IGBTドライバ アプリケーションマニュアル

GD001‐*
IGBTドライバ
アプリケーションマニュアル
1
安全設計に関するお願い
弊社は品質、信頼性の向上に努めておりますが、半導体応用製品は故障が発生したり、誤動作
する場合があります。弊社の半導体応用製品の故障又は誤動作によって結果として、人身事故、
火災事故、社会的障害などを生じさせないような安全性を考慮した冗長設計、延焼対策設計、
誤動作防止設計などの安全設計に十分ご留意ください。
本資料ご利用に際しての留意事項
・本資料は、お客様が用途に応じた適切な弊社製品をご購入いただくための参考資料であり、
本資料中に記載の技術情報について弊社が所有する知的財産権その他の権利の実施、使用
を許諾するものではありません。
・本資料に記載の製品データ、図、表、プログラム、アルゴリズムその他応用回路例の使用に
起因する損害、第三者所有の権利に対する侵害に関し、弊社は責任を負いません。
・本資料に記載の製品データ、図、表、プログラム、アルゴリズムその他全ての情報は本資料
発行時点のものであり、弊社は特性改良などにより予告なしに変更することがあります。従って、
弊社製品のご購入に当たりましては事前に弊社または特約店への最新の情報をご確認ください。
・本資料に記載の製品データ、図、表に示す技術的な内容を流用する場合は、技術内容単体で
評価するだけでなく、システム全体で十分に評価し、お客様の責任において適用可否を判断して
ください。弊社は適用可否に対する責任は負いかねます。
・本資料に記載された製品は、人命に関わるような状況の下で使用される機器、あるいはシステム
に用いられることを目的として設計、製造されたものではありません。本資料の製品を運輸、移動
体用、医療用、航空宇宙用、原子力制御用、海底中継機器あるいはシステムなど、特殊用途への
ご利用をご検討の際には、弊社または特約店へ御照会ください。
・本資料の転載、複製については、文書による弊社の事前の承諾が必要です。
・本資料に関し詳細についてのお問合せ、その他お気付きの点がございましたら、弊社
または特約店までご照会ください。
イサハヤ電子株式会社
2
目次
●イサハヤ電子IGBTドライバの特徴
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4p
●IGBTドライバ製品体系図
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4p
●IGBTとは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5p
●IGBTドライバとは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5p
●短絡保護回路内蔵のメリット
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6p
●短絡保護回路の動作説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7p
●短絡保護回路内部のラッチ&タイマリセットシステムの有効性 ・・・・・・・・・8p
●コレクタクランプ回路動作説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9p
●ゲート電源について
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10p
●ゲート電源の出力電流容量の選定
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11p
●消費電力またはゲート平均電流のディレーティングについて
・・・・・・・・・11p
●ゲート抵抗について
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12p
●ゲートドライバ選定のガイド
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13,14p
●入力ゲート信号駆動回路について
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15p
●ゲート、エミッタ、電源の配線について
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16p
●短絡保護回路を無効にする方法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16p
3
イサハヤ電子IGBTドライバの特徴
弊社は1990年頃より産業機器分野向けIGBTモジュール駆動用ハイブリッドICを開発製造しており、
25年以上の経験と実績を積み重ねて来ました。製品ラインナップの特徴として以下のようなものがあります。
広い応用範囲
電流容量15Aクラスから3600AクラスのIGBTモジュールまで幅広く対応する製品ラインナップがあります。
短絡保護回路を内蔵
ほとんどの製品には短絡保護回路を内蔵しており、IGBTの短絡破壊防止に効果的です。
豊富な構造バリエーション
SIL、DIL、ユニットタイプなど、豊富な製品構造でお客様の製品小型化、組み立て簡素化などのお役に立ちます。
ゲート電源もサポート
ゲート駆動回路のみならず、ゲート電源内蔵品も揃えています。機器の設計事情に合わせて品種選択可能です。
機器設計の標準化に最適
アナログエンジニア不足が叫ばれている昨今、設計効率を上げる為に標準化は不可欠です。
ゲートドライブ回路にイサハヤ電子のゲートドライバを使用することにより、設計の標準化、部品の標準化に
貢献します。
SIL
DIL
IGBTモジュール
非搭載型ユニット
IGBTモジュール
搭載型ユニット
IGBTドライバ製品体系図
電源非内蔵タイプ
VLA507 / VLA513
M57159L / M57959AL
M57962AL / M57962CL
VLA520 / VLA531
VLA541 / VLA542
VLA546
電源内蔵タイプ
VLA500 / VLA500K
VLA502 / VLA551
VLA551K / VLA552
VLA554 / VLA567
電源内蔵タイプ
VLA536 / VLA553
VLA555 / VLA559
ハイブリッドICタイプ
IGBTドライバ
IGBTモジュール
搭載型ユニットタイプ
IGBTモジュール
非搭載型ユニットタイプ
電源内蔵タイプ
GAU205S‐15252
GAU205P‐15252A
GAU205P‐15402
GAU208P‐15252
GAU212S‐15255
GAU212P‐15255
GAU405P‐15252
GAU605P‐15252
4
IGBTとは
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)は日本語で絶縁ゲート形バイポーラ・トランジスタ
といいます。(素子記号は下図)
バイポーラ・トランジスタの大電力特性とMOSFETの高速スイッチング、電圧駆動特性の
両者の良い特性を持ち合わせたパワーデバイスです。
コレクタ
CCG
ゲート
CCE
使用用途
CGE
汎用インバータ、UPS、ACサーボ
ロボット、溶接機、大型電源機器
太陽光発電、風力発電、
誘導過熱機器など
エミッタ
ゲートをON、OFFするための
充放電電流
Cies = CCG + CGE
IGBTは電圧駆動型素子です
IGBTは電圧駆動型素子ですが上図のように各端子間に容量をもっているため、ターンオン、
ターンオフ時に入力容量(Cies)に充放電しなければなりません。この為にIGBTをスイッチング
させるにはゲートの充放電回路が必要で、IGBTの1素子に対し1回路のゲート駆動回路が必要です。
IGBTドライバとは
下図はゲート駆動回路を簡単にあらわしたブロック図です。
ゲート駆動回路は、大きく三つの部分で構成されています。
信号を電気的に絶縁するホトカプラ。ホトカプラの信号を受けて増幅するインタフェース回路。
そしてIGBTのゲートへ電荷を充電、放電するためのスイッチングトランジスタです。
IGBTがターンONするときはゲート電圧は15Vに正バイアスされる必要があり、そしてターンOFFの
ときは‐10V程度に負バイアスされなければなりません。
この時、ゲート容量を充電、放電する必要がありますが非常に高速に行われなければなりません。
このように信号を受けて、ゲート容量の充電、放電を高速に行うための駆動回路をハイブリッドIC化
したものがイサハヤ電子のIGBTドライバーです。
Vcc=+15V
IGBTモジュール
IGBT ドライバ
短絡検出回路
ホトカプラ
Ig_ON
インタフェース
& アンプ
ロジックICからの
ON/OFF ゲート信号
Ig_OFF
ゲート遮断
回路
電気的絶縁
信号変換
ゲート信号
増幅
電流増幅
Vee=‐10V
(‐6 ~ ‐10)
5
短絡保護回路内蔵のメリット
一般的にIGBTの短絡に対しては10μs以下でゲートをOFFして保護することが望まれます。
この高速保護を目的にイサハヤ電子のIGBTドライバは一部の品種をのぞいて短絡保護回路を内蔵しています。
ゲート駆動回路と短絡保護回路を一つのハイブリッドIC内に内臓するメリットとして、製品の小型化という面もあり
ますが、短絡検出回路、ゲート遮断回路がゲート駆動回路の直近にあり、回路的に相互に協調し易いという点が
あり、短絡を検知したら即、ゲート出力を遮断するということが容易となります。
仮にゲート駆動回路と検出回路を個別に設けて、検出信号を入力側CPUへ送り、それからゲート信号を停止する
方法も考えられますがそれでは時間がかかってしまうこともあり、素子破壊の可能性が高くなってしまいます。
短絡保護回路
Vcc
4
ラッチ
検出回路
検出端子
1
14
IGBT モジュール
タイマー &
リセット回路
インタフェース
& アンプ
ホトカプラ
RG
5
ゲート遮断
回路
Vo
8 アラーム出力
13
6
VEE
代表品種 VLA542‐01R (機能ブロック図)
6
短絡保護回路の動作説明
IGBTドライバに内蔵している短絡保護回路は、ゲート出力がON状態でIGBTのコレクタ電圧が高い時、短絡状態と
判断し、直ちにゲート電圧を降下させます。また、同時に、保護回路が動作している事を知らせるアラーム信号を
アラーム出力端子より”L”出力します。
下図にIGBTがターンONした後、短絡が起こった場合の動作波形例を示してあります。
短絡が発生した場合、急激にコレクタ電流が上昇します。それに伴いコレクタ電圧も上昇していきます。下図短絡保護回路
機能ブロック図中の比較回路はコレクタ電圧の上昇により出力反転してラッチとタイマの回路が動作開始し、Q1がONします。
そうするとVout がゆっくりと降下し、IGBTのゲート電圧をゆっくり絞り、ソフト遮断します。ゲート電圧をゆっくり降下させる
ソフト遮断はIGBTの短絡電流を遮断する時に発生するコレクタ端子のサージ電圧の上昇を抑制する働きを持っています。
IGBTドライバの短絡保護回路はIGBTのコレクタ電流を直接モニターしているわけではなく、あくまでVCEの電圧をモニター
しているため、精度の高い過電流検出は不可能であることにご留意ください。
IC
VCE
短絡発生
ポイント
VCE 大
(検出)
VGE
サージ電圧を抑える為のソフトゲート遮断
アラーム出力電圧
Vcc (15V)
4
Vref
FRD
RP1H(サンケン) etc.
1
Vf × n
比較回路
Vout
インタフェース
& アンプ
VCE
5
ラッチ &
タイマー
8
Q1 アラーム出力
Csoft
6
VLA542 短絡保護回路機能ブロック図
VEE (‐10V)
短絡発生  VCE 電圧上昇  比較回路反転  Q1 ターン on  Vout(VGE) 電圧降下 / アラーム出力開始
 IGBT ターン off という一連の動作でIGBTをoffさせることにより保護します。
実際の短絡検出のVCE電圧値= Vref(約9.5V) ‐ Vf × n (左記のnは通常は1です。)
データシートでは短絡検出電圧VSCとして最小15Vと記載してありますが少なくとも15V以上で必ず検出できるという
意味です。
上図中のCsoftはゲートドライバに内蔵されていますがあらかじめCsoftを外部端子と接続し、この端子に
外部コンデンサを接続することによりゲート降下スピードを調整できる製品もあります。
この後の項目“ゲートドライバ選定の方法“の製品リストを参照ください。
7
短絡保護回路内部のラッチ&タイマリセットシステムの有効性
ここでは弊社のIGBTドライバの短絡保護回路の特徴
でもあるラッチ&タイマリセットシステムについて説明
します。短絡保護回路は一旦動作開始すると、ゲート
出力を遮断し、アラーム出力を保持します。この状態は
ラッチ状態となります。動作の解除については、保護
回路動作開始後、一定(タイマ)時間が経過した後、
入力信号がOFFであれば解除され、入力信号に応じた
ゲート出力が可能となります。逆に、一定(タイマ)時間
が経過した後、入力信号がONであれば解除されず、
OFFになってから解除されます。
右のフローチャートはこのシステムを内蔵している代
表品種VLA542の短絡検出時の動作フローです。また
下図の上側タイムチャートはVLA542の入力信号とゲート
出力の関係をあらわしています。
下側タイムチャートはパルスbyパルスでリセットしてしま
うシステムの動作例です。
上側タイムチャートのようにラッチ&タイマシステムで
は、一旦保護回路が動作し、ゲート出力を遮断した後、
ラッチ状態となるので、この期間中はいくら入力信号が
きてもゲート出力は出ません。なので、この間にマイコン
側に異常信号を送りゲート信号を停止してしまえば機器
全体を安全に停止することが可能です。
しかし下側のパルスbyパルスのシステムでは一旦、
ゲート出力を絞って保護してもゲート信号OFF時に
リセットされてしまうため、次のゲート信号が来たときに、
またゲート出力して再び短絡を起こしてしまう可能性が
あります。つまり非常に高速に異常をマイコン側へ伝え
て、ゲート信号を停止する必要があるということです。
このような事情でラッチ&タイマリセットシステムは
時間的に余裕のある保護動作がし易いということが
言えます。
短絡保護回路動作時フロー (代表品種VLA542‐01Rの例)
スタート
短絡状態の検知
ゲート出力遮断
タイマー動作スタート
アラーム出力
タイマ時間
1 ~ 2 ms
タイマ終了
入力信号は
OFFか
アラームのクリア
ゲート出力可能
ここでラッチ状態が
解除されます。
ラッチ&タイマリセット方式の場合(イサハヤ電子のIGBTドライバの主流)
入力ゲート信号
ゲート出力
タイマ時間が終了するまでは入力ゲート信号に関わらず
ゲート遮断を保持。マイコン側で余裕を持って信号停止を
かけられます。
通常のパルスbyパルスのリセット方式の場合
入力ゲート信号
ゲート出力
ゲート信号毎にゲートがONするので短絡状態を解除しないと
短絡を繰り返すことになり、IGBTの破壊に至ります。
このシステムの場合、次のゲート立上り時までに入力信号を
停止しなければなりません。
(注)当社製でもパルスbyパルス方式のものもあるのでデータシート中の機能ブロック図でご確認ください。
検出回路と共にラッチ回路がセットであればラッチ&タイマリセット方式です。
8
コレクタクランプ回路動作説明
近年、大容量IGBTモジュール駆動用ユニットでコレクタクランプ回路を内蔵したものを開発しています。代表品種
VLA553の内蔵しているコレクタクランプ回路の動作につき説明します。
下図はIGBTのターンOFF時のゲート電圧及びコレクタ電圧の動作波形を表しています。
ここのコレクタ電圧が主電源電圧より跳ね上がる部分がありますがこれは主回路のストレイインダクタンスに
よるものです。ターンOFFするときの電流値が大きいほどこの跳ね上がり電圧が大きくなります。
この時の最大電圧はコレクタ電圧の最大定格以下でなければIGBTが破壊してしまします。
コレクタクランプ回路はこのコレクタ電圧の跳ね上がりを抑制するために設けてあります。
Ls x di/dt
VDC_Link
VCE
この電圧はIGBTのVCESの規格値をこえてはなりません。
VGE
下図中で点線で囲んでいる部分がコレクタクランプ回路です。
IGBTがターンOFF時、ストレイインダクタンスの影響でコレクタ電圧が上昇します。そこでコレクタ電圧がこのツェナー電圧を
越えるとツェナー電流が流れ始め、ゲートへ直接流れる電流と駆動回路のバッファー部へ流れる部分に分かれますが
最終的にはIGBTのゲート電圧を上昇させることになります。
ゲート電圧の上昇はコレクタ電流のOFFスピードを抑制することになり、結果としてdi/dtが抑制されることになるので
コレクタ電圧の上昇も抑えられます。
Ls
主配線の総合ストレイインダクタンス
VDC_Link
Iz
IC
コレクタクランプ回路
Inter
face
ゲート電圧上昇
VLA553コレクタクランプ回路の機能ブロック図
VCE
VCE最大値がコレクタクランプ回路によって抑制されます。
VDC_Link
IC
コレクタクランプ回路の働きで di/dtを抑制します。
VGE
9
ゲート電源について
IGBTゲート駆動回路用の電源をここではゲート電源と呼んでいます。
このゲート電源には、絶縁タイプの+15V及び‐10V程度の電源が必要とされます。
基本的に一つのゲートドライバに対し、正負一組のゲート電源が必要です。
ゲート電源の入力-出力間絶縁耐圧のスペックについては、少なくともご使用される
IGBTモジュールのパッケージの絶縁耐圧以上のものを選択されることをお勧めします。
IGBT モジュール
+15V
P
IGBT ドライバ
‐10V
絶縁型電源
(ゲート電源)
+15V
U or V or W
IGBT ドライバ
N
‐10V
またゲート電源として絶縁型電源を選択される場合、極力、1次-2次間の相間容量の小さいものを
お選びください。相間容量が大きいと、IGBTのスイッチングノイズを入力側へ伝え易くなり、機器の制御回路の
誤動作の原因になることがあり得ます。目安として例示しますと、当社のゲート電源、VLA106シリーズなどは
相間容量は35pF程度以下で、IGBTのスイッチング用途として特に問題なく使用されている実績があります。
下図はフライバック方式の絶縁型DCDCコンバータの機能ブロック図ですが市販の電源にはこの様に
1次-2次間に結合コンデンサを入れてあるものが中にはあります。上記の理由によりこの様なものは非推奨です。
トランス
フィルタ
定電圧回路
ベース駆動
回路
GND
過電流保護回路
結合コンデンサ
VCC
ホトカプラ
上記のように1次-2次間に結合コンデンサがあるタイプはゲート電源としては非推奨です。
10
ゲート電源の出力電流容量の選定
ゲート電源の出力電流容量は下記の計算で算出される電流を供給できるものを選定ください。
Io = ( Idrive + Icc ) × ( 1 + M )
Io : ゲート電源の出力電流容量
Idrive : ゲート平均電流
Icc : IGBTドライバの定常消費電流 ( データシート中の消費電流-電源電圧特性の特性図より読み取ります。) M : マージン (0.2~0.5)
Idrive = (Q1+lQ2l ) × f
Q1 : 正バイアス時のゲート電荷 (IGBTデータシート中のゲート電荷特性図より読み取ります。)
Q2 : 負バイアス時のゲート電荷 (IGBTデータシート中のゲート電荷特性図より読み取ります。)
f : スイッチング周波数
当社にはゲート電源内蔵ゲートドライバもありますのでその場合は下記式でゲート平均電流Idriveを求めて
ください。ゲート電源内蔵ゲートドライバの各データシート中には最大定格としてゲート平均電流最大値を
規定していますのでご確認ください。
Idrive = (Q1+lQ2l ) × f
Q1 : 正バイアス時のゲート電荷 (IGBTデータシート中のゲート電荷特性図より読み取ります。)
Q2 : 負バイアス時のゲート電荷 (IGBTデータシート中のゲート電荷特性図より読み取ります。)
f : スイッチング周波数
IGBTのゲート電荷-ゲート電圧特性
VGE
(V)
15V
ゲート電価
負バイアス電圧
Q2
Q1
消費電力またはゲート平均電流のディレーティングについて
ゲートドライバは消費電力、またはゲート平均電流によってディレーティングが必要です。
当社製品はゲート電源非内蔵品は消費電力、ゲート電源内蔵品はゲート平均電流でディレーティングを規定しています。
各製品のデータシートには特性図として消費電力-周囲温度特性、もしくはIdrive-Ta特性が記載されていますので
ご使用される条件による下記の計算結果がこのディレーティングカーブ内にある必要があります。
ゲート電源非内蔵品の消費電力は下記の式で計算されます。
Pd = ( VCC + lVEEl ) × ( Idrive + Icc )
VCC : ゲート正バイアス電源電圧
VEE : ゲート負バイアス電源電圧
Idrive : ゲート平均電流
Icc : IGBTドライバの定常消費電流 ( データシート中の消費電流-電源電圧特性の特性図より読み取ります。) Idrive = (Q1+lQ2l ) × f
Q1 : 正バイアス時のゲート電荷 (IGBTデータシート中のゲート電荷特性図より読み取ります。)
Q2 : 負バイアス時のゲート電荷 (IGBTデータシート中のゲート電荷特性図より読み取ります。)
f : スイッチング周波数
ゲート電源内蔵品のゲート平均電流は下記の式で計算されます。
Idrive = (Q1+lQ2l ) × f
Q1 : 正バイアス時のゲート電荷 (IGBTデータシート中のゲート電荷特性図より読み取ります。)
Q2 : 負バイアス時のゲート電荷 (IGBTデータシート中のゲート電荷特性図より読み取ります。)
f : スイッチング周波数
11
ゲート抵抗について
ゲート抵抗の電力の選択は下記の計算により算出される電力値を許容できる
抵抗を選定ください。
Pd = Idrive × (VCC+lVEEl)
Pd
: ゲート抵抗許容損失
Idrive : ゲート平均電流
VCC : ゲート正バイアス電源電圧
VEE : ゲート負バイアス電源電圧
ゲート平均電流Idriveの計算は下記の式で算出ください。
Idrive = (Q1+lQ2l ) × f
Q1 :正バイアス時ゲート電荷(IGBTデータシートより読み取る)
Q2 :負バイアス時ゲート電荷(IGBTデータシートより読み取る)
f
:スイッチング周波数
ゲート抵抗値はご使用されるIGBTのデータシート記載値を目安に決定されますが一般的には抵抗値を
小さめにすればIGBTのスイッチングノイズは大きなり、コレクタのサージ電圧も大きくなる反面、素子内の
スイッチングロスは減る傾向になります、逆に大きめにすればスイッチングノイズは小さくなり、コレクタ電圧
のサージ電圧も小さくなる反面、素子内のスイッチングロスは増加する傾向になります。
実際、スイッチングノイズやコレクタのサージ電圧抑制の為、メーカ記載最小値より大きめの抵抗値で
使用されるのが一般的です。
ゲートドライバとしては、各データシートの電気的特性欄にはゲート抵抗値の最小値を記載していますので、
その値以上でご使用ください。
ゲートピーク電流は下記の式で求められます。
Igpeak =
VCC + lVEEl
( RG + RG_in + α )
Igpeak ゲートピーク電流
VCC 正バイアス電源電圧
VEE 負バイアス電源電圧
RG 外部ゲート抵抗値
RG_in IGBTモジュール内部ゲート抵抗値
α ゲート、エミッタ配線インダクタンス、ゲートドライバ出力Trのスイッチング遅れなどの要因
ここでRG_inはIGBTモジュールの品種により異なり、またIGBTのデータシートに記載がない場合もあります。
またαの部分を正確に出すことも難しいので、大まかには下記の式で出すことができます。
Igpeak =
VCC + lVEEl
RG × A ※Aは0.4~0.8のイメージ
最終的には実機評価にてゲート電流のピーク値がドライバの出力ピーク電流の最大定格を越えていないことを、
確認する必要があります。
12
ゲートドライバ選定のガイド
弊社のIGBTドライバを機種選定される場合、次の項目を決定して選定ください。
・絶縁耐圧
使用されるIGBTモジュールのパッケージ絶縁耐圧を参考に決定ください。
・出力ピーク電流
IGBTモジュールのゲート電流のピーク値がゲートドライバの出力ピーク電流の最大定格以下であるように選定
する必要があります。
ゲートピーク電流は下記の式で求められます。
Igpeak =
VCC + lVEEl
( RG + RG_in + α )
Igpeak ゲートピーク電流
VCC 正バイアス電源電圧
VEE 負バイアス電源電圧
RG 外部ゲート抵抗値
RG_in IGBTモジュール内部ゲート抵抗値
α ゲート、エミッタ配線インダクタンス、ゲートドライバ出力Trのスイッチング遅れなどの要因
ここでRG_inはIGBTモジュールの品種により異なり、またIGBTのデータシートに記載がない場合もあります。
またαの部分を正確に出すことも難しいので、大まかには下記の式で出すことができます。
Igpeak =
VCC + lVEEl
RG × A ※Aは0.4~0.8のイメージ
最終的には実機評価にて確認することが必要です。もしドライバの出力ピーク電流の最大定格を
越えているようであれば外部ゲート抵抗値を上げて調整するか、ゲートドライバを1ランク上の
出力電流のものに変更する必要があります。
あらかじめ出力ピーク電流値の大きめのものを選定しておく方が外部ゲート抵抗値の選定自由度を
大きくとれます。
・短絡保護回路内蔵、非内蔵
弊社のIGBTドライバのほとんどの製品は短絡保護回路を内蔵していますが非内蔵の品種もあります。
IGBTの中には短絡に対してメーカ保証されていないものもありますのでそのようなものに対しては
短絡保護回路を使用しても短絡すれば破壊する可能性が高いですので保護回路非内蔵品を使うか
内蔵品でも保護機能を無効化して使用することも可能です。無効化する方法は後ほどのページに
“短絡保護回路を無効にする方法”という項目がありますのでそちらを参照ください。
・ゲート電源内蔵、非内蔵
ゲート電源内蔵品を希望されるか非内蔵品を希望されるかで決定ください。内蔵品のほうが
お客様の電源設計の手間が省けますし基板の設計もし易いというメリットがあります。
電源は自社で設計される場合は電源非内蔵品を選択ください。
・短絡保護動作時ソフト遮断スピード調整機能
短絡保護回路内蔵品は初期状態でもソフト遮断機能入りですがそのスピードを更に緩やかにする
機能を持ったものも選択可能です。主に1000Aクラス以上の大容量IGBTは短絡電流を遮断した時の
コレクタ電圧のサージ電圧が特に大きくなるのでその抑制には有効です。
・内蔵駆動回路数
ほとんどの製品はゲート駆動回路が1回路入りですが2回路を内蔵しているものもあります。
上記の項目で決定されたスペック、機能をもとに、次ページの製品リストにて適合する品種を選択ください。
13
表中の”Yes”は各項目機能適応品の意味です。
IGBTドライバ製品リスト
VLA507
VLA513
M57159L
M57959AL
M57962AL
M57962CL
2500
2500
2500
2500
2500
2500
3
5
1.5
2
5
5
‐
‐
Yes
Yes
Yes
Yes
ゲート電源内蔵
(1回路当たり最大
ゲート平均電流)
‐
‐
‐
‐
‐
‐
VLA520
2500
5
Yes
‐
‐
1
VLA531
2500
2.5
Yes
‐
‐
1
VLA541
2500
3
Yes
‐
‐
1
VLA542
2500
5
Yes
‐
‐
1
VLA546
4000
5
Yes
‐
Yes
1
VLA551
VLA551K
VLA567
VLA500
2500
4000
2500
2500
5
5
8
12
Yes
Yes
Yes
Yes
Yes(100mA)
Yes(100mA)
Yes(100mA)
Yes(210mA)
Yes
Yes
Yes
Yes
1
1
2
1
VLA502
2500
12
Yes
Yes(210mA)
Yes
1
VLA500の
高速品
VLA500K
VLA552
VLA554
4000
4000
4000
12
24
24
Yes
Yes
Yes
Yes(210mA)
Yes(210mA)
Yes(210mA)
Yes
Yes
Yes
1
1
1
光ファイバ対応
形名
絶縁耐圧
(Vrms)
出力ピーク
短絡保護回路
電流(A)
短絡保護動作時
ソフト遮断スピード
調整機能
‐
‐
‐
‐
‐
Yes
内蔵駆動
回路数
備考
1
1
1
1
1
1
アラーム用
ホトカプラ内蔵
保護回路パルス
byパルスリセット
M57959ALと
コンパチ
M57962ALと
コンパチ
M57962CLと
コンパチ
※上記リストで形名がM5で始まる製品は非常に古い製品です。2014年8月時点で生産中止予定はありませんが
極力VLAで始まる製品から選択されることをお勧めします。
上記製品の中には評価用基板を準備しているものがあります。下記リストを参考にご活用ください。
当リストの製品はすべてゲート電源も内蔵しています。
非搭載型IGBTドライブユニット製品リスト
絶縁耐圧 出力ピーク
(Vrms)
電流(A)
形名
表中の”Yes”は適応品の意味です。
短絡保護
回路
1回路当たり最大
ゲート平均電流
短絡保護動作時
ソフト遮断スピード
調整機能
内蔵駆動
回路数
搭載HIC
GAU205S‐15252
2500
5
‐
90mA
‐
2
VLA513/VLA106
GAU205P‐15252A
2500
5
Yes
85mA
‐
2
VLA542/VLA106
GAU208P‐15252
2500
8
Yes
100mA
Yes
2
VLA567
GAU205P‐15402
4000
5
Yes
100mA
Yes
2
VLA551K
GAU212S‐15255
2500
12
‐
210mA
‐
2
VLA502
GAU212P‐15255
2500
12
Yes
210mA
Yes
2
VLA500
GAU405P‐15252
2500
5
Yes
100mA
Yes
4
VLA551
GAU605P‐15252
2500
5
Yes
100mA
Yes
6
VLA551
※上記リスト中の搭載HICでVLA106というのはゲート電源用HICです。
当社では特定のIGBTモジュールに対してはHICをコアにした搭載型ドライブユニットを製品化しています。
適応可能なIGBTモジュールが限られていますのでご留意ください。
表中の”Yes”は適応品の意味です。
IGBT搭載型ドライブユニット製品リスト
形名
絶縁耐圧 出力ピーク
(Vrms)
電流(A)
短絡保護
回路
1回路当たり最大
ゲート平均電流
内蔵駆動
回路数
搭載HIC
適応IGBT
VLA536‐01R
2500
5
Yes
83mA
2
VLA520/VLA106
三菱NX 2in1
EconoDual
VLA553‐01R
4000
24
Yes
210mA
2
VLA552
CM2500DY‐24S
VLA553‐02R
4000
24
Yes
210mA
2
VLA552
CM1800DY‐34S
VLA555‐01R
4000
24
Yes
210mA
2
VLA552
CM2500DY‐24S
VLA555‐02R
4000
24
Yes
210mA
2
VLA552
CM1800DY‐34S
VLA559‐01R
4000
24
Yes
210mA
2
VLA552
PrimePACK 1200V系
VLA559‐02R
4000
24
Yes
210mA
2
VLA552
PrimePACK 1700V系
14
入力ゲート信号駆動回路について
当社のIGBTドライバのゲート信号入力部には、入力-出力間で電気的絶縁をとるために、ほとんどの製品で
ホトカプラを採用しています。(各製品データシートの機能ブロックで確認できます。)
入力LEDがONでゲート出力がONとなります。このON電流を流すための駆動回路としてプルアップ電源電圧5V
にて、CMOSタイプのICで直接駆動すれば適正な電流が流れるように内部抵抗が設定されています。ですので
5V系の回路で駆動する場合において外部に制限抵抗を設ける必要はありません。ただしどうしても15V系で
駆動されたい場合はその下図に示していますように制限抵抗を別途、設ける必要があります。
各製品のデータシートには機能ブロック図中に内蔵のLED電流の制限抵抗値が記載してありますのでLED電流が
データシートの電気的特性項目の推奨範囲になる様、外部抵抗値を設定ください。
またLED電流を駆動するICには出力がオープンコレクタやオープンドレインタイプのものは非推奨となります。
Off時に端子電圧が不安定となり、好ましくありません。CMOS出力であるHC04のようなトーテンポール出力タイプ
のものをご使用ください。
ゲート信号の配線パターンについては電磁誘導ノイズの影響を受けにくくするため、極力配線で囲まれる面積
が小さくなるよう。ご留意ください。これはCPUから駆動ICまでの配線についても同様のことが言えます。
代表例HIC:VLA542/VLA541/VLA567
プルアップ電源電圧VIN=5Vの場合
Vf :1.5V
VCC
VIN : 5V
HC04 etc.
1k Ω
VIN
PC
検出
ラッチ
(注)
CPUからの
ゲート信号
インタフェース
ゲート遮断
F.O.
240 Ω
IF:12~13mA
Vo
タイマ
IN1
VoL: 約 0.5V
(HC04)
VEE
代表例HICHIC:VLA542/VLA541/VLA567
プルアップ電源電圧VIN=15Vの場合
Vf :1.5V
VIN : 15V
トーテンポール出力タイプ IC
M81711FP, MAX626 etc.
CPUからの
ゲート信号
VCC
Rout
VIN
1k Ω
PC
検出
ラッチ
(注)
IF:12~13mA
インタフェース
Vo
タイマ
IN1
240 Ω
ゲート遮断
F.O.
VEE
IF = (15‐1.5‐VoL) / (240 + Rout ) *LED電流が12~13mAとなる様、Routを調節ください。
(注)上図の入力信号線で囲まれる面積は誘導電磁ノイズの影響を受けにくくする為、
極力小さくなるように配線パターンを設計ください。
15
ゲート、エミッタ、電源の配線について
IGBTのゲート、エミッタの配線は、ツイストペア線で接続するなど、誘導電磁ノイズの影響を少なくするようにしてください。
また、ゲートドライバの電源の配線で囲まれる面積が最小となる様パターン設計下さい。特に電源電圧補償用コンデンサ
は、極力ゲートドライバのVCC、VEE端子直近に配置して下さい。
ゲートドライバ
VCC
ツイストペア
VEE
電源電圧補償用コンデンサ
短絡保護回路を無効にする方法
当社のIGBTドライバのほとんどの製品には短絡保護回路を内臓していますが、評価初期段階、あるいは設計上の
都合でこの保護回路を使う必要がない場合は次の方法で無効にすることができます。
下図のように短絡検出端子から4.7kΩの抵抗を介してゲート電源のGNDレベルに落としてください。この時、検出端子から
IGBTのコレクタへ接続するFRDや保護用のツェナーDiは不要です。またアラーム出力端子もオープンにして構いません。
短絡保護回路
Vcc
検出端子
4
ラッチ
検出回路
14
1
4.7kΩ
1/4W
タイマー &
リセット回路
インタフェース
& アンプ
ホトカプラ
5
ゲート遮断
回路
Vo
RG
8
13
アラーム出力端子
6
VEE
代表品種 VLA542‐01R の例
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