LT Journal of Analog Innovation 第23期第3号 - 2013年10月

2013 年 10 月
こ の 号 の 内 容
超低静止電流(1.3µA)の
15V 昇降圧コンバータ 15
1 つのインダクタで正の入力電圧
を負の出力電圧に変換する反転
型 DC/DC コントローラ 20
第 23 期第 3 号
実装が容易で性能が保証される、
240MHz での OIP3 が
47dBm/50dBm の RF/IF アンプ
Greg Fung
低照度での太陽電池チャージャ
効率の向上 24
AC24V および AC12V の
照明装置でハロゲン球を
LED に置き換え 28
スマートフォン、テレビ、 GPS、Wi-Fi を介して伝送されるデータ量に対する需
要は増大する一方なので、通信インフラの限られた帯域幅はほぼ容量いっぱい
になっています。この需要の増加に応えるため、通信機器の設計者は、増える
一方のデータを限られた帯域幅に押し込むシステムを開発しますが、データレー
トの改善には代償が伴います。送信と受信のためのシグナル・チェーンにこれ
までよりも高い忠実度が必要になってくるのです。
アンプに関して言えば、元の信号を劣化させずに信号を忠実
に再生するには低いノイズと高い直線性が必要です。信号の
電力が小さいときは、不要なノイズのレベルを十分に低くして、
目的の信号をノイズフロアより高くする必要があります。信号レ
ベルが高いときは、アンプは不要な高調波と相互変調積によっ
て目的の信号がマスキングされないようにする必要がありま
す。LTC®6431-15 および LTC6430-15 は、これらの二つの
目標をともに達成しています。
LTC6431-15 および LTC6430-15 は、非常に高い OIP3(直
線性)と非常に低いノイズ特性を備えた 2 つの固定利得アンプ
です。LTC6431-15 が 50W 負荷を直接駆動できるシングルエ
ンドの無線周波数(RF)/ 中間周波数(IF)利得ブロックである
のに対して、LTC6430-15 はより大電力で線形帯域幅がさらに
広い RF/IF 差動利得ブロックです。これらの利得ブロックは最
高水準の性能と使いやすさを兼ね備えています。バイアス、イ
ンピーダンス整合、温度補償、および安定性をデバイス内部で
処理することで、実装の難しさを解消しています。
LT®3795 LEDドライバは LED のちらつきを発生させずに EMI のピーク値を低減します。12 ページを参照。
www.linear-tech.co.jp
(4 ページへ続く)
リニアテクノロジーの
ニュース
この号の内容
COVER STORY
実装が容易で性能が保証される、240MHz での
OIP3 が 47dBm/50dBm の RF/IF アンプ
Greg Fung
自動車用および産業用製品によるエレクトロニクス新時代
私たちは今、自動車用および産業用製品におけるエレクトロニクス新時代の真っただ中にい
ます。これは発行されたばかりの Linear Technology 2013 Annual Profile(リニアテクノロ
1
家内工業の時代から始まり、それまで労働者が行っていた多くの作業が機械化された産業革
DESIGN FEATURES
ちらつきは増やさずに EMI を低減する、
スペクトラム拡散周波数変調回路を内蔵した
LEDドライバ
Keith Szolusha
マイクロパワー・アプリケーションおよび
「モノのインターネット」に特化した 1.3µA
超低静止電流の 15V 昇降圧コンバータ
Dave Salerno
1 つのインダクタで正の入力電圧を負の出力
電圧に変換する反転型 DC/DC コントローラ
David Burgoon
命、さらには現代のエレクトロニクス革命に至るまで、さまざまな潮流があったことがお分かり
でしょう。後者には、センサ測定結果の無線伝送、電動弁、デジタル X 線装置などのシステム
の実現や産業ロボット工学の普及が挙げられます。これに、多機能製造システムや、エネル
12
Gabino Alonso
低照度で高い効率を維持する太陽電池チャージャ
J. Celani
エレクトロニクス製品は、医療機器、ファクトリ・オートメーション、産業用プロセス制御、製
造装置、在庫管理システム、産業用ワイヤレス・センサー・ネットワーク、セキュリティ、計測
15
ところに広く導入されています。
この新しい潮流は、特に自動車システムにおいてはっきりと現れています。ブレーキ制動やス
20
テアリングなど、以前は純粋に機械的に行われていた操作は、今では電子制御で行うことが
できるようになりました。衝突防止、車線逸脱防止、駐車支援などの有用な安全機能は、多く
の車で実際に搭載されるようになっています。再生ブレーキによるエネルギーは、電池に蓄え
られ、その後の自動車の加速を助けるために使われています。
22
これらの新しい電子化された自動車システムや産業用システムは、格段に優れた性能、品質、
信頼性、および再現性が要求されます。また、信号の精度や電力効率が設計上の重要な要素
24
であることを考慮すると、これらの電子回路の大部分はアナログです。車体電子機器、排気シ
ステム、ナビゲーションおよびエンターテイメント・システム、バッテリ管理システム、LED 照
明、電子ブレーキ、電子ステアリング、エンジン管理など、さまざまな自動車システムでこれら
AC24V および AC12V の照明装置で環境保護
基準に適合:高力率、高効率コンバータで
駆動する LED でハロゲン球を置き換え
ギー効率の良いシステムに対する要求の増大を加えることができます。リニアテクノロジーの
機器、テストおよび測定、再生可能エネルギー生成など、さまざまな産業用システムのいたる
DESIGN IDEAS
LTspice IV の最新情報
ジー社 2013 年度会社概要)のテーマです。工業生産の歴史を調べれば、1800 年代初頭の
の新しい電子機器を見掛けます。電子回路コンテンツは、ハイブリッド車や完全な電気自動
Keith Szolusha
28
車の成長市場では特に重要です。
back page circuits
32
リニアテクノロジーでは、過去数年間にわたって数々の高性能アナログ製品を市場に投入し、
自動車および産業用において高まり続ける要求に応えてきました。リニアテクノロジーの製品
は、低消費電力かつ高電圧で動作することと、過酷な環境で完璧に性能を発揮することを目
的として設計されてきました。
2 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
リニアテクノロジーのニュース
Linear Technology 2013
Annual Profile(リニアテクノ
ロジー社 2013 年度会社概要)
では、自動車システムと産業用
システムでエレクトロニクスが
果たす役割の重要性に焦点を
当てています。
成長を続ける産業用機器市場と自動車市場に
会議およびイベント
影響を与えたリニアテクノロジーの技術革新の
「アナログ・グルとの集い」セミナー、会場:
一部を以下に紹介します。
東京コンファレンスセンター・品川、日程:
10 月 30 日̶リニアテクノロジーおよ
• ハイブリッド / 電気自動車用のバッテリ管理シ
び共催の日経エレクトロニクス社は、
ステム
今日のアナログ設計の課題について
• 電力使用量、電圧、シーケンシング、マージ
概要を説明します。講演者は、リニア
ニング、およびフォルト・ログ記録の制御とモ
テクノロジ ーの CTO で共 同 創 立 者
ニタを実現するパワーシステム・マネージメ
の Bob Dobkin、 副社長でパワー・
ント・ソリューション
マ ネ ー ジ メント 製 品 担 当 の Steve
• より高精度の製品テストを可能にする低消
Pietkiewicz、東京工業大学の松沢昭
費電力の超高精度 SAR(逐次比較レジスタ)
A/D コンバータ
• 従来のイーサネット・ケーブルを介して最大
90W の電力を供給できる Enhanced Power
over Ethernet(LTPoE++™ )ソリューション
• 複数の機能を 1 つのパッケージに統合した
µModule
® パワー・デバイス
• 低容量の電池からセンサー出力を送信し、過
酷な環境で動作するワイヤレス・センサー・
ネットワーク・ソリューション
総合すると、リニアテクノロジーは自動車シス
テムと産 業 用システムで拡 大しているアプリ
ケーションの問題解決を可能にする幅広い製
品を設計者の皆様にお届けしています。Linear
Technology 2013 Annual Profile を ダ ウ
ン ロ ード す る に は、www.linear-tech.co.jp/
docs/44130 にアクセスしてください。
教授、他の方々です。詳細については、
リニアテクノロジーの受賞
「ElectroniqueS Electron d Or Award」の最高の
電力およびエネルギー変換製品:LTC3300-1 マルチ
セル・バッテリ・バランサ̶LTC3300-1 により、容
量が不揃いなセルを使用した電気自動車(EV)
、
プラグイン・ハイブリッド EV、大規模エネルギー
貯蔵システムなどのアプリケーションがスタック
内で最低の容量をもつセルによって制限される
ことはなくなりました。
「Electronic Products China Top 10 Power
Award」: LTC3300-1 マルチセル・アクティブ・バッ
テリ・バランサ̶LTC3300-1 はパッシブ型バラ
ンサーのように電力を消費してバランスさせる
方法とは異なり、容量不整合のセルの充電状態
(SoC)をスタック内で均衡させるために隣接セ
ルとの間で電荷を効率よく移すことにより、バッ
テリの性能を向上させます。LTC3300-1 は、ス
タック全体に電荷を再分配することにより、最も
弱いセルによる損失容量を補償して、より高速
ac.nikkeibp.co.jp/ne/ag1030/ をご覧ください。
計測展 2013Tokyo、会場:東京ビッグサイト、日程:
11 月 6 日∼8 日̶リニアテクノロジーの高速 A/D
コンバータ、パワー・マネージメント製品、およ
びワイヤレス・センサー・ネットワーク製品を紹
介します。詳細については、 www.linear-tech.
jp/keisoku2013 をご覧ください。
Energy Harvesting & Storage Conference、会
場:Santa Clara Convention Center、開催地:カ
リフォルニア州サンタクララ、日程:11 月 20 日∼21 日、
小間番号 S7-S8̶リニアテクノロジーは自社の環
境発電(エナジーハーベスト)製品およびワイヤ
レス・センサー・ネットワーク製品を展示します。
講演者は、環境発電によるバッテリ充電につい
ては Dave Loconto、ワイヤレス・センサー・ネッ
トワークについては Ross Yu です。詳細につい
ては、www.idtechex.com/energy-harvesting-
usa/eh.asp をご覧ください。n
の充電を可能にし、バッテリ・スタックの稼働時
間と有効寿命を延長します。
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 3
LTC6431-15 は 240MHz で標準 47dBm の OIP3 特性を誇ります。相
互変調積(IM3)が目的の信号を妨害しないように、実質的には IM3 を
ノイズフロアより低いレベルに抑えています。
(LTC6430/1-15、1 ページからの続き)
通信システムの感度が制限されます。通信シス
OUTPUT
単一トーンを入力する
と、出力に高調波が発
生します。
テム内のノイズ特性はノイズフィギュア(NF)で
評価しますが、これは出力での信号対ノイズの
NONLINEAR
AMP
FUNDAMENTAL
SOURCE
LOAD
x2
y = a1x + a2
FREQUENCY
AMPLITUDE
入力信号レベルが低いときは、ノイズによって
INPUT
図 1.非線形デバイスに
AMPLITUDE
低入力信号対応の低ノイズフィギュア
x3
+ a3
FUNDAMENTAL
2ND ORDER
3RD ORDER
FREQUENCY
電力比を入力での信号対ノイズの電力比で割っ
た値をデシベルで表したものです。アンプの入
OUTPUT
2 つのトーンを入力する
どの程度信号に加えるかを示す指標です。アン
と、出力に相互変調積が
プの NF は 0dB であるのが理想ですが、実際の
発生します。
NONLINEAR
AMP
MULTIPLE
TONES
SOURCE
アンプでは必ずノイズが加わるので、ノイズに
y = a1x + a2x2 + a3x3
FREQUENCY
よる性能低下を最小限に抑えることが目標にな
LOAD
AMPLITUDE
幅されます。NF はアンプ自体が不要なノイズを
INPUT
図 2.非線形デバイスに
AMPLITUDE
力には常にノイズがあり、目的の信号とともに増
UNDESIRABLE
IM3 PRODUCTS
2ND ORDER
FREQUENCY
ります。標準的な IF アンプのノイズフィギュアは
3dB∼12dB で す。LTC6431-15 と LTC643015が示すNFはどちらも240MHzで3.3dBです。
たとえば、非線形アンプに単一のトーン(単音)
注入すると、結果は目的の 2 つのトーンと数多く
を注入すると、得られる結果は目的のトーンとそ
の不要なトーンのはるかに複雑な混合信号とな
の高調波となります。通常、これらの高調波は目
り、これには 2 つのトーンの高調波、2 つの入力
直線性は、特定の周波数領域で目的の信号を
的のトーンと周波数が大きく異なるのでフィルタ
トーンの和と差、およびその他の相互変調積が
不要な信号から切り離す能力を制限します。入
で除去できます。非線形アンプに 2 つのトーンを
含まれます。
優れた OIP3 による IM 積の抑制
力信号レベルが高いと、目的の信号はノイズフ
ロアよりはるかに高いレベルまで上昇するので、
ノイズはそれほど問題ではありませんが、アンプ
80
の直線性は次第に重要になります。
60
10
OIP3 IN dBm
0
20
–10
DESIRED TONE
0
–20
–40
–60
–80
IM3 PRODUCT
–40
–50
–60
–80
–120
図 3.出力 3 次インターセプト・ポイント
(OIP3)
–30
–70
–100
–140
10 20 30
–30 –20 –10 0
INPUT POWER (dBm)
DESIRED SIGNAL
–20
AMPLITUDE (dB)
OUTPUT POWER (dBm)
40
–90
40
50
–100
200 210 220 230 240 250 260 270 280
FREQUENCY (MHz)
図 4.LTC6431-15 は 240MHz で 47dBm の OIP3 特性を誇
ります。2トーン信号の IM3 積が目的の信号を妨害しないよう
に、実質的には IM3 積をノイズフロアより低いレベルに抑えて
います。
4 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
設計特集
シングルエンドの LTC6431-15 は、フィルタの損失を補う IF アンプとして優れており、
バラン・トランスと組み合わせて使用した場合は A/D コンバータ・ドライバとして優れ
ています。LTC6431-15 は帯域幅が広いので、CATV 帯域全体をカバーできます。
Z1
Z2
Z1
INPUT
MATCH
図 5.入力および出力への整合回路網の追加
で、 OIP3 は非常に良好です。妨害信号または
Z2
隣接チャネルが近い周波数にある場合、IM3 積
OUTPUT
MATCH
INPUT
Z = 50Ω
OUTPUT
Z = 50Ω
TRADITIONAL
RF AMPLIFIER
f = 240MHz
の最小化は特に重要です。図 3 は、 IM3 積が目
的のトーンの 3 倍速く増加することを示していま
す。このため、アンプが目的の信号を歪ませず
に処理できる許容出力電力、したがって入力電
力は制限されます。
相互変調(IM3)積(2f1 – f2 および 2f2 – f1)は、
アンプの直線性は、ほとんどの場合、 3 次出力
これらの不要トーンの一部であり、特に厄介で
インターセプト・ポイント(OIP3)によって特
す。IM3 積は目的の信号の周波数の非常に近く
性 が 評 価されます。OIP3 は IM3 積 の 電 力 が
に存在することがあるので、フィルタで除去する
基本波の電力と交差する仮定の点(図 3)です。
ことはほとんど不可能です。
LTC6431-15 が示す IM3 積は非常に小さいの
ノイズ(NF で評価)は入力信号の振幅が小さい
ときのアンプの感度を制限するのに対して、直
線性(OIP3 で評価)は入力信号の振幅が大きい
ときの感度を制限します。これら 2 つの測定項目
(NF および OIP3)を総合して、特定の信号に
対するアンプの有益なダイナミックレンジを定義
します。
図 6.シングルエンドの IF アンプ
5V
VCC = 5V
1000pF
RF
CHOKE,
560nH
1000pF
LTC6431-15
RSOURCE
50Ω
RLOAD
50Ω
20
54
15
50
10
MAGNITUDE (dB)
OIP3 (dBm)
46
42
38
34
0
–5
–10
–15
–20
30
26
S PARAMETER
S11
S21
S12
S22
5
–25
200
0
400
600
FREQUENCY (MHz)
800
LTC6431-15 の OIP3 と周波数
1000
–30
0
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8
FREQUENCY (GHz)
2
LTC6431-15 の S パラメータと周波数
図 7.LTC6431-15 の 100MHz∼1700MHzシングルエンド評価回路と性能
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 5
LTC6430-15 は、高速、高分解能 A/D コンバータの A/D コンバータ・ドライバとして
優れています。これらのアプリケーションでの課題は、バッファのない A/D コンバータ
の入力を要求された入力電圧レベルまで駆動する一方で、 A/D コンバータの信号対
ノイズ比(SNR)
とスプリアス・フリー・ダイナミックレンジ(SFDR)を維持することです。
図 8.広帯域差動 14 ビット A/D コンバータ・
高い直線性により最も困難な通信上の問題を
VCM
5V
ドライバの簡略回路図
560nH
0402AF
60pF
GUANELLA
BALUN
1:1
1nF
VCC = 5V
150Ω
解決
49.9Ω
LTC6431-15 は 240MHz で 標 準 47dBm の
OIP3 特性を誇ります。IM3 積が目的の信号を
1nF
妨害しないように、実質的には IM3 積をノイズ
•
•
フロアより低いレベルに抑えています(図 4)。さ
350Ω
100nH
0402CS
LTC6430-15
LTC2158
ら に は、LTC6430-15 は 240MHz で 50dBm
というOIP3 特性を備えています。これら 2 つの
アンプは、 3.3dB の NFと組み合わされることに
よって、どちらも非常に広いダイナミックレンジ
200ps
を示します。大小いずれの信号レベルでも高い
忠実度を維持することにより、高データレートと
いう課題に対応しているのです。
実装が容易
RF/IF 利得段を実装するのは、これまで必ずし
も容易ではありませんでした。昔から、設計者は
まず回路のバイアスを検討する必要がありまし
た。LTC6431-15 の内部バイアス回路で必要
な電流は 5V 単電源でわずか 90mA であるのに
対して、LTC6430-15 に流れる電流は 5V 単電
源で 160mA です。
内部バイアス回路は、直線性の最大値に合わせ
図 9.LTC6430-15ドライバと
てデバイスの動作点を最適化します。温度補償
LTC2158-14、デュアル 14 ビット
A/D コンバータの複合評価回路
回路は、環境の変化に関わらず性能を維持し、
高温での電流の暴走を防ぎます。これらのデバ
イスには電圧レギュレータが内蔵されており、電
源電圧の変動による性能の変化が最小限に抑え
1000pF
60pF
0.1µF
1000pF
1:1
BALUN
GND
DNC
T_DIODE
LTC6430-15
DNC
を最小限に抑えるため、入力と出力でインピー
–OUT
1000pF
560nH
348Ω
BALUN = MaCom 1:1 TRANSFORMER MABA-007159
6 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
1000pF
0.1µF
VCC = 5V
VCM
ダンスも整合している必要があります。これは
LTC2158-14
従来から時間のかかる繰り返し作業です。通
AIN+
AIN–
DNC
DNC
–IN
GND
DNC
60pF
1000pF
RF/IF アンプは、電力の伝送を最大にして反射
1000pF
120nH
0402CS
DNC
DNC
DNC
–IN
0.1µF
49.9Ω
+OUT
DNC
VCC
100Ω
DIFFERENTIAL
560nH
DNC
DNC
VCC
DNC
DNC
GND
+IN
+IN
348Ω
GND
49.9Ω
られます。
GND
常、設計者は入力と出力に回路網を追加して、
アンプのインピーダンスをシステムのインピー
ダンス(通常 50Ω)に整合させる必要があります
設計特集
図 10.LTC6430-15 と
LTC2158 のドライバ /A/D
コンバータ複合ボードの
500MHz 単一トーン SFDR
および SNR(SNR = 61.5dB、
SFDR = 75.7dB)
(図 5)。これらの整合回路網を追加した結果、
今度はアンプの NFと OIP3 が変化します。妥当
なインピーダンス整合を実現するため、多くの
場合は NFと OIP3 が悪化することになります。
LTC6431-15 と LTC6430-15 の 2 つのアンプ
は、入力と出力のインピーダンスを 20MHz∼
1700MHz の帯域で内部整合されているので、
設計が簡単になると同時に NF および OIP3 が
維持されます。シングルエンドの LTC6431-15
は入力と出力が50Wに整合しているのに対して、
図 11.LTC6430-15 と
LTC2158 のドライバ /A/D
コンバータ複合ボードの IM3
積の 500MHz 2トーン測定
LTC6430-15 は入力と出力で 100Wの差動イン
(低い方の IM3 = –101dBfs、
ピーダンスに内部整合しています。これにより、
高い方の IM3 = –102dBfs)
これらのデバイスは整合素子を追加することな
く、さまざまなアプリケーションに容易に実装で
きます。
保証された安定性と性能
LTC6431-15 および LTC6430-15 は、当社の
アプリケーション回路に実装した場合には、無
条件で安定しています。LTC6431-15のAグレー
ド・バージョンは、240MHz での OIP3 特性を
個別に測定して、最小で 44dBm の OIP3 を保証
しています。同様に、LTC6430-15 の A グレー
ド・バージョンは、240MHz での OIP3 特性を
個別に測定して、最小で 47dBm の OIP3 を保証
表 1.A/D コンバータ・ドライバ評価回路の全周波数での結果の要約
しています。
LTC6430/LT2158 複合回路
LT2158A/D コンバータ単独
新しい種類の RF アンプ
周波数(MHz)
1M
SFDR
SNR
1M
SFDR
SNR
リニアテクノロジーには、ノイズと歪みを最小限
250
-87
73.8
63.1
-95
78
66.5
に抑えて低周波信号を処理する優れたオペアン
300
-86
77.5
62.8
-94
78
65.5
400
-87
75.0
62.3
-92
78
64.5
500
-101
75.7
61.5
-84
70
63.0
きませんが、最大 2GHz までの信号を増幅する
600
-88
72.0
60.7
-88
62.5
62.5
ことができます。オペアンプは、通常、200MHz
700
-92
67.5
60.0
-86
62.0
61.0
800
-94
84.0
59.5
-85
61.5
60.0
900
-82
73.0
58.6
-80
61.0
59.0
1000
-85
61.4
58.1
-83
60.5
58.0
プ方式のアンプを生み出してきた長い歴史があ
ります。LTC6431-15 および LTC6430-15 は、
オペアンプのように DC 信号を増幅することはで
を超える周波数で動作することは出来ません。
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 7
LTC6430-15 は、適切な 2:1 バラン・トランス対を使用して、低ノイズ、低歪みで広帯域の
増幅を実現します。この平衡構成では、アンプは入力と出力で 50Ω に整合しています。平衡
構成には、マルチオクターブの広帯域アプリケーションでは非常に重要な 2 次の歪みを抑圧
できるという利点もあります。
BALUN_A = ADT2-1T FOR 50MHz TO 300MHz
BALUN_A = ADT2-1P FOR 300MHz TO 400MHz
BALUN_A = ADTL2-18 FOR 400MHz TO 1300MHz
ALL ARE MINI-CIRCUITS CD542 FOOTPRINT
R2
350Ω
DNC
DNC
–OUT
DNC
GND
DNC
–IN
C2
1000pF
C5
1000pF
ます。したがって、RF アンプ・ソリューションで
設定する必要があります。電圧帰還オペアンプ
は全体的なノイズおよび直線性が良好になりま
の利得を高くすると、その動作帯域幅はますま
す。LTC6430-15 および LTC6431-15 の 2 つ
す狭くなります。これに対して、当社の RF 方式
のアンプは、DC 結合性能を必要としない AC
アンプの利得は 15dB の固定電力利得を持って
信号アプリケーションの優れた解決策です。
PORT
OUTPUT
RFOUT
50Ω, SMA
L2
560nH
C6
0.1µF
VCC = 5V
OPTIONAL STABILITY
NETWORK
オペアンプでは、通常は負帰還をかけて利得を
います。RF ソリューションには利得調整を行う
• •
100Ω
DIFFERENTIAL
C4
1000pF
BALUN_A
DNC
DNC
C3
1000pF
T2
2:1
T_DIODE
LTC6430-15
DNC
C8
60pF
DNC
GND
DNC
BALUN_A
VCC
+OUT
DNC
DNC
100Ω
DIFFERENTIAL
RFIN
50Ω, SMA
L1
560nH
DNC
VCC
T1
1:2
DNC
R1
350Ω
+IN
PORT
INPUT
C7
60pF
GND
C1
1000pF
GND
図 12.入力 / 出力が 50Ω の平衡アンプ
LTC6430-15 の差動アプリケーション
LTC6430-15 の入力および出力を差動で構成
した回路は、さまざまなシステム・アプリケーショ
ンに応用することができます。以下の例では、
LTC6430-15 の直線性、低ノイズで広帯域の
性能が実証されています。
機能はありませんが、使用できる帯域幅はオペ
LTC6431-15 によるシングルエンド 50Ωアンプ
アンプが使用可能な帯域幅を大幅に超えてい
シングルエンドの LTC6431-15 は、多くのアプ
最初の例では、その差動出力が A/D コンバー
ます。
リケーションにとって理想的な解決策です。フィ
タの差動入力にぴったりとつながっています。
ルタの損失を補うIF アンプとして優れており、バ
LTC6430-15 は、内部で入力 / 出力が 100W の
オペアンプ は 高 インピ ーダンス の 負 荷 を 駆
動 する 目 的 で 設 計 され て い る の に 対して、
LTC6430/31 アンプは 50Ω 負荷を駆動可能で
あり、広い周波数範囲(20MHz∼1700MHz)
にわたって実際の電力を供給できます。オペア
ラン・トランスと組み合わせて使用した場合は
差動インピーダンスに整合しています。100W
A/D コンバータ・ドライバとして優れています。
は、高速 A/D コンバータを駆動するのに都合の
LTC6431-15 は帯域幅が広いので、 CATV 帯
良いインピーダンスです。次に、平衡構成で 2:1
域全体をカバーできます。
のバラン・トランスを使用した場合、LTC6430-
ンプとは異なり、この RF 重視の設計ではイン
図 6 にシングルエンド IF アンプを示し、図 7 に
ピーダンス整合を内部で行うので、入力にも出
LTC6431-15 の 100MHz∼1700MHz 用の評
力にも終端抵抗が不要です。入力に終端抵抗を
価ボードと性能を示します。
取り付けるとノイズが増加し、出力に終端抵抗
を取り付けると負荷に供給される電力が減衰し
8 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
15 は 50W に対して低歪みで広帯域の増幅を実
現します。最後に、1.33:1 のバラン・トランスを
使用した場合、 LTC6430-15 は 75W のシステ
ムに整合して、CATV の全帯域で広帯域増幅を
実現できます。
設計特集
ひとつのバラン・トランスで LTC6430-15 の全動作帯域をカバーできるものは存在しません。リニアテクノ
ロジーは、このアンプが目指す帯域幅をカバーする評価回路をいくつか用意しています。これらの評価回路
では、ベンチ特性評価を簡単にするため、入力と出力を 50Ω に変換しているので、LTC6430-15 をバラン・
トランスなしの純粋な差動アプリケーションで使用した場合の性能を示しています。
図 13.図 12 に示す平衡アンプの評価回路:50MHz∼300MHz(ADT2-1T バラン)
54
15
10
50
MAGNITUDE (dB)
OIP3 (dBm)
46
42
38
34
0
–5
–10
–15
–20
30
26
S PARAMETER
S11
S21
S12
S22
5
–25
0
100
200
300
FREQUENCY (MHz)
400
–30
500
0
100
200 300 400 500
FREQUENCY (MHz)
600
700
図 14.図 12 に示す平衡アンプの評価回路:300MHz∼1100MHz(ADTL2 バラン)
20
50
15
46
10
MAGNITUDE (dB)
OIP3 (dBm)
42
38
34
0
–5
–10
–15
–20
30
26
S PARAMETER
S11
S21
S12
S22
5
–25
0
200
400
600
FREQUENCY (MHz)
800
–30
1000
0
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8
FREQUENCY (GHz)
2
図 15.図 12 に示す平衡アンプの評価回路:200MHz∼1500MHz(TCM2-43X バラン)
50
15
10
46
5
MAGNITUDE (dB)
OIP3 (dBm)
42
38
34
–5
–10
–15
–20
30
26
S PARAMETER
S11
S21
S12
S22
0
–25
0
0.25
1
0.5
0.75
FREQUENCY (GHz)
1.25
1.5
–30
0
100
200 300 400 500
FREQUENCY (MHz)
600
700
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 9
ケーブルテレビはアンプに対して特有の課題を与えます。チャネル数が多いので 3 次の直線性に
優れていることが要求され、多オクターブ環境であるため、2 次成分も抑圧する必要があります。
LTC6430-15 は、1 対の 1.33:1 バラン・トランスを使用してデバイス固有の 100Ω 差動インピー
ダンスを 75Ω に変換することで、これらの課題を克服しています。
A/D コンバータ・ドライバ
C1
0.047µF
DNC
ことです。図 9 に示す評価回路での性能結果で
ト、 310Msps のデュアル A/D コンバータ)をそ
の全入力帯域幅にわたって駆動し、SFDR およ
MINI-CIRCUITS 1:1.33
•
100Ω
DIFFERENTIAL
DNC
VCC
DNC
DNC
DNC
GND
DNC
–OUT
示すように、LTC6430-15 は LTC2158(14 ビッ
BALUN_A = TC1.33-282+
FOR 50MHz TO 1000MHz
T2
1.33:1
C4
0.047µF
C5
1000pF
•
BALUN_A
DNC
C2
0.047µF
C3
0.047µF
T_DIODE
LTC6430-15
DNC
BALUN_A
DNC
+IN
GND
DNC
バータの信号対ノイズ比(SNR)とスプリアス・
フリー・ダイナミックレンジ(SFDR)を維持する
100Ω
DIFFERENTIAL
RFIN
75Ω,
CONNECTOR
+OUT
DNC
DNC
力電圧レベルまで駆動すると同時に、A/D コン
L1
560nH
DNC
VCC
のない A/D コンバータの入力を要求された入
T1
1:1.33
GND
これらのアプリケーションでの課題は、バッファ
PORT
INPUT
–IN
タの ADCドライバとして優れています(図 8)。
GND
LTC6430-15 は、高速、高分解能 A/D コンバー
PORT
OUTPUT
RFOUT
75Ω,
CONNECTOR
L2
560nH
C6
0.1µF
VCC = 5V
び SNR の低下を非常に小さく抑えることができ
ます(図 10)。
図 16.75Ω 入力および 75Ω 出力の 50MHz∼1000MHz CATV プッシュプル・アンプ
表 1 は、この高速、 高分解能 A/D コンバータ
の SNR および SFDR の低下が最小限であるこ
とを示しています。LTC6430-15 の高い直線性
のは存在しません。リニアテクノロジーは、この
(図 10 および 11)と低ノイズにより、設計者は
アンプが目指す帯域幅をカバーする評価回路
A/D コンバータ入力でのフィルタリングを最小
をいくつか用意しています(図 13∼15)。これら
限に抑えて A/D コンバータを駆動することがで
の評価回路では、ベンチ特性評価を簡単にする
きます。すべての測定は整合回路網の調整をす
ため、入力と出力を 50Ω に変換しているので、
ることなく、 1 つのアプリケーション回路で行わ
LTC6430-15 をバラン・トランスなしの純粋な
れています。このことは、 LTC6430-15 の広い
差動アプリケーションで使用した場合の性能を
帯域幅と直線性性能を実証しています。
示しています。
50Ω 負荷を駆動する平衡増幅器
その結果により、目的の周波数における正しい
LTC6430-15 は、適切な 2:1 バラン・トランス
対を使用して、低ノイズ、低歪みで広帯域の増
幅を実現します(図 12)。この平衡構成では、ア
ンプは入力と出力で 50Ω に整合しています。平
衡構成には、マルチオクターブの広帯域アプリ
ケーションでは非常に重要な 2 次の歪みを抑圧
バラン・トランスを選ぶことの重要性が分かりま
す。バラン・トランスは帯域幅が限られているの
で、 LTC6430-15 の性能を制限します。まとめ
ますと、これら 3 つの平衡回路は LTC6430-15
で得ることのできる直線性および広い帯域幅を
示しています。
CATV アプリケーション
CATV アプリケーションは、LTC6430-15 の汎
用性を示す最後の例です(図 16)。ケーブルテ
レビはアンプに対して特有の課題を与えます。
多くの場合、取り扱う周波数帯域は 4 オクター
ブを超えるので、アンプは 75Ω の環境に対して
平坦な利得とインピーダンス整合が必要です。
チャネル数が多いので 3 次の直線性に優れて
いることが要求され、多オクターブ環境である
ため、 2 次高調波成分も抑圧する必要がありま
す。LTC6430-15 は、1 対の 1.33:1 バラン・ト
ランスを使用してデバイス固有の 100Ω 差動イ
ンピーダンスを 75Ω に変換することで、これらの
課題を克服しています(図 17)。
2 次および 3 次の歪みが小さく低ノイズで利得
できるという利点もあります。
が平坦であることから、この回路は CATV の要
残 念 な がら、 ひとつ の バ ラン・トラン スで
わずか 800mW で済みます。
LTC6430-15 の全動作帯域をカバーできるも
10 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
求に対応できる上に、 5V 電源での消費電力は
設計特集
他 の RF 利 得 ブ ロックが GaAs トラン ジスタを 使 用して 製 造 さ れ て いる のと比 較して、
LTC6431-15 および LTC6430-15 は高性能 SiGe BiCMOS プロセスを使用して製造されてい
ます。シリコンベースのプロセスを使用すると、同程度の GaAs プロセスよりも再現性が向上
します。BiCMOS プロセスを採用することにより、リニアテクノロジーでは歪み消去、バイアス
制御、および電圧レギュレータの各機能をデバイスに組み込むことができます。
シリコンベースのプロセスによる再現性の向上
他の RF 利得ブロックが GaAsトランジスタを使
用して製造されているのと比較して、LTC6431-
15 お よ び LTC6430-15 は 高 性 能 SiGe
BiCMOS プロセスを使用して製造されていま
す。シリコンベースのプロセスを使用すると、同
程度の GaAs プロセスよりも再現性が向上しま
す。BiCMOS プロセスを採用することにより、リ
ニアテクノロジーでは歪み消去、バイアス制御、
および電圧レギュレータの各機能をデバイスに
組み込むことができます。
図 17.LTC6430-15 50MHz∼
まとめ
1000MHz CATV 評価回路および
性能結果
最 新 の 通 信 標 準 の 要 求 を 満 たし、 RF/IF 設
計 を 簡 略 化 するた め、 LTC6431-15 お よ び
50
MAGNITUDE (dB)
OIP3 (dBm)
38
34
0
–5
い条件で性能を保証されています。n
–10
–15
–20
30
–25
0
0
200
400
600
FREQUENCY (MHz)
800
–30
1000
–20
NOISE FIGURE (dB)
–40
–50
–60
–70
–80
–90
HD2 AVG
HD3 AVG
0
200
400
600
FREQUENCY (MHz)
0.25
1
0.5
0.75
FREQUENCY (GHz)
1.25
1.5
5
–30
–100
0
6
VCC = 5V
T = 25°C
POUT = 8dBm/TONE
–10
HD2 & HD3 (dBc)
います。これらは使いやすく汎用性があり、幅広
S PARAMETER
S11
S21
S12
S22
5
42
–110
最高のノイズ性能および直線性性能を達成して
10
46
26
LTC6430-15 は、最小の DC 電力損失でクラス
15
800
1000
4
3
2
VCC = 5V
T = 25°C
INCLUDES BALUN LOSS
1
0
0
200
400
600
FREQUENCY (MHz)
800
1000
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 11
ちらつきは増やさずに EMI を低減する、スペクトラム
拡散周波数変調回路を内蔵した LEDドライバ
Keith Szolusha
自動車用 LEDドライバは、小型、高効率でちらつきのない PWM 調光をサポートすることが必要です。AM
ラジオ帯域とその周辺で大きな伝導性 EMI が発生しない必要があります。残念ながら、低 EMI は大電力の
スイッチ・モード電源本来の性質ではありません。スイッチング周波数が固定なので、電源の基本動作周波
数とその高調波など、いくつかの周波数で大きな EMI レベルが発生します。何らかの信号成分が AM 帯域
内に入り込む可能性があります。
EMI のピークを最小限に抑える 1 つの方法は、
ペクトラム拡散スイッチングの望ましい効果は、
LEDドライバ SMPS には、他にも必要条件があ
スイッチ・モード電源(SMPS)の動作周波数が
SMPS の基本動作周波数および高調波で生じる
ります。それは、周波数の拡散を PWM 調光(輝
一定範囲の値をカバーできるようにすること、す
EMI ピークを押し下げて、EMI のエネルギーを
度制御)周波数とも同期させて LED のちらつき
なわちスペクトラム拡散スイッチングです。ス
一定範囲の周波数に拡散することです。
が発生しないようにすることです。
この目的を達成するため、 LT3795 は独自のス
ペクトラム拡散ランプ信号を発生して、特許出願
VIN
8V TO 60V
100V TRANSIENT
L2
4.7µH
2.2µF
100V
OPTIONAL
EMI FILTER
RINSNS
12mΩ
5A MAXIMUM
CIN2
4.7µF
×2
100V
L1
22µH
1M
115k EN/UVLO V
IN
IVINP
IVINN
GATE
12.4k
10Ω
性能 PWM 調光方式を採用した大電力 LEDド
FB
10k
ライバですが、内部スペクトラム拡散ランプ信号
ISP
RLED
620mΩ
CTRL1
SS
ISN
0.1µF
OPENLED
OPENLED
SHORTLED
SHORTLED
100k
ISMON
INTVCC
D2
LED
CURRENT
REPORTING
INTVCC
RC
4.7k
CC
10nF
RT
10nF
RAMP
RT
17.4k
450kHz–300kHz
または降圧モードの LEDドライバとして構成で
80V LED
400mA
きます。100kHz∼1MHz のスイッチング周波
数範囲、開放 LED 保護、短絡保護を特徴として
タ、あるいは定電流の SLA バッテリやスーパー
キャパシタのチャージャとしても動作できます。
6.8nF
~1kHz
TRIANGLE
SPREAD
SPECTRUM
MODULATION
図 1.内蔵のスペクトラム拡散回路によりEMI を低減する 80V、400mA 自動車用 LEDドライバ
12 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
力が 0V∼110V の単一スイッチ・コントローラ
おり、電流制限機能を備えた定電圧レギュレー
IVINCOMP
VC
による EMI の低減という追加の機能を備えてい
ます。このデバイスは入力が 4.5V∼110V で出
IC で、昇圧モード、SEPIC モード、昇降圧モード、
PWM DIM
0.1µF
4.7µF
D1: DIODES INC PDS5100H
D2: VISHAY ES1B
L1: COOPER HC9-220-R
L2: WÜRTH 744071047 4.7µH
M1: RENESAS RJK1051DPB 100V
M2: VISHAY Si7113DN 100V
M2
TG
PWM
が PWM 信号と結合して目に見えるちらつきが
LT3795 は、LT3756/LT3796 ファミリと同じ高
GND
CTRL2
が最も高い場合でも、スペクトラム拡散周波数
大電力 LEDドライバ
RSNS
15mΩ
VREF
入力信号と揃えます。これにより、PWM 調光比
LED 内に生じる可能性を取り除きます。
M1 13.3k
SENSE
LT3795
100k
COUT
2.2µF
×4
100V
499k
OVLO
ANALOG
DIMMING
CONTROL
中の技術により、その信号を低周波 PWM 調光
D1
設計特集
100
100
90
90
80
70
CISPR25 CLASS 5
(AM RADIO BAND)
LT3795
SPREAD SPECTRUM
ENABLED
60
50
40
30
20
10
0
SPREAD SPECTRUM DISABLED
0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 1.5 1.7 1.9 2.1 2.3 2.5
FREQUENCY (MHz)
PEAK AMPLITUDE (dBµV)
PEAK AMPLITUDE (dBµV)
LT3795 は独自のスペクトラム拡散ランプ信号を発生して、特許出願中の技術により、その信号を低
周波 PWM 調光入力信号と揃えます。これにより、PWM 調光比が最も高い場合でも、スペクトラム
拡散周波数が PWM 信号と結合して目に見えるちらつきが LED 内に生じる可能性を取り除きます。
80
70
LT3795 LEDドライバの AM 帯域付近での伝
CISPR25 CLASS 5
(MW, AM)
(SW)
60
LT3795
SPREAD SPECTRUM
ENABLED
果を比較したものを図 2 に示します。通常(非ス
ペクトラム拡散)動作では、スイッチング周波数
(CB)
50
導性 EMI を、スペクトラム拡散をイネーブルし
た場合とディスエーブルした場合で測定し、結
とその高調波周波数でエネルギーのピークが高
40
くなっています。これらのピークがあると、設計
30
回路は、自動車など EMI の影響を受けやすいア
20
プリケーションでの厳しい EMI 要件を満たすこ
10
0
150kHz
SPREAD SPECTRUM DISABLED
30MHz
FREQUENCY
図 2.AM 帯域周辺での導電性 EMI のピークは、 LT3795 のス
図 3.LT3795 の 150kHz∼30MHz での伝導性 EMI のピーク
ペクトラム拡散周波数変調を使用した場合、3dBµV∼6dBµV
をスペクトラム・アナライザでスキャンした結果、広い周波数範
減少します。参考までに、 CISPR25 Class 5 の AM 帯域制限
囲にわたって EMI のピークが減少しています。
値を示します。
とができません。参考までに、CISPR 25 Class
5 の自動車用伝導性 EMI の制限値を図 2 に示し
ます。図 3 は、より広い周波数帯域でスペクトラ
ム拡散の効果を示しています。
300kHz∼580kHz の間には制限がないので、
ここは基本周波数を設定するのに最高の範囲
です。このアプリケーションでは、基本周波数を
スペクトラム拡散変調機能と短絡保護機能を備
スペクトラム拡散を実装するのが困難になって
えた 92% 高効率の 80V、400mA、300kHz∼
います。スペクトラム拡散を使えない場合、設計
ペクトラム拡散は RAMP ピンを接地するだけで
450kHz 自動車用 LED ヘッドランプ・ドライバ
者は場所をとる EMI フィルタを付けるか、効率
ディスエーブルできます。
を図 1 に示します。
を犠牲にしてスイッチング・エッジをなまらせる
内蔵のスペクトラム拡散回路による
イオードを追加しなければなりません。
設計の簡素化
450kHz に設定し、300kHz まで広げます。ス
か、スイッチのスナバ回路、およびキャッチ・ダ
他の大電力 LEDドライバとは異なり、 LT3795
は独自のスペクトラム拡散ランプ信号を発生
図 4.LT3795 に実装されているようなスペクトラム拡散は、LED の輝度に対して認識できる影響を与えません。図 1 に設定されてい
して、設定されているスイッチング周波数より
る 1kHz のスペクトラム拡散掃引が LEDリップル電流に与える影響(b)は、スペクトラム拡散なしの場合(a)と比較するとごくわずか
30% 低いスイッチング周波数変調信号を生成
であり、周波数が高いので人間の目にはちらつきと認識されません。
(a)
します。これにより、その伝導性 EMI のピーク
(b)
が低くなるので、高価で場所をとる EMI 入力フィ
ルタ・コンデンサやインダクタが不要になります。
外部の(つまり独立した)スペクトラム拡散クロッ
ILED
50mA/DIV
(AC-COUPLED)
ILED
50mA/DIV
(AC-COUPLED)
クを使用して LEDドライバのスイッチング周波
数を生成すると、 PWM 調光時に目に見えるち
VRAMP
1V/DIV
らつきが発生することがあります。これは、スペ
クトラム拡散の周波数パターンが PWM の周期
と同期していないからです。このため、多くのハ
イエンド LEDドライバ・アプリケーションでは、
VRAMP
1V/DIV
1ms/DIV
1ms/DIV
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 13
RAMP ピンに 6.8nF のコンデンサを接続する
と、スペクトラム拡散周波数変調速度は 1kHz
の三角波に設定されます。つまり、LT3795 の
動作周波数は 300kHz から 450kHz まで掃引さ
ILED
200mA/DIV
ILED
200mA/DIV
IL1
2A/DIV
IL1
2A/DIV
れ、1ミリ秒経過するたびに 300kHz に戻ります。
1kHz の三角波が加算されても、スペクトラム
拡散信号が LED リップル電流に与える影響は、
図 4 に示すようにごくわずかです。
変 調 周 波 数として 1kHz が 選 ば れた理 由 は、
LT3795 の帯域幅の範囲内に十分に入る低い
周波数であることと、AM帯域の伝導性EMIピー
クを大幅に減衰させるのに十分高い周波数だか
らです。変調周波数をさらに低くすると、最も重
要と思われる AM 帯域内でのピーク減衰量が低
下します。スペクトラム拡散変調周波数の選定
は、高い周波数における EMI ピークの減衰に影
響しないと思われます。100Hz より高いと人間
20µs/DIV
INFINITE PERSIST CAPTURE
120Hz PWM DIMMING WITH 1% DUTY CYCLE
20µs/DIV
INFINITE PERSIST CAPTURE
120Hz PWM DIMMING WITH 1% DUTY CYCLE
(a)
(b)
図 5.2 つのスペクトラム拡散 LEDドライバ・ソリューションの比較と PWM 調光への影響。無限残光機能を有効にしたスコープ・キャ
プチャは、PWM LED 電流波形を繰り返して重ねた波形を示しています。
(a)では、LT3795 の特許出願中のスペクトラム拡散技術
により、サイクル間で均一な LED PWM 電流オン時間波形が発生します。この結果、高い調光比でちらつきのない動作が得られます。
(b)の波形は、比較対象となる(LT3795 以外の)スペクトラム拡散 LEDドライバの結果を示しています。この場合は、LT3795 の
スペクトラム拡散と PWM が同期しないと、LED 電流波形はサイクル間で不均一になり、PWM 調光比が高いときは人間が知覚でき
るちらつきが発生します。
の目では認識できないからです。
ちらつきのない PWM 調光
きにより、平均 LED 電流にばらつきが生じます。
PWM 信号と同期していないスペクトラム拡散
多回路構成ソリューション
調光比が高いと、このばらつきが LED のちらつ
信号源を使用して EMI を減らすことは可能です
きとして認識されます。
LT3795 は、ここに示すように昇圧構成で使用し
が、スイッチング周波数と PWM 信号のうなりに
よって LED には目に見えるちらつきが生じる場
合があります。LT3795 の内部で生成されるス
ペクトラム拡散ランプ信号は、 PWM 調光を使
用した場合、ランプ信号自体が PWM 周期と同
期します。これにより、1000:1 の高い調光比で
も再現可能でちらつきのない PWM 調光を実現
します。
LT3795 の特許出願中技術を使用しないスペク
トラム拡散ドライバ IC は、スペクトラム拡散に
よるきれいな EMI 低減結果を示すことがありま
すが、ちらつきは依然として残るので注意してく
ださい。ちらつきがあるかどうかを理解するに
は、 LED 電流波形を観察する必要があります。
LT3795 の場合は、伝導性 EMI のスキャン結果
とLED電流のスコープ写真の両方が良好です。
図 5 では、2 つのスペクトラム拡散ソリューション
の PWM 調光電流波形を比較しています。1 つ
短絡に耐える昇圧 LEDドライバ
は LT3795 のスペクトラム拡散信号と PWM 信
図 1 に示す LT3795 昇圧 LEDドライバは、 短
号の同期技術(特許出願中)を使った方法で、も
絡に耐えられます。ハイサイド PMOS 切 断ス
う1 つはそれを使わない方法です。どちらのキャ
イッチは PWM 調光だけに使用するのではなく、
プチャ波形も無限残光機能を有効にして作成し
LED 正側端子がグランドに短絡した場合の短絡
ており、数サイクルの 1% PWM 調光波形を重
保護のためにも使用します。出力電流が大きす
ねたものを表示しています。PWM LED 電流に
ぎて LED 正側端子の電圧が低すぎることを独
関する LT3795 のスペクトラム拡散動作の結果
自の内部回路が検出すると、PMOS 切断スイッ
を図 5(a) に示します。この波形はサイクル間で
チをオフにして短絡 LED フォルトを通知します。
均一であり、したがってちらつきのない動作とな
ります。比較対象となる(LT3795 以外の)スペ
クトラム拡散ソリューションの結果を図 5(b) に示
します。オン時間波形でのサイクル間のばらつ
14 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
て LED を駆動することができます。LED 列の電
圧と入力電圧範囲の関係によって要求される場
合には、降圧モード、昇降圧モード、SEPIC およ
びフライバック構成で使用することもできます。
どの回路構成も、同じスペクトラム拡散機能と短
絡保護機能を備えています。LT3795 は、スペク
トラム拡散周波数変調機能を備えた固定の昇圧
または SEPIC 電圧レギュレータとして構成する
こともできます。
まとめ
LT3795 は、内蔵のスペクトラム拡散周波数変
調回路で EMI を低減する 110V 多目的 LEDド
ライバ IC です。これにより、厳しい EMI テスト
に合格する必要がある LED アプリケーションの
設計が簡単になります。スペクトラム拡散に必要
なのはコンデンサ 1 個だけであり、外部クロック・
ベースのスペクトラム拡散ソリューションとは異
なり、PWM 調光時にちらつきのない LED 動作
が得られます。すべての回路構成で短絡保護が
同様に、LED 列が取り外されるか開放状態にな
動作するので、この IC は自動車用 LED を駆動
ると、IC はその最大出力電圧を制限して、開放
する堅牢で強力なソリューションになります。n
LED フォルトを通知します。
設計特集
マイクロパワー・アプリケーションおよび
「モノのインターネット」に特化した
1.3µA 超低静止電流の 15V 昇降圧コンバータ
Dave Salerno
「モノのインターネット」を支えるワイヤレス・センサーの普及により、低消費電力の無線デバイスに特化し
た小型で効率的な電力コンバータの必要性が高まりました。新製品の LTC3129 および LTC3129-1 は、こ
の要求を満たすために設計されました。LTC3129 および LTC3129-1 は、入力電圧範囲が 2.42V∼15V の
モノリシック昇降圧 DC/DCコンバータです。LTC3129 の出力電圧範囲は 1.4V∼15.75V であるのに対して、
LTC3129-1 は 8 種類の固定出力電圧をピンで選択可能で、その範囲は 1.8V∼15V です。両デバイスとも
降圧モードで 200mA の最小出力電流を供給できます。
LTC3129 と LTC3129-1 のディスエーブル時
RUN ピンしきい値、パワーグッド出力、および
小型太陽電池の使用により3.3V のコンバータが
の電流が(VIN と VOUT の両方で)0 であること
太陽電池から動作する場合に電力の伝送を最
室内照明を電源として動作
と、省電力の Burst Mode® 動作が選択されて
適化するための MPPC(最大電力点制御)機能
図 1 の回 路は、LTC3129 と LTC3129-1 だ け
いるときに VIN ピンに流れる静止電流がわずか
です。
が持つ能力を引き出し、7.5µW 程度の弱い入
1.3µA であることにより、きわめて軽い負荷での
3mm×3mm の 小 型 QFN パッケ ージと高 水
高い効率が非常に重要なマイクロパワー・アプ
準の集積化により、 LTC3129/LTC3129-1 は
リケーションや環境発電アプリケーションに最適
スペースの制約があるアプリケーションで簡単
です。これらのデバイスは昇降圧アーキテクチャ
に配置できます。わずか数個の外付け部品と
なので、幅広い種類の電源に使用することがで
2mm×3mm 程度のインダクタだけで、電源の
きます。
設計を完成させることができます。内部ループ
補償により、設計工程はさらに簡略化されます。
LTC3129 お よ び LTC3129-1 の そ の 他 の 重
要な機能は、 1.2MHz の固定動作周波数、電
力電源から起動して動作します。これにより、
(1
平方インチ未満の)小型、低価格の太陽電池と
200 ルクスより低い室内照明レベルで動作する
ことができます。これにより、室内照明を電源と
するワイヤレス・センサーなどのアプリケーショ
ンが可能になります。このアプリケーションでは、
非常に少ない容量の電源から動作する、デュー
ティ・サイクルの低い低消費デバイスに電力を
供給するため、 DC/DC コンバータ自身の自己
流モード制 御、 内 部ル ープ 補 償、自動 Burst
消費電力をできる限り少なくしなければなりま
Mode 動 作 ま た は 低 ノ イ ズ PWM モ ー ド、
せん。
UVLO しきい値をプログラム可能な高精度の
この低電流起動を可能にするため、 以下の 3
つの条件が満たされるまで、 LTC3129 および
図 1.室内照明で動作する
3.3V 太陽光発電コンバータ
VOC = 5V
UVLO = 3.5V
VIN
+
CIN
470µF
6.3V
BST1 SW1
22nF
4.7µF
シャットダウン時は更に少なくなります。
• RUN ピンの電圧が 1.22V(標準)を超える。
SW2 BST2
VOUT
3.3V
VOUT
VIN
4.22M
LTC3129-1
22µF
VCC
MPPC
PGOOD
VS2
2.26M
これら 3 つの条件がすべて満たされるまで、デ
VCC
VS3
PWM
• VCC(この電圧は VIN を基に内部で生成され
2.25V(標準)を超える。
VS1
10pF
• VIN ピンの電圧が 1.9V(標準)を超える。
ているが、外部から供給することも可能)が
RUN
PV PANEL
SANYO
AM-1815
4.9cm × 5.8cm
LTC3129-1 から流れる電流はわずか 2μAです。
L1
4.7µH
22nF
GND
PGND
2.2µF
L1: Toko DEM2812C
バイスは「ソフトシャットダウン」状態つまりスタ
ンバイ状態のままであり、流れる電流はわずか
2µA です。
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 15
LTC3129 および LTC3129-1 は、7.5µW 程度の弱い入力電源から起動して動作で
きます。これにより、
(1 平方インチ未満の)小型、低価格の太陽電池と 200 ルクス
より低い室内照明レベルで動作することができます。これにより、室内照明を電源
とするワイヤレス・センサーなどのアプリケーションが可能になります。
図 2.コイン電池のバックアップを備えた
UVLO = 3.5V
VIN
L1
4.7µH
22nF
太陽光発電コンバータ
4.7µF
BST1 SW1
22nF
SW2 BST2
22µF
LTC3129
4.22M
PV PANEL
SANYO AM-1815
VCC
6.3V
4.22M
S1
D1
2.43M
G1
D2
G2
VOUT
2.43M
MPPC
VOUT
3V TO 3.2V
S2
2.2µF
10pF
FB
CR2032
3V COIN CELL
PGOOD
2.26M
10pF
3.20V
VOUT
VIN
RUN
+ 470µF
FDC6312P
DUAL PMOS
BAT54
VCC
PWM
GND
PGND
74LVC2G04
2.2µF
L1: Toko DEM2812C
これにより、前述の 3 つの条件をすべて満たす
下し、コンバータは再度ソフトシャットダウン状
デンサの電荷が保持されます。実際、LTC3129
電圧になるまで、弱い入力電源が入力蓄電コン
態に移行します。この時点で VIN は再充電を開
がスリープ・モードになっているときは VOUT か
デンサを充電できます。その電圧になると、入
始するので、サイクルを繰り返すことができます。
らまったく電流が流れません。LTC3129-1 の場
力コンデンサに十分なエネルギーが蓄積されて
この一時中断動作モードでは、VIN が UVLO 作
合、内部帰還抵抗分割器の抵抗値が高いので、
VOUT から流れる電流は 1μA 未満です。
いるという前提で、LTC3129/LTC3129-1 は
動点の前後にヒステリシスを持たせた電圧にな
スイッチングを開始し、 VOUT は上昇してレギュ
り、この例では約 290mV の VINリップルが存在
レーション状態になります。デバイスが UVLO
します。このリップルは RUN ピンでの 100mV
バッテリ・バックアップの追加
状態を抜ける入力電圧は、 RUN ピンの外付け
のヒステリシスを UVLO の抵抗分割の比率で大
多くの太陽光発電アプリケーションでは、太陽光
抵抗分割器を使用して、2.4V∼15V の範囲内
きくしたものです。
発電が不十分なとき、バックアップ・バッテリが
の任意の値に設定できます。RUN ピンを流れる
電流は標準で 1nA 未満なので、高い値の抵抗
を使用して VIN に流れる電流を最小限に抑える
ことができます。
コンバータの UVLO 電圧を、選択した太陽電池
の MPP(最大電力点)電圧(標準では開放電圧
の 70%∼80%)に設定することにより、
(VIN が
上昇して UVLO 電圧より高い電圧にとどまる場
図 1 に示すアプリケーション例では、 CIN に蓄
合は、平均負荷要件が太陽電池の出力電力より
積されたエネルギーを使用して、コンバータが
小さくない限り、)太陽電池は常にその最大電力
起動したら VOUT をレギュレーション状態にし
伝送電圧付近で動作します。
ます。太陽電池が供給した電力よりVOUT での
平均電力需要の方が少ない場合、LTC3129/
LTC3129-1 は Burst Mode 動作のままであり、
VOUT はレギュレーション状態が維持されます。
効率をさらに最適化して VOUT の不必要な負
荷を取り除くため、ソフトスタート時 や Burst
Mode 動作が選択されている場合、LTC3129/
LTC3129-1 は VOUT から一切電流を流しませ
出力電力需要の平均が供給可能な入力電力を
ん。これにより、ソフトスタート時にコンバータに
超えると、VIN は UVLO 作動点に達するまで低
よる VOUT の放電を防止できるので、出力コン
16 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
電力を供給します。前の例に対して、一次リチウ
ム・コイン電池と数個の外付け部品をコンバー
タに追加して、VOUT を維持するのに必要な電
力を光源が供給できない場合に出力にバック
アップの電力を供給するアプリケーションを図 2
に示します。この場合には LTC3129 を使用し
ているので、VOUT を 3.2V に設定して、コイン
電池の電圧との整合性をとることができます。
この例では、バッテリをコンバータの出力側に使
用し、VOUT がバッテリの電圧よりわずかに高い
電圧で安定化するように LTC3129 を設定して
います。これにより、VOUT の電源が太陽電池入
力から得られる場合には、バッテリに負荷がか
設計特集
LTC3129-1 は、最小の外付け部品点数で、広範囲の負荷および入力電圧にわたって高い
効率で動作することができます。幅広い種類の電源で継ぎ目なく動作する柔軟性は、軍用
無線などのきわめて重要なフィールド・アプリケーションで強みとなります。
からないことが保証されます。光源が不十分で
バックアップ・バッテリをコンバータの入力側に
どのきわめて重要なフィールド・アプリケーショ
ンで強みとなります。
負荷に電力を供給できないために VOUT が低下
配置すると、バッテリの電圧を目的の出力電圧
すると、LTC3129 の PGOOD 出力は L になり、
とは異なる電圧にすることができますが、起動
負荷をコンバータ出力からバッテリに切り替える
時や負荷トランジェント時にコンバータが流す
ので、VOUT はバッテリ電圧に維持されます。こ
大電流にバッテリが耐えられる必要があります。
の間、コンバータの入力コンデンサと出力コンデ
入力側に使用する場合、長寿命アプリケーショ
ンサは(一定の明るさがあれば)再充電が可能
ンには一般的に塩化チオニル・リチウム・バッ
なので、PGOOD 信号によって負荷をバッテリ
テリを選択するのが適しています。バックアッ
からコンバータに周期的に戻すことができます。
プ・バッテリは太陽電池とダイオード OR 接続
このように、負荷へは可能な限り太陽電池入力
するか、図 2 と同様な方法で MOSFET スイッ
から電力が供給され、バッテリは時分割方式で
チを使用して入力と出力を切り替えることがで
のみ使用されるので、バッテリの寿命が長くなり
きます。
ます。
PGOOD と VCC の 間 に 接 続 され て い るダイ
オードは、 起動時に VCC が有効(したがって
PGOOD も有効)になるまで PGOOD を L に
保持する目的で使用されます。
バックアップ・バッテリの配置選択
前の例では、バックアップ・バッテリは出力に配
置されていました。軽負荷アプリケーションでは、
この配置にするとバッテリ(内部抵抗が高く低容
量のバッテリ)がコンバータの比較的高い起動
LTC3129-1 はスリープ・モードでの IQ がわず
か 1.3µA と少ないので、内部帰還抵抗分割器
の抵抗値が高いことと相まって、図 4 に示すよう
に広範囲の負荷で高い効率を維持できます。わ
ずか 100µA の負荷電流で、効率は VIN のほぼ
全範囲にわたって約 80% です。これは、大半の
時間を低電力状態で費やすアプリケーションで
バッテリの寿命を延ばすために重要な機能です。
入力ステップ応答(VIN が 5V から 12V へ階段
状に変化したときの応答)を図 5 に示します。こ
さまざまな入力電源で継ぎ目なく動作する
こでは、重負荷と軽負荷の両方の条件で VOUT
5V コンバータ
を測定しています。負荷が 200mA のとき、デバ
最 小の外 付 け部 品 点 数で、 広 範 囲の負 荷お
イスは PWM モードで動作しており、 VOUT の
よび入力電圧にわたって高い効率で動作する
オーバーシュートはわずか 150mV(3%)です。
LTC3129-1 の能力を図 3 に示します。この例で
負荷が 10mA のとき、デバイスは Burst Mode
は、VS1 ピン∼VS3 ピンを使用して 5V に設定し
動作となり、バースト・リップルは 100mVPK-PK
た出力に対して、5V の USB 入力、
さまざまなバッ
(2%)で、入力ステップによる VOUT のオーバー
テリ・オプション、または 3V∼15V の AC アダ
シュートは 100mV 未満です。
プタから電力を供給できます。幅広い種類の電
源で継ぎ目なく動作する柔軟性は、軍用無線な
入力電流バーストにさらされないという利点が
あります。電流バーストにさらされると、バッテリ
の電圧が大幅に低下し、内部電力損失が大きく
なって、ひいてはバッテリの寿命が短くなるから
です。
WALL ADAPTER
3V TO 15V
VIN
1.8V TO 15V
置した場合のマイナス点は、バッテリの電圧を
3V のリチウム電池はこれらの必要条件を両方と
も満足します。
BST1 SW1
SW2 BST2
VOUT
VIN
22µF
LTC3129-1
目的の出力電圧によく一致させ、VOUT を適度
的平坦な放電曲線にする必要があることです。
図 3.多入力 5V コンバータ
22nF
5V USB
バックアップ・バッテリをコンバータの出力に配
なレギュレーション状態に維持するために比較
L1
10µH
22nF
RUN
BATTERIES:
2–9 ALKALINE,
1–3 Li-ION,
OR Li-SOCl2
VCC
1M
PGOOD
MPPC
VOUT
5V
BAT54
OPTIONAL
PGOOD
VS1
10µF
VS2
VCC
VS3
PWM
GND
PGND
2.2µF
L1: Taiyo Yuden NR3015T
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 17
LTC3129 および LTC3129-1 は、コンバータが VIN を負荷状態での最小の電圧に(ユーザが設定
したとおりに)サーボ制御できる最大電力点制御(MPPC)機能を内蔵しています。VIN を安定化
すると、大電流の太陽電池や内部抵抗の高いその他の電源を使用しているアプリケーションでの
電力の伝送が最適状態に維持されます。この機能により、電流制限されている電源でコンバータ
が動作している場合、コンバータが入力電圧を大きく変動させることを防止できます。
100
Burst Mode OPERATION
90
VOUT
200mV/DIV
(AC-COUPLED)
EFFICIENCY (%)
80
70
MPPC 機能を備えた屋外太陽光発電
ILOAD = 200mA (PWM MODE)
コンバータ / チャージャ
150mV
LTC3129 および LTC3129-1 は、負荷状態で
の VIN を、ユーザが設定した最小電圧にサーボ
60
制御できる最大電力点制御(MPPC)機能を内
ILOAD = 10mA (Burst Mode OPERATION)
50
40
PWM
30
VIN = 2.5V
VIN = 3.6V
VIN = 5V
VIN = 10V
VIN = 15V
20
10
0
0.01
0.1
1
10
100
OUTPUT CURRENT (mA)
VOUT
200mV/DIV
(AC-COUPLED)
1000
図 4.効率と図 3 の 5V コンバータの VIN および
100mV
蔵しています。VIN を安定化すると、大電流の太
陽電池や内部抵抗の高いその他の電源を使用
しているアプリケーションでの電力の伝送が最
VIN
5V/DIV
適状態に維持されます。この機能により、電流制
限されている電源でコンバータが動作している
500µs/DIV
VIN = 5V TO 12V STEP
場合、コンバータが入力電圧を大きく変動させ
ることを防止できます。
図 5.図 3 の 5V コンバータの入力トランジェント応答
MPPC 制御ループは、コンバータによって要求
負荷
された平均インダクタ電流を低減することによっ
VCC ピンは、VIN を電源として公称 3.9V を生
UVLO しきい値に達する低い入力電圧(最小
て動作するので、 VIN を負荷状態での最小設
成し、デバイスに電力を供給する内部 LDO の
1.75V)で動作できます。この機能により、使用
定電圧に維持します。この電圧は、図 6 のスー
出力です。LDO は最大 5V まで外部から逆駆
可能電圧範囲が広がり、消耗した 2 個のアルカ
パーキャパシタ充電例で示すように、VIN ピンと
動できるように設計されています。この例では、
リ電池でも動作させることができます。電池の電
MPPCピンに接続されている外付け抵抗分割器
VOUTと VCC の間にオプションのブートストラッ
圧が 2.4V より低く、コンバータがシャットダウン
を使用して設定します。MPPC 制御ループは、
プ・ダイオードを示してあります。
状態(または VOUT が短絡状態)である場合は、
最小入力容量である 22µF で安定するように設
IC を起動できないので注意してください。
計されています。
この外付けブートストラップ・ダイオードの追加
には、利点が 2 つあります。まず、内部スイッチ
に供給するゲート駆動電圧を高くして、スイッチ
の RDS(ON) を低くすることにより、VIN が低く負
荷電流が大きいときの効率が向上します。また、
VIN が高く軽負荷のときは、 VCC を生成すると
きに使用する内部 LDO での電力損失を減らす
ことにより、効率が向上します。
(VCC ピンを 6V
図 6.最大電力点制御機能を備えた屋外太陽光発電
より高くすることはできないので、それより高い
47µF
出力電圧にダイオード接続することはできませ
ん。)
ブートストラップ・ダイオードを追加する 2 番目
の利点は、より低い VIN から動作が可能にな
ることです。起動後、
(この場合は出力電圧に
VMPPC = 6V
VIN
1M
L1
6.8µH
22nF
スーパーキャパシタ・チャージャ
BST1 SW1
22nF
SW2 BST2
VOUT
4.47V
VOUT
VIN
4.7µF
LTC3129
RUN
2.8M
+
FB
MPPC
PowerFilm
MPT6-150
SOLAR
MODULE
1M
PGOOD
PWM
VCC
11.4cm × 15cm
243k
GND
PGND
2.2µF
よって)VCC が最小値の 2.2V より高い電圧に
保持されると、コンバータは固定値の内部 VIN
18 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
C1: Cooper Bussmann PB-5R0V105-R
L1: Coiltronics SD3118
C1
1F
5V
設計特集
モノリシック昇降圧 DC/DC コンバータである LTC3129 および LTC3129-1 は、実環境の
ワイヤレス・センサーやポータブル電子機器が必要とする非常に優れた低消費電力性能
および電源の柔軟性を実現します。1.3µA の超低静止電流と高い変換効率により、環境
発電と組み合わせて使用した場合、バッテリの寿命を無制限に延長することができます。
MPPC による制御状態でインダクタ電流が減少
MPPC を使用した本質的安全
MPPC を使用した入力電流制限
すると、出力が従来の負荷を駆動している場合
MPPC 機能は、本質的安全を目的として設計さ
MPPC 機能は最大入力電流を所定の値に設定
には出力電圧低下の原因となります。したがっ
て、MPPC を採用しているほとんどのアプリケー
ションでは、大容量の蓄電コンデンサを太陽電
池から充電するか、バッテリをトリクル充電する
ことが必要です。MPPC 機能により、可能な最
大の電流でコンデンサまたはバッテリが充電さ
れることが保証される一方で、太陽電池はその
最大電力点電圧で動作します。
LTC3129/LTC3129-1 が MPPC 制御状態のと
きは Burst Mode 動作が抑制されており、 IC は
1.2MHz で絶え間なくスイッチングしているの
で、VIN の静止電流は数 mA であることに注意
することが重要です。したがって、約 10mA 以上
の電流を供給できない電源と組み合わせて使用
する場合、 MPPC は適切ではありません。非常
に弱い入力電源を使用して MPPC に似た機能
が必要なアプリケーションでは、図 1 の例で説明
れたアプリケーションなど、入力電源と DC/DC
するために使用することができます。直列の入力
コンバータの間に直列の電流制限抵抗を接続す
抵抗値を選択し、MPPC の電圧を固定の入力
る他のアプリケーションに使用することができま
電源電圧より低い値に設定することにより、最大
す。この場合には、特に出力コンデンサが充電
入力電流は次式で得られる値に制限されます。
される起動時に LTC3129/LTC3129-1 が電流
を流しすぎたり、入力電圧を大幅に変動させた
りすることを MPPC ループが防止します。この
IIN =
VSOURCE − VMPPC
RSERIES
例を図 7 に示します。図 7 では、MPPC の抵抗
まとめ
分割器によって設定されたとおりに、入力電圧
モノリシック昇降圧 DC/DC コンバータである
が最小 3V に維持されます。
LTC3129 および LTC3129-1 は、実環境のワ
この場合、入力コンデンサの値は安全のため
(MPPC を使用する場合の推奨最小値である
22µF より小さい)わずか 10µF に制限されてい
るので、補助の RC 補償回路網を MPPC ピンに
追加して MPPC ループの位相余裕を改善して
います。
イヤレス・センサーやポータブル電子機器が必
要とする非常に優れた低消費電力性能および電
源の柔軟性を実現します。1.3µA の超低静止電
流と高い変換効率により、環境発電と組み合わ
せて使用した場合、バッテリの寿命を無制限に
延長することができます。
最大電力点制御方式を選択することにより、幅
したように、高精度の RUN ピンしきい値を使用
広い種類の電源で電源性能を最適化できます。
してUVLOしきい値を設定する必要があります。
拡大しつつあるワイヤレス・モニタ・アプリケー
ションの適用範囲では、使いやすく、効率的で
柔軟な DC/DC 電力コンバータ・ソリューション
L1
3.3µH
22nF
図 7.MPPC を使用した本質的安全
が要求されます。LTC3129 と LTC3129-1 は、
22nF
この課題に対する解決策を提供します。n
アプリケーション向け 3.3V コンバータ
VMPPC = 3V
VIN
10Ω
10µF
1.5M
BST1 SW1
1.5V
1.5V
RC
150k
CC
1nF
IOUT = 100mA
VOUT
10µF
LTC3129-1
VOUT
3.3V
RUN
MPPC
1.5V
SW2 BST2
VIN
PGOOD
PWM
VCC
VS1
VCC
VS2
1M
VS3
GND
PGND
2.2µF
L1: Coilcraft EPL2014
NOTE: RC AND CC HAVE BEEN ADDED FOR IMPROVED MPPC LOOP STABILITY WHEN USING AN INPUT
CAPACITOR VALUE LESS THAN THE RECOMMENDED MINIMUM OF 22µF
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 19
1 つのインダクタで正の入力電圧を負の出力電圧に
変換する反転型 DC/DC コントローラ
David Burgoon
正の電源から負の電圧を発生する方法は、トランスまたは 2 つのインダクタ、あるいは複数のスイッチを使
用する方法などいくつもありますが、LTC3863 を使用する方法ほど簡単な方法はありません。LTC3863 は
シンプルであるという点で素晴らしく、これらの解決策と比べて軽負荷での効率が優れており、部品点数が
少なくて済みます。
先進のコントローラ機能
場合はトランスが不要です。出力短絡時に最小
力電圧が公称の半分より低くなると、コントロー
LTC3863 は、範囲が 3.5V∼60V の正の入力電
オン時間に起因する過剰な電流を防ぐため、出
ラはスイッチング周波数を折り返します。
圧から範囲が –0.4V∼–150V の負の出力電圧
45.3k
クティブな P チャネル MOSFET スイッチが 1 つ
図 1.4.5V∼16V の電源から
とダイオードが 1 つの単一インダクタ構成を採用
コンバータ
100k
0.47µF 16V
–12V/1A を生成する反転
CLKIN
しています。集積度が高いので、部品点数の少
CAP
RUN
VIN
0.1µF
LTC3863 は 軽 負 荷 で の 効 率 が 優 れており、
27nF
ユーザがプログラム可能な Burst Mode® 動作
390pF
61.9k
で流れる静止電流はわずか70µAです。そのピー
ク電流モード、固定周波数 PWM アーキテクチャ
SS
VIN
4.5V TO 16V
Q1 D1
LTC3863
L1
10µH
ITH
1.21M
FREQ
SGND
VFBN
68pF
により、インダクタ電流の正の制御、容易なルー
PGND
プ補償、および最高のループ動特性を実現でき
100µF
20V
SENSE
GATE
14.7k
+
16mΩ
PLLIN/MODE
ないシンプルなソリューションが得られます。
10µF
25V
×2
VFB
33µF
16V
×2
+
を発生することができます。このデバイスは、ア
VOUT
–12V
150µF 1A
16V
×2
D1: DIODES PDS540
80.6k L1: TOKO 919AS-100M
Q1: VISHAY SI7129DN-T1-GE3
ます。スイッチング周波数は外付け抵抗を使用
して 50kHz∼850kHz の 範 囲で 設 定 可 能で、
75kHz∼750kHz の範囲の外部クロックに同期
させることもできます。LTC3863 は、プログラ
図 2.5V 入力および –12V/1A 出力でのスイッチ・ノード電圧、
インダクタ電流、およびリップルの波形
図 3.パルス・スキップ・モードにおける 5V 入力および
–12V/30mA 出力でのスイッチ・ノード電圧、インダクタ電流、
およびリップルの波形
ム可能なソフトスタート機能または出力トラッキ
ング機能を備えています。安全上の機能として
は、過電圧保護、過電流保護、および短絡保護
(周波数フォールドバックを含む)があります。
4.5V∼16V の電源で動作する –12V、
1A コンバータ
VSW
10V/DIV
VSW
10V/DIV
IL
1A/DIV
VOUT
50mV/DIV
(AC-COUPLED)
図 1 に 示 す 回 路 は、 4.5V∼16V の 入 力 から
–12V、1A の出力を発生します。動作はフライ
バック・コンバータと同様で、スイッチがオン
になるとインダクタにエネルギーを蓄積し、ス
イッチがオフになるとダイオードを介してエネル
ギーを出力に解放します。ただし、LTC3863 の
20 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
VOUT
50mV/DIV
(AC-COUPLED)
IL
1A/DIV
VIN = 5V
VOUT = –12V
IOUT = 1A
1µs/DIV
1µs/DIV
VIN = 5V
VOUT = –12V
IOUT = 30mA
PULSE-SKIPPING MODE
設計特集
LTC3863 は、範囲が 3.5V∼60V の正の入力電圧から範囲が –0.4V∼–150V の負
の出力電圧を発生することができます。このデバイスは、アクティブな P チャネル
MOSFETスイッチが1つとダイオードが1つの単一インダクタ構成を採用しています。
集積度が高いので、部品点数の少ないシンプルなソリューションが得られます。
LTC3863 は、 軽 負 荷 時 に 高 効 率 の Burst
5V 入力および –12V/1A 出力でのスイッチ・ノー
高効率
パルス・スキップ・モードと Burst Mode 動作の
Mode 動作またはパルス ・スキップ・モードのい
ド電圧、インダクタ電流、およびリップルの波形
ずれかになるようにプログラムすることができま
を図 2 に示します。P チャネル MOSFET がオン
す。Burst Mode 動作では、コントローラは少数
になるとインダクタが充電され(電流が増加し)、
の大電流パルスを指示し、負荷に応じて一定の
P チャネル MOSFET がオフになるとダイオード
時間低電流の静止状態に入ります。パルス・ス
を介して出力に放電されます。パルス・スキップ・
キップ・モードでは、LTC3863 は軽負荷で数
モードでの 30mA 出力時の同じ波形を図 3 に示
パルスをスキップします。このモードでは、変調
します。インダクタ電流が 0 に近づくと、スイッ
コンパレータが数サイクルの間作動したままに
チ・ノードが 0V 付近でどのように振る舞うかに
なり、外付け MOSFET を強制的にオフのまま
注意してください。電流が 0 になると有効期間は
にすることによってパルスをスキップすることが
終了します。Burst Mode 動作をイネーブルにし
まとめ
あります。このモードでは、Burst Mode 動作と
た状態での同じ負荷条件を図 4 に示します。こ
LTC3863 は正の電源から負の出力を生成する
比較した場合に、出力リップルおよび可聴ノイ
の動作点では電力損失が 36% 減少し、効率は
コンバータの設計を簡素化します。シンプルで
ズが小さく、 RF 干渉が低減されるという利点が
72% から 80% に向上します。出力短絡状態で
効率が高く、完全なコンバータを形成するのに
得られますが、代償として効率が低下します。こ
の波形を図 5 に示します。この状態ではスイッチ
安価な外付け部品が少数で済むという点で素晴
の回路は基板の両面で部品が約 0.5 平方インチ
ング周波数が約 80kHz に減少し、もし減少しな
らしいデバイスです。n
(3.2cm2)以内に収まります。
両方の効率曲線を図 6 に示します。格段に優れ
た効率である 89.3% は、負荷が 1A で入力が
12V のときに得られます。Burst Mode 動作で
は負荷が 0.1A 未満のときの効率が劇的に向上
していることに注目してください。軽負荷でのパ
ルス・スキップ・モードの効率は、それでも同期
動作で得られる効率より大幅に高くなります。
ければ発生した可能性がある過剰な電流を防止
します。
図 4.Burst Mode 動作における 5V 入力および –12V/30mA
図 5.5V 入力で出力短絡状態でのスイッチ・ノード電圧、
出力でのスイッチ・ノード電圧、インダクタ電流、およびリップル
インダクタ電流、およびリップルの波形
図 6.通常動作時および Burst Mode 動作時の効率
の波形
90
VSW
10V/DIV
VSW
10V/DIV
85
80
EFFICIENCY (%)
IL
1A/DIV
VOUT
50mV/DIV
(AC-COUPLED)
VOUT
50mV/DIV
(AC-COUPLED)
75
70
65
60
55
50
IL
1A/DIV
500µs/DIV
VIN = 5V
VOUT = –12V
IOUT = 30mA
Burst Mode OPERATION
VIN = 5V
SHORTED OUTPUT
5µs/DIV
45
0.01
VIN = 5V, Burst Mode OPERATION
VIN = 12V, Burst Mode OPERATION
VIN = 5V, PULSE-SKIPPING MODE
VIN = 12V, PULSE-SKIPPING MODE
0.1
ILOAD (A)
1
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 21
LTspice IV の最新情報
Gabino Alonso
モデル、デモ回路、イベント、および
ユーザのヒントに関する最新情報については、以下の
Twitter サイトで @LTspice をフォローしてください。
www.linear-tech.co.jp/blog/LTspice
LTspice のブログ
技術ニュース、内部関係者のヒント、LTspice
に関する興味深い視点については、 LTspice の
新 し い ブ ロ グ(www.linear-tech.co.jp/blog/
LTspice)を参照してください。以下にほんの数
トピックを示します。
• 電源プレーンのシミュレーション
• パラメータのプロット
• データのインポートとエクスポート
• ノイズのシミュレーション
• サードパーティ・モデルの追加
厳選デモ回路
降圧レギュレータ
• LT3055:497mA の高精度電流制限機能を
備えた 5V 電源、IMIN:10mA
(入力:5.4V∼45V、出力:5V/497mA)
www.linear-tech.co.jp/LT3055
• LT3081:安全動作領域の広い電源
(入力:2.7V∼40V、出力:1.5V/1.5A)
www.linear-tech.co.jp/LT3081
• LT3514:36Vトリプル降圧レギュレータ
(入力:5.4V∼36V、出力:5V/1A、3.3V/2A、
1.8V/1A)www.linear-tech.co.jp/LT3514
• LT3995:3.3V 降圧コンバータ
(入力:4.3V∼60V、出力:3.3V/3A)
www.linear-tech.co.jp/LT3995
www.twitter.com/LTspice
• LT8697:ケーブルの電圧降下を補償する
2MHz、5V 降圧コンバータ
(入力:6V∼42V、出力:5V/2.1A)
www.linear-tech.co.jp/LT8697
LEDドライバ
• LT3761:内部 PWM 調光比が 25:1 で効率が
94% の自動車用ヘッドランプ向け昇圧型
LEDドライバ(入力:8V∼60V、出力:60V
の LED 列 /1A)
www.linear-tech.co.jp/LT3761
スーパーキャパシタ・チャージャ
• LTC3122:デュアル・スーパーキャパシタ・
バックアップ電源(入力:0.5V∼5V、出力:
5V/50mA)
www.linear-tech.co.jp/LTC3122
µModule レギュレータ
• LTM®4637:高効率 20A µModule 降圧レギュ
レータ(入力:4.5V∼20V、出力:1.2V/20A)
www.linear-tech.co.jp/LTM4637
• LTM8028:低出力ノイズの 1.8V、5A レギュ
レータ(入力:6V∼36V、出力:1.8V/5A)
www.linear-tech.co.jp/LTM8028
• LTM8045:–5V 反転コンバータ
(入力:2.8V∼18V、出力:–5V/430mA)
www.linear-tech.co.jp/LT8045
• LTM8050:5V 降圧コンバータ
(入力:7.5V∼58V、出力:5V/2A)
www.linear-tech.co.jp/LT8050
LTspice IV とは
LTspice® IV は、電源設計の作業を迅速化するための高性能 SPICE シミュレータ、回路図入力プログラム、お
よび波形ビューワです。LTspice IV では、SPICE を拡張してモデルを加えたことにより、標準的な SPICE シミュ
レータと比較してシミュレーション時間が大幅に短縮されており、他の SPICE シミュレータでは数時間を要する
ほとんどのスイッチング ・レギュレータの波形を数分以内に表示できます。
リニアテクノロジーから無償で入手できます。
このダウンロー
LTspice IVは、www.linear-tech.co.jp/LTspiceで、
ドには、LTspice IV の完全機能版、リニアテクノロジーのパワー製品のマクロ・モデル、200 種類を超えるオペ
アンプ・モデル、ならびに抵抗、トランジスタ、MOSFET のモデルが含まれています。
22 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
リニア・レギュレータ
• LT3030:デュアル、マイクロパワー、低ノイズ・
リニア・レギュレータ(入力:2.2V∼20V、
出力:1.8V/750mA および 1.5V/250mA)
www.linear-tech.co.jp/LT3030
TimerBlox® シリコン・タイミング・デバイス
• LTC6995-1:アクティブ L のパワーオン・
リセット・タイマ(1 秒の POR)
www.linear-tech.co.jp/LTC6995-1
高精度アンプ
• LTC6090 および LT5400:
同相電圧範囲の広い利得 10 倍の計装アンプ
www.linear-tech.co.jp/LTC6090
厳選モデル
降圧レギュレータ
• LT3514:デューティ・サイクル 100% で動作
する 3 出力降圧スイッチング ・レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/LT3514
• LT3995:静止電流が 2.7µA の 60V、3A、
2MHz 降圧スイッチング・レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/LT3995
• LT8697:ケーブルの電圧降下を補償する USB
5V/2.5A 出力、42V 入力の同期整流式降圧
レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/LT8697
• LTC3374:並列接続可能な 8 チャネル 1A
降圧 DC/DC コンバータ
www.linear-tech.co.jp/LTC3374
LEDドライバ
• LT3954:PWM 信号発生器内蔵の 40V 入力
LED コンバータ
www.linear-tech.co.jp/LT3954
反転レギュレータ
• LTC3863:低静止電流の 60V 反転型 DC/DC
コントローラ
www.linear-tech.co.jp/LTC3863
設計上のアイデア
パワー・ユーザのヒント
LTspice IV でのスイッチ・モード電源のボード線図の生成
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(facebook.com/LTspice)で
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閉ループのスイッチ・モード電源(SMPS)から開ループ利得を求める最善の解決法は、
『International Journal
of Electronics』の Volume 38、Number 4(1975 年)に記載されているミドルブルック法を使用することです。
この方法では、閉ループ系にテスト信号を注入して、ループを閉じたままにして動作点が乱されないように、電
圧利得および電流利得について別々に解きます。ミドルブルック法の電圧利得の部分は、 LTspice で SMPS の
周波数応答解析(FRA)を行うときに特に役立ちます。
LTspice でスイッチ・モード電源の FRA を実行するには:
µModule レギュレータ
• LTM4624:14V 入力、4A 降圧 DC/DC
µModule レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/LTM4624
• LTM4630:デュアル 18A またはシングル 36A
DC/DC µModule レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/product/LTM4630
• LTM4649:10A 降圧 DC/DC µModule レギュ
レータ www.linear-tech.co.jp/LTM4649
• LTM4676:デジタル・パワーシステム・マネー
ジメント機能を備えたデュアル 13A/ シングル
26A µModule レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/LTM4676
• LTM8050:58V、2A 降圧 µModule レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/product/LTM8050
リニア・レギュレータ
• LT3007 シリーズ:静止電流が 3µA でフェイル・
セイフ機能を持つ 20mA/45V 低ドロップアウ
ト・リニア・レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/LT3007
• LT3030:低ドロップアウト、低ノイズのデュア
ル 750mA/250mA マイクロパワー・リニア・
レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/LT3030
• LT3081:モニタ機能を備えた単一抵抗型の
堅牢な 1.5Aリニア・レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/LT3081
•「SINE(0 1m {Freq})」という値の電圧源を帰還ピンと直列にして SMPS 帰還ループに挿入し、この電圧源の
ノードに以下に示すように「A」および「B」とラベルを付けます。振幅(1mV)の選び方は、精度と信号対ノイ
ズ比に影響します。振幅を小さくすると信号対ノイズ比
が低くなり、振幅を大きくすると周波数応答の精度が下
がります。先ずは 1mV∼20mV から始めるのが良いで
しょう。
• 以下の .measure 文を SPICE 指令として回路図に貼り
付けます。これらの文はノード A および B のフーリエ変
換を実行し、SMPS の複雑な開ループ利得を計算して、
その大きさ(dB)と位相(°
)を得ます。
.measure
.measure
.measure
.measure
.measure
.measure
.measure
.measure
Aavg avg V(a)
Bavg avg V(b)
Are avg (V(a)-Aavg)*cos(360*time*Freq)
Aim avg -(V(a)-Aavg)*sin(360*time*Freq)
Bre avg (V(b)-Bavg)*cos(360*time*Freq)
Bim avg -(V(b)-Bavg)*sin(360*time*Freq)
GainMag param 20*log10(hypot(Are,Aim) / hypot(Bre,Bim))
GainPhi param mod(atan2(Aim, Are) - atan2(Bim, Bre)+180,360)-180
• 以下の SPICE 指令を回路図に貼り付けます。パラメータt0 は系が安定状態に落ち着くまでの所要時間であり、
このパラメータによってシミュレータがデータを保存し始めるタイミングも設定されます。この場合の開始時
刻と終了時刻との差は、スイッチング・サイクルの整数倍以外による誤差が小さくなるように、25/freq として
選択されています。これには多くのサイクルが含まれるからです。
.param t0=.2m
.tran 0 {t0+25/freq} {t0}
• .step コマンドを挿入して、解析を実行する周波数範囲を設定します。この例では、シミュレーションが 1 オク
ターブにつき 5 点を使用して 50kHz∼200kHz の範囲で実行されます。ヒント:全周波数範囲を通して解析ス
テップを進める前に、2 つの周波数をテスト(たとえば、
「.param Freq = 125K」を挿入)して、V(A) と V(B) を
調べ、電圧源の振幅が十分であることを確認し、可能であれば周波数範囲を狭めてシミュレーション時間を
最小限に抑えます。
.step oct param freq 5K 500K 5
.save V(a) V(b)
.option plotwinsize=0 numdgt=15
• シミュレーションを実行します(ステータスの更新については左下隅を参照)。
(「View」メニューの「SPICE Error Log」を選択して)
「SPICE Error Log」を開き、
• ボード線図を表示するには、
ログを右クリックして「Plot .step ed .meas data」を選択します。
「Plot Settings」の「Visible Traces」を選択
します。利得を選択します。このプロットにより、 SMPS 設計回路のクロスオーバー周波数および位相余裕を
求めることができます。
• LT3055:高精度の電流制限機能と診断機能
を備えた 500mAリニア・レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/LT3055
高精度アンプ
• LTC2057:高電圧、低ノイズのゼロドリフト・
オペアンプ
www.linear-tech.co.jp/LTC2057
理想ダイオード
• LT4320/-1:理想ダイオード・ブリッジ・
コントローラ
www.linear-tech.co.jp/LT4320
このほかの例や資料は、教育用の例(..\LTspiceIV\examples\Educational\FRA\)および「Help Topics」の
FAQ セクションにあります(F1 を押してください)。
シミュレーションを楽しんでください !
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 23
低照度で高い効率を維持する太陽電池チャージャ
J. Celani
INCREASING ILLUMINATION
VMP
I VS V
PPANEL (W)
P VS V
IPANEL (A)
太陽電池パネルの重要な特性は、照度レベルに関係なく、比較的一定
の動作電圧(VMP)でピーク電力を出力することです(図 1 参照)。2A バッ
テリ・チャージャの LT3652 は、入力電圧レギュレーション機能を実装
することにより、この特性を利用して太陽電池パネルの動作効率をピー
クに維持します(特許出願中)。供給可能な太陽光発電量が不十分で
LT3652 バッテリ・チャージャの電力要件を満たすことができない場
合、入力電圧レギュレーション機能により、バッテリの充電電流が減少
します。これにより、太陽電池パネルの負荷が減少してパネルの電圧
が VMP に維持されるので、パネルの出力電力は最大になります。パネ
ルのピーク効率を実現するこの方法は、最大電力点制御(MPPC)と呼
ばれます。
VPANEL (V)
図 1.太陽電池パネルは、照度レベルとは比較的無関係な特
定の出力電圧(VMP)で最大電力を発生します。2A バッテリ・
チャージャ LT3652 は、太陽電池パネルの入力電圧を VMP に
安定化することにより、パネルの出力電力を最大限に高めます。
MPPC は低照度期間中の太陽電池パネルの効
低照度期間中、入力レギュレーション・ループ
池パネル電圧での立ち下がりしきい値で入力低
率を最適化しますが、電力レベルが低いとバッ
はチャージャの出力電流を C/10 より低い値に
電圧ロックアウト(UVLO)を作動させます。太
テリ・チャージャの電力変換効率が悪化し、パネ
低減して、CHRG ピンを高インピーダンスにす
陽電池パネルの電圧は、チャージャがディスエー
ルからバッテリまでに至る全体的な電力伝送効
ることができます。この状態ピンの状態の変化を
ブル状態であるのに対応して、 UVLO の立ち上
率が低下します。この記事では、電力レベルが
使用して IC をディスエーブルするには、入力レ
がりしきい値に達するまで UVLO のヒステリシ
低いときにバッテリ・チャージャがエネルギーを
ギュレーション電圧(VIN(REG))より高い太陽電
ス範囲を上昇します。チャージャはその後、入
一気に放出するよう強制するシンプルな PWM
充電技法を適用することにより、バッテリ・チャー
ジャの効率を改善する方法を示します。
電流モニタ状態ピンを使用した
低電力状態の通知
LT3652 の CHRG 電流モニタ状態ピンは、バッ
SOLAR PANEL INPUT
~25V OC VOLTAGE
VMP = 17V
D2
D1
R4
536k
C1
390µF
R6
1M
テリ充電電流の状態を示し、PWM 機能を制
VIN
LT3652
VIN_REG
SHDN
R5
100k
御するためにここで使用されます。このピンは、
FAULT
チャージャ出力電流が C/10(つまり設定最大電
CHRG
流の 1/10)より大きくなると L になり、出力電
R7
63.4k
流が C/10 より小さいと高インピーダンスになり
ます。
TIMER
C4
0.68µF
M1
R8
1M
SW
D3
1µF
L1
10µH
BOOST
RSENSE 0.05Ω
SENSE
BAT
R1
280k
NTC
VFB
GND
R3
174k
R2
100k
D1,D2: CMSH3-40MA
D3: CMPSH1-4
L1: IHLP-2525CZ-11
M1: BSS123
PWM COMPONENTS
図 2.VMP が 17V の太陽電池パネルを電源とする 3 セル・リチウムイオン電池(12.6V)2A チャージャ
24 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
C2
10µF
+
3-CELL
Li-ION
設計上のアイデア
MPPC は低照度期間中の太陽電池パネルの効率を最適化しますが、電力レベルが低いと
バッテリ・チャージャの電力変換効率が悪化します。この記事では、低電力レベル時にバッ
テリ・チャージャがエネルギーを一気に放出するよう強制するシンプルな PWM 充電技法を
適用することにより、バッテリ・チャージャの効率を改善する方法を示します。
100
TA = 25°C
CHARGER CONVERSION EFFICIENCY (%)
INPUT REGULATION VOLTAGE (V)
22
20
18
100% TO 98% PEAK POWER
16
98% TO 95% PEAK POWER
14
12
10
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8
CHARGER OUTPUT CURRENT (A)
2
図 3.標準的な「12Vシステム」
(V MP = 17V)太陽電池パネル
PWM CIRCUIT ENABLED
80
VIN
5V/DIV
60
40
20
VCHRG
10V/DIV
WITHOUT PWM CIRCUIT
VBAT = 12V
1
10
100
ICHARGE (mA)
1k
10k
図 4.図 2 の回路の効率
5ms/DIV
図 5.図 2 の回路での PWM 動作時の VIN の波形
の効率
力電圧レギュレーション機能によって再びディス
バッテリ充電電流が 200mA より少ない場合の
低照度状態の間、太陽電池パネルの電力が不
エーブルされるまで充電電流を供給します。こ
効率が大幅に向上することを図 4 に示します。
十分で LT3652 が必要な充電電流を供給でき
のサイクルが繰り返され、一連の大電流バース
トであるチャージャ出力が発生します。これによ
り、あらゆる照度レベルで、チャージャの効率だ
けでなく太陽電池チャージャ・システム全体の効
率も最大になります。
高効率リチウムイオン・チャージャ
低電力 PWM 機能を備え、太陽電池パネルを電
源とする 3 セルのリチウムイオン・チャージャを
図 2 に示します。このチャージャは 17V の入力
レギュレーション電圧(「12V システム」パネル
で一般的な VMP)を採用しています。この電圧
は抵抗分割器 R4 および R5 を VIN_REG ピンに
使用することで設定されます。標準的な 12V シ
ステムの太陽電池パネルの動作電圧を 17V 定
格の VMP 電圧付近に保持すると、図 3 に示すよ
うに、 100% に近いパネル効率が得られます。
低電力 PWM 機能は、M1、R6、R7、R8 を使
用して実装されます。PWM 回路を追加すると、
必 要 な 充 電 電 流 が 設 定 最 大 充 電 電 流 2A の
1/10、 つまり 200mA を超えると、LT3652 の
CHRG ピンは L になります。入力レギュレー
ション・ループによって充電電流が 200mA レベ
ルより少なくなると、CHRG ピンは高インピーダ
ンスになるので、M1 のゲート電圧が VBAT まで
上昇して FET(M1)をイネーブルすることがで
きます。この FET は R7 の FET 側をグランド電
位まで低下させ、 SHDN ピンと、 R6 および R7
で構成される抵抗分割器を使用して入力電圧
UVLO 機能を作動させます。UVLO 機能は、こ
の抵抗分割器の立ち下がりしきい値を 18V に、
ない場合は、パネルから供給される電力とチャー
ジャの入力電力が等しくなるまで、 LT3652 の
入力電圧レギュレーション回路によって出力充
電電流は減少します。入力レギュレーションが
動作状態のとき、VINピンでのパネル電圧はピー
ク電力の設定電圧である 17V に保持されるの
で、パネルで発電される電力が最大限まで高ま
ります。パネルの照度が下がり、パネルが供給
可能な電力が 200mA の充電電流を満たせなく
なると、CHRG ピンは高インピーダンスになり、
UVLO機能がM1、R6およびR7を介してイネー
ブルされます。
立ち上がりしきい値を 20V にすることで設定さ
VIN の電圧は 17V で、UVLO の立ち下がりしき
れます。立ち下がりしきい値は重要な設計値で
い値より低いので、LT3652 はシャットダウンし、
あり、LT3652 のシャットダウンしきい値ヒステリ
すべてのバッテリ充電機能をディスエーブルし
シスによって規定されているように、入力レギュ
ます。バッテリ・チャージャがディスエーブルさ
レーション電圧より高く、立ち上がりしきい値よ
れた状態では、実質的にすべてのパネル出力電
り10% 低い値に設定する必要があります。
流が入力コンデンサ(C1)を充電するので、VIN
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 25
D2
D1
R4
536k
C1
390µF
R6
1M
VIN
LT3652
VIN_REG
SHDN
R5
100k
SW
D3
1µF
L1
10µH
BOOST
RSENSE 0.05Ω
SENSE
FAULT
BAT
R1
309k
NTC
CHRG
VFB
TIMER
GND
R3
174k
C2
10µF
R2
100k
100
+
6-CELL
LEAD
ACID
C4
4.7µF
R7
63.4k
M1
R8
1M
PWM COMPONENTS
D5
C5
4.7µF
D4
R9
1M
D1,D2: CMSH3-40MA
D3: CMPSH1-4
D4,D5: 1N914
L1: IHLP-2525CZ-11
M1: BSS123
FLOAT COMPONENTS
CHARGER CONVERSION EFFICIENCY (%)
SOLAR PANEL INPUT
~25V OC VOLTAGE
VMP = 17V
PWM CIRCUIT ENABLED
80
60
WITHOUT PWM CIRCUIT
40
20
VBAT = 13V
1
10
100
ICHARGE (mA)
1k
10k
図 6.VMP が 17V の太陽電池パネルを電源とする 6 セル 2A の鉛蓄電池チャージャ
図 7.図 6 の回路の効率曲線
の電圧は UVLO 立ち上がりしきい値の 20V に
がディスエーブル状態のときは H です。チャー
吸収モード充電が完了すると、C/10 充電電流し
達するまで上昇し、 LT3652 を再イネーブルし
ジャがディスエーブル状態のとき、パネルのエ
きい値への到達に応じて CHRG ピンは高イン
ます。バッテリ・チャージャは入力レギュレーショ
ネルギーは入力コンデンサに蓄積されるので、
ピーダンスになり、フロート・モードのメンテナ
ンしきい 値の 17V より大 幅に高 い VIN により
パネルからの出力電力は途切れません。太陽電
ンス充電が始まります。レギュレーション電圧は
再イネーブルされるので、最大限の充電電流が
池パネルの効率は、PWM 動作時はパネルの平
フロート・モード時に 14.4V から 13.5V に低下
バッテリに流れ込みます。CHRG 状態ピンは高
均電圧(約 18.5V)に相当します。
しますが、これは VFB 加算ノードから R9 を実質
いバッテリ充電電流レベルに対応して L にな
的に除去することによって実現します。R9 の実
るので、UVLO 機能はディスエーブルされます。
高効率鉛蓄電池チャージャ
バッテリ・チャージャによって要求される電力が
低 電 流 PWM 機 能 を 備 えた 6 セ ル 鉛 蓄 電 池
スされた D4 を介して)R8 によって H になると、
太陽電池パネルから供給可能な電力より小さい
チャージャを図 6 に示します。このバッテリ・
ダイオード OR 回路(D4 および D5)によって実
ままである限り、17V を維持する入力レギュレー
チャージャは、図 2 のチャージャに対して使用さ
現されます。
ションによってバッテリ充電電流が減少すると、
れた太陽電池パネルと同様な特性を持つ太陽
パネルの電圧は急激に低下し、VIN が 17V に減
電池パネル向けに設計されています。
少するまで低下し続けます。充電電流がもう一
度 200mA まで減少すると、 CHRG ピンは高イ
ンピーダンスになり、 UVLO 回路が再作動して
ディスエーブル / イネーブル・サイクルが繰り返
され、一連の充電電流「バースト」が生じる結果
となります。この電流バーストは、平均すると太
陽電池パネルから供給可能な電力に相当する
質的な除去は、CHRG ピンの電圧が(逆バイア
太陽電池パネルの照度レベルが低いことが原
因で LT3652 チャージャの入力電力が不十分
この鉛蓄電池チャージャは 3 段階の鉛蓄電池
になった場合は、フロート・モードの充電レギュ
充電プロファイルを実行し、 2A のバルク・モー
レーション動作が実行されます。入力レギュレー
ド充電、 14.4V までの吸収モード充電、および
ションによって充電電流が 200mA より少なくな
13.5V でのフロート充電メンテナンスを採用し
り、PWM 動作が始まると、CHRG ピンの電圧
ています。このバッテリ・チャージャは、太陽電
はパルス波形になります。D5 および C5 は、D4
池パネルから十分な入力電力が供給されるとい
での連続逆バイアスを維持するピーク検出フィ
う前提で、吸収モードのレギュレーション電圧で
ルタを実現し、PWM 動作時にチャージャをフ
ある 14.4V まで CC/CV 特性で充電しながら、
ロート・モード(VCHARGE = 13.5V)に保持し
図 2 の 回 路 の PWM 動 作 を 図 5 に 示します。
最大 2A を供給します。バッテリの電圧がレギュ
ます。PWM 回路を追加すると、バッテリ充電電
LT3652 がディスエーブル状態の間、VIN の電
レーション電圧の 14.4V に近づくにつれて充電
流が 200mA より少ない場合の効率が大幅に向
上することを図 7 に示します。
バッテリ充電電流になります。
圧は入力レギュレーションしきい値の 17V から
電流は減少し、充電電流が 200mA、つまり最
シャットダウンしきい値の 20V まで上昇します。
大充電電流の 1/10 まで減少すると吸収モード充
LT3652 の CHRG ピンの電圧は、チャージャが
電が完了します(C/10)。
イネーブル状態のときは L であり、チャージャ
26 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
PWM 動作時には、図 2 のバッテリ・チャージャ
について前述したように、IC がディスエーブル
設計上のアイデア
SOLAR PANEL INPUT
~25V OC VOLTAGE
VMP = 17V
D2
D1
R4
1M
C1
390µF
VIN
R6
1M
LT3652
VIN_REG
SHDN
R5
215k
FAULT
CHRG
D6
R7
73.2k
C6
4.7µF
TIMER
D7
R10
1.2M
D3
1µF
L1
10µH
BOOST
RSENSE 0.05Ω
SENSE
BAT
R1
309k
NTC
VFB
GND
C2
10µF
R2
100k
R3
174k
+
6-CELL
LEAD
ACID
C4
4.7µF
M1
R8
1M
SW
VMP REDUCTION
COMPONENTS
PWM COMPONENTS
D5
C5
4.7µF
D4
R9
1M
FLOAT COMPONENTS
D1,D2: CMSH3-40MA
D3: CMPSH1-4
D4–D7: 1N914
L1: IHLP-2525CZ-11
M1: BSS123
図 8.VMP が 17V の太陽電池パネルを電源とし、低電流で VMP をトラッキングする 6 セル 2A 鉛蓄電池チャージャ
状態の期間中、入力電圧は入力レギュレーショ
接続します。CHRG ピンの電圧が H になると、
16.25V になります。このチャージャは、低照度
ンしきい値の 17V からシャットダウンしきい値
R10 は逆バイアスされた D7 を介して加算ノー
期間中に PWM 動作を実現しながらパネルの動
の 20V まで上昇します。太陽電池パネルの出
ドから実質的に除去されるので、VIN(REG) は
作電圧を低下させることにより、チャージャの変
力電力は、パネルの平均電圧(約 18.5V)に対
17V から 15V に低下します。
換効率と太陽電池パネルの出力電力効率の両
応します。図 3 は、出力電流が高い場合にはこ
の電圧が最適な動作範囲内に入っているが、
200mA より低い電流では最適な動作範囲より
上の領域であることをことを示しています。長
時間の低照度動作アプリケーションで太陽電池
パネルの出力効率とバッテリ・チャージャの効
率を両方とも最大にするには、バースト期間中
VIN(REG) と UVLO の電圧を低くする必要があ
ります。この実行方法を以下に説明します。
VMP に低電流で追従する高効率鉛蓄電池
照度レベルが低いことが原因でチャージャの入
力電力が不十分になると、入力レギュレーショ
ン・ループによって充電電流が減少し、 VMP を
太陽電池パネルの電圧の 17V に維持します。充
電電流が 200mA より少なくなると、前述した鉛
蓄電池チャージャ回路の場合と同様に、チャー
ジャが PWM 動作を開始し、レギュレーションし
きい値が低下してフロート充電が可能になりま
す。さらに、このチャージャは VIN(REG) を 15V
に低減して、太陽電池パネルの VMP が低電流
チャージャ
で下がることに追従します。
図 8 の LT3652 鉛蓄電池チャージャは、図 6 の
D6 お よ び C6 は、 前 述した D5 お よ び C5 と
バッテリ・チャージャに似ていますが、充電電流
が 200mA より少ないときに入力レギュレーショ
ン電圧(VIN(REG))を下げます。これにより、低
電流領域でのパネル固有の VMP の低下に追従
することで、パネルの効率が向上します。
低電流時のVMPトラッキング機能は、入力レギュ
レーション回路の抵抗分割器である R4 および
R5 に R10 を追加することによって実装します。
R10 はダイオード OR 回路(D6 および D7)を
介して入力レギュレーション回路の加算ノードに
同様にピーク検出フィルタを実現します。この
フィルタは D7 での連続逆バイアスを維持し、
PWM 動作時にチャージャの入力レギュレーショ
方を最大化します。
まとめ
LT3652 バッテリ・チャージャ IC は、 特許出
願中の入力電圧レギュレーション回路を特長
としています。この回路を使用することにより、
太陽電池パネルの電圧をその最大電力点電圧
(VMP)に維持します。太陽電池パネルの出力
電力効率はこの技法を使用して最適化されるの
に対して、バッテリ・チャージャの効率は低出
力電流時に低下します。太陽電池式バッテリ・
チャージャ LT3652 の効率は、低照度状態の間、
わずか数個の外付け部品を使用して実装され
るシンプルな PWM 技法によって著しく向上し、
チャージャと太陽電池パネルの動作効率を両方
とも最大にすることができます。n
ン電 圧を 15V の低 照 度レ ベルに保 持します。
PWM 制 御の部 品(M1 および R6∼R8)によ
り、UVLO しきい値の 16V(立ち下がり)および
17.5V(立ち上がり)が実装されます。PWM 動
作時に、VINピンのパネル電圧は入力レギュレー
ション電圧の 15V から UVLO 立ち上がりしき
い値の 17.5V まで上昇し、平均パネル電圧は約
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 27
AC24V および AC12V の照明装置で環境保護基準に
適合:高力率、高効率コンバータで駆動する LED で
ハロゲン球を置き換え
Keith Szolusha
LED は、 ハロゲン球に代わるエネルギー効率の優れた堅牢で高性能の代替品として、AC24V および
AC12V の照明装置への使用が増加しています。LED を駆動する電力コンバータは、力率が高く(一般に認
められた環境保護基準を満たすためには約 90%)、効率的で、使用する部品点数が最小限で済み、発熱を
抑えて動作する必要があります。絶縁は必要ありません。
これらの要件を満たす 1 つの解決策では、整流
い電力の場合には、標準のダイオード・ブリッジ
たはパルスの)定電流を流し込むことができま
器ブリッジと電流制御の同期整流式昇降圧コン
を使用することができます。両方の解決策を以
す。このデバイスは、一列の LED に定電流を流
バータを組み合わせています。特に、4 スイッ
下に示します。
すのに使用する出力電流帰還ループ、および整
チの同期整流式昇降圧コンバータを 4 スイッチ
の理想ダイオード整流器ブリッジと対にすること
で、大電力 LED に対応することができます。低
CIN
1µF
50V
51Ω
0.1µF
24VAC
60Hz
TG1
IN1
LT4320
IN2
1µF
50V
100k
D3
OUTN
BG2
470nF
1M
OUTP
IVINP
CTRL
IVINN
VIN
INTVCC
TG1
22.6k
M1
SWI
BG1
INTVCC
200k
LT3791
IVINMON
L1 7.8µH
M4
1M
M3
44.2k
RSENSE
0.008Ω
SHORTLED
OPENLED
M2
0.1µF
OPENLED
SNSN
IVINMON
PGND
ISMON
ISMON
BG2
CLKOUT
CLKOUT
SW2
OVLO
TG2
SYNC
FB
SGND
ISP
0.1µF
SS
RT
VC
CSS
22nF
CC
22nF
45.3k
500kHz
図 1.AC24V 入力、60W 出力の LEDドライバ(600W のハロゲン球相当)は、高力率および高効率を特長としています。
28 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
RLED
0.022Ω
PULSATING
LEDs
120Hz
15V–25V
0A–4.4A
ISN
PWMOUT
VREF
COUT
4.7µF
50V
×4
SNSP
200k
SHORTLED
CVCC
4.7µF
10V
0.1µF
BST1
EN/UVLO
M8
D1 D2
PWM
BST2
37.4k
BG1
M7
る CTRL 調光入力ピンを特長としています。
RIN
0.003Ω
M6
TG2
て力率の高いパルス LED 電流出力を発生でき
IC の LT3791 は、一列の大電力 LED に(DC ま
PVIN
24VRMS
PULSATING 120Hz
M5
流器ブリッジの 120Hz 半正弦波出力に接続し
60V、4 スイッチ同期整流式昇降圧コントローラ
D1, D2: NXP BAT46WJ
D3: SMAJ60A
L1: WÜRTH 744325780 7.8µH 8A
M1, M2: RENESAS RJK0651DPB 60VDS
M3, M4: RENESAS RJK0451DPB 40VDS
M5–M8: VISHAY Si7414DN 60VDS
設計上のアイデア
この環境にやさしい 60W の LED 照明ソリューションは、鉛、
水銀、アルゴン、キセノン、またはクリプトンなどのガスを
使用しない 600W のハロゲン照明とほぼ同等です。
IAC
2A/DIV
PVIN
10V/DIV
VLED
5V/DIV
IL1
2A/DIV
VAC
20V/DIV
ILED
2A/DIV
ILED
2A/DIV
5ms/DIV
図 2.60Hz AC24V の入力波形
5ms/DIV
5ms/DIV
図 3.120Hz のパルス LEDドライバの波形
図 4.120Hz のパルス PVIN
LT4320 は、4 つの標準的な整流器ダイオード
電力損失が大きくなって発熱します。LT4320
力率 98.1%
の 代 わりに 4 つ の MOSFET をドライブして、
は、抵抗値の低い外付け N チャネル FET をドラ
60Hz の AC24V 入 力 から 120Hz の 24VRMS
イブすることにより、大電力の AC アプリケーショ
98.1% の 力 率 で AC24V から直 接 動 作 する
パルス出力への変換効率を最高にする理想ダイ
ンが効率的に動作して発熱を抑えるのに役立ち
オード整流器ブリッジです。電流が 5A 以上に達
ます。
すると、標準的な整流器ブリッジのダイオードは
LEDドライバを図 1 に示します。この LEDドラ
イバは、LED 電流のピークが 4.4A で 120Hz の
パルス電力により、最大 25V の LED をドライブ
できます。人間の目では 120Hz のパルス光を感
図 5.図 1 に示す高効率 LEDドライバの部品は、発熱が抑えられています。LT4320 理想ダイオード・ドライバは、最大限の LED 電流でも発熱が抑えられていることに注意してください。大電力昇降圧コ
ンバータの LT3791と補助部品は、温度上昇が 24℃未満でありながら、60W の LED 電力を供給します。基板裏面(はめ込み)の 4 つの理想ダイオード・ブリッジ MOSFET の温度上昇は 13℃未満です(周
囲温度は 23℃)。
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 29
PVIN
24VRMS
PULSATING 120Hz
D3
D4
D5
CIN
1µF
50V
51Ω
0.1µF
1µF
50V
D7
24VAC
60Hz
RIN
0.003Ω
470nF
1M
D6
100k
IVINP
CTRL
IVINN
VIN
INTVCC
D1 D2
PWM
BST2
37.4k
TG1
22.6k
INTVCC
200k
LT3791
IVINMON
L1 15µH
1M
M3
44.2k
RSENSE
0.015Ω
SHORTLED
OPENLED
M2
M4
SNSP
200k
SHORTLED
0.1µF
M1
SWI
BG1
COUT
4.7µF
50V
×4
0.1µF
BST1
EN/UVLO
CVCC
4.7µF
10V
OPENLED
SNSN
IVINMON
PGND
ISMON
ISMON
BG2
CLKOUT
CLKOUT
SW2
OVLO
TG2
SYNC
FB
SGND
ISP
RLED
0.05Ω
PULSATING
LEDs
120Hz
15V–25V
0A–2A
ISN
0.1µF
PWMOUT
VREF
SS
RT
VC
CSS
22nF
CC
22nF
45.3k
500kHz
D1, D2: NXP BAT46WJ
D3–D6: PDS360
D7: SMAJ60A
L1: WÜRTH 744071150 15µH
M1, M2: RENESAS RJK0651DPB 60VDS
M3, M4: RENESAS RJK0451DPB 40VDS
図 6.代替の 24Wソリューションでは、回路を簡単にするため、標準的なダイオード整流器を使用します。
知できないので、一定の明るさとして認識されま
動は厳しくなく、突入電流は力率の悪化に影響
余地を残しています。標準の整流器ブリッジで
す。力率の高い AC24V の入力電圧および入力
しません。
生じる温度上昇は約 50℃であり、動作時の効率
電流の波形を図 2 に示します。120Hz のパルス
は数ポイント低下します。
LED 電流波形を図 3 に示します。
高効率および高力率の 60W
パルス LEDドライバ
全効率は、入力電力、力率、および供給される
CTRL ピン の 電 圧 による LED 電 流 の 制 御 を
図 1 の AC24V パルス LEDドライバ・コンバー
出力電力を別々に測定して計算します。実際の
利 用して 高 い 力 率 を 達 成して います。最 大
LED 電流は RLED により 4.5A に設定されます
が、CTRL ピンは整流器を通過した 120Hz の
PVIN 入力電圧(図 4 参照)をモニタし、LED
電流を制御して入力電圧と整合させます。入力
電圧がシャットダウン・ピンのしきい値電圧より
低くなると、デバイスはシャットダウン状態にな
り、スイッチングは停止します。LED 電流は出
力コンデンサが放電されるにつれて少なくなり、
入力電圧はその後すぐにシャットダウン・ピンの
しきい値電圧より高くなって、 LT3791 はバック
アップを開始します。低入力電圧時の LED 電流
は CTRL ピンによって低く抑えられるので、起
30 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation
タは、 94% の効率で約 60W の LED 照明電力
を供給します。この環境にやさしいソリューショ
ンは、鉛、水銀、アルゴン、キセノン、またはク
リプトンなどのガスを使用しない 600W のハロ
ゲン照明代替品とほぼ同等です。LT3791 昇降
圧コンバータの 4 つの同期スイッチと LT4320
理想ダイオード・ブリッジの 4 つの同期スイッチ
入力電力 63.0W、見掛けの入力電力 64.4W、
および 力 率 98.1% という値 は、AC 電 源 HP
6812A を使用して測定されています。
出力電力の測定は、やや複雑です。電流プロー
ブとオシロスコープを使用して、コンバータの
出力でパルス電流とパルス電圧の波形を取り
込みます。これらの波形から、 LED のオン時間
は、効率を高める役割を担っています。図 5 は、 (t )につ いてコンバ ータの 出 力 RMS 電 流
ON
60W の変換を行っているにもかかわらず、回路
および電圧を計算します。オン時間の出力電力
部品の発熱が抑えられていることを示していま
す。部品の温度上昇は 24℃未満なので、さらに
電力の高いアプリケーションに対しても十分な
は POUT(ON) = VRMS(ON) • IRMS(ON) と なり
ます。LED のオフ時間の間は電流が流れない
ので、出力電力は 0 です。60W という出力電力
設計上のアイデア
24W 回路の原理は 60W 回路の原理と同じであり、2 つの回路は
同じ要領で動作します。24W 回路の効率は 90% で、 60W 回路で
実現される 94% より低くなります。それにもかかわらず、回路全体
としては消費電力が少ないので、この損失は許容範囲内です。
図 7.24W ソリューションの熱性能
は簡単なデューティ・サイクルの式(次式)を使
94% より低くなります。それにもかかわらず、回
よび 94% の効率を兼ね備えています。この回路
用して計算します。POUT = POUT(ON) • tON •
120Hz 全体的な効率は、出力電力を実際の入
路全体としては消費電力が少なく、ディスクリー
を使用すると、大電力の AC24V ハロゲン照明
トの整流器ブリッジ部品での温度上昇は 2 つの
を、より堅牢で環境にやさしい LED に簡単に置
力電力で割った値となります。
回路間で同等となるので、この損失は許容範囲
き換えることができます。電力レベルが低い場
高効率および高力率の 24W
パルス LEDドライバ
図 6 の回路は、AC24V の入力で動作する高効
率で高力率の 24W パルス LEDドライバです。
この場合の電力レベルは図 1 の 60W LEDドラ
イバの半分に満たないので、図 8 に示す整流器
ブリッジは、理想ダイオードではなく4 つのディ
スクリート・ショットキ・ダイオードで構成されて
います。単純な構成にした代償として、効率が若
干低下し、放熱量が増加します。
内です。ディスクリートの整流器ブリッジでは、
合、LT3791 はシンプルなディスクリート・ダイ
部品の発熱は図 7 に示すように最大でわずか
オード整流器ブリッジと組み合わせて使用でき
49℃なので、ほとんどの大電力 LEDドライバ要
ます。たとえば、効率が 90% で力率も同様に高
件の範囲内です。
い 24W LEDドライバ内部の整流器ブリッジな
効率を高くするには、ディスクリートの整流器を
どです。n
LT4320 ベースの整流器に置き換えれば済みま
す。一般に、電力レベルおよび温度が上昇する
につれて、コンバータと整流器の両方で同期整
流の必要性が高まります。
まとめ
24W 回路の原理は 60W 回路の原理と同じであ
LT4320 および LT3791 による同 期 整 流 式 昇
り、 2 つの回路は同じ要領で動作します。24W
降圧パルス LEDドライバは、120Hz で 60W の
回路の効率は 90% で、 60W 回路で実現される
LED 電力を供給する能力と、98.1% の力率お
2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 31
circuits.linear-tech.co.jp からのハイライト
1nF
VCC
3.3V
0.56µF
22pF
広帯域レシーバ
LTC5551 は 2.5V∼3.6V で動 作するミキサで、 非 常に高いダイナミックレンジ
が要求される RF ダウンコンバーティング・ミキサ・アプリケーションに最適です。
LTC5551 は 300MHz∼3.5GHz の RF 周波数範囲をカバーしており、LO の周波
数範囲は 200MHz∼3.5GHz です。LTC5551 は、非常に高い IIP3 および P1dB
を低消費電力で実現します。標準的なアプリケーションは、700MHz∼2.7GHz の
周波数範囲をカバーする基地局レシーバです。RF 入力は広い周波数範囲に適合可
能であり、IF は最大 1GHz まで使用可能です。
circuits.linear-tech.co.jp/644
470nH
470nH
475Ω
475Ω
IF+
EN
4mA TO 20mA INPUT
>10V COMPLIANCE
1µF
220k
LTC3255
PGOOD
2.15M
SHUNT
GND
10µF
FB
1.21M
0.1µF
3.9pF
LTC6946
SYNTH
LO
LO
1700MHz
BIAS
EN
VCC
0.56µF
22pF
4mA∼20mA 電流ループ用の 7.4mA DC 電源
LTC3255 は、4V∼48V の入力電圧から安定化出力(2.4V∼12.5V の範囲で可変)を生成
するスイッチト・ キャパシタ型降圧 DC/DC コンバータです。入力電圧が出力電圧の 2 倍を超
えるアプリケーションでは、2:1 の容量性チャージポンプ動作により、出力電流供給能力が拡
張され、入力電源の電流制限値を超えます。無負荷時には、Burst Mode® 動作により、VIN
の静止電流は 16µA まで減少します。
LTC3255 は VIN シャント・レギュレータを内蔵しているので、4mA∼20mA の電流ループ・
アプリケーションに適しています。このデバイスは電流を増倍することができます。4mA の入
力電流で 7.4mA の負荷に電力を継続的に供給できます。あるいは、LTC3255 はリニア・レ
ギュレータの高効率の代替品として機能し、降圧 DC/DC コンバータに代わる省スペースでイ
OUTPUT
3.3V
7.4mA
VOUT
PGOOD
BIAS
–
C–
LTC5551
7.5nH
1µF
C+
ADC
IF –
LO
VCC
3.3V
VIN
LTC2208
1nF
RF
RFIN
LTC6416
IF
AMP
IF
2.2pF
EN
(0V/3.3V)
+
BPF
ンダクタ不要の代替手段を提供します。
circuits.linear-tech.co.jp/643
4V TO 19V
+
3V TO 19V
SOLAR
PANEL
AC2
VIN
SW
LTC3330
1µF
6.3V
10µF
25V
–
AC1
4.7µF, 6.3V
CAP
SWB
VIN2
VOUT
けの単一出力電源を構築します。内蔵の全波ブリッジ整流器と高電圧の降圧コン
バータで構成されている環境発電電源は、圧電、太陽光、または磁気の各エネルギー
22µH
1.8V TO 5V
50mA
LDO_IN
太陽光発電 / 圧電発電回路およびバッテリ寿命延長回路
LTC3330 は、高電圧の環境発電(エナジーハーベスト)電源と、一次電池バッテリ
で駆動する DC/DC コンバータを一体化して、代替エネルギー・アプリケーション向
SWA
PIEZO
MIDE
V25W
22µH
+
PRIMARY
CELL
1.8V TO 5.5V
源からエネルギーを収集します。一次電池入力は、最小 1.8V の入力で動作可能な
昇降圧コンバータに電力を供給します。どちらの DC/DC コンバータも 1 つの出力に
エネルギーを供給できます。降圧コンバータが動作するのは収集したエネルギーを
利用できるときであり、バッテリから流れる静止電流を実質的にゼロまで低減するの
で、バッテリの寿命が延びます。昇降圧コンバータが VOUT に電力を供給するのは、
収集したエネルギーがなくなったときだけです。
4.7µF
6.3V
3
3
3
4
10mF
2.7V
SCAP
BAT
BAL
10mF
2.7V
OUT[2:0]
EH_ON
LDO[2:0]
PGVOUT
IPK[2:0]
UV[3:0]
PGLDO
LDO_EN
LDO_OUT
circuits.linear-tech.co.jp/642
GND
VIN3
OPTIONAL
1.2V TO 3.6V
50mA
1µF
6.3V
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47µF
6.3V
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22µF
6.3V