自己保持型MEMS光スイッチ

技術紹介 5 自己保持型 MEMS 光スイッチ
技術紹介
5
自己保持型MEMS光スイッチ
Latching MEMS Optical Switch
加藤 嘉睦
Yoshichika Kato
中央研究所 研究開発部 主任
近藤 健治
Kenji Kondo
中央研究所 研究開発部 主任
濱田 義彦
Yoshihiko Hamada
中央研究所 研究開発部 主任
伊巻
Osamu Imaki
中央研究所 研究開発部
Keiichi Mori
中央研究所 研究開発部 シニアマネージャー
森
理
恵一
キーワード: 光スイッチ、MEMS、自己保持、光通信、シリコン
Keywords : optical switch, MEMS, latching, optical communication, silicon
要 旨
SUMMARY
日々増大する通信トラヒック需要を支えるため光通
信網の整備が進められていますが、その構築には光
信号の経路切替を行う光スイッチが重要な部品として
To support day-by-day increasing communication
traffic demand, optical communication networks
are being developed. For establishment of the
network, optical switch is positioned as an important
device to play a role to switch optical signal routes.
JAE has been engaged in development of inertial
sensors incorporating the MEMS technology.
Based on our piled-up technology, we developed
a high-performance, high-robust optical switch by
integrating elements necessary for optical switching
into a single chip by adopting simple single mask
process. The device we developed satisfies fully the
target specification in both optical and mechanical
properties, which was set up for use in real field
a p p l i c a ti o n . Fu r th e r, th e d e v i c e sh o w s g o o d
performance in major reliability tests.
位 置 付けられています。当 社では、MEMS技 術を
用い慣性センサーなどを開発してきましたが、ここで
培った技術を応用し、シンプルな1枚マスクプロセス
により光スイッチングに必要な要素をワンチップ化し
た高性能、高耐久な光スイッチを開発しました。開発
したデバイスは、光学特性、機械的特性とも実フィー
ルドでの使用を前提とした目標仕様を十分に満足し、
主要な信頼性試験においても良好な結果を得ています。
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航空電子技報 No.29(2006.3)
1
技術紹介 5 自己保持型 MEMS 光スイッチ
1 まえがき
近年の高度情報化社会において情報通信量は日々増大し、その需要に応えるべく、そのイ
ンフラとなる光通信網の整備が世界的規模で進められています。光通信網は光信号の送信、
中継、切替、受信等、多くの機能を複合し構築されていますが、それを構築するうえでの
キーデバイスの一つとして光スイッチがあります。光スイッチとは、光信号を電気信号に
変換することなく光のまま経路切替を行うもので、光通信の高速性、広帯域性を損なうこ
となくネットワーク化するためには必須のデバイスです。光通信では一本の光ファイバに
複数の異なる波長の光信号を重ねて送信する波長多重伝送という方式が採られますが、こ
の波長多重された信号光をネットワークの各ノードにおいて、波長毎に分岐あるいは挿入
するための経路切替に光スイッチが用いられます。また、光通信網の冗長性を確保するた
め、光通信網において障害が発生した場合に、光スイッチにより予備系に切替える、ある
いは障害を迂回する経路に切替えるという用途もあります。その他、信号光の監視、計測
器用途等、光スイッチの適用範囲は多岐に渡ります。
このような光スイッチに対する要求項目としては、ⅰ ) 低価格、ⅱ ) 低損失、ⅲ ) 自己
保持型 ( 無電力にて状態を保持する機能 ) の 3 要素が現在必須とされています。この実現
に向け、当社では慣性センサー開発などで培った MEMS 技術を適用し、低価格、高機能
なデバイス開発に取り組みました。MEMS 技術により、ワンチップ内に光のスイッチン
グに必要な要素 ( ミラー、ミラー駆動機構、ミラー自己保持機構、ファイバガイド等 ) を
集積化することが可能となり、これは小型・高機能化に寄与するばかりでなく、部品点数
の削減、ならびに実装コストの抑制にもつながります。
本報では、今回開発した光スイッチの構造とその作製プロセス、および機構設計につい
て解説し、最後に試作したデバイスの評価結果を報告します。
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技術紹介 5 自己保持型 MEMS 光スイッチ
2 開発目標
本MEMS光スイッチの目標仕様を表1に示します。現在、機械式と呼ばれる、電磁リレー
に類似の機構部に光学部品を実装したタイプの光スイッチが実用化されていますが、本
MEMS光スイッチは、実フィールドへの適用を想定しそれらと同等の光学特性を実現し、
かつ、将来の多チャンネル化を見据えたワンチップ化による小型設計、および単結晶Si
の優れた材料特性を活かした、高耐久、高信頼なデバイス開発を目指すものです。
表 1 目標仕様
波長範囲
1510 ∼ 1610[nm]
挿入損失
< 1.0 [dB]
(コネクタ込み)
波長依存性
< 0.15 [dB]
偏波依存性
< 0.10 [dB]
クロストーク
< − 60 [dB]
反射減衰量
> 40 [dB]
(コネクタ込み)
切替時間
< 1 自己保持型(耐衝撃性)
> 50 [G]
切替寿命
> 1 ×109[回]
[ms]
3 スイッチング原理
本光スイッチのスイッチング原理を図 1 に示します。入力ポートとなる光ファイバの
正面には出力ポート1となる光ファイバが、また、直角方向には出力ポート 2 となる光
ファイバが、それぞれ空間を隔てた状態で設置されています。本光スイッチではこの空間
にミラー(紙面に垂直な反射側壁)を抜き挿しすることにより、つまり、図中の(a)と
(b)の状態を切替えることにより光信号経路のスイッチングを行います。
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図 1 スイッチング原理説明図
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4 素子構造
図 2 に素子構造を示します。図中、青または黄で示した部分はグレーで示した基板部
分から、垂直に隆起した構造となっており、この上部構造の側壁を利用し、ファイバガイ
ドを形成しています。ファイバガイドの交差部にはミラーがあり、このミラーはロッドを介
して、駆動力を発生する櫛歯電極、および可動機構全体を支える 4 本のヒンジと一体化
されています。このような立体構造は、SOI(Silicon on insulator)基板表面にフォ
トリソグラフィー技術 (1 枚マスク ) により保護パターンを形成し、そのパターンをもとに
上部単結晶シリコン層を ICP-RIE(誘導結合プラズマによる反応性イオンエッチング)に
より垂直エッチング加工したものです。
光ファイバを X 状配置とし 1 回反射構造としたのは、ミラー反射回数を最小限に留める
ことにより、ミラー反射面での散乱損失、偏波依存損失を低減することを目的としていま
す。また、反射角度を 90°とすることでワーキングディスタンス(ファイバ端面間距離)
を最小としています。これはファイバのミスアライメントに起因する損失を低減することを
目的としています。なお、ファイバ先端は空間伝播光の結合損失を最小にし、反射減衰
量を最大にするように設計されています。
可動機構を支える 4 本のヒンジは湾曲した形状を有しています。これは Bistable と称
される座屈を伴うヒンジの形状反転メカニズムを応用することによって、ミラーの位置を
2 値制御することを意図した構造です。
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図 2 光スイッチ素子構造
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5 素子設計
5.1 光学設計
光学パラメータの決定に際しては、ガウシアンビーム光学系に基づき計算を行い、この
光学系を特徴付けるビームウェストにおけるスポットサイズの設定は、作製誤差に起因す
る結合損失が最小となるよう決定しました。このビームウェストをもとにファイバ先端の
光学パラメータを決め、そして十分な光学特性が得られるよう ( 特にクロストークの確保
に留意して ) ミラーのストローク ( 可動距離 ) を決定しました。
5.2 ヒンジ設計
本光スイッチでは、ミラーの 2 値状態を自己保持するために Bistable と称される湾曲
した梁の座屈現象を応用しています。その概念図を図 3 に示します。同図では、アーチ
状に湾曲した梁の頂点に荷重を加えていくと、ある臨界点を超えた時に梁が自発的に形状
反転して第 2 安定状態にスナップする様子が示されています。このメカニズムに立脚し
たヒンジ設計を行うため、有限要素法による非線形構造解析を行いました。
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図 3 Bistable ヒンジの座屈現象
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図 4 において、初期形状(変位 =0)が第 1 安定状態と定義されます。変位が極微小
な領域ではヒンジからの反力は線形な応答を示しますが、座屈荷重で極大値を迎えた後は、
変位を増大するにつれ反力は低下し、0 点(y=0 のライン)を切った後は外力を加えなく
とも自発的に第 2 安定状態にスナップします。ここで自己保持機能を決定するヒンジ部
の構造寸法は、次の 2 条件によって規定されます。
① 第 1、第 2 安定状態のいずれか大きい方の自己保持力が、アクチュエータの最大静
電力よりも小さいこと、
② 第 1、第 2 安定状態のいずれか小さい方の自己保持力が保証すべき衝撃力(50G)
よりも大きいこと、
本光スイッチでは、第 1 と第 2 安定状態の自己保持力が等しくなるよう設計を行いまし
た。これは、上記構造寸法の許容マージンを最も拡大できる最適解の一つと言えます。
Reaction Force
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�������
Displacement
図 4 Bistable ヒンジの変位−反力特性
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5.3 アクチュエータ設計
図 5 に櫛歯型静電駆動アクチュエータの設計を行う際の基本単位となる櫛歯電極構造
ユニット・セルを示します。同図に示すように、櫛歯電極構造では、①櫛歯先端部に働く
可動電極の変位 x に大きく依存する静電力と、②櫛歯側壁間に働く x に依存しない静電
力の、作用の異なる 2 種類の静電力を考慮する必要があります。両者を考慮したトータ
ルの静電力 Fes は次式のように表すことができます。
Fes
(x)
=ε0 Nh
{
w
1
+
2
g
(s − x)
}
V
2
ここで、
ε0 は真空の誘電率、N は櫛歯数(ペアの数)、h は電極の構造高さ、w は櫛歯の幅、
s は櫛歯先端から対向する電極までの初期間隔、g は櫛歯の側壁間隔、V は駆動電圧です。
上式を基に求めた静電力が先の自己保持力より大きく、かつ、可動機構の慣性力(櫛歯
電極設計に大きく依存)が 50 G 作用時においても自己保持力を超えないよう櫛歯電極の
各パラメータを設計しました。
�
��
��
��
�
��
図 5 櫛歯電極構造のユニット・セル
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なお、本設計の光スイッチにおける切替時間(ここでは、駆動電圧を印加してから、他
方の安定状態に至るまでの時間と定義)は、次のように見積もることができます。静電力
Fes からヒンジ反力 F h を差し引いた力が可動電極を加速する力として働くため、切替時
間 t は静電力を発生せしめる駆動電圧に著しく依存します。仮に、ミラーが第 1 安定状
態から第 2 安定状態に至るまでの間、一定電圧が素子に印加されたとすると、切替時間 t
は以下の式で表すことができます。
t=
√∫
m
2
dx
l
0
∫{Fes(x)− F(hx) dx}
x
0
ここで、m は可動電極の等価質量、l は第 1 安定状態から第 2 安定状態までの距離、x は
可動電極の変位です。上式より、本光スイッチの切替時間はおよそ 250 μs と見積もら
れます。
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6 結果
6.1 光学特性
図 6 ∼ 9 に光学測定結果の一例を示します。また、サンプルの光学特性の平均値 (11 台 )
を表 2 に示します。
表 2 光学測定結果(波長範囲内最悪値の平均)
挿入損失
波長依存性
偏波依存性
クロストーク
反射減衰量
目標仕様
< 1.0 dB < 0.15 dB < 0.10 dB < − 60 dB > 40 dB 出力ポート 1
0.58 dB 0.047 dB 0.024 dB −84.4 dB 53.3 dB 出力ポート 2
0.62 dB 0.043 dB 0.057 dB −72.0 dB 51.9 dB ※波長範囲 :1510 ∼ 1630nm
今回開発した光スイッチは、全ての光学評価項目において目標仕様を十分に満足する結
果を得ました。図 6 ∼ 8 では 10 回の繰り返し切替後の測定結果を重ねてプロットして
いますが、非常に再現性が良いことがわかります。図 6 に示す挿入損失の 10 回切替によ
る最大損失差は 0.017dB と極めて小さい値となっています。さらに、1.2 × 10 9 回切
替後(目標切替寿命 :1.0 × 10 9)の測定においても最大損失差 0.096dB という結果を
得ており、再現性のみならず MEMS 光スイッチの優れた機械的耐久性が確認されました。
偏波依存性については、十分に仕様を満足していますが、出力ポート間に有意な性能差
が見られました(表 2)
。これはミラー反射に起因するものですが、理想的な反射面に対
して見積もられる偏波依存損失よりも差が大きく、ミラー表面状態の不完全性によるもの
と推察しています。
ミラーストロークを決める上で指標としたクロストークについては、目標仕様 − 60dB
に対し、両ポートとも −70dB 以下であり十分に満足すべき結果を得ました。また、反射
減衰量においても目標を 10dB 以上上回る良好な値を得ました。
上述のサンプル 11 台に対し、恒温・恒湿試験 (Telcordia1221: 85℃、85%Rh、
2000 時間 ) を実施した結果を表 3 に示します。暴露後の全てのサンプルにおいて各項
目とも目標仕様を満足し、変動量も十分小さいことを確認しました。また、5 サンプルに
対しヒートサイクル試験(Telcordia1221: − 40 ∼ 85℃、1500 サイクル)を実施し、
同様に良好な結果を得ました。
表 3 恒温・恒湿試験後の光学測定結果(波長範囲内最悪値の平均)
挿入損失
波長依存性
偏波依存性
クロストーク
反射減衰量
目標仕様
< 1.0 dB < 0.15 dB < 0.10 dB < − 60 dB > 40 dB 出力ポート 1
0.52 dB 0.043 dB 0.016 dB − 86.5 dB 55.2 dB 出力ポート 2
0.56 dB 0.046 dB 0.066 dB −74.7 dB 52.6 dB ※恒温・恒湿試験:85℃/ 85% 2000 時間
※波長範囲:1510 ∼ 1630nm
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1.0
Port1-1
Port1-3
Port1-5
Port1-7
Port1-9
Port2-1
Port2-3
Port2-5
Port2-7
Port2-9
0.9
Insertion Loss [dB]
0.8
0.7
0.6
0.5
10
Port1-2
Port1-4
Port1-6
Port1-8
Port1-10
Port2-2
Port2-4
Port2-6
Port2-8
Port2-10
�������
0.4
0.3
�������
0.2
0.1
0.0
1500
1520
1540
1560
1580
1600
1620
1640
Wavelength [nm]
図 6 挿入損失典型例
Port1-1
Port1-3
Port1-5
Port1-7
Port1-9
Port2-1
Port2-3
Port2-5
Port2-7
Port2-9
0.10
0.09
0.08
PDL [dB]
0.07
0.06
Port1-2
Port1-4
Port1-6
Port1-8
Port1-10
Port2-2
Port2-4
Port2-6
Port2-8
Port2-10
�������
0.05
0.04
0.03
0.02
0.01
�������
0.00
1500
1520
1540
1560
1580
1600
1620
1640
Wavelength [nm]
図 7 偏波依存損失典型例
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�
-10
-20
-30
Crosstalk [dB]
Port1-2
Port1-4
Port1-6
Port1-8
Port1-10
Port2-2
Port2-4
Port2-6
Port2-8
Port2-10
Port1-1
Port1-3
Port1-5
Port1-7
Port1-9
Port2-1
Port2-3
Port2-5
Port2-7
Port2-9
0
-40
-50
11
-60
������
-70
-80
-90
-100
1500
������
1520
1540
1560
1580
1600
1620
1640
Wavelength [nm]
図 8 クロストーク典型例
100
90
Return Loss [dB]
80
70
60
50
40
#1 Port1
#3 Port1
#5 Port1
#2 Port2
#4 Port2
30
20
10
0
1500
1520
1540
1560
1580
1600
#2 Port1
#4 Port1
#1 Port2
#3 Port2
#5 Port2
1620
1640
Wavelength [nm]
図 9 反射減衰量典型例
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6.2 機械的特性
図 10 に電圧印加時の光出力の応答を示します。図中青で示したミラー位置(計算値)
の変化に追随する形で光出力が変化しており、設計どおりの非常に高速な切替動作を確認
しました。光出力の応答がミラー動作に遅れて、しかも急峻な変化を見せるのは、ミラー
ストロークの中央付近に光線のパワーが集中しているためです。
図 11 は本光スイッチの 機 構設 計において重 要な 項目である衝 撃(50G、10msec)
印加時の光出力を観察したものです。直交する 3 軸 6 方向全ての衝撃に対し光出力は全
く影響を受けておらず、設計どおりの適正な自己保持力を有していることを確認しました。
さらに、破壊に対する強度を確認するため、より強力な衝撃印加 (Telcordia1073:200G、
1.33msec) を行いましたが、光学特性を含め光スイッチ機能に何ら損傷のないことを確
認しました。同様に振 動試 験 (5 ∼ 50Hz ;1G、80 ∼ 500Hz ; 3G、50 ∼ 80Hz ; 直
線的に変化、3 軸各方向 2 時間 ※ Telcordia63 を近似 ) においても良好な結果を得ま
した。
����������
���������
�����
�����
�������
���
0
100
200
300
0
Time [µsec]
100
200
300
Time [µsec]
図 10 切替時間測定
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����
�����
����
図 11 衝撃試験
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7 まとめ
航空電子の保有する MEMS 技術を適用し、光ネットワークを構築する上でのキーデバ
イスとなる光スイッチを開発しました。
MEMS 技術の特長を活かし、光スイッチング機構には、光信号の切替に必要な要素で
あるミラーとミラー駆動機構、および自己保持機能を実現する Bistable ヒンジ構造、さ
らにファイバガイド構造を含め、全て 1 チップ内にモノリシックに集積しました。
光学設計では、作製誤差を考慮したビームウェストを設定し、それに基づき機構設計の
基準となるミラーストロークを決定しました。そして、機構設計では Bistable ヒンジの
反力応答特性とアクチュエータの駆動力に関して解析し、耐衝撃性を考慮して設計しまし
た。作製したサンプルの評価においては、実フィールドへの適用を前提に設定した光学特
性ならびに機械的特性の目標仕様を全て満足し、主要な信頼性試験においても良好な結果
を得ました。
今後は、今回得られた知見をもとにさらなる高性能化を目指すとともに、MEMS 技術
の優位性を高めるべく、小型・多チャンネル化、多機能複合化といった高機能デバイスの
開発にも取り組みます。
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