タンタルや電解出力コンデンサが不要な 超高速リニア・レギュレータ デザイン・ノート 157 Anthony Bonte 新型LTCレギュレータ・コントローラ 動作周波数が200MHz以上のマイクロ・プロセッサには、 大電流、厳密な許容差、高速過渡応答の電源が必要です。 負荷過渡が高速の場合、安定化を維持するために大容量の 出力コンデンサが必要で、コストが増大します。表面実装 型タンタル・コンデンサは価格が高く、高信頼性性能を得 るには電圧のディレーティングが必要です。電解コンデン サは物理的寸法が大きく、経年変化によりESRが増加しま す。したがって、過渡応答と安定化性能が低下します。 LT1575/1577コントローラICファミリは、 ディスクリートN チャネルMOSFETをドライブして低ドロップアウトを生成す るUltraFastTM過渡応答レギュレータです。 これらのICはすべて のDC許容差に対して1%の標準性能を達成しています。 卓越し た過渡負荷性能により、 大容量出力コンデンサが不要です。 LT1577を使用したP55C Pentium®プロッセッサ電源は、 マイ クロプロセッサ・コアに必要な24個の1µF高周波デカップリン グ用セラミック・コンデンサだけで動作します。 利益追求のために、 出力コンデンサ容量を減らし、真の安定 化のための必要条件を無視しているメーカもあります。 多く の電源はWindows®95が複数回ブートすれば信頼できると 見なされています。マザーボードのほとんどは90日間しか 保証されていません。 LTCは多くのシステム・クラッシュ (ソ フトのせいにされている) は、電源安定化の不良によるもの と考えています。 この問題に対処するために、リニアテクノ ロジーはLT®1575/1577を紹介します。 可変電圧バージョンと固定電圧バージョンが用意されてお り、どのマイクロプロセッサ電圧にも対応できます。 MOSFETのRDS(ON)を選択すれば、ドロップアウト電圧性 能をユーザが設定できます。これらのコントローラは、電 流制限、ON/OFF制御および過電圧保護、あるいはサーマ ル・シャットダウン機能も備えています。シングル LT1575は8ピンSOまたはPDIP、デュアルLT1577は16ピ ン細型SOパッケージで供給されます。 12V RESET はじめに 1 2 C2A 0.1µF R9 = TRACE RESISTOR 1/2 LT1577 SHDN1 IPOS1 VIN1 INEG1 16 15 3 14 GND1 GATE1 4 OUT 13 COMP1 – 3.3 C3 0.22µF R5 3.9Ω 12V RESET C4 10pF 1/2 LT1577 5 C2B 0.1µF 6 7 8 SHDN2 IPOS2 VIN2 INEG2 GND2 GATE2 FB COMP2 + R9 0.004Ω Q2 IRFZ14 R7 3.9k C8 1500pF C20-C31 1µF X7R CERAMIC 0805 CASE C9-C11 1200µF 10V ×3 5V C1 0.1µF 図1に、 P54C/P55C Pentiumプロセッサのオートセレクト回 路用の固定3.3Vおよび可変電圧レギュレータ付きLT1577ア プリケーションを示します。 P54C Pentiumプロセッサ・コア とI/O回路は3.5V、 P55C PentiumプロセッサのI/Oは3.3V、 コ アは2.8Vで動作します。 VCC2DETの信号によって回路動作が決まります。P54C回路で は、 VCC2DETを開放し、 コアとI/O電源プレーンを一緒に接続しま VIO 3.3V 3.5V 、LTC、LTはリニアテクノロジー社の登録商標です。 UltraFastはリニアテクノロジー社の商標です。 WindowsはMicrosoft Corporationの登録商標です。 PentiumはIntel Corporationの登録商標です。 IF VCC2DET = OPEN, THEN VIO = VCORE = 3.5V IF VCC2DET = GND, THEN VIO = 3.3V AND VCORE = 2.8V 12 C5 0.1µF 11 R6 10 3.9Ω 9 C6 10pF 50mV/DIV Q3 IRFZ34 R8 7.5k C7 1000pF C32-C55 1µF X7R CERAMIC 0805 CASE R2 1.21k VCORE R1 2.8V 1.58k 3.5V R3 2.67k Q1 2N7002 R4 10k 2A/DIV TO CPU VCC2DET 0 DN157 F01 I = 0.2A TO 5A 図1. LT1577 P54C/P55C Pentiumプロセッサ用オートセレクト回路 06/97/157 200µs/DIV DN157 F02 図2. 0.2Aから5Aの出力負荷変動 に対する過渡応答 1 2 12V 3 4 C6 0.1µF SHDN IPOS 8 7 U1 INEG LT1575 6 GND GATE VIN FB COMP Q1 IRLZ44 5 C21, 10pF 12V + C11 150µF 16V + C12 150µF 16V + C13 150µF 16V + C14 150µF 16V C17 1µF C15 1µF R1 2.1k, 1% C16 1µF R2 1.21k 1% 13 9 VIN EXTVCC TG 16 14 U2 SW LTC1435 15 2 BOOST RUN/SS 1 C8, 68pF C7, 0.1µF 3 C10, 1000pF C9 1500pF 4 5 6 R5 16.5k COSC INTVCC ITH L1 4µH C3, 0.1µF 11 BG SGND S+ 8 VOS S– 7 1µF X7R CERAMIC 0805 CASE × 40 Q3 R6 0.0075Ω R3 100 R4 100 + C18 C20 1000µF 1000µF 10V 10V + C2, 1000pF + C4, 4.7µF D1, CMDSH-3 C5 0.1µF 3.3V VCORE C1, 470pF Q2 12 SFB PGND 10 R9 2k C22, 1000pF D2 MBRS330T3 + C23 1µF C19 1000µF 10V R7 35.7k DN157 F03 R8 15K L1 = COILTRONICS CTX02-13199 Q2, Q3 = SILICONIX SUD50N03-10 す。 Q1がターンオンし、 Q3 (IRFZ34) レギュレータは出力を3.5V に制御します。 Q2 (IRFZ14) レギュレータは出力を3.3Vに制御し ようとしますが、 帰還ピン (ピン4) は3.5Vを検知して、 Q2をター ンオフします。 Q3はすべてのコアおよびI/O電源を供給します。 P55Cの回路では、 VCC2DETが接地され、 コアおよびI/O電源プ レーンが分離されます。 Q2はI/O電圧を3.3Vに制御し、 Q3はコア 電圧を2.8Vに制御します。 I/O回路に必要な電流は少ないのでQ2 には低コストのMOSFETを使用でき、 出力容量を低減できます。 電流制限センス抵抗は “余分な” PCBのトレースで作られて います。Q2とQ3はドレインが共通に接続されているため 同じヒート・シンクに実装可能です。COMPピンの部品 は、使用するMOSFETと出力コンデンサに応じて各レギュ レータの周波数補償を調整します。 図2にP55C構成で、負荷電流が4.8A変化した場合のコア・ レギュレータの過渡応答を示します。この補償によって オーバシュート/アンダシュートが50mVに制限されます。 VREプロセッサに対する±100mVの許容誤差は容易に達成 できます。オートセレクト・コンセプトは、各種のプロ セッサが必要とする多様な電圧に対応して容易に拡張でき ます。詳細は当社に問い合わせください。 50mV/DIV 図3. 12Vから3.3V/9A(最大14A)のハイブリッド・レギュレータ 200µs/DIV DN157 F04 図4. 図3の回路で負荷電流が10A変化したときの 過渡応答 LT1575はパス・トランジスタとしてIRLZ44を使用し、 550mV 以下のドロップアウト電圧を達成しています。 このスイッチン グ・レギュレータの出力は4Vに設定されています。 図4に立上り/立下り時間が50nsで負荷電流ステップが10Aの 場合の過渡応答を示します。 必要な出力コンデンサは1µFの表 面実装型のセラミック・コンデンサが40個だけです。 この回路 では、 リニア・レギュレータを使用しない場合に必要な多数の 低ESRのタンタル・コンデンサが不要になります。 まとめ LT1575/LT1577は低ドロップアウト、高精度の性能、超 高速過渡応答そして出力コンデンサの大幅なコスト削減の 図3にLT1575をLTC®1435同期型降圧レギュレータのポス 利点を併せ持っています。LT1575/1577コントローラIC ト・レギュレータとして使用して、 総合効率72%で12Vから は、マザーボードのデザイナの要求する次世代性能レベル 3 . 3 V を生成する3 . 3 V / 1 4 A のロジック電源を示します。 にステップします。 お問い合わせは当社または下記代理店まで(50 音順) 東京エレクトロンデバイス株式会社 株式会社トーメンエレクトロニクス 株式会社マクニカ 〒 224-0045 横浜市都築区東方町 1 TEL(045)474-5114 FAX(045)474-5617 〒 108-0075 東京都港区港南 1-8-27 TEL(03)5462-9615 FAX(03)5462-9695 〒 226-0006 横浜市緑区白山 1-22-2 TEL(045)939-6104 FAX(045)939-6105 リニアテクノロジー株式会社 162-0814 東京都新宿区新小川町 1-14 NAO ビル 5F TEL(03)3267-7891 FAX(03)3267-8510 http://www.linear-tech.com 0499 4K • PRINTED IN JAPAN LINEAR TECHNOLOGY CORPORATION 1997