MS1004SHアプリケーションノート

MS1003SH・MS1004SH
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『製品及び製品仕様は、お断りなく変更する場合があります。ご了承下さい。』
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使用上の注意
このたびは、弊社製品をご使用いただき誠にありがとうございます。
当 IC をご使用の際は、お客様の安全を確保するため下記の警告ならびに注意を必ず守ってご使用ください。
警
告
注
意
!
誤った取り扱いをしたときに死亡や重大な人身事故および大きな物的損害に結びつく危険性のあるもの。
!
誤った取り扱いをしたときに軽傷に結びつく恐れ、または軽微な物損事故に結びつく恐れのあるもの。
!
!
警
告
当社は、品質と信頼性の向上に絶えず努めていますが、半導体製品はある確率で故障が発生したり、誤動作
する場合があります。当社製品の故障により結果として、人身事故、火災事故、社会的な損害等を生じさせな
い冗長設計、延焼防止設計、誤動作防止設計等の安全設計を、お客様の責任において実施してくださいま
すようお願い致します。
本資料に記載されている当社半導体製品は、特別に高い品質・信頼性が要求され、その故障や誤動作が直
接人命を脅かしたり、人体に危害を及ぼす恐れのある機器あるいはシステムに用いられることを目的として設
計、製造されたものではありません。下記の特別用途、特定用途の機器、装置にご使用の場合には必ず当社
へご連絡の上、確認を得てください。
特別用途
輸送機器(車載、船舶等)、基幹用通信機器、交通信号機器、防災/防犯機器、各種安全機器、医療機器
等
特定用途
原子力制御システム、航空機器、航空宇宙機器、海底中継器、生命維持のための装置 等
IC 製品に関しては、特別用途・特定用途に限らず、連続運転を前提として長期製品寿命を期待される機
器、装置にご使用される場合に関しては当社へお問い合わせ下さい。
注
意
!
修理や改造は、重大な事故につながりますので、絶対にやめてください。
《感電、破壊、火災、誤動作等の危険があります。》
!
異常時は出力端子に過大電圧が発生したり、電圧低下となる場合があります。 異常時の、負荷の誤動作や破
壊等を想定した保護対策(過電圧保護、過電流保護等の保護対策)を最終機器に組み込んでください。
!
入力端子、出力端子の極性を確認し誤接続の無いことを確認してから通電してください。
《保護素子が切れたり、発煙・発火の原因になります。》
!
決められた入力電圧を必ず守っていただくとともに、入力ラインに必ず保護素子を挿入してください。
《異常時には発煙・発火の危険があります。》
!
使用中に故障または、異常が発生した時は、すぐに入力を遮断して電源を停止させてください。また、直ちに
弊社にご相談ください。
●本資料に記載されている内容は、製品改良などのためお断りなしに変更することがありますのでご了承ください。
●御使用頂く際には、仕様書の取り交わしをお願いいたします。
●ここに記載されたすべての資料は正確かつ信頼し得るものでありますが、これらの資料の使用によって起因する損害または特許
権その他権利の侵害に関しては、当社は一切その責任を負いません。
●本資料によって第三者または当社の特許権その他権利の実施に対する保証または実施権の許諾を行うものではありません。
●本資料の一部または全部を当社に無断で転載または複製することを堅くお断りいたします。
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目次
…
4
4:各端子の機能
…
17
1.1:はじめに
…
4
4.1:Z/C 端子
…
17
1.2:特徴
…
4
4.2:F/B 端子
…
17
1.3:用途
…
4
4.3:GND 端子
…
17
1.4:外形・寸法
…
4
4.4:OCL 端子
…
17
1.5:基本構成回路
…
5
4.5:VG 端子
…
17
…
6
4.6:Vcc 端子
…
17
2.1:ブロック図
…
6
4.8:Vin 端子
…
17
2.2:端子の名称
…
6
…
18
3:回路動作
…
7
5.1:設計フローチャート
…
18
3.1:起動
…
7
5.2:メイントランス参考設計条件
…
19
3.1.1:起動回路
…
7
5.3:メイントランス設計計算式
…
19
3.1.2:ソフトスタート
…
8
5.4:各動作点を確認する
…
21
3.1.3:バイアスアシスト
…
8
5.4.1:式中の記号
…
22
…
9
5.4.2 谷飛び開始電力を
3.2.1:オントリガ回路
…
9
求める計算式
…
22
3.2.2:疑似共振動作
…
9
5.4.3 谷飛び解除電力を
3.2.3:ソフトドライブ
…
10
求める計算式
…
22
3.2.4:谷飛び
…
10
5.4.4 Auto バースト開始・解除
3.2.5:出力電圧制御
…
11
電力を求める計算式
…
24
…
11
5.4.5 垂下点電力を
3.3.1:AutoStby 機能
…
11
求める計算式
…
24
3.3.2:スーパースタンバイモード
…
13
…
27
…
14
5.5.1 Z/C 端子周辺の設計方法
…
27
3.4.1:Vcc 過電圧保護ラッチ
…
14
5.5.2 F/B 端子周辺の設計方法
…
29
3.4.2:過電流保護
…
14
5.5.3 OCL 端子周辺の設計方法
…
30
3.4.3:過負荷保護
…
15
5.5.4 VG 端子周辺の設計方法
…
31
3.4.4:VCC-GND 短絡保護
…
16
5.5.5 Vcc 端子周辺の設計方法
…
32
16
5.5.6 共振コンデンサの設定
…
34
1:概要
2:ブロック図
3.2:発振動作
3.3:バーストモード発振動作
3.4:保護機能
3.4.5:リーディングエッジブランク
5:設計方法
5.5 各端子の設計
3.4.6:オントリガ誤動作防止回路
…
16
6:参考回路
…
35
3.4.7:TSD
…
16
6.1:回路図
…
35
6.2:参考回路設計事例
…
35
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1:概要
1.1 はじめに
近年、急速に求められている省電力化に応えるため微少負荷領域の効率を改善するスーパースタンバイ
モードを備えた MS1003SH、MS1004SH を開発しました。
MS1003SH、MS1004SH は、従来に比べ待機時の入力電力を削減し様々な機能を IC に内蔵することで少
ない外付け部品でより使いやすく簡単に電源設計を行うことができる高機能 IC です。
1.2 特徴
1)疑似共振動作により高効率・低ノイズ化に寄与
2) 4STEP ソフトスタート機能内蔵(40ms/STEP)
3)起動抵抗が不要な起動回路を内蔵し、起動回路での損失を大幅に削減
4)自動谷とび機能により発振周波数の上昇を抑制し軽負荷時効率を改善
5)部品追加なしに軽負荷領域の効率を改善するオートバースト機能
6)微少負荷領域の効率を改善するスーパースタンバイモードを装備
7)ノイズに有利なソフトドライブ回路を内蔵
8)過熱保護・過電圧保護・過負荷保護(タイマーラッチ)内蔵
9)1 次電流制限回路に入力電圧依存補正回路内蔵させ部品点数を削減
10)起動回路バイアスアシスト機能内蔵
11)Vcc-GND 短絡保護機能内蔵
12)小型化に有利な SOP-8 パッケージを採用
1.3 用途
テレビ・レコーダー・白物家電などの待機電力の削減が求められる電源
単位:mm
6.0
3.9
0.3
1.4 外形・寸法
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1.5 基本構成回路
(1)スーパースタンバイ機能未使用
(2)スーパースタンバイ機能使用
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2:ブロック図
2.1 ブロック図
TIMER_
LATCH_
STBY_
CIR
TSD
Z/C
1
S
R
Vcc
F/B
S
S
S
R
OVP
COMP
5
VG
4
OCL
8
Vin
6
Vcc
3
GND
2
IDP_Limit
COMP
S
R
IDP_burst
COMP
VUL
COMP
R
Stup_UVLO
COMP
Vcc_UVLO
COMP
SPSTBY
UVLO
COMP
2.2 端子の名称
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3:回路動作
3.1 起動
起動シーケンスは下図にようになります。
Vin
Nc巻線
バックアップ
なし
あり
なし
あり
なし
ノーマルモード
あり
スタンバイモード
スタンバイ
なし
あり
ノーマルモード
Vcc(start)=
Vcc(stup off)=12V
Vcc(stup on normal)=9V
Vcc(stop normal)=8V
Vcc(stup on stby)=8V
Vcc(stop stby)=7V
Vcc
VccUVLO
起動
UVLO
起動シーケンス
3.1.1 起動回路
起動抵抗を必要としない起動回路を内蔵しています
ので部品点数が少なく簡単に動作させることができま
す。右図は、起動回路略図です。
起動するまでは、Vin 端子から Vcc 端子へ起動回路
電流 Icc(stup)により右図 C を充電します。
Vcc 電圧が Vcc(start)に達すると発振が開始され、起
動回路がオフし起動回路電流を止めます。Vcc 端子
は 、 Vcc(start) で 発 振 開 始 ・ Vcc(stop stby) も し く は
Vcc(stop normal)で発振停止するヒステリシスを持ち、
また Vcc 電圧をアシストする機能を持っていますので安全に起動させることができます。
バイアスアシスト機能については、3.1.3 項を参照してください。
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3.1.2 ソフトスタート
起動時には、OCL レベルが 4 段階に変わり、それに伴って主スイッチに流れる電流は段階的に増加しま
す。この動作により主スイッチに流れる電流の包絡線は 4step の形状になりソフトに立ち上がります。
ソフトスタートの時間は Tss1~Tss3 で規定され、時間設定は IC 内部で決定しています。
3.1.3 バイアスアシスト
起動時において、発振開始直後に電圧が下がる過程で発振停止してしまわないように Vcc へエネルギー
を供給するアシスト機能が内蔵されています。この機能により、起動の失敗がありません。
下図は、この機能による Vcc の起動略図です。
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3.2 発振動作
3.2.1 オントリガ回路
約0.25V
右図のように Z/C 端子が立ち下がり(ネガテ
ィブエッジ)の VZ/C(0.25V)に達するとゲー
ト信号を出し、主スイッチ素子をオンさせま
VZ/C
す。
エネルギー放出タイミングをコントロール巻
線から検出し、主スイッチング素子をオンす
ID
ることで電流臨界動作を行っています。
Z/C 端子電圧が Hi から Low への移行時に
検出するネガティブエッジ検出を採用するこ
とでノイズの影響を最小限に抑えています。
2次整流ダイオード電流
また、VZ/C(0.25V)に対して 50mV のヒステ
リシスをもたせることにより、さらに耐ノイズ性
を高めています。
VDS
コントロール巻線電圧
3.2.2 擬似共振動作
主スイッチング素子のドレイン-ソース間に右図のように共
LP
振コンデンサを付加した回路において、2 次側ダイオード電
流が 0A になったときにメイントランスの 1 次インダクタンス LP
と共振コンデンサ Cq による共振周波数での減衰振動が始ま
ります。
Z/C 端子に接続される右図 CR 時定数を調整することにより、
8
Cq
Vin端子
1
5
Z/C端子
R
3
GND端子
C
減衰振動電圧の谷点で主スイッチング素子をターンオンさ
時定数により
ONタイミングを決定
せることができます。
これにより、ターンオンロスを低減することができます。
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3.2.3 ソフトドライブ
ソフトドライブ回路により、ゲートドライブ電圧はオン直後に主 SW ドレイン電流にあわせた
のゲートしきい値を少し越えるトリガ電圧を与えます。その後、定電
流駆動とする事で必要以上のゲート電圧供給を抑制しています。
この動作によりゲートチャージ゙電圧による損失低減及び共振コン
ゲート電圧供給
VGS
急峻なゲートチャージ
を低減
デンサ放電電流ピークを抑制し、ノイズを低減させます。
IG
軽負荷時の
無効電荷削減
共振コンデンサ放電電流の
ダンピング
ID
3.2.4 谷飛び
MS1003SH、MS1004SH は、スイッチング周期を監視しており、スイッチング周期が谷とび開始
周期 T(bottom skip start) =7.5μs(TYP)以下になると
MS1003SH は、通常の部分共振モードから 1 回谷とびモード(谷点 2 回目オン)
MS1004SH は、通常の部分共振モードから 2 回谷とびモード(谷点 3 回目オン)
へ切替る事によりオフ時間を
MS1003SH は、共振 1 周期分
MS1004SH は、共振 2 周期分
延長し周波数上昇を抑える機能を持っています。オフ時間を共振谷とびモードに切替ると周期監
視タイマー時間が変更され、オンしてから 1 回目の電圧谷点までの時間が、T(bottom skip
stop)=13μs(TYP)以上となった時に通常の部分共振動作に戻ります。この様にヒステリシスを確
保する事により波形バタつきや音鳴きの対策を行っています。
VDS
ID
動作
モード
オフ幅
監視
タイマ
谷飛び
部分共振
T(bottom skip start)
部分共振
T(bottom skip start)
T(bottom skip stop)
MS1003SH のシーケンス図
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3.2.5 出力電圧制御
MS1003SH、MS1004SH は、F/B 端子電圧に比例し
たオン幅で出力電圧を制御しています。
F/B 端子電圧が 1.5V の時にオン幅が最小となり、4.5V
の時にオン幅が最大となるようにリニアに制御されます。
F/B 端子からは IF/B を流出しており、F/B-GND 端子
間に外部接続されるフォトカプラトランジスタのインピー
ダンスが、2 次側出力検出回路からの制御信号により変
化することで、主スイッチング素子のオン幅を制御し定
電圧化しています。
(VF/B(latch count))が設定されており、この電圧
以上になるとタイマーが動作し始めます。この状
態を(ラッチカウント:約 2s)維持すると IC はラッチ
停止します。
オン幅 ton[µs]
ま た 、 F/B 端 子 に は ラ ッ チ カ ウ ン ト 開 始 電 圧
ton
(max)
0
1.5
4.5
VF/B(latch count)
フィードバック電圧
VF/B[V]
3.3 バーストモード発振動作
3.3.1 AutoStby 機能
MS1003H・MS1004SH は、ノーマルモードとバーストモードを自動で切り換える事で、スタンバイ用の外付
部品を追加する事なく、スタンバイ時の低消費電力化が実現できます。
1)ノーマルモードからバーストモードへの切り換え
負 荷 が 軽 く な り 、 ド レ イ ン 電 流 が OCL 端 子 検 出 で 、 VOCL(stby)=45mV(TYP) 以 下 の 状 態 を 、
Tstby=250ms(TYP)以上継続させると、ノーマルモードからバーストモードへ切り替わります。
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2)バーストモード制御
バーストモードでは、ドレイン電流を OCL 端子で検出し VTH(stby)=60mV(TYP)に毎パルス制限すること
により、発振を制御します。
出 力 電 圧 の 制 御 は 、 ノ ー マ ル モ ー ド 時 の リ ニ ア 制 御 か ら F/B 端 子 電 圧 VF/B が VF/B(stby
start)=1.8V(TYP)で発振開始し、VF/B(stby stop)=0.8V(TYP)で発振が停止する制御に変わります。この
制御により出力電圧にリップルを持たせて間欠発振を行い、単位時間当たりのスイッチング損失を削減す
る事でスタンバイ時の消費電力低減を行っています。
又、ノーマルモード時のしきい値に対して下記のしきい値の切り替えを行っています。
○発振停止電圧、起動回路オン電圧は、それぞれノーマルモードから 1V しきい値が下がります。
VCC(stop normal)=8V(TYP)→VCC(stop stby)=7V(TYP)
VCC(startup on normal)=9V(TYP)→VCC(startup on stby)=8V(TYP)
これにより、スタンバイ時の Vcc 設定の調整をし易くする事で更なる消費電力の削減が可能になります。
3)バーストモードからノーマルモードへの切り替え
負荷が重くなり VF/B が上昇しフィードバック電圧 VF/B が VF/B(stby reset)=3V(TYP)を越えると、ノーマ
ルモードへ自動切り替えを行います。
バーストモードからノーマルモードへ切り替るとスタンバイ時に切り替えていた各しきい値が戻ると共に通
常起動の約 1/70 の時間にソフトスタートがかかり、切り替え時の波形バタツキ等を抑えています。
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3.3.2 スーパースタンバイモード
スーパースタンバイモードは、微少負荷領域における電源損失を最小限に抑えることができる間欠発振
モードです。この機能を使うことにより入力電力を低く抑えることができます。
1)ノーマルモード・オートバーストモードからスーパースタンバイモードへの切り替え
ノーマルモード・オートバーストモードからスーパースタンバイモードへの切り替えは Z/C 端子電圧の外部
クランプを信号により停止し、毎サイクル3Ⅴ以上印加することで行います。
スーパースタンバイモードに切り替わると制御 IC が Vcc
電圧を VCC(sp stby start)まで速やかに下げる事で、ス
ムーズな直接制御から間接制御への切り替えを実現し
ています。
6
VCC端子
Z/C端子 1
スタンバイ信号 ON(フォトカプラ点灯):
Z/C 端子電圧クランプ⇒
ノーマルモード or オートバーストモード
GND端子
3
スタンバイ信号 OFF(フォトカプラ消灯):
スタンバイ信号
(外部信号)
Z/C 端子電圧クランプ解除⇒スーパースタンバイモード
2)スーパースタンバイ制御
スーパースタンバイモードでは、F/B 端子による直接制御から Vcc 端子による間接制御に切り替わります。
スーパースタンバイ発振開始 VCC 電圧 VCC(sp stby start)=8.7V(TYP)
スーパースタンバイ発振停止 VCC 電圧 VCC(sp stby stop)=9.3V(TYP)
通常動作時の VCC より低い電圧で制御するため、出力電圧はレギュレーション電圧より低い電圧に制御
されますので、フィードバックフォトカプラは動作せず、消費電力が低減できます。
3V
Z/C
スーパースタンバイ
切替
スーパースタンバイ
解除
ID
スーパー
スタンバイ
ノーマル
Vcc(sp stby stop)=9.3V
Vcc(sp stby start)=8.7V
スーパースタンバイ
ノーマル
Vcc電圧による間接制御
VCC
Vout
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3)スーパースタンバイモードからノーマルモードへの切り替え
スーパースタンバイモードの解除は Z/C 端子電圧を外部信号により 3V 以下にクランプする事で行いま
す。
3.4 保護機能
3.4.1 Vcc 過電圧保護ラッチ
MS1003SH、MS1004SH には過電圧保護回路(OVP)が搭載されています。
コントロール巻線電圧が VOVP を越えることでラッチし、間接的に 2 次側出力の過電圧保護を行って
います。ラッチ解除は VCC 端子電圧を VUL(ラッチ解除電圧)以下に一旦下げることで行います。
Vin
Nc巻線
バックアップ
なし
あり
なし
あり
出力検出オープン等
わざとVCC電圧上昇
VOVP=26V
Vcc(start)=12V
Vcc(stop on stby)
or Vcc(stop on normal)
VUL=3.2V
Vcc
VccUVLO
起動
UVLO
ラッチ停止
ラッチ
ラッチ解除
ラッチ解除
VUL信号
3.4.2 過電流保護
OCL-GND 端子間に電流検出抵抗を接続することで
NP
主スイッチング素子のソース電流を検出し、オン幅に
よって決定されるしきい値電圧により、パルス・バイ・パ
8
ルス動作で主スイッチング素子の電流制限を行いま
Vin端子
5
す。
電流検出
抵抗
OCL端子
4
3
GND端子
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この電流制限保護機能には、入力電圧依存を補正する機能が内蔵されており、IC 内部の OCL しきい値
を時間とともに VTH(OCL start):約 0.35V から VTH(OCL)clamp:約 0.55V にリニアに変化させています。
主スイッチング素子のドレイン電流の傾斜(di/dt)は、入力電圧に比例することから、入力電圧が高くなると
より小さな IDP で OCL しきい値に達するようになり垂下が補正されます。
小
大
出力電圧 Vo
VGS
Vin
VTH(OCL)clamp
VTH(OCL start)
VOCL level
出力電流 Io
TOCL
大
Vin
小
3.4.3 過負荷保護(タイマーラッチ機能)
過負荷タイマーラッチ機能は、F/B 端子電圧が
VTH(OCL)垂下電力制限以上に
負荷を取ると、出力電圧が降下し
Tlatch count=2秒(TYP)経過でラッチ停止
VF/B(latch count)=4.6V 以上 とな る状 態を
ラッチ停止する保護機能です。
過電流リミット VTH(OCL)で設定された垂下電力
以上の電力を取ると、保護による電力制限によ
り、出力電圧が下がり始めるため、フィードバ
出力電圧 Vo(V)
Tlatch count=2 秒以上継続カウントした時に
ラッチ停止
ック電圧は制御範囲を超えて電圧が上昇し、
VF/B 電圧が VF/B(latch count)=4.6V 以上に
なります。この電圧を検出する事によりタイマ
0
出力電流 Io(A)
ーのカウントが始まります。
Tlatch count=2 秒以上を継続カウントしラッチ停止する事で過負荷状態が継続する事を防止し、2
秒というロングタイマーにより誤検出を防止しています。
カウント中は F/B 端子電圧が VF/B(latch count)=4.6V 未満となるか、VCC 電圧が VUL 以下にな
ればカウントがリセットされます。また、ラッチ停止後は IC の発熱を軽減させるため起動回路の
バイアスアシスト機能を停止させます。
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3.4.4 VCC-GND 短絡保護
Vcc-GND を短絡すると、起動回路に電流が流れ続けるため IC が発熱してしまいます。この状態を回避す
るため短絡時に Iccを低減する機能が内蔵されています。このことにより短絡時の過大な発熱を抑えること
ができます。
3.4.5 リーディングエッジブランク(LEB)
MS1003SH、MS1004SH には主スイッチング素子がオンしてから一定時間ドレイン電流検出回路からのトリ
ガ信号を受け付けない期間を設定し、ノイズマージンを上げる機能“リーディングエッジブランク”を搭載し
ています。
これにより、主スイッチング素子がオンする瞬間のゲートドライブ電流や、共振コンデンサの放電電流によ
る誤検出を防ぎます。
3.4.6 オントリガ誤動作防止回路
起動・負荷短絡時には、出力電圧が設定電圧より極端に小
オントリガ禁止期間
tondead
約0.25V
さくなるので、出力電圧に比例したコントロール巻線電圧も
非常に小さい値となり、オフ時のリンギング電圧によりオントリ
VZ/C
ガタイミングを誤検出し、電流臨界点よりはやくオンしてしま
ID
う可能性があります。
起動・負荷短絡時のオントリガ誤動作防止回路を内蔵して
います。
2次整流ダイオード電流
この機能は、IC 内部主スイッチング素子がオフしてからオン
トリガを禁止する期間 tondead を設けることで、オフ時のリンギング電圧による誤検出を防止します。
3.4.7 TSD
MS1003SH、MS1004SH には過熱保護回路(サーマルシャットダウン)が搭載されています。
IC が 150℃(TYP)になるとラッチし、発振動作を停止します。
ラッチ解除は VCC 端子電圧を VUL(ラッチ解除電圧)以下に一旦下げることで行います。
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4:各端子の機能
4.1 Z/C 端子
Z/C 端子は、NC 巻き線電圧を検出しターンオン信号を出す端子です。次の機能を持ちます。
1)ゲートオントリガ
2)誤 ON 防止機能(Tondead)
3)谷飛び機能
4.2 F/B 端子
F/B 端子は、定電圧制御におけるオン幅を決定する端子です。次の機能を持ちます。
1)F/B 端子電圧に対するオン幅を決定(ゲートオフトリガ)
2)無制御時のラッチ停止保護動作
4.3 GND 端子
IC のグランド基準となる端子です。
4.4 OCL 端子
検出抵抗を用いて 1 次電流制限をする端子です。次の機能を持ちます。
1)最大 1 次電流ピーク値を決定(パルスバイパルス方式)
2)4step ソフトスタート時の 1 次電流ピーク値を決定
3)AutoStby 時の 1 次電流ピーク値を決定
4)リーディングエッジブランク機能
4.5 VG 端子
ゲート電圧を出力する端子です。次の機能を持ちます。
1)ゲート信号出力
2)ソフトドライブ
4.6 Vcc 端子
IC の電源端子です。次の機能を持ちます。
1)UVLO
2)OVP ラッチ
3)Vcc アシスト
4)起動回路のオン・オフ
5)ラッチ動作解除
6)Vcc-GND 短絡保護
7)スーパースタンバイ時の間接制御動作
4.8 Vin 端子
入力コンデンサの正側へ接続し、IC を起動させる端子です。
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5:設計方法
本項の設計方法は、電気的な設計方法の一例です。
絶縁材料、絶縁構成、構造などについては、必要に応じ公的機関の定める安全基準に沿って設計してくださ
い。以下に計算式で使われているパラメータの単位系を一覧にしていますのでご参照ください。
・本項の計算式で取り扱う単位一覧
名称
単位
名称
単位
電圧
V (ボルト)
時間
s (秒)
電流
A (アンペア)
長さ
mm (ミリメートル)
電力
W (ワット)
面積
mm2(平方ミリメートル)
コンデンサ容量
F (ファラッド)
電流密度
インダクタンス
H (ヘンリー)
磁束密度
mT (ミリテスラー)
抵抗
Ω (オーム)
巻き数
Turn (ターン)
A/ mm2
(アンペア パー 平方ミリメートル)
5.1:設計フローチャート
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5.2:メイントランス参考設計条件
参考値はあくまで目安です。負荷条件などにより調整してください。
名称
記号
単位
参考値
入力電圧範囲
VAC
[V]
85~276
効率
η
-
0.80~0.85
最低発振周波数
f(min)
[kHz]
35~50
オンデューティ比
D
-
0.4~0.6
共振コンデンサ容量
Cq
[pF]
100~3300
コントロール巻線電圧
VNC
[V]
15~20
磁束密度変化
ΔB
[mT]
250~300
巻線電流密度
α
[A/mm2]
4~6
※共振コンデンサの容量について、設定する共振コンデンサ容量に対して主 SW 素子の
出力容量(Coss)が無視できない場合は“共振コンデンサ容量+Coss”を Cq としてください。
5.3:メイントランス設計計算式
1
最低直流入力電圧
VDC (min)  1.2  V AC (min)
[V]
2
最大直流入力電圧
VDC (max)  2 VAC (max)
[V]
3
最大発振周期
T(max) 
4
最大オン幅
ton (max)1 
5
最大オフ幅
t off (max) 
6
疑似共振期間
tq    Lp  Cq
[s]
7
最大負荷電力
PO (max)  Vo  I O (max)
[W]
8
最大出力電力(目安)
PL  1.2  PO (max)
[W]
9
主 SW 素子ピーク電流値
I DP 
1
[s]
f (min)
D
[s]
f (min)
N S1  VDC (min)  t on (max)1
Np  (VO1  VF 1 )
2  PL
  VDC (min)  D
 tq
[s]
[A]
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VDC (min)  t on (max)1
10
一次巻線インダクタンス
Lp 
11
一次巻線数
Np 
12
コアギャップ
lg 
[H]
I DP
VDC (min)  t on (max)1  10 9
[Turn]
B  Ae
4    Ae  Np 2  10 10
Lp
※ Ae:コアの断面積
[mm]
※ギャップ lg はセンターギャップの値とします。
※ここで lg が 1[mm]以上になった場合は、トランスコアサイズ、発振周波数などを見直して
再設計を検討してください。
13
制御系出力巻線数
Np  (VO1  VF 1 )  (
N S1 
1
f (min)
 t on (max)1  tq )
[Turn]
VDC (min)  t on (max)1
VO 2  VF 2
VO1  VF 1
[Turn]
VNC  VFNC
VO1  VF 1
[Turn]
14
非制御系出力巻線数
N S 2  N S1 
15
コントロール巻線数
Nc  N S1 
※13 式~15 式で使われている記号
制御系巻線 出力電圧 1
VO1
非制御系巻線 出力電圧 2
VO 2
コントロール巻線 出力電圧 1
V NC
制御系巻線出力
VF1
整流ダイオード順方向電圧
非制御系巻線出力
VF 2
整流ダイオード順方向電圧
コントロール巻線出力
整流ダイオード順方向電圧
VFNC
※コントロール巻線電圧 VNC のレギュレーションが悪い場合は低めに設定し、
スーパースタンバイ機能を効果的に利用するためには高めの電圧設定にします。
16
一次巻線サイズ
17
二次巻線サイズ
ANP 
2  D  Po
  3  VDC (min)  t on (max)1  f (min)
ANS 
2  Io  1  D  (tq  f (min) )
  3  (t off (max)  tq )  f (min)
[mm2]
[mm2]
※NC 巻線は取り扱いなどの理由から、ANC=0.2[mmφ]以上を推奨しています。
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5.4:各動作点を確認する
MS1003SH・MS1004SH は、制御 IC がもつ機能によって発振周波数が変化する動作変曲点をも
っています。
それぞれの動作点を求めることで試作電源における動作を予測します。
下図は出力電力に対する動作周波数特性のモデル図です。各動作点を把握することで変曲点の電
動作周波数 [kHz]
力やヒステリシス幅、垂下点の目安を知ることができます。
本項で、算出する動作点は、上図の丸印のポイントです。
・谷飛び動作開始点及び谷飛び動作解除点
・オートバースト開始点及びオートバースト解除点
・垂下点
これらの動作点を算出することにより
“待機状態において十分スタンバイ動作になっているかどうか。
”
“谷飛び動作ヒステリシスは十分確保できているか。”
“垂下点は、出力に対して十分に余裕あるか。”
を確認します。
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5.4.1 式中の変数について
名称
記号
単位
設定した直流入力電圧
VDC
[V]
各条件時のオン幅
ton
[s]
各条件時のオフ幅
toff
[s]
IDP
[A]
Po
[W]
R(ocl)
[Ω]
Vburst
[V]
Vth(ocl)
[V]
各条件時の
主 SW 素子ピーク電流値
動作周期
オフ幅
谷飛び1回
tq
各条件時の出力電力
1 次電流検出抵抗
OCL 端子オートバースト時
しきい値電圧
OCL 端子電流検出しきい値電圧
右図にスイッチング波形のモデル図です。谷飛び回数
や tq は右図の場所を指します。
オン幅
谷飛び0回
谷飛び0回
谷飛び1回
谷飛び2回
スイッチング波形モデル図
その他の記号は 5.3 項及び仕様書に準じます。
5.4.2 谷飛び開始電力を求める計算式
Np  (T(bottom_sk ip_start)  tq )  (VO1  V F 1 )
18
オン幅
ton 
19
オフ幅
toff  T(bottom_sk ip_start)  ton
20
主 SW 素子
ピーク電流値
I DP 
N S 1  V DC  Np  (VO1  V F 1 )
[s]
[s]
V DC  ton
Lp
[A]
V DC  ton 2  
Po 
2  Lp  T(bottom_skip_start)
2
21
谷飛び開始電力
[W]
ここで求められる谷飛び開始電力が、5.4.3 項で求められる谷飛び解除電力より大きくなってし
まう場合にはヒステリシスが十分に確保できていないことを意味しています。
再度、トランスの再設計を行って下さい。
5.4.3 谷飛び解除電力を求める計算式
谷飛びを解除する条件は[条件 1]と[条件 2]があり、”[条件 1]の 25 式 谷飛び解除電力 1” と
”[条件 2]の 30 式 谷飛び解除電力 2 または 34 式 谷飛び解除電力 3” のどちらか小さい方の電力
値が谷飛び解除電力となります。([条件 2]の値は算出したい入力電圧によって谷飛び解除電力 2
または谷飛び解除電力 3 のどちらか一方で谷飛び解除電力 1 と比較します。)
下図は、それぞれの関係を示した入力電圧に対する谷飛び開始・解除電力のモデル図です。
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[条件 1]動作周波数が、T(bottom_skip_stop) を満足する条件
※式中にある係数 A は、MS1003SH の場合には“1”、MS1004SH には“2”を代入します。
Np  (T(bottom_sk ip_stop)  tq )  (VO1  V F 1 )
22
オン幅
ton 
23
オフ幅
toff  T(bottom_sk ip_stop)  2 A  tq  ton
24
主 SW 素子
ピーク電流値
N S 1  V DC  Np  (VO1  V F 1 )
I DP 
V DC  ton
Lp
[s]
[s]
[A]
V DC  ton 2  
Po 
2 Lp  (T(bottom_skip_stop)  2 A  tq)
2
25
谷飛び解除電力 1
[W]
[条件 2]谷飛びしている動作モードにおいて OCL 端子の電流検出しきい値電圧に達する条件
この条件においては、Vth(ocl)が入力電圧によって変化しますので最初に Vth(ocl)変曲点にお
ける入力電圧 VDC(clamp)を算出し、VDC
(clamp)以下であれば
1)項、VDC
(clamp)以上であれば
2)項の計算式で算出します。
Vth(ocl)変曲点の入力電圧は、以下の式で求めます。
26
Vth(ocl)変曲点の入力電圧
V DC ( clamp ) 
Lp  Vth(OCL ) clamp
TOCL  R(OCL )
[V]
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1)VDC<VDC(clamp)の場合
※式中にある係数 A は、MS1003SH の場合には“1”、MS1004SH には“2”を代入します。
Lp  Vth(OCL ) clamp
27
オン幅
ton 
28
オフ幅
toff 
29
30
主 SW 素子
ピーク電流値
谷飛び解除電力 2
I DP 
Po 
[s]
V DC  R( OCL )
VDC  N S1  ton
 (2 A  1)  tq
Np  (VO1  VF 1 )
[s]
Vth(OCL ) clamp
[A]
R(OCL )
V DC  Vth( OCL ) clamp    ton
[W]
2  R( OCL )  (ton  toff )
2) VDC>VDC(clamp)の場合
※式中にある係数 A は、MS1003SH の場合には“1”、MS1004SH には“2”を代入します。
31
オン幅
ton 
VDC  R(OCL )
Lp
32
33
オフ幅
主 SW 素子
ピーク電流値

Vth(OCLstart )
(Vth( OCL ) clamp  Vth(OCLstart ) )
[s]
T( ocl )
toff 
VDC  N S1  ton
 (2 A  1)  tq
Np  (VO1  VF 1 )
I DP 
V DC  ton
Lp
[s]
[A]
V DC  ton 2  
Po 
2  Lp  (ton  toff )
2
34
谷飛び解除電力 3
[W]
5.4.4 Auto バースト開始・解除電力を求める計算式
式中の Vburst には、仕様書に記載されている“電気的・熱的特性_自動スタンバイ”の項目に記
載されている“VOCL(stby)”または“VTH(stby)”を代入して求めます。
Auto バースト開始電力を求める場合 Vburst=VOCL(stby)=0.045V
Auto バースト解除電力を求める場合 Vburst=VTH(stby)=0.060V
を代入します。
を代入します。
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※式中にある係数 A は、MS1003SH の場合には“1”、MS1004SH には“2”を代入します。
Lp  Vburst
VDC  R(OCL )
35
オン幅
ton 
36
オフ幅
toff 
VDC  N S1  ton
 (2 A  1)  tq
Np  (VO1  VF 1 )
37
主 SW 素子ピーク電流値
I DP 
Vburst
R(OCL )
[A]
38
Auto バースト開始・解除電力
Po 
VDC  Vburst    ton
2  R(OCL )  (ton  toff )
[W]
[s]
[s]
5.4.5 垂下点電力を求める計算式
Vth(ocl)は入力電圧によって変化しますので、最初に Vth(ocl)変曲点における入力電圧
VDC(clamp)を算出し、VDC(clamp)以下であれば 1)項、VDC(clamp)以上であれば 2)項の計算式で算
出します。
Vth(ocl)変曲点の入力電圧は、5.4.3 項と同じ以下の式で求めます。
26
Vth(ocl)変曲点の入力電圧
V DC ( clamp ) 
Lp  Vth(OCL ) clamp
TOCL  R(OCL )
[V]
下図は、入力電圧と垂下点電力の関係をモデル化した図です。
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1)VDC<VDC(clamp)の場合
Lp  Vth(OCL ) clamp
39
オン幅
ton 
40
オフ幅
toff 
41
主 SW 素子
ピーク電流値
[s]
V DC  R( OCL )
VDC  N S 1  ton
 tq
Np (VO1  VF 1 )
[s]
Vth(OCL ) clamp
I DP 
[A]
R(OCL )
VDC  ton 2 
2  Lp  (ton  toff )
2
42
垂下点電力
PL 
[W]
2) VDC>VDC(clamp)の場合
43
オン幅
ton 
VDC  R(OCL )
Lp
44
45
オフ幅
主 SW 素子
ピーク電流値

Vth( OCLstart )
(Vth(OCL ) clamp  Vth( OCLstart ) )
toff 
VDC  N S1  ton
 tq
Np  (VO1  VF 1 )
I DP 
V DC  ton
Lp
[s]
TOCL
[s]
[A]
VDC  ton 2 
2  Lp  (ton  toff )
2
46
垂下点電力
PL 
47
垂下点時の Vth(ocl)
Vth( ocl ) 
[W]
(Vth( OCL ) clamp  Vth( OCLstart ) )
TOCL
 ton  Vth(OCLstart )
[V]
各動作点の算出値は、目安となります。
電源効率 フィルタ回路 制御 IC 信号遅れ などの様々な要因から実際の電源特性と一致するもの
ではありませんのでご注意下さい。
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5.5 各端子の設計
5.5.1 Z/C 端子(1 番端子)周辺の設計方法
本項で紹介している動作モード切り替え回路は、2 次側より信号をもらうフォトカプラを使った回路で
す。2 次側回路構成については”6:参考回路図”をご参照ください。
(1)基本回路
ノーマルモードのみ使用する最も簡単な
回路構成です。オートバーストモードは動
作しますので最も簡単にスタンバイ対応
電源を構成することができます。
(2)スーパースタンバイモードを使う回路
右図は、スーパースタンバイモードを使う
時の基本回路です。Z/C 端子を High レ
ベルと Low レベルに切り替えができるよう
フォトカプラを付加した回路です。フォトカ
プラが ON 時にノーマルモード、OFF 時
にスーパースタンバイモードで動作します。
Z/C 端子が十分に Low レベルになるようにフォトカプラ電流を設定する必要があります。
・この回路構成におけるアブノーマル対策回路
フォトカプラ PH102 の絶縁破壊が問題
になる場合には右図のようにツェナダイ
オードで保護します。
MS1003SH
MS1004SH
3
1
R105
R106
Nc
D102
DZ301
PH102
C108
(3)少ない電流でフォトカプラを動作させる回路
フォトカプラを動作させるための電力を減
らした回路です。オートバーストモードに
おいて PH102 を動作させる電力が低減
できるため(2)の回路よりもオートバースト
モード時の効率がやや改善します。
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(4)各部品の設定方法
1)R105+R106
Z/C 端子の絶対最大定格は、±5mA となっています。Z/C 端子(1 番端子)-GND 端子(3 番端子)
間には保護用ツェナダイオードが内蔵されており、このダイオードによって絶対最大定格電流が
決定されています。抵抗値は、この電流値を超えないように設定しなければなりません。
右図は、基本回路に内蔵保護素子(保
護用ツェナダイオード)を書き加えたモ
デル回路です。この内蔵保護素子に流
れる電流を I①・I②とします。
I ①は、Nc 巻き線出力がプラス電圧の
時に流れる電流、I ②は、Nc 巻き線出
力がマイナス電圧の時に流れる電流で
す。
この I①・I②を、絶対最大定格以下に設定する必要があります。通常設計においては絶対最大定
格の 80%マージン(±4mA)以下になるように抵抗値を設定します。
R105+R106 の抵抗値を求める計算式を以下に示します。
48
49
Nc 巻き線の+側電圧を
考慮した場合の抵抗値
Nc  (VO1  V F 1 )
 VCL( H )
N S1
R105  R106 
I①
Nc  VDC (max)
Nc 巻き線 -側電圧を
考慮した場合の抵抗値
R105  R106 
Np
 VCL( L)
[Ω]
[Ω]
 I②
VCL(H)及び VCL(L)は、保護用ツェナダイオードである内蔵保護素子のクランプ電圧で、仕様
書において規定されています。
また、(1)項の基本回路構成を使用する場合、I①の電流は D102 へ流れるため 48 式を考慮する
必要はありません。
2)R106 と C108
部分共振期間 tq を設定する部品です。
実機波形を見ながら部分共振谷点に合わせるよう調整してください。
設計初期値
C108
100pF
R106
1kΩ以上
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3)D102
Z/C 端子を Low レベルにしノーマルモード動作させるためのダイオードです。
3.2.1 項のようにオントリガは Z/C 端子が VZ/C(0.25V)になった時を検出していますので VZ/C 以
下になってしまうようなダイオードは使用できません。従って、VZ/C を十分に確保できる VF をもつ
ダイオードを使用してください。
5.5.2 F/B 端子周辺の設計方法
(1)基本回路
右図が、基本回路になります。
PH101 は、定電圧制御用のフォトカプラ、R107 と C107
はノイズ対策部品です。
C107 は 470pF~2200pF 程度ですが、設計初期値とし
て 1000pF としてください。
R107 は、39kΩ~47kΩが設定値となりますが、通常は
47kΩ固定としてください。39kΩ以下ではタイマーラッ
チ機能が無効になる可能性がありますので注意してくだ
さい。
(2)アブノーマル対策回路
ショート試験において、PH101 の絶縁破壊が問題にな
ることがあります。その場合には右図のようにツェナ-ダイ
オードで保護してください。10V 以上のツェナダイオード
であれば通常動作において IC 機能への影響はありま
せん。
(3)F/B 端子の位相補償について
C107 は、ノイズ対策用としてではなくフィードバック応答
を調節する役割もあります。しかし、電力の大きな電源
や多出力電源では 2 次側制御回路の位相補償だけで
は対応出来ない場合があります。
このような場合には、右図のように F/B 端子-GND 端子
間に回路を付加してください。
この方法によってハンチング等が対策できる場合があり
ます。下表を参考に定数を決定してください。
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設計初期値
R303
4.7kΩ
C301
0.1μF
(4)F/B 端子への付加回路について
セット負荷の設定条件などから電源回路に回路を付加する場合、タイマーラッチ機能が無効化されな
いよう考慮してください。電源性能に悪影響を及ぼしますのでタイマーラッチを無効化するような使い
方はご遠慮ください。
5.5.3 OCL 端子の設計
(1)基本回路
右図が基本回路となります。
1 次電流検出を行う R104 及び R103 と C106 による
フィルター回路から構成されています。
R104:5.4 項で求められる抵抗値
C106:設計初期値として 220pF
設計値は、220pF~3300pF
R103:設計初期値として 100Ω
設計値は 100~470Ω
となります。
スイッチングノイズが大きく、誤動作を誘発する場合には定数を大きくして対策します。
(2)出力電力が大きな場合の対策回路
大きな出力電力時などスイッチングノイズが大きな場合では、OCL 端子に大きなマイナス電圧がかか
る時があります。MS100xSH シリーズは単電源 IC ですので、誤動作のみならず IC を壊してしまう場
合があります。
下図は、マイナス電圧が印加されないように対策した回路です。この対策により OCL 端子を保護する
ことができます。付加ダイオード D301 は、VF の小さいもの(ショットキーバリアダイオード推奨)を選び
出来るだけ端子直近に接続します。
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5.5.4 VG 端子の設計
(1)基本回路
VG 端子は、スイッチング信号を出力する端子で主 SW
素子が電圧駆動素子であれば使用することができま
す。
右図は基本構成回路図です。初期設計値としてゲート
抵抗 R102 は 10Ω、ゲートソース間の抵抗 R101 は 33k
Ωを使用してください。
(2)駆動回路が必要な回路
MS100x シリーズの主 SW 素子駆動能力は仕様
6
書に記載されている電気的・熱的特性”ソフトドラ
イブ”の項目に記載されている規格値になります。
従って、(1)項の基本回路で VG 端子が直接駆動
MS1003SH
MS1004SH
5
できない主 SW 素子を使用する場合には右図の
ような VG 端子と主 SW 素子の間に駆動能力を上
Q302
3
R102
100Ω
Q303
R304
100Ω
Q101
R305
10Ω
げる回路が必要になります。
定数設定は、右図を参考に決定してください。
R306
10kΩ
R104
主 SW 素子のゲート全電荷量 “Qg” を目安にすると駆動回路の有無が判断できます。
主 SW 素子の Qg > 20nC~25nC
駆動回路必要
主 SW 素子の Qg < 20nC
駆動回路なし
(3)大電力を扱う場合
主 SW 素子を2つ以上使わなければならないような電源回路では、下図のように駆動回路を設計しま
す。下図は、主 SW 素子を 2 個使う場合ですが 3 個以上の場合でも下図を参考に主 SW 素子を並
列に接続します。定数は下図の定数を初期設計値として評価検討してください。
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5.5.5 Vcc 端子の設計
(1)基本回路
右図が基本回路です。Nc 巻き線出力を整流する
D103 と C109、Vcc-GND 間のノイズ対策部品 C110
で構成されます。
C110 には周波数特性のよいコンデンサを使用し、
0.22μF 前後で設計してください。
(2)Vcc 電圧のレギュレーションが悪い場合の対策回路①
負荷仕様など設計条件によって、Vcc 電圧のレギュレーションが悪い場合は下左図のように R110 を
追加します。レギュレーションを改善する最も安価な対策方法になります。下右図は、出力電力に対
する Vcc 電圧のレギュレーションのモデル図です。赤線は、(1)項の基本構成における Vcc 電圧レギ
Vcc電圧
ュレーションです。この対策により、黒線へ改善できます。
(3)Vcc 電圧のレギュレーションが悪い場合の対策回路②
(2)項より対策効果の高い対策回路は下図となります。
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R310
DZ303
初期設計値
推奨値
560Ω
220Ω~1kΩ
18V
16V~22V
R310 の損失量にはご注意ください。
この対策により、右図のように赤線に対して黒線
DZ303 の電圧設定値は、右図の DZ303 の動作
点になります。
Vcc電圧
のようにレギュレーションが改善します。
また、この対策回路はスーパースタンバイモード
において損失がありませんのでスーパースタンバ
イモードを使用する場合に最も有効な回路です。
(4)Vcc 電圧のレギュレーションが悪い場合の対策回路③
上記(2)(3)項で対策できない場合は、下図のようなドロッパー回路を Vcc の安定化に使用します。
下図の定数を参考に設計してください。
DZ304 は、Q306 の EB 間耐圧が 5V の場合は 22V
Q306 の EB 間耐圧が7V の場合は 20V~22V を選択してください。
この対策によって、「DZ304 のツェナ電圧+Q401 の
VBE」の電圧に Vcc を安定化させます。ただし、上図
用することができませんので正しく OVP が動作するよ
うに DZ305 のツェナ電圧を設定してください。
Vcc電圧
のように DZ305 を付加しないと Vcc 端子の OVP を利
右図は、上図の対策を行った Vcc レギュレーションモ
デル図です。ドロッパー回路が動作し安定化、DZ305
が動作し OVP 電圧になる特性となります。
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(5) アブノーマル対策回路
ショート試験において Vcc 端子の破壊が問題になる
場合には、右図のようにツェナ-ダイオード(DZ306)で
保護してください。30V 以上のツェナダイオードであ
れば通常動作において IC 機能への影響はありませ
ん。
5.5.6 共振コンデンサの設定
共振コンデンサの容量設定について特別な制限はありませんが、実使用上 100pF~3300pF の範囲
で決定するようにしてください。
(1)比較的大きい容量を選ぶ条件
・入力電圧が低い仕様など、部分共振谷点が 0V に近くスイッチング損失が非常に小さいことが予想
される場合。
・雑音端子ノイズが大きい場合。
・主 SW 素子の耐圧に対してサージ電圧が大きくマージンがとれない場合。
(2) 比較的小さい容量を選ぶ条件
・主 SW 素子の発熱が大きい場合。
・待機電力を少しでも小さくしたい場合。
以下に、共振コンデンサの容量を変更した場合に電源性能への影響を表に示します。
共振コンデンサ容量
項目
を小さくする
主 SW 素子のピーク電圧
共振コンデンサ容量
⇔
を大きくする
高くなる
⇔
低くなる
垂下点電力
大きくなる
⇔
小さくなる
主 SW の発熱
小さくなる
⇔
大きくなる
ターンオン直後の主 SW 素子電流値
小さくなる
⇔
大きくなる
同じ出力電力条件での主 SW ピーク電流値
小さくなる
⇔
大きくなる
出力電圧のレギュレーション
悪くなる
⇔
良くなる
Vcc 電圧のレギュレーション
悪くなる
⇔
良くなる
電源効率
良くなる
⇔
悪くなる
悪くなる傾向
⇔
良くなる傾向
ノイズ
電源性能の最適化において、共振コンデンサ容量の変更はトレードオフになるものが多いので容量変
更のメリット・デメリットをよく検討して定数を決定してください。また、トランスの再設計においてトレードオ
フが改善する場合もあります。電源性能の最適化においては、トランスの再設計も考慮するようにしてく
ださい。
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6:参考回路
6.1 回路図
L101
HF2316-A103Y1R0
F101
10mH
AC250V 1.6A
1A
C102
AC250V
1000pF
C101
AC250V
0.1μF
AC
AC
C103
AC250V
1000pF
AC85~132V
D201
SG5S6M
T101
ECO2219
D101
S1WB80
C105
1kV
470pF
R104
0.39Ω 2W
C104
200V
100μF
L201
2.6A
4.7μH
Np
GND
C201
16V
1500μF
R102
10Ω
0.5W
R101
33kΩ
R201
3.3kΩ
0.25W
R202
2.2kΩ
PC101
PC123
R110
D103
1Ω 0.5W M1FL20U
IC111
MS1003SH
8
1
Vin
Z/C
7
2
NC
6
3
F/B
Vcc
GND
4
OCL
C107
50V
1000p
Q102
2SC4081
C110
50V
0.1μF
VG
Nc
IC201
HA17431HLTP
R207
10kΩ
±0.5%
スーパースタンバイ
モード切り替え回路
R208
6.8kΩ
0.25W
R209
100kΩ
PC102
PC123
Q201
DTC114EUA
High信号:Normal Mode
Low信号:SP Stby Mode
R106
12kΩ
PH102
PC123
PH101
PC123
R107
47kΩ
R205
36kΩ
±0.5%
R206
2.2kΩ
±0.5%
C203 R203
50V 4.7kΩ
0.047μF
C109
50V
100μF
R109
150kΩ
C106
50V
220pF
R105
10kΩ
D102
M1FL20U
5
+Vo
12V/2.1A
Ns
Q101
F5B52HPⅡ
R103
100Ω
0.25W
C202
16V
470μF
C108
50V
100p
C151
AC250V
2200pF
R108
68kΩ
後述の6.2項より算出した計算値により設計した回路です。
計算値と実機では効率や応答系による結果の違い、
ICのしきい値のばらつき・各部品の温度ドリフトなどの要因があり
同じ数値になりません。計算値はあくまで参考値となります。
参考回路においては、OCL抵抗(R(OCL))について実機と計算値の
ズレから0.37Ω→0.39Ω・トランスのインダクタンス値は
トランスメーカー情報よりAL-value=140時のインダクタンス値は
0.656mHとなり0.647mHから変更しています。
6.2 参考回路設計計算事例
6.1 項の参考回路の設計例を紹介します。
(1)入出力仕様及び使用トランス
制御 IC
MS1003SH
入力仕様
AC85~132V
出力仕様
12V/2.1A
トランス
ECO2219 (TDK 製)
(2)初期設定値一覧
VDC(min)
102 [V]
D
0.47
Cq
470pF
VDC(max)
187 [V]
Po
25.2 [W]
PL
Po×1.2 [W]
f(min)
50 [kHz]
η
0.85
Ae
46.4 [mm2]
VO1
12 [V]
VNC
15 [V]
ΔB
300mT
VO1 整流ダイオード VF1
0.8 [V]
VNC 整流ダイオード VFNC
0.6 [V]
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※D(オンデューティー比)の設定について
D 値は、主に主 SW 素子の耐圧と主 SW 素子の発熱によって決定されます。
以下に、D 値を変更した場合の特性変化一覧を示しますので参考にして下さい。
D(オンデューティー比)
小さくする
⇔
大きくする
主 SW 素子にかかる電圧
低くなる
⇔
高くなる
主 SW 素子のピーク電流値
増える
⇔
減る
主 SW 素子のスイッチング損失
増える
⇔
減る
主 SW 素子の導通損
増える
⇔
減る
小さくなる
⇔
大きくなる
動作周波数変動
(3)1 次インダクタンス値と主 SW ピーク電流値を求める。
4 式 t on (max)1 
0.47
=9.4[μs] 及び
50  10 3
9 式 I DP 
2  25.2  1.2
=1.484[A] を 10 式に代入。
0.85  102  0.47
10 式 Lp 
102  9.4  10 6
=0.646[mH]
1.484
(4) 1 次巻き線数を求める
4 式 t on (max)1 
11 式 Np 
D
f (min)

0.47
=9.4[μs] を 11 式に代入します。
50  10 3
VDC (min)  t on (max)1 10 7
B  Ae

102  9.4  10 6  10 7
=68.88[Turn]
300  0.464
計算結果を整数化して、Np=68[Turn]とします。
(D を大きい方へ修正する場合は、切り上げます。ここでは、D を小さい方へ修正しようとした
ため切り下げて整数化しています。)
(5)制御系出力巻き線数を求める
6 式 tq  3.14  0.646  10
13 式 N S 1 
3
 470  10 12 =1.73[μs]
(12  0.6)  68  (
1
 9.4  10 6  1.73  10 6 )
3
50  10
=7.76[Turn]
102  9.6  10  6
計算結果を整数化して、NS1=8[Turn]とします。
(D を大きい方へ修正する場合は、切り下げます。ここでは、D を小さい方へ修正しようとした
ため切り上げて整数化しています。)
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(6)コントロール巻き線数を求める
15 式
Nc  8 
15  0.8
=10.03[Turn]
12  0.6
計算結果を整数化して、Nc=10[Turn]とします。
(電圧を高めに修正したい場合は切り上げます。低めに修正したい場合は切り下げます。)
(7)トランス設計の再計算
トランス設計には、小数を整数化する作業が入ることや抵抗値・インダクタンス値など計算値
と同じにはならないことから実際設計値は初期設計からずれます。
ここで、ズレを修正するとともに OCL 抵抗 R(OCL)・トランスコアギャップを決定します。
1) 主 SW ピーク電流値の修正 及び OCL 抵抗 R(OCL)を決定する。
(3)項で求めた主 SW ピーク電流値と VTH(OCL)clamp の関係から R(OCL)を求めます。
R(OCL ) 
0.54
=0.3638[Ω]
1.484
抵抗値を合わせるため R(OCL)を 0.37[Ω](例えば 0.22Ω+0.15Ω)とします。
その結果、主 SW ピーク電流値は、 I DP 
0.54
=1.46[A]へ変更となります。
0.37
2)コアギャップを決定しインダクタンス値を修正する。
トランスメーカーへコアギャップを指定するには、5.3 項 12 式の計算式で求められる値を指
定してもよいですが、インダクタンス係数 ”AL-value” を利用することが一般的です。
AL-value は、[
nH
]の単位をもつ NI-limit や磁気飽和条件とともにトランスコアの性能を決
N2
定する重要なパラメータのひとつです。
ここでは、AL-value=140 としてインダクタンス値の修正をします。
(トランスメーカーによって標準となっている AL-value の種類は異なりますので、詳しくは各
トランスメーカーにお問い合わせください。)
AL - value 
nH
2
ですから、 140  68 =647360 [nH] です。
2
N
インダクタンス値 Lp を 0.647[mH]と修正します。
3)初期設計値の修正
1)項・2)項の IDP と Lp の修正値から初期設定値は以下のように修正されます。
10 式より
t on (max)1
Lp  I DP 0.647  10 3  1.46


=9.26 [μs]
V DC (min)
102
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6 式より tq  3.14  0.647  10
5 式より t off (max)
t on (max)1
t on (max)1  t off (max)

9.26
=0.467
9.26  10.55
1
1

=50.48[kHz]
t on (max)1  t off (max) 9.26  10.55
最低発振周波数は、 f (min) 
PL 
 470  10 12 =1.73[μs]
8  102  9.26  10 6

 1.73  10 6 =10.55[μs]
68  (12  0.6)
従って、オンデューティ比 D 
9 式より
3
I DP    VDC (min)  D
2

1.46  0.85  102  0.467
=29.56[W]
2
このことから PL  1.173  PO (max) 最大電力の 1.173 倍が垂下点電力であることがわかります。
またΔB は、11 式より B 
V DC (min)  t on (max)1  10 7
Np  Ae

102  9.26  10 6  10 7
=299.35[mT]
68  0.464
この結果よりΔB が問題ないかどうかが確認できます。
・修正したパラメータの一覧
f(min)
50.48 [kHz]
D
0.467
ΔB
299.4mT
Lp
0.647 [mH]
tq
1.73 [μs]
PL
Po×1.173[W]
Np
68 [Turn]
NS1
8 [Turn]
Nc
10 [Turn]
この修正値が問題ないかどうかを確認してください。特に、PL が大きすぎないか(出力電流
が大きすぎないか)または小さすぎないか(負荷に対して十分余裕があるか)、ΔB は飽和する
ような条件になっていないかを確認してください。
(8)主 SW 素子にかかる電圧の推定
トランス設計が確定すれば、主 SW 素子の耐圧を推定し選定した主 SW 素子の耐圧が問題な
いか予測できます。下図は、主 SW 素子のオフ時波形モデル図です。①~④を計算すること
で主 SW 素子の最大値を計算することができます。
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①VDC 電圧
入力コンデンサ電圧と同じです。
最大値は“2 式”で求められる値で、今回の場合 186.7[V] となります。
②フライバック電圧
トランスのフライバック電圧です。
Np  (VO1  VF 1 )
68  (12  0.6)
で求められます。
=107.1[V] となります。
N S1
8
③サージ電圧
リーケージインダクタンスによるサージ電圧です。仕様やトランスによって変化します。
今回は、最大 150[V]と推定してみます。
最終的に実機による確認が必要となる項目です。
④擬似共振谷点電圧
この電圧が高いほどスイッチング損失が大きくなりますので確認します。
①-②=④ となります。
今回の場合、186.7[V]-107.1[V]=79.6[V] となります。
以上より、主 SW 素子の最大電圧は 186.7[V]+107.1[V]+150[V]=443.8[V] となります。
500V 耐圧の MOSFET であれば 90%マージン(450[V])以下で使用できると判断できます。
耐圧が不足する場合には、MOSFET の耐圧を大きくするか D(オンデューティ比)を小さくして再設計を
行います。
逆に、擬似共振の効果を最大限活かすには D(オンデューティ比)を大きくして設計します。
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(9)動作点の確認
動作点の確認では、6.2 (7)-3)項で修正された初期設計値で計算します。
参考電源の動作点を 5.4 項に従って算出します。
本項では、入力電圧:DC120V で計算した結果を以下に示します。
①
谷飛び開始電力
②
谷飛び開始時動作周波数
9.33[W]
133.3[kHz]
谷飛び解除電力
[条件 1]25 式より谷飛び解除電力 1・・・16.23[W]
③
DC120V=VDC < VDC(clamp)=129.4V となるため
[条件 2]-1)30 式より谷飛び解除電力 2・・・26.77[W]
16.23[W]
谷飛び解除電力 1<谷飛び解除電力 2 となり
谷飛び解除電力 1 が谷飛び解除電力。
④
谷飛び解除時動作周波数・・・
谷飛び解除電力 1 における 22 式と 23 式より算出。
⑤
Auto バースト開始電力
⑥
Auto バースト開始直前動作周波数
⑦
Auto バースト解除電力
⑧
Auto バースト解除直後動作周波数
60.74[kHz]
0.62[W]
151.86[kHz]
1.03[W]
141.87[kHz]
垂下点電力値
⑨
DC120V=VDC < VDC(clamp)=129.4V と
31.8[W]
なるため 30 式より算出。
⑩
54.3[kHz]
垂下点時動作周波数
下図は、それぞれの動作点を示した出力電力に対する動作周波数特性モデル図です。
①~⑩までの動作点の条件を確認します。
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制作:電子デバイス事業部 第二開発部
作成日:2012 年 6 月 26 日
新電元工業株式会社
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