2012 年 10 月 こ の 号 の 内 容 入力電圧範囲が 1.8V ∼ 5.5V の 1A 低ノイズ降圧コンバータ 9 理想ダイオード付きサージ・ ストッパーによる入力および 出力の保護 12 第 22 期第 3 号 本当の電力密度とは: 26A のマイクロモジュール電源は 狭い基板スペースでも低温を維持 Eddie Beville VOUT 精度が±0.5% のアナログ制御 ループによるデジタル電源システム 管理 17 簡素化された LED PWM 調光 34 新しい高性能プロセッサ、FPGA、ASIC は、世代を追うごとに電力消費が大き くなってきていますが、そのような重い負荷を支える電源回路に用意されるス ペースは逆に狭くなっていく傾向にあります。1V 以下で数十アンペアを超える ような電源を複数チャネル、それも負荷の近くに置かなければならない状況が 当たり前のようになってきているのが現状です。 狭いスペースで大きな負荷電流を供給する必要がある電源回 路を比較する際には、ワット/cm2 で示される電力密度が使わ れます。実際のところ、最近のモジュール電源やディスクリート 回路は、驚くほど高い電力密度を持っているかのように宣伝さ れます。電源メーカーは小さなパッケージに大きな電力を詰め 込むことに成功したかのように思われるほどです。残念ながら これらでうたわれている驚くほど高い電力密度が実際に実現さ れるためには、隠れている大きな問題を解決する必要がありま す。それは熱の問題です。 (4 ページの補足記事を参照)。 放熱の問題は、高い電流と低い電圧の電源を実現するうえで 大きな問題です。多くのシステムでは電力密度を上げることで 問題が更に複雑化します。なぜなら、狭いスペースに多くの電 力を詰め込むということは狭いスペースに多くの熱を詰め込む ということと同じだからです。必要な電力を基板に詰め込むだ けでは不十分で、電力損失と熱抵抗についても他の項目と同 様に十分な検討が必要になります。高い電力密度を持ってい るという宣伝は魅力的に見えますが、電源が発生する熱の取 り扱いがしっかりとされなければこれらの宣伝は空しい約束に LTM®4620 µModule® レギュレータを使用すると、大電流の電源を狭いスペースに収容できます。 POL 電源で一般的な問題である基板上でのホット・スポットの発生を防止するため、熱管理機能が パッケージに組み込まれています。 www.linear-tech.co.jp なってしまいます。 (4 ページに続く) リニアテクノロジーのニュース この号の内容 COVER STORY 真の電力密度: 26A の µModule レギュレータが 狭いスペースで冷却状態を維持 Eddie Beville 1 リニアが火星に DESIGN FEATURES 幅広い電力源に対応する、入力電圧範囲が 1.8V∼5.5V の 1A 低ノイズ昇降圧コンバータ Genesia Bertelle 理想ダイオード付きサージ・ストッパーによる 入力および出力の保護 Zhizhong Hou パワー・システム・マネージメント機能と アナログ制御ループを組み合わせて±0.5% の VOUT 精度を実現する DC/DC コントローラ Hellmuth Witte 広い入力電圧範囲から電圧を安定化し、 98.5% の効率で 100W 以上のバッテリを 充電する 60V、4 スイッチ同期整流式昇降圧 コントローラ Keith Szolusha 光アイソレータ不要の 100V マイクロパワー 絶縁型フライバック・コンバータ (5 ピン TSOT-23) Min Chen NASA のジェット推進研究所(JPL) が最近立ち上げた画期的な火星探査プログラムには、リ ニアテクノロジーの製品が採用されています。リニアテクノロジーの高性能アナログ半導体が 火星科学研究探査車(キュリオシティ)に搭載され、火星の地形の詳細な映像や膨大な量に 9 過去について知ることが出来るようになりました。NASA の目標は、過去に火星に生物が住 むのに必要な環境があったかどうか、更には過去に火星に生物が存在したのかどうかについ 12 Gabino Alonso 300V のトランジェントから部品を保護する 100V サージ・ストッパー Hamza Salman Afzal 外部の信号発生器、クロック、またはマイクロ コントローラを使用しない高精度 PWM LED 調光 Keith Szolusha に耐えられるかどうかを検討した結果、火星探査計画に選ばれました。リニアテクノロジーの 17 Heath Stewart 製品は火星探査車(キュリオシティ)と、それを火星に送り届けた宇宙船の両方に使われてい ます。例えば、探査車の計器に電力を供給するスイッチング電源や、探査車が周囲を「見る」 ために必要なカメラの制御用 AD コンバータ、火星の組成に関するデータを正確に測定する ためのオペアンプ等です。 22 リニアテクノロジー CEO の Lothar Maier は、次のように述べています。 「NASA の宇宙プ ログラムと私どもの協力関係は既に 20 年に及びますが、今回の火星探査計画にこれまでと 同様に参加させて頂けることを誇りに思っています。今回の計画には 200 以上のリニアテクノ ロジー製品が使われています。これからも動作環境や用途を問わず、最高の性能、信頼性を 27 持つアナログ製品を提供していきます。火星からの息をのむような映像や貴重なデータが送 られてくるのを見るにつけ、この歴史的な事業に参画させて頂いていることを本当に光栄に 感じています。」 30 リニアテクノロジー製品は、今回の火星探査車キュリオシティに多数搭載されているだけでは なく、 2004 年に火星に着陸した「スピリット」や「オポチュニティ」といった探査車にも採用さ れていましたし、さらには「マーズ・グローバル・サーベイヤ」、 「マーズ・パスファインダー」、 32 「カッシーニ」、 「ディープ・スペース 1 号」、 「マーズ・オデッセイ」等の多数のプログラムに採 用されています。リニアテクノロジーは NASA/JPL に非常に小さなパッケージに収められた 最高の性能、精度、信頼性を持つアナログ IC を、放射線耐量を高めて納入しています。リニ 34 PoE(Power over Ethernet)給電装置からの 光アイソレータおよび絶縁型電源の排除 て調べることです。 リニアテクノロジーの製品は性能、精度、信頼性、さらには飛行中や火星表面の過酷な環境 DESIGN IDEAS LTspice IV の最新情報 のぼる正確な測定値を収集するために使われています。これにより、科学者は火星の地質と アテクノロジーの高精度アナログ回路技術は、火星探査車や宇宙船内の高度な科学計測装 置や通信システムを実現するために不可欠の技術となっています。 ワイヤレス・センサー・ネットワーク製品を発表 36 昨年 10 月、リニアテクノロジーは当社が買収した低消費電力ワイヤレス・センサー・ネット ワーク(WSN) 技術のパイオニアである Dust Networks 社の製品の初めての公式発表を行 新製品の概要 back page circuits 38 40 いました。Dust Networks 社の開発したSmartMeshネットワーク技術は、 メッシュ構造のネッ トワークを自動的に形成してデータを中継する Mote と呼ばれるノード群と、Mote から成る ネットワークを管理して集められたデータをホストアプリケーションに送る Manager からな ります。このネットワーク技術は産業用の高信頼性通信規格の基盤として採用されています。 2 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation リニアテクノロジーのニュース Dust Networks 社の技術の特徴は時間、周波 数、空間の 3 つの冗長性を組み合わせることに より、高い信頼性とスケーラビリティを持つ超低 消費電力の WSN を簡単に実現するところにあ ります。SmartMesh のネットワークにある全て の Mote は、ルーター機能を持っておりながら、 電池だけで何年間も動作させることが可能です。 従って、本当に置きたい場所に自由自在に置い たり、必要があればコストを掛けずに自由に場 リニアテクノロジーのデバイスが火星を探査 所を移動することができる究極の柔軟性をもっ リニアテクノロジーの製品は火星探査車(キュリオシティ)と、それを火星に送り届けた宇宙船の両方に使われています。例えば、探査 たネットワークを構築することができます。 車の計器に電力を供給するスイッチング電源や、探査車が周囲を「見る」ために必要なカメラの制御用 AD コンバータ、火星の組成 に関するデータを正確に測定するためのオペアンプ等です。 Dust Networks の既存顧客は GE や Emerson 等、世界最大級の産業プロセス制御メーカー 線センサ・ネットワーク製品ならびに環境発電 Networks(無線センサ・ネットワーク)」で『Low や、 Vigilent、Streetline などの革 新 的な環 境 (エネルギー・ハーベスティング)製品を展示し Power Wireless Sensing(低消費電力の無線検 保全型企業まで、多岐にわたっています。Dust ます。リニアテクノロジーの Joy Weiss は、 『Low 出)』について講演いたします。詳細については、 Networks の技術はデータセンターの空調管理、 (低消費電力の Power WSN Made Practical』 www.wireless-congress.comをご覧ください。 再生可能エネルギー、遠隔監視、輸送機器など 無線センサ・ネットワークの実用化)を発表し、 広範囲のモニタリング用途に使われています。 『Untapped Potential: Energy Jim Noon は、 リニアテクノロジーで Dust Networks 製 品グ ループのプレジデントを務める Joy Weiss は次 のように述べています。 「私たちの第一の目標 は、お客様がデータを収集したいところであれ ば、それがどこであれ、無線技術の詳細に煩わ (未開拓の潜在市場:エ Harvesting Solutions』 ネルギー・ハーベスティング・ソリューション)と いう話題で講演します。詳細については、www. idtechex.com/energy-harvesting-usa/eh.asp をご覧ください。 The Battery Show 2012、会場:Suburban Collection Showplace(ミシガン州ノビ)、 日程:2012 年 11 月 13 日∼15 日、 小 間 番 号 B664̶ リニ アテクノロジ ー は、自社のバッテリ・スタック・モニタ製品およ びパワー・マネージメント製品を展示します。 『The Mike Kultgen によるプレゼンテーション、 Key Battery Management Electronics for されることなく、費用対効果の高いセンサシステ Electronica 2012、 会 場:Messe München( ド イ ( 最 大 の パッ Maximum Pack Performance』 ムを、自信を持って構築して頂けるようにするこ ツ、ミュンヘン)、日程:2012 年 11 月 13 日∼16 日、ホー ケージ性能を得るための鍵となるバッテリ管理 とです。Eterna を採 用した SmartMesh システ ル A4、 小間番号 538̶リニアテクノロジーはさま 電子機器)、会場: Sapphire/Ruby Ballroom、 ムと、IP 対応のワイヤレス・センサ・ネットワー ざまな種類の自社アナログ製品を幅広く出展し 日時:11月14日午後3時30分。詳細については、 クを追加することによって、この目標に向けて更 ますが、特に産業用および自動車用アプリケー www.thebatteryshow.com をご覧ください。n に前進することができました。」 ションに重点を置いています。詳細については、 www.electronica.de/en/homeをご覧ください。 会議及びイベント Energy Harvesting & Storage Conference(環境発 電(エネルギー・ハーベスティング)と蓄積に関する会議)、 会場:ハイアット・リージェンシー・クリスタル・シティ(ワシ ントン D.C.、ロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空 港)、日程:2012 年 11 月 7 日∼8 日、小間番号 4 および 9̶ リニアテクノロジーは、Dust Networks 社の無 Wireless Congress Systems & Applications(無線 会議システムとアプリケーション)、会場:International Congress Center(ドイツ、ミュンヘン)、2012 年 11 月 14 日∼15 日 ̶11 月 15 日 午 前 11 時 15 分 に、 Dust Networks 製 品グ ル ープ の 社 長 で ある Joy Weiss がセッション 7a の「Wireless Sensor 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 3 高い電力密度を持っているという宣伝は魅力的に見えますが、電源が発生する熱の取り扱いがしっかりと されなければ高い電力密度は意味を持ちません。LTM4620 は放熱を簡単にするために特別に設計された パッケージに 2 出力のレギュレータを搭載することにより「本当の」電力密度に関する問題を解決します。 (LTM4620、1 ページからの続き) 15mm LTM4620 は、熱抵抗を最小限に抑え、それ 4.41mm によって熱管理を簡単にするために独自に設 計されたデュアル出力のレギュレータをすべて 15mm × 15mm × 4.41mm の LGA パッケ ー ジに集積することにより、電力密度の真の問題 を解決します。パッケージには、上面および底 面を効果的に放熱できる内部ヒートシンクなど の最先端機能が組み込まれており、高温環境で 15mm 図 1.LTM4620 の LGA パッケージには、 独自の内部ヒートシンクに接続する熱的接点が 上面および底面に設けられているので、内部の 熱抵抗を最小に抑えることにより、内部の部品は 冷却状態が維持されます。 も最大負荷電流でデバイスを動作することが可 能です。 で 13A(図 4)、または 1 つの出力で 26A(図 5) LTM4620 の 15mm × 15mm × 4.41mm で す。複 数 の LTM4620 を 組 み 合 わ せると、 LGA パッケージを図 1 に示します。1 つのデバ 50A から 100A を超える電流(図 7)を発生させ イスで供給できる電流は、2 つの独立した出力 ることができます。 電力密度の実際のコスト 発熱にご注意を! ます。問題は、小さくまとめすぎた電源ソリューション この例を続けると、このレギュレータには興味を引く 不要な熱は、高性能電子機器システムの設計者が直面 の中には、電力損失が大きすぎるか、熱抵抗が高すぎ 別の特質があります。レギュレータは 90% という高い する大きな課題です。最近のプロセッサ、FPGA、およ るものが含まれていることです。このような電源は、発 効率で動作します。このような高効率であっても、出力 びカスタム ASIC は、処理能力の向上につれて増え続 生する熱を効果的に取り除けない限り、出力電流の大 に 54W を供給すると同時に、接合部 - 外気間熱抵抗 ける消費電力に伴って大量の熱を発生します。こうし 幅なディレーティングが必要となることになります。 た電力消費をまかなうため、電源の出力を大きくする 必要がありますが、その結果、電源での電力損失も増 加し、既に高温になっているシステムをさらに加熱する ことになります。すみやかに外に熱を逃がさない限り、 システム全体の温度は、大半の部品の使用可能な温度 範囲を超えて上昇する可能性があります。 システムと熱の担当技術者は、複雑な電子システムの モデル化と評価を行ってシステムから不要な熱を取り 除くために相当な時間とエネルギーを費やします。ファ ン、冷却プレート、ヒートシンク、さらには冷却槽での 浸漬などの対策が、発熱を克服するために必要になっ てきます。これらの対策により、冷却に使われる部品の サイズ、重量が増え、さらに保守に要するコストが増え てきます。このコストは製造上の予算の大きな割合を 占めてきています。 システムの機能と性能が上がるにしたがって、発生する 熱は増える一方です。ほとんどのプロセッサおよび電源 は可能な限り効率的に動作するように設計されており、 冷却システムが原価に占める割合が増え続けています。 このため、部品レベルでの電力損失を改善することに よって簡素化と費用節減の方策を見つける必要があり 4 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation 見た目ほど高くない実際の電力密度 高電力密度の DC/DC レギュレータという用語は誤解 されやすい用語です。レギュレータそれ自体の動作を 温度に関して規定していないからです。システム設計 者は、W/cm2(単位面積当たりの電力)で表される電 力密度を最も重要視するので、それに対応する形で電 源メーカはデータシートにみごとな数値を掲げていま す。それにも関わらず、電力密度よりも重要な変換効 率と熱抵抗の数値は、どのデバイスのデータシートに も後ろの方に隠れています。 たとえ ば、 負 荷 に 54W を 供 給 する 2cm × 1cm の が 20 ℃ /W のパッケージ内で 6W を損失します。6W に 20℃ /W を掛けると、結果は周囲温度に対する温度 上昇が 120 ℃となります。周囲温度が 45 ℃のとき、こ の DC/DC レギュレータのパッケージの接合部温度は 165℃まで上昇します。この値は、ほとんどのシリコン IC に対して規定されている標準的な最大温度(およそ 120℃)よりはるかに高い値です。この電源をその最大 定格で使用するには、接合部温度を 120℃より低い値 に保つために大掛かりな冷却が必要です。 DC/DC レギュレータがシステムに関するすべての電気 的要件および電源要件を満たしていたとしても、熱に 関する基本的な基準を満たすことができない場合や、 放熱に必要な対策を考慮すると費用がかかりすぎる DC/DC レギュレータを考えます。これにより、電力密 度の定格は 27W/cm2 という立派な数値となります。こ ことが判明した場合には、素晴らしい電気的仕様はす の数値は、これだけを見ると設計者の要件を満たして 的性能を評価することは、レギュレータを電圧、電流、 いるかもしれません。しかし、忘れられがちなのは、基 板温度の上昇をもたらす電力損失です。データシート には、重要な情報が DC/DC レギュレータの熱抵抗とし て記載されています。これには、パッケージの接合部 ケース間、接合部 - 外気間、および接合部 -PCB 間の 熱抵抗の値があります。 べて机上の空論となります。DC/DC レギュレータの熱 サイズの値で判断する場合と同じくらい重要であると 言っても過言ではありません。 設計特集 内蔵のパワー MOSFET は独自のリード・フレームに積み重ねられており、 デバイスの上面および底面の両方に対して、高い電力密度、低い相互配線抵抗、 および高い熱伝導率が得られるようになっています。独自の内部ヒートシンクの 採用により高性能を実現しました。 EFFECTIVE TOPSIDE HEAT SINKING POWER INDUCTORS EFFECTIVE BOTTOM HEAT SINKING POWER MOSFET STACK 図 2.LTM4620 の側面図と、上面のヒートシンクを示すモールドされていない状態の LTM4620 の写真 独自のパッケージ設計による 高電力密度を実現 モ ー ルド( 成 型 )さ れ て い な い 状 態 で の LTM4620 は、現実的に放熱可能な高い電力 します。パッケージは、高い電流を流すのに適 密度を持つデュアル出力またはシングル出力電 源を実現できるように設計されています。他の高 電力密度を謳うソリューションとは異なり、この デバイスは真に自己完結型のソリューションで あり、最大負荷電流で動作させるために巨大な ヒートシンクや液体冷却は必要ありません。 LTM4620 の側面図および上面写真を図 2 に示 した低い抵抗の銅層を持ち、システム基板に対 する熱抵抗が低く熱伝導率の高い BT 基板で構 動作状態の確認 LTM4620 の素晴らしい性能を見るには、video. linear-tech.co.jp/126 にアクセスしてください。 ここで見られるビデオでは、実際のラボ・ベンチ の準備 / 調整と短絡保護の測定、 26A 時および 100A 時の熱的挙動と温度上昇、ヒートシンクの 成されています。内蔵のパワー MOSFET は独 取り付け、起動時、安定状態、およびシャットダ 自のリード・フレーム内に積み重ねられており、 ウン時での高精度電流分担が示されます。 デバイスの上面および底面の両方に対して、低 い接続抵抗および高い熱伝導率が得られるよう になっています。独自の内部ヒートシンクが、パ ワー MOSFET スタックとパワー・インダクタの 両方に接する形で取り付けられており、パッケー ジ上面からの放熱を効率よく行えるようになって 図 3.LTM4620 の熱画像とディレーティング曲線 LOAD CURRENT (A) います。 26 24 22 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 パッケージ上面全体への強制空気流という単純 な熱管理方式でも、ヒートシンクとモールド封止 の構造によってデバイスを冷却状態で動作させ ることができます。より堅牢な解決策にするには、 上面の金属部分にヒートシンクを外付けすれば、 さらに優れた熱管理を行うことができます。 12V 入 力 から 1V/26A 出 力 を 得 る 回 路 で の 400LFM 200LFM 0LFM 0 80 20 40 60 100 AMBIENT TEMPERATURE (°C) LTM4620 の熱画像とディレーティング曲線を 図 3 に示します。ヒートシンクなしで空気流が 120 200LFM のとき、周囲雰囲気からの温度上昇は 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 5 PGOOD1 LTspice IV TRACK1 circuits.linear-tech.co.jp/586 VIN CSS1 VIN VIN = 100µA RT RT VIN CIN2 22µF 25V ×2 1µF GND TEMP MTOP1 SW1 CLKOUT 0.33µH RUN1 MODE_PLLIN VOUT1 2.2µF MBOT1 PHASMD + GND VOUT1 1.5V/13A COUT1 VOUTS1 COMP1 60.4k VFB1 INTERNAL COMP SGND RFB1 40.2k POWER CONTROL PGOOD2 TRACK2 CSS2 VIN INTVCC CIN4 22µF 25V ×2 1µF 4.7µF GND EXTVCC MTOP2 SW2 0.33µH RUN2 VOUT2 2.2µF MBOT2 GND + VOUT2 1.2V/13A COUT2 VOUTS2 60.4k COMP2 fSET + – VFB2 RFB2 60.4k INTERNAL COMP Rf(SET) 121k SGND INTERNAL FILTER DIFFOUT DIFFN 図 4.デュアル出力(1.5V/13A および 1.2V/13A) DIFFP アプリケーションでの LTM4620 のブロック図 わずか 35 ℃です。ディレーティング曲線は周囲 したりしない限り実現できないことが多いのが 温度 80 ℃まで最大負荷を出力から供給可能で 実情でしょう。 あることを示しており、全面動作時のデバイスの 熱画像が示す 65℃を十分に超えています。 デュアル 13A レギュレータ デュアル出力設計の LTM4620µModuleレギュ この結果は、熱特性が改善された高密度パワー・ レータの簡略ブロック図を図 4 に示します。内部 レギュレータ・ソリューションの真価を明らかに にある 2 つの高性能同期整流式降圧レギュレー しています。独自のパッケージ設計により、この タにより、それぞれが 13A の負荷電流能力を持 デバイスは限られたスペースで大電力を発生で つ 1.2V と 1.5V のレールが生成されます。入力 きるだけでなく、熱の問題に苦しんだりディレー 電圧範囲は 4.5V ∼ 16V です。 ティングを必要とすることなく大電力を発生でき ます。他のいわゆる高電力密度ソリューションで は、多くのコストをかけて放熱用の部品を追加 6 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation LTM4620 の出力電圧範囲は 0.6V ∼ 2.5V で あり、LTM4620A の場合は 0.6V ∼ 5.5V です。 全出力精度は±1.5% で、工場で全数検査済み の正確な電流分担、高速トランジェント応答、ク ロック自己生成機能とプログラム可能な位相シ フト機能を備えたマルチフェーズ並列動作、周 波数同期、および高精度リモート・センス・アン プが特長です。保護機能には、帰還電圧を参照 する出力過電圧保護、フォールドバック過電流 保護、および内部温度検出ダイオードのモニタ があります。 設計特集 INTVCC 0.1µF VCC D+ 470pF VREF LTC2997 D– GND VPTAT µC 1.8V 4mV/K A/D 4.7µF MODE_PLLIN VIN 5V TO 16V INTERMEDIATE BUS INTVCC PGOOD1 VOUT1 TEMP COUT1 100µF 6.3V VOUTS1 SW1 RUN1 RUN2 D1* 5.1V ZENER EXTVCC VIN 22µF 25V ×4 10k* CLKOUT 5k TRACK VFB2 LTM4620 + COUT2 470µF 6.3V 40.2k COMP1 TRACK2 COMP2 VOUTS2 fSET VOUT2 COUT1 100µF 6.3V SW2 PHASMD PGOOD2 121k SGND COUT2 470µF 6.3V VFB1 TRACK1 0.1µF + GND DIFFP DIFFN VOUT 1.5V AT 26A DIFFOUT * PULL-UP RESISTOR AND ZENER ARE OPTIONAL 図 5.LTM4620 の 2 つの出力を互いに接続して、1.5V/26A を供給する 2 相、2 並列チャネルの回路を設計できます。内部ダイオードによる温度モニタ機能を LTC2997 を介して実現しています。 放熱設計が容易な 1.5V/26A 出力の電源を 15mm2 に収容 LTM4620 の 2 つの出 力チャネルを並 列にし てデュアルフェーズ で 動 作 する 1.5V/26A 出 力のソリューションを図 5 に示します。RUN、 図6は VOUT1 と VOUT2 の電流分担のバランスが 良好であることを示したものです。LTM4620 の 内部コントローラは、出力電流を正確に分担す るためにトリミングされ、テストされています。 TRACK、COMP、VFB、PGOOD および VOUT の各ピンは、並列動作を実現するために互いに 接続されています。この回路例は、LTM4620 図 6.図 5 に示す 2 相単一出力 26A 設計の効率および電流分担特性 LTCR2997 温度センサも備えています。 デュアルフェーズの場合の 1.5V 出力の効率と、 86%という効率は、このような高密度、高降圧 比のソリューションにとっては非常に良好な値 であり、熱特性の結果は、図 3 に示した 1V ソ リューション以上です。基板搭載後の熱抵抗 θJA が低いので、温度上昇は十分に制御されます。 上面および底面を効果的に放熱することにより、 LTM4620 はフルパワーで動作しても温度上昇 が少なくて済みます。 EFFICIENCY (%) 2 つのチャネルの電流分担を図 6 に示します。 90 14 85 12 PER CHANNEL CURRENT (A) の 内 部 温 度 検 出 ダ イ オ ード を モ ニ タ す る 80 75 70 65 60 VOUT = 1.5V fSW = 550kHz 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 OUTPUT CURRENT (A) 10 8 6 4 2 0 IOUT1 IOUT2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 TOTAL OUTPUT CURRENT (A) 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 7 LTM4620 µModule レギュレータは、本当の意味での高密度電源 ソリューションです。このデバイスは、高い電力密度を謳う他のソリュー ションの持ちがちな欠陥である熱の問題を解決しているので、電力密度 の高いレギュレータがひしめき合う分野で、差別化を実現しています。 30 PER µModule CURRENT (A) 25 20 15 10 IOUT(µModule1) IOUT(µModule2) IOUT(µModule3) IOUT(µModule4) 5 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 TOTAL OUTPUT CURRENT (A) 図 8.図 7 に示す 4 つの LTM4620 と 100A の設計との 図 7.4 つの µModule レギュレータを 8 相並列設計と組み合わせて 100A をサポート 組み合わせでの電流分担特性 2 まとめ LTM4620 の電流モード・アーキテクチャによ 真の電力密度:空冷状態、面積 50mm 以内で り、高い効率と高速トランジェント応答が得られ 100A 4 つの µModule レギュレータを並列に接続して LTM4620 µModule レギュレータは、本当の 8 相、100A を出力する回路例を図 7 に示します。 バイスは、高い電力密度を謳う他のソリューショ 4 つすべてのレギュレータのバランスの取れた ンの持ちがちな欠陥である熱の問題を解決して 電流分担特性を図 8 に示します。図 7 に示すよう いるので、電力密度の高いレギュレータの分野 に、全体で 100A 出力のソリューションが占める で、差別化を実現しています。優れた放熱性を 基板面積は、約 1.95 平方インチに過ぎません。 持つパッケージに 2 つの高性能レギュレータを この大電流であっても、4 つすべてのモジュール LTM4620 のパッケージの低い熱抵抗と、高精 搭載しており、狭いスペースに収まる大電力設 の上面全体にシンプルなヒートシンクを取り付 度の電流分担機能により、100A 以上の出力電 計が可能で、外部からの冷却は最小限で済みま けて空気流を流すことにより、電力損失を十分 流を得ることが容易に可能です(図 7 参照)。マ す。組み込みのマルチフェーズ・クロック同期機 に取り除いてディレーティングを不要にすること ルチフェーズ動作を設定するのに外部クロック 能と工場で検査済みの正確な電流分担により、 ができます。上面からの放熱は、システム基板を は必要ありません。CLKIN ピンと CLKOUT ピ 出力電流を 25A、50A、および 100A 以上に簡 冷却して他の部品の加熱効果を最小限に抑える ンにより、並列化された他のチャネルに対してプ 単に拡張できます。LTM4620 の低い熱抵抗に のに役立ちます。 より、高い周囲温度の中でもフルパワーでの動 ます。これらは、高性能プロセッサ、FPGA、お よびカスタム ASIC の低電圧コア電源を実現す る上で最も重要な性能です。もともとの出力電 圧精度が良く、さらにリモート・センス機能を持っ ているので、負荷側での電圧の安定化が正確に 行えます。 ログラム可能な位相シフトを持つ内部クロック を生成することができます。LTM4620 は、外部 クロックへの同期と内部クロックの両方をサポー トしています。 8 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation 意味での高密度電源ソリューションです。このデ 作が可能です。n 設計特集 幅広い電力源に対応する、入力電圧範囲が 1.8V∼5.5V の 1A 低ノイズ昇降圧コンバータ Genesia Bertelle ユーザは、所有している携帯機器が USB、AC アダプタ、各種の電池(アルカリ、リチウムイオン、LiFePO4) など、さまざまな電源で動作することを期待しています。モノリシックの同期整流式昇降圧コンバータである LTC®3536 は、1.8V∼5.5V の入力電圧範囲において降圧と昇圧の両方のモードで効率的に動作することに より、さまざまな電源に容易に順応します。電源の入力電圧が出力電圧と比べて高い、低い、同じのいずれ の場合でも、順応するのに複雑な回路構成は必要ありません。 LTC3536 は、降圧モードと昇圧モードとの間 の継ぎ目のない遷移を実現する一方、それに 15 並行して効率を最適化し、すべての動作条件に 5 わたってノイズを最小限に抑える独自のスイッ 進の制御アルゴリズムで使用されるのは 1 個の インダクタのみなので、これによって電源の設 Mode® 動作と PWM 動作で、専用のピンによっ COMPETITIVE BUCK-BOOST fSW = 1.3MHz てイネーブルすることができます。 –5 NOISE (dBm) チング・アルゴリズムを採用しています。この先 最小限に抑えることができます。それは Burst 25 Burst Mode 動作は、低電流状態では効率の良 –15 い解決策です。この動作では、負荷をサポートす –25 るのに必要な最小レベルまでスイッチングの回 –35 数が減少するので、電源のスイッチング損失が 計が大幅に簡素化され、プリント回路基板の総 –45 占有面積が最小限に抑えられます。その結果、 –55 最小になります。時としてノイズの抑制が重要に –65 なることがあるので、その場合には PWM 動作 LTC3536 はリチウムイオン / ポリマー電池、2∼ 3 本のアルカリ /NiMH 電池、リン酸リチウム電 –75 LTC3536 fSW = 1MHz 0 0.2 池などのアプリケーションに容易に適合します。 これらはバッテリ電圧範囲の中央付近の電源電 0.4 0.6 0.8 1 1.2 FREQUENCY (MHz) 1.4 1.6 図 1.LTC3536 と標準的な競合製品のワーストケースでの 圧が必要になることが多いアプリケーションで スペクトル比較。LTC3536 が示すノイズフロアの方がかなり す。こうした場合には、 LTC3536 の高い効率と 低いことと、積算低調波ノイズが低いことに注意。 幅広い入力動作範囲により、バッテリの動作時 間と設計の汎用性が大幅に向上します。 波数は、 MODE/SYNC ピンに入力されている 外部クロックに同期させることもできます。同期 3.3V 出力では、リチウムイオン電池の入力電 させる場合、発振器の自走周波数は、外部クロッ 圧 範 囲 全体にわたって 1A までの負荷電流を クの周波数より低く設定しても高く設定してもか サポートできます。入力電圧が 1.8V のときは まいません。 けの抵抗分割器により、1.8V∼5.5V の範囲で 1% 精度の出力電圧を設定できます。 率的ではないものの)、安定した周波数が維持 されてノイズと RF 干渉を簡単に低減できます。 Burst Mode 動 作での出 力 電 流 能 力は PWM モードの場合より低くなります。したがって、負 荷電流の多いアプリケーションでは、 MODE/ SYNC ピンを外部から駆動して PWM モード動 設計の汎用性 300mA の負荷電流がサポートされます。外付 にすると(軽負荷時の Burst Mode 動作ほど効 作に入ることが必要です。 LTC3536 は、堅牢な VOUT 短絡保護回路を内蔵 しています。VOUT がグランドに短絡すると、イン ダクタ電流は 1 回のスイッチング・サイクルの間 にきわめて緩やかに減衰します。短絡状態の間、 外付けの抵抗とコンデンサによって帰還ループ LTC3536 はそのピーク電 流 制 限 値を安 全 な の補償機能が得られるので、周波数応答を調整 レベルまで減少させ、デバイス自体を強制的に して、広範囲の外付け部品に適合させることが PWM モードに移行して、出力短絡状態が解放 LTC3536 のスイッチング周波数は、1 本の外付 できます。この柔軟性により、インダクタの値や されたときに円滑に回復することを保証します。 け抵抗によって 300kHz∼2MHz の範囲で設定 出力コンデンサのサイズに関係なく、急速な出 できるので、LTC3536 は、特定の各アプリケー 力電圧トランジェント応答が可能です。 ションのスペースおよび効率の要件を満たすよ うに最適化することができます。デフォルトの周 波数は、 RT ピンを VIN に接続することにより、 1.2MHz に設定されます。このスイッチング周 アプリケーションの要件によっては、次の 2 つ の動作モードから選択することにより、設計者 が軽負荷時の効率を優先するか、電源ノイズを 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 9 LTC3536 は、降圧モードと昇圧モードとの間の継ぎ目のない遷移を実現する一方、 それに並行して効率を最適化し、すべての動作条件にわたってノイズを最小限に抑える 独自のスイッチング・アルゴリズムを採用しています。この先進の制御アルゴリズムで 使用されるのは 1 個のインダクタのみなので、これによって電源の設計が大幅に簡素化 され、プリント回路基板の総占有面積が最小限に抑えられます。 ノイズ性能 ワーストケースの状態は、出力に 1A 固定負荷を スーパーキャパシタによるバックアップ電源 多くのアプリケーションは、スイッチング・コン 配置し、コンバータのスペクトルに最も高い高調 LTC3536 は、起動時の突入電流トランジェント バータから発生するノイズの影響を受けやすく 波成分が観測されるまで入力電圧を緩やかに増 を最小限に抑えるためのソフトスタート回路を なっています。LTC3536 は低ノイズのスイッチ 加または減少させることによって作り出します。 内蔵しています。起動時に出力電圧が事前充電 ング・アーキテクチャを採用して、不要な低調波 周波数を低減しています。低調波ノイズやジッ タはフィルタで除去するのが困難で、影響を受 けやすい他の回路に干渉することがあり、VINと VOUT の値がほぼ等しいときに最も顕著です。こ の領域で動作する競合他社の昇降圧コンバー タは、パルス幅および周波数のジッタを発生し ます。LTC3536 は、リニアテクノロジーの最新 世代の昇降圧 PWM 変調回路を採用していま すが、この回路によってジッタが飛躍的に小さく 抑えられ、ノイズの影響を受けやすい RF アプリ ケーションの厳しい要求を満たしています。 LTC3536 は、そのスイッチング周波数である 1MHz で、予想どおり大きさの大きいトーンが 1つありますが、全積算ノイズは競合製品と比 較すると非常に低くなっています。 LTC3536(スイッチング周波数:1MHz)と、 ていない)競合製品の昇降圧コンバータ(スイッ チング周波数:1.3MHz)のワーストケースでの このテストは、LTC3536 の絶対的なワースト MODE ピンが H に接 続されて Burst Mode までスムーズに安定化され、出力が放電される ことはありません。 していることを忘れないでください。入力周波数 この機能により、LTC3536 は、図 2 に示すよう がわずかに高いか低い場合、低調波の大きさは 相当に小さくなります。対照的に、競合他社の昇 降圧コンバータでは、大幅に広い入力周波数範 ています。また、競合品は LTC3536 よりかなり 高いノイズフロア特性も示しており、大きなパル ス幅ジッタと潜在的なノイズ干渉の問題がある ことを示唆しています。 にスーパーキャパシタを電源とするバックアップ 電源システムに最適です。このアプリケーション では、一次電源が故障した場合に必要なバック アップ・エネルギーを供給するために、直列に 接続された 2 つのスーパーキャパシタが通常動 作時に 5V まで充電されます。一次電源が存在 する限り、LTC3536 は静止電流の非常に少な い Burst Mode 動作を維持し、バックアップ蓄 積コンデンサからの放電を最小限に抑えます。 4.7µH* 図 2.スーパーキャパシタ・ベースのバックアップ電源 VSUPERCAP 1.8V TO 5.5V 10µF SW1 VIN SW2 VOUT 300mA FOR VIN ≥ 1.8V 1A FOR VIN ≥ 3V VSYS 3.3V 6.49k LTC3536 MODE/SYNC FB RT VC 100k circuits.linear-tech.co.jp/587 49.9k DC/DC 22µF 845k 0.1µF R2 *COILCRAFT XFL4020 VH VL 330pF GND PWM BURST MAIN POWER 12V 47pF SHDN 10 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation 設定されている動作モードに即座に移行します。 ケースの低調波ピークを作り出すことを目的に スペクトルを比較した結果を図 1 に示します。 LTspice IV 作はスキップされ、LTC3536 は MODE ピンで 動作が選択されると、出力電圧は目標の電圧値 囲にわたって低調波成分の減少量が少なくなっ (LTC3536 の低ノイズ・アーキテクチャを備え されている場合、内部のソフトスタート回路動 182k 10pF 6.04k 866k UV OV LTC2912-2 R1 DIS GND 20k 20k VCC TMR CRT 設計特集 LTC3536 は、出力電圧より高いまたは低い入力電圧で正確な出力電圧を 維持します。その設定可能なスイッチング周波数と低 RDS(ON) の内蔵パワー・ スイッチを低ノイズ・アーキテクチャと組み合わせることにより、LTC3536 は高性能で小型の高効率ソリューションを実現できます。 LTspice IV 図 3.太陽電池パネル・アプリケーション circuits.linear-tech.co.jp/588 図 4.図 3 の太陽電池パネル・アプリケーションの効率 100 4.7µH* 98 PHOTOVOLTAIC CELL 10µF + – 221k 60F 60F 221k OFF ON SW1 VIN SW2 VOUT 6.49k LTC3536 SHDN MODE/SYNC FB RT 2.9V VC 1020k 47pF 49.9k 22µF LED 220pF GND 96 EFFICIENCY (%) 1.8V TO 5.5V 158k 10pF 100k VOUT = 2.9V 94 92 90 88 86 ILED = 200mA ILED = 150mA ILED = 105mA ILED = 70mA 84 2Ω *COILCRAFT XFL4020 82 80 1.5 2 2.5 3 3.5 VIN (V) 4 4.5 5 るとかなり小さいですが、スーパーキャパシタは LED 電灯が点灯すると、LTC3536 は SHDN Burst Mode 動作から PWM モード動作に変更 保守の必要性がきわめて少なく、充電が容易で ピンによってオンになり、105mA の固定負荷電 するために使用されます。 あり、そのサイクル寿命はバッテリより数桁長い 流を LED に供給します。この電源の高い効率 MODE ピンは、一次電源が遮断されたときに バックアップ・モードでの LTC3536 は、入力電 ことが分かっています。 圧が 3V より高く負荷が 1A 一定の場合は安定化 この蓄電デバイスは昇降圧 DC/DC コンバータ した 3.3V を供給できます。さらに、300mA 一 である LTC3536 と組み合わせることができま 定の場合は、 VIN が 1.8V になるまで動作できる す。LTC3536 は、光電池などの低い入力電圧 と上に、 VOUT を 3.3V に維持します。スーパー からエネルギーを取り込んで管理する作業を簡 キャパシタの電圧範囲をカバーすることにより、 素化する目的で設計されています。LTC3536 電源の動作時間は最大限まで延長されるので、 は最低 1.8V の入力電圧まで動作し、出力電圧 シャットダウンする前にハウスキーピング・タス より高いまたは低い広範な入力電圧にわたって クを実行するかシステムが回復するのに十分な 高い効率を実現します。 時間がシステムに与えられます。 太陽電池式の LEDドライバ 非 常 用 LED 電 灯 向 けで太 陽 電 池に接 続して 使 用される LEDドライバ のアプリケーション 太陽電池によって発電される電力は、照光条件 を図 3 に示します。電 灯 が 消 灯しているとき、 によって大きく変動します。このため、太陽電池 LTC3536 はシャットダウン状態です。静止電流 への照光量が不十分な場合に連続した電力を が 1µA より少ないので、周辺光がなくなったと 供給するには、スーパーキャパシタなどの再充 きにスーパーキャパシタの放電を最小限に抑え 電可能な蓄電デバイスが必要です。スーパー ることができます。 を図 4 に示します。これにより、 2 つの直列コン デンサ(容量:60F)が 1.8V まで緩やかに放電 できることが分かります。LTC3536 は出力電圧 と LED 電流を安定化し、スーパーキャパシタが 5V まで充電されている場合、14 分間の点灯を 保証します。スーパーキャパシタの値を大きくす るか、適切な充電回路を持ったバッテリを使用 すれば、この時間を長くすることができます。 まとめ LTC3536 は、出力電圧より高いまたは低い入 力電圧で正確な出力電圧を維持します。その設 定可能なスイッチング周波数と低 RDS(ON) の内蔵 パワー・スイッチを低ノイズ・アーキテクチャと 組み合わせることにより、LTC3536 は高性能で 小型の高効率ソリューションを実現できます。n キャパシタの電荷蓄積容量はバッテリと比較す 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 11 理想ダイオード付きサージ・ストッパーによる 入力および出力の保護 Zhizhong Hou 自動車や産業用機器のアプリケーションでの電源システムは、短時間の高電圧サージに対処し、負荷におけ る電圧を維持すると同時に、損傷を受けやすい回路を危険なトランジェントから保護する必要があります。 ある一般的な保護方式では、鉄芯のインダクタと容量値の大きい電解バイパス・コンデンサの直列回路を 過電圧サプレッサ(TVS)とヒューズで補強した回路が必要です。この古くからある手法では、かなり広い基 板占有面積が必要です。また、大型のインダクタやコンデンサは、多くの場合、システム内での高さが最も 高い部品です。たとえこの保護方式であっても、 (自動車環境で考えられるシナリオである)逆入力電位や電 源電圧の低下に対して保護することはできません。これらの事象から出力を保護して出力電圧を維持するた め、設計者は逆流防止ダイオードを追加しますが、ダイオード内部に生じる新たな電圧降下によって電力損 失が増加します。 LTC4364 は、少ない設置面積で負荷を保護し て出力を保持するための包括的な制御ソリュー M1 INPUT RSENSE M2 OUTPUT ションで、場所をとる部品や望ましくない電圧 降下を排除できます。LTC4364 の機能ブロッ LTC4364 VCC SOURCE HGATE DGATE SENSE OUT ク図を図 1 に示します。このデバイスは、 back 10µA to back 接続された 2 つの N チャネルパストラ ンジスタを駆動します。一方は電圧サージから CHARGE PUMP 保護して出力に対する安定化電圧を維持しま 12V 12V 20µA す(図 1 の M1)。もう一方は逆入力保護および 出力保持用の理想ダイオードとして機能します (図 1 の M2)。 DA + また、 LTC4364 は、過負荷および短絡から保 護し、出力電圧の反転に耐え、入力低電圧状態 で MOSFET をオフに保ち、入力過電圧状態で のターンオンまたは自動再試行を阻止します。 シャットダウン・モードでは、電源電流が 10µA 程度まで減少します。 VA – SHDN UV 1.25V – 1.25V – IA + – + – + + – 30mV 50mV/ 25mV + FB + TIMER OV FLT TMR 図 1.LTC4364 の簡略ブロック図 12 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation ENOUT – GND 設計特集 LTC4364 は、少ない回路面積で負荷を保護して出力を保持するための 完全な制御ソリューションで、場所をとる部品や望ましくない電圧降下を 排除できます。 図2.逆電流制限保護機能を備えたサージ・ ストッパーは、VIN での 200V/–24Vトラン ジェントに耐えます。 MAX DC: 100V/–24V VIN MAX 1ms 12V TRANSIENT: 200V M1 FDB33N25 D4 SMAJ24A D3 1.5KE200A R1 383k 1% R2 90.9k 1% R3 10k 1% 高い電圧に耐えて安全な動作を確保する先進の サージ・ストッパー LTC4364 の標準的応用例を図 2 に示します。 通常の動作状態では、LTC4364 は入力電源 から負 荷 回 路までの 電 圧 降 下を 最 小 限 に抑 えるように、サージ・ストッパーの N チャネル MOSFET(M1)を完全に導通させ、理想ダイ オ ード N チャネ ル MOSFET(M2)の VDS を 30mV に安定化します。VOUT が上昇して、VIN よ R4 2.2k 0.5W M2 FDB3682 + R5 10Ω R6 100Ω C1 0.1µF D5 1N4148W D1 CMZ5945B 68V UV = 6V OV = 60V RSNS 10mΩ CHG 0.1µF VCC HGATE SHDN SOURCE DGATE SENSE UV OUT FB LTC4364 R7 102k 1% R8 4.99k 1% ENOUT OV GND FLT TMR VOUT 4A CLAMPED AT 27V COUT 22µF ENABLE FAULT CTMR 47nF ために電流制限検出電圧が 25mV に再設定さ す。1.35V になると、タイマによって MOSFET れます(図 4)。 がオフになり、冷却時間が経過するのを待って タイマ・コンデンサの電圧は、出力制限(図 5 に から再起動を試行します。 示す過電圧または過電流による制限)が行われ LTC4364 は MOSFET の両端にかかる電圧を ると必ず上昇します。TMR ピンの電圧が 1.25V モニタし、VCC – VOUT の値が増加するのに比例 に達 するの に十 分 な ほどこの 状 態 が 続くと、 してターンオフ・タイマの間隔を短くします。こ FAULT ピンは L になり、電力損失の危険が のように、非常にストレスの大きい短絡状態が 迫っているという早期警告をユーザに知らせま 続く時間は、短時間で軽度の過負荷状態よりも 図 3.LTC4364 は出力を 27V で安定化するのに対して、負荷 図 4.電流制限の 2:1 のフォールドバックにより、重度の出力 回路は 92V の入力スパイクを受けても引き続き動作します。 短絡時に MOSFET のストレスを軽減します。 り0.7V 低い電圧になると、ENOUT ピンは H になり、負荷回路が起動します。 入 力 電 圧 サ ー ジ が 印 加 さ れ て い る 間、 LTC4364 は HGATEピンの電圧を安定化して、 出力電圧を MOSFET M1 と抵抗分割器を介し てクランプし、FB ピンの電圧が 1.25V に維持さ れるようにします。図 3 に示すように、電源電圧 引き続き動作します。 VIN 20V/DIV 電流が過負荷になった場合、 LTC4364 は M1 12V を 流 れる出 力 電 流 を 制 限して、SENSE ピン 27V CLAMP (ADJUSTABLE) と OUT ピン の 間 の 電 圧 を 50mV に維 持しま す(OUT ピンの 電 圧 が 2.5V より高 い 場 合 )。 OUT ピンの電圧が 1.5V より低くなる重度の出 力短絡の場合は、MOSFET をさらに保護する VOUT 20V/DIV 50 ΔVSNS (mV) が設定値よりやや大きく増加しても負荷回路は 92V INPUT SURGE 60 CTMR = 6.8µF ILOAD = 0.5A 40 30 20 12V 50ms/DIV 10 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 VOUT (V) 3.0 3.5 4.0 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 13 LTC4364 の重要な特長は、抵抗などの電流制限素子を入力電源と VCC ピンの間に配置できることです。 これにより、VCC ピンに生じた電源トランジェントは、コンデンサを使用して除去するか、ツェナー・ ダイオードでクランプすることができます。適切な MOSFET を選択した場合は、この方法により、 100V よりはるかに高い過電圧に耐えることができます。 1.25V <1.25V FB TMR OV < 1.25V CHECKED 1.35V 1.25V 0.15V 1st 2nd 31st 32nd FLT 図 5.LTC4364-2 の過電圧フォルト後の自動再試行タイマ・シーケ ンスにより、非常に長い冷却期間(デューティ・サイクル 0.1%)が ∆VHGATE 実現されます。 COOLDOWN PERIOD 短い時間で済むので、 MOSFET がその安全動 過電圧フォルト後の LTC4364-2 の自動再試行 MOSFET M1 を選択した場合は、この方法に 作領域内で動作することを保証するのに役立ち タイマ・シーケンスを示しています。 より、 100V よりはるかに高い過電圧に耐えるこ ます。 LTC4364 の重要な特長は、抵抗(図 2 の R4) LTC4364 は、過電圧と過電流のいずれの状態 などの電流制限素子を入力電源と VCC ピンの間 の場合でも再起動時のデューティ・サイクルが に配置できることです。これにより、 VCC ピンに 約 0.1% と非常に低いことを特長としているの 生じた過電圧は、コンデンサ(図 2 の C1)を使 とができます。図 2 の回路では、 200V までの過 電圧に耐えることができます。 で、フォルトに起因するターンオフ後の再起動ま 用して除去するか、ツェナー・ダイオード(図 2 でに、MOSFET を確実に冷却できます。図 5 は、 の D1)でクランプすることができます。適切な 図 6.入力の UV モニタと OV モニタを構成すると、 図 7.LTC4364 の入力保護: a.入力短絡または入力電圧の低下が発生すると、DGATE ピ ンは L になり、理想ダイオードの MOSFET をシャットダウン b.逆入力状態では、DGATE ピンの電圧が SOURCE ピンの 電圧まで低下し、理想ダイオードの MOSFET はオフに維持さ 過電圧状態での起動を阻止できます。 して出力電圧を保持します。 れて逆給電が遮断されます。 VIN 12V 383k UV = 6V 10nF UV 100k LTC4364 0V = 60V 1nF INPUT SHORTED TO GND 0V 475k OV VIN 10V/DIV DGATE 10V/DIV τUV = (383k||100k) • 10nF τOV = (475k||10k) •1nF DGATE PULLS LOW 0V INPUT FORCED TO –24V –24V DGATE 20V/DIV 0V DGATE PULLS LOW –24V 12V OUTPUT HELD UP CLOAD = 6300µF ILOAD = 0.5A 14 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation 0V 16.5V 10k VOUT 10V/DIV VIN 20V/DIV 1ms/DIV VOUT 20V/DIV 0V CLOAD = 6300µF ILOAD = 0.5A OUTPUT HELD UP 1ms/DIV 0V 設計特集 また、LTC4364 は、過負荷および短絡から保護し、出力電圧の反転に 耐え、入力低電圧状態で MOSFET をオフに保ち、入力過電圧状態で のターンオンまたは自動再試行を阻止します。シャットダウン・モード では、電源電流が 10µA 程度まで減少します。 M1 FDB3632 VIN 12V UV 6V OV 60V 図 8.LTC4364 は、過電圧、短絡、または逆電圧に CIN 10µF R1 383k 1% R2 90.9k 1% R3 10k 1% CHG 6.8nF VCC SHDN RSNS 0.2Ω M2 FDMS86101 R7 49.9k 1% R5 10Ω HGATE SOURCE DGATE SENSE UV OUT FB LTC4364 R9 16.9k 1% 10µF 50V CER D2 DDZ9702T 15V 10µF 50V CER VOUT* CLAMPED AT 18V RESR 100mΩ R8 4.99k 1% ENOUT OV GND FLT TMR 0.1µF 対する出力ポート保護回路を内蔵しています。 *PROTECTED AGAINST BACKFEEDING OR FORWARD CONDUCTING FROM –20V TO 50V 不必要なターンオンを防止する入力電圧モニタ り高くなる前に OV ピンの電圧が 1.25V より高 起動後、通常の状態になった後で入力過電圧状 LTC4364 は、低電圧バッテリなどの入力低電 くなっている場合は、OV ピンの電圧が 1.25V 態になっても MOSFET はオフしませんが、出力 圧状態を UV ピンを使用して検出し、UV ピンの より低くなるまで MOSFET はオフのままです。 フォルト後の自動再試行は阻止されます。OV ピ 電圧が 1.25V より低い場合は MOSFET をオフ この機能により、 OV ピンと UV ピンに 2 つの異 ンの電圧が 1.25V より高い場合にフォルト後の に保ちます。また、LTC4364 は入力過電圧状 なる抵抗分割器および適切なフィルタリング・コ 冷却タイマ・サイクルが終了すると、MOSFET 態もモニタし、出力フォルト状態後の起動または ンデンサを使用することで、過電圧の電源に基 は入力過電圧状態が解消されるまでオフのまま 板が差し込まれた場合に起動を阻止することが です。 再起動に備えて MOSFET をオフに保ちます。 電源投入時、100µs のパワーオンリセットディレ できます(図 6)。 理想ダイオードによるわずかな電圧降下による逆入 力保護および低電圧保護 イが経過する前か、 UV ピンの電圧が 1.25V よ 逆入力から保護するため、電子システムの電力 経路には逆流防止用ショットキ・ダイオードが 組み込まれることがよくあります。このダイオー 図 9.LTC4364 の出力ポート保護: a.出力電圧が入力電圧より高い状態を強制されると、 DGATE ピンは L になり、逆給電は遮断されます。 b.出力を GND 電位より強制的に低くすると、HGATE ピンの 電圧は SOURCE ピンの電圧まで低下し、順方向の導通が遮 断されて、入力でのバッテリの電力が節減されます。 ドは電力を消費するだけでなく、負荷回路に供 給できる動作電圧も低下させます。特に、自動 車のコールド・クランク状態時など、低入力電圧 VOUT 20V/DIV 24V 12V VOUT 20V/DIV 12V OUTPUT FORCED TO –12V –12V OUTPUT FORCED TO 24V MOSFET(図 2 の M2)を駆動することにより、 24V DGATE 20V/DIV VIN 20V/DIV 23V DGATE PULLS LOW HGATE 20V/DIV 12V INPUT DISCONNECTED FROM OUTPUT 1ms/DIV 従来の逆流防止用ショットキ・ダイオードとその 電圧損失および電力損失を回避します。 HGATE PULLS LOW 12V –12V VIN 20V/DIV の場合に顕著です。LTC4364 では、 DGATE ピンを組み込んで、逆方向に接続された第 2 の 通常の動作状態では、LTC4364 は順方向の電 圧降下(M2 の VDS)をわずか 30mV に安定化し 12V INPUT DISCONNECTED FROM OUTPUT 1ms/DIV ます。負荷電流が十分に大きく、30mV の順方 向電圧降下より大きくなると、M2 は完全な導通 状態に駆動され、その VDS は RDS(ON) • ILOAD に 等しくなります。 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 15 (100V を LTC4364 は、電圧および電流を制限して安定化し、 超えるものを含む)危険な電源トランジェントから、損傷を受けやすい 負荷回路を保護する小型で包括的なソリューションです。 入力短絡または電源の故障が発生した場合は、 • 出力ポートがグランドに短絡すると、HGATE まとめ 逆電流が一時的に M2 に流れます。LTC4364 ピンの制御により、まず順方向電流が電流制 LTC4364 は、電圧および電流を制限して安定 は逆電圧降下を検出し、 M2 を直ちにオフにし 限値に安定化され、その後フォルト状態がタ 化し、 (100V を超えるものを含む)危険な過電 て出力平滑コンデンサの放電を最小限に抑え、 イムアウトになると MOSFET M1 がオフにな 圧から、損傷を受けやすい負荷回路を保護する 出力電圧を保持します。12V の入力電源をグラ ります。 ンドに短絡した場合の結果を図 7a に示します。 LTC4364 は、DGATE ピンを L にして逆電流 の経路を遮断し、出力電圧が保持されるように • 出 力ポートに逆 電 源 が 印 加された場 合は、 OUTピンの電圧が GND 電位より低くなると、 LTC4364 はパス MOSFET M1 をオフにし 小型で包括的なソリューションです。このデバイ スは、自動車用システムや産業用システムで使 用される従来からの大掛かりな保護回路に代わ る、実装が容易で高性能の代替製品です。 することで、この状況に対応します。 て、順方向の導通電流経路を遮断し、入力で LTC4364 の一体化された理想ダイオード・ドラ 逆 バッテリ接 続 の 場 合、 LTC4364 は 外 付 け バッテリが消耗しないようにします。 イバは、入力短絡時、電源電圧低下時、または 部 品 不 要 で DGATE ピン を( 入 力 に 追 従 す る)SOURCE ピンに短 絡し、 M2 をオフ状 態 に維持して、図 7b に示すように負荷回路を入 力から切り離します。VCC、SHDN、UV、OV、 HGATE、SOURCE、DGATE のすべてのピ ンは、GND 電位より最大で 100V 高い電位と 40V 低い電位に耐えることができます。 内蔵の出力ポート保護回路 図 8 に示すように出力をコネクタに接続している 場合は、過電圧、短絡、または逆電圧が生じる 可能性があります。LTC4364 は、以下に示すよ うに、いくつかの機能によってこれらの状態から 負荷回路と入力電源を保護します。 • 入力より電圧が高い電源に出力ポートが差し 込まれた場合は、図 9a に示すように理想ダイ オードである MOSFET M2 がオフになり、逆 給電経路が遮断されます。 16 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation –12V の電源を出力に印加した場合の結果を 図 9b に示します。LTC4364 は、HGATEピンを (出力に追従する)SOURCE ピンに直ちに短絡 し、MOSFET M1 をオフにして、入力電源が障 害状態の出力から切り離されるようにします。 LTC4364 の OUT ピンと SENSE ピンは、GND 電位より最大で 100V 高い電圧と 20V 低い電圧 に耐えることができます。出力ポートの電位が強 制的にグランドより低くなる可能性があるアプリ ケーションでは、適正な電圧定格を持つセラミッ クのバイパス・コンデンサを出力に使用して、電 圧および電流制限ループを安定化し、入力トラ ンジェントの容量性の貫通を最小限に抑えるよ うにします(図 8 参照)。漏れ電流の少ないダイ オード(図 8 の D2)を使用して、 FB ピンを保護 してください。 逆入力印加時に出力電圧を保持すると同時に、 逆流防止用ダイオードに伴う電圧損失を低減し ます。出力がコネクタ側に接続されている場合 は、内蔵の出力ポート保護が役立ちます。この 機能セットは、入力の UV モニタと OV モニタお よび低電流シャットダウン・モードによって完了 します。n 設計特集 パワー・システム・マネージメント機能と アナログ制御ループを組み合わせて±0.5% の VOUT 精度を実現する DC/DC コントローラ Hellmuth Witte LTC3883/-1 は、PolyPhase® に対応する多機能のシングル出力の降圧コントローラで、パワー・システム・ マネージメント機能、高性能アナログ制御ループ、内蔵ドライバ、出力電圧のリモート・センス機能、インダ クタ温度検出機能を備えています。ソリューション・サイズとコストを最小限に抑えるため、LTC3883/-1 は リニアテクノロジー特許出願中の自動校正ルーチンを備えており、インダクタ両端での電流をサイクルごと に測定する場合(損失のない DCR 検出)、インダクタの DC 抵抗を測定して正確な出力電流測定結果を得る ことができます。LTC3883/-1 は、2012 年 1 月発行の LT Journal に掲載されている、好評のデュアル・チャ ネル製品 LTC3880/-1 がベースになっています。 パワー・システム・マネージメント 近年のデータ・センタ・システムでは、ポイント オブロード・レベル、基板レベル、ラック・レベル、 さらには設置レベルなど、システムのすべての レベルで可能な限り効率化することにより、 「環 境への配慮を深める」 ことが課題です。たとえば、 システム全体の電力消費量は、できるだけサー バー数が少ない経路でワークフローを送り、そ の時点で必要のないサーバーをシャットダウン すれば削減できます。これを実現してシステム性 能の目標(計算速度、データ転送速度など)を 達成するための唯一の方法は、すべてのレベル でリアルタイムでの電力消費データをモニタす る包括的なデジタル・パワー・マネージメント・ システムを搭載することです。 以前、設計者は、スーパーバイザ、シーケンサ、 D/A コンバータ、A/D コンバータなどの種々雑 多な IC を使用して、パワー・システム・マネージ 図 1.LTC3883 を使用するデジタル・パワー・システム・マネージメント メントを何とか構築していました。こうした解決 策には複雑さがつきまとう上に、拡張するのが 容易ではなく、将来のシステム性能向上のため に大掛かりな先行計画を立てることが必要です。 LTC3883/-1 は、すべてのパワー・システム・マ ネージメント機能を DC/DC コントローラ内で一 体化することにより、こうした複雑さを取り除き ます。その結果、使いやすく堅牢で柔軟なポイン トオブロード(POL)パワー・マネージメント・ソ リューションが得られます。 LTC3883/-1 は、自律式に動作することも、コマ することにより、電源の障害を予測し、予防措置 ンド、制御、さらに遠隔測定の報告について、業 や調整を行うことができます。 界標準の I C シリアル・バスを介してシステム・ 2 ホスト・プロセッサと通信することもできます。こ れにより、リアルタイムでの電圧、電流、温度な どの重要な動作情報を LTC3883/-1 からモニ タすることが可能となります。また、これらの情 報を使用することにより、システムの性能と信頼 性を動的に最適化できます。このデータを入手 出力電圧、出力電流制限値、マージニング電圧、 過電圧と低電圧の監視限度、起動特性、タイミ ング応答、フォルト応答などの重要なレギュレー タ・パラメータも、抵抗、シーケンサ、モニタ IC などの外付け部品を使用せずに、シリアル・バ スを介してすべて直接設定できます。 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 17 LTC3883/-1 は、自律式に動作することも、コマンド、制御、さらに 遠隔測定の報告について、業界標準の I2C シリアル・バスを介して システム・ホスト・プロセッサと通信することもできます。 パワー・システム・マネージメントにより、複雑 なマルチレール・システムを迅速かつ効率的に 5mΩ VIN 6V TO 24V 10µF 開発することができます。LTpowerPlay™ ソフ トウェアにより、設計はさらに簡単になります。こ 100Ω 1µF 100Ω のソフトウェアを使用すると、 PC ベースの基板 モニタおよびパラメータ調整が可能になります。 これにより、設計者は回路基板の再配線や部品 変更を行わずにインサーキット・テスト(ICT) をデバッグして実行することができます。 機能の概要 10nF 3Ω VIN 10k 10k PMBus INTERFACE 10k DC/DC コントローラで、パワー FET ゲート・ド 10k ライバを内蔵し、最大 6 相の PolyPhase に対応 10k するアナログ電流モード制御ループを備えてい 10k 5k VDD33 ALERT RUN SYNC VDD25 範囲内の任意の周波数に同期させることができ VDD33 LTC3883/-1 は、ゲート・ドライバのデッドタイ ムを最適化して、スイッチング損失とボディ・ダ 1µF 20k 24.9k 10k 20k 12.7k 9.09k 23.2k 17.8k FREQ_CFG VOUT_CFG 1.4k VTRIM_CFG 0.22µF SHARE_CLK ASEL GPIO WP 1.0µF 1.4k VDD25 SCL 部位相同期ループにより、 LTC3883/-1 を同じ ます。 M2 PGOOD SDA M1 0.56µH BG PGND 10µF 0.1µF 22µF 50V 1µF SW 10nF 10k 可能であり、外部発振器を使用する場合は、内 TG LTC3883 BOOST IIN_SNS VIN_SNS LTC3883/-1 は、単一出力の同期整流式降圧 ます。周波数は 250kHz∼1MHz の範囲で設定 D1 INTVCC ISENSE+ ISENSE– VSENSE+ VSENSE– + TSNS GND ITH 1.0µF 2200pF 100pF VOUT 1.8V 20A COUT 530µF MMBT3906 4.99k D1: CENTRAL CMDSH-3TR M1: INFINEON BSC050N03LSG COUT: 330μH SANYO 4TPF330ML, 2× 100µF AVX 12106D107KAT2A L: VISHAY IHLP-4040DZ-11 0.56µH M2: INFINEON BSC011N03LSI イオードの導通時間を最小限に抑えるので、す べての動作条件で高い効率を維持することがで 図 2.DCR 検出回路付きの高効率 500kHz/1.8V 降圧コンバータ きます。サポートしている VIN の範囲は 4.5V∼ 24V と広く、VOUT の範囲は 0.5V∼5.5V です。 高精度リファレンス、12 ビット D/A コンバータ、 および温度補償されたアナログ電流モード制御 重要な測定結果のピーク値をユーザが読み取る を高めるために外部の 5V バイアス電圧から電 ループにより、±0.5% の DC 出力電圧精度が ことができます。重要なコントローラ・パラメー 力を供給しています。どちらのデバイスも熱特 得られ、内蔵のハイサイド入力電流検出アンプ タは、PMBus を介してプログラムできます。フォ 性が改善された 5mm × 5mm の 32 ピン QFN により、正確な入力電流検出とインダクタ DCR ルト・ログ機能には、中断フラグの他に、フォル パッケージで供給され、動作接合部温度範囲 の自動校正が可能です。 ト発生直前の動作状態を不揮発性メモリに保存 は –40 ℃∼105 ℃(E グレード)または –40 ℃∼ するブラック・ボックス・レコーダがあります。 125℃(I グレード)です。 16 ビットのデータ収集システムにより、入力と出 力の電圧および電流、デューティ・サイクル、お LTC3883 は、LDO を内蔵して集積度を高め よび温度のデジタル読み取りを実現できます。 ていることが特長ですが、LTC3883-1 は効率 18 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation 設計特集 今日の高度な回路基板に対する厳格なデジタル・パワー・マネージメント要件を満たすために、 LTC3883/-1 や LTC2978 などでは、高性能の PMBus コントローラを使用して 効率的にシームレスに動作します。 • 高速の過電圧および低電圧モニタリング • ピーク出力電流 • 出力電圧のオン / オフ時間遅延 • ピーク出力電圧 や重要なリアルタイム状態の読み取りが可能で • 出力電圧の立ち上がり/ 立ち下がり時間 • 内部 / 外部のピーク温度 す。パラメータ設定データは、 リニアテクノロジー • 入力電圧のオン / オフしきい値 • フォルト・ログの状態 の開発用ソフトウェア LTpowerPlay を使用し • 出力レールのオン / オフ PMBus 制御 LTC3883/-1 の PMBus インタフェースでは、重 要な電源パラメータのデジタル・プログラミング て、内蔵の EEPROM にダウンロードすることが アナログ制御ループ • 出力レールのマージン・ハイ / マージン・ロー LTC3883/-1 は、出力電圧、電流制限設定値、 で接 続されている PC ベースの LTpowerPlay • 内部 / 外部フォルトに対する応答 シーケンシングなど、多くの機能をデジタル方式 開発用プラットフォームを図 5 に示します。デバ • フォルトの伝播 できます。I C/SMBus/PMBus アダプタに USB 2 イスを一度目的どおりに設定すると、デバイスは でプログラム可能です。しかし、制御ループは純 粋にアナログのままであり、リニアなランプ曲線 PMBus を使用して、ユーザは以下の電源状態 の制御を行うことで、最適なループ安定性とトラ これ以上のファームウェアまたはマイクロコント をモニタできます。 ンジェント応答を実現します。 ローラは必要ありません。 • 出力電圧 / 入力電圧 図 4 では、アナログ帰還制御ループを持つコント PMBus は、以下の電源パラメータのプログラミ • 出力電流 / 入力電流 ローラ IC のランプ曲線とデジタル帰還制御ルー ングを可能にします。 • 内部のダイ温度 • 出力電圧とマージニング • 外付けのインダクタ温度 • インダクタ温度に基づく、温度補償された電 • デバイスの状態 ステップで、一部のアプリケーションでは安定性 • フォルト状態 の問題、低速トランジェント応答、必要な出力容 ホストからの制御なしで自律的に動作するので、 流制限しきい値 • スイッチング周波数 プを持つコントローラ IC のランプ曲線を比較し ています。アナログ・ループのランプ曲線は滑ら かですが、デジタル・ループの曲線は不連続の 量の増加が発生し、量子化効果が原因で、出力 • システムの状態 リップルと PWM 制御信号のジッタが大きくなる ことがあります。 図 3.LTpowerPlay ソフトウェアを備えた 電流モード制御ループは、最高のループ安定 包括的な開発プラットフォーム 性、サイクルごとの電流制限、入力トランジェン トおよび負荷トランジェントに対する高速で正確 な応答をもたらします。この簡素なループ補償 USB は、動作状態およびコンバータ構成に依存しま せん。連続モード、不連続モード、および Burst DC1613A USB to PMBus Controller されています。 DC1890 Socketed Programming Board DC1778A LTC3883 Demo Board Demonstration Kit Mode® のインダクタ電流制御がすべてサポート or Socketed Programming Customer Board with LTC3883/LTC3883-1 or In-Circuit Serial Programming 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 19 パワー・システム・マネージメントにより、複雑なマルチレール・システムを迅速かつ 効率的に開発することができます。LTpowerPlay ソフトウェアにより、設計はさらに簡単になります。 このソフトウェアを使用すると、PC ベースの基板モニタおよびパラメータ調整が可能になります。 インダクタ DCR の自動較正 ANALOG CONTROL LOOP DC/DC コンバータの出力電流を検出するのに 検出抵抗の代わりにインダクタの DC 抵抗を使 用すると、電力損失の減少、回路の複雑さとコ システム・マネージメント要件を満たすために、 ANALOG CURRENT WAVEFORM ストの低下など、いくつかの利点があります。た LTC3883/-1 や LTC2978 などでは、高性能の PMBus コントローラを使用して効率的にシーム FIXED fSW だし、規定の公称インダクタ DCRと実際のイン ニング、監視制御、およびフォルト制御が含ま 力電流、およびピーク電流制限値に誤差が発生 DIGITAL CONTROL LOOP します。 ニアテクノロジーの特許出願中のアルゴリズム 間ベースのアルゴリズムを使用することにより、 FIXED fSW 補償されます。コンバータが十分に大きい負荷 以上の双方向汎用入出力(GPIO)ピンを使用 図 4.LTC3883 のアナログ制御ループとデジタル制御ループ。 することにより、複数のデバイスにまたがるシー アナログ・ループのランプ曲線は滑らかですが、デジタル・ルー ケンシングが可能になります。 に測定できます。 プの曲線は不連続のステップで、一部のアプリケーションでは 動 作 温 度 範 囲 全 体 にわたって正 確 な 電 流 の 加が発生し、量子化効果が原因で、出力リップルと PWM 制御 安定性の問題、低速トランジェント応答、必要な出力容量の増 読 み 取りを維持するため、インダクタの温度 信号のジッタが大きくなることがあります。 に制御してモニタすることが簡単にできます。 LTC3883 は、外付けの温度センサからインダク タのコアまでの温度上昇を動的にモデル化して、 複数の IC システム インダクタの自己発熱の影響を考慮します。特 大型のマルチレール電源基板は、通常は絶縁さ 許出願中のアルゴリズムにより、外付けの温度 れた中間バス・コンバータで構成されています。 センサの配置に関する要件が単純になり、イン このコンバータは、バックプレーンから得られ ダクタのコアから主要なヒートシンクまでの有意 る –48V を、プリント回路カードの周辺に分散し の定常状態誤差およびトランジェント温度誤差 ている低い中間バス電圧(IBV:標準 12V)に が補償されます。 変換します。個々のポイントオブロード(POL) DC/DC コンバータは、IBV を必要なレール電 圧に降圧します。このレール電圧の範囲は通常 0.5V∼5V で、出力電流の範囲は 0.5A∼120A です。これらの基板は実装密度が高いので、デ ジタル・パワー・システム・マネージメント回路 LTpowerPlay ソフトウェアは www.linear-tech.co.jp/ltpowerplay で 無償で入手できます。 20 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation LTpowerPlay ソフトウェア LTpowerPlay ソ フトウェア は、PMBus 対 応 の複数のリニアテクノロジー・デバイスを同時 は LTC3883/-1 によって正確に測定されます。 LTpowerPlay ユーザはレールのオンとオフを任意の順序で、 プログラム可能な単純な遅延を設けて動的に実 行できます。1 線式の SHARE_CLK バスと 1 つ 電流で安定状態になっているときに 180ms の 単純な較正手順を PMBus コマンドを介して実 れます。これらのデバイスを自由に組み合わせ ることにより、電源の数がいくつであってもシー ケンシングの設計は簡単な処理になります。時 DIGITAL RAMP を使 用して、LTC3883/-1 によって測 定され、 行するだけで、入力電流および出力電流を正確 レスに動作します。この要件には、シーケンシン グ、電圧精度、過電流と過電圧の制限、マージ ダクタ DCR の間に差があると、測定された出 インダクタ DCR の公称値からの許容誤差は、リ 今日の高度な回路基板に対する厳格なパワー・ に対してプリント回路基板の実装面積を広く確 保できる余裕はありません。 LTC3883/-1 の内蔵 EEPROM にシステム・パ ラメータをダウンロードすることにより、DC/DC コントローラの設定をリアルタイムで変更しま す。こうすると、部品を交換して基板を手作業で 再配線するという面倒な作業を行わずに、シス テム構成をソフトウェア内で調整できるようにす ることで、設計開発の時間が削減されます。出 力電圧、OV/UV の保護制限値、およびオン / オ フのランプ速度をどのように制御するかを図 5 に示します。波形は出力電圧のソフトスタートと ソフトストップを表示しています。また、警告と フォルトの状態も示しています。 設計特集 LTpowerPlay ソフトウェアでは、PMBus 対応の複数のリニアテクノロジー・デバイスを同時に制御して モニタすることが簡単にできます。LTC3883/-1 の内蔵 EEPROM にシステム・パラメータを ダウンロードすることにより、DC/DC コントローラの設定をリアルタイムで変更します。 図 5.簡略化された電源システム。LTpowerPlay を使用すると、包括的な電源制御を自由自在に操作できます。 まとめ リニアテクノロジーのすべての PMBus 製品は、 きます。量産時のマージニングテストは、数種類 LTC3883/-1 は、高性能のアナログ・スイッチン LTpowerPlay ソフトウェア開発システムによっ の標準 PMBus コマンドを使用して容易に実行 グ・レギュレーション機能、高精度のデータ変換 てサポートされています。このソフトウェアは基 されます。LTC3883/-1 とリニアテクノロジーの 機能、および柔軟なデジタル・インタフェース機 板設計者がシステムを素早くデバッグするのに 他の PMBus 製品を組み合わせるのが、デジタ 能を兼ね備えています。複数の LTC3883 を他 役立ちます。LTpowerPlay を使用することによ ル式に制御された電源を迅速に市場へ投入する のデバイスと並列に使用すると、最適化された り、電源電圧、電源の制限値、および電源シー 最高の方法です。n マルチレールのデジタル電源システムを簡単に ケンシングのモニタ、制御、調整を行うことがで 作成できます。 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 21 広い入力電圧範囲から電圧を安定化し、 98.5% の効率で 100W 以上のバッテリを充電する 60V、4 スイッチ同期整流式昇降圧コントローラ Keith Szolusha LT®3791-1 は、1 つのインダクタを使用して最大 98.5% の効率で定電圧および定電流の両方を安定化する 4 スイッチの同期整流式昇降圧 DC/DC コンバータです。このデバイスは 100W を十分に超える電力を供給 可能で、60V の入力電圧定格および出力電圧定格を備えているので、昇圧と降圧の両方の変換が必要なと きに最適な DC/DC 電圧レギュレータおよびバッテリ・チャージャです。このデバイスは、電圧、電力、およ び効率が高い以外に、短絡保護、外部クロックに同期するための SYNC ピン、外部の SYNC ピンを駆動す るか、並列動作を行うための CLKOUT ピン、OVLO(過電圧ロックアウト)、SHORT 出力フラグ、バッテリ・ チャージャ用の C/10 検出と出力フラグ、不連続導通モードと連続導通モードを切り替えるための CCM ピン を備えています。DCM(不連続導通モード)を内蔵しているので、軽負荷での効率が向上し、逆電流が好ま しくない場合は防止できます。 120W、24V/5A 出力の昇降圧電圧レギュレータ 図 1 に示す昇降圧コンバータは、負荷の範囲が り、回路を保護します。このデバイスは、短絡保 荷のいずれの状況でも出力電流を制限し、この 護回路と、出力に短絡が生じていることを示す アプリケーションを堅牢なものにします。 0A∼5A で は 最 大 98.5% の 効 率 で 24V を 安 SHORT 出力フラグを備えています。軽負荷時 定化します(図 2)。このデバイスは 12V∼58V に消費電力が最小となる DCM 動作と、逆電流 の入力電圧範囲で動作します。調整可能な低 保護機能も備えています。ROUT は、短絡と過負 電圧ロックアウトおよび過電圧ロックアウトによ VIN 12V TO 58V 干異なる手法を採用しています。このレギュレー タは軽負荷時の EMI を最小にするため、0A∼ 0.003Ω VIN 1µF 51Ω 499k INTVCC 0.1µF IVINP BST1 499k TG1 EN/UVLO 27.4k 100k LT3791-1 0.1µF SS SYNC 33nF L1 10µH M4 COUT 220µF 35V ROUT ×2 7.5mΩ 4.7µF 50V ×2 図 1.120W、24V/5A 出力の昇降圧電圧 C1 47µF 80V レギュレータは、12V∼58V の入力電圧で 動作します。 VOUT 24V 5A 715k M3 13.7k 0.004Ω BG2 VC 1000pF RT 15k 10nF 22 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation SW2 TG2 ISP ISN FB SGND 147k 200kHz LTspice IV 38.3k SNSN PGND PWM 100k M2 0.1µF + SNSP SHORT C/10 CCM IVINMON ISMON CLKOUT CTRL VREF 33nF 18.7k BG1 INTVCC 200k M1 SWI OVLO 56.2k + BST2 IVINN 4.7µF 100V 4.7µF D1 D2 470nF 10k 図 3 に示す 14V/10A の電圧レギュレータは、若 D1, D2: NXP BAT46WJ L1: COILCRAFT SER2915L-103KL 10µH M1, M2: RENESAS RJK0651DPB 60Vds M3, M4: RENESAS RJK0451DPB 40Vds C1: NIPPON CHEMICON EMZA800ADA470MJAOG COUT: SUNCON 35HVT220M 35V 220µF ×2 circuits.linear-tech.co.jp/589 設計特集 LT3791-1 は、定電圧と定電流の両方を制御できます。スーパーキャパシタやバッテリなど、 大型の容量性負荷は、その終端電圧(一定の電圧レギュレーションが必要になる電圧点)に達するまで、 定電流での充電が必要です。LT3791-1 はこの要件を容易に満たします。 100 VIN = 14V IIN = 8.87A VOUT = 24V IOUT = 5A 95 EFFICIENCY (%) 90 85 80 75 70 VIN = 12V VIN = 24V VIN = 54V 65 図 2.図 1 の 24V コンバータの効率 60 およびワーストケースの熱特性結果 0 1 2 3 LOAD CURRENT (A) 4 5 10A の負荷電流範囲全体を通じて CCM で動作 します。それでもなお非常に効率的です。ROUT を短絡に置き換えた場合でも、この回路は短絡 保護機能を維持します。メイン・スイッチの検出 VIN 9V TO 36V 抵抗 RSW は、ROUT よりも高い電流レベルで短 絡電流を制限しますが、短絡時は一時中断モー 0.002Ω 470nF 499k 51Ω CIN1 4.7µF 50V 1µF + CIN2 100µF 63V ×2 ドによってデバイスの消費電力が制限されるの IVINP EN/UVLO で、短絡時の部品の温度上昇が低く維持されま す。DCM が必要ない場合は ROUT が不要にな IVINN VIN INTVCC CCM 76.8k 4.7µF 10V D1 D2 BST2 ることがあり、 ROUT を除去すると回路の効率は 0.1µF わずかに増加します。10A から 0A への遷移時 BST1 C/10 IVINMON CLKOUT ISMON に発生する出力電圧トランジェントを制限する ため、 OVLO ピンは出力に接続します。これに TG1 BG1 INTVCC より、 2 つの出力コンデンサとスイッチ M3 およ び M4 は過電圧から保護されます。 LT3791-1 200k SHORT 100k 22nF SNSN PGND VC 5.1k 10nF 図 3.入力電圧が 9V∼36V の 140W(14V/10A)の CCM 昇降圧 電圧レギュレータは、トランジェント保護のため出力 OVLO を備えています。 M3 COUT1 4.7µF 50V ×2 + COUT2 270µF 35V ×2 VOUT 14V 10A 100k 9.31k BG2 CTRL SS SYNC 100pF L1 3.3µH 0.0025Ω PWM M5 M2 M4 SNSP SHORT VREF 0.1µF M1 SWI 0.1µF RT SGND 147k 200kHz SW2 TG2 FB ISP ISN OVLO 499k D1, D2: NXP BAT46WJ L1: COILCRAFT SER2915H-332L 3.3µH 48A M1: RENESAS RJK0652DPB 60Vds M2: RENESAS RJK0651DPB 60Vds M3, M4: INFINEON BSC0904NSI 30Vds M5: NXP NX7002AK COUT2: SUNCON 35HVT270M CIN2: NIPPON CHEMICON EMZA630ADA101MJAOG 88.7k 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 23 0.003Ω VIN 12V TO 58V 499k 51Ω 470nF 499k IVINP EN/UVLO 1µF 27.4k CCM C/10 BST1 M1 TG1 SWI SHORT VREF M2 BG1 LT3791-1 PWM 0.1µF L1 10µH 図 4.240W アプリケーションでの並列接続の LT3791-1 4.7µF 50V ×2 0.015Ω VOUT 24V 10A M4 51Ω M3 + COUT1 220µF 35V ×2 0.47µF SNSP CTRL 方のコンバータの SYNC 入力ピンに接続するこ SW2 VC SGND RT とにより、最大出力電力は 2 倍になる上に出力 715k TG2 ISP ISN FB リップルは減少します。 13.7k 2 つの LT3791-1 を並列に動作させることによっ 38.3k て形成される 24V/10A のレギュレータを図 4 147k 200kHz 3.3k 33nF に示します。2 つの並列回路を使用することによ り、VIN が最も低いときの MOSFET M3 および INTVCC1 + LTC6240 M7 の場合、いずれか一方のディスクリート部品 で観測される最大温度上昇はわずか 28℃です。 – 45k 10k LT3791-1 には CLKOUT 出力があり、これを ます。一方のコンバータの CLKOUT ピンを他 BG2 IVINMON CLKOUT ISMON SYNC 並列コンバータ バータを自身のクロックに同期させることができ SNSN PGND SS CLKOUT と SYNC を使用して大電力を得る 使用すると、位相が 180° ずれた状態で他のコン 0.004Ω 100k 33nF 4.7µF 10V D1 D2 0.1µF 200k 0.1µF C1 47µF 80V BST2 INTVCC1 SHORT + INTVCC1 IVINN VIN INTVCC OVLO 56.2k 4.7µF 100V 図 4 の上側のコンバータ(マスタ)は、下側のコ 10k ンバータ(スレーブ)によって供給される電流レ 499k 470nF 499k 10k IVINP EN/UVLO 51Ω 56.2k 27.4k 4.7µF 100V 1µF IVINN VIN INTVCC 200k 0.1µF M5 SWI SHORT VREF PWM BG1 LT3791-1 M6 0.1µF L2 10µH 制されます。CTRL の入力レベルを ISMON の 出力レベルに整合させるために必要な単純な 4.7µF 50V ×2 0.015Ω 200mV のレベル・シフトを得るため、オペアン プが 1 つ必要です。マスタ・コンバータは定電圧 M8 M7 51Ω + 0.22µF SNSP 10k 1000pF 2.2k RT 22nF 24 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation 態で動作しています。スレーブの出力電圧はわ ません。 SW2 TG2 ISP ISN FB SGND 147k 200kHz レーブ・コンバータは定電流レギュレーション状 帰還ループはレギュレーション状態になってい BG2 CTRL IVINMON ISMON CLKOUT SYNC VC レギュレーション状態で動作するのに対して、ス ブがマスタに追従できるように、スレーブの電圧 SNSN PGND SS COUT2 220µF 35V ×2 ずかに高く(28V)設定されているので、スレー 0.004Ω 100k 33nF D3 D4 BST1 TG1 ピンをスレーブの CTRL 入力ピンに接続する ことにより、スレーブはマスタに追従するよう強 0.1µF C/10 マスタが供給している電流量を示し、ISMON C2 47µF 80V 4.7µF 10V BST2 INTVCC2 SHORT + INTVCC2 CCM OVLO 45k ベルを要求します。マスタの ISMON 出力は、 0.003Ω VIN 715k 13.7k 38.3k D1–D4: NXP BAT46WJ L1, L2: COILCRAFT SER2915L-103KL 10µH M1, M2, M5, M6: RENESAS RJK0651DPB 60Vds M3, M4, M7, M8: RENESAS RJK0451DPB 40Vds COUT1, COUT2: SUNCON 35HVT220M ×2 C1, C2: NIPPON CHEMICON EMZA800ADA470MJAOG 設計特集 LT3791-1 は、連続導通モード(CCM)と不連続導通モード(DCM)の両方を備えています。 CCM では、軽負荷時にスイッチングが連続し、インダクタ電流は正負いずれの方向にも流れます。 LT3791-1 が軽負荷で DCM 動作に入ると、逆方向の動作電流(負のインダクタ電流)が防止され、 軽負荷時の電力損失が最小限に抑えられます。 100W 超 /2.5A 昇降圧型の 36V SLA バッテリ・チャージャ LT3791-1 は、定電圧と定電流の両方を制御で すると、充電電圧とは異なるスタンバイ電圧また よび電流制御ピンである CTRL ピンにより、大 はフロート電圧レギュレーション・レベルが必要 電力太陽電池パネル・バッテリ・チャージャを簡 きます。スーパーキャパシタやバッテリなど、大 になります。LT3791-1 の C/10 検出レベルがこ 単に作成できます。 の機能を提供します。図 3 の回路では、バッテリ 型の容量性負荷は、その終端電圧(一定の電圧 が満充電に近づくと、C/10 機能により、バッテ レギュレーションが必要になる電圧点)に達する リ電圧は充電中(44V)からフロート(41V)に まで、定電流での充電が必要です。LT3791-1 低下します。その後、負荷の増加によってバッテ はこの要件を容易に満たします。一例として、 リ電圧が低下すると、チャージャは電圧帰還ルー 図 5 に示す昇降圧コンバータは、9V∼58V の プによって充電状態である 44V に戻ります。 入 力 電 圧 から生 成した 44V/2.5A DC の出 力 DCM による効率の向上と逆電流の防止 LT3791-1 は、連続導通モード(CCM)と不連 続導通モード(DCM)の両方を備えています。 CCM と DCM の違いを図 6 に示します。モード を選択するには、CCM ピンを INTVCC ピンまた は C/10ピンに接続すれば済みます。CCM では、 で 36V/12Ah の SLA バッテリを 充 電します。 LT3791-1 は、 広範な組成と容量を持つバッ 軽負荷時にスイッチングが連続し、インダクタ電 DCM 動作は、出力負荷が過充電された場合に テリを、さまざまな入力電源から、それらの電 流は正負いずれの方向にも流れます。CCM で バッテリ電流が逆方向に流れないようにして、大 圧関係に関 係なく充 電するように調 整できま 負荷がない場合のインダクタ電流は正負両方向 量の負方向電流から回路を保護します。 す。さらに、マイクロコントローラを使用して、太 となるので、 DCM の場合より消費電力は大きく 陽電池パネルから充電する最大出力追従制御 一部のバッテリ・チャージャ・アプリケーション (MPPT)チャージャを作成できます。出力診断 では、終端電圧に達して充電電流が次第に減少 図 5.SLA バッテリ・チャージャ なりますが、DCM に伴うスイッチ・ノードのリン ギングは取り除かれます。 ピンである ISMON ピンと IVINMON ピン、お PVIN 9V TO 57V RIN 0.003Ω 1µF 50Ω VIN INTVCC D1 IVINN TG1 BG1 OVLO LT3791-1 19.6k M1 0.1µF M4 M2 L1 10µH M3 SWI EN/UVLO RBAT 0.04Ω SNSN SHORT + PGND IVINMON ISMON CTRL BG2 SW2 TG2 ISP CLKOUT SGND 100k VREF PWM ISN FB CCM SS C/10 RT SYNC VC D1, D2: BAT46WJ 33nF L1: COILCRAFT SER2915L-103K M1-M4: RENESAS RJK0651DPB M5: NXP NX7002AK CIN2: ×2 NIPPON CHEMI-CON EMZA630ADA101MJA0G COUT2: ×3 NIPPON CHEMI-CON EMZA630ADA101MJA0G CIN2 100µF 63V ×2 COUT1 4.7µF 50V ×2 RSENSE 0.004Ω 200k 0.1µF + + COUT2 100µF 63V ×3 SNSP INTVCC CHARGE CURRENT CONTROL CIN1 4.7µF 100V ×2 0.1µF BST1 IVINP 24.3k D2 BST2 470nF 332k 4.7µF 3k 84.5k 300kHz 0.1µF 36V SLA BATTERY AGM TYPE 41V FLOAT 44V CHARGE AT 25°C 50Ω 1.00M INTVCC 10k 0.47µF 2.5A CHARGE 10k 402k 30.1k M5 22nF 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 25 (DCM)の概要 100 CCM 軽負荷時の効率を向上するための不連続導通モード 90 1000 CCM RISING THRESHOLD 600 EFFICIENCY (%) ILOAD (mA) FOR CCM OPERATION OVER ALL IOUT DCM FALLING THRESHOLD 400 INTVCC LT3791-1 LT3791-1 100k CCM CCM CCCM OPTIONAL 0 70 1.2 1 40 0.8 30 18 12 24 30 36 VIN (V) 42 48 0 0.001 54 0.6 DCM DCM CCM CCM 10 DCM (TG2 FOR M4 STAYS LOW) 1.4 50 b.DCM/CCM の遷移しきい値は、LT3791-1 が昇圧、昇降圧、 a.DCM と CCM の設定 EFFICIENCY 60 1.6 POWER LOSS 20 200 INTVCC C/10 1.8 80 800 FOR DCM OPERATION AT IOUT < 10mV/ROUT 2 VIN = 24V VOUT = 24V 0.01 0.1 IOUT (A) 1 POWER LOSS (W) 5000 図 6.低ノイズ化するための連続導通モード(CCM)と 0.4 0.2 10 0 c.DCM では軽負荷での効率が改善されます。 降圧の各動作モードに移動するとき安定に推移します。 DCM を選択した場合、設定された最大出力電 まとめ する場合や軽負荷時にノイズが最も少ない動作 流の約 10% より負荷が減少するまでコンバー LT3791-1 同期整流式昇降圧コントローラは、 にする場合に役立ちます。制御ループが複数あ タは CCM のままです。LT3791-1 が軽負荷で さまざまな負荷に対して、最大 98.5% の効率 るので、定電圧、定電流、またはその両方を制 DCM 動作に入ると、M4 の TG2ドライバは L で 100W を超える電力を供給します。このデバ 御するのに最適です。この機能豊富なデバイス のまま推移するので、 M4 はスイッチとしてでは イスは入力電圧範囲が 4.7V∼60V、出力電圧 は、他の回路構成ではうまくいかない昇降圧要 なくキャッチ・ダイオードとして動作するようにな 範囲が 0V∼60V と広いので、強力で多用途で 件を容易に満たします。n ります。これにより、逆方向の動作電流(負のイ あり、短絡保護機能を内蔵しているので、潜在 ンダクタ電流)が防止され、軽負荷時の電力損 的に危険な環境での堅牢な解決策となります。 失が最小限に抑えられます。 CCM 動作および DCM 動作は、効率を最高に VIN 18V TO 55V 0.004Ω VIN 1µF 51Ω BST2 IVINN TG1 OVLO 0.1µF 18.7k 100k BG1 LT3791-1 200k M2 0.1µF 0.0125Ω L1 22µH M4 M3 COUT1 4.7µF 100V ×2 + COUT2 330µF 63V ×3 図 7.48V アプリケーション VOUT 48V 3A 0.005Ω SNSN PGND BG2 SW2 TG2 ISP ISN FB SGND PWM 10k CIN2 100µF 80V ×2 SNSP SHORT C/10 CCM IVINMON ISMON CLKOUT VREF 0.1µF M1 SWI INTVCC 100k + BST1 499k 28.7k CIN1 4.7µF 100V 0.1µF IVINP EN/UVLO 34.8k 4.7µF 10V D1 D2 470nF 499k INTVCC CTRL SS SYNC V C RT 40k 1µF 22nF 26 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation 105k 250kHz 1000pF 95.3k 2.15k D1, D2: NXP BAT46WJ L1: WÜRTH ELECTRONICS 74435572200 22µH 11A M1, M2, M4: RENESAS RJK0651DPB 60Vds M3: RENESAS RJK0652DPB 60Vds COUT2: YAGEO ST 330µF 63V ×3 CIN2: NIPPON CHEMICON EMZA630ADA101MJAOG 100µF 63V ×2 2.49k 設計特集 光アイソレータ不要の 100V マイクロパワー絶縁型 フライバック・コンバータ(5 ピン TSOT-23) Min Chen 非同期のフライバック方式は、絶縁型電源では 1W 未満から数十 W ま での電力レベルにわたって広く使用されています。リニアテクノロジー の光アイソレータ不要の絶縁型フライバック・ファミリは、出力のレギュ レーションのためにオプトカプラーおよびトランスの 3 次巻線を必要 としない独自の 1 次側検出により、絶縁型電源の設計を大幅に簡素化 します。このファミリの最初のマイクロパワー・デバイスである新しい LT8300 は、軽負荷での効率が大幅に向上し、無負荷時の入力スタン バイ電流が約 200µA まで減少しています。 LT8300 は 6V∼100V の入力電圧範囲で動作 内部のループ補償回路とソフトスタート回路に し、最大 2W の絶縁された出力電力を供給しま より、外付けの部品点数がさらに削減されます。 す。150Vの内蔵DMOSパワー・スイッチにより、 重負荷でのバウンダリーモード動作により、小 ほとんどのアプリケーションではスナバ回路が必 型の磁気部品を使用できるので、優れた負荷レ 要ありません。絶縁された出力電圧を 1 次側フ ギュレーション特性を実現できます。リップルの ライバック波形から直接サンプリングすることに 小さい Burst Mode 動作により、軽負荷時に高 より、LT8300 では、レギュレーションのために い効率を維持できると同時に、出力電圧リップ オプトカプラーとトランスの 3 次巻線を必要とし ルを最小限に抑えることができます。これらすべ ません。出力電圧は 1 本の外付け抵抗で設定し ての機能は、 IPC-2221 の要件に適合する高電 ます。 圧対応のピン間隔を備えた 5ピン TSOT-23 パッ ケージ(図 1)に収められます。 図 1.LT8300 は、4 ピンと 5 ピンの間が高電圧対応のピン間隔 になっている 5 ピン TSOT-23 パッケージで供給されます。 性能と簡素性 図 2 に示すように、完全な絶縁型フライバック・ ソリューションが 1 × ½ インチより小さい領域に 収まっています。36V∼72V の入力から絶縁さ れた 5V の出力を発生する LT8300 の標準的な アプリケーションを図 3 に示します。このソリュー ションが必要とするのは、 5 つの外付け部品(入 力コンデンサ、出力コンデンサ、トランス、帰還 抵抗、出力ダイオード)と 2 つの低電圧ロックア ウト用抵抗(オプション)だけです。 図 2.LT8300 絶縁型フライバック・ コンバータのソリューション・サイズは、 LT8300 を使用すると、絶縁型のフライバック・ 標準のデモ基板 DC1825A 内で 1 インチ コンバータの設計が簡単になりますが、 同時 × ½ インチを下回ります。 に優れた性能を発揮する回路を実現できます。 図 3 の 5V アプリケーションでの電力効率(ピー ク値:85%)を図 4 に示します。図 3 の 5V アプ リケーションでの負荷レギュレーションおよび入 力レギュレーション(±0.5%) を図 5 に示します。 50mA から 250mA までの負荷ステップが生じ た場合のトランジェント波形と、 1mA の抵抗性 負荷がある場合の起動波形をそれぞれ図 6 およ び図 7 に示します。 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 27 絶縁された出力電圧を 1 次側フライバック波形から直接サンプリング することにより、LT8300 では、 レギュレーションのためにオプトカプラー とトランスの 3 次巻線を必要としません。出力電圧は 1 本の外付け抵抗 で設定します。 VIN 36V TO 72V VOUT+ 5V 1mA TO 300mA 4:1 2.2µF 1M • 300µH VIN LT8300 EN/UVLO 19µH • 47µF 40.2k R VOUT = 100µA • FB − VF NPS 210k 図 3.入力が 36V∼72V で出力が RFB 5V/300mA のマイクロパワー絶縁型 LT8300 の標準的なアプリケーションでの出力 電圧は、次式で表すことができます。 VOUT– SW ポスト・レギュレータによる出力電圧の温度による ばらつきの解消 VOUT の式の最初の項には温度依存性はありま GND フライバック・コンバータ せんが、出力ダイオードの順方向電圧 VF には 大きな負の温度係数(–1mV/℃∼–2mV/℃)が あります。こうした負の温度係数により、温度範 囲全体では出力電圧のばらつきが約 200mV∼ 100 5.20 90 VIN = 36V 5.15 VIN = 72V 60 OUTPUT VOLTAGE (V) EFFICIENCY (%) 80 70 VIN = 48V 50 40 30 20 比較的高い出力電圧(たとえば 12V や 24V)の 5.10 場合は、出力電圧レギュレーションに対する出 5.05 力ダイオードの温度係数の影響を無視できます。 5.00 しかし、 3.3V や 5V など低めの電圧出力では、 出力ダイオードの温度係数により、出力電圧レ 4.95 ギュレーションに対して 2%∼5% の変動が加わ 4.90 VIN = 36V VIN = 48V VIN = 72V 4.85 10 0 300mV 発生します。 0 50 100 150 200 LOAD CURRENT (mA) 250 300 図 4.図 3 の 5V アプリケーションの電力効率 4.80 0 50 100 150 200 LOAD CURRENT (mA) 250 300 図 5.図 3 の 5V アプリケーションでの出力負荷レギュレーション および入力レギュレーション ります。 温度範囲全体にわたって厳しい出力電圧レギュ レーションが要求される設計では、マイクロパ ワーの低ドロップアウト・リニア・レギュレータを 追加して LT8300 出力の後段を安定化すること ができます。LT8300 は、レギュレーション電圧 と LDO のドロップアウト電圧の合計よりもわず かに高い値に設定する必要があります。 IOUT 100mA/DIV ILPRI 100mA/DIV VSW 50V/DIV VSW 50V/DIV LT3009-3.3 ポスト・レギュレータと組み合わ せ て、 18V∼32V の 入 力 から 3.3V/20mA の 絶縁型出力を発生する LT8300 を図 8 に示し ます。無負荷時の入力スタンバイ電流は、図 9 に示すように 250µA 未満ですが、これは DEF- STAN61-5 に準拠しています。 VOUT 500mV/DIV VOUT 5V/DIV 500µs/DIV 500µs/DIV 図 6.図 3 の 5V アプリケーションで 50mA から 250mA までの 図 7.図 3 の 5V アプリケーションで 1mA の抵抗性負荷がある 負荷ステップが生じた場合のトランジェント波形 場合の起動波形 28 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation 設計特集 LT8300 では、従来の方式と比較した場合、絶縁型フライバック・ コンバータの設計が大幅に簡素化され、軽負荷時の効率が向上し、 無負荷時の入力スタンバイ電流が減少しています。 400 VIN 18V TO 32V 1µF VOUT+ 3.3V 0mA TO 20mA OUT LT3009-3.3 150µH • LT8300 EN/UVLO IN • 150µH VIN 1M D1 Z1 1µF SHDN 300 1µF GND IVIN (µA) L1 1:1 VOUT– SW 42.2k D1: DIODES INC. SBR0560S1-7 L1: DRQ73-151-R Z1: CENTRAL CMDZ4L7 93.1k RFB GND 200 100 0 図 8.入力が 18V∼32V で出力が 3.3V/20mA の DEF-STAN61-5 に準拠したマイクロパワー絶縁型コンバータ 18 20 22 24 26 VIN (V) 28 30 32 図 9.図 8 の 3.3V アプリケーションの無負荷時入力スタンバイ 電流 さまざまな入力参照電源 ンバータでは、両方とも LT8300 固有の帰還検 水準の集積化と、バウンダリーモードおよび低 絶縁型電源の他に、 LT8300 はさまざまな非絶 出方式を使用して、 VIN に追従する出力電圧を リップルのバースト・モードの使用により、絶縁 縁型アプリケーションで使用できます。興味深い 簡単に発生させています。 型電源ならびに各種の特殊な非絶縁型電源向 2 つのアプリケーションは、特殊なゲート・ドライ けに、使い方が簡単で部品点数が少なく、高効 まとめ バによく使用される入力参照型の正電源および 率のソリューションが得られます。n LT8300 では、従来の方式と比較した場合、絶 負電源です。入力が VIN で出力が(VIN +10V) 縁型フライバック・コンバータの設計が大幅に の簡単なマイクロパワー・コンバータを図 10 に、 簡素化され、軽負荷時の効率が向上し、無負荷 入力が VIN で出力が(VIN – 10V)のマイクロパ 時の入力スタンバイ電流が減少しています。高 ワー・コンバータを図 11 に示します。これらのコ 図 10.入力が VIN で出力が(VIN + 10V)のマイクロパワー・ 図 11.入力が VIN で出力が(VIN – 10V)のマイクロパワー・ コンバータ コンバータ VOUT+ 10V 50mA VIN 15V TO 80V 4.7µF VOUT– VIN 15V TO 80V Z1 4.7µF L1 330µH VIN LT8300 EN/UVLO D1 1M SW L1 330µH VIN LT8300 EN/UVLO 102k 118k D1 SW 102k 118k RFB RFB GND L1: COILTRONICS DR73-331-R D1: DIODES INC. SBR1U150SA Z1: CENTRAL CMDZ12L Z1 VOUT– 1µF 1M VOUT+ 10V 100mA 1µF GND L1: COILTRONICS DR73-331-R D1: DIODES INC. SBR1U150SA Z1: CENTRAL CMDZ12L 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 29 LTspice IV の最新情報 Gabino Alonso モデル、デモ回路、イベント、およびユーザのヒントに 関する最新情報については、以下の Twitter サイトで @LTspice を フォローしてください。www.twitter.com/LTspice 新しいデモ回路 新しいモデル 過電圧保護およびプッシュボタン・コントローラ バッテリ・チャージャ、両極性電源、 高速アンプおよび抵抗ネットワーク • LT4363-2:250V サージ保護機能を備えた 過電圧レギュレータ(入力:5.5V∼250V、 クランプ出力:16V) www.linear-tech.co.jp/LT4363 および LEDドライバ • LT5400:整合したクワッド抵抗ネットワーク www.linear-tech.co.jp/LT5400 • LTC2955:12V での自動電源投入機能を 備えたプッシュボタン・オン / オフ制御 (入力:12V またはバッテリ・バックアップ、 出力:3.3V/20mA) www.linear-tech.co.jp/LTC2955 降圧レギュレータ (入力: • LT3988:デュアル60V降圧レギュレータ 7V∼60V、出力:5V/1A および 3.3V/1A) www.linear-tech.co.jp/LT3988 • LT3992:FMEA 耐故障型デュアル・コンバータ (入力:7V∼60V、出力:5V/2A および 3.3V/2A)www.linear-tech.co.jp/LT3992 • LT8611:電流検出機能を備えたマイクロ パワー同期整流式降圧レギュレータ (入力:3.8V∼42V、出力:3.3V/2.5A) www.linear-tech.co.jp/LT8611 • LTM4620:効率の高い 8 相 100A 降圧 レギュレータ(入力:4.5V∼16V、 出力:1V/100A) www.linear-tech.co.jp/LTM4620 • LT3796:短絡保護機能と電流モニタ機能を 備えた昇圧 LEDドライバ(入力:9V∼60V、 出力:LED 列に 85V/400mA) www.linear-tech.co.jp/LT3796 • LTC3260:15V 単電源入力から生成する 低ノイズの±12V 電源(入力:15V、 出力:±12V/50mA) www.linear-tech.co.jp/LTC3260 • LTM8062A:2A、4 セルのリチウムイオン・ バッテリ・チャージャ(入力:18V∼32V、 出力:16.4V/2A) www.linear-tech.co.jp/LTM8062 電流検出アンプ • LT1787:オフセット両極性出力を備えた 双方向電流検出アンプ www.linear-tech.co.jp/LT1787 • LT6105:負電源用の片方向電流検出アンプ www.linear-tech.co.jp/LT6105 • LT6106:単電源、片方向電流検出アンプ www.linear-tech.co.jp/LT6106 • LTM8026:2 つの 2.5V 直列スーパーキャパシ タ・チャージャ(入力:7V∼36V、 出力:5V/5.6A) www.linear-tech.co.jp/LTM8026 LTspice IV とは ® LTspice IV は、電源設計の作業を迅速化するための高性能 SPICE シミュレータ、回路図入力プログラム、お よび波形ビューワです。LTspice IV では、SPICE を拡張してモデルを加えたことにより、標準的な SPICE シミュ レータと比較してシミュレーション時間が大幅に短縮されており、他の SPICE シミュレータでは数時間を要する ほとんどのスイッチング・レギュレータの波形を数分以内に表示できます。 LTspice IV は、www.linear-tech.co.jp/LTspice で、リニアテクノロジーから無償で入手できます。このダウン ロードには、LTspice IV の完全機能版、リニアテクノロジーのパワー製品のマクロ・モデル、200 種類を超える オペアンプ・モデル、ならびに抵抗、トランジスタ、MOSFET のモデルが含まれています。 30 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation • LTC6417:1.6GHz 低ノイズ高直線性差動 バッファ /16 ビット A/D コンバータ・ドライバ www.linear-tech.co.jp/LTC6417 環境発電(エネルギー・ハーベスティング) • LTC3109:Auto-polarity、超低電圧昇圧 コンバータ & パワーマネージャ www.linear-tech.co.jp/LTC3109 • LTC3588-2:最小 VIN が 14V の圧電環境発電 (エネルギー・ハーベスティング)電源 www.linear-tech.co.jp/LTC3588-2 降圧レギュレータ • LT3975:静止電流が 2.7µA の 42V、2.5A、 2MHz 降圧スイッチング・レギュレータ www.linear-tech.co.jp/LT3975 • LT3976:静止電流が 3.3µA の 40V、5A、 2MHz 降圧スイッチング・レギュレータ www.linear-tech.co.jp/LT3976 • LTC3605A:20V、5A 同期整流式降圧レギュ レータ www.linear-tech.co.jp/LTC3605A • LTC3626:電流および温度モニタ機能を備え た 20V、2.5A 同期整流式モノリシック降圧レ ギュレータ www.linear-tech.co.jp/LTC3626 • LTM4620:デュアル 13A またはシングル 26A DC/DC µModule レギュレータ www.linear-tech.co.jp/LTC4260 複数の回路構成があるレギュレータ • LT3758A:トランジェント特性が改善された 高入力電圧の昇圧、フライバック、SEPIC および反転コントローラ www.linear-tech.co.jp/LT3758 設計上のアイデア パワー・ユーザのヒント 電圧源または電流源用の区分線形関数 区分線形(PWL)関数は、ユーザが定義した複数の点を結ぶ一連の直線線分を基に して波形を作成するときに使用します。PWL 関数はカスタム波形の作成に便利なの で、通常は電圧源や電流源を定義するときに使用します。 その他の形式の PWL 文 LTspice IV は、他にも多数の形式の PWL 文をサポートしています。これらの形式を 調べるには、回路図エディタで、 (部品のシンボルではなく)PWL 文があるテキスト PWL 関数を電圧源または電流源に追加する方法: 行を右クリックして、作成した文を直接編集する必要があります。代替 PWL 形式の例 1. 回路図エディタのシンボルを右クリックします。 を以下にいくつか示します。 2.「Advanced」をクリックします。 • データ対を指定のサイクル数だけ、または際限なく繰り返す場合: 3.「PWL(t1, v1, t2, v2…)」または「PWL File:」を選択します。 4. 手順 3 での選択内容に応じて、PWL の値を入力するか、ファイルを選択します。 値を直接入力することにした場合は、入力した値に基づいて PWL 文が作成されます。 PWL 文の構文は、次に示すように時間と値のデータ対を表す 2 次元の点のリストで、 時間の値は昇順に並んでいます。 PWL (0 0 1m 1 2m 1 3m 0) 次に示すように時間の値の前に + 記号を付けることにより、時間の値を直前の時間 の値を基準にして定義することもできます。 PWL REPEAT FOR 5 (0 0 1m 1 2m 1 3m 0) ENDREPEAT PWL REPEAT FOREVER (0 0 1m 1 2m 1 3m 0) ENDREPEAT • 式が真である限り電圧源または電流源をオンにするトリガ式: PWL (0 0 1m 1 2m 1 3m 0) TRIGGER V(n003)>1 • 時間または電圧 / 電流源の値の変倍: PWL TIME_SCALE_FACTOR=0.5 VALUE_SCALE_FACTOR=2 (0 0 1m 1 2m 1 3m 0) これらのいずれかの形式の PWL 式を次回のシミュレーションで試してみてください。 シミュレーションを楽しんでください! PWL (0 0 +1m 1 +1m 1 +1m 0) ダイアログ内での非相対的な値の対の例を以下に示します。 PWL 関数は、カスタム波形を作成する簡単な方法で、通常は電圧源または電流源の値を 定義するときに使用します。 PWL 文によって生成された波形 時間と値のデータ対を表す 2 次元の点のリストをファイル内にカプセル化して、次の ように PWL 文で使用することができます。 PWL (file=data.txt) 回路図エディタには部品と PWL データ付きファイル 付記された PWL 文が表示される 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 31 300V のトランジェントから部品を保護する 100V サージ・ストッパー Hamza Salman Afzal 高電圧トランジェントは自動車システムや産業用システム では一般的で、数マイクロ秒から数百ミリ秒まで続くこと があり、かなりのエネルギーが負荷側へ送られます。トラ ンジェントの原因は、自動車の負荷遮断や、負荷ステップ と寄生インダクタンスによって生じるスパイクがあります。 故障のリスクを回避するため、これらのシステムに搭載 されているすべての電子機器は、トランジェントのエネル ギー・スパイクにそのまま耐えられるほど十分頑強にする か、スパイクから保護する必要があります。 VIN 12V 10mΩ VOUT IRLR2908 10Ω 383k VCC SNS GATE SHDN IN+ OUT VCC FB 4.99k 100k UNDERVOLTAGE 102k LT4356DE-1 EN AOUT GND TMR FLT DC-DC CONVERTER SHDN GND FAULT 0.1µF 図 1.12V の過電圧レギュレータ LT4356 サージ・ストッパーは、従来の受動的 図 3 に示すように、第 2 のプリ・レギュレイト用 方の MOSFET が 完 全に導 通して、 電 力 が 出 なクランプ保護技術と比較して性能が飛躍的に MOSFET Q2 を縦続接続することにより、この 力まで送られます。したがって、R3 と D1 は起 向上したデバイスです。このデバイスは、パス 制約を乗り越えることができます。Q2 は VCC ピ 動にとって不可欠です。通常の動作状態では、 MOSFET のゲートを安定化することで負荷側 ンと SNS ピンの電圧を安全なレベルにクランプ GATE ピンの電圧は GATE ピン自体によって出 の部品を過電圧から能動的に保護し、標準的な し、電流制限機能を復活させるだけでなく、追 力より約 12.5V 高い値に制限されるので、入力 センス抵抗を使用することで電流を制限します。 加の利点として、SOA(安全動作領域)ストレス は12Vで、Q1のゲートは24.5Vにバイアスされ、 標準的な 12V のアプリケーションを図 1 に示し を Q1と分担します。 ます。 Q2 のゲートはわずかに低い約 24V にバイアス 電源が最初に投入されると、R3 と D1 によって されます。 LT4356 の最大定格は 100V で、動作電圧範囲 Q2 のゲート電位が上昇し、その結果、電力が 入力が高い電圧トランジェントにさらされると、 は 4V∼80V なので、産業用および自動車の幅 LT4356 に伝達されます。次に、GATE ピンに R3と D1 によって Q2 のゲート電位が上昇し、そ 広いアプリケーションで負荷側の電子機器を保 よって Q1 および Q2 のゲート電位が上昇し、両 護するのに最適です。それにもかかわらず、一 部の回路では、最大で 200V∼300V のトラン ジェントから保護する必要があります。 Q2 のソースは約 75V よりは高くならず、 VCC ピ 図 2.150V に耐えられる 24V のアプリケーション回路 この方法では電流制限機能が使用できなくなり VIN 24V Q1 IRF640 1k 1W 118k 圧から抵抗とツェナーダイオードによりクランプ SNS GATE されており、100V 未満の安全な値まで制限さ 然的に切り離されるので、電流検出は不可能で D2* SMAT70A FB 4.99k LT4356DE-1 あり、この回路は電圧クランプとしてのみ機能し ます。 EN FLT *DIODES INC. GND TMR CTMR 0.1µF トクランプ・アプリケーションとは異なり、図 3 の 直列クランプ回路構成では、LT4356 の電流制 限機能を全面的に使用できます。Q1 は、 R1 と R2 によって規定されるとおりに、通常の方法で 出力電圧を調整し、制限します。 OUT VCC SHDN 32 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation VOUT CLAMPED AT 32V 10Ω ます。図 2 では、VCC ピンと SNS ピンが入力電 れます。VCC ピンと SNS ピンは入力経路から必 ンと SNS ピンの電圧は最大定格の 100V より低 い状態が安全に維持されます。図 2 に示すシャッ このような高電圧を阻止するように LT4356 を 構成する 1 つの方法を図 2 に示します。ただし、 の結果、 D2 によってクランプされる 80V に至り ます。Q2 はソース・フォロワとして機能するので、 図 3 に 示 す 回 路 構 成 の 追 加 の 利 点 は、 Q2 が SOA ストレ ス を Q1 と 分 担 することで す。 設計上のアイデア LT4356 の最大定格は 100V で動作電圧範囲は 4V∼80V ですが、 回路をわずかに追加することにより、最大で 300V のトランジェント から保護できます。 VIN 12V 図 3.レギュレータを前置きする回路構成により、 LT4356 の保護範囲が広がります。回路全体を 図 4 に示します。 RSNS Q2 Q1 VOUT R3 D1 D3 D2 80V Q2 を適切に選択すれば、さらに高い入力電圧 に耐えることもできます。 こうした高い入力電圧に耐える回路を設計する VCC GATE SNS LT4356 GND 場合は、入力に高い dV/dt が生じる可能性とそ OUT R1 れがもたらす結果を認識しておくことが重要で R2 された高い入力電圧によって生じる電流を制限 す。回路が応答できるまでの間、瞬間的に印加 FB TMR するのは、寄生インダクタンスと出力コンデンサ CTMR までの配線抵抗のみです。ほとんどのテスト波 形では、許容できる一定の立ち上がり時間が規 定されていますが、無限大の入力スルーレート も考えられないわけではありません(ベンチ・テ 150V∼200V の入力電圧範囲では、SOA スト 新しい回路構成に基づ いた回路全体を図 4 に スト時などに発生する場合があります)。こうし レスは Q1 と Q2 の間で等しく分担されます。あ 示します。この回路は、最大 300V のピーク入 た条件下で LT4356 の電流制限ループが優先 る特定のアプリケーションでは、このことにより、 力電圧に耐えるよう設計されています。前述した 的に起動できるように、Q3が追加されています。 非常に高価で特殊な 1 つの高 SOA デバイスを ように、 Q2 のゲートは 80V でクランプされるの 2 つの安価な MOSFET で置き換えることができ で、入力電圧が 300V の場合、 Q2 では 225V ます。ピーク入力電圧の要件が 200V より高くな 降下するのに対して、 Q1 にかかる電圧が合計 ると、SOA はますます Q2 に集中するようになり、 で75Vを超えることはありません。 この理由から、 直列接続は実質的にストレス軽減の役目を果た Q2 には 250V 耐圧のデバイスが採用されるの さなくなります。 で、 Q1 には 100V 耐圧のデバイスで十分です。 300V のスパイクにさらされた場合の回路の結 果を図 5 に示します。CTMR の大きさは、こうした 過電圧状態を乗り切れるように設定しますが、 持続時間の長いサージは中断されるので、その 結果 MOSFET は破壊から保護されます。n 図 4.300V のトランジェントを阻止できる 16V の過電圧レギュレータ RSNUB 51Ω VIN MAX RANGE: 0V–300V OPERATING RANGE: 9V–16V 図 5.図 4 の回路の入力での 300V のスパイクとその結果 CSNUB 0.01µF RSNS 33mΩ Q2 FDB33N25 R3 10k D1 1N4148 10Ω D4 1N756A 100Ω + 10Ω Q3 2N3904 D3 1N4148 D2 SMAJ70A* 0.039µF VCC GATE SNS OUT 100µF R1 178k FB SHDN R2 15k LT4356 AOUT IN+ *DIODES INC. VOUT 1.5A LOAD CURRENT 16V REGULATION INPUT 50V/DIV 10k 0.1µF Q1 FQB55N10 FLT GND OUTPUT 20V/DIV 2ms/DIV EN TMR CTMR 0.1µF 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 33 外部の信号発生器、クロック、またはマイクロ コントローラを使用しない高精度 PWM LED 調光 Keith Szolusha LED は、アナログ調光とパルス幅変調(PWM)調光の 2 つの方法で調光できます。アナログ調光では、LED 列の DC 電流を単純に調整することによって LED 照明出力を変化させますが、PWM 調光では、LED 列の 定電流のデューティ・サイクルを変化させ、LED 列の平均電流を実質的に変更することによって同じ効果を 得ています。アナログ調光は簡単であることが魅力であるにもかかわらず、多くのアプリケーションでは不適 当です。わずか 10:1 の輝度レベルで約 25% 以上も調光精度が低下し、LED の色に偏りが生じるからです。 対照的に、PWM 調光は 3000:1 以上の調光比(100Hz 時)を実現できますが、精度を大幅に損なうことも、 LED の色が変化することもありません。 LT3761 は、独自の PWM 信号を発生すること PWM 調 光 機 能 を 備 え、 効 率 が 94% と高 い により、アナログ調光の簡素性と PWM 調光の 60V、1A(60W)、350kHz の 自 動 車 用 ヘッ 他の大電力 LEDドライバとは異なり、 LT3761 内部 PWM 調光信号発生器 精度を兼ね備えています。デバイスの調光入力 ドランプ・アプリケーションを図 1 に示します。 は独自の PWM 調光信号を発生して、最大 25:1 として単純な DC 信号を設定することにより、高 LT3761 は、LT3755/LT3756 ファミリと同じ高 の調光比を実現できます。これにより、PWM 信 い調光比が可能です。PWM 信号発生用のマイ 性能の PWM 調光方式を採用していますが、内 号を発生する部品を外付けする必要なく、正確 クロコントローラ、発振器、または信号発生器 部で発生する PWM 調光信号という追加の機能 な PWM 調光信号を発生することができます。 を追加する必要はありません。LT3761 の内部 を備えているにも関わらず、ピンの追加はありま 選択した周波数で高性能 PWM 調光を実現する PWM 信 号で得られる調 光 比は 25:1 ですが、 せん。 ために LT3761 が必要なのは、外部 DC 電圧の 外部の PWM 信号を使用することにより、最大 3000:1 の調光比を実現できます。 図 1.内部 PWM 調光比が 25:1 で効率が 94% の自動車用ヘッドランプ向け昇圧型 LEDドライバ 大電力の LEDドライバ LT3761 は、LT3755-2 ファミリや LT3756-2 ファミリと同様に大電力の LEDドライバです。こ のデバイスは入力範囲が 4.5V∼60V で出力範 L1 10µH VIN 8V TO 60V CIN 2.2µF ×2 100V 囲が 0V∼80V の単一スイッチ・コントローラで、 昇圧モード、SEPIC モード、昇降圧モード、また 499k 90.9k は降圧モードの LEDドライバとして構成できま INTVCC チング周波数範囲、開放 LED 保護、短絡保護 ジャまたはスーパーキャパシタ・チャージャとし て動作することもできます。 GATE 140k DIM RSENSE 10mΩ 1M RLED 0.25Ω 1A 16.9k GND FB CPWM 47nF 300Hz RC 5.1k CC 4.7nF RT 28.7k 350kHz M1: INFINEON BSC123N08NS3-G D1: DIODES INC PDS5100 L1: COILTRONICS HC9-100-R M2: VISHAY SILICONIX Si2328DS COUT, CIN: MURATA GRM42-2X7R225K100R 34 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation COUT 2.2µF ×4 60W LED STRING ISP OPENLED ISN DIM/SS PWM PWMOUT VC RT INTVCC RDIM 124k CSS 0.01µF M1 SENSE LT3761 100k を実現するための追加の内部ロジックを備えて おり、電流制限機能付きの定電圧レギュレータ 1M VIN CTRL す。このデバイスは、100kHz∼1MHz のスイッ として動作することも、定電流鉛バッテリ・チャー EN/UVLO VREF D1 INTVCC CVCC 1µF M2 (CURRENT DERATED FOR VIN < 10V) 設計上のアイデア LT3761 は、独自の PWM 信号を発生して正確な PWM 調光を実現しますが、アナログ調光の単純な制御を 備えています。デバイスの調光入力で単純な DC 信号を調整することにより、高い調光比が可能です。 PWM 信号発生用のマイクロコントローラ、発振器、または信号発生器を追加する必要はありません。 図 2.内部で発生させた PWM 信号と図 1 のアプリケーションの VDIM = 7.7V DCPWM = 96% LED 電流 VDIM = 4V DCPWM = 50% ILED 1A/DIV VDIM = 1.5V DCPWM = 10% VDIM = 0.4V DCPWM = 4.3% 0.5ms/DIV みであり、アナログ調光制御とよく似ています。 ように DIM/SS ピンに流れ込む µA レベルの電 ティ・サイクルが 100% の動作では、PWM ピン それにもかかわらず、このデバイスは PWM 入 流で設定されます。内部で生成される、PWM ピ を INTVCC に接続することができます。 力信号を受け取り、この信号を使用して標準の ンでのプルアップ電流およびプルダウン電流は、 方式で LED 列を駆動することができます。 H および L のしきい値の間でコンデンサを充 内部 PWM 調光信号発生器は、プログラム可能 な周波数およびデューティ・サイクルを特長とし ています。PWMOUT ピンでの矩形波信号の周 波数は、PWM ピンと GND の間に接続したコン デンサ CPWM により、 fPWM = 14kHz • nF/CPWM という式に従って設定されます。PWMOUT ピ ンの信号のデューティ・サイクルは、図 3 に示す 放電して、デューティ・サイクル信号を発生する ために使用されます。PWM ピンでのこれらの電 流信号は十分に小さいので、非常に高い調光性 まとめ 大電力で高性能の LEDドライバである LT3761 は、高精度かつ使いやすい独自の PWM 調光 信号発生器を内蔵しています。n 能を得るために、マイクロコントローラからのデ ジタル信号によって容易にオーバードライブす ることができます。DIM/SS ピンを使用して調光 比を調整する場合、内部信号発生器を使用した 最小デューティ・サイクルは、約 4% です。デュー 図 3.DIM/SS ピンでのデューティ・サイクルの設定には、µA 図 4.高速 PWM 信号が入力された場合も、LT3761 はやはり レベルの信号が使用されます。このピンを外部の PWM 信号と 高速 PWMOUT 信号を供給します。 組み合わせて使用すると、非常に高い調光比を実現できます。 PWMOUT DUTY RATIO (%) 100 CPWMOUT = 2.2nF 80 PWM INPUT 60 PWMOUT 5V/DIV 40 20 0 –10 0 10 20 30 DIM/SS CURRENT (µA) 40 50 200ns/DIV 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 35 PoE(Power over Ethernet)給電装置からの 光アイソレータおよび絶縁型電源の排除 Heath Stewart PoE(Power over Ethernet)は、既存のイーサネット・ケーブル配線を介してアプリケーションの電力を安 全に供給するための IEEE 802.3at 規格で規定されています。PoE を実装するには、アーキテクチャと部品 を慎重に選択してシステム・コストを最小限に抑えると同時に、性能と信頼性を最大限に高めることが必要 です。適切に設計するには、IEEE の絶縁要件に適合し、短絡や過電流の発生時に Hot Swap™ FET を保護 して、それ以外の場合には IEEE 規格に準拠する必要があります。 IEEE 標準規格では PoE の用語を規定していま り、PSE アーキテクチャを根底から変革します。 動作をサポートする上に、RDS(ON) の小さい外付 す。ネットワークに電力を供給する装置は給電 このチップセットは、従来の絶縁回路の代わり け MOSFET と 0.25Ω の検出抵抗を使用するこ 装置(PSE)と呼ばれ、ネットワークから電力が に低コストのイーサネット・トランスを使用した とにより、熱損失を最小限に抑えます。 供給される装置は受電装置(PD)と呼ばれます。 独自の絶縁プロトコルを採用しているので、部 品コストの大幅な削減につながります。 LTC4290/LTC4271 PSE コントローラ・チップ セットは、従来必要だったデジタル絶縁回路を 第 4 世代の PSE コントローラである LTC4290/ 削除して絶縁型電源を完全に除去することによ LTC4271 は、IEEE 802.3at に完全に準拠した 図 1.従来の PSE 絶縁方式では、 多数の光アイソレータと面倒で費用 1500V ISOLATION PSE PD のかかる絶縁型 DC/DC コンバータ が必要です。図 2 に示す LT4271/ LT4290 ソリューションでは、これらの 部品を排除できます。 PHY HOST PHY + PD CONTROLLER PSE CONTROLLER ISOLATED DC/DC CONVERTER 36 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation ISOLATED DC/DC CONVERTER 設計上のアイデア 1500V ISOLATION PSE PD PHY 図 2.図 1 に示す従来方式とは対照的 に、LTC4290/LTC4271 チップセット PHY HOST はすっきりとした PSE アーキテクチャ に組み込まれており、光アイソレータ なしでの絶縁を実現し、専用の絶縁型 DC/DC コンバータが不要になります。 LT4271 PD CONTROLLER LT4290 ISOLATED DC/DC CONVERTER システムの絶縁要件 現するために設計されたプロトコルで符号化さ 先進のパワー・マネージメント機能には、優先順 PoE 規格では、絶縁要件が明確に規定されてお れます。 位の付いた高速シャットダウン、 1 ポートにつき 先進の第 4 世代機能 のプログラム可能な電流制限、7 ビットのプログ り、グランド・ループの遮断が保証されており、 イーサネットのデータ完全性が維持され、PD ア プリケーション回路内でのノイズが最小限に抑 リニアテクノロジーの PSE ファミリは、1 億をは 12 ビットの電圧および電流の読み取り、8 ビット ラム可能な過負荷電流しきい値などがあります。 えられます。 るかに超えるポート出荷実績によって裏付けら 従来の PSE 絶縁アーキテクチャでは、デジタル・ す。PSE の最新世代では、市場実績の豊かな製 ントローラがデバイスをデジタルで設定するこ インタフェースと電力をホスト /PSE コントローラ 品に更なる新機能が追加されます。LTC4290/ とや、ポートの読み取り値を照会することがで のインタフェースで絶縁します。光結合素子など LTC4271 を採用したプラットフォームが将来 きます。C 言語のライブラリを使用して、工数を のデジタル絶縁素子は、高価で信頼性が低いも にわたって最 新であり続 けるためにファーム 削減し、市場投入までの期間を短縮することも のです。絶縁機能を備える IC は法外に高価で ウェアのフィールド・アップデート機能を追加し できます。 あるか、高速の I2C 転送速度をサポートしてい ました。オプションの 1 秒間の電流平均化によ ません。さらに、 PSE ロジックに電力を供給する り、ホストのパワー・マネージメントが簡素化さ ために必要な絶縁型 DC/DC コンバータにより、 れます。最高グレードのアナログ・コントローラ 基板面積とシステム・コストが増大します。 LTC4290A では、LTPoE++™ の新しいクラシ 絶縁を容易に実現 LTC4290/LTC4271 チップセットは、すべての デジタル機能を絶縁境界のホスト側に移すこと れた PoE の豊富な経験と専門技術を有していま フィケーションを使用して、最大 90W の PD 電 力供給が可能です。 1MHz の I2C インタフェースにより、ホスト・コ まとめ LTC4290/LTC4271 は、リニアテクノロジーの 実績のある堅牢な PSEソリューションに部品コス トの削減とこの分野で最善の機能を加えた製品 です。n これ まで の 世 代 の 場 合と 同 様、 LTC4290/ により、 PSE 絶縁方式とは異なるアプローチを LTC4271 チップセット・アーキテクチャの鍵と 採っています(図 2)。これにより、必要な部品 なる利点は業界で最も低い電力損失であり、脆 のコストと回路の複雑さを大幅に削減できます。 弱で RDS(ON) の大きい MOSFET を組み込んだ LTC4271 デジタル・コントローラはホストのロ PSE を使用して設計するよりも熱設計がはるか ジック電源を使用できるため、独立した絶縁型 に容易になります。システム設計者の方々には、 DC/DC 電 源 は 不 要 になりました。LTC4271 80V に耐えられるポート・ピンによって実現され は、トランスで絶縁された通信方式を使用して る堅牢性を高く評価していただけると考えます。 LTC4290 を制御します。安価で広く普及してい PD の検出は、PD の誤検出を確実に防止する独 るイーサネット用のトランスにより、 6 つの光結 自のデュアル・モード 4 点検出機構を使用して 合素子を置き換えます。ポート管理、リセット、 行われます。 高速シャットダウンなどの IC 内通信は、放射エ ネルギーを最小限に抑えて 1500V の絶縁を実 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 37 新製品の概要 10V でゲートを駆動し、コールド・クランクを 乗り切るマルチフェーズ昇圧 DC/DC コントローラ LTC3862-2 は、大電力、マルチフェーズの電 18 ビット A/D コンバータを駆動可能な、 消費電力がわずか 5mW の完全差動アンプ リニアテクノロジーは、16 ビットおよび 18 ビット レベルの高電圧モニタです。静止電流が小さく 流モード昇圧 DC/DC コントローラです。先行デ の高精度 SAR(逐次比較型)A/D コンバータを (0.85µA)動作電圧範囲が 2.5V∼36V と広い バイスである LTC3862 および LTC3862-1 と わずか 1mA の電源電流で駆動する低消費電力 ので、LTC2960 はマルチセル・バッテリのアプ 同様、 LTC3862-2 は、固定周波数のピーク電 の差動アンプ、LTC6362 を発表しました。最大 リケーションで役立ちます。ステータス・インジ 流モード・アーキテクチャを採用しており、 2 つ 入力オフセット電圧が 200µV で入力換算ノイズ ナノ電流レベルの高電圧モニタ LTC2960 は、監視リセット出力を生成して低 電圧検出または過電圧検出を実現するナノ電流 ケータの RST と OUT は、 36V のオープンドレ のチャネルが 180° 位相のずれた状態で動作し が 3.9nV/ √Hz なので、このデバイスは高精度の イン出力または低電圧のアクティブ・プルアップ ます。このデバイスは、調整可能なスロープ補 産業用アプリケーションやデータ収集アプリケー 償利得、最大デューティ・サイクルおよびリーディ ションに適しています。 回路として利用できます。 2 つのコンパレータ入力のそれぞれのモニタし きい値は、外付けの抵抗分割器で設定します。 LTC2960 は ADJ 入力をモニタしており、コン パレータの入力電圧がコンパレータのしきい 値より低くなると、 RST 出力は L になります。 RST 出力は、ADJ 入力の電圧がしきい値より 2.5% 高くなるまで L のままです。リセット・タ ングエッジ・ブランキング、外付け抵抗による設 定可能な周波数(75kHz∼500kHz)または位 相同期可能な固定周波数(50kHz∼650kHz) を持つ外部クロックへの同期など、よくある機能 を備えています。PHASEMODE 制御ピンによ り、2 相、3 相、4 相、6 相または 12 相動作が可 能です。 LTC6362 は、電圧範囲が 0.5V∼4.5V の出力 同相ピンを備え、出力ステップが 8VP–P の場合 の 18 ビット・セトリング時間が 550ns なので、 多重化された入力や制御ループのアプリケー ションで LTC2379-18 などの A/D コンバータを 駆動するのに最適です。この 18 ビット SAR A/D コンバータは、そのフルスケール入力範囲をリ イムアウト期間は、RST 出力が H 状態に戻る LTC3861-1 と 同 様 に、LTC3862-2 の 内 部 ファレンス電圧の 10%∼90% に設定するデジ のを遅らせて、電圧のセトリング、初期化時間、 LDO は 10V に安 定 化され、 ほとんどの自動 タル利得圧縮機能を備えています。この機能を あるいはマイクロプロセッサのリセット機能を可 車用グレードおよび産業用グレードのパワー LTC6362 のレール・トゥ・レール出力段と組み 能にする役割を果たします。反転入力または非 MOSFET の ゲ ート 駆 動 電 圧 に 最 適 化 され 合わせることにより、負電源レールが不要になっ 反転入力の追加のコンパレータには 5% のヒス て い ます。し かし、 LTC3861-1 とは 異 なり、 て回路が簡単になるので、消費電力を最小限に テリシスがあり、OUT ピンに表示されます。 LTC3862-2 の低電圧ロックアウト(UVLO)立 抑えることができます。 手動リセット(MR)入力により、 RST 出力を外 部から作動させることができます。その他のオプ ションとして、 15ms または 200ms が選択でき るリセット・タイムアウト期間があります。ロジッ ク電源ピン(DVCC)は、アクティブなプルアッ プ 回 路の電 源 入 力になります。LTC2960 は、 2mm × 2mm の 8 ピン DFN パッケージおよび TSOT-23 パッケージで供給されます。電気的 仕様は –45℃∼125℃の範囲で保証されます。 ち下がりしきい値は元の 7V から 4V に低下しま す。ゲート駆動電圧が不十分な場合は、 UVLO によって回路の電源が遮断されます。UVLO の しきい値を下げることにより、ゲート駆動電圧が 10V の最も効率的な MOSFETとの互換性が得 られる上に、 (エンジンの始動時のように)入力 電圧が 10V より低くなった場合でも、デバイス がレギュレーション動作を行うことができます。 LTC3862-2 では、チャネル間およびデバイス 間での電流検出のマッチングも向上しました。こ れにより、位相間での熱損失をより均等に分担 できます。 LTC6362 の柔軟なアーキテクチャにより、グラ ンドを基準にしたシングルエンドの DC 結合信 号を差動入力信号か、または DC レベルをシフ トした差動入力信号に変換できます。LTC6362 は入力バイアス電流およびオフセット電圧が小 さく、入力がレール・トゥ・レール対応なので、 高インピーダンス構成で使用して、シグナル・ チェーンの前段にあるセンサと直接インタフェー スをとることができます。 LTC6362 は MSOP-8 パッケージおよび 3mm × 3mm の DFN パッケージで供給され、0℃∼ 70℃、–40℃∼85℃、および –40℃∼125℃の 各温度範囲で仕様が完全に保証されています。 38 | 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation 新製品の概要 LTC2960 は、監視リセット出力を生成して低電圧検出または 過電圧検出を実現するナノ電流レベルの高電圧モニタです。 静止電流が小さく (0.85µA)動作電圧範囲が 2.5V∼36V と 広いので、LTC2960 はマルチセル・バッテリのアプリケーショ ンで役立ちます。 デバイス・オプション 出力タイプ 入力 リセット・タイムアウト期間 LTC2960-1 36V オープンドレイン ADJ/IN+ 15ms/200ms LTC2960-2 36V オープンドレイン ADJ/IN- 15ms/200ms LTC2960-3 アクティブ・プルアップ ADJ/IN+ 200ms LTC2960-4 アクティブ・プルアップ ADJ/IN- 200ms 100W を超える LED 電力を供給する 60V 同期整流式昇降圧 LEDドライバ LT3791 は同期整流式の昇降圧 DC/DC LED IIP2 の最適化と DC オフセットの補正により ゼロ IF レシーバの性能が向上した 30MHz∼ 1.4GHz 広帯域 I/Q 復調器 ドライバおよび電圧コントローラで、100W を超 LTC5584 は、IIP3 が 31dBm で IIP2 が 70dBm える LED 電力を供給できます。入力電圧範囲が という非常に優れた直線性を備えた超広帯域 4.7V∼60V なので、自動車用、産業用、および 幅の直接変換型 I/Q 復調器です。このデバイス 建築用照明など、広範なアプリケーションに最 は、530MHz を超えるクラス最高の復調帯域 適です。同様に、 LT3791 の出力電圧は 0V∼ 幅を備え、最新世代の LTE マルチモード・レ 60V の範囲で設定できるので、1 列に接続され シーバ、LTE Advanced レシーバ、 ならびに た各種の LED を駆動できます。内部の 4 スイッ デジタル・プリディストーション(DPD)レシー チ昇降圧コントローラは、入力電圧が出力電圧 バをサポートします。I/Q 復 調 器は 30MHz∼ より高い、低い、または等しい条件で動作する 1.4GHz の広い周波数範囲にわたって動作す ので、停止 / 始動、コールド・クランク、および負 るので、VHF および UHF の無 線 周 波 数 帯と 荷遮断の状況で入力電圧が急激に変化する可 450MHz/700MHz の LTE 周 波 数 帯という幅 LTC5584 は、その広い帯域幅特性により、マ ルチモード LTE レシーバ、CDMA DPD レシー バ、さらにはその他の広帯域レシーバ・アプリ ケーションに最適です。とりわけ、300MHz を 超える復調帯域幅を必要とする、これら最新の 基地局のデジタル・プリディストーションに最適 です。LTC5584 はこれらの帯域幅要求基準を 超えている上に、変換利得の平坦度が±0.5dB より優れています。LTC5584 は、無線インフラ・ アプリケーションの枠を超えて、軍用レシーバ、 広帯域通信、2 地点間マイクロ波データ・リンク、 イメージ除去レシーバ、および長距離 RFIDリー ダにも適しています。 能性がある自動車などのアプリケーションに最 広い範囲をカバーします。LTC5584 に固有の LTC5584 は、4mm × 4mm の 24ピン QFN パッ 適です。降圧 / 通過 / 昇圧の各動作モード間を 機能として、 2 つの較正機能が内蔵されていま ケージで供給されます。このデバイスは –40℃∼ 切れ目なく移行するので、電源電圧が大幅に変 す。1 つは、システム設計者がレシーバの IIP2 105 ℃のケース動作温度範囲で動作することが 動しても十分に安定化された出力が供給されま 性能を最適化して、公称の 70dBm から前例の 保証されています。5V 単電源で動作する場合、 す。LT3791 独自の設計回路は 3 つの制御ルー ない 80dBm 以上に向上できる先進の回路です。 LTC5584 に 流 れる全 電 源 電 流 は 200mA で プを使用して、入力電流、LED 電流、および出 もう1 つは、I 出力および Q 出力での DC オフセッ す。このデバイスは、デバイスをイネーブルまた 力電圧をモニタし、最適な性能と信頼性を実現 ト電圧をゼロにする内蔵回路です。これらの機 はディスエーブルするためのデジタル入力を備 します。 能と 9.9dB ノイズフィギュアを兼ね備えているこ えています。ディスエーブルした場合、デバイス LT3791 は、4 つ の 外 付 け ス イ ッ チ ン グ MOSFET を使用して、5W から 100W 超まで の連続した LED 電力を最大 98.5% の効率で供 給します。LED 電流精度が±6% なので一定の 照度を確保できる一方、出力電圧精度は±2% なのでコンバータを定電圧源として動作させる とにより、レシーバでのダイナミックレンジ性能 には標準 11µA の漏れ電流が流れます。復調器 が向上します。さらにこのデバイスは、12.6dBm はターンオン時間が 200ns でターンオフ時間が の P1dB を 達 成しており、 帯 域 内ブロッカが 800nsと高速なので、バースト・モード・レシー 0dBm のときのノイズ・フィギュアが 13.6dB で バに使用することができます。n あることと合わせて、干渉が存在する場合でも 堅牢なレシーバ性能が確保されます。 ことができます。LT3791 は、アプリケーション IF の低いレシーバ・アプリケーションで使用する の必要に応じて、アナログ調光と PWM 調光の 場合の柔軟性を高めるため、LTC5584 は I/Q いずれかを使用します。さらに、スイッチング周 振幅と位相の不整合が非常に小さくなっていま 波数は 200kHz∼700kHz の範囲内で設定する す。振幅の不整合は標準で 0.02dB、位相の誤 ことも、外部クロックに同期させることもできま 差は標準で 0.25 度であり、どちらも 450MHz す。その他に、出力切断、入力電流および出力 で規定されています。この組み合わせにより、レ 電流のモニタ、 LED の開放および短絡の検出、 シーバのイメージ除去比は 52dB になります。 組み込みのフォルト保護などの機能があります。 LT3791EFE は、熱特性が改善された 38 ピン TSSOP パッケージで供給されます。 2012年10月: LT Journal of Analog Innovation | 39 circuits.linear-tech.co.jp からのハイライト 出力電流制限値が 1A の -3.3V 負電圧コンバータ LT8611 は、小型、高効率、高速の同期整流式モノリシック降圧スイッチング・ レギュレータで、消費する静止電流はわずか 2.5 μ A です。必要な外付け部品 VIN 3.8V TO 38V 4.7µF VIN 0.1µF BST SW SYNC が最小限で済むように、上側と下側のパワー・スイッチは、必要なすべての回路 と一緒に内蔵されています。モニタ・ピンおよび制御ピンを備えた内蔵の電流 ISP LT8611 60.4k 4.7µF 検出アンプにより、高精度の入力 / 出力電流レギュレーションおよび電流制限が IMON ® 可能です。低リップルの Burst Mode 動作により、非常に小さい出力電流まで TR/SS 0.1µF LTspice IV 1µF 10pF PG INTVCC circuits.linear-tech.co.jp/585 1µF ISN BIAS ICTRL 高い効率が可能であると同時に、出力リップルを 10mVP–P 未満に維持します。 circuits.linear-tech.co.jp/585 0.1µF 4.7µH EN/UV RT PGND GND 60.4k 1M FB 412k 47µF VOUT –3.3V 1A 0.05Ω f = 700kHz C/10 終端検出機能を備えた 2A、4 セル・リチウムイオン・バッテリ・チャージャ LTM8062/LTM8062A は、入力電圧 32V、出力電流 2A の完全な µModule パワー・トラッキング・バッテリ・チャージャです。LTM8062/ LTM8062A は 定電流 / 定電圧充電特性を備え、最大 2A の充電電流を供給し、3.3V のフロー ト電圧帰還リファレンスを採用しているので、LTM8062 では最大 14.4V まで、 LTM8062A では最大 18.8V までの任意のバッテリ・フロート電圧を抵抗分割 VIN 22V TO 32VDC LTM8062A VINA 4.7µF 器で設定できます。 circuits.linear-tech.co.jp/584 BAT VIN VINREG CHRG RUN FAULT TMR ADJ NTC BIAS GND LTspice IV + (OPTIONAL ELECTROLYTIC CAPACITOR) 0.47µF 3.3µH 1.24M 4-CELL Li-Ion (4 × 4.1V) BATTERY PACK 312k circuits.linear-tech.co.jp/584 EXTERNAL 3.3V 4.3V∼42V 入力、3.3V/5A 出力の降圧コンバータ LT3976 は、40V までの広い入力電圧範囲で使用できる可変周波数モノリシッ ク降圧スイッチング・レギュレータです。低静止電流の設計により、無負荷での 安定化動作時に消費する電源電流はわずか 3.3 μ A に過ぎません。低リップ VIN 4.3V TO 42V OFF ON VIN BOOST PG ルの Burst Mode 動作により、標準的なアプリケーションでは出力リップルを 15mV 未満に保ちつつ、低出力電流で高効率を維持します。 circuits.linear-tech.co.jp/583 EN 10µF SW SS LTspice IV circuits.linear-tech.co.jp/583 10nF PDS540 LT3976 RT SYNC 130k 2Ω 470pF OUT FB GND 1M 10pF 576k VOUT 3.3V 5A 47µF 2 f = 400kHz L、LT、LTC、LTM、Linear Technology、Linear のロゴ、LTspice、Burst Mode、Dust Networks、PolyPhase および µModule はリニアテクノロジー社の登録商標です。Eterna、Hot Swap、LTpowerPlay、LTPoE++ および SmartMesh はリニアテクノロジー社の商標です。 その他すべての商標の所有権は、それぞれの所有者に帰属します。 © 2012 Linear Technology Corporation/Printed in Japan/57K リニアテクノロジー株式会社 本 社 〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-6 紀尾井町パークビル8F TEL. 03(5226)7291 FAX. 03(5226)0268 大 阪 支 社 〒550-0011 大阪市西区阿波座1-6-13 カーニープレイス本町6F TEL. 06(6533)5880 FAX. 06(6543)2588 名古屋支社 〒460-0002 名古屋市中区丸の内3-20-22 桜通大津KTビル7F TEL. 052(955)0056 FAX. 052(955)0058 www.linear-tech.co.jp