給されている間 サまたはセラミック・コンデンサを並列に接 範囲が広く、降圧と昇圧の両方に対応できる CFB 680pF FB IOUT るための時間が必要です。必要なエネルギー パシタが使用されます。LTC3112 は入力電圧 COMP RUN 源が故障した場合、データをバックアップす を供給するために、多くの場合、スーパーキャ 0.1µF 22pF LTC4412 VIN SENSE GND SW1 VCC PRIMARY P-CHANNEL MOSFET Li-ION BATTERY CELL 4.7µH されるので、LTC3112 のゲートドライバーは、 1 2 2 EIN = • CIN • ( VINITIAL ) − ( VFINAL ) 2 22mF = • 152 − 2.22 2 = 2.4J 15V から 2.2V までの入力電圧で効率的に動 バックアップの結果を図 7 に示します。VIN と 続して、VIN のリップルを最小限に抑えます。 この例では、VCC ピンが 5V 出力から逆駆動 作することができます。 GND 間の分圧抵抗を介して RUN ピンを駆 動することにより、VOUT をきれいに立ち下げ ることができます。この例では、250 m A の定 図 3.1 本のリチウムイオン電池(3.6V)または ACアダプタ (12V) を入力とする5V 出力の効率 図 4.3.6V から12V への入力ステップと結果として得られる VOUTトランジェント 図 5.250mA から1A への負荷ステップと結果として得られ るVOUTトランジェント 95 PWM VIN 5V/DIV EFFICIENCY (%) 90 12V 3.6V Burst Mode Operation 85 VOUT 1V/DIV 80 75 70 VOUT 500mV/DIV VIN = 3.6V VIN = 12V 0.1 1 10 100 ILOAD (mA) 1A 18 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation 10A IL 1A/DIV IL 1A/DIV 20µs/DIV 200µs/DIV 設計特集 LTC3112 は、小型で大電流を供給できるので、処理能力の向上したポータ ブル機器に最適です。ソリューション・サイズや変換効率は、50mΩ の N チャ ネル MOSFET スイッチや熱特性が改善されたパッケージの恩恵を受けてい ます。 VOUT 4.7µH 499k BAT54 0.1µF VIN 15V TO 2.2V + 22mF SUPERCAP STACK + + SW2 BST1 VIN BST2 VOUT VCC 1M LTC3112 COMP PWM/SYNC 図 6.VIN = 2.2Vまで動作する 5Vレールのバックアップ電源 0.1µF 680pF VOUT 5V/500mA 33k 845k 499k FB RUN IOUT GND OVP 1µF バックアップ中の負荷電流を測定できます。 47µF 47pF 22pF 220µF + 電流が負荷として LTC3112 から流れるので、 SW1 TO ADC 1V PER AMP 100pF 42.2k 10k 158k まとめ LTC3112 は、広い入力電圧範囲または出力 VIN のコンデンサがレギュレーションを維持で 設計での重要な検討事項は、昇降圧コンバー きるのは 1.7 秒となり、平均の変換効率は、 タの最大出力電流能力です。図 8 に示すよう スーパーキャパシタの損失を含めて 88% にな に、VIN >> VOUT の場合、LTC3112 は最大 4A ります。 の負荷電流を供給できます。コンバータが降 LTC3112 は、小型で大電流を供給できるので、 圧モードから昇圧モードに移行すると、それ 処理能力の向上したポータブル機器に最適 に応じて最大負荷電流は減少します。 です。ソリューション・サイズや変換効率は、 EOUT = IOUT • VOUT • t = 250mA • 5V • 1.7s 電圧範囲を必要とするさまざまなアプリケー ションで、低ノイズの昇降圧変換を行います。 50mΩ の N チャネル MOSFET スイッチや熱特 = 2.1J 性が改善されたパッケージの恩恵を受けてい 前述の例は、スーパーキャパシタの電圧定格 ます。稼働時間を長くするため、Burst Mode と、バックアップに必要なエネルギーに応じ での低い静止電流により、数桁にわたる負荷 て簡単に調整できます。IOUT ピン(図 6)を 電流範囲で高い効率を維持しています。同期 A /Dコンバータによってモニタすることにより、 したスイッチング周波数、設定可能な出力電 圧、負荷電流モニタ、外部ループ補償などの 図 7.電源をバックアップ中のスーパーキャパシタの放電 性能 図 8.VOUT = 5Vで VCC に逆給電した回路での最大出力 電流とVIN 機能により、LTC3112 は、アプリケーションの 要求に合わせて調整できます。n 4.5 MAXIMUM OUTPUT CURRENT (A) VIN 5V/DIV VOUT 5V/DIV RUN 5V/DIV ILOAD 500mA/DIV 500ms/DIV 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 VIN (V) 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 19 2つの電源の負荷バランスを取る電流制御 IC Pinkesh Sachdev 故障は許されない。これをモットーにしているのは、 今日の常時稼働インフラ (通信ネットワーク、 インターネット、 電力系統など)の設計技術者でしょう。問題は、 このインフラの構成要素(小さなコンデンサから高度なブレー ドサーバまで)の寿命には限りがあり、 マーフィの法則に従って常に最悪のタイミングで故障するということです。 故障問題を回避するための対策として良く採られている方法は、冗長性の確保です。つまり、重要部品が故障 した場合には、すぐにバックアップできるシステムを必ず用意するのです。 たとえば、高可用性のコンピュータ・サーバは、 ダイオード OR は、電圧の最も高い電源が全 • 電圧の低い方の電源は常に動作状態である 通常、各基板に電力を供給するほぼ同等な 2 負荷電流を供給する、単純な優先方式です。 ため、バックアップ電源に移行したときに、 つの DC 電源を搭載して出荷されます。各電 電圧の低い方の電源は、動作実行が呼び出 その電源が知らないうちに既に故障してい 源は単独で全負荷に耐えられる能力を持って されるまでアイドル状態のままです。1 + 1 の たという心配はありません。単純なダイオー おり、2 つの電源はパワー・ダイオードを介 解決策は、実現が容易ですが非効率的で資 ド OR システムでは、そのような不安は残り して互いにダイオード OR 接続され、単一の 源が無駄になります。資源をより有効に使用 ます。 1 + 1 冗長電源が形成されます。つまり、電圧 すれば、全体的な動作効率を改善して寿命を の高い方の電源が負荷に電力を供給し、もう 延ばすことができます。電源が負荷を分担す 一方の電源はアイドル状態で待機します。故 る方がはるかに優れており、以下に示すいく 障や取り外しのためにアクティブな電源の電 つかの利点があります。 圧が降下するか失われると、以前は電圧の低 • 各電源が負荷の半分を担い、電源の熱を い方だった電源がより高い電圧の電源となる ので、この電源が負荷を引き継ぎます。ダイ オードは電源間の逆給電および相互導通を防 止すると同時に、システムを電源の故障から 保護します。 分散して電源部品に加わる熱ストレスを軽 減すると、電源の寿命は延びます。電子部 品の寿命の経験則として、部品の故障率は 温度が 10℃下がるたびに半減するといわれ ています。これは、信頼性が大幅に向上す ることを示しています。 0.1µF NC 故障からの復旧がより円滑で迅速です。 • 半分の能力で動作している 2 つの電源で形 成された DC/DC コンバータの方が、ほぼ 最大限の能力で動作している 1 つの電源よ りも全体的な変換効率は高くなります。 電圧と、共通負荷までの電源経路の抵抗値に VIN1 よって決まります。これは、垂下電流分担とし GATE1 OUT1 VCC 2mΩ 10A FETON2 RANGE OUT2 VIN2 11.875V FETON1 LTC4370 EN2 CPO2 電源数の増加 / 減少により行われるので、 数の電源間での分割は、個々の電源の出力 39nF* GND • 電源の変更が電源のオン / オフではなく、 通の負荷電流を分担できます。負荷電流の複 + 325mV – SUM85N03-06P EN1 CPO1 接続して大型電源を構築することが可能で す。 電流分担の方法 複数の電源の出力を接続すると、各電源が共 5A 12.2V • 負荷分担システムでは、小型電源を並列に 2mΩ 11.875V GATE2 COMP 39nF* 11.9V *OPTIONAL, FOR FAST TURN-ON 0.18µF SUM85N03-06P + 25mV – 5A 20 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation 図 1.ダ イ オ ードOR 接 続 さ れ た 2 つ の 12V 電 源 間 で 10A の 負 荷 電 流 の バ ランスを 取るLTC4370。電 流 分 担 は、 MOSFET の電圧降下を調整して、電源 電圧の不整合を相殺することによって実 現する。 て知られています。電源の逆給電を防止して、 故障した電源からシステムを切り離すために、 各電源と直列にダイオードを挿入します。もち ろん、この追加したダイオードの電圧降下は 負荷分担のバランスに影響します。 設計特集 LTC4370 は電流分担の新たな枠組みを導入します。この枠組みでは、個々の電源の寄与分は完全なアクティ ブ制御状態になりますが、余分な配線のある共有バスは必要ありません。単純なダイオード OR による垂下 電流分担システムと同じくらい簡単に完全な制御を実現できます。ただし、従来の受動ダイオードは、能動 的な平衡電流分担を実現するために調整できるターンオン電圧を備えた、調整可能なダイオードに置き換え られています。 垂下電流分担は単純ですが、分担精度の制 電流分担コントローラ LTC4370 は、リニアテクノロジー独自の可変 負荷分担を実現する内部ブロック図を図 2 に 御は不十分であり、直列ダイオードには電圧 OUT2 ピンの間の差動電圧をモニタします。 損失および電力損失があります。電流分担の ダイオード電流分担技法を特長としています。 より制御された方法は、電源電流をモニタし、 このデバイスは、ターンオン電圧を変更して それを各電源で必要な平均電流と比較して、 平衡分担を実現できる可変ダイオードとして 必要な値と電源電流が一致するまで(そのト 機能する外付けの N チャネル MOSFET を使 リム・ピンまたは帰還回路網を介して)電源 用して、2 つの電源間で負荷のバランスをとり 電圧を調整するというものです。この方法で ます。2 つの 12V 電源間で 10A の負荷を分担 は、各電源からの必要な電流を通知するた している LTC4370 を図 1 に示します。 示します。エラーアンプ EA は、OUT1ピンと EA は 2 つのサーボ・アンプ(SA1、SA2)の 順方向レギュレーション電圧 VFR を、電源ご とに 1 つ設定します。サーボ・アンプは、外 付け MOSFET 両端の順方向電圧降下が順 方向レギュレーション電圧に等しくなるよう に、MOSFET(したがってその抵抗成分)の めに、すべての電源を結ぶバスが必要です。 ゲートを調整します。エラーアンプは、電圧 電流分担のループ補償は、電源のループ動 の低い方の電源の VFR を最小値の 25mV に 特性に対応するためにカスタマイズされます。 制御された電流分担では、注意深い設計と、 すべての電源へのアクセスが必要ですが、そ れが常に可能とは限りません。 図 2.LTC4370 の負荷分担関連の内部ブロック図 I1 R1 M1 VSUPPLY1 C1 この記事では、電流分担の新しい方法を紹介 します。この方法では、個々の電源による寄 与分を能動的に制御できますが、垂下電流 分担の簡潔さを備えています。このシステム VIN1 GATE1 CPO1 OUT1 では、ダイオードが、平衡した電流分担を実 現するために調整できるターンオン電圧を持 CHARGE PUMP1 SA1 つ調整可能なダイオードに置き換えられます。 + – VFR1 COMP + – これにより、垂下電流分担よりも分担精度が 向上し、調整可能なダイオードで消費される 電力は、電流分担を実現するために必要な最 小値に抑えることができ、従来のダイオードで OUT1 – OUT2 EA SERVO ADJUST の電力損失よりもはるかに小さくなります。共 CC + gm = 150µS 有バスが不要なので、電源に依存しないより 10µA ます。トリム・ピンや帰還回路網を使用する + – 簡易な補償機能と再現性の高い設計を実現し のが難しいか、その手段がない電源では、こ VFR2 – + SA2 VIN2 GATE2 CHARGE PUMP2 CPO2 VCC RANGE R3 + 0.3V DISABLE LOAD SHARE – + – の技法が最適です。 TO LOAD VCC OUT2 C2 R2 VSUPPLY2 I2 M2 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 21 NORMALIZED CURRENT I2 VRANGE = 500mV I1 1 1 = 2RS SLOPE 0.5 I1 I2 0 –500mV 0 VIN1 – VIN2 = ∆VIN 500mV SHARING CAPTURE RANGE ±∆VIN(SH) 図 3.電源電圧の差が変化するのに 応じた LTC4370 手法の電流分担特性。 MAXIMUM M2 MOSFET POWER DISSIPATION IL • RS MAXIMUM M1 MOSFET POWER DISSIPATION MOSFET FORWARD DROP VFR(MAX) 525mV VFWD2 VFWD1 電流分担特性 LTC4370 の電流分担特性、調整可能なダイ オード方式を図 3 に示します。ここには 2 つ のグラフがあり、いずれも X 軸は電源電圧の 差(ΔVIN = VIN1 – VIN2)を示しています。上 側のグラフは負荷電流で正規化した 2 つの電 源電流を示します。下側のグラフは MOSFET VFR(MIN) –500mV 両 端の順 方 向 電 圧 降 下 VFWDx を示します。 25mV 0 500mV VIN1 – VIN2 = ∆VIN DRAWING IS NOT TO SCALE! 設定します。電圧の高い方の電源のサーボ電 圧を調整することは、機能的に同等です。調 圧は、2 つの電源電圧の差に 25mV を加えた 整範囲は、最小値の 25mV から、RANGE ピ 値に設定されます。従って、2 つの OUTピン ンで設定される最大値までです(後述の 設 の電圧は等しくなります。OUT1 = OUT2 は、 計上の検討事項 を参照)。 I1 • R1 = I2 • R2 であることを意味します。した がって、R1 = R2 の場合は、I1 = I2 となります。 値の異なる検出抵抗に対しては、簡単な調整 を使用して比例分担を設定できます。つまり、 I1/I2 = R 2/R1 となります。負荷電圧は最も低い 電源電圧より 25mV 低い値になることに注意 してください。 MOSFETとサーボ・アンプの組み合わせ回路 このコントローラが負荷を複数の電源で分担 できるのは、0V ∼ 18V の範囲です。2 つの 電源が両方とも 2.9Vより低い場合は、VCC ピ ンに 2.9V ∼ 6V の範囲の外部電源を接続し て、LTC4370 に電力を供給する必要がありま す。逆電流の条件では、MOSFET のゲート は 1µs 以内にオフします。順方向電圧降下が ゲートは 1µs 以内にオンします。 大きい場合も、 は、ターンオン電圧が順方向レギュレーショ 電圧の低い電源の場合に重要な高速ターンオ ン電圧と等しいダイオードのように動作しま ンを実現するには、内蔵のチャージポンプ出 す。MOSFETは、その順方向電圧降下がレギュ 力に蓄電(平滑)コンデンサを接続します。 レーション電圧より小さくなるとオフになりま このコンデンサは、デバイスの電源投入時に す。MOSFET の電流が増加すると、ゲート電 充電され、高速ターンオン時に 1.4A のゲート 圧が上昇してオン抵抗を減少させ、順方向電 プルアップ電流を供給します。 圧降下を VFR に維持します。この動作が行わ れるのは、ゲート電圧が調整範囲から外れて ソースより 12V 高い電圧になるまでです。電 流がさらに増加すると、MOSFET 両端間の降 下電圧は、I FET • R DS(ON) として直線的に増加 します。 EN1ピンおよび EN2ピンは、それぞれのチャ ネルの MOSFET をオフするために使用できま す。電流は引き続き MOSFET のボディ・ダイ オードを流れるので注意してください。2 つの チャネルが両方ともオフになると、デバイス の電流消費量は電源当たり 80µA に減少しま 従って、エラーアンプがサーボ・アンプの順 す。FETON 出力は、MOSFET がオンまたは 方向レギュレーション電圧を設定することと、 オフのいずれの状態であるかを示します。 MOSFET ベースのダイオードのターンオン電 22 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation 2 つの電源電圧が等しい(ΔVIN = 0V)場合 は、電源電流が等しくなり、2 つの順方向電 圧は最小サーボ電圧である 25mV になります。 VIN1 が VIN2 より大きくなる(ΔVIN が正になる) と、VFWD2 は 25mV のままですが、VFWD1 は、 ΔVIN によって OUT1 = OUT2 が維持される値 まで増加します。これにより、I1 = I2 = 0.5ILOAD が実現されます。 RANGE ピンで設定される VFWD の調整には 上限があります。図 3 の例では、この制限値 は 525mV で、RANGE ピンを 500mV にする ことで設定されます。VFWD1 がいったんこの 制限値に達すると、電流分担は不平衡にな り、VIN1 がさらに上昇すると OUT1 の電圧は OUT2 の電圧より高くなります。 不平衡状態は、VFR(MAX) – VFR(MIN) ≧ 500mV で、この条件では多くの負荷電流が電圧の高 い方の電源から供給されます。 OUT1 – OUT2 = ILOAD • RSENSE になると、全 負荷電流が I1 に移ります。ここは MOSFET M1での電力損失が最大になる動作点です。 全負荷電流が最大順方向電圧降下で M1 を 流れるからです。 た と え ば、10A の 負 荷 電 流 が 流 れ ると、 MOSFET で の 損 失 は 5.3W(= 10A • 525mV) になります。ΔVIN がさらに増加すると、コント ローラは M1 両端の順方向電圧降下を最小値 の 25mV まで徐々に減少させます。 これにより、負荷電流が分担されないときに VIN が大きくなった場合、MOSFET での電力 設計特集 負荷を分担する電源に対する全く新しい手法により、設計が容易になり ます。特に稼働中の微調整に適していない電源が当てはまります。ダ イオード本来の動作により、電源が逆電流から保護され、故障してい る電源からシステムが保護されます。 損失が最小限に抑えられます。この動作は、 負の ΔVIN の場合にも同様に行われます。 この例での電流分担が行われるための電位差 の許容範囲は 500mV であり、RANGEピンの 電圧で設定されます。この範囲では、コント ローラは ±250mV の許容誤差で電源を分担 できます。これを言い換えると以下のようにな ります。3.3V 電源の許容誤差は ±7.5%、5V 電源の許容誤差は ±5%、12V 電源の許容誤 差は ±2% です。 設計上の検討事項 負荷分担設計におけるいくつかの概略の検討 事項を以下に示します。 MOSFET の 選 択 ̶ 理 想 的 には、MOSFET の R DS(ON) が十分小さいものを選び、コントロー ラが MOSFET 両端での順方向レギュレーショ ン電圧の最小値である 25mV をサーボ制御し た場合、MOSFET を流れる電流が負荷電流 の半分になるようにします。R DS(ON) が大きい と、コントローラは 25mV を制御できません。 この場合、制御されていない電圧降下の値は 0.5I L • R DS(ON) です。この電圧降下が大きくな ると、(今度は VFR(MAX) – 0.5IL • R DS(ON) で定 義される)分担の区切り点が早めに出現し、 許容範囲が縮小します。 MOSFET は、 図 3 に 示 す よ う に 最 大 で IL • VFR(MAX) の電力を損失するので、MOSFET のパッケージおよびヒートシンクは適切に選択す ることが必要です。 MOSFET での電力損失を少なくする方法は、 より高精度な電源を使用するか、電流分担範 囲を狭くする以外にはありません。 RANGE ピン ̶ RANGEピンは、アプリケーショ ンの電流分担の電位差の範囲を設定します。 その結果として、この範囲は電源の精度に依 存します。たとえば、許容誤差が ±3% の電 源を備えた 5V システムでは、2 • 5V • 3% つ 図 4.ステータス表示灯付きの 5Vダイオード OR 負荷分担回路。赤色 LED の D1 は、いずれ かの MOSFET がオフになると点灯し、分担状 態が中断していることを示す。 39nF EN1 まり 300 mV の電位差範囲が必要に 0.1µF なります(電圧が高い方の電源は 5.15V で、 電圧が低い方は 4.85V で す)。RANGEピンからは、高精度の SUM85N03-06P VINA 5V CPO1 LTC4370 GND RANGE す。RANGE ピンに 30.1k の抵抗を接続す EN2 OUT1 FETON1 FETON2 OUT2 30.1k 内部プルアップ電流 10µA が流れま VIN1 GATE1 VCC CPO2 820Ω SHARE OFF 2.5mΩ 2.5mΩ OUT 10A VIN2 GATE2 COMP 0.18µF 39nF VINB 5V D1 D1: RED LED LN1251C SUM85N03-06P ると、RANGE ピンの電圧は 301mV に設定さ れるので、コントローラは 300mV の電源電位 差を補償できます(図 4 参照)。 まとめ 複数の電源間で負荷電流のバランスを取るこ (図 1 に示すように)RANGE ピンを開放の とは、常に困難な問題であり、手品を使って ままにすると、 可能な最大分担範囲である 綱渡りの曲芸を見せるようなものです。電源 600mV が得られます。ただし、サーボ電圧が モジュールや電源の構成要素に組み込みサ ダイオード電圧に近づくと、電流は MOSFET ポートが用意されていない場合、一部の設計 のボディ・ダイオードを流れることができるの 者は、十分に制御されたシステムを設計する で、分担の損失が発生します。RANGE ピン のに多大な時間を費やします(さらに、電源 を VCC に接続すると、負荷分担が無効にな タイプが変わるたびにシステムを再設計する り、デバイスはデュアル理想ダイオード・コン ことになります)。その他の設計者は、粗削 トローラに変わります。 りな抵抗ベースの垂下電流分担法で我慢しま 補償 ̶ 負荷分担のループは、COMPピンと す。 グランドの間に接続された 1 個のコンデンサ LTC4370 は、負荷を分担する電源に対して、 によって補償されます。このコンデンサの容 他のコントローラとはまったく異なる手法を取 量は、MOSFET のゲート容量 CISS の 50 倍に り入れています。この手法を使うと設計が容 する必要があります。高速ゲート・ターンオ 易になります。特に、稼働中の微調整に適し ンを使用しない(CPOピンにコンデンサを接 ていない電源の設計が当てはまります。また、 続しない)場合、容量は 10×CISS に設定しま この手法はさまざまな種類の電源に適用でき す。 ます。ダイオード本来の動作により、電源が センス抵抗 ̶ センス抵抗の精度と値は、負荷 分担の精度を決定します。抵抗の電圧降下が 大きくなると、精度が向上します。エラーア ンプの最大オフセット電圧は 2mV です。した 逆電流から保護され、故障している電源から システムが保護されます。LTC4370 は、複雑 な問題に対して、単純で明快な小型のソリュー ションを提供します。n がって、検出抵抗の電圧降下が 25mV の場合、 分担の誤差は 4% になります。精度よりも電 力損失の方が重要な場合は、抵抗値を小さく することができます。 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 23 LTspice IV の最新情報 Gabino Alonso 新しいビデオ:Evaluating Electrical Quantities(電気的な量の評価) 新しい実用ガイド・ビデオ 新しいデモ回路 Evaluating Electrical Quantities video.linear-tech.co.jp/115 µModule レギュレータ • LTM8047:725V DC 絶縁型低ノイズ µModule LTspice Ⅳ波形ビューワでは、回路性能の視覚 レギュレータ(入力:3.1 ∼ 29V、出力: 的な解析を通して、基本的な測定を行ないま 5V/280mA)www.linear-tech.co.jp/LTM8047 • LTC3866:きわめて低い DCR 電流センスを用い た高効率 1.5V/30A 降圧コンバータ(4.5V ∼ 20V、 出力:1.5V/30A)www.linear-tech.co.jp/LTC3866 LED ドライバ • LT3799-1:アクティブ力率補正(PFC)機能を す。ただし、回路性能の詳細な数値解析が必 • LTM8048:LDO ポスト・レギュレータを備えた 要な場合もあります。このため、.MEASURE 725V DC 絶縁型低ノイズ µModule レギュレー 命令を使用すると、以下のような測定を直接 ン ト ロ ー ラ( 入 力:277VAC、 出 力:3A/36V) タ(入力:3.5V ∼ 30V、出力:5V/120mA およ www.linear-tech.co.jp/LT3799-1 実行できます。 • 立ち上がり時間、立ち下がり時間、および 遅延時間 • 平均、RMS、最小、最大、およびピーク・トゥ・ ピーク • Y の発生時に X を探す • 導関数評価および積分評価 この 新 し い ビ デ オ で は、 数 値 解 析 で の .MEASURE 命令の使用法の例を示します。 び 5.7V/120mA) モノリシック・スイッチング・レギュレータ • LTC3103:リチウム・バッテリ・バックアップ電源 を備えた、太陽電池式降圧電源(入力 :3.2V ∼ 15V、出力 :2.2V/300m A) www.linear-tech.co.jp/LTC3103 • LTC3115-1:低電圧ロックアウトを備えた 12V、1MHz 昇降圧レギュレータ(入力:10V ∼ 40V、出力: 12V/1.4A)www.linear-tech.co.jp/LTC3115-1 スイッチング・レギュレータ・コントローラ • LT3798:アクティブ力率補正(PFC)機能を備 えたオプトカプラ不要の絶縁型フライバック・ コントローラ(入力:90VAC ∼ 265VAC、出力: LTspice IV とは LTspice® IV は、電源設計の作業を迅速化 するための高性能 SPICE シミュレータ、回 路図入力プログラム、および波形ビューワ です。LTspice IV では、SPICE を拡張してモ デルを加えたことにより、標準的な SPICE シミュレータと比較してシミュレーション時 間が大幅に減少しており、他の SPICE シミュ レータでは数時間を要するほとんどのス イッチング・レギュレータの波形を数分以 内に表示できます。 LTspice IV は、www.linear-tech.co.jp/LTspiceで、 リニアテクノロジーから無償で入手できま す。このダウンロードには、LTspice IV の 完全機能版、リニアテクノロジーのパワー 製品のマクロ・モデル、200 種類を超える オペアンプ・モデル、ならびに抵抗、トラ ンジスタ、MOSFET のモデルが含まれてい ます。 24 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation 備えたオフライン絶縁型フライバック LED コ 24V/2A)www.linear-tech.co.jp/LT3798 • LT8582:+5V から ±12V を出力する 1.5MHz デュアル・コンバータ(入力:+5V、出力: ±12V/550mA)www.linear-tech.co.jp/LT8582 • LTC3765/LTC3766:アクティブ・クランプ・フォ ワード・コンバータ(入力:18V ∼ 72V、出力: 12V/12.5A)www.linear-tech.co.jp/LTC3765, www.linear-tech.co.jp/LTC3766 • LTC3838:DCR による差 動 電 流 センス 機 能 を 備えたデュアル 出 力、350k Hz 降 圧コンバータ ( 入 力:4.5V ∼ 38V、 出 力:1.2V/15A お よ び 1.5V/15A)www.linear-tech.co.jp/LTC3838 • LTC3839:R SENSE による差動電流センス機能を 備えた 2MH z、2 相降圧コンバータ(入力:4.5 ∼ 14V、出力:3.3V/25A) www.linear-tech.co.jp / LTC3839 マクロ・モデル µModule レギュレータ • LTM8026:36V 入 力、5A CVCC 降 圧 µModule レギュレータ www.linear-tech.co.jp/LTM8026 • LTM8029:静止電流が 5µA の 36V 入力、 600mA 降圧 µModule コンバータ www.linear-tech.co.jp/LTM8029 モノリシック・スイッチング・レギュレータ • LT3692A: モノリシック・デュアル・トラッ キング 3.5A 降圧スイッチング ・ レギュレータ www.linear-tech.co.jp/LT3692A • LT3973:静止電流が 2.5µA で、ダイオード内蔵 の 42V、750m A 降圧レギュレータ www.linear-tech.co.jp/LT3973 • LT3988:デュアル 60V モノリシック 1A 降圧 スイッチング・レギュレータ www.linear-tech.co.jp/LT3988 • LT3992:モノリシック・デュアル・トラッキング 3A 降圧スイッチング ・ レギュレータ www.linear-tech.co.jp/LT3692 • LT8610:静止電流が 2.5 µ A の 42V、2.5A 同 期整流式降圧レギュレータ www.linear-tech.co.jp/LT8610 • LT8611:電流検出機能を備え、静止電流が 2.5µA の 42V、2.5A 同期整流式降圧レギュレータ www.linear-tech.co.jp/LT8611 設計上のアイデア モ デ ル、 デ モ 回 路、 イ ベ ント、 お よ び ユ ー ザ の ヒントに 関 する最 新 情 報 に つ いては、 以 下 の Twitter サ イトで @LTspice をフォロ ーしてくだ さい。 www.twitter.com/LTspice • LTC3600:1 本の抵抗で設定可能な 15V、1.5Aレー • LT3796:デュアル電流検出アンプを備えた ル・トゥ・レール同期整流式降圧レギュレータ 100V 定電流 / 定電圧コントローラ www.linear-tech.co.jp/LTC3600 www.linear-tech.co.jp/LT3796 • LTC3630:高効率、65V、500m A 同期整流式降 圧コンバータ www.linear-tech.co.jp/LTC3630 スイッチング・レギュレータ・コントローラ • LT3798:アクティブ力率補正(PFC)機能を備 えたオプトカプラ不要の絶縁型フライバック・ 差動アンプと A/D コンバータ・ドライバ • LTC6362:高精度、低消費電力のレール・トゥー・ レール差動入力 / 差動出力オペアンプ /SAR A /D コンバータ・ドライバ インダクタ不要コンバータ • LTC3260:低ノイズの 2 電源反転型チャージポンプ www.linear-tech.co.jp/LTC3260 • LTC3261:高電圧、低静止電流の反転型チャージ ポンプ www.linear-tech.co.jp/LTC3261 コントローラ www.linear-tech.co.jp/LT3798 • LTC3861:高精度電流分担機能を備えた、マル チフェーズ電圧モードのデュアル降圧 DC /DC コ ントローラ www.linear-tech.co.jp/LTC3861 www.linear-tech.co.jp/LTC6362 システム監視回路、モニタおよび制御 • LT4363-2:電流制限機能を備えた高電圧サージ・ ストッパー www.linear-tech.co.jp/LT4363 • LTC2960:36V ナノ電流 2 入力電圧モニタ www.linear-tech.co.jp/LTC2960 • LTC2955-1/-2:自動電源投入機能を備えたプッ シュボタン・オン / オフ・コントローラ www.linear-tech.co.jp/LTC2955 n LED ドライバ • LT3791:60V、4 スイッチ同期整流式 昇降圧 LEDドライバ・コントローラ www.linear-tech.co.jp/LT3791 パワー・ユーザのヒント 回路図と波形プロットへの注釈付け テキストを使用して回路図に役に立つコメントを追加するのは非常に便 利です。ただし、線、矩形、円、または円弧を回路図に追加して回路 の説明をした方が、より判り易くなるケースもあります。たとえば、トラ ンスのコアを 2 本の線で強調することなどです。こうした図形による注 釈は、「Edit」メニューの「Draw」を使えば付けることができます。これ らの図形による注釈を格子にはめ込みたくない場合は、位置決めの間 Ctrl キーを押したままにします。 波形プロットには、テキスト、矢印、線、ボックス、および円で注釈を 付けることができます。これらの注釈は、プロット内の特定の結果を同 僚に説明する場合に効果的です。プロットの注釈の他に、 「Move」および 「Drag」も「Plot Setting」メニューの「Notes & Annotations」にあります。プロッ トに注釈を付ける場合は、(「Plot Setting」メニューで選択できる)「Plot Setting」ファイルを介して注釈を保存する必要があります。こうしないと、 注釈は保存されません。 シミュレーションを楽しんでください ! 回路図と波形プロットに追加 された図形による注釈の例。 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 25 コントローラ IC の性能領域に挑む 24V15A モノリシック・スイッチング・レギュレータ Stephanie Dai 現在の DC/DC コンバータの主役は、モノリシック・スイッチング・レギュレータとスイッチング・コントロー ラの 2 つです。一般に、それぞれの用途が重なることはあまりありません。コントローラ方式が採用される ケースは、電力損失と熱伝導性能が優先される、高性能、大電力アプリケーションです。一方、モノリシッ ク・レギュレータ方式が支持されるのは、小型に組み上げなければならない低消費電力アプリケーションで す。通常はコントローラの方がモノリシック・ソリューションより機能が豊富ですが、ソリューション・サイズ の点では大幅に不利です。モノリシック・レギュレータは、占有面積は小さくなりますが、通常は機能と効 率が犠牲となり、さらに内蔵の MOSFET に依存するので電力に関して実用上の制限があります。 LTC3613 モノリシック・レギュレータは、機能 は、25℃で ±0.25%、0℃∼ 85℃で ±0.67%、 プからわずか数サイクル以内に回復できます。 の充実した高性能コントローラと R DS(ON) の低 -40℃∼ 125℃で 1% です。 このアーキテチャにより、複数の LTC3613 間 い内蔵の MOSFET を組み合わせることによ り、コントローラのアプリケーションとモノリ シック・レギュレータのアプリケーションとの 間に引かれた境界線に挑みます。 で適切にバランスのとれた電流分担を実現で LTC3613 の最小オン時間は 60ns なので、高 きるので、大電力アプリケーションでは簡単 いスイッチング周波数で降圧比を高くするこ に並列化できます。このデバイスは、外部ク とができます。高度なオン時間制御、谷電流 モード・アーキテクチャにより、オン時間は、 入力電圧および負荷が定常状態の条件でス 特長 LTC3613の入力電圧範囲は4.5V∼24Vで、 0.6V イッチング周波数が一定になるように制御さ ∼ 5.5V の出力電圧範囲をサポートします。内 れます。また、LTC3613 は大きい負荷ステッ ロックに同期するためのフェーズロックループ (PLL)回路を内蔵しており、並列化された 位相の交互配置によって出力電圧リップルを 最小限に抑えることができる大電流、低出力 電圧のアプリケーションには特に有用です。 蔵の上側 MOSFET および下 側 MOSFET は、 それぞれおよそ 7mΩ および 5mΩ という低い RDS(ON) を特長としており、電力損失が低く抑え られるので、LTC3613 は最大 15A の負荷電流 を供給できます。 LTC3613 は、真のリモートセンス電圧検出機 能を備えています。これにより、最大負荷電 流を流し、グランド・プレーンを共有にした 場合でも、出力の正確なレギュレーションが 可能になります。この機能は、出力電圧の低 いアプリケーションで重要です。こうしたアプ リケーションでは、基板配線上での寄生 IR 電圧降下によってわずかな電圧誤差が生じて も、レギュレーション精度が数 % 低下する可 能性があるからです。リモートセンス電圧検 出機能と、LTC3613 の高精度内部リファレン スの組み合わせにより、入力電圧、負荷、お よび温度に対する優れた出力レギュレーショ ン精度が得られます。レギュレーション精度 26 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation 図 1.インダクタの DCR 検出を使用してソリューション・サイズおよびコストを最小限に抑え、効率を最大限に高める、 24V 入力から1.2V 出力を得る回路 LTspice IV INTVCC RPGD 100k RDIV1 52.3k PVIN 350kHz CSS 0.1µF CITH1 220pF RITH 28k CIN2 10µF VOUT PGOOD LTC3613 VRNG RDIV2 10k circuits.linear-tech.co.jp/560 SVIN RUN SENSE– SENSE+ MODE/PLLIN EXTVCC SW CDCR RDCR 0.1µF 3.09k L1 0.56µH VOUT 1.2V 15A CB 0.1µF BOOST TRACK/SS DB INTVCC ITH INTVCC CVCC 4.7µF CITH2 100pF RT 115k VIN CIN1 6V TO 24V 82µF 25V + RFB2 20k RFB1 20k COUT2 100µF ×2 + PGND RT SGND VOSNS+ VOSNS– CIN1: SANYO 25SVPD82M COUT1: SANYO 2R5TPE330M9 3613 F10 DB: CENTRAL CMDSH-3 L1: VISHAY IHLP4040DZ-056µH COUT1 330µF 2.5V ×2 設計上のアイデア LTC3608 LTC3609 LTC3610 LTC3611 LTC3613 PV IN(MAX) 18V 32V 24V 32V 24V I LOAD(MAX) 8A 6A 12A 10A 15A 周波数同期 高精度差動出力 検出 ±1% ±1% ±1% ±1% ±0.67% 正確な電流検出 下側 FET の R DS(ON) 下側 FET の R DS(ON) 下側 FET の R DS(ON) 下側 FET の R DS(ON) R SENSE または DCR による検出 MOSFET の R DS(ON) 上側 / 下側 10mΩ/8mΩ 18mΩ/13mΩ 12mΩ/6.5mΩ 15mΩ/9mΩ 7.5mΩ/5.5mΩ パッケージ 7mm × 8mm × 0.9mm 64 ピン 7mm × 8mm × 0.9mm 64 ピン 9mm × 9mm × 0.9mm 52 ピン 9mm × 9mm × 0.9mm 52 ピン 7mm × 9mm × 0.9mm 56 ピン 表 1.大電力モノリシック・レギュレータ・ファミリ LTC3613 は、過電圧保護や電流制限フォー 力ピンを備えているので、大電力アプリケー 入力から 1.2V を出力する、降圧比の高いソ ルドバックなど、いくつかの安全機能および ションで効率上のメリットを得るために、デバ リューションでの DCR 検出向けに構成されて 保護機能を内蔵しています。出力が設定値の イス内部の LDO をバイパスすることができま おり、350k Hz の外部クロックに同期していま 7.5% を超えると、これは過電圧(OV)状態 す。 す。効率を図 2 に示し、トランジェント性能を とみなされ、上側 MOSFET は即座にオフし、 下側 MOSFET は OV 状態が解消されるまで オンします。デバイスが 0.6Vリファレンス電 圧の ±7.5% の枠から外れるとフラグが立つパ ワーグッド出力モニタも使用できます。出力 が短絡した場合、出力電圧が 50% より大きく 低下すると、最大検出電圧はその最大限の値 の約 4 分の 1 に減少し、インダクタ電流レベ ルを最大値の 4 分の 1 に制限します。 LTC3613 は、その出力電圧トラッキング機能 およびソフトスタート機能を通じて、起動シー ケンス中およびシャットダウン・シーケンス中 も、出力を高精度に制御します。外部 VCC 入 LTC3613 は、直列接続の検出抵抗 RSENSE ま たはインダクタの DCR 検出回路網を介してイ 図 3 に示します。 ンダクタ電流を検出するように構成できます。 まとめ LTC3613 は、ソフトスタート、設定可能な周 2 つの電流検出方式のどちらを選ぶかは、主 波数、外部クロックへの同期、調整可能な電 としてコスト、消費電力、および精度によっ 流制限、選択可能な軽負荷動作モードなど、 て決まります。DCR による検出は、センス抵 ユーザが設定可能なさまざまな機能を内蔵し 抗が不要なのでローコストかつ低損失という ているので、標準的なモノリシック・スイッチ メリットがあります。一方、電流センスの精度 ング・レギュレータと比較してはるかに優れた を最も高めるためにはセンス抵抗方式が優れ 設計の柔軟性があります。過電圧保護、 フォー ています。 ルドバック電流制限を備えた設定可能な電流 LTC3613 の標準的なアプリケーションを図 1 に示します。このアプリケーションは、24V 制限などの重要な安全機能により、デバイス の堅牢性が向上します。大電力アプリケーショ ン向けに、外部 VCC 入力が用意されています。 小型ソリューション・サイズ、多彩な機能セッ 図 2.図 1 のレギュレータの効率 図 3.図 1 の回路の負荷トランジェント応答 EFFICIENCY (%) 80 PULSE-SKIPPING MODE するしかなかった分野でも使用することが可 50 能です。アプリケーションに最適です。n VOUT 100mV/DIV 70 60 ノリシック・ソリューションと比較して使用範 囲が広がっており、従来コントローラを検討 100 90 ト、および高性能の機能群により、従来のモ FORCED CONTINUOUS MODE IL 10A/DIV 40 30 20 VIN = 12V VOUT = 1.2V 10 0 0.1 1 10 LOAD CURRENT (A) 100 ILOAD 10A/DIV 40µs/DIV LOAD TRANSIENT = 0A TO 15A VIN = 12V, VOUT = 1.5V FIGURE 10 CIRCUIT 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 27 最大 60V の入力から 25A/12V を供給する降圧コンバータ Victor Khasiev LTC3890(デュアル出力)および LTC3891(シングル出力)降圧 DC/DC コントローラは、4V ∼ 60V を直 接入力できます。この広い入力範囲は、シングル・バッテリまたはダブル・バッテリの自動車環境の入力電 圧に対応しており、通常は負荷遮断時にデバイスを保護するために必要なスナバや電圧抑制回路が不要に なります。この電圧範囲は、48V の通信アプリケーションも含まれます。入力電圧と出力電圧の間に絶縁が 不要な場合、高価で大きなトランスによるコンバータを、LTC3890 または LTC3891 で置き換えることがで きます。トランスによるソリューションと比較すると、LTC3890 または LTC3891 降圧コンバータは、効率を 高め、電源ラインの電力損失を低減し、レイアウトを簡素化して、部品点数を大幅に削減します。 高効率 2 フェーズ・コンバータが 12V/25A を生成 12V/25A を供給する LTC3890 による 2 フェー より、出力電流を最大 75A まで増やすことが RUN1と RUN2、ITH1と ITH2) を 互 い に接 できます。低出力電流向けには、シングル・ 続するだけです。 ズ・シングル出力の降圧コンバータ構成を図 す。2 フェーズ・コンバータを実現するには、 1 に示します。このコンバータは、LTC3890 デ バイスを追加して電源フェーズを増やすことに 図 1.最大 60V の入力から 12V/25A の出力を生成する 高効率コンバータ フェーズの LTC3891 を使用することができま 単に LTC3890 の各チャンネルのピン(つまり、 FB1 と FB2、TRACK / SS1 と TRACK / SS2、 30.1k 0.1µF 47pF 4.7nF 9.76k 47pF 35.7k VOUT PLLIN LTC3890 FREQ 2.2Ω SENSE1– 2.2pF RUN1 RUN2 SENSE1+ SS1 TG1 SS2 SW1 10pF RJK0651DPB VFB2 PGND 3m 10µF ×2 BOOST1 + 150µF RJK0653DPB INT VOUT 12V AT 25A 4.7µF INTVCC VIN RJK0651DPB TG2 L2 10µH SW2 0.1µF DFLS1100 PGOOD2 ILIM L1 10µH INT BG1 PGOOD1 1µF VIN 100Ω 0.1µF DFLS1100 ITH1 ITH2 2.2µF/100V ×4 1µF/100V VIN VFB1 499k 各ピンは個別の 47pF コンデンサで終端しま VIN, 16V TO 60V 1M 57.6k ITHピンは互いに接続しますが、配線から生 じる可能性のあるノイズを削減するために、 10µF ×2 INT BOOST2 3m + EXTVCC RJK0653DPB BG2 SENSE2+ 100Ω 2.2pF SENSE2– 28 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation L1, L2: WÜRTH 7443631000 150µF 設計上のアイデア LTC3890 によるデュアル出力 / 同期整流式降圧コンバータは、高入力 電圧 / 大出力電流の自動車および通信用アプリケーション向けでシン グル出力 / デュアル・フェーズ・コンバータとして容易に構成できます。 す。約 150k Hz の比較的低いスイッチング周 部品の選択 インダクタの選択は以下の 2 つの値によって パワー MOSFETと入力 / 出力コンデンサの選 使って、高入力電圧時のスイッチング損失を 決まります。1 つは実効電流値(IRMS)で、 照してください。注意して頂きたいのは、標 低減します。入力電圧が高いときには、デバ もう 1 つは飽和電流(IPK)です。 準的な内部 VCC 電圧、すなわち MOSFET の 波数と 10µH の比較的大きなインダクタンスを イスおよび内部ゲート・ドライバをバイアスす 電 流 の 値 は 0.5mA 未 満 で す。VIN = 20V で ∆I 2 I RMS = (IPH) + 12 (VIN – VOUT) • D ∆I = L•f VOUT D= VIN I I PH = k • OUT 2 ∆I I PK = I PH + 2 ここで、f はスイッチング周波数、k は位相間 VOUT = 12V/25A(300W)のときの空冷なしでの の電流のバラツキによって決まる係数です。 基板の温度分布を図 4 に示します。 LTC3890 によるコンバータでは、許容誤差が るのに伴う損失を低減するため、出力電圧を EXTVCCピンに供給します。 回路の性能 空冷せずに測定した効率を図 2 に示します。 効 率 のピークは 負 荷 範 囲 の 中 央で 98% 近 くで、25A の 最 大 負 荷で 96% まで 低 下しま す。Burst Mode 動作での無負荷時の平均入 力電流と入力電圧を図 3 に示します。この 2 択については、LTC3890 のデータシートを参 ゲート電圧が 5.1V ですので、設計にはロジッ ク・レベル MOSFET を使用する必要があるこ とです。 まとめ LTC3890 によるデュアル出力 / 同期整流式降 圧コンバータは、高入力電圧 / 大出力電流の 自動車および通信用アプリケーション向けで シングル出力 / デュアル・フェーズ・コンバー タとして容易に構成できます。n 1% の電流検出抵抗を想定すると、k = 1.08 に なります。 図 3.無負荷時の平均入力電流と入力電圧。VOUT は 12V。 図 2.VIN = 20V、36V、および 50Vでの効率 99.0 0.20 INPUT CURRENT (mA) EFFICIENCY (%) 98.0 97.5 97.0 96.5 96.0 0.18 0.16 0.14 0.12 95.5 95.0 0.22 20V 36V 50V 98.5 図 4.空冷なしでの温度ホット・スポット 1 6 11 16 LOAD (A) 21 26 0.10 20 25 30 35 40 45 50 VIN 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 29 抵抗 1 本で調整を行う 1.5A レール ・トゥ ・ レール同期整流式降圧レギュレータ Jeff Zhang LTC3600 の特長は、広い出力電 圧範囲と、出力電圧範囲全体で の正確な電圧安定化の能力です。 大半のレギュレータでは、最小出 力電圧はリファレンス電圧で制限 されます。しかし、LTC3600 では、 高精度の 50μA 電流源および電 圧フォロワによる全く新しいレギュ レーション方式を使用して、「0V」 から VIN 近くの電圧までの出力を 生成します。このデバイスは、出 力電圧に関係なくループ利得が一 定なので、あらゆる出力で優れた レギュレーションを実現し、複数 のレギュレータを並列に接続して 大きな出力電流を供給することが できます。 LTC3600 VIN VIN 12V RUN 50µA 10µF BOOST + – 図1.プログラム可能なリファレ ンスを備えた 12V 入 力、3.3V 出 力 の 高 効 率 1MHz 降 圧レ ギュレータ 2.2µH SW PWM CONTROL AND SWITCH DRIVER ERROR AMP 0.1µF VOUT 3.3V 22µF GND VOUT ISET 0.1µF MODE/ SYNC INTVCC RT RSET 66.5k PGFB ITH PGOOD 1µF 動作 LTC3600 は、優れた入力および負荷過渡応 答性能を備えた電流モードのモノリシック降 圧レギュレータです。動作周波数は 1 本の抵 抗を使用して 200k Hz ∼ 4MHz の範囲に設定 出力はユニティ・ゲインでエラーアンプに直 接フィードバックされます。出力は ISET ピンの リファレンス電圧に等しくなります。ソフトス タートやノイズ軽減のために R SET と並列にコ ンデンサを接続できる一方で、出力は ISET ピ することや、外部クロックに同期することが可 ンに印加される外部電圧にトラッキングしま 能です。LTC3600 は高 精 度の 50µA 電 流 源 す。 を内部で生成するので、1 本の外付け抵抗を 使用してリファレンス電圧を 0V ∼ VIN − 0.5V の範囲で設定できます。図 1 に示すように、 図 3.CCMモードとDCMモードでの 12V 入力、3.3V 出力レギュレータの効率 図 2.図 1 の回路図での 0A から1.5A への負荷ステップ応答 100 90 80 VOUT 100mV/DIV IOUT 1A/DIV EFFICIENCY (%) VOUT 100mV/DIV IOUT 1A/DIV 70 60 50 40 30 20 2VIN to 3.3VOUT (DCM) 2VIN to 3.3VOUT (CCM) 10 50µs/DIV 12VIN TO 3.3VOUT INTERNAL COMPENSATION ITH TIED TO INTVCC 30 | 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation 50µs/DIV 12VIN TO 3.3VOUT ITH TIED TO EXTERNAL RC COMPENSATION (R=56kΩ, C=68pF) 0 –0.1 0.1 0.3 0.5 0.7 0.9 ILOAD (A) 1.1 1.3 1.5 設計上のアイデア VIN BOOST LTC3600 12V RUN 50µA + 10µF 0.1µF PWM CONTROL AND SWITCH DRIVER ERROR AMP – 2.2µH SW 0.1Ω GND IOUT = 0A TO 1.5A 22µF VOUT ISET ほとんどのアプリケーションでは、出力電圧 MODE/ SYNC INTVCC RT PGFB ITH PGOOD は内部ループ補償によって安定ですが、外付 けの RC 部品によって設計をカスタマイズする 調整可能なソフトスタート機能あるいは電圧 トラッキング機能、および選択可能な連続/ 不連続モード動作などの機能を備えています。 これらの機能に 1µA 未満のシャットダウン電 1µF RSET 0k TO 3k ことも可能です。他にも、パワーグッド出力、 図 4.0A から1.5Aまで設定可能な電流源として使用した LTC3600 図 5.15V 入力、2.5V/3A 出力のデュアル・フェーズ・レギュレータ 源電流、VIN 過電圧保護機能、および出力過 電流保護機能を組み合わせることで、このレ ギュレータは、さまざまな電源アプリケーショ ンに適したものとなっています。 VIN 4V TO 15V LTC3600 VIN RUN 100k 50µA 10µF BOOST 0.1µF + PWM CONTROL AND SWITCH DRIVER ERROR AMP アプリケーション 12V入力から 3.3V 出力を生成する標準的応 – 2.2µH SW 用 例 の LTC3600 回 路 図を 図 1 に示します。 22µF VOUT 図 2 は、内部補償を使用した場合と外部補償 を使用した場合の負荷ステップ過渡応答を示 ISET したものです。図 3 は CCM モードとDCM モー MODE/ SYNC INTVCC RT GND PGFB VOUT = 2.5V 3A ITH PGOOD ドにおける効率です。さらに図 4 に示すように、 LTC3600 は簡単に電流源として構成すること 10pF 1µF ができます。R SET 抵抗を 0 Ω から 3kΩ まで変 化することによって、出力電流は 0A から 1.5A まで設定可能です。 まとめ LTC3600 は、高精度の内部電流源を使用し 27k VIN 4V TO 15V 9 LTC3600 VIN 100k RUN 50µA 5 10µF 0.1µF + PWM CONTROL AND SWITCH DRIVER ERROR AMP – て調整可能なリファレンスを生成し、出力電 150pF BOOST 8 2.2µH SW 7 圧の範囲を拡大します。 この独特な機能によっ VOUT て LTC3600 は高い柔軟性を発揮し、出力電 圧の動的な変更、電流源の生成、および標 ISET 準的な DC/DC レギュレータ構成では実現困 MODE/ SYNC INTVCC 6 1 10 11 RT 3 GND PGFB 13 4 ITH PGOOD 2 22µF 12 難だったレギュレータの並列接続を可能にし ています。n 24.9k 0.1µF 1µF V+ INTVCC 100k GND SET LTC6908-1* 10pF OUT1 OUT2 MOD *EXTERNAL CLOCK FOR FREQUENCY SYNCHRONIZATION IS RECOMMENDED 2012 年 7 月:LT Journal of Analog Innovation | 31 circuits.linear-tech.co.jp からのハイライト 入力電源がシングルエンド15V の低ノイズ ±12V 電源 LTC3260 は、正と負の 2 つの LDOレギュレータを備えた反転型チャージポンプを内蔵し た 2 極性出力の低ノイズ電源です。チャージポンプは 4.5V ∼ 32V の広い入力電圧範囲 で動作し、最大 100mA の出力電流を供給できます。各 LDOレギュレータは最大 50mA の出力電流を供給できます。負の LDO ポスト・レギュレータはチャージポンプ出力から給 電されます。LDO の出力電圧は外付けの抵抗分割器を使用して調整できます。 circuits.linear-tech.co.jp/556 15V LDO+ VIN 10µF 1µF LTspice IV 12V 10µF LTC3260 circuits.linear-tech.co.jp/556 EN+ ADJ+ EN– BYP+ MODE GND C+ BYP– C– ADJ– VOUT LDO– 10nF 10nF 909k 100k 100k 909k 10µF –12V 10µF RT 200k 250V サージ保護付き過電圧レギュレータ LTC4363 サージ・ストッパーは、高い電圧トランジェントから負荷を保護します。このデバ イスは外付けNチャネル MOSFET のゲートを制御することにより、車載品の負荷遮断な どの過電圧発生時に出力を安定化します。出力は安全な値に制限されるので、負荷は引 き続き動作できます。また、過電流フォルトから保護するために、SNSピンとOUTピン間 の電圧降下をモニタします。内部アンプによって、電流検出抵抗両端の電圧を50mV に 制限します。どちらのフォルト状態でも、タイマは MOSFET のストレスに反比例して起動 します。タイマの期限が切れる前に、FLTピンは L になり、電源の切断が差し迫っている ことを警告します。この状態が続くと、MOSFET はオフします。冷却期間の後、LT4363-1 はリセットされるまでオフのままですが、LT4363-2 は再起動します。 circuits.linear-tech.co.jp/529 VIN 12V Q1 FDB33N25 RSNS 10mΩ 22µF 49.9k MPS-A42 D1* SMAJ58A 0.1µF 10Ω 57.6k 47nF GATE SNS VCC 127k OUT FB SHDN 4.99k UV LTspice IV SHDN GND ENOUT OV GND 36V 入力、5.6A の 2 つの 2.5V 直列スーパーキャパシタ・チャージャ LTM8026 は、36V 入力、5A 定電圧 / 定電流(CVCC)降圧 µModuleレギュレータです。 スイッチング・コントローラ、パワースイッチ、インダクタ、サポート部品をパッケージに搭 載しています。LTM8026 は、6V ∼ 36V の入力電圧範囲で動作し、1.2V ∼ 24V の出力電 圧範囲をサポートします。CVCC 動作により、全出力範囲にわたり最大 5A の出力電流を 高精度で安定化できます。出力電流は制御電圧、1 本の抵抗、サーミスタのいずれかで 設定可能です。出力電圧と周波数を設定するための抵抗と、入力および出力のバルク・ フィルタ・コンデンサを使用するだけで、設計を完成させることができます。 circuits.linear-tech.co.jp/543 VIN 7V TO 36V FLT TMR FAULT 0.1µF *DIODES INC. 10µF 510k VIN LTM8026 VOUT VOUT 5V RUN SS SYNC CTL_I CTL_T GND ADJ RT 68.1k 2.5V 2.2F VREF COMP 47µF 2.5V 2.2F 3.09k LTspice IV circuits.linear-tech.co.jp/543 L、LT、LTC、LTM、Linear Technology、Linear のロゴ、LTspice、Burst Mode、および µModule はリニアテクノロジー社の登録商標です。PowerPath および ThinSOT はリニアテクノロジー社の商標です。 その他すべての商標の所有権は、それぞれの所有者に帰属します。 © 2012 Linear Technology Corporation/Printed in Japan/2K リニアテクノロジー株式会社 本 社 〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-6 紀尾井町パークビル8F TEL. 03(5226)7291 FAX. 03(5226)0268 大 阪 支 社 〒550-0011 大阪市西区阿波座1-6-13 カーニープレイス本町6F TEL. 06(6533)5880 FAX. 06(6543)2588 名古屋支社 〒460-0002 名古屋市中区丸の内3-20-22 桜通大津KTビル7F TEL. 052(955)0056 FAX. 052(955)0058 VCC DC/DC CONVERTER LT4363DE-2 49.9k circuits.linear-tech.co.jp/529 OUTPUT CLAMP AT 16V www.linear-tech.co.jp