NJU7606アプリケーションノート

NJU7606/08 Application Manual
Preliminary
■概 要
NJU7606/08 は、低電圧電源動作で高速発振できる昇圧/フライバック型スイッチングレギュレータ用 IC です。出力
にトーテムポール出力形式を採用しており、MOSFET のドライブが容易です。
ロードスイッチ機能を搭載し、スタンバイ時、ラッチモード時における、負荷への電流の流れ込みを遮断できます。
またソフトスタート、デットタイムコントロール、タイマーラッチ短絡保護機能を内蔵しており、外部可変が容易で
す。電池アプリケーションや低電圧ロジックから電圧を昇圧生成用途に最適です。
小型/薄型パッケージである TVSP, FFP タイプの採用により、面積、高さに制約のあるアプリケーションにも容易
にご検討いただけます。
■特 徴
●PWM 方式スイッチング電源制御
●ロードスイッチ機能
●低電圧動作
●広発振周波数
●最大デューティー比
●消費電流
2.2V∼8V
300kHz∼1MHz
90% typ.
動作時
:800µA typ.
スタンバイ時:1µA max.
16ms typ. または外部設定
●ソフトスタート機能内蔵
●デットタイムコントロール機能
●タイマーラッチ短絡保護機能
●C-MOS 構造
●外形
NJU7606RB2
NJU7608PB1
: TVSP10
: FFP12
■ブロック図
+
V
FB
0.8V
ER⋅AMP
IN1V
0.2V
Vref
LSW
Soft Start
UVLO
Latch
PWM
Buffer
2µA
SCP
OUT
SCP
OSC
2kΩ
0.5V
0.5
1V
RT
0.74V
A
Standby
ON/OFF
1V
GND
DTC
RT
ON/OFF
High: ON
Low : OFF (Standby)
Ver.2007-01-10
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■各ブロックの機能説明
1.スイッチングレギュレータ基本機能
●エラーアンプ部 (ER⋅AMP)
エラーアンプ部の非反転入力は、1.0V±1.5%の高精度基準電圧が接続されています。アンプの反転入力(IN-端子)に、
抵抗分割されたコンバータ出力を入力することで出力電圧を設定します。
アンプ部は高利得のゲインを持ち、フィードバック(FB 端子)が外部に出ております。FB 端子−IN-端子間にフィード
バック抵抗・コンデンサを設けることが容易なため、各種アプリケーションにおける最適なループ補償を設定できま
す。
●発振回路部 (OSC)
発振周波数は、RT 端子に、抵抗を GND 間に挿入することで発振周波数が設定できます。データ−シートの「タイミ
ング抵抗対発振周波数」特性例を参考に 300kHz∼1MHz の間で設定してください。
発振回路における三角波は、0.2V∼0.8V の振幅を IC 内部で生成しております。
●PWM 比較器部 (PWM)
エラーアンプと三角波の信号を受け、スイッチングのデューティー比をコントロールします。
さらにソフトスタート、デットタイムコントロールの信号も組み合わせる事で、電源起動時から最大負荷時まで、ア
プリケーションに合わせた外部設定を可能にしています。
●出力段 (Buffer)
出力段には、高速で電流を流せるトーテムポール形式の Buffer を組み
込んでします。そのためスイッチング素子の N-ch MOSFET を効率よ
く駆動する事が可能です。
ゲート容量のチャージ/ディスチャージには急激な電流変化を伴うた
め、寄生インダクタンス成分等によりスパイクノイズが出ることがあ
ります。ゲート容量が小さい場合は、OUT 端子−ゲート間に抵抗を挿
入し適度に電流を制限してください(図1参照)
。抵抗が大きすぎる
と波形がなまってしまい効率を低下させますので、実機評価のうえ最
適値を決定してください。
また低電圧誤動作防止回路、短絡保護回路からの信号を受け、スイッ
チング動作を最優先で停止できるようになっています。
UVLO, SCP からの
スイッチング停止信号
OUT
PWM より
FET
Buffer
ゲート抵抗
図1 出力段とゲート抵抗
●電源、GND 端子 (V+, GND)
スイッチング素子の駆動に伴い、周波数に応じた電流が IC に流れます。電源ラインのインピーダンスが高いと電源供
給が不安定になり、IC の性能を十分に引き出せません。V+端子−GND 端子間の近傍にバイパスコンデンサを挿入し、
高周波インピーダンスを下げてください。
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■各ブロックの機能説明(続き)
2.保護機能、付加機能
●低電圧誤動作防止回路 (UVLO)
IC の電源電圧が低い場合、低電圧誤動作防止回路によって出力を OFF させます。本回路には、電源電圧の立ち上が
りと立ち下がりにヒステリシス電圧幅を持たせています。これは低電圧誤動作防止回路が ON/OFF して、IC 動作の
ばたつきを防止するためです。
●ロードスイッチ機能 (LSW)、スタンバイ機能 (Standby ON/OFF)
昇圧コンバータは回路構成上、入出力間が導通状態にあります。そのため IC のスイッチングが停止状態でも、負荷に
はリーク電流が流れます。ロードスイッチ機能は LSW 端子に接続される MOSFET によって、UVLO、スタンバイ、
ラッチモード時における IC の停止状態と連動して、昇圧コンバータの入出力間を遮断します(図2)
。
出力短絡等による大電流が流れる場合には、ロードスイッチ FET を保護するために、外部で電流制限を行う必要があ
ります。
ロードスイッチ FET を出力側に挿入する場合は、LSW 端子の耐圧を定格範囲内で使用してください。
入出力間を遮断
VIN
SBD
L
RP
VOUT
Leak
Current
Load SW
Bias
Current
Leak
Current
R2
FET
LSW
OUT
NJU7606
NJU7608
Load
COUT
R1
IN-
図2 昇圧コンバータの入出力間遮断
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■各ブロックの機能説明(続き)
●ソフトスタート機能 (Soft Start)
16ms typ.のソフトスタート機能を内蔵しており、UVLO解除、
またはON/OFFからの復帰後、動作を開始します。PWMコン
パレーターで制御される最大デューティーが徐々に上昇し、
最終的に90% typ.出力が可能となります。
またDTC端子にコンデンサをつけることで、ソフトスタート
時間を長くすることも可能です(図3参照)
。この場合のソ
フトスタートは、DTC端子電圧をCSコンデンサで遅延させる
事により、徐々にデューティーが開く制御になっております。
充電電流IDTC、ソフトスタート時間TSSは、下記計算式で表す
事ができます。
IDTC = 0.5 / RT [A]
TSS = CS×0.74V / IDTC [s]
起動時のタイミングチャートについては、図4を参考にして
ください。
Preliminary
LSW へ
Soft Start
PWM
Latch へ
ER⋅AMP より
保護回路より
OSC
0.74V
0.5V
0.5
RT
A
DTC
CS
RT
RDTC
RT
図3 ソフトスタート、デットタイム機能
●デットタイムコントロール機能 (DTC)
IC 内部では、スイッチング出力が ON し続けないように、最大デューティー90% typ.に設定されています。
最大デューティーを下げて使用する場合には、DTC 端子に抵抗をつけることでコントロールが可能です。
この時の最大デューティー比は、下記計算式で表す事ができます。
MAXDUTY = (VDTC−0.2) / 0.6×100 [%]
RDTC= VDTC/IDTC [Ω]
VREF=
1.0V
ER⋅AMP IN+
ER⋅AMP INSCP 電圧
LSW
←出力 Open
FB 電圧
0.8V
0.74V
休止期間設定電圧
0.2V
OUT
OSC
←UVLO :ON
V+=2V
SoftStart 時間 Tss=16ms(typ.)*
UVLO:ON から Duty=80%まで
通常動作
SoftStart 効果期間 Duty=90%(typ.)*まで
*:IC 内部で設定されたソフトスタート時間、最大デューティーとした場合。
DTC 端子使用時は、外付けのコンデンサ Cs、抵抗 RDTC で設定された値に応じて変化します。
図4 起動時のタイミングチャート
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■各ブロックの機能説明(続き)
●短絡保護回路 (SCP, Latch)
出力の過負荷や短絡、入力電圧不足等により、出力電圧が低下した場合、短絡保護回路が動作しスイッチング
出力を停止します。停止するメカニズムは次の様になります。
(図5参照)
①エラーアンプ入力が低下し、エラーアンプ出力: High レベル
②スレッシホールド電圧を超えると、アンプ1出力: Low レベル
③FET が OFF となり、CSCP コンデンサに ICHG=2µA で充電が開始
④SCP のスレッシホールド電圧を超えると、SCP 出力: High レベル
⑤スイッチング出力が停止しラッチモードへ移行、LSW 出力:Open
短絡保護回路が動作するまでのタイミングチャートに
LSW
FB
ついては、図6を参考にしてください。
⑤ 出力停止
出力低下からラッチモードに移行するまでのディ
レイ時間は、SCP 端子に接続されるコンデンサに
より設定可能です。
電源投入時は、出力電圧が立ち上がっていないため、
短絡保護回路が動作します。
ディレイ時間 td の設定は、ソフトスタート期間よ
りも長くする必要があります。
td =VT_LA×CSCP / ICHG [s]
セットされたラッチ回路は、次の方法でリセットが
できます。
・電源再投入(電源電圧:UVLO 検出電圧以下)
・SCP 端子を GND レベルにする。
・ON/OFF 端子で IC の動作状態を切り替える。
① ER⋅AMP 出力
Low→High
IN1V
ER⋅AMP IN+
Vref
Soft Start へ
UVLO
Latch
⑤ 出力停止
Low→High
③ ICHG により
SCP 端子電圧
Low→High
SCP
CSCP
2µA
② AMP1 出力
High→Low
④ SCP 出力
Low→High
2kΩ
1V
1V
③ FET
ON→OFF
図5 短絡保護回路
また短絡保護回路を使用しない場合は、SCP 端子を
GND に接続してください。
VREF=
1.0V
Low→Open
SCP=1V :ON
SCP
ER⋅AMP IN-
休止期間設定電圧
Soft Start 電圧
FB 電圧
0.8V
0.74V
0.2V
OSC
Max Duty
DTC 端子未使用時: 90%(typ.)
DTC 端子使用時 :設定デューティー
OUT
出力 Open→
LSW
通常動作
ディレイ時間
ラッチモード
図6 短絡保護回路動作時のタイミングチャート
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■アプリケーション情報
NJU7606/08 を使用したアプリケーションにおける部品選定について記します。
各条件下において、アプリケーションの最適化ができるよう示します。
Preliminary
●発振周波数
発振周波数の高速化により、インダクタンス、コンデンサ等の部品を小型化にすることが出来ます。
しかしスイッチング損失が発生することから、変換効率が低下しやすい欠点があります。その結果、熱を放出するの
が難しくなり、一概に高速化が有効な手段には結びつきません。
アプリケーションの環境、外付け部品の性能、コスト等を考慮しながら設定する必要があります。
電流値
ピーク電流 Ipk
●インダクタ
インダクタンスには大電流が流れるため、飽和しな
インダクタ
①連続モード
い電流能力を持たせる必要があります。
電流 ΔIL
L値を小さくするとインダクタンスのサイズも小
さくなります。しかし、ピーク電流が大きくなり効
②臨界モード
率が悪化します。
③断続モード
0
反面、L値が大きくなると、スイッチング時のピー
ク電流は低下します。よって変換効率の改善、出力
tON
tOFF
リップル電圧の低下につながります。あるレベル以
周波数 fOSC
上では、インダクタンスの巻数増加により、抵抗成
分による損失(銅損)が大きくなります。
図7 インダクタ電流の状態偏移
理想的には、インダクタンス電流が連続モードになる様にL値を設定します。しかし負荷電流が小さくなる程、①連
続モード → ②臨界モード → ③断続モードと電流波形が変化(図7)していきます。
断続モードにおいては、出力電流に対するピーク電流が大きくなり、変換効率が低下しやすくなります。場合によっ
てはL値を大きくし、連続モードの維持できる負荷電流領域を広げます。
●キャッチ・ダイオード
スイッチング素子が OFF サイクルの時は、インダクタンスに蓄えられた電力がキャッチ・ダイオードを経由して出
力コンデンサに流れます。そのためダイオードにはサイクル毎に、負荷電流に応じた電流が流れます。ダイオードの
順方向飽和電圧と電流の積が電力損失となるため、順方向飽和電圧の低い SBD (Schottky Barrier Diode)が最適です。
また SBD は、逆回復時間が短い特徴を併せて持っています。逆回復時間が長くなると、スイッチングトランジスタ
が OFF から ON サイクルに移行した時、貫通電流が流れてしまいます。この電流によって効率の低下、ノイズの発
生等に影響を及ぼす可能性が有ります。
スイッチング素子が ON サイクルの時は、
ダイオードに逆電圧が印可された状態になります。
ダイオードの耐圧には、
最大出力電圧以上の余裕を持たせてください。
●スイッチング素子
スイッチング素子には、スイッチング用途に指定されたものをお奨めいたします。
MOSFET の選定には、ゲートの閾値電圧を考慮する必要があります。特に入力電圧が低くなると、OUT 端子から出
力されるゲート駆動電圧も低下します。そのため MOSFET の閾値電圧が高いと、ドレイン・ソース間が十分に ON
し切れず、最適な効率が望めない事があります。
またゲート容量が大きいのも効率を低下させる要因につながります。ゲート容量への充放電により、スイッチングの
立ち上がり/立ち下がり時間が遅れ、スイッチング損失が発生します。その他にスイッチングのピーク電流、耐圧、
パッケージの許容損失、安全動作領域等を考慮し決めてください。
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■アプリケーション情報(続き)
●入力コンデンサ
スイッチングレギュレータの入力部には、周波数に応じた過渡的な電流が流れます。電源回路に供給される電源イン
ピーダンスが大きいと入力電圧の変動につながり、NJU7606/08 の性能を十分に引き出せません。よって入力コンデ
ンサは、できる限りインダクタンスの近くに挿入してください。
また MOSFET の高速駆動を行う IC の電源ラインも重要です。IC の V+端子-GND 端子間にセラミックコンデンサを
挿入することで、高周波インピーダンスを十分に下げることをお奨めいたします。
●出力コンデンサ
出力コンデンサは、インダクタンスからの電力を蓄え、出力への供給電圧を安定させる役割をします。
出力コンデンサの選定には、ESR(等価直列抵抗:Equivalent Series Resistance)の特性、リップル電流、耐圧を考慮
に入れる必要が有ります。
特にリップル電流、耐圧は、入力コンデンサ同様、コンデンサの定格以下で使用しなければいけません。
また周囲温度によっては、コンデンサの容量低下、ESR の増加(低温時)
、寿命(高温時)へ影響を与えます。出力
コンデンサの定格には、十分なディレーティングを持たせるのが望ましい使い方です。
出力コンデンサの ESR 特性は、
出力リップルノイズへ大きな影響を与えます。
低 ESR タイプのコンデンサであれば、
更にリップル電圧を下げることが出来ます。また、コンデンサの ESR を下げる方法として、出力コンデンサを並列
接続する方法が有ります。この場合、1個の大容量コンデンサよりも高周波インピーダンスを下げられる場合が有り
ます。ただし同じ特性のコンデンサを使用しないと、温度特性、ばらつきによっては、リップル電流の流れる割合が
大きくずれてしまう可能性があります。
●基板レイアウト
大電流のスイッチングにより、GND ラインの不
安定化、輻射ノイズの発生を抑えるため、基板の
レイアウトは重要な項目です。大電流の流れるラ
インは太く、短くし、ループ面積を最小限にして
ください。
(図8参照)
tOFF 時
SBD
L
VIN
VOUT
tON 時
CIN
COUT
FET
GND ラインは、パワー系と信号系を分離した上
で1点アースをとるのが望ましい接続です。
また電圧検出のフィードバックラインは、できる
だけインダクタンスから離します。本ラインはイ
ンピーダンスが高いため、インダクタンスからの
漏れ磁束でノイズの影響を避けるように配線し
ます。
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NJU7606/08
図8 基板配線例
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■アプリケーション設計 昇圧アプリケーション回路例
設計条件
入力電圧
出力電圧
出力電流
出力リップル電圧
:VIN=3.3V
:VOUT=9V
:IOUT=150mA
:Vripple(P-P)=30mV 以下
L 4.7µH/1.1A
SBD
+
V
VOUT
CIN
15µF
12.5V
RP
100kΩ
R2
120kΩ
FET
C
0.1µF
COUT
15µF/12.5V
+
V
LSW
OUT
RG 10Ω
CNF
2,200pF
FB
RNF
22kΩ
INSCP
CSCP
0.1µF
GND
NJU7606
NJU7608
R1
15kΩ
RT
47kΩ
RT
GND
ON/OFF DTC
ON/OFF
RDTC
Open
CS
Open
High : ON
Low : OFF (Standby)
:TDK VLF4012A
L
FET
:Fairchild FDC6420
SBD
:Nihon Inter EP10QY03
CIN ,COUT :Panasonic EEFFD1B150R
●発振周波数の設定
アプリケーションの小型化を図るため、発振周波数を 700kHz に設定します。
発振周波数の特性例より、RT=47 [kΩ]、t=1.43[µs]となります。
スイッチングの ON/OFF (tON/tOFF)時間は、
VOUT =
t ON + t OFF
× VIN
t OFF
より、
t ON =
VOUT − VIN
9 − 3.3
=
= 0.9 [µs]
VOUT × f OSC 9 × 700k
tON=0.9 [µs], tOFF=0.53 [µs], duty=63[%]で動作します。
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■アプリケーション設計例(続き)
●インダクタンスの決定
連続モードとなる条件においてインダクタンス L は、下記計算式より求めます。
VIN
L=
2
2 × VOUT × IOUT
× t ON =
3.3 2
× 0.9µ = 3.63µ ⇒ 4.7 [µH]
2 × 9 × 0.15
ピーク電流 Ipk
連続動作条件となる負荷電流を確認します。
2
IOUT
VIN
3.3 2
≥
× t ON =
× 0.9µ = 115 [mA ]
2 × L × VOUT
2 × 4.7µ × 9
インダクタ電流
ΔIL
0
スイッチング時のピーク電流 Ipk を求めます。
IPK
V
×I
V
= OUT OUT + IN × t ON
VIN
2×L
=
9 × 0.15
3.3
+
× 0.9µ = 725 [mA ]
3 .3
2 × 4.7µ
リップル電流⊿IL を求めます。
∆IL =
VIN
3.3
× t ON =
× 0.9µ = 631 [mA ]
L
4.7µ
tON
tOFF
周波数 fOSC
ON
スイッチ出力
OFF
図9 インダクタ電流波形
インダクタンスに流せる電流は、スイッチング時のピーク電流に対して十分な余裕を持たせます。
アプリケーション回路では、次の様なアイテムを選択します。
CLS4D11-4R7
:4.7µH/0.8A(Sumida)
VLF4012AT-4R7
:4.7µH/1.1A(TDK)
インダクタンス L は、理論上の値であり、アプリケーションの仕様、部品等によって最適な値は異なりますので、最
終的には実機で微調整を行います。
●出力コンデンサの決定
出力コンデンサは、出力のリップルノイズを決める重要な部品です。出力コンデンサは、ESR(等価直列抵抗)
、リ
ップル電流、コンデンサ耐圧に重点をおいて決定します。
出力リップル電圧 Vripple(P-P)=30mV 以下としたいため、出力コンデンサの ESR を下記式にて求めます。
ESR =
Vripple ( p −p )
∆I L
=
30m
= 48 [m Ω]
631m
また出力容量の選定には、十分なリップル電流を許容できる物を選びます。
コンデンサに流れるリップル電流の実効値(Irms)は、下記計算式より求められます。
Irms =
∆ IL
2 3
×
ton 631m 0.9µ
=
×
= 112 [mArms ]
t
2 3 1.47 µ
ここでは十分なマージンをふまえて、上記スペックを満たせるコンデンサを使用します。アプリケーション回路では、
機能性高分子タイプの低ESRコンデンサCOUT=15µF/12.5V, Panasonic EEFFD1B150Rを使用します。
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■アプリケーション設計例(続き)
●電圧検出回路部の決定
出力電圧 VOUT は、R1,R2 の抵抗比で決まります。R1,R2 に流れる電流は、ER・AMP に流れるバイアス電流を無視で
きるような値とします。
一般的に R1,R2 に流れる電流は、IB(max.)に対して 100 倍以上になるように抵抗を選定します。
⎛ R2 ⎞
⎛ 120k
⎞
VOUT = ⎜
+ 1⎟ × VREF = ⎜
+ 1⎟ × 1 = 9 [ V ]
⎝ 15k
⎠
⎝ R1 ⎠
本アプリケーションでは、R1=15kΩ、R2=120kΩで出力電圧=9V に設定します。
NJU7606/08 のエラーアンプ出力は、FB 端子に接続されているため、フィードバックを容易にかけることが出来ま
す。エラーアンプにおける電圧検出は、DC 成分を重視します。AC 成分は、スイッチングノイズ、商用リップルノイ
ズ等の成分が多いため、ゲインを大きくするとスイッチングレギュレータの安定性に影響を与えます。
エラーアンプ出力の帰還方法は、抵抗とコンデンサの並列接続や、直列接続など様々な方法があります。
フィルタを構成し DC 成分のゲインを十分に上げ、AC 成分のゲインを下げる接続方法をとります。
本アプリケーションでは、帰還抵抗 RNF=22kΩとコンデンサ CNF=2,200pF を直列接続します。
ただし AC 成分のゲインを下げ過ぎますと、急激な負荷変動に追従できなくなる可能性があります。アプリケーショ
ンの部品、レイアウト、環境などによって異なる為、カットアンドトライで最適化することをお奨めします。
また、帰還抵抗がエラーアンプの入出力に直結される場合、フィードバック電流も考慮する必要があります。帰還抵
抗値が小さいとエラーアンプの電流能力や、電圧検出抵抗 R1 に電流が流れ込み、出力電圧誤差が大きくなります。
帰還抵抗を 100kΩ以上に設定することで、これらの影響は最小限に抑えられます。
●付加機能、保護機能の設定
4、5ページ目に記載されている「各ブロックの説明」を参考にしながら決定してください。
・ソフトスタート機能
IC 内蔵のソフトスタート時間 Tss=16ms とします。そのため、コンデンサ Cs は接続しません。
外部設定する場合は、下記計算式より求めます。
IDTC = 0.5 / RT [A]
TSS = CS×0.74V / IDTC [s]
・デットタイムコントロール機能
IC で設定されている DUTYMAX=90%とします。そのため、抵抗 RDTC は接続しません。
外部設定する場合は、下記計算式より求めます。
MAXDUTY = (VDTC−0.2) / 0.6×100 [%]
RDTC= VDTC/IDTC [Ω]
・短絡保護機能
SCP 端子にコンデンサ CSCP を接続する事で、ラッチモードに移行するまでのタイマー時間 td を設定します。
td=50ms とすると CSCP は、下記計算式で求められます。
CSCP = td×ICHG /VT_LA = 50ms×2µ /1 = 0.1 [µF]
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■NJU7606/08 アプリケーション特性例
●VOUT=3.3V 設定時(R1=13kΩ, R2=30kΩ)
Output Voltage vs. Output Current
=3.3V, Ta=25oC)
OUT
(V)
Preliminary
f=700kHz
L=4.7µH
V =2.5V
IN
1
10
100
Output Current IOUT (mA)
(Ta=25oC)
3.4
OUT
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
(V
Output Voltage V
Efficiency η (%)
Efficiency vs. Output Current
3.35
3.25
f=700kHz
L=4.7µH
V =2.5V
IN
3.2
1000
Preliminary
3.3
1
10
100
Output Current IOUT (mA)
1000
●VOUT=5.0V 設定時(R1=7.5kΩ, R2=30kΩ)
Output Voltage vs. Output Current
Efficiency vs. Output Current
(V)
Preliminary
VIN=2.5V
f=700kHz
L=4.7µH
V =3.3V
IN
1
10
100
Output Current IOUT (mA)
(Ta=25oC)
5.1
OUT
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
(VOUT=5.0V, Ta=25 C)
Output Voltage V
Efficiency η (%)
o
5.05
Preliminary
5
4.95
f=700kHz
L=4.7µH
V =2.5V
IN
V =3.3V
IN
4.9
1000
1
10
100
Output Current IOUT (mA)
1000
●VOUT=9V 設定時(R1=15kΩ, R2=120kΩ)
Output Voltage vs. Output Current
Ver.2007-01-10
(V
=9.0V, Ta=25 C)
(V)
Preliminary
V =2.5V
IN
V =3.3V
IN
VIN=5.0V
1
(Ta=25oC)
9.2
OUT
OUT
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
o
f=700kHz
L=4.7µH
10
100
Output Current IOUT (mA)
1000
Output Voltage V
Efficiency η (%)
Efficiency vs. Output Current
9.15
9.1
9.05
Preliminary
9
8.95
V =2.5V
8.9
IN
V =3.3V
IN
8.85
8.8
VIN=5.0V
1
f=700kHz
L=4.7µH
10
100
Output Current IOUT (mA)
1000
- 11 -
NJU7606/08 Application Manual
Preliminary
MEMO
<注意事項>
このデータブックの掲載内容の正確さには
万全を期しておりますが、掲載内容について
何らかの法的な保証を行うものではありませ
ん。とくに応用回路については、製品の代表
的な応用例を説明するためのものです。また、
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うものではなく、第三者の権利を侵害しない
ことを保証するものでもありません。
- 12 -
Ver.2007-01-10