参考回路:日本語版

日本語参考資料
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回路ノート
CN-0335
使用したリファレンス・デバイス
テスト済み回路設計集“Circuits from the Lab™ ”は共
通の設計課題を対象とし、迅速で容易なシステム
統合のために製作されました。さらに詳しい情報
又は支援は http://www.analog.com/jp/CN0335 をご覧
ください。
AD8606
高精度、低ノイズ、デュアル CMOS、
レール to レール入力/出力オペアンプ
AD7091
R
1 MSPS、超低消費電力、 12 ビット
ADC
ADuM54
01
DC/DC コンバータ内蔵、4 チャンネ
ル、2.5kV アイソレータ
±10V 入力、12 ビット、300 kSPS、単電源、完全絶縁の
データ・アクイジション・システム
システムは単電源3.3 Vを使用して±10 Vの入力信号を処理し
ます。室温でキャリブレーションした後の総合誤差は±10°Cの
温度変化に対して±0.1% FSR以下なので、各種工業測定に理
想的です。
評価および設計サポート環境
回路評価ボード
CN0335 評価用ボード(EVAL-CN0335-PMDZ)
SDP/PMD インターポーザ・ボード(SDP-PMD-IB1Z)
システム・デモンストレーション・プラットホーム
(EVAL-SDP-CB1Z)
設計と統合ファイル
回路図、レイアウト・ファイル 、部品表
この組み合わせは回路のフットプリントが小さいので、精
度、速度、価格、大きさが重要な役割となるデータ・アクイ
ジション・システムの業界最先端のソリューションとなりま
す。データと電源の両方が絶縁されているので、この回路は
高電圧、あるいは激しい産業環境で起こるグラウンド-ループ
干渉に対しても強固です。
回路の機能とその利点
図1に示す回路はわずか3個のアクティブ・デバイスからなる
完全に絶縁された12ビット、300 kSPSデータ・アクイジショ
ン・システムです。
U1B
1/2 AD8606
R1
52.3kΩ
U2
ADuM5401
(C-GRADE)
VREF
R2
12kΩ
+3.3V
+3.3V
U1A
1/2 AD8606
GND_ISO
R3
51Ω
INPUT
–10V TO +10V
1
2
C10
DNP
R5
12kΩ
U3
AD7091R
VISO
+3.3V_IN
GND
VOA
VIA
SS
SCLK
VOB
VIB
SCK
CONVST
VOC
VIC
CONVST
VID
VOD
+3.3V
C8
1µF
GND_ISO
VDD1
GND1
CS
SDO
VREF
2.5V
GND_ISO
GND_ISO
VSEL
GNDISO
MISO
RCOUT
GND1
ISOLATION
GND_ISO
R6
10kΩ
CON
J2
GND_ISO
VDD
GND REGCAP VDRIVE
GND_ISO
R4
52.3kΩ
REFOUT
VIN
C9
4.7nF
+3.3V
GNDISO
TP1
+0.1V TO +2.4V
GND
PMOD CON
12-PIN
J1
11649-001
C11
DNP
図 1. 絶縁された±10 V 単電源・データ・アクイジション・システム(全接続の一部およびデカップリングは省略されています)
アナログ・デバイセズ社は、提供する情報が正確で信頼できるものであることを期していますが、その情報の利用に関して、あるいは利用に
よって生じる第三者の特許やその他の権利の侵害に関して一切の責任を負いません。また、アナログ・デバイセズ社の特許または特許の権利
の使用を明示的または暗示的に許諾するものでもありません。仕様は、予告なく変更される場合があります。本紙記載の商標および登録商標
は、各社の所有に属します。※日本語資料は REVISION が古い場合があります。最新の内容については、英語版をご参照ください。
Rev. A
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本
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電話 03(5402)8200
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電話 06(6350)6868
CN-0335
回路ノート
回路は入力信号処理段、ADC 段、出力アイソレーション段で
構成されています。±10 V の入力信号はレベル・シフトさ
れ、デュアル・オペアンプ AD8606 の片方のオペアンプ U1A
で減衰されます。オペアンプの出力は 0.1 V ~ 2.4 V で、直線
性を維持するため 100 mV ヘッドルームを計算にいれると
ADC の入力範囲(0 V ~ 2.5 V)に一致します。ADC から得
られるバッファ付き電圧リファレンス(VREF =2.5 V)は必要な
オフセット電圧を生成します。この回路ノートで後ほど述べ
ますが、抵抗値は他の良く使用される入力範囲に合わせて変
更することができます。
回路は単電源動作が可能です。AD8606 の最小出力電圧の仕
様は負荷電流を 10 mA とすると、温度範囲−40°C ~ +125°C
全体で、2.7 V 電源の場合 50 mV、5V 電源の場合 290 mV で
す。 電源が 3.3 V、負荷電流が 1 mA 以下で、温度範囲がもっ
と狭い場合には、最小出力電圧は概算で 45 mV ~ 60 mV 程で
す。
部品の公差を考慮し、安全余裕を持たせるために最小出力電
圧(範囲の下限)を 100 mV に設定します。出力範囲の上限
は ADC の入力での大振幅に対して 100 mV ヘッドルームを設
けるために 2.4 V に設定します。従って入力オペアンプの公
称出力電圧範囲は 0.1 V ~ 2.4 V になります。
AD8606 のもう一方のオペアンプ(U1B)は ADC (U3) の
AD7091R に内蔵されている 2.5 V 電圧リファレンスをバッフ
ァするために使用されます。
AD8606 をこのアプリケーションに選択する理由はその低オ
フセット電圧(65 μV max)、低バイアス電流(1pA max)、低
ノイズ(12 nV/√Hz max)によります。消費電力は 3.3 V 電源
でわずか 9.2 mW です。
帯域外ノイズを減らすためにオペアンプの出力段の後に 1 極
RC フィルタ(R3/C9) を接続します。RC フィルタのカットオフ
周波数を 664 kHz に設定します。低周波数のノイズの場合
で、さらにフィルタ・カット・オフ周波数を下げる必要のあ
る場合には、オプションで 2 次フィルタ(R4、 C10 と R1、
R2、 C11)を接続する事ができます。このような場合には、信
号帯域幅が低いので AD7091R のサンプリング・レートを下
げる事ができます。
回路は4チャンネル・デジタル・アイソレータADuM5401 (C
グレード) によってDC的に絶縁されます。デジタル・アイソ
レータADuM5401は絶縁された出力データに加え、回路用に
絶縁された3.3 V電源も供給します。ADuM5401は絶縁する
必要のない通常の回路動作には必要ありません。DC/DCコン
バータ内蔵の4チャンネル、2.5 kVアイソレータADuM5401
は小型16ピンSOICを採用しています。 ADuM5401の消費電
力は7 MHzクロックの場合約140 mWです。
1 MSPS サンプリング・レートを実現するために AD7091R
は 50 MHz のシリアル・クロック(SCLK)を必要とします。し
かし、アイソレータ ADuM5401(C グレード)の最大データレ
ートは 25 Mbps で、それは最大シリアル・クロック周波数
12.5 MHz に相当します。さらに、SPI ポートは SCLK クロッ
クの後方エッジで出力データをプロセッサに入力する事が必
要です。。従ってクロック周波数の上限は ADuM5401 を通
る全体のラウンドトリップ伝播遅延(120ns max)によって
1/120 ns = 8.3 MHz に制限されます。
AD7091R は 12 ビット ADC ですが、プロセッサのシリア
ル・ポートの条件と互換性をもたせるために、シリアル・デ
ータは 16 ビット・ワードにフォーマットされます。従って、
サンプリング周期”Ts”は AD7091R の変換時間 650 ns+
58ns(データシートで要求されている余分な時間: 遅延 t1+遅
延 tQUIET)+SPI インターフェースのデータ転送に必要な 16 ク
ロック・サイクルで構成されます。
TS = 650 ns + 58 ns + 16 × 120 ns = 2628 ns
fS = 1/TS = 1/2628 ns = 380 kSPS
安全余裕をもたせるために、7 MHz の最大 SCLK と 300 kSPS
の最大サンプリング・レートをお勧めします。デジタル SPI
インターフェースは 12 ピン Pmod 準拠コネクタ(ディジレン
ト Pmod 仕様)を使用してマイクロプロセッサの評価用ボー
ドに接続できます。
回路デザイン
図 2 に示す回路は −10 V ~ +10 V の入力信号を減衰、しレベ
ル・シフトして ADC の入力範囲の 0.1 V ~ 2.4 V にします。
R1
52.3kΩ
+3.3V
U1A
1/2 AD8606
GND_ISO
12ビット、1MSPS、SAR ADCのAD7091Rを選択した理由は
消費電力が3.3 Vで349 μA(1.2 mW)と極めて低いからですが、
これは現在市販のどの競合品よりも極めて低くなっておりま
す。AD7091Rは又温度ドリフト±4.5 ppm/oC typの2.5 Vリファ
レンスを内蔵しています。入力帯域幅は7.5MHzで、高速シリ
アル・インターフェースはSPI互換です。AD7091Rは小フッ
トプリントの10ピンMSOPを採用しています。
OUTPUT
+0.1V TO +2.4V
GND_ISO
INPUT
–10V TO +10V
1
R4
52.3kΩ
R5
12kΩ
VREF
2.5V
R6
10kΩ
2
(アイソレータADuM5401を除く)この回路の全消費電力は
3.3V電源動作で約10.4 mWです。
Rev. A
R2
12kΩ
GND_ISO
GND_ISO
図 2.入力電圧信号処理回路
-2/8 -
GND_ISO
11649-002
回路の説明
CN-0335
回路ノート
伝達関数は重合せの原理から得られます。
V OUT = V IN
= V IN
R4 R6 

R2 
R2 
1+
 + V REF
1+
=




R4 + R5 R6 
R1 
R5 + R4 R6 
R1 
R
R4 + R
R5 R6
R0
k + V REF
R5 + R0
k = V IN GAIN + OFFSET
(1)
ここで:
R = R5 R6 =
R5R6
R5 + R6
R0 = R4 R6 =
R4R6


(2)
入力範囲が異なる場合の抵抗値の計算
(3)

R1 
これらの値を注意して選択すれば、標準抵抗値で置換える事
による全体の誤差は数パーセント以下になるでしょう。しか
し、必要なヘッドルームが確実に維持されるように、式1を
使用して入力±10 V の場合の U1A オペアンプの出力を再計算
してください。
このタイプの回路の絶対精度は主に抵抗よって決まります。
従って標準抵抗値の代入や抵抗公差による誤差を取り除くた
めにゲインやオフセットのキャリブレーションを行う必要が
あります。
R4 + R6
そして k =  1 + R2 
実際の回路では R4 と R5 に最も近い値の供給可能な標準抵抗
値を選択しました。選択した値は R4 = 52.3 kΩ そして R5 = 12
kΩ です。R1 = R4 そして R2 = R5 である事に注意してくださ
い。
入力範囲が±10 V 以外の場合、次のステップで計算を行いま
す。
ゲイン、出力オフセット、抵抗値の計算
入力スパン、出力スパン、オフセットを定義します:
入力電圧範囲が±10 V の場合、計算は次のようになります。
回路のゲインは:
GAIN =
∆V OUT
∆V IN
=
2.4 V − 0.1 V
+ 10 V − ( −10 V)
=
2.3 V
= 0.115
(4)
20 V
(11)
∆VOUT = VIOUT _ MAX − VOUT _ MIN
(12)
Offset =
そして伝達関数に従い:
(5)
GAIN =
回路の出力オフセットは:
2.4 V − 0.1 V
= 1.25 V
(6)
Offset =

R0
R2 
 = V REF
1+
k


R5 + R0
R1 
R5 + R4 R6 
(8)
GAIN =
抵抗 R と抵抗 R0 の式 2 そして式 8 と式 9 の比率を使って、比
率 R4/R6 を次のように計算できます。
(10)
抵抗 R4、R5、R6 は式 8、式 9、式 10 から次のように計算で
きます。たとえば R6 = 10 kΩ とすると R4 = 53.46 kΩ で R5
=12.3 kΩ となります。
Rev. A
(15)
(16)
R
R4 + R
(17)
k
下記の式を使って比率 R5/R0 を計算します:
VREF = 2.5V で k =1.23 の場合、式7から比率 R5/R0 は次のよ
うに計算できます:
(9)
∆VOUT
+ VOUT _ MIN
2
下記の式を使って比率 R4/R を計算します:
k =1.23 の場合(k の値は標準抵抗値 R1 と R2 の値によって変
わります)、式 4 から比率 R4/R は次のように計算できます:
R4 = 5.346 R6
(14)

R2 

k =  1 +

R1 

R4 R6
(7)
R5 = 1.46 R0
∆VOUT
∆VIN
パラメータ k の値を選びます:
そして伝達関数に従い:
R4 = 9.696 R
(13)
オフセットを計算します:
2
OFFSET = V REF
∆VOUT
+ VOUT _ MIN
2
ゲインを計算します:

R2 
R
1+
=
k
GAIN =


R4 + R5 R6 
R1  R4 + R
R5 R6
OFFSET = V OUT ( V IN = 0 V) = 0.1 V +
∆VIN = VIN _ MAX − VIN _ MIN
Offset = V REF
R0
R5 + R0
k
(18)
式 17 と式 18 の中の R と R0 を式 2 で定義した値で置き換え、
両方の式を解いて、比率 R4/R6 を求めます。
抵抗 R6 の値を選びます:比率 R4/R6 を使用して R4 を計算し
ます。R4 と R6 の値がわかったら、式 2 と比率 R4/R6 を使い
R5 を計算します。式 16 を使い R2 と R1 を計算します。R1 =
R4 とし、R2 を計算するのは妥当です。
-3/8 -
CN-0335
回路ノート
抵抗の温度係数が全体の誤差に及ぼす影響
2 点キャリブレーションの前と後のテスト・データ
式 1 から出力電圧は 5 個の抵抗(R1、 R2、 R4、 R5、 R6)
の関数である事がわかります。5 個の各抵抗の小さな変化に
対する TP1 でのフルスケール出力電圧の感度をシミュレーシ
ョン・プログラムを使用して計算しました。回路に入力した
電圧は+10 V です。各々の感度を計算した結果 SR1 = 0.19、
SR2 = 0.19、 SR4 = 0.39、 SR5 = 0.11、 SR6 = 0.50 となりました。
各々の温度係数は 2 乗和平方根(RSS)方法で結合されると仮定
すると、100 ppm/°C の抵抗を使った場合の全体のフルスケー
ル・ドリフトはおおよそ次の通りです:
2点キャリブレーションを行うために、入力に初め−10 V を印
加し、その時のADC出力コードをコード1として記録します。
次に入力に+10 Vを加え、その時のADCの出力コードをコー
ド2として記録します。ゲイン係数を次の式で計算します。
Code_2− Code_1
ここで、入力電圧は任意の出力コード(Code_x)に応じて次
の式を使って計算する事ができます:
フルスケール・ドリフト=
=100 ppm/°C √(0.192 + 0.192 + 0.392 + 0.112 + 0.502)
= 69 ppm/°C
69 ppm/°C のフルスケール・ドリフトは 0.0069% FSR/°C に相
当します。25 ppm/°C の抵抗を使用すれば、ドリフト誤差は
69 ppm/°C = 17 ppm/°C 又は 0.0017% FSR/°C に軽減します。
能動部品の温度係数が全体の誤差に及ぼす影響
オペアンプ AD8606 と ADC の AD7091R の DC オフセット
はキャリブレーションにより軽減されます。
VIN = −10 V + GF (Code_x − Code_1)
キャリブレーション前の誤差は部品の公称値を使って計算さ
れた理想伝達関数とキャリブレーション無しの実際の回路伝
達関数を比較する事により得られます。テストする回路は許
容誤差±1%の抵抗を使用して作成されました。テスト結果に
は温度変化は含まれません。
図 3のグラフはテスト結果を室温でのキャリブレーションの
前と後のパーセント誤差(FSR)で示しています。グラフからわ
かるように、キャリブレーション前の最大誤差は約0.23% FSR
です。キャリブレーションした後、誤差は±0.03% FSRに下が
りますが、それはほぼADCの1 LSB誤差に相当します。
ADC の AD7091R に内蔵しているリファレンスのオフセッ
ト・ドリフトは 4.5 ppm/°C typ で 25 ppm/°C max です。
0.25
0.20
入力アンプ U1A の AD8606 による誤差は出力範囲 2.3 V を
基準とするので 2 ppm/°C です。U1B リファレンス・バッファ
による誤差は 2.5 V を基準とするのでやはり約 2 ppm/°C で
す。
0.15
ERROR (% FSR)
オペアンプ AD8606 のオフセット・ドリフトは 1μV/°C typ で
4.5μV/°C max です。
表 1 にドリフト誤差を全てまとめました。これらの誤差には
AD7091R の±1 LSB 積分非直線性誤差は含まれていません。
AD7091R (∆VVREF/∆T = 25 ppm/°C)
AD8606, U1A (∆VOS/∆T= 4.5 μV/°C), 2
ppm/°C, Referenced to 2.3 V
AD8606, U1B (∆VOS/∆T= 4.5 μV/°C), 2
ppm/°C, Referenced to 2.5 V
Total FSR Error Temperature Coefficient
(100 ppm/°C Resistors)
Total % FSR Error for ∆T=±10°C (100
ppm/°C Resistors)
Total % FSR Error for ∆T=±10°C (25
ppm/°C Resistors)
Rev. A
Total Error
±0.0069%
FSR/°C
±0.0025%
FSR/°C
±0.0002%
FSR/°C
±0.0002%
FSR/°C
±0.0098%
FSR/°C
±0.098% FSR
±0.046% FSR
0.10
0.05
ERROR AFTER CALIBRATION
0
50 ppm/°C あるいは 100 ppm/°C の抵抗を使用すると、抵抗に
よるドリフトは全体のドリフトに最も大きな影響がある事に
注意してください。
表 1. 温度ドリフトによる誤差
Error Source
Resistors (1%, 100 ppm/°C)
ERROR BEFORE CALIBRATION
–0.05
–10
11649-003
=100 ppm/°C √(SR12 + SR22 + SR42 + SR52 + SR62)
20 V
GF =
–5
0
INPUT VOLTAGE (V)
5
10
図 3. 室温でのキャリブレーション前と後の回路テスト誤差
プリント基板レイアウト時の考慮事項
高精度が要求される回路では、ボード上の電源とグラウンド・
リターンのレイアウトを注意深く行う事が重要です。PCBはア
ナログ部とデジタル部をできる限り分離してください。このシ
ステムのPCBは簡単な2層積み重ねで構成されていますが、4層
積み重ねの方がより優れたEMCが得られます。レイアウトと
グラウンディングに関するさらに詳しい内容はMT-031 Tutorial
を、そしてデカップリング技術に関する情報についてはMT101 Tutorialをご覧ください。適切にノイズを抑制しリップル
を削減するためにAD8606に接続する電源を10 µF と 0.1 µFの
コンデンサでデカップリングしてください。これらコンデン
サには低ESR値の0.1 µFコンデンサを使用し、可能な限りデバ
イスの近くに配置してください。すべての高周波デカップリ
ング・コンデンサにはセラミック・コンデンサを推奨しま
す。電源ラインはできるだけ太いパターンにして低インピー
ダンス経路とし、電源ライン上のグリッチによる影響を軽減
させる必要があります。
-4/8 -
CN-0335
回路ノート
DC/DCコンバータを内蔵したisoPower ADuM5401は入力と出
力の電源ピンに電源バイパスを必要とします。1ピンと2ピン
の間と15ピンと16ピンの間のチップパッドのできるだけ近く
に低ESRのバイパス・コンデンサが要求されます。ノイズを
抑制しリップルを減らすには、少なくとも2個のコンデンサの
並列組み合わせが必要です。VDD1 と VISOに使用する推奨コ
ンデンサの値は0.1 μF と 10 μFです。小さい方のコンデンサは
ESRが低くなければなりません。たとえば、セラミック・コ
ンデンサの使用をお勧めします。低ESRコンデンサの両端と
電源入力ピンの間の全パターン長は2mm以下にする必要があ
ります。バイパス・コンデンサを2mm以上のパターン長で取
り付けるとデータ破壊を招く可能性があります。両方の共通
グラウンド・ピンがパッケージ近くで相互接続されていない
場合は、1ピンと8ピン間のバイパスおよび9ピンと16ピン間の
バイパスを考慮する必要があります。詳細については
ADuM5401のデータシートを参照してください。
バリエーション回路
この回路は、図に示された部品の値で、優れた安定性をもち
高精度で動作する事が証明されています。この回路で±10Vの
入力電圧範囲をデジタル出力に変換したり、この回路を他の
各種アプリケーション向けに使用する場合に他の高精度オペ
アンプや他のADCを使用する事ができます。
図 1の回路は回路デザインセクションで提供した式に従っ
て、±10 V以外の他の入力電圧範囲用に設計する事ができま
す。表 2に一部の標準的な電圧範囲のための抵抗の計算を示
します。
表 2. 標準的な電圧範囲の部品の値
Range (V)
k
R4 (kΩ)
±5
1.2
40.87
±2
2
32.174
±1
4
40.87
0 to 1
4
14.435
0 to 2
2
14.087
0 to 2.5
2
22.609
0 to 5
2
65.217
0 to 10
1
63.478
0 to 24
1
90.174
回路、ボード・レイアウト、部品表(BOM)などの全部揃っ
た技術文書パッケージがwww.analog.com/CN0335DesignSupportに載っております。
高電圧耐性
このPCBは2500Vの基本的な絶縁材の経験をもとに忠実に設計
されています。2500 Vを超えた高電圧テストはお勧めできま
せん。この評価ボードを高電圧で使用する時は注意を払って
ださい、そして安全機能をPCBに依存しないでください、な
ぜなら評価ボードは高耐圧試験(hipot試験あるいは絶縁耐圧
試験としても知られている)が行われていないかあるいは安
全性について認定されていないからです。
R5 (kΩ)
18.8
37
94
830
405
520
750
365
216
R6 (kΩ)
20
20
20
20
20
20
20
20
10
下限がゼロで上限がリファレンス電圧よりも高い場合、変換
するためにゲイン倍する必要がない(k = 1)ので、回路は簡
略化できます。例として入力範囲が0 V ~10 Vの場合を図 4に
示します。
U1B
1/2 AD8606
U2
ADuM5401
(C-GRADE)
+3.3V
+3.3V
U1A
1/2 AD8606
1
R4
63.4kΩ
2
C10
DNP
R5
365kΩ
U3
AD7091R
VISO
VREF
VOA
VIA
SS
VOB
VIB
SCK
CONVST
VOC
VIC
VID
VOD
+3.3V
GND_ISO
VSEL
GNDISO
CONVST
MISO
RCOUT
GND1
ISOLATION
GND_ISO
GND_ISO
+3.3V_IN
GND
CS
C8
1µF
GND_ISO
VDD1
GND1
SCLK
SDO
R6
20kΩ
CON
GND_ISO
VIN
VDD
GND REGCAP VDRIVE
GND_ISO
INPUT
–10V TO +10V
REFOUT
R3
51Ω
C9
4.7nF
+3.3V
GNDISO
TP1
0.1V TO 2.4V
GND
PMOD CON
12-PIN
J1
11649-004
VREF
図 1. 絶縁された 0 V ~ 10 V 単電源アナログ to デジタル変換(全接続の一部およびデカップリングは省略されています)
Rev. A
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CN-0335
回路ノート
AD7091 は AD7091R と類似していますが、電圧リファレン
ス出力がなく、入力範囲は電源電圧に等しくなります。
AD7091 は 2.5 V リファレンスの ADR391 と供に使用できま
す。ADR391 はバッファを必要としないので、回路にはシン
グルの AD8605 が使用できます。
ADR391 は高精度 2.5 V バンド・ギャップ電圧リファレンス
ですが、低消費電力、高精度(温度ドリフト 9 ppm/°C)で小
型 TSOT パッケージを採用しています。
評価開始にあたって
CN0335評価ソフトウェア・ディスクをPCのCDドライブに入
れて評価ソフトウェアをロードしてください。又CN0335
evaluation softwareからもっとも最新の評価ソフトウェアを
ダウンロードできます。”マイコンピュタ”を使用して、評価
ソフトウェア・ディスクのドライブを見つけ、setup.exeを開
いてください。オンスクリーン・プロンプトに従いインスト
ールを完了してください。すべてのソフトウェア部品を既定
の領域にインストールする事をお勧めします。
AD8608 は AD8605 のクワッド・バージョンで、もし他に高精
度オペアンプが必要の場合には AD8606 の代わりに使用でき
ます。
機能ブロック図
AD8601、AD8602、AD8604 は超低オフセット電圧、広信号帯
域幅を特徴とするシングル、デュアル、クワッドのレール to
レール入/出力、単電源アンプで、AD8605、AD8606、
AD8608 の代わりに使用できます。
セットアップ
1.
EVAL-CFTL-6V-PWRZ (+6 V DC 電源)を DC バレル・
ジャックを介して SDP-PMD-IB1Z インターポーザ・ボ
AD7457 は 12 ビット、100 kSPS、低消費電力の SAR ADC で
すが、300 kSPS のスループットが必要でなければ、電圧リフ
ァレンス ADR391 と組み合わせる事により AD7091R の代わ
りに使用できます。
2.
SDP-PMD-IB1Z (インターポーザ・ボード) を 120 ピン
ConA コネクタを介して EVAL-SDP-CB1Z SDP ボードに
回路の評価とテスト
この回路は回路評価ボード EVAL-CN0335-PMDZ 、SDPPMD-IB1Z 、 システム・デモ用プラットホーム (SDP) 評価ボ
ード EVAL-SDP-CB1Z を使用します。インターポーザ・ボー
ド SDP-PMD-IB1Z と SDP ボード EVAL-SDP-CB1Z には 120
ピン適合コネクタがあります。インターポーザ・ボードと
EVAL-CN0335-PMDZ ボードには迅速な回路性能の設定と
評価を可能とする 12 ピン Pmod マッチング・コネクタがあり
ます。EVAL-CN0335-PMDZ ボードには(この回路ノート
で述べたように)評価対象の回路が含まれており、EVALCN0335-PMDZ 回路ボードからのデータを取り込むには SDP
評価ボードを CN0335 評価ソフトウェアと共に使用します。
必要な装置
•
•
•
•
•
•
USBポート付きWindows® XP又はWindows Vista®(32-bit)
又は Windows® 7/8 (64ビット又は32ビット)対応のPC
EVAL-CN0335-PMDZ 回路評価ボード
EVAL-SDP-CB1ZSDP評価ボード
SDP-PMD-IB1Zインターポーザ・ボード
図 5 にテスト・セットアップの機能ブロック図を示します。
ードに接続してください。
3.
4.
5.
テスト
評価ソフトウェアを立ち上げます。アナログ・デバイセズの
システム開発プラットフォーム・ドライバがデバイス・マネ
ージャにリストされていれば、ソフトウェアはSDPボードと
通信します。1度USB通信が確立されれば、SDPボードを使っ
てEVAL-CN0335-PMDZボードからのシリアル・データの送
信、受信、取り込みを行う事ができます。各種入力電圧の値
に対するデータはコンピュータに保存できます。データ取り
込みのための評価ソフトウェアの使用方法に関する情報と詳
細はCN0335 Software User Guideに載っています。
EVAL-CN0335-PMDZボードの写真を図 6に示します。
CN0335評価ソフトウェア
高精度電圧源
Rev. A
接続してください。
EVAL-SDP-CB1Z (SDP ボード)を USB ケーブルで PC
に接続してください。
EVAL-CN0335-PMDZ 評価ボード を 12 ピンヘッダー
Pmod コネクタを介して EVAL-SDP-CB1Z インターポー
ザ・ボードに接続してください。
電圧源(電圧発生器)を端子ブロック J2 を介して
EVAL-CN0335-PMDZ 評価ボードに接続してくださ
い。
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CN-0335
回路ノート
EVAL-CFTL-6V-PWRZ
6V WALL WART
EVAL-SDP-CB1Z
SDP-B BOARD
J1
EVAL-CN0335-PMDZ
J2
J1
PMOD
J3
PMOD
120-PIN
J4
SDP-PMD-IB1Z
INTERPOSER BOARD
CON A
USB
11649-005
±10V
VOLTAGE
SOURCE
PC
11649-006
図 5. テスト・セットアップ機能ブロック図
図 6. EVAL-CN0335-PMDZ ボードの写真
Rev. A
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CN-0335
回路ノート
さらに詳しい資料
改訂履歴
CN0335 Design Support Package:http://www.analog.com/CN0335DesignSupport
3/14—Rev. 0 to Rev. A
Chen, Baoxing, John Wynne, and Ronn Kliger.High Speed Digital
Isolators Using Microscale On-Chip Transformers, Analog
Devices, 2003
Change to Circuit Function and Benefits Section ............................. 1
2/14—Revision 0:初版
Chen, Baoxing.iCoupler® Products with isoPower™
Technology:Signal and Power Transfer Across Isolation Barrier
Using Microtransformers, Analog Devices, 2006
Application Note AN-825:iCoupler®アイソレーション製品で
の電源の考慮事項
Analog Dialogue.Volume 40:“Digital Isolation Offers Compact,
Low-Cost Solutions to Challenging Design Problems.”,
December 2006.
MT-031 Tutorial:Grounding Data Converters and Solving the
Mystery of "AGND" and "DGND," Analog Devices
MT-101 Tutorial:Decoupling Techniques, Analog Devices
データシートと評価ボード
AD8606データシート
AD7091Rデータシート
ADuM5401データシート
「Circuits from the Lab/実用回路集」はアナログ・デバイセズ社製品専用に作られており、アナログ・デバイセズ社またはそのライセンスの供与者の知的所有物です。お客さ
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れを行う義務はありません。 商標および登録商標は各社の所有に属します。
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Rev. A
商標および登録商標は各社の所有に属します。
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