環境経営の基盤 環境会計 環境経営評価や意思決定支援ツールとなる 環境会計の確立を目指します。 うな施策を実施すれば有効かを判断する リコーグループは、1999年に初めて 環境会計を公表して以来、外部から一 定の評価を得てきましたが、内部にお ける経営の意思決定支援ツールとして、 て、より充実を図る必要があります。 内部環境会計ツールである「セグメン ト環境会計」 や 「エコバランス環境会計」 を活用し、環境経営の推進に役立てる とともに、今後は、環境保全活動を正 しく評価できる環境経営指標へと発展、 充実を図っていきます。 環境会計の活用 環境経営推進のための 内部環境会計ツール ために、環境会計を活用しています。 まず、 事業別の 「エコバランス環境会計」 によって、 セグメント環境会計 トナー、半導体、サーマル製品などの事業 事業活動の全工程から、環境保全に関わ における環境負荷とコストの大きい工程を る任意の投資やプロジェクトを取り出し、 特定します。その工程の環境負荷を経済 任意の期間における予測・効果把握を行 合理性の高い方法で削減するために、さ います。ROI (Return on Investment:投資 まざまな改善施策を検討します。 そして、 「セ 利益率)の考え方に基づいて、環境に関す グメント環境会計」によって、それぞれの る投資対効果を明確にし、環境経営の意 施策の有効性や、どのような方法で実施 思決定につなげるための内部環境会計 すれば効果が高いかを判断します。たとえ ツールです。 リサイクル事業のセグメント ばトナー事業に関しては、製造工程および 環境会計など、グループ各社・各部門での 製品輸送時の環境負荷が大きいことがわ 活用が進んでいます。 かりました 。また 、製 品 輸 送 に 関しては ※ セグメントの環境会計事例は 19、23、33、39、 43ページ 鉄道へのモーダルシフトが有効であると 考えられますが、 どのように運用すれば、 エコバランス環境会計 効果が高いかを見極める必要があります。 環境経営活動のPDCAを回すための内部 施策決定への活用 そこで、沼津事業所からの製品出荷を環 環境会計ツールで、環境経営情報システ 環境経営を推進するためには、環境負荷 境会計によって分析しました。その結果モー ム*1から得られる各工程の環境負荷情報 削減とコストダウンのバランスがとれた ダ ルシ フトす る 場 合 に は 、輸 送 距 離 が をもとに、各工程およびグループ全体の 施策を実施することが重要です。 リコーグ 200km以上であれば環境負荷とコストの 環境会計を行っています。 「 2010年長期 ループは、 どの事業の、 どの工程で、 どのよ 効果的な削減が可能なことがわかりました。 環境目標*2」 や 「環境行動計画*3」 の設定・ 進捗状況の管理をはじめ、部門別業績評 価への活用も検討しています。 環境会計の活用フロー *1:49ページ *2:9ページ *3:11ページ ① 統合環境影響評価(事業のエコバランス)を実施する。 コーポレート環境会計 日本の環境省 「環境会計ガイドライン」 に沿っ 分析 ② 詳細分析を実施し、環境影響の大きな要因を特定する。 (実際の改善活動に結びつけることができるレベルまでの分析が必要) て、外部とのコミュニケーションを図るた めのツールです。エコバランス環境会計 のデータから必要な部分を取り出し、自社 施策案 ③ 環境影響低減のための施策アイディア出し。 開発による計算式・指標をもとに環境保 全コストと効果(物量・金額)を算出し、第 三者検証を受けて公開しています。今後も アセスメント ④ 各施策について、関連するコスト項目、及び、環境影響項目を洗い出す。 ⑤ 上記で抽出された項目をコスト対効果で定量化する。 精度向上を図るとともに、比較可能性の 高いツールとなるよう、財務諸表のよう なスタンダード化に向けて積極的に働き 53 施策選定 ⑥ コストシミュレーションした値を比較検討し、実施すべき施策を選定する。 結果評価 ⑦ 施策を実施した結果をコスト対効果で把握し、環境経営が実現できている か評価する。 リコーグループ環境経営報告書2005 かけていきます。 環 境 経 営 の 考 え 方 2004年度の環境会計レビュー コーポレート環境会計レビュー 次にリコーグループ事業全体の環境経営 あり、2004年度においても顕著に増えて 環境経営活動のコスト対効果の結果指標 レベルを示す 「環境負荷利益指数」 に関して、 います。 また環境研究開発コストも増加し である「環境収益率」、 「 環境効果率」につ 環境負荷総量は若干減少したものの、売 ており、製品系の環境経営活動について いては、2003年度に比べ、約10%低下し 上総利益が前年度比1.4%減少したこと 多くのコストが発生していることがわかり ました(グラフ①参照)。 これは環境保全コスト もあり、 前年度比微減となりました。 ただし、 ます。 が前年度比約7%増加しているうえ、経済 2001年度と比較した2004年度の効率 環境保全コストに対する経済効果に関して、 効果において、特に汚染予防活動による は約45%向上しており、事業全体の環境 事業所活動に対する経済効果は得られに 偶発的効果が大幅に減少しているためで 経営のレベルはここ3年間でかなり高まっ くくなってきているものの、製品リサイク す。 しかしながら、 偶発的効果については、 てきたと考えられます(グラフ②参照)。 ルの経済効果は、 ここ数年、大幅に増えて 汚染予防活動の進展により汚染リスクが 次にコーポレート環境会計のデータ(55ペー きています。その結果、製品に関連した環 縮小されることで、 リスク回避金額も縮小 環境保全コストにつ ジ参照)を見てみると、 境経営活動の経済効果が5割以上を占め するという性格を持っているものです。一 いて、事業エリア内コストや管理活動コス るまでになってきており、この傾向は、今 方で環境行動計画スタート時点(2001年 トについては昨年と同水準であり、事業所 後益々顕著に現れてくると考えられます。 度結果) に比較して、 環境収益率は約50%、 系の環境マネジメント関連コストは、定常 一方、環境保全効果に関しては、各環境負 環境効果率は約3%向上しています(グラフ 化してきたと考えられます。一方、製品リ 荷項目ともに絶対量の削減があまり進ん ①参照)。 サイクルコストは、ここ数年、増加傾向に でおらず、特にCO2発生量については生 製 品 に 関 す る 取 り 組 み 産増や猛暑の影響で2%以上の増加と際 事 業 所 に 関 す る 取 り 組 み 立って増加しており、今後の温暖化防止に 向け、 大きな課題を残す結果となりました。 リコーグループの環境経営指標の推移 ① 環境収益率と環境効果率 環境収益率 現在リコーグループでは、省エネ、省資源 ② 環境負荷利益指標 環境効果率 環境負荷利益指数 売上総利益 2400 2.5 2.24 2.01 2.0 1.81 1.96 1.95 1.5 (億円) 8000 1.81 1.61 1.58 1.27 1.21 1.0 7,453 2100 7,656 7,545 でに福井事業所では、生産工程のマテリア 1,753.1 6000 6,133 1,741.5 1,423.7 1,204.1 600 538.8 0.5 300 0 0 2000 2001 2002 2003 2004 2000 2001 2002 2003 2004 [ 5000 売 上 総 4000 利 益 ] 3000 ル、エネルギーなどの物量及びコストを集 計し、工程改善によるロス低減/環境負荷 削減を行った結果、年間約1.23億円の原 材料費、直接経費の低減ができたとの試 2000 算結果も出ています。今後、 リコーグルー 1000 プから発生する環境負荷についてより一 0 層の低減を図り、環境経営の実現に向け 基 盤 環 境 会 計 た取り組みを進めていきます。 (年度) (年度) 善する環境経営活動を進めています。す 7000 6,999 1800 [ 環 境 1500 負 荷 利 1200 益 指 数 900 ] の視点で生産プロセス自体を革新的に改 リコーグループの環境経営指標(2004年度) 環境経営指標 結 果 環境収益率(REP : Ratio of Eco Profit) 1.81 環境効果率(REE : Ratio of Eco Effect) 2.01 環境負荷利益指数(Eco Index) 社会コスト利益率(RPS : Ratio of Profit to Social cost) 1,741.5 119.2 算出式 / 環境保全コスト総額(165.7) 経済効果総額(299.8) {経済効果総額(299.8)+社会コスト削減額(0.3+32.9)}/ 環境保全コスト総額(165.7) 売上総利益(754,500,000千円) / 環境負荷総量(433,247) 売上総利益(7,545)/社会コスト総額(63.3) ※ 特に明示のない場合の金額単位は(億円)。 リコーグループ環境経営報告書2005 54 環境経営の基盤 環境会計 2004年度 リコーグループのコーポレート環境会計 環境保全コストを事業活動との関わりによって分類した もの。具体的には環境省「環境会計ガイドライン2005 年版」の「事業活動に応じた分類」によっています。 環境保全活動に対する支出で、 環境投資と環境費用(狭義のコスト)の両方を含む広義のコストをいいます。 ● 環境投資 環境保全活動に対する支出のうち、財 務会計の固定資産投資に相当するもの。 その金額は減価償却の手続きにより 固定資産の耐用期間にわたって環境 費用として配分されます。 ● 環境費用 環境保全活動に対する支出のうち、財 務会計の期間費用に相当するもの。 (環 境投資の減価償却費を含みます) コスト単位 : 億円(外貨レート : 1$ = 107.58円、 1Euro = 135.25円) コ ス ト 経 済 効 果 項 目 環境投資 環境費用 主な費用項目 公害防止コスト……… 3.98(億円) 事業エリア内 コスト 上・下流コスト 5.3 20.9 地球環境保全コスト… 5.98(億円) 資源循環コスト………10.94(億円) 0.5 84.6 製品の回収、再商品化のための リサイクル費用 管理活動コスト 1.1 33.8 環境対策部門費用、環境マネジメント システム構築・維持費用 研究開発コスト 1.0 18.9 環境負荷低減のための研究、開発費用 金額効果 分類 5.3 a 節電や廃棄物処理効率化など 50.2 b 生産付加価値への寄与 59.4 c 汚染による修復リスクの回避、訴訟の回避など 103.9 a リサイクル品売却額など [26.5] S 社会における廃棄物処理コストの削減 21.1 b 報道効果、環境教育効果など 51.5 a R&D (環境研究開発)による利益貢献額 [6.4] S 製品省エネ性能向上によるユーザー支払電気代削減 b 環境宣伝効果額など 社会活動コスト 0.0 5.3 環境報告書作成、環境広告のための費用など 8.4 環境損傷対応コスト 0.6 1.6 土壌汚染の修復、環境関連の和解金など 0.0 その他コスト 0.0 0.6 その他環境保全に関連するコスト 0.0 総 計 8.7 165.7 項 目 な し 299.8 (a:160.7 b:79.7 c:59.4) 合計 a : 実質的効果 b : みなし効果 [32.9] S合計 c : 偶発的効果 S : 社会的効果 ・環境投資比率 : 2.5% ・環境研究開発費比率 : 1.7% 〈 =環境投資(8.7) / 設備投資総額(346.1) 〉 〈 = 環境研究開発費総額(18.9) / 研究開発費総額(1,104) 〉 (お客様での効果) 環境保全活動の結果として得られた効果のうち、 リコーグループの利益に何らかの形で貢献した効果で、以下の4つに分類されます。 ● 実質的効果(a) 経済効果のうち次のいずれかに当て はまるものをいいます。 ア 効果としての現金または現金同等 ■ 物の受け取りがあるもの。財務会計 の実現収益に相当します。 イ 環境保全活動がなければ発生する ■ はずだった費用が節約された場合の節 約額。 財務会計では認識されません。 55 リコーグループ環境経営報告書2005 ● みなし効果(b) ● 偶発的効果(c) 環境保全活動に対する支出が全体と しての利益獲得に寄与したと推定さ れる場合の寄与推定額。例えば、環境 保全コストをリコーグループが事業 を営むための不可欠なコストと考え れば、それは一定の割合で利益獲得 に貢献しているといえます。 具体的に は項目別に一定の方法を定めて計算 します。 環境保全活動に対する支出は環境負 荷の発生を防止するため、ひとたび 発生してしまった場合の損害を回避 する効果があったといえます。 具体的 には発生した場合に見込まれる損害 額に発生係数と影響係数を掛けて計 算します。 ● 社会的効果(S) 環境保全活動に対する支出がリコー グループ外の社会であげた効果。具 体的には環境配慮型製品がお客様の 電気代や廃棄物処理費を削減した額 をいいます。 ※ 算出式は右ページを参照。 環 境 経 営 の 考 え 方 リコーグループが当年度に排出した環境負荷物質の量。 環境保全活動の結果として 得られた効果のうち、環境負 荷の発生の防止・抑制・影響 の除去・修復などの取り組み の効果。 リコーグループでは、 前年度と比較した環境負荷 物質の排出削減量を計上し ています。 ( =前年度排出量 −当年度排出量) ● 換算係数 ● 削減換算値 /負荷換算値 ● 社会コスト削減額 / 単位の異なる多種の環境負荷を 重みづけして合算し、環境への影 響度を把握するための重みづけ 係数(CO2 =1)。スウェーデンの EPSという手法を応用して求め ています。 環境負荷削減量/環境負荷 総量に換算係数を掛けた値。 t-CO 2 単位に換算した環境 負荷削減量/環境負荷総量 の環境への影響度といえます。 社会コスト 削減換算値/負荷換算値を金 額に換算したもの。 EPS Ver. 2000により108Euro/t-CO2 で計算しています。 環 境 保 全 効 果 環境負荷削減量 (t) 換算係数 製 品 に 関 す る 取 り 組 み 環 境 負 荷 削減換算値 社会コスト削減額 総 量 (t) 換算係数 負荷換算値 社会コスト 事業所での環境負荷削減量 CO2 …………………… −6,766.5 1.0 −6,766 −0.99 CO2 ……… 291,267 1.0 291,267 42.55 NOx …………………………… 9.4 19.7 185 0.03 NOx ……………… 172 19.7 3,384 0.49 SOx ………………………… −0.6 30.3 −18 −0.00 SOx ………………… 10 30.3 289 0.04 BOD …………………………… 8.9 0.02 0.2 0.00 BOD ………………… 23 0.02 0 0.00 廃棄物最終処分量 …………… 2.3 104.0 238 0.03 廃棄物最終処分量…841 104.0 87,468 12.78 8,546 1.25 PRTR対象物質排出量 … 50,839 7.43 2,185 0.31 433,247 63.28 PRTR対象物質排出量 ………………… (リコー基準にて 各物質毎に換算) (リコー基準にて 各物質毎に換算) 事 業 所 に 関 す る 取 り 組 み 製品での環境負荷削減量 CO2 ………………… 9,969.1(t) NOx ……………………… 8.2(t) SOx ……………………… 6.5(t) 廃棄物最終処分量 … 33,096.0(t) 集計範囲は国内のみ 対象範囲 ●集計対象:リコーグループ主要93社 73ページ ●集計対象期間: 2004年4月1日から2005年3月31日 (コスト、環境負荷総量) ※ 環境負荷削減量は2003年度実績と2004年度実績との比較です。 ※ 社会コストは108Euro / t - CO 2(¥14,607/ t - CO 2)を基準に計算 (1) 実質的効果の算出式 環 境 会 計 3) 偶発的効果の算出式 光熱水道費削減額 前年度光熱水道費 ─ 当年度光熱水道費 偶発的効果金額 基準金額×発生係数×影響係数 廃棄物処理費削減額 前年度廃棄物処理費 ─ 当年度廃棄物処理費 対象項目 汚染防止に関わる改善項目 有価物売却額 廃棄物分別による有価物の売却額 基準金額 訴訟、操業停止、修復における基準金額を設定 係 数 発生頻度、影響範囲で発生係数と影響係数を設定 リサイクル製品・パーツ売上 リサイクルした製品および部品の売上 補助金 国などからの環境関連の補助金額 R&D利益貢献額 製品粗利×環境配慮ポイントによる粗利貢献率 (2) みなし効果の算出式 生産付加価値寄与額 基 盤 (4)社会的効果(顧客サイドでの製品使用による経済効果)の算出式 (生産高−原材料費)×事業エリア内コスト/製造経費 総電力量 製品消費電力量×販売台数 報道効果 新聞で取り上げられた紙面面積/1頁の紙面面積×1頁あたりの広告費用 電気代削減効果 (旧製品総電力量−新製品総電力量)×電気代単価 環境教育効果 内部環境教育受講者×外部で受講した場合の費用 廃棄物処理費削減効果 (回収製品重量−最終処分重量)×外部処理単価 宣伝効果 環境ホームページアクセス数×環境報告書単価 リコーグループ環境経営報告書2005 56