S2R72A0x/4x シリーズ アプリケーションノート

S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート
Rev.1.00
本資料のご使用につきましては、次の点にご留意願います。
本資料の内容については、予告無く変更することがあります。
1.
本資料の一部、または全部を弊社に無断で転載、または、複製など他の目的に使用することは堅くお断りいたします。
2.
本資料に掲載される応用回路、プログラム、使用方法等はあくまでも参考情報であり、これらに起因する第三者の知的財産権およびその
他の権利侵害あるいは損害の発生に対し、弊社はいかなる保証を行うものではありません。また、本資料によって第三者または弊社の知
的財産権およびその他の権利の実施権の許諾を行うものではありません。
3.
特性値の数値の大小は、数直線上の大小関係で表しています。
4.
本資料に掲載されている製品のうち「外国為替及び外国貿易法」に定める戦略物資に該当するものについては、輸出する場合、同法に基
づく輸出許可が必要です。
5.
本資料に掲載されている製品は、生命維持装置その他、きわめて高い信頼性が要求される用途を前提としていません。よって、弊社は本
(当該)製品をこれらの用途に用いた場合のいかなる責任についても負いかねます。
6.
本資料に掲載されている会社名、商品名は、各社の商標または登録商標です。
©SEIKO EPSON CORPORATION 2010, All rights reserved.
適用範囲
本ドキュメントは、以下の USB2.0 準拠 HUB コントローラ LSI に適用されます。
・S2R72A04 / S2R72A44
・S2R72A03 / S2R72A43
・S2R72A02 / S2R72A42
目次
1.概要...................................................................................................................................................... 1
2. MODE の説明 ..................................................................................................................................... 2
2.1
MODE[4-3]:ダウンストリームポートの有効化設定 ................................................................. 2
2.2
MODE[2-1]:VBUS 供給モードの設定....................................................................................... 3
2.3
MODE[0]:アップストリームポートの USB スピード設定........................................................ 7
3. PCB 設計ガイド ................................................................................................................................. 8
3.1 電源構成...................................................................................................................................... 8
3.2
電源供給とリセット .................................................................................................................... 9
3.3
DP/DM 信号ライン.................................................................................................................... 12
3.3.1 基板配線.............................................................................................................................. 12
3.3.2 付加部品.............................................................................................................................. 12
3.3.3 その他 ................................................................................................................................. 14
3.4
U0_VBUS 端子保護回路(アップストリームポート側) ......................................................... 15
3.5
VBUS 供給回路(ダウンストリームポート側) ..................................................................... 16
3.6 発振回路.................................................................................................................................... 19
3.7 その他の注意事項 ..................................................................................................................... 20
4. 各ポートの USB 接続スピードについて.......................................................................................... 21
5. Appendix.......................................................................................................................................... 23
5.1
DP/DM 基板配線例.................................................................................................................... 23
5.2 アップストリームポート接続時の例 ......................................................................................... 24
5.3 ダウンストリームポート過電流検出時の例 .............................................................................. 26
5.4
USB デバイス異常時の処理 ...................................................................................................... 28
改訂履歴 ............................................................................................................................................... 29
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
Seiko Epson Corporation
i
1.概要
1.概要
本ドキュメントは、下記の USB2.0 準拠 HUB コントローラ LSI 共通のアプリケーションノートです。
S2R72A04 / S2R72A44(ダウンストリームポートを 4 ポート装備)
S2R72A03 / S2R72A43(同上、3 ポート)
S2R72A02 / S2R72A42(同上、2 ポート)
本ドキュメントでは、MODE 設定、システム構成、回路例、PCB 設計上の注意などを説明します。本
LSI のハードウェア情報に関してはデータシートを参照下さい。
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
Seiko Epson Corporation
1
2. MODE の説明
2. MODE の説明
本 LSI は MODE[4-0]端子を備えており、HUB のシステム構成に応じた動作モードを設定できます。
2.1 MODE[4-3]:ダウンストリームポートの有効化設定
どのダウンストリームポートを有効にするかを設定します。各コントローラ LSI の型番毎に可能、不可
能な設定があるのでご注意下さい。また、動的な設定変更はできません。
ダウンストリームポート
MODE4 MODE3
L
L
H
H
L
H
H
L
各LSI設定可否
S2R72A44 S2R72A43 S2R72A42
D1
D2
D3
D4
S2R72A04 S2R72A03 S2R72A02
有効 有効 無効 無効
可
可
可
有効 有効 有効 無効
可
可
禁止
有効 有効 有効 有効
可
禁止
禁止
無効
禁止
表 2-1 MODE[4-3]の設定
なお、無効としたポートの以下の端子処理はオープンとして下さい。
・
Dn_DP
・
Dn_DM
・
Dn_VBUSEN
・
Dn_VBUSFLG
(MODE[4-3]=00b の時は n=3,4
2
MODE[4-3]=01b の時は n=4)
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
2. MODE の説明
2.2 MODE[2-1]:VBUS供給モードの設定
ダウンストリームポートへ供給する VBUS 電源は、VBUS スイッチ IC 等を用いて ON/OFF 制御する事
が可能です。これによってダウンストリームに規定値以上の過電流を検出した場合などに VBUS 供給
を OFF し、システムを保護することができます。
この機能は、
VBUS スイッチ IC と本 LSI の Dn_VBUSEN
端子、Dn_VBUSFLG 端子を接続して実現する事ができます。本 LSI ではこの制御方法に次のモードを
選択できます。
MODE2 MODE1 VBUS供給モード
H
H
Individual モード
L
H
Gang モード
H/L
L
非制御モード
表 2-2 MODE[2-1]の設定
なお、Individual、Gang いずれのモードでも、各端子の論理は以下の通りです。
Dn_VBUSEN 端子 :正論理(H で VBUS 出力 ON)
Dn_VBUSFLG 端子:負論理(L で過電流検出)
Dn_VBUSFLG 端子が Low 入力されると、本 LSI はそれを過電流検出として扱い、Dn_VBUSEN 端子は
それから 6msec 以内に Low 出力し、VBUS 供給を停止するように動作します。同時に HUB ステータス
の HUB_OVER_CURRENT ステータスビット(Gang モード)か、または、ポートステータスの
PORT_OVER_CURRENT ステータスビット(Individual モード)をセットします。これらのステータスは、
GetHubStatus()リクエストか、または、GetPortStatus()リクエストへの応答により、ホストに通知されま
す。また、これらのステータスの変化はインタラプトパイプを通してホストに通知されます。
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
Seiko Epson Corporation
3
2. MODE の説明
Individual モード
このモードでは、各ダウンストリームポート毎に過電流検出と VBUS 供給 ON/OFF 制御をする事がで
きます。ポート数分の VBUS スイッチ IC が必要となりますが、1つのポートで検出された過電流が他
のポートの VBUS 供給に影響を与えません。
+5V
VBUSスイッチIC
S2R72A4x
S2R72A0x
USB Aコネクタ
ON/OFF
過電流検出
VBUS
DP
DM
GND
+5V供給
D4_VBUSEN
D4_VBUSFLG
ON/OFF
過電流検出
VBUS
DP
DM
GND
+5V供給
D3_VBUSEN
D3_VBUSFLG
VBUS
DP
DM
GND
+5V供給
ON/OFF
過電流検出
VBUS
DP
DM
GND
+5V供給
ON/OFF
過電流検出
D2_VBUSEN
D2_VBUSFLG
D1_VBUSEN
D1_VBUSFLG
MODE2
MODE1
H
H
図 2-1
4
Individual モード
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
2. MODE の説明
Gang モード
このモードでは、ポート 1 の端子(D1_VBUSEN 端子、D1_VBUSFLG 端子)が全ダウンストリームポー
トの過電流検出と VBUS 供給 ON/OFF 制御をまとめて行います。スイッチ素子が1つで済みますが、
過電流検出された場合は、全ポートの VBUS 供給に影響します。
S2R72A4x
USB Aコネクタ
S2R72A0x
D4_VBUSEN
D4_VBUSFLG
(OPEN)
D3_VBUSEN (OPEN)
D3_VBUSFLG
+5V
D2_VBUSEN
D2_VBUSFLG
(OPEN)
ON/OFF
過電流検出
D1_VBUSEN
D1_VBUSFLG
MODE2
MODE1
VBUSスイッチIC
+5V供給
VBUS
DP
DM
GND
+5V供給
VBUS
DP
DM
GND
+5V供給
VBUS
DP
DM
GND
+5V供給
L
H
図 2-2
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
VBUS
DP
DM
GND
Gang モード
Seiko Epson Corporation
5
2. MODE の説明
非制御モード
このモードでは、本 LSI が VBUS 供給に関与しません。すなわち、ダウンストリームへの VBUS 供給
電源の過電流検出ステータスを USB ホストへレポートする事ができません。また、安全上の観点から
何らかの保護素子などを適切な場所に配置することが望まれます。なおこのモードでは、Dn_VBUSEN、
Dn_VBUSFLG の端子はオープンとして下さい。
+5V
S2R72A4x
USB Aコネクタ
S2R72A0x
D4_VBUSEN
D4_VBUSFLG
(OPEN)
D3_VBUSEN (OPEN)
D3_VBUSFLG
本LSIは、VBUS過電流
検出に関与しません。
D2_VBUSEN
D2_VBUSFLG
D1_VBUSEN
D1_VBUSFLG
MODE2
MODE1
ここに単に電流制限素子
を配置するケースも考え
られます。
(OPEN)
(OPEN)
VBUS
DP
DM
GND
+5V供給
VBUS
DP
DM
GND
+5V供給
VBUS
DP
DM
GND
+5V供給
VBUS
DP
DM
GND
+5V供給
H or L
L
図 2-3 非制御モード
6
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
2. MODE の説明
2.3 MODE[0]:アップストリームポートのUSBスピード設定
アップストリームポートの USB スピードを設定します。
MODE0 アップストリームポートのスピード設定
L
HS/FS自動検出(USB2.0)
H
FS固定(USB1.1)
表 2-3 MODE[0]の設定
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
Seiko Epson Corporation
7
3. PCB 設計ガイド
3. PCB 設計ガイド
3.1
電源構成
HUB 機器の電源構成としては、一般的に以下の 2 つがありますが、本 LSI では Bus-Powered 方式をサポー
トしていません。Self-Powered 方式でご検討下さい。
Self-Powered 方式
HUB 機器が自らローカルな電源を備えて動作する方式です。各ダウンストリームポートへの電源供給
は、それぞれのポート毎に 500mA までの能力が求められます。
+5V(ローカル電源)
VBUS (500mA)
DP/DM
Regulator
VBUS (500mA)
DP/DM
3.3V / 1.8V
USB Host
USB Device
USB Device
VBUS (500mA)
VBUS
DP/DM
DP/DM
S2R72A4x
S2R72A0x
USB Device
VBUS (500mA)
DP/DM
USB Device
USB HUB
図 3-1
Self-Powered 方式
Bus-Powered 方式(非サポート)
HUB 機器は、アップストリームポートの VBUS から電源供給を受けて動作する方式です。各ダウン
ストリームポートへの電源供給は、それぞれのポート毎に 100mA までの能力が求められます。但し、
本 LSI がホストへ返すコンフィグレーションディスクリプタの bmAttributes 値が Self Poered を表明
し、また、bMaxPower 値が 0x32(最大 100mA)であるため、本 LSI では、この電源方式をサポート
しません。
+5V
Regulator
3.3V / 1.8V
USB Host
VBUS
DP/DM
S2R72A4x
VBUS (100mA)
DP/DM
USB Device
VBUS (100mA)
DP/DM
USB Device
VBUS (100mA)
DP/DM
USB Device
VBUS (100mA)
DP/DM
USB Device
S2R72A0x
USB HUB
図 3-2
8
Bus-Powered 方式(非サポート)
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
3. PCB 設計ガイド
3.2
電源供給とリセット
本 LSI へ供給する電源について説明します。
電源投入/切断順について
本 LSI へ供給する電源は、HVDD 電源(3.3V 系)と LVDD 電源(1.8V 系)があり、その投入順、切断
順、及び時間規定は以下のようにして下さい。詳細はデータシートをご覧下さい。
LVDDが先行投入、後行切断の場合(推奨)
HVDDが先行投入、後行切断の場合
LVDD
10秒以内
10秒以内
1秒以内
1秒以内
HVDD
図 3-3 電源の投入/切断順
なお、本 LSI に電源が供給されていない状態でアップストリームポートに USB ホストと接続されて
も、本 LSI の信頼性や動作への問題はありません。但し、U0_VBUS 端子に内蔵のプルダウン抵抗
125kΩ(min100kΩ、max165kΩ)により、USB ホストから 40uA 程度の電流が消費されます。
ノイズについて
電源にノイズが乗っていると USB の波形品質に影響が出て、USB の通信障害を来たす場合がありま
す。シリーズレギュレータの異常発振や、スイッチングレギュレータ回路定数が不適当な場合など
に見られるリップル状のノイズは避け、また外来ノイズが乗らないよう、注意して電源設計をして
下さい。
リセット
本 LSI への電源投入が完了した後、XRESET 端子を Low から High にし、リセット解除して下さい。
なお、発振子はリセットが解除され、かつ U0_VBUS 端子に High レベル電圧が印加されると発振を
開始します。そのため、発振安定後にリセット解除、等のシーケンスは不要です。
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
Seiko Epson Corporation
9
3. PCB 設計ガイド
消費電流と供給電源能力について
本 LSI のいずれかのポートを HS として使用する場合、本 LSI へ電源供給する回路構成は、本 LSI
が過渡的に消費するピーク電流を考慮する必要があります。
通常、USB のデータ転送は複数のパケット(小さなデータの一塊)から成り立っています。また、
USB はバスの全帯域に渡ってパケットが送受信されているわけではなく、パケットがバス上にない
期間も存在します。
本 LSI は、USB 上に HS パケットを送信する時としない時それぞれにおいて、本 LSI が自ら消費電
流を低く抑えるように制御しており、それによって低消費電力を実現しています。言い換えると、
USB として規格上必要な定電流を、パケット送信時にだけ消費しているため、消費電流は動的に変
化します。そのため、本 LSI へ供給する電源回路は HS パケット送信時のピークの消費電流を考慮
して下さい。
一例として、弊社における測定環境と電流波形を以下に示しますので参考として下さい。ホスト、
デバイスともに HS 動作している時に、D1 の USB メモリから USB ホストを経由して D2 の USB メ
モリへデータコピーしている時に測定したものです。
Oscilloscope
( Current Probe )
3.3V
Ch4
Ch1
HVDD
USB Device
(Stick Memory)
D2_DP
D2_DM
VSS
S2R72A4x
VSS
USB HOST
(EPSON Original Board)
D1_DP
D1_DM
LVDD
U0_DP
U0_DM
1.8V
S2R72A0x
USB
図 3-4 消費電流の測定環境例
10
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
3. PCB 設計ガイド
図 3-5 消費電流波形の一例
Ch1(黄色):USB 信号 DP ラインの信号波形(0V でない箇所がパケットを示す)
Ch4(緑色):HVDD 電流波形(電流プローブを使用)
HVDD、LVDD それぞれの消費電流ピーク値は、使用するレギュレータ特性や電源インピーダンス、
回路構成、測定環境等に依存します。
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
Seiko Epson Corporation
11
3. PCB 設計ガイド
3.3
3.3.1
DP/DM信号ライン
基板配線
DP/DM 信号配線は、インピーダンス整合、反射防止の観点などから、以下の点を配慮して下さい。併
せて巻末 Appendix に具体例を示しますので参考にして下さい。
・
DP/DM 信号ラインの差動インピーダンスを 90Ωで設計すること。
・
本 LSI と USB レセプタクル間に他のコネクタやケーブルが挿入される場合は、インピーダン
ス整合に十分配慮すること。
・
信号ライン直下の内層は、分離のない GND プレーンとすること。
・
ノイズ発生源と見なされる信号ライン(クロック、高速バスライン等)は、DP/DM ラインに
近接させないこと。
・
DP/DM 信号ラインは、等長かつ平行になるべく短く配線し、分岐を最小限に留め、曲げる場
合は曲線処理を施すこと。
なお USB 規格にて、機器内における信号の伝搬遅延時間がそれぞれ規定されており、以下を満たす必
要があります。これを満たすための信号ライン長は、使用する基板の比誘電率εr 等によって変わりま
す。
本 LSI 端子(D1~D4)~A レセプタクル端子間
:3ns 以内
本 LSI 端子(U0)~B レセプタクル端子間
:1ns 以内
3.3.2
付加部品
コモンモードチョークコイル
コモンモードチョークコイルは、差動信号ラインに同方向の電流が流れるのを抑制するもので、コモン
モードノイズの発生を防ぎます。DP/DM 信号ライン上に用いることでスキューの改善、不要輻射ノイ
ズの低減等の効果を期待できます。アイパターンの開口改善などに直接には関係しません。USB High
Speed 用途の部品例を以下に示します。なお信号品質保持の観点より、部品は信号ラインに対して直線
的な配置を推奨します。
・TDK 製
ACM2012-900-2P
・村田製作所製
DLW21SN900SQ2
・TOKO 製
985BH-1007
DPライン
DMライン
コモンモードチョークコイル
図 3-6 コモンモードチョークコイル配線例
12
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
3. PCB 設計ガイド
チップバリスタ
DP/DM 信号ラインに用いることで、
静電気やサージから本 LSI の DP/DM 端子の保護を期待できます。
USB High Speed 用途の部品例を以下に示します。なお信号品質保持の観点より、部品は信号ラインか
らの分岐が最短になるような配置を推奨します。チップバリスタの実装位置は、一般的にはコネクタ近
傍が効果的と考えられますが、各供給元にお問い合わせの上で決定して下さい。
・TDK 製
AVR シリーズ
・パナソニックエレクトロニックデバイス製
EZJZ シリーズ
DPライン
DMライン
バリスタ
図 3-7 バリスタ配線例
コネクタ
USB 認証を未取得のコネクタを使用した場合、DP/DM の信号品質が劣化する恐れがあります。USB 認
証を取得したコネクタを用いることを推奨します。使用するケーブルについても同様です。
付加部品の接続例
USBコネクタ
S2R72A4x S2R72A0x
コモンモード
チョークコイル
DP
U0_DP
DM
U0_DM
チップバリスタ
ダウンストリームポートD1~D4も同様です。
図 3-8 付加部品の接続例
補足:
チップバリスタなど、DP/DM 信号ライン上に容量成分のある部品を付加した場合、USB High Speed 送
信波形の立上り/立下り(Tr/Tf)特性が緩やかになります。容量成分が大きすぎると、USB コンプライア
ンス試験における Tr/Tf 特性、及びアイパターンの試験項目で Fail 判定される可能性があるため、部品
選定には注意が必要です。
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
Seiko Epson Corporation
13
3. PCB 設計ガイド
3.3.3
その他
U0 ポート、及び Dn ポートの DP/DM 信号伝送路には、USB として必要な以下の抵抗が下図の通りに本
LSI に内蔵されています。従ってこれらの抵抗を基板上に実装する必要はありません。
・DP/DM ラインへのシリーズダンピング抵抗 Rs
・DP プルアップ抵抗 Rpu
・DP/DM プルダウン抵抗 Rpd
S2R72A4x S2R72A0x
S2R72A4x
S2R72A0x
Rpu Enable
+3.3V
HS Current Driver
Rs
LS/FS Driver
HS Receiver
HS Current Driver
Rpu
Rs
Rs
LS/FS Driver
U0_DP
Rs
Dn_DP
Dx_DP
HS Receiver
U0_DM
LS/FS Receiver
Dx_DM
Dn_DM
LS/FS Receiver
Rpd
図 3-9 本 LSI 内蔵抵抗
14
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
3. PCB 設計ガイド
3.4
U0_VBUS端子保護回路(アップストリームポート側)
アップストリームポートに接続される USB ホストによっては、USB ケーブルで接続した際に、
U0_VBUS 端子に VBUS 規格電圧(5V)を超える電圧が過渡的に印加される場合があります。これによっ
て U0_VBUS 端子の絶対最大定格を超えて本 LSI が破壊される恐れがあるため、必ず以下のような保護
回路を施して下さい。ケーブル着脱を伴わない機器内接続など、定格を越える電圧印加の心配がない場
合は、保護回路は必要ありません。回路定数はこの限りではありませんが、変更する場合は以下の点に
注意して下さい。
・VBUS 端子にかかる電圧が絶対最大定格(6V)を越えないこと。
・VBUS 端子は IC 内部で 125kΩ(min100kΩ、max165kΩ)にプルダウンされているため、外付け抵抗
値との分圧比による U0_VUBS 端子入力レベルが、その"H"レベルトリガ電圧値以上であること。
S2R72A4x
S2R72A0x
保護回路
USB Cable
Receptacle
10 ohm
USB HOST
U0_VBUS
内蔵
125kΩ typ.
(100kΩ min. 165kΩ max).
1 uF
VBUS pin
VSS
図 3-10
U0_VBUS 端子の保護回路
保護回路なし
保護回路あり
青色
図 3-11
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
:VBUS 端子電圧
U0_VBUS 端子の印加電圧立ち上がり波形
Seiko Epson Corporation
15
3. PCB 設計ガイド
3.5
VBUS供給回路(ダウンストリームポート側)
ダウンストリームポートへ VBUS 電源(+5V)を供給するための制御回路例を示します。制御モード
(Individual / Gang)によって回路構成が異なります。ここでは、過電流検出機能付き USB パワースイッ
チ IC として、Maxim 社製 MAX8586ETA+を用いた場合の接続例を、それぞれのモード毎に示します。
Individual モードの場合
S2R72A4x
S2R72A0x
+5V (±0.25V)
Receptacle
MAX8586ETA+
C
OUT
IN
SEL
+
ENRST
D1_VBUSEN
D1_VBUSFLG
ON
Rd
VBUS pin
Rc
ISET
xFAULT GND
D2_VBUSEN
(上の回路に同じ)
D2_VBUSFLG
D3_VBUSEN
(上の回路に同じ)
D3_VBUSFLG
D4_VBUSEN
(上の回路に同じ)
D4_VBUSFLG
C:USB2.0規格7.2.4項において、120uF以上の容量実装が規定されています。
(弊社評価ボードS5U2R72A04F0100では220uF)
Rd:C1に電荷が蓄積され、かつReceptacleにUSBデバイスが接続されていない状態でVBUSスイッチICが
出力OFFとした際の、電荷放電用抵抗です。(弊社評価ボードS5U2R72A04F0100では100kΩ)
Rc:過電流検出値を決める抵抗です。詳細はMAX8586ETA+の仕様をご確認下さい。
図 3-12
16
Individual モードの回路例
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
3. PCB 設計ガイド
Gang モードの場合
S2R72A4x
+5V (±0.25V)
Receptacle
MAX8586ETA+
S2R72A0x
OUT
IN
SEL
+
ENRST
ON
D1_VBUSEN
VBUS pin
ISET
xFAULT GND
D1_VBUSFLG
+
D2_VBUSEN
N.C.
D2_VBUSFLG
N.C.
D3_VBUSEN
N.C.
D3_VBUSFLG
N.C.
D4_VBUSEN
N.C.
D4_VBUSFLG
N.C.
+
+
図 3-13
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
Gang モードの回路例
Seiko Epson Corporation
17
3. PCB 設計ガイド
補足(VBUS スイッチ IC の仕様について)
本 LSI は、VBUS スイッチ IC の仕様が下記である事を前提としています。
Dn_VBUSEN 端子 :正論理(H で VBUS 出力 ON)
Dn_VBUSFLG 端子:負論理(L で過電流検出)
VBUS スイッチ IC の論理がこれと異なる場合は、本 LSI に論理を変更する機能はないため、外付け
部品等で論理を変更する必要があります。
VBUS Switch IC
S2R72A4x S2R72A0x
xEN (L:VBUS出力ON)
Dn_VBUSEN
Dn_VBUSFLG
OVER_CURRENT(L:過電流検出)
図 3-14 論理変更の回路例1
また本 LSI は、Dn_VBUSFLG 端子に Low 入力(過電流検出)されている間、Dn_VBUSEN 端子を
High 出力(VBUS 出力 ON)にはしません。一方で VBUS スイッチ IC によっては、過電流の有無に
関わらず、過電流検出を通知する端子が、VBUS スイッチ OFF 時は常に Low アサートする仕様のも
のもあります。そのような場合にも外付け部品等で適切に処置して下さい。その接続例を以下に示
しますが、動作保障するものではありません。VBUS スイッチ IC の仕様とともに十分ご検討願いま
す。
VBUS Switch IC
S2R72A4x S2R72A0x
EN (H:VBUS出力ON)
Dn_VBUSEN
Dn_VBUSFLG
OVER_CURRENT
(L:過電流検出 or EN=L)
VBUS供給開始
VBUS供給停止
Dn_VBUSEN
(注1)
Dn_VBUSFLG
(注2)
過電流発生
(注1 )本LSIは、6ms以内にDn_VBUSENをLow出力します。
(注2)VBUSスイッチICの仕様等によりますが、4ms未満ならS2R72A4xはこのパルスを無視します。
Dn_VBUSENを遅延させた信号を上記AND素子へ入力する事によって、
この不要なパルスの発生を防止することも考えられます。
図 3-15 論理変更の回路例2
18
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
3. PCB 設計ガイド
3.6
発振回路
水晶振動子を用いる場合
12MHz の水晶振動子を以下のように接続してご使用下さい。水晶振動子の周波数精度は、良好な波
形品質を得るため、以下の通り推奨します。
MODE0 端子=L(USB2.0 モード/High Speed)
:±100ppm 以内
MODE0 端子=H(USB1.1 モード/Full Speed)
:±200ppm 以内
なお本 LSI は、リセットが解除され、かつ、U0_VBUS 端子に High レベル電圧が印加されると発振
を開始します。また、発振開始と同時に、即座に U0_DP をプルアップ(FS ターミネーション)します。
その後の USB ホストによるバスリセットを受けるまでに発振が安定している必要がありますが、そ
の間は USB 規格にて 100ms 以上と規定されています。従って、数 msec 内の発振安定時間であれば
問題ありません。
S2R72A4x S2R72A0x
1M ohm 内蔵
XO
XI
Rd
水晶振動子
Cg
Cd
図 3-16 水晶振動子の接続回路例
推奨品(車載対応):エプソントヨコム社製
FA-23A
弊社評価ボードでの定数例は、Cg=7[pF]、Cd=7 [pF]、Rd=0[ohm]
クロック信号を用いる場合
水晶振動子を使わずに、クロック信号を外部から入力する時は、本 LSI に電源が投入された状態で、
XI 端子に入力して下さい。XO 端子は OPEN にして下さい。U0_VBUS 端子の入力状態が H/L どち
らにおいても、XI 端子へのクロック入力が可能です。クロック信号の Duty 比は 45%~55%、振幅は
LVDD 電圧レベルに同じです。許容誤差は水晶振動子に同じです。
S2R72A4x S2R72A0x
1M ohm 内蔵
XI
XO
N.C.
CLK入力 (振幅はLVDD電圧レベル)
図 3-17 外部クロックの入力
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
Seiko Epson Corporation
19
3. PCB 設計ガイド
3.7
その他の注意事項
R1 端子に接続する抵抗
12kΩ±1%の抵抗を、できるだけ R1 端子近くに配置して下さい。USB アナログ回路の特性を決める
基準電流生成用のため、誤差が大きいとアナログ特性に影響を及ぼします。必ず指定の精度のもの
を使用して下さい。
HVDD 端子、LVDD 端子
各 HVDD 端子、LVDD 端子毎に、バイパスコンデンサをできるだけ端子近くに配置する事を推奨し
ます。弊社評価ボード上の容量値は、以下の通りですが、レギュレータの特性などにも左右されま
す。LSI の動作安定性の観点より、各電源端子毎に実装する事を推奨します。
各 HVDD 端子:0.1uF(15pin, 31pin)、0.1uF + 2.2uF(4pin, 9pin, 42pin)
各 LVDD 端子:0.01uF(3pin, 8pin, 16pin, 29pin, 43pin)、0.01uF + 10uF(46pin)
VSS 端子
各 VSS 端子は、分離のない共通 GND プレーン(Appendix の例を参照)に低インピーダンスで接続
して下さい。
20
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
4. 各ポートの USB 接続スピードについて
4. 各ポートの USB 接続スピードについて
USB ホストと接続されるアップストリームポート U0 は、MODE0 端子の設定によって、HS/FS を自動
検出するモード(USB2.0)と、FS 固定のモード(USB1.1)のどちらかを選択できます。
USB デバイスと接続されるダウンストリームポート D1~D4 は、HS/FS/LS に対応したポートと、FS/LS
に対応したポートに分かれています。下表にて LSI 型番毎に示します。
LSI 型番
S2R72A44
S2R72A43
S2R72A42
S2R72A0x
ポート
対応 USB スピード
U0
D1
D2
D3
D4
U0
D1
HS/FS(MODE0=L) または FS 専用(MODE0=H)
HS/FS/LS(U0=HS) または FS/LS(U0=FS)
HS/FS/LS(U0=HS) または FS/LS(U0=FS)
FS/LS
FS/LS
HS/FS(MODE0=L) または FS 専用(MODE0=H)
HS/FS/LS(U0=HS) または FS/LS(U0=FS)
D2
D3
U0
D1
D2
U0
HS/FS/LS(U0=HS) または FS/LS(U0=FS)
FS/LS
HS/FS(MODE0=L) または FS 専用(MODE0=H)
HS/FS/LS(U0=HS) または FS/LS(U0=FS)
HS/FS/LS(U0=HS) または FS/LS(U0=FS)
FS
Dn
FS/LS
表 4-1 各ポートの対応 USB スピード
アップストリームポートが HS、FS、それぞれの場合において、各ダウンストリームポートで接続さ
れる USB の接続スピードの例を以下に示します。S2R72A44 を例にしていますが、A43、A42 につ
いてもポートの有無を除き、同様です。
FS/LS対応ポート
HostがHS、かつMODE0=Lの場合
USB-Host
HS接続
U0
S2R72A44
D4
FS接続
D3
FS接続 ※
D2
HS接続
D1
FS接続
FS Device
HS Device
HS Device
FS Device
HS/FS/LS対応ポート
※D3ポートはFS/LS用ポートのため、HSデバイスを接続しても、
D3ポートはFS接続となります。
図 4-1 アップストリームが HS 接続時の例
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
Seiko Epson Corporation
21
4. 各ポートの USB 接続スピードについて
HostがHS、かつMODE0=Hの場合
HostがFSの場合
USB-Host
FS接続
FS/LS対応ポート
U0
S2R72A44
D4
FS接続
D3
FS接続
D2
FS接続 ※
D1
FS接続
FS Device
HS Device
HS Device
FS Device
HS/FS/LS対応ポート
※U0ポートがFS接続の場合、
たとえHS対応のD2、D1ポートにHSデバイスが接続されても、
D2、D1ポートはFS接続となります。
図 4-2 アップストリームが FS 接続時の例
なお USB ホストは、本 LSI のダウンストリーム側に接続されたデバイスの動作スピードを、本 LSI
(HUB)から得られるステータスを用いて判断することができます。GetPortStatus リクエストを発行し
て、デバイスから返ってくる Port Status Field は、動作スピードに応じて以下のようになります。
HS の場合:PORT_LOW_SPEED=0, PORT_HIGH_SPEED=1
FS の場合:PORT_LOW_SPEED=0, PORT_HIGH_SPEED=0
LS の場合:PORT_LOW_SPEED=1, PORT_HIGH_SPEED=0
22
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
5. Appendix
5. Appendix
5.1
DP/DM基板配線例
本 LSI と USB レセプタクル間の DP/DM 信号配線例を示します。なお、DP/DM 信号への付加部品は省
略しています。各寸法は、弊社評価基板(株式会社キョウデン 製)における製造実績に基づいていま
す。
アップストリームポート側
伝播遅延:1[ns]以内
DP
S2R 72A 4x
DP
DM
GND
DM
S2R72A0x
VBUS
線幅0.28mm、」線間0.30mm (差動90Ω)
線幅0.28mm,
線間0.30mm (差動90Ω)
B レセプ タク ル
(S2R72A4xと同面実装時)
この点線部分の直下は分離のないGNDプレーン
図 5-1
B レセプタクル(スルーホールタイプ)同面実装の例
ダウンストリームポート側
伝播遅延:3[ns]以内
VBUS
DM
DM
S2R 72A 4x
DP
DP
S2R72A0x
GND
A レセプ タク ル
(S2R72A4xと同面実装時)
線幅0.28mm, 線間0.30mm (差動90Ω)
線幅0.28mm、」線間0.30mm (差動90Ω)
この点線部分の直下は分離のないGNDプレーン
図 5-2
A レセプタクル(スルーホールタイプ)同面実装の例
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
Seiko Epson Corporation
23
5. Appendix
5.2
アップストリームポート接続時の例
アップストリームポートと HS 接続されてからダウンストリームポートが有効になるまでの流れを、下
図を例に説明します。HS の Host でかつ、MODE0=L の場合の例となります。
(1)
U0_VBUS
XO
図 5-3 発振波形の例
(1)
U0_VBUS
(3)
U0_DP
(2)
(4)
(6)
U0_DM
(5)
D1_VBUSEN
図 5-4 アップストリームポート接続時の例
24
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
5. Appendix
(1) U0_VBUS の High 検出と OSC 発振
USB ホストとケーブル等で接続すると U0_VBUS 端子が High になります。本 LSI はこれをトリガと
して内部発振を開始します。
(2) DP プルアップ
U0_VBUS 端子の High を検出後、本 LSI は内蔵抵抗によって U0_DP 端子をプルアップします。
(3) バスリセットと Chirp
U0_DP 端子のプルアップ後、まもなくして USB ホストからのバスリセットを受けると、本 LSI は
Chirp K を返します。それに応答して Host Chirp がホストにより実行されます。これにより、スピー
ドネゴシエーションが High Speed として完了します。
(4) エニュメレーション
ホストから各種リクエストが発行され、本 LSI はそれに応答します。(上図ではパケット波形まで
は十分に表示されていません。)
(5) ダウンストリームポート VBUS の有効化
上記(4)の過程で Dn_VBUSEN 端子が High になります。
(x=1~4)これはホストからの SetPortFeature
(PORT_POWER)リクエストを受信することで行われます。この信号を用いて、ダウンストリームポー
トに対し VBUS 供給が開始されます。
(6) サスペンドステート
この例では、上記(4)(5)の処理が終了すると U0 ポートはサスペンドステートに入ります。これは、
ダウンストリームポートに USB デバイスが接続されておらず、ホストがサスペンドさせている事を
示しています。もし USB デバイスが接続されていれば、通常、デバイスとの接続処理が始まり、U0
ポートはサスペンドステートになりません。
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
Seiko Epson Corporation
25
5. Appendix
5.3
ダウンストリームポート過電流検出時の例
ダウンストリームポートへ供給する VBUS 電源の過電流が検出されて VBUS 供給が停止されるまでの
流れを下図に示します。以下は Individual モードでの例です。Gang モードでは使用されるリクエストが
異なりますが同様の流れです。
U0_DP
(3)
U0_DM
(1)
D1_VBUSFLG
(2)
D1_VBUSEN
図 5-5 過電流検出時の例
(1) 過電流検出
外付けの VBUS スイッチ IC などからの Low レベル信号が D1_VBUSFLG 端子に入力され、過電流
の発生を検知します。過電流とする条件は VBUS スイッチ IC の仕様や設定によります。また、過電
流検出と共に、ホストからのステータスチェック(Interrupt-IN)に対する返信データとして、その
過電流フィールドがセットされます。
(2) ダウンストリームポート VBUS の無効化
上記(1)から 6msec 以内に D1_VBUSEN 端子が Low 出力します。この信号を用いて、ダウンストリー
ムポートに対し VBUS 供給が停止します。上記例では、D1_VBUSFLG 端子へ入力される信号が同時
に High に戻っていますが、これは外付け VBUS スイッチ IC が過電流を検出しなくなったためです。
(3) ステータス変化通知、及びリクエスト応答
ホストは本 LSI のダウンストリーム側 VBUS ポートに過電流状態の変化が発生した事を、以下のシー
ケンスで検知します。
26
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
5. Appendix
1.ホストは Interrupt-IN 転送によって、過電流フィールドの変化が発生したポートの StatusChange
ビットがセットされた事を検知する。
2.ホストは GetStatus リクエストを発行し、本 LSI は PortChangeBits の C_PORT_OVER_CURRENT
ビットをセットして通知する。(注 1)
3.ホストは ClearFeature(C_PORT_OVER_CURRENT)リクエストを発行する。
(注 1)通常、このリクエスト応答が行われる時は、VBUS 供給が停止されて過電流状態でなくなっ
ているため、PortStatusBits の PORT_OVER_CURRENT ビットはセットされません。
この後、ホストが SetFeature(PORT_POWER)リクエストを発行すると、D1_VBUSEN 端子は High
出力し、このダウンストリームポートに対して再度 VBUS 供給が開始されます。但し、過電流発生
の根本的な要因が残ったままであれば上記が繰り返されるため、SetFeature リクエスト発行の有無は
ホストの仕様によります。
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
Seiko Epson Corporation
27
5. Appendix
5.4
USBデバイス異常時の処理
USB は、CRC や転送プロトコルによって、データ転送エラーを起こさないためのロバスト性を兼ね
備えていますが、ハードウェア的耐量を超えた外来ノイズ等によっては USB 系が異常に陥る場合も
考えられます。
ここでは、HUB のダウンストリームに接続された USB デバイスがノイズの影響などで異常な動作
モードに入り、USB ホストがそれを「異常」と判定する場合の検知手段例、及び復帰手段例につい
て述べます。
異常の検知
通常の USB プロトコルによる検知(例えばデバイスの切断検知など)は期待できないものの、デバ
イスの応答が無くなることで異常を検知する事ができます。例えばファイルコピー動作であれば、
デバイスへのコマンドに対する応答が得られなくなるため、ファイルシステムのタイムアウトなど
によって異常を検知することができます。
異常からの復帰
以下を実行することで復帰を期待できます。
1.該当する USB デバイスを再起動させる。
・該当 USB デバイスが BUS パワード動作の場合、以下の手順で VBUS 供給を操作する。
(1) ClearPortFeature(PORT_POWER)リクエストにより、デバイスへの VBUS 供給を OFF する。
(2) SetPortFeature(PORT_POWER)リクエストにより、デバイスへの VBUS 供給を ON する。
注;この方法は、ダウンポートの VBUS 制御を HUB が行う構成の場合に限られます。
そうでない構成の場合は、該当 USB デバイスの抜き挿し操作をする事になります。
・該当 USB デバイスがセルフパワード動作の場合、デバイスの電源を OFF/ON する。
2.該当する USB デバイスにバスリセットをかける。
・SetPortFeature(PORT_RESET)リクエストにより、ダウンポートをバスリセットする。
但し、バスリセットは USB プロトコルの実装であるため、
いわゆるハードリセットのように全ての場合に効力があることは期待できません。
28
Seiko Epson Corporation
S2R72A0x/4x シリーズ
アプリケーションノート(Rev.1.00)
改訂履歴
改訂履歴
改訂内容
年月日
頁
Rev.
種別
内 容
09/06/19
0.79
全頁
新規
新規作成
09/08/03
0.90
18,
22,23
追記,
訂正
・ホストがデバイスの接続スピードを検知する手段について追記。
・過電流検出時の例について図の変更と説明追記。
09/10/08
0.91
11
15
17
全般
追記
追記
変更
変更
3.3.2 章 DP/DM 信号ラインの負荷部品の接続例と補足を追記。
3.5 章 VBUS スイッチ IC の仕様に関する補足を追記。
3.7 章 HVDD/LVDD 端子のパスコン値を変更。
製品型番を S1R/S2R72A0x から S2R72A0x のみへ変更。他、文章の表現上の変更。
10/04/13
0.95
10,11
14
19
28
追記
追記
追記
追記
3.2 章 消費電流と供給電源能力についてを追記。
3.3.3 章 DP/DM信号伝送路で必要な抵抗の LSI 内蔵品について追記。
3.6 章 水晶振動子の周波数精度を HS、FS それぞれに分けて提示。
5.4 章 USB デバイス異常時の処理 を追記。
11/02/28
1.00
全般
変更
製品型番に S2R72A4x シリーズを追加。
3
変更
2.2 過電流検出の通知手段の説明を修正。
5,6
修正
誤字及び脱字の修正
20
変更
電源端子のパスコンにつき、推奨容量値を変更。
21
変更
ダウンポートの対応スピードモードにつき、U0 ポートとの関連を追記。
マイクロデバイス事業本部
東京
デバイス営業部
〒191-8501
東京都日野市日野 421-8
TEL(042)587-5313(直通)
大阪
〒541-0059
FAX(042)587-5116
大阪市中央区博労町 3-5-1
TEL(06)6120-6000(代表)
エプソン大阪ビル 15F
FAX(06)6120-6100
ドキュメントコード:411812203
2009 年 6 月 作成
2011 年 6 月改定