日本語版 - Linear Technology

2014 年 1 月
こ の 号 の 内 容
スイッチング ・レギュレータと 5 つの
1.1A LDO を一体化した µModule
®
レギュレータ 12
第 23 期第 4 号
古くからの問題を解決する
新しいリニア・レギュレータ
Bob Dobkin
高分解能 A/D コンバータを駆動する
完全差動オペアンプ 14
CISPR クラス 5 に適合する Silent
Switcher™ レギュレータ 25
高速 A/D コンバータのサンプリング
時トランジェント 34
リニア・レギュレータのアーキテクチャは、1976 年に 3 端子のフローティング型
電圧レギュレータが導入されてから事実上変わっていません。アーキテクチャ
は、フローティング・アーキテクチャ(LT317)か、出力からアンプへの帰還経
路を持つアンプ・ループのいずれかに落ち着いています。これらのアーキテク
チャは、レギュレータの汎用性、レギュレーション、精度を本質的に制限します。
2007 年に、リニアテクノロジーは LT®3080 をリリースしました。このとき、汎用
性を広げ、性能を大幅に向上して、容易な
並列動作を可能にしたリニア・レギュレー
タの新しいアーキテクチャを導入しました。
LT3081 は、この新種のリニア・レギュレー
タの 1 つで、特に産業用アプリケーション向
けの広い安全動作領域を特長としています。
以前のやり方
以前のリニア・レギュレータ・アーキテクチャ(図 1)では、帰還
抵抗によって出力電圧を設定し、アンプへの帰還信号を減衰さ
せます。この方式では、出力でのレギュレーション精度は出力
電圧のパーセント値の関数なので、パーセント値の精度が維持
されている場合でも、レギュレーションの絶対精度(単位:V)
は出力電圧が高くなるにつれて低下します。レギュレータの帯
域幅も電圧に応じて変化します。ループ利得が減少するにつれ
て、出力電圧が高いときの帯域幅が狭くなるので、トランジェン
ト応答が比較的低速になり、リップルが大きくなります。
(4 ページへ続く)
LT3081 は新種のリニア・レギュレータの 1 つで、特に産業用アプリケーション向けの広い安全動作領域を
特長としています。
www.linear-tech.co.jp
リニアテクノロジーの
ニュース
この号の内容
COVER STORY
古くからの問題を解決する新しいリニア・レギュ
レータ
Bob Dobkin
1
リニアテクノロジーは、医療用ハンドヘルド機器、携帯型診断装置、照明および信号装置、ハ
DESIGN FEATURES
入力電圧範囲が 2.7V∼38V の低ノイズ 250mA
昇降圧チャージポンプ・コンバータ
George H. Barbehenn
スイッチング ・レギュレータと 5 つの 1.1A LDO
を一体化した µModule レギュレータ:複数の低
ノイズ・レールに使用するか、並列接続して熱
を拡散し、5A までの電流を分担
Andy Radosevich
高分解能の A/D コンバータを低消費電力で駆
動する高精度完全差動入力オペアンプ
Kris Lokere
不良 LED を検出し、100:1 のアナログ調光比を
実現する、デュアル電流レギュレーション・ルー
プを備えた LED コントローラ
Xin (Shin) Qi
超低インダクタ DCR による検出機能と高速トラ
ンジェント応答性能を備えた位相当たり 30A を
供給する高効率の PolyPhase 電源
Jian Li / Gina Le
CISPR クラス 5 の放射性輻射規格に適合しつつ
高い変換効率を維持する Silent Switcher
Tony Armstrong / Christian Kück
ワイヤレス充電の新しい解決策
ンドヘルド産業用計測器、および産業用 / 軍用センサの厳しい要件を満足するワイヤレス・
バッテリ充電ソリューションをリリースしました。リニアテクノロジーの LTC®4120 は、ワイヤ
9
レス・パワー・レシーバと定電流 / 定電圧バッテリ・チャージャを組み合わせ、総合的な無線
電力伝送システム内の受電回路部品として機能します。
LTC4120 は、リニアテクノロジーのシンプルなディスクリート共振トランスミッタ・リファレン
ス設計回路またはワイヤレス・パワー・ソリューションのリーダーである PowerbyProxi 社製
12
の高機能標準仕様トランスミッタと連携して確実に機能します。PowerbyProxi 製トランスミッ
タは、 1 つのトランスミッタで複数のレシーバを同時に充電する機能や異物を検出して異物
の過剰な加熱を防ぐ機能など、高度な機能を備えています。
14
LTC4120 は動的整合化制御(DHC)を特長としています。DHC は、さまざまな条件で最適
なワイヤレス電力伝送を可能にしつつ、熱管理と過電圧保護を実現する特許取得済みの技
術です。この技術は、レシーバ・タンクの共振周波数を変調して、受信した電力や伝送した電
19
力を損失なく調整するだけでなく、ワイヤレスでバッテリを充電するための効率的で堅牢なソ
リューションを可能にします。
LTC4120 により、高価で故障しがちなコネクタを使用せずに、バッテリ駆動デバイスをワイ
22
ヤレスで再充電できます。LTC4120 を組み込んだ製品は、封止された筐体内、可動機器や
回転機器の内部に収容するか、または清潔さや衛生状態が重要な場所に使用することができ
ます。これにより、コネクタを使用するのが困難あるいは不可能なアプリケーションでバッテ
25
リを充電できます。詳細については、 www.linear-tech.co.jp/product/LTC4120 をご覧く
ださい。
DESIGN IDEAS
LTspice IV の最新情報
Gabino Alonso
15mm×15mm×4.32mm の パッケージ に 収
容 さ れ た 完 全 な 20V、20A 高 性 能 µModule
DC/DC レギュレータ
Sam Young
28
30
2 次 側 同 期 整 流 器ドライバを内 蔵した 5 ピン
SOT-23 のフライバック・コンバータによる電流
供給能力の向上と熱設計の簡素化
Wei Gu
高速 A/D コンバータのサンプリング時トランジェ
ント
Doug Stuetzle
32
リニアテクノロジーの LTC4120 は、
34
ワイヤレス・パワー・レシーバと定電
流 / 定電圧バッテリ・チャージャを組
み合わせ、総合的な無線電力伝送シ
ステム内の受電回路部品として機能
します。
2 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
リニアテクノロジーのニュース
IoT(モノのインターネット)を加速する提携
リニアテクノロジー製品の受賞情報
リニアテクノロジーは、超低消費電力のクラウド
EDN Hot 100 Products(話題の新製品100品種)
接続の商品化を加速させ、マシン間接続向けの
パワー̶LT3081:電流と温度のモニタ出力を
幅広い新アプリケーション開発を請け負うため、
備えた堅牢な 40V、1.5Aリニア・レギュレータ
提携を発表しました。リニアテクノロジーは、超
低消費電力のクラウド接続製品の商品化を加速
パワー̶LT4320 理想ダイオード・ブリッジ・コ
するため、商用の IoT(モノのインターネット)を
ントローラ
対象とした最初の公開クラウド・プラットフォーム
アナログ ̶LTC2378-20:INL が 0.5ppm の
の創設企業である Xively(LogMein の子会社)
20 ビット、1Msps、低消費電力 SAR A/D コン
と提携しました。この提携により、リニアテクノロ
バータ
ジーの Dust Networks® SmartMesh IP™ ワイ
ヤレス・センサ・ネットワークのスタータ・キット
ワイヤレス & ネットワーキング̶LTC4120:ワイヤ
に Xively クラウド・サービスが組み込まれます。
レス・パワー・レシーバおよび 400mA 降圧バッ
テリ・チャージャ
この提携により、スマート・パーキングや商業建
築物のエネルギー管理から、発電所規模の太陽
Selezione di Elettronica(イタリア)2013 年の
熱プラントや橋梁、トンネル、鉱床の構造モニタ
イノベーション・アワード
リングまで、将来性のある広範なアプリケーショ
ンの市場が開拓されます。リニアテクノロジーの
Dust Networks SmartMesh IP スタータ・キッ
トと Xively の IoT プラットフォームを組み合わ
せることにより、ユーザは通信事業者クラスの信
頼性を備え、超低消費電力ですぐに使えるクラ
ウド対応のワイヤレス・センサ・ネットワークが
得られるので、プロトタイプ完成までの時間を早
め、全般的なアプリケーション開発時間を短縮
アナログ & パワー IC̶LTC5585:IIP2 と DC オ
『Analog Circuit Design』の日本語翻訳
高 い 評 価を受 けているリニアテクノロジーの
書
籍『Analog Circuit Design: A Tutorial
(Bob
Guide to Applications and Solutions』
Dobkin/Jim Williams 編集)の日本語版が出
版されました。書籍『Analog Circuit Design』の
「Part 1 Power Management」を CQ 出版(東
できます。
京)が翻訳して『電源回路設計実例集』として出
SmartMesh IP ワイヤレス・センサ・ネットワー
きます。詳細については、www.cqpub.co.jp/
クはインターネット・プロトコル(IP)との互換性
を確保するように構築されており、6LoWPAN
規 格 と 802.15.4e 規 格 に 基 づ い て い ま す。
SmartMesh IP ネットワークは 99.999% を超え
るデータ信頼性と 10 年より長いバッテリ寿命を
実現するので、最も困難な環境でワイヤレス・
センサ・ネットワークを配置するのに役立ちま
す。DC9000 スタータ・キットには、 Xively の
登録ユーザが DC9000 スタータ・キットを Web
接続済みのコンピュータに接続するためのサン
プル・アプリケーションが組み込まれているの
で、SmartMesh IP ネットワークを Xively の「製
品」として自動的に登録することが可能であり、
ノードおよびセンサは「デバイス」としてユーザ
の Xively クラウドに安全にデータを送信できま
す。SmartMesh IP キットの 詳 細 につ いては、
版しました。現在は書店とオンラインで入手で
フセットを制御する広帯域 IQ 復調器
会議およびイベント
カーエレ JAPAN 2014、第 6 回国際カーエレクトロ
ニクス技術展、会場:東京ビッグサイト、西ホール、日
程:2013 年 1 月 15 日∼17 日̶リニアテクノロジー
は、バッテリ管理システムなどの自動車用製品
を対象に自社の高性能アナログ IC ソリューショ
ンを展示します。詳細については、http://www.
linear-tech.jp/car-ele2014/ をご覧ください。
hanbai/books/42/42881.htm にアクセスしてく
APEC 2014 、 Applied Power Electronics
ださい。
Conference(応用パワー・エレクトロニクス会議)、
本書は昨年 10 月に東京で開催された「アナロ
グ・グルとの集い」で初登場しました。リニアテ
クノロジーが特別協力した日経エレクトロニクス
主催のこのセミナーには 450 名が出席し、リニ
アテクノロジーの共同設立者で最高技術責任者
(CTO)の Bob Dobkin とリニアテクノロジー
会場:Fort Worth Convention Center(テキサス
州フォートワース)、日程:3 月 16 日∼20 日、小間番
号 532̶リニアテクノロジーの広範な高性能パ
ワー・ソリューション・ラインナップを紹介。詳
細については、 www.apec-conf.org/ をご覧くだ
さい。
のパワー製品担当副社長の Steve Pietkiewicz
Electronica China 2014、会場:Shanghai New
を含む業界の著名人によるアナログ技術に関す
International Expo Center(中国、上海)、日程:
るプレゼンテーションを聴講しました。セミナー
3 月 18 日∼20 日、W1 ホール、小間番号 1218̶リニ
の出席者は、原著を編集した Bob Dobkin のサ
アテクノロジーは、自社の高性能アナログおよび
イン入り書籍『電源回路設計実例集』を受け取り
パワー・マネージメント製品群を展示します。詳
ました。
細 に つ いては、 www.electronicachina.com/
en/home.html をご覧ください。n
www.linear-tech.co.jp/DC9000 にアクセスし
てください。
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 3
LT3081 は、安全動作領域(SOA)の広い産業用レギュレータです。LT3081 は 1.5A の出力電流を
供給し、出力電圧をゼロまで調整可能で、逆電圧保護回路があり、温度と出力電流のモニタ出力を
備えています。さらに、デバイスに外付け抵抗を接続することにより、電流制限値を調整できます。
(LT3081、1 ページからの続き)
さらに、図 1 に示すアーキテクチャでは、電流制
限値が IC 内部で固定されるので、別のデバイス
VIN
VIN
REF
か異なる値の出力電流が必要です。正確な電流
制限が必要な場合は、外部回路を追加して電流
REF
IREF
+
–
制限値をアプリケーションに適合させることが必
+
( )
OUTPUT
VOUT = REF 1 + R1
R2
–
R1
R1
OUTPUT
VOUT = IREF • R1
R2
要です。
新しいやり方
2007 年に、リニアテクノロジーは LT3080 をリ
リースしました。このとき、リファレンスとして電
図 1.従来のリニア・レギュレータのアーキテクチャは、汎用性、
図 2.新しいリニア・レギュレータのアーキテクチャは、高精度
レギュレーション、精度に制限があります。
電流源リファレンスを内蔵しています。
これにより、
レギュレーショ
ンとトランジェント応答が古いアーキテクチャより改善されます。
流源、出力アンプとして電圧フォロワを特長とし
出力電圧をゼロまで低下させることが可能になりました。出力
たリニア・レギュレータの新しいアーキテクチャ
りました。
電流を増加する並列接続とユーザ定義の電流制限が簡単にな
を導入しました。この新しいアーキテクチャに
は、レギュレータの容易な並列接続による出力
電流の増大や出力電圧がゼロに低下するまでの
動作など、いくつかの利点があります。出力アン
安全動作領域の広い LT3081 産業用
温度と電流のモニタ出力
レギュレータ
温度と電流のモニタ出力は、 VOUT より0.4V 高
LT3081 は、安全動作領域(SOA)の広い産業
い 電 圧 から VOUT より 40V 低 い 電 圧まで動 作
用レギュレータです。LT3081 は 1.5A の出力電
するように設定された電流源です。温度モニ
流を供給し、出力電圧をゼロまで調整可能で、
タ出力は 1µA/ °
C であり、 電流モニタ出力は
逆電圧保護回路があり、温度と出力電流のモニ
IOUT/5,000 です。これらの電流源は、一方がグ
タ出力を備えています。さらに、デバイスに外付
ランドに接続されている抵抗を電流源と直列に
け抵抗を接続することにより、電流制限値を調
接続して、抵抗の両端の電圧を読み取ることに
このアーキテクチャに基づくレギュレータ・ファミ
整できます。LT3081 の基本的な接続図を図 3
よって測定します。電流源は出力が短絡した場
リとその主な特長を表 1 に示します。これらのレ
に示します。
合でも動作し続ける必要があります。モニタ出
プは常に単位利得で動作するので、帯域幅と絶
対的なレギュレーションは出力電圧範囲全体に
わたって一定です。トランジェント応答は出力電
圧とは無関係であり、レギュレーションは出力の
パーセント値ではなくmV 単位で規定できます。
ギュレータは、さまざまな出力電流バリエーショ
力のダイナミックレンジは出力電圧より400mV
ンがあることの他に、特に以前はリニア・レギュ
高いので、出力が短絡した場合や出力を 0V に
レータで実現できなかった機能を追加すること
を目的として設計されています。温度、電流、お
VIN
よび電流制限の外部制御用のモニタ出力があ
ります。サーマル・シャットダウンの外部制御回
図 3.LT3081 を使用した基本的なレギュレータ
IN
LT3081
ISET
50µA
路を備えたデバイス(LT3086)もあります。新
しい負電圧レギュレータにはモニタ機能があり、
+
–
フロート・レギュレータまたは LDO として動作
できます。これらの新しいレギュレータはすべて
並列接続して電流供給能力を増強し、バランス
のとれた電流分担を実現して、熱を拡散するこ
とができます。
4 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
TEMP
RTEMP
1k
OUT
SET IMON
RSET
30.1k
RIMON
1k
ILIM
RILIM
6.04k
COUT*
10µF
*OPTIONAL
IOUT
1.5V
RLOAD* 1.5A
5mA
MIN
設計特集
これまでのレギュレータのようにブートストラップ・リファレンスではなく内部の
高精度電流源を基準として使用することのメリットは、自明ではないですが、実
際には大きいのです。高精度リファレンス電流源により、レギュレータは正入力
のインピーダンスに依存しない利得と周波数応答を得ることができます。
設定した場合も温度と電流を引き続き測定でき
ます。1k の抵抗を使用すれば十分な余裕が得
2.5
1 本の抵抗で出力電圧を設定
出力は、 SET ピンとグランドの間の抵抗と出力
へ設定された 50µA の高精度電流源を使用して
CURRENT LIMIT (A)
られるので、出力が短絡した場合の動作を保証
できます。
2.0
プ・リファレンスではなく内部の高精度電流源
を基準として使用することのメリットは、自明で
INCREASED
SAFE AREA
1.5
はないですが、実際には大きいのです。高精度
のリファレンス電流源により、レギュレータは正
入力のインピーダンスに依存しない利得と周波
1.0
力電圧は強制的に SET ピンと同じ電圧になりま
0
す。LT3081 のユニークな特徴として、出力コン
デンサが必須ではありません。このレギュレータ
無にかかわらず安定しています。内部動作電流
これまでのレギュレータのようにブートストラッ
LT1963A
数応答を得ることができます。LT1086 など、以
LT3081
0.5
設定します。内部のフォロワ・アンプにより、出
は、入力コンデンサおよび出力コンデンサの有
リファレンスとしての内部電流源の利点
3.0
前のすべての可変レギュレータでは、ループ利
LT1086
10 15 20 25 30 35 40
0
5
INPUT-TO-OUTPUT DIFFERENTIAL VOLTAGE (V)
バイスを完全なレギュレーション状態に維持す
るため、あらゆる出力電圧で 5mA の負荷が必
要です。
設定抵抗は、システムの温度ドリフトを増やす可
能性があります。商品化されている表面実装抵
抗は、温度係数の幅が広範囲にわたります。メー
す。調整ピンをグランドにバイパスした場合も帯
域幅は変化します。LT3081 では、ループ利得
が出力電圧やバイパスによって変化しません。
図 4.安全動作領域の性能比較
出力のレギュレーションは、出力電圧に対する
はすべて出力ピンを流れ、レギュレーションを維
持するには最小負荷が必要です。ここでは、デ
得と帯域幅が出力電圧の変動によって変化しま
一定の比率ではなく、mV 単位の固定値で表さ
カにもよりますが、100ppm から 500ppm を超
れます。高精度電流源を使用すると、バッファ・
える値まであります。レギュレータ内部の電力損
アンプでの利得はすべてレギュレーションのた
失によって抵抗が加熱されることはありません
めに利用可能であり、リファレンスを高い出力
が、周囲温度範囲が広いとレギュレータの温度
電圧に増幅するために利得を使う必要はありま
係数によって出力は 1%∼4% 変化する可能性
せん。
があります。温度係数の小さい薄膜抵抗が高精
度アプリケーション向けに供給されています。
表 1.最新のアーキテクチャを備えたリニア・レギュレータ
デバイス
出力電流
ISET
調整可能な電流制限 /
電流モニタ
温度モニタ
LDO
LT3080
1.1A
10µA
なし / なし
なし
あり
LT3081
1.5A
50µA
あり/ あり
あり
なし
LT3082
200mA
10µA
なし / なし
なし
なし
LT3083
3A
50µA
なし / なし
なし
あり
LT3085
600mA
10µA
なし / なし
なし
あり
LT3086
2.1A
あり/ あり
あり + 温度制限
あり
LT3090
600mA
–50µA
あり/ あり
あり
あり
負電圧レギュレータ
LT3092
200mA
10µA
なし / なし
なし
なし
電流源動作では出力コンデンサ不要
注釈
出力コンデンサ省略可能
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 5
LT3081 は安全動作領域を広げているので、入出力間電圧差が 25V のとき
1A に近い出力電流を供給できます。25V を超えても、引き続き 500mA を
供給可能です。これにより、入力電圧が動作中に大きく変動するアプリケー
ションでレギュレータを使用することができます。
広い安全動作領域
図 5.LT3081 のブロック図
IN
産業用アプリケーションでは、広い安全動作領
50µA
域が必要です。安全動作領域(SOA)は、入出
力間電圧差が大きいときに大電流を流すことが
できる能力を表します。いくつかのレギュレータ
の安全動作領域を図 4 で比較します。
+
TEMPERATURE
DEPENDENT
CURRENT SOURCE
1µA/°C
CURRENT
MONITOR
IMON = ILOAD/5000
–
1980 年代半ばに市場に投入された LT1086 は
IMON
1.5A のレギュレータですが、入出力間電圧差
TEMP
SET
PROGRAMMABLE
CURRENT LIMIT
ILIM
OUT
が 20V を超えると出力電流が非常に少なくなり
ます。20V より高いと、供給される出力電流は
わずか約 100mA です。このため、負荷電流が
100mA より多いと出力電圧は非安定化状態に
なり、入力にトランジェントが入ると高電圧時の
電流制限値を超えてしまいます。LT1963A は低
ドロップアウト・レギュレータですが、やはり安
全動作領域は限られています。
LT3081 は安全動作領域を広げているので、入
出力間電圧差が 25V のとき 1A に近い出力電
流を供給できます。25V を超えても、引き続き
500mA を供給可能です。これにより、入力電圧
が動作中に大きく変動するアプリケーションでレ
ギュレータを使用することができます。広い安全
動作領域は、PNP パス・デバイスの構造を広く
入力コンデンサと出力コンデンサが不要
デバイスの並列接続による電流の増加
内部アンプの構成と、十分に安定化された内部
デバイスの並列接続は、以前のレギュレータで
バイアス電源との組み合わせにより、 LT3081
は電流を分担しないので通常は禁止されていま
は外付けコンデンサなしで安定することができ
すが、これらの新しい電流源リファレンス・レギュ
ます。1 つ注意事項があります。入力および負荷
レータでは容易です。並列接続は出力電流を増
で可能性のあるすべてのインピーダンスを許容
やしたり熱を拡散したりするのに役立ちます。こ
できるように設計することは不可能なので、使用
のデバイスは電圧フォロワとして構成されている
する実際のシステムで安定性をテストすることが
ので、すべての SET ピンを互いに結線すると出
重要です。不安定性が見つかった場合は、コン
力電圧が同じになります。出力が同じ電圧の場
デンサを外付けして、あらゆる出力電流でデバ
合、わずか数ミリオームの安定抵抗により、複数
イスが安定していることを確認します。コンデン
の出力で電流を分担できるようになります。
サを外付けすると、トランジェント応答も改善さ
れます。トランジェント応答が内部アンプの帯域
幅によって制限されなくなるからです。
ます。分布範囲は 1mV 以内なので、 10% の配
分を確保するために必要な安定抵抗は 10mΩ
することで得られます。また、LT3081 は(負荷
未満です。安定抵抗はプリント回路基板上の 1
の他に)逆入力電圧に対して保護されています。
LT3081 のブロック図を図 5 に示します。電流源
LT3081 のオフセット電圧の分布を図 6 に示し
インチのトレースまたは 1 本の短い導線より抵
図 6.オフセット電圧の分布
抗値を小さくすることができるので、並列デバイ
N = 3195
スから良好な電流バランスが得られます。出力
が 3 つありますが、うち 2 つは出力電流と温度を
が 1V の場合でも、安定抵抗によるレギュレー
通知し、 3 つ目は 50µA のリファレンス電流を供
ション性能の低下はわずか 1.5% 程度です。プ
給します。LT3081 は低ドロップアウト・レギュ
リント回路基板の抵抗を表 2 に示します。
レータではありませんが、デバイスに印加される
電圧が 1.2V まで低下しても動作します。この値
2 つの LT3081 を並列接続して 3A 出力を得る
は、 LT1086 などの古いデバイスよりわずかに
回路図を図 7 に示します。設定抵抗に流れる設
優れています。
定電流が 2 倍になったので、出力は 100µA に
RSET を掛けた値になり、10mΩ の出力抵抗で最
–2
6 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
1
–1
0
VOS DISTRIBUTION (mV)
2
大電流時の安定化が確保されます。電流を増や
設計特集
表 2.プリント回路基板のトレース抵抗
重さ(オンス)
幅 10 ミル
幅 20 ミル
1
54.3
27.1
2
27.1
13.6
デバイスの並列接続は、以前のレギュレータでは電流を分担
しないので通常は不可能ですが、これらの新しい電流源リファ
レンス・レギュレータでは容易です。並列接続は出力電流を増
やしたり熱を拡散したりするのに役立ちます。
トレース抵抗は mΩ/ インチで測定
すために並列接続できるデバイスの数に制限は
図 7.デバイスの並列接続
LT3081
IN
ありません。I ピン(を使用する場合)は並列接
50µA
続できるので、 1 本の抵抗で電流制限値を設定
+
–
できます。
固定電圧レギュレータと並列接続した LT3081
OUT
SET
を図 8 に示します。この方法は、設計したシステ
ムから十分な出力電流が供給されない場合に役
立ちます。これにより、出力電流を増やすための
LT3081
IN
VIN
4.8V TO 40V
10mΩ
50µA
応急処置を講じることができます。固定電圧デバ
イスの出力電圧は、抵抗分割器によってほんの
+
–
1µF
数 mV だけ低下します。LT3081 の SET ピンは、
SET
固定出力電圧より約 4mV 低い電圧に接続され
ます。これにより、無負荷状態では LT3081 から
33k
電流が流れないことが確実になります。すると、
OUT
10mΩ
10µF
VOUT
3.3V
3A
20mΩ の抵抗はこのオフセットを解消するのに
十分な安定抵抗となるので、出力電流が大きい
ときは電流の整合が確実になります。
とが必要です。湿度の高い環境では、湿気を防
SET ピンの電流は 50µA と低電流なので、アプ
レイアウトに関する検討事項
ぐために適宜、表面をコーティングする必要があ
リケーションによっては問題が生じることがあり
ります。SET ピンと回路を、 OUT ピンに接続し
ます。値の大きい炭素皮膜型可変抵抗器は、値
50µA 電流源を使ってリファレンス電圧を発生さ
たガードリングで取り囲んで、基板の漏れ電流を
の小さい巻線型ほど安定しません。基板の漏れ
せる場合、SET ピンとの間のリーク経路のため
最小限に抑えます。ここで示すように設定電流を
電流も出力の不安定性を招きます。設定電流を
に、リファレンス電圧と出力電圧の誤差が生じる
増やすと、スプリアスの漏れによる影響も減少し
公称値の 50µA より大きくすれば、問題を最小
ことがあります。フラックスやその他の残留物を
ます。
限に抑えることができます。
除去するため、すべての絶縁表面を洗浄するこ
値の小さい設定抵抗を使用した解決策を図 9 に
示します。この場合、R2 を流れる電流が SET ピ
ンの電流と合流して、出力を調整するためのより
図 8.固定電圧レギュレータの
出力電流の増大
大きな電流を供給します。SET ピンの電流は 4k
IN
LT3081
の抵抗 R1 を流れるので、 R1 の両端に 200mV
ISET
50µA
が発生します。その後、R2 を流れる電流が SET
+
–
IMON
5V
SET TEMP
ピンの電流と合流し、 合計 1.05mA の電流が
20mΩ
ISET からグランドへ流れます。これにより、出力
ILIM
電圧が RSET 周辺の漏れ電流の影響を受けにくく
20mΩ
LT1963-3.3
10µF
OUT
8.2Ω
47µF
3.3VOUT
3A
47µF
なります。R2 を出力に直接ケルビン接続する場
合は注意が必要です。出力から R2 までの電圧
降下はレギュレーションに影響します。
6.2k
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 7
LT3081 は、負荷変動および入力変動に対するレギュレーション精度が
従来のデバイスと比較して 1 桁良好な新しいリニア・レギュレータ・ファ
ミリの 1 つです。mV 単位で測定されるレギュレーションおよびトランジェ
ント応答は、出力電圧に関係なく維持されるようになりました。
まとめ
VIN
12V
4.7µF
LT3081 は、負荷変動および入力変動に対する
IN
LT3081
レギュレーション精度が従来のデバイスと比較
ISET
50µA
して 1 桁良好な新しいリニア・レギュレータ・ファ
+
–
IMON
図 9.値の小さい設定抵抗の使用
ミリの1つです。mV単位で測定されるレギュレー
OUT
SET TEMP
1k
R1
4.02k
VOUT
0.2V TO 10V
ILIM
R2
40.2Ω
1k
ションおよびトランジェント応答は、出力電圧に
関係なく維持されるようになりました。
4.7µF
これらの新しいレギュレータは以前の世代よりは
るかに堅牢で汎用性があるので、以前は実現で
RSET
2k
VOUT = 0.2V + 5mA • RSET
きなかった機能を実現しています。温度モニタ、
電流モニタ、調整可能な電流制限が追加されま
した。これらの新しいレギュレータの並列接続で
別 の 構 成 で は、LT3092 を 1mA の 電 流 源と
図 11 に示すように、電流モニタ出力を使用して
は、電流のバランスを取るための外部電流平衡
して使 用します。この構 成では設 定 電 流 が 増
配線の電圧降下を補償することができます。電
回路が不要になりました。配線の電圧降下は簡
加するとともに、出力を 0V まで調節できます。
流モニタからの電流を設定抵抗の一部に流す
単に補償できます。電流制限しきい値はユーザ
LT3081 に電流リファレンスを供給するために
と、SET ピンの電圧が上昇することにより、電流
定義となり、以前のレギュレータでは固定値だっ
使用している LT3092 電流源を図 10 に示しま
に比例した分だけ出力電圧が上がります。補償
たのとは対照的で、出力は 0V まで調整可能で
す。1mA の生成リファレンス電流により、調整
抵抗の値は R2 = 5000 • RCABLE(TOTAL) であり、
す。特に、LT3081 は安全動作領域が広いので、
用設定抵抗の値を大幅に小さくできる一方で、
VOUT = 50µA • (RSET + RCOMP) です。数 V の配
入力電圧振幅が広い場合も問題なく負荷電流を
デバイスの出力電圧を 0V まで調節できます。
線電圧降下はこのようにして補償できます。
サポートします。n
図 10.外部リファレンス電流の使用
図 11.電流モニタ出力を使用した
配線電圧降下の補償
VIN ≥ 7V
VIN
1µF
LT3092
IN
10µA
20k
ISET
50µA
+
–
OUT
OUT
215Ω
IMON
SET TEMP
1k
1k
20k
8 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
IN
LT3081
ISET
50µA
+
–
SET
IN
LT3081
1mA
ILIM
VOUT
0V TO 20V
1µF
+
–
TEMP
1k
SET IMON
R1
98k
R2
2k
OUT
ILIM
RLINE
0.2Ω
1µF
RLINE
0.2Ω
RL
VOUT
5V
1.5A
設計特集
入力電圧範囲が 2.7V∼38V の低ノイズ 250mA
昇降圧チャージポンプ・コンバータ
George H. Barbehenn
LTC3245 は、従来のインダクタを省略し、代わりにコンデンサによるチャージポンプを使用する昇降圧レ
ギュレータです。LTC3245 の入力電圧範囲は 2.7V∼38V で、帰還抵抗分割器を接続せずに 2 種類の固
定出力電圧(3.3V および 5V)のいずれかを出力するか、帰還抵抗分割器を介して 2.5V∼5.5V の範囲の
任意の出力電圧を設定することができます。最大出力電流は 250mA です。昇降圧回路構成の結果として、
LTC3245 は入力電圧より高い電圧または低い電圧を安定化できるので、自動車のコールド・クランク要件
を満たすことができます。
LTC3245 は 12V 電源から 5V、100mA を供給
Nと M は整数なので、線形動作のチャージポン
する場合、 80% の効率を達成し、LDO より効
プを使用して任意の出力を生成することはでき
率が大幅に高いので、LDOとヒートシンクの基
ません。代わりに、コントローラは VIN を調整し
入力リップルと EMI
LTC3245 はスイッチング周期ごとにフライン
グ・コンデンサを充電するので、VIN は十分にデ
板面積とコストが不要になります。LTC3245 は、
て VIN′ を生成し、これをチャージポンプに供給
露出パッド付きの MSOP12 パッケージまたは
します。チャージポンプは降圧、 LDO、昇圧の
3mm×4mm の DFN12 パッケージで供給され
3 つのモードのいずれかで動作でき、それぞれ
ます。
½VIN′、VIN′、2VIN′ になります。
LTC3245 をデカップリングするには、3.3µF∼
チャージポンプの動作
VIN′とチャージポンプの動作モードを正しく制御
だけ近づけて配置します。MLCC コンデンサを
LTC3245 コンバータの簡略ブロック図を図 3
に示します。チャージポンプは N/M×VIN コン
バータとして動作できます(Nと M は整数)。½、
1、および 2 が最も簡単な形であり、必要なのは
カップリングして EMI を最小限に抑える必要が
あります。
10µF の MLCC コンデンサを VIN ピンにできる
することにより、任意の電圧を生成できます。降
近づける 1 つの方法はコンデンサの電圧定格を
圧モードで動作している場合、入力電流は同等
制限することです。これによってコンデンサのサ
な LDO のおよそ半分なので、効率が大幅に向
イズを最小限に抑えることができ、コンデンサが
上します。
小さくなるほど VIN ピンの近くにコンデンサを配
置できます。たとえば、LTC3245 の動作入力電
フライング・コンデンサ 1 個だけです。Nと M が
高次になると、必要なフライング・コンデンサと
圧の最大定格は 38V ですが、自動車用電源で
スイッチの数は増えます。
は、MLCC の定格は 16V で充分です。
1µF
図 1.5V 出力の昇降圧コンバータ
90
図 2.図 1 のコンバータの効率
400
VIN = 12V
80
C–
70
1µF
SEL2
BURST
SEL1
VOUT
OUTS/ADJ
PGOOD
GND
500k
VOUT = 5V
IOUT UP TO 250mA
10µF
300
60
250
50
200
40
PLOSS
30
20
10
0.1
150
PLOSS (mW)
LTC3245
VIN
VIN = 2.7V TO 38V
EFFICIENCY (%)
C+
350
EFFICIENCY
100
50
1
10
IOUT (mA)
100
0
1000
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 9
LTC3245 は 12V 電源から 5V、100mA を供給する場合、
80% の効率を達成し、LDO より効率が大幅に高いので、
LDO とヒートシンクの基板面積とコストが不要になります。
フライング・コンデンサの選択
CFLY
図 3.チャージポンプ・ブロックの詳細
チャージポンプ・ブロックの詳細(図 3)は、フラ
イング・コンデンサがチャージポンプ自体にの
LTC3245
VIN
C+
VIN′
み関与していることを示しています。しかし、フ
C–
ライング・コンデンサは VIN′ を生成する可変減
衰器にも関与します。したがって、フライング・
VOUT
CHARGE PUMP
コンデンサは直接的な計算に基づいて選択して
はならず、いくつかの制約条件を順守して選択
BUCK MODE: VOUT = ½VIN′
LDO MODE: VOUT = VIN′
BOOST MODE: VOUT = 2VIN′
します。
フライング・コンデンサは、電解コンデンサやタ
デカップリング・コンデンサの電源接続配線が短
ネチャの測定値を図 4 に示します。この図で分
くて低インダクタンスでも、グランド接続配線の
かるように、適正なデカップリングを行いさえす
インダクタンスが高いとあまり有効ではありませ
れば、LTC3245 を放射性輻射や伝導輻射の政
ん。理想的な状況は、電源接続配線が短くて幅
府規制に適合させることには何の問題もありま
が広く、グランド接続配線パターンが LTC3245
せん。
ンタル・コンデンサなどの有極性コンデンサにす
ることはできません。フライング・コンデンサの
定格は出力電圧より約 1V 高い値にします。たと
えば、5V 出力では 6.3V のフライング・コンデン
サを使用します。
の露出パッドと非常に広い面積で接しているこ
とです。
図 4.放射性輻射と伝導輻射
い場合には注意が必要です。入力電源が高イン
ピーダンスの場合や、入力電源までの接続配線
が 5cm より長い場合は、必要に応じて電源を追
します。多くの場合、33µF が適切です。
LTC3245 は、高効率の Burst Mode® 動作また
は低ノイズ・モードを選択することにより、軽負
荷時の効率または低出力リップルに合わせて最
適化できます。Burst Mode 動作は低静止電流
を特長としているので、軽負荷電流時の効率が
高くなります。低ノイズ・モードでは、軽負荷時
の効率と引き換えに軽負荷時の出力リップルを
低くしています。
CISPR25 に従ってマイクロチャンバでテストし
た LTC3245 の放射シグネチャおよび伝導シグ
10 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
110
50
100
40
AMPLITUDE (dBµV/m)
加のバルク容量でデカップリングすることを推奨
60
30
(a)
CISPR 22 CLASS B LIMIT
20
10
0
–10
LTC3245
VIN = 14V
ILOAD =0.25A
–20
–30
90
AMPLITUDE (dBµV/m)
VIN と低インピーダンスの電源の間の配線が長
(b)
80
70
60
50
40
30
20
LTC3245
VIN = 13V
VOUT = 5V
10
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
FREQUENCY (MHz)
DETECTOR = PEAK HOLD
RBW = 120kHz
VBW = 300kHz
SWEEP TIME = 680ms, ≥10 SWEEPS
# OF POINTS = 501
CISPR 25 CLASS 3
BROADBAND LIMIT
0
0.1
1
10
FREQUENCY (MHz)
LOAD = 240Ω WITH33µF ELECTROLYTIC
& CERAMIC INPUT CAP
DETECTOR = PEAK
RBW = 9kHz
VBW = 30kHz
SWEEP TIME = 3.7ms, ≥10 SWEEPS
# OF POINTS = 501
100
設計特集
OUTS/ADJ ピンは、3.3V および 5V の固定出力の出力電圧を検出する目的で使用するか、可変出力電圧の
帰還ピンとして使用します。このピンは、固定値を使用する場合は出力に直接接続します。適切な帰還抵抗
を選ぶことにより、可変出力は 2.5V∼5V の範囲内の任意の値に設定できます。
フライング・コンデンサの最小容量は 0.4µF に
リップルとステップ応答の両方をうまく満足させ
シャットダウン
LTC3245 は、シャットダウン状態にして静止電
する必要があります。有極性コンデンサは使用
るには、バイアス印加時にフライング・コンデン
できないので、最も適したコンデンサは MLCC
サの 10 倍∼20 倍の容量を持つコンデンサを採
で す。0.4µF に 適 合 する 十 分 な 容 量 を 持 つ
用します。つまり、フライング・コンデンサの推
MLCC コンデンサは、容量の電圧係数が大き
奨 値 が 1µF である場 合 は、 10µF∼20µF のコ
いクラス II の誘電体コンデンサが有力です。容
ンデンサということです。クラス II のコンデンサ
量の電圧係数は最大電圧の関数なので、最大
が定格電圧時に失う容量は半分より少し多いの
PGOOD
電圧が 16V のコンデンサが 5V で動作する場合、
で、これを考慮すると、公称容量が 47µF のコン
PGOOD はアクティブ H のオープンドレイン
公称の容量およびサイズが同じ 6.3V のコンデ
デンサになります。
ンサが 5V で動作する場合よりも、回路容量は
大幅に増加します。
したがって、0.47µF、6.3V のクラス II 誘電体
コンデンサが 5V で動作する場合は最小容量を
満たさない可能性が高いが、0.47µF、50V の
クラス II 誘電体コンデンサの場合は要件を満た
流をわずか 4µA まで減少させることもできます。
LTC3245 をシャットダウンするには、SEL1 と
SEL2 の両方を L にします。
信号で、LTC3245 の出力がレギュレーション
状態であることを示します。PGOOD 表示のし
可変出力
きい値は、目的の帰還電圧つまり検出電圧の
図 5 に示すように帰還抵抗を使用すると、3.3V
90% です。
および 5V という2 種類の固定出力電圧値の他
に、 LTC3245 の出力電圧を設定することが可
まとめ
能です。
LTC3245 は、2.7V∼38V の入力電圧から安
すと考えられます。TDK C1005X5R1C105K
可変出力モードにするには、SEL2 を L に設定
1µF、16V、0402 などのコンデンサは、ほとん
して、SEL1 を H に設定します。OUTS/ADJ ピ
どのアプリケーションに適しています。
ンは、固定出力電圧の出力を検出する目的で使
定化出力(3.3V、5V、または可変)を生成す
るスイッチト・ キャパシタ型昇降圧 DC/DC コ
ンバータです。インダクタは必 要ありません。
LTC3245 は 動 作 電 流 が 小さく( 無 負 荷 時 は
用するか、可変出力電圧の帰還ピンとして使用
出力コンデンサ
します。このピンは、固定値を使用する場合は
出力コンデンサ値の選択は、リップルとステップ
出力に直接接続します。可変出力の場合、帰還
応答との兼ね合いになります。出力容量が増え
リファレンス電圧は 1.200V ±2% です。適切な
るにつれてリップルは減少しますが、ステップ応
帰還抵抗を選ぶことにより、出力は 2.5V∼5V
答も次第に過減衰されます。
の範囲内の任意の値に設定できます。
20µA、シャットダウン時は 4µA)、外付け部品
点数が少ない(3 つの小型セラミック・コンデン
サ)ので、スペースの制約がある低消費電力の
自動車用および産業用アプリケーションに最適
です。n
出力コンデンサに必要な電圧定格はレギュレー
1µF
タの出力電圧なので、 5V 出力の場合は 6.3V
のコンデンサで十分です。それにもかかわらず、
上述したように、クラス II 誘電体コンデンサは
C+
定格電圧では公称容量の半分以上を失います。
VIN
2.7V TO 38V
したがって、コンデンサの定格電圧付近で動作
する場合は、より大容量のコンデンサを選択し
VIN
3.3µF
50V
てリップルを最小限に抑えることが必要と考え
LTC3245
BURST
470k
100k
OUTS/ADJ
GND
図 5.3.6V 出力の昇降圧
PGOOD
VOUT
SEL1
SEL2
られます。
C–
PGOOD
200k
VOUT
3.6V
250mA
47µF
6.3V
コンバータ
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 11
スイッチング ・レギュレータと 5 つの 1.1A LDO を一体化した
µModuleレギュレータ:複数の低ノイズ・レールに使用するか、
並列接続して熱を拡散し、5A までの電流を分担
Andy Radosevich
LDO は、スイッチング・コンバータの出力でリップル除去用のポスト・レギュレータとしてよく使用されます。
LDO ポスト・レギュレータは、レギュレーションとトランジェント応答を改善することもできます。ポスト・レ
ギュレータの出力電流供給能力に関する最大の制限事項の 1 つは LDO の温度上昇ですが、熱抵抗を別に
すると、これは主にレギュレータの入出力間電圧差に依存します。LTM®8001 µModule レギュレータは、高
効率の降圧スイッチング・コンバータで、その後段には個々の定格出力電流が 1.1A の 5 つの低ノイズ LDO
アレイが置かれています。熱を拡散して利用可能な出力電流を増やすため、LDO を並列に動作させること
ができるので、入力電圧と出力電圧のさまざまな組み合わせに対して、実装が容易ないくつかのオプション
が設計者に与えられます。
LTM8001 の特長の一部
降圧コンバータ
• 入力電圧(VIN)範囲:6V∼36V
• 定電圧 / 定電流(CV/CC)出力
• 最大出力電流:5A
• 可変スイッチング周波数:200kHz∼1MHz
さらに、LDO が複数の出力電圧を発生する場
2.5V/5A レギュレータ
合は、 比較的出力電圧が低い LDO(つまり、
図 1 では、5 つの LDO をすべて並列に束ねて単
入出力間の電圧差が大きい LDO)に合わせて
一の2.5V、5A 出力を生成しています。
この場合、
LDO の出力電流をディレーティングし、過剰な
LTM8001 に内蔵のスイッチング・コンバータ
温度上昇を防ぐ必要があります。それにもかか
は、 LDO の 2.5V 出力より 500mV 高 い 3V で
わらず、熱を拡散して電流供給能力を増やすた
出力を生成しています。この入出力間電圧差は、
• 調整可能な出力電圧
めに LDO を並列接続すれば、ディレーティング
LDO
図 1 および図 2 の回路は、出力電流を増やし、
• 調整可能な出力電圧
熱を拡散するために LDO を並列に動作させる
• スイッチング ・レギュレータ出力に結線された
2 種類の回路図を示しています。
後の電流を簡単に回復させることができます。
LDO がその定格負荷電流である 1.1A 近くで動
作できるのに十分なほど小さい電圧です。入力
電源が 12V のとき出力の最大電流は 5A です。
500mV の電圧差は、パラメータ(目的の最大出
3 つの LDO
• 2 つの独立した LDO
LDO の並列接続による熱の拡散
図 1.LTM8001 の 5 つの LDO は、並列接続して動作する場合、単一の 5A 出力を供給できます。
各 LDO の入出力間電圧差は比較的小さい(500mV)ので、各 LDO は定格の 1.1A に近い 1A で動作できます。
LTM8001 の内部 LDO の通常の構成は、内蔵
のスイッチング・コンバータの出力を後段で安
定化するものです。LDO の温度上昇は、その
出力電流に相対的に比例しますが、入出力間
電圧差が大きくなるにつれて熱の発生量が増え
ます。入出力間電圧差が小さい場合、ドロップ
アウト電圧に近づくと、LDO はその定格出力電
流付近で動作できます。したがって、スイッチン
グ・レギュレータの出力は、出力電圧が最も高
い LDO の最小入力電圧近くに設定するのが理
にかなっています。
12 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
VIN45
VIN
12V
10µF
VOUT0
VIN0
510k
RUN
BIAS123
BIAS45 LTM8001
COMP
SS
VREF
ILIM
SYNC
GND
LDO 1
+
VOUT1
SET1
VOUT4
SET4
VOUT5
FBO LDO 5 SET5
RT
82.5k
500kHz
6.65k
470µF
100µF
VOUT2
STEP-DOWN LDO 2 SET2
SWITCHING
V
REGULATOR LDO 3 OUT3
SET3
LDO 4
3V
22µF
10nF
49.9k
2.5V
5A
設計特集
力電流、デバイス間のばらつきを考慮した場合
のドロップアウトの余裕、動作温度とトランジェ
ント応答性能の影響)の組み合わせに基づいて
選択しています。
低ノイズ向けに最適化されたデュアル出力
レギュレータ
VIN45
VIN
12V
VIN0
10µF
4.7Ω
510k
1µF
図 2 では、入力電源はやはり12V ですが、2 つ
の LDO 出力は 5V および 3.3V で発生させます。
5V LDO 出力の入出力間電圧差は図 1 と同じ
LDO 1
RUN
BIAS45
BIAS123 LTM8001
COMP
SS
VREF
ILIM
SYNC
GND
5.5V
VOUT1
SET1
5V
2A
VOUT2
STEP-DOWN LDO 2 SET2
SWITCHING
V
REGULATOR LDO 3 OUT3
SET3
LDO 4
3.3V
1A
VOUT4
SET4
VOUT5
FBO LDO 5 SET5
RT
68.1k
500mV と小さいので、LDO 1 と LDO 2 は定
VOUT0
2.80k
15µF
3.3nF
110k
2.2nF
22µF
220µF
249k
+
100µF
600kHz
格電流付近で動作します。3.3V 出力の入出力
間電圧差の方が大きいので、 LDO 3∼LDO 5
の出力電流は、それぞれ 330mA までディレー
ティングすることが必要です。しかし、これら 3 つ
図 2.デュアル低ノイズ出力用に最適化された解決策。5V LDO 出力の特長として入出力間電圧差が図 1 と同じ 500mV と小さいの
で、LDO 1 と LDO 2 は定格電流付近で動作します。3.3V 出力の入出力間電圧差の方が大きいので、3 つの並列接続 LDO(3、4、5)
のそれぞれから供給可能な電流は 330mA までディレーティングされ、合計で 1A になります。
の LDO を並列接続すると熱が拡散されるので、
ディレーティングした LDO から得られる出力電
流の合計は 1A まで増加します。図 3 の熱画像
は、図 1 および図 2 の解決策の比較対象となる
LDO の温度を示しています。
BIAS の設定
LDO へ の BIAS 入 力 は、 対 応 する 最も高 い
LDO 出力電圧より(ワーストケースで)1.6V 高
い必要があります。したがって、図 1 では BIAS
の電圧を VIN から供給していますが、図 2 では
5V 出 力 LDO の BIAS 電 圧を VIN から供 給し、
3.3V 出 力 LDO の BIAS 電 圧は 5.5V のスイッ
チング・レギュレータ出力(VOUT0)から供給して
います。
出力ノイズの最適化
デンサを追加して LDO リファレンスをバイパス
LDO を使用してスイッチング・コンバータの出
しています。図 4 は、図 2 の LDO1∼LDO2 の
力を後段で安定化することにより、低ノイズの電
圧を生成できます。その理由は、スイッチング ・
コンバータ出力と LDO への BIAS 入力の両方
に存在する電圧リップルを LDO が除去するか
らです。図 2 の解決策は低ノイズ出力向けに最
適化されています。スイッチング・コンバータ出
力 VOUT0 および LDO 出力 VOUT1∼VOUT5 の容量
は、電圧リップルを最小限に抑えるよう最適化さ
れています。VIN からのバイアス入力 BIAS45 は
フィルタ処理されています。LDOリファレンスは
ノイズの発生源なので、SET1∼SET5 にはコン
図 3.図 1 の回路(a)および図 2 の回路(b)で最大電流で動作しているときの比較対象となる LDO の温度を熱画像で示します。
LTM8001 の熱拡散に関する汎用性を示しており、幅広い種類の応用でも熱を拡散できています。
5V 出力でのノイズ・スペクトラムの第 1 高調波
のピークが –63dBm であることを示しています。
まとめ
LTM8001 は高効率の降圧コンバータで、後段
に 5 つのパッケージ内低ノイズ LDO が配置さ
れているので、出力電流供給能力は合計 5A で
す。LDO の出力を使用して、 5 種類の異なる出
力電圧を発生させることも、さまざまな並列配置
に組み合わせて大電流出力や熱拡散に対応す
ることもできます。n
図 4.図 2 の解決策は低ノイズ出力向けに最適化されています。
5V 出力は、第 1 高調波のピークが –63dBm のノイズ・スペクト
ラムを生成します。
(b)図 2 の解決策の熱画像
LDO
LDO
0
–20
INTENSITY (dBm)
(a)図 1 の解決策の熱画像
VOUT0 = 3V
VOUT1–5 = 2.5V
IOUT = 5A
VOUT0 = 5.5V
VOUT1–2 = 5V AT 2A
IOUT3-5 = 3.3V AT 1A
–40
–60
–80
–100
–120
0
5
20
10
15
FREQUENCY (MHz)
25
30
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 13
高分解能の A/D コンバータを低消費電力で駆動する
高精度完全差動入力オペアンプ
Kris Lokere
LTC6362 オペアンプは差動出力を生成するので、完全な差動アナログ信号を処理したり、シングルエンド
信号を入力して完全な差動信号に変換するのに最適です。この種の完全な差動特性を持つ他のオペアン
プの多くは超高速動作向けに最適化されているので、消費電力が大きくなり DC 精度が不十分になります。
LTC6362 は、差動出力、低消費電力、高精度 DC オフセット電圧の三つを組み合せているという点でユニー
クな存在です(表 1 参照)。
動作原理
RI
差動オペアンプが動作する仕組みを詳しく調べ
てみましょう。通常のオペアンプと同様、差動ア
VINP
ンプには 2 つの入力がありますが、通常のオペ
アンプとは異なり、出力も 2 つあり、–OUT およ
び +OUT という名前が付いています。通常のオ
VCM
+
–
+
–
VINM
オペアンプは、差動入力と差動出力の間の開
ループ利得が高いことが特長です。
RF
VOUTDIFF = V+OUT − V– OUT
V–OUT
+
VOCM
V–IN
RF
(1)
にのみ依存し、各入力の絶対電圧には無関係で
–
RI
R 
≈  F  • ( VINP – VINM )
 RI 
式 1 は、差動出力電圧が 2 つの入力間の電圧差
VOCM
–
+
ペアンプは、差動入力と1つの出力の間の開ルー
プ利得が高いことが特長です。一方、完全差動
V+IN
あることを示しています。シングルエンド入力を
V+OUT
図 1.4 つの外付け抵抗により、差動オペアンプの周囲に
帰還がかかります。
差動出力に変換するには、一方の入力を単純に
グランドに接続します。
式 1 は差動出力電圧を求める方法を示していま
すが、この式からは各出力の電圧も 2 つの出力
帰還も差動でかけることが必要です。差動出力
つの入力は事実上強制的にほぼ同じ電圧にバ
ノードの平均電圧も分かりません。LTC6362
の一部を差動入力に戻す 4 つの外付け抵抗を
イアスされ、
「仮想接地」とも呼ばれます。回路
では、2 つの出力の瞬時平均(出力同相電圧)
図 1 に示します。通常のオペアンプと同様に、高
解析は仮想接地の概念に基づいています。この
は 入 力 電 圧と無 関 係で、 代 わりにユ ーザ が
い開ループ利得と帰還の組み合わせにより、2
回路の差動利得は次式と同等です。
VOCM ピンの電圧で決定します。
なぜ完全差動アナログ信号なのか?
アナログ信号は、通常はグランドなどの固定電位を基
した場合、差動信号は影響を受けない状態を維持で
最後に、一部の半導体部品では、完全差動信号を入力
準にして測定された 1 つの信号(シングルエンド信号)
きます。
することが(データシートによって)要求されています。
として表されます。しかし、アナログ信号を完全差動に
完全差動信号処理のもう 1 つの利点は、所定の電源電
高いサンプル・レートで変換する A/D コンバータ(例:
した方が良いか、または完全差動にすることが必要な
ときもあります。完全差動とは、2 つの回路網がそれぞ
れ信号に応じて変化するという意味です。一方の電圧
が高くなると、もう一方の電圧は必ず同じ量だけ低く
なります。アナログ信号は、これら 2 つの回路網の間の
電圧差として定義されます。
圧範囲内でより大きな信号を処理できることです。たと
えば、5V 単電源から電力を供給しているシステムでは、
従来のシングルエンド信号で変化できる範囲は最大
実現する A/D コンバータ(例:分解能が 18 ビット以上
5V までです。しかし、完全差動信号は –5V から 5V まで
(10VP–P)変化できます。これは、 2 つの回路網の一方
では、この完全差動入力要件がほぼ当てはまります。
を他方より高くまたは低くできるので、信号の振幅が
完全差動信号処理の利点の 1 つは、電源ノイズ、グラ
実質的に 2 倍になるからです。所定のノイズフロアに
ンド・バウンス、電磁干渉(EMI)などの外部干渉に対
対して信号の最大振幅を 2 倍にすると、信号対ノイズ比
する感度を下げられることです。たとえば、完全差動
信号を搬送する 2 本の導体に電源ノイズが等しく結合
14 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
10Msps より高速のパイプライン A/D コンバータ)や、
きわめて高い分解能、高い直線性、および低ノイズを
(SNR)は 6dB 改善されます。
および SNR が 100dB 以上 の SAR A/D コンバータ)
したがって、これらの部品を使用するには、シグナル
チェーン内のどこかのポイントでアナログ信号を完全
差動信号に変換する以外、選択肢はありません。
設計特集
回路の差動利得が抵抗比 RF/RI によって単純に設定され、出力同相
電圧が VOCM の電圧によって無関係に設定されることを理解したら、
LTC6362 をさまざまな信号変換に応用するのは簡単です。
V

+V
VOUTCM = VOCM =  +OUT – OUT 

2

(2)
LTC6362
2 つの出力の平均と 2 つの出力の差が両方とも
+IN
V–
SHDN
図 2.LTC6362 差動オペアンプは、追加
–OUT
の帰還ループとエラーアンプを内蔵してお
+
既知の場合は、式 1 と式 2 を 2 つの式と 2 つの
り、同相帰還(CMFB)ループを形成して
います。
変数による連立一次方程式として、各出力の値
–
を求めることができます。
LTC6362 の 差 動 出 力を式 1 で決 定できる一
–
方で、同相出力が VOCM で保持される仕組みを
CMFB
図 2 に示します。LTC6362 は、追加の帰還ルー
+
プと独立したエラーアンプを備えています。2 つ
–IN
V+
VOCM
の内部抵抗が 2 つの出力の瞬時平均を測定し、
+OUT
その電圧をエラーアンプに供給します。エラー
アンプの他方の入力には VOCM ピンが接続され
ています。エラーアンプの出力は、エラーアンプ
の駆動状況に応じてオペアンプの各出力電圧が
上下に変化するようにメインアンプに接続されま
す(これはメイン・オペアンプの出力段を駆動す
接続方法
図 4 の例では、オペアンプの電源を負電源レー
るミラー回路に注入される追加電流とみなすこ
回路の差動利得が抵抗比 RF/RI によって単純
ルから供給していないにもかかわらず、入力信
とができます)。この同相帰還ループが安定した
に設定され、 出力同相電圧が VOCM の電圧に
動作点に近づくと、2 つの出力の平均が VOCM に
よって無関係に設定されることを理解したら、
等しくなることが確実になりますが、2 つの出力
LTC6362 をさまざまな信号変換に応用するの
の電圧差はメイン・オペアンプを取り囲む差動
は簡単です。いくつかの標準的な例を図 3 およ
帰還回路によって制御されます。
び図 4 に示します。
表 1.LTC6362 の主な仕様
電源電流
最大オフセット電圧
図 3.0V∼5V の入力信号を 9VP–P の差動出力に変換
入力ノイズ密度
3.9nV/ √Hz
入力電圧範囲
レール・トゥ・レール
出力電圧範囲
レール・トゥ・レール
電源電圧
2.8V∼5.25V
作と LTC6362 のレール・トゥ・レール入力段の
おかげで機能します。オペアンプ自体の入力ピ
ンは、最大で両方の電源レールまでのあらゆる
4.5V
4.5V
V+OUT
200µV
34MHz
気づくでしょう。この回路は帰還抵抗の分圧器動
図 4.±10V の入力信号を 9VP–P の差動出力に変換
1mA
–3dB 帯域幅
号をグランドより低い電位まで振っていることに
1k
0.5V
5V
5V
VIN
0V
619Ω
VOCM
0.1µF
SHDN
619Ω
+
–
VCM
2.5V
V+OUT
10V
806Ω
VIN
2k
– +
VIN
LTC6362
+ –
1k
VOCM
0.1µF
SHDN
2k
– +
LTC6362
+ –
806Ω
4.5V
V–OUT
0.5V
5V
–10V
4.5V
V–OUT
0.5V
0.5V
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 15
オペアンプの電源を負電源レールから供給していないにもかかわらず、入力信号をグランドより
低い電位まで振ることができます。
この回路は帰還抵抗の分圧器動作とLTC6362のレール・トゥ・
レール入力段のおかげで機能します。オペアンプの入力ピンは、最大で両方の電源レールまで
のあらゆる電圧で動作するよう完全に規定されています。
1k
5V
1k
VIN
VOCM
0.1µF
図 5.20 ビット 1Msps の A/D コンバータ
SHDN
1k
5V
2.5V
VREF
VDD
6.8nF
35.7Ω
– +
LTC6362
+ –
1k
35.7Ω
AIN+
3.3nF
6.8nF
AIN–
20-BIT
LTC2378-20
SAR ADC
1Msps
GND
LTC2378-20 を駆動する LTC6362
電圧で動作するよう完全に規定されています。こ
分を合計する必要があります。RF = RI = 1k を
れらの回路例の解析やシミュレーションを実行
使用した例では、全出力ノイズは 12nV/ √Hzと
することで、信号入力の電圧がグランド電位より
なります。
低くなる場合でも、オペアンプ入力の電圧がグ
ランド電位より低くなる必要はないことを確かめ
ることができます。
低ノイズとその計算方法
差動信号処理の重要な利点の 1 つは、システム
の信号対ノイズ比を倍増できる可能性があるこ
とです。そこで、LTC6362 のような差動オペア
ンプのノイズ性能を解析する方法について詳し
く調べてみましょう。
このオペアンプは、入力換算ノイズ密度として
4nV/ √Hz よりわずかに低い値を規定していま
す。これは一方の入力に直列に接続したノイズ
電圧源としてモデル化できます。回路の出力で
のこのノイズの影響は、帰還抵抗比の逆数にな
ります。たとえば、すべての抵抗値が同じである
場合は、出力電圧の 1/2 がオペアンプの入力に
帰還されるので、オペアンプの入力ノイズは出
力では 2 倍となって現れます。
回路の全出力ノイズ密度が分かったら、対象の
帯域幅にわたって積分することにより、RMS ノ
イズを計算できます。通常どおり、帯域幅を狭
くするとノイズの平均をとる時間が長くなるの
で、測定される全ノイズは小さくなります。たと
えば、 1MHz の単極フィルタのノイズ帯域幅は
1.57MHz です。12nV/ √Hz のノイズ密度をこ
の帯域幅で積分すると、全ノイズは約 15µVRMS
になります。
回路の最大 SNR は、最大の信号をノイズで割
れば計算できます。LTC6362 は 5V 単電源で
のレール・トゥ・レール出力を特長としている
ので、ほぼ 10VP–P の差動出力振幅が得られま
す。この値を RMS に変換(3.5VRMS)してノイズ
(15µVRMS)で割ると、この 1MHz のノイズ帯
域幅で 233,000 つまり107dB を超える SNR が
得られます。107dBという数値から、LTC6362
は LTC2378-20(104dB の SNR を備え、完全
差動入力駆動が必要な 20 ビット SAR A/D コン
さらに、4 つの帰還抵抗は、それぞれ√4kTR だ
バータ)にふさわしいデバイスであることが分か
けノイズに寄与します。これらのノイズ源の寄与
ります。
16 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
20 ビット SAR A/D コンバータの駆動
1Msps でサンプリング する LTC2378-20(20
ビットSAR A/D コンバータ)
を LTC6362 によっ
て駆動する方法を図 5 に示します。LTC6362 は
シングルエンド入力信号を受けて、A/D コンバー
タの規定と同様の完全差動出力に変換します。
アンプと A/D コンバータの間にある RC フィル
タ回路網は、いくつかの目的を果たします。第
1 に、フィルタ回路網は、A/D コンバータに入り
込む広帯域ノイズの量を低減します。A/D コン
バータのサンプリングが 1Msps の場合、ナイキ
スト基準によると、500kHz より高いすべての信
号で折り返しエラーが発生し、低周波数の信号
と区別がつかなくなります。これは広帯域ノイズ
でも同様なので、広帯域ノイズを A/D コンバー
タに入れることは禁物です。第 2 に、コンデンサ
は、A/D コンバータ内部のサンプリング・コンデ
ンサからの電荷キックバックを吸収する電荷貯
蔵器として機能します。A/D コンバータは、前回
の変換を終了するたびに、放電状態のサンプル・
コンデンサ(約 45pF)をアンプ回路に再接続し
ます。A/D コンバータの入力にかなり大容量の
平滑コンデンサを配置することにより、これらの
設計特集
20 ビットの SAR A/D コンバータと LTC6362 を組み合わせた場合の性能は、
103dB の SNR と 107dB の THD を達成しています。これは 1Msps でのデータ
収集システムとしては画期的な性能です。特に、LTC6362 は、完全差動入力を
厳密な同相状態で A/D コンバータに入力する負担を軽減します。
100Ω
VCM = 0.9V
0.1µF
V+OUT
1k
1k
VOCM
INPUT BW = 1.2MHz
FULL SCALE = 2VP-P
0.1µF
SHDN
LTC6362
1.5nF
30Ω
+ –
1.5nF
1k
VIN
図 6.16 ビットの高速パイプライン A/D コンバータ
5Ω
30Ω
– +
1k
1.8V
1.5nF
3.3V
5Ω
AIN+
AIN–
VDD
VCM
16 BIT
LTC2160
PIPELINE ADC
25Msps
GND
V–OUT
MEASURED PERFORMANCE FOR LTC6362 DRIVING LTC2160:
INPUT: fIN = 2kHz, –1dBFS
SNR: 77.0dB
HD2: –98.9dBc
HD3: –102.3dBc
THD: –96.3dB
LTC2160 を駆動する LTC6362
サンプル・コンデンサに起因する電圧変動を低
ことが理想です。実際には、広帯域ノイズとセト
れは 1Msps でのデータ収集システムとしては画
減します。
リング時間を天秤に掛けることになるでしょう。
期的な性能です。特に、LTC6362 は、完全差
A/D コンバータが変換を終了してから次の変換
を開始するまでの期間は収集時間と呼ばれま
す。これは、サンプル・コンデンサがアンプ回路
との接続状態を維持している期間です。この期
幸いにも、A/D コンバータ LTC2378-20 の電荷
動入力を厳密な同相状態で A/D コンバータに
キックバックは比較的直線的なので、サンプル・
入力する負担を軽減します。実際に、この回路
コンデンサが最終値まで完全に安定化されてい
への入力は従来のシングルエンド・アナログ信
ない場合でも、優れた直線性が保証されます。
号です。その他の入力範囲に合わせて回路を構
間中に、 RC 回路網によって電圧変動が A/D コ
図 5 に示す回路の総合的な性能として、SNR は
ンバータの分解能の範囲内に十分安定化される
103dB、THD は 107dB を達成しています。こ
成するには、以前の図で示したように、外付け
抵抗を適切に選択するだけで済みます。
25Msps パイプライン A/D コンバータの駆動
高速パイプライン A/D コンバータは、通常、入力
図 7.信号の状態を調整して差動より対線の両端を駆動する LTC6362
を完全な差動で駆動することが必要です。周波数
3V
V+OUT
1V
1k
VIN
グ信号を入力し、この信号を 25Msps でオーバー
5V
–1V
1k
VIN
成分が DC∼約 1MHz のシングルエンド・アナロ
2V
VOCM
0.1µF
SHDN
1k
サンプリングする方法を図 6 に示します。
49.9Ω
– +
LTC6362
+ –
49.9Ω
100Ω
ここで、LTC6362 は信号を差動出力に変換しま
す。A/D コンバータ LTC2160 は、同相入力電
圧を 0.9V にすることを求めています。A/D コン
1k
3V
V–OUT
2V
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 17
LTC6362 は高機能で多用途の差動オペアンプです。高精度の DC 規
格、低消費電力、およびレール・トゥ・レール動作により、差動信号が
必要なさまざまな高性能 A/D コンバータを駆動できるだけでなく、ア
クティブ・フィルタ処理動作や差動ケーブルの駆動も可能です。
バータの VCM ピンをアンプの VOCM ピンに
差動アクティブ・フィルタ
力と入力の間に直接の短絡経路を形成するの
接続することでこの目的を達成します。この低い
オペアンプの RC アクティブ・フィルタを使用し
で、高周波での帰還率は帰還抵抗を使用した回
同相電圧をサポートできる差動オペアンプはほ
とんどありませんが、この低電圧でも LTC6362
はその性能を発揮できます。この回路の SNR は
77dB で、A/D コンバータの SNR 規格と同等で
あり、 A/D コンバータとアンプの全消費電力が
それぞれ 45mW および 3mW と低いことを考え
ると、かなり優れています。
て、複数の極を持つローパス・フィルタと、比較
的安定したカットオフ周波数を形成することがで
きます。従来のオペアンプを使用してこれを実行
する回路例は、すぐに入手できます。LTC6362
を使用すると、そうしたフィルタを差動で完全に
実装できます。
路の場合よりはるかに大きくなります。オペアン
プの位相余裕が不十分な場合は、発振やリンギ
ングが発生します。従来のオペアンプとは対照
的に、この構成での LTC6362 の動作は特筆に
値します。
まとめ
4 極の 50kHz ローパス・フィルタの例を図 8 に
LTC6362 は高機能で多用途の差動オペアンプ
差動ライン・ドライバ
示します。この例では、LTC6362 が 3 つの機能
です。高精度の DC 規格、低消費電力、および
ある PCB から別の PCB へ比較的長い距離間の
を同時に実行します。つまり、シングルエンド入
レール・トゥ・レール動作により、差動信号が必
アナログ信号伝送が必要になることがあります。
力信号を完全差動信号に変換し、4 極のローパ
要なさまざまな高性能 A/D コンバータを駆動で
このための手っ取り早い方法は、差動より対線
ス・フィルタを形成して、高性能 A/D コンバータ
きるだけでなく、アクティブ・フィルタ処理動作
を使用することです。ノイズ結合やその他の妨
(この例では、 16 ビット 20Msps の LTC2380-
害に対する耐性を持っているからです。前述し
たように、LTC6362 は従来のシングルエンド信
号を完全差動信号に変換できます。この場合に
は、図 7 に示すように差動ラインを介して信号を
駆動します。
や差動ケーブルの駆動も可能です。n
16)を駆動します。
必ずしもすべての差動オペアンプがこのような
使用法に対応できるわけではありません。帰還
コンデンサは、周波数が高いとオペアンプの出
1.8nF
図 8.差動アクティブ RC フィルタとして構成した LTC6362
2k
1.8nF
4-POLE FILTER
f–3dB = 50kHz
0.1µF
VCM
5V
V
–5V IN
1.27k
1.27k
1.27k
1.8nF
0.1µF
1.8nF
VCM
1.27k
1.27k
– +
LTC6362
1.8nF
1.27k
2k
0.5V
100Ω
1.8nF
100Ω
+ –
1.8nF
18 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
4.5V
5V
4.5V
0.5V
1.8nF
1.8nF
AIN+
AIN–
5V
2.5V
VREF
VDD
16-BIT
LTC2380-16
SAR ADC
2Msps
GND
設計特集
不良 LED を検出し、100:1 のアナログ調光比を実現
する、デュアル電流レギュレーション・ループを備えた
LED コントローラ
Xin (Shin) Qi
LT3796-1 は、出力で定電流または定電圧を安定化する目的(LED を
駆動するのに必要な要件)で設計されたスイッチング・コントローラで
す。このデバイス独自の特長は、独立した 2 つの電流検出アンプとハ
イサイド PMOS 切断スイッチ・ドライバです。ドライバは、PWM ピン
を使用してスイッチング ・レギュレータと組み合わせて動作させるか、
TGEN ピンを使用して単独で動作させることができます。
不良 LED 検出機能を持つ同一な 2 つの並列
LED 列の駆動
順方向電圧は負荷、温度、製造時の許容誤差に
よって大幅にばらつく可能性があるので、1 列の
LED の中から劣化または短絡した LED を 1 つ
検出するのは困難な課題です。こうしたばらつき
を取り除く1 つの方法は、 2 つの整合した LED
列を並列に使用することです。こうすることによ
これらの特長により、LT3796-1 はいくつかの具
精度のアナログ調光が必要なアプリケーション
り、2 つの LED 列の順方向電圧に相対的な差
体的な LED アプリケーションの要求を満たすこ
では、大小 2 種類の範囲で LED 電流を安定化
があったらフォルトを示すことができます。こうし
とができます。たとえば、信頼性の高い照明アプ
するよう2 つの電流検出アンプを調整することに
た解決策では、最初から順方向電圧降下の合計
リケーションでは、2 列の LED 列を並列に駆動
より、大電力 LEDドライバのアナログ調光能力
値が一致するように選別した振り分け品を使用
するようコントローラを構成し、いずれか一方の
を 100:1 まで広げることができます。これは、1
して列を構成します。
列を基準として使用して、もう一方の列に存在す
つの電流制御ループを使用して標準的に得られ
る不良 LED1 個を検出できます。あるいは、高
る性能を 10 倍改善した能力です。
VIN
8V TO 20V
L1
22µH
D1
C1
2.2µF
×3
RSNS
15mΩ
R1
499k
LED STRING 1
CURRENT REPORTING
LED STRING 2
CURRENT REPORTING
C2
0.1µF
EN/UVLO
FB1
ISMON
CSP
VS
LT3796-1
CTRL
R5
100k
FAULT
VMODE
M1: VISHAY SILICONIX Si7460DP
M2: VISHAY SILICONIX Si7415DN
SS
D1: DIODES INC PDS3100
D2, D3, D4: NXP PMEG6010CEJ
Q1, Q2: ZETEX FMMT589
L1: WÜRTH 744 355 122 1
LED: CREE XLAMP XR-L
TGEN
Q1
ISN
R10
10k
TG
D4
INTVCC
FAULT
M2
INTVCC
C5
4.7µF
VMODE
VC
SS
C3
0.1µF
CC
22nF
M3
R11
10k
Q2
SS
D3
9 LEDs
STRING 1
9 LEDs
STRING 2
D2
RT
RC
1k
INTVCC
R9
20k
RLED1
500mΩ
VREF
R4
100k
RLED2
500mΩ
ISP
FB2
PWM
INTVCC
R8 10k
CSN
CSOUT
R3
40.2k
R6
1M
2 列の LED の昇圧 LEDドライバ
R7
22.6k
VIN GATE SENSE GND
R2
97.6k
図 1.不良 LED の検出機能と保護機能を備えた
C6
2.2µF
×4
100V
M1
RT
31.6k
250kHz
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 19
単一出力で並列 2 列を駆動する潜在的な問題の 1 つは、一方の列が開放状態つまり
不導通状態になった場合、もう一方の列に 2 倍の電流が流れる可能性があることです。
LT3796-1 内部のデュアル電流レギュレーション・ループを使用して、こうした電流の
アンバランスが生じないようにすることができます。
パレータは、列 1 を短絡から保護するのに対し
500mA
ILED2
500mA/DIV
ILED2
500mA/DIV
ILED2
500mA/DIV
500mA
500mA
ILED2
500mA/DIV
て、D4、Q1、および R9∼R11 で形成される回
500mA 625mA
路は、列 2 の短絡を検出し、FB1 ピンを H に
500mA
駆動して、PMOS スイッチ M2 および M3 をオ
フします。
アナログ調光比が 100:1 の LEDドライバ
ISMON
1V/DIV
ISMON
1V/DIV
多くの大電力 LED アプリケーションでは高いア
1V 1.25V
ナログ調光比が要求されますが、電流検出経路
CSOUT
1V/DIV
CSOUT
1V/DIV
20ms/DIV
図 2.図 1 の列 1 での 1 個の LED の短絡
が 1 つだと実現するのが困難です。問題はダイ
1ms/DIV
図 3.図 1 の列 2 での 1 個の LED の短絡
ナミックレンジです。大電流では、検出抵抗での
電力損失を制限するために電圧差を小さく(標
準で 250mV 以下に)抑えることが必要ですが、
処理する信号が非常に小さいので、10% のアナ
ログ調光であっても、電流検出アンプの数 mV
単一出力で並列 2 列を駆動する潜在的な問題の
対的な差が電圧で現れます。2 つのアナログ信
1 つは、一方の列が開放状態つまり不導通状態
号を外部で比較することにより、外部コントロー
になった場合、もう一方の列に 2 倍の電流が流
ラでフォルト信号を起動することができます。
になります。
列 1 の LED が 1 個 短 絡した 場 合 の オシ ロス
LT3796-1 は 2 つの電流検出ループを内蔵して
れる可能性があることです。LT3796-1 内部の
デュアル電流レギュレーション・ループを使用し
て、こうした電流のアンバランスが生じないよう
にすることができます。
コープの波形を図 2 に示します。ISP/ISN 電流
検出アンプは過電流を瞬時に検出して、2 つの
PMOS スイッチを両方とも切断します。ソフト
昇圧 LEDドライバ内部の ISP/ISN 電流検出ア
スタート 1 サイクル後に、ISP/ISN 電流ループ
ンプと CSP/CSN 電流検出アンプをどのように
は LED 列の電圧を新たな出力電圧に安定化し
構成するかを図 1 に示します。通常動作では、
ます。この電圧は、LED8 個分の順方向電圧降
ISP/ISN 電流ループが LED 電流を制御して設
下に相当します。更新後の出力電圧では 9 個の
定します。LED 列 1 に流れる電流は ISMON ピ
LED を駆動できないので、LED 列 2 は導通電
ンで通知されます。CSOUT の電圧は FB2 ピン
流を遮断し、CSOUT は 0V を示します。同様
のレギュレーション点より25% 低い値に設定さ
に、列 2 の LED が 1 個短絡すると、CSP/CSN
れているので、 CSP/CSN 電流ループは、通常
電流ループは制御権を獲得し、図 3 に示すよう
CSOUT にモニタ結果を出力します。CSOUT
に FB2 ピンを介して出力電流を 625mA に安定
ピンが示すLED列2の電流は次式のとおりです。
VCSOUT = 1V •
ILED2
500mA
化します。この状態では LED 列 1 が導通電流を
遮断しているので、ISMON は 0V を示します。
このコンバータは、ハイサイド PMOS 切断スイッ
の精度が検出電圧の誤差に大きく影響するよう
いるので、2 つのループ間で電流レギュレーショ
ンの役割を分担することにより、高いアナログ調
光比を実現できます。一方のループは値の小さ
い検出抵抗で大電流経路での電力損失を制限
することを特長としているのに対して、もう一方
のループは、電力損失があまり問題にはならな
いため、低電流経路で大きい検出抵抗を使用し
て精度を向上させています。LTC1541(高精度
リファレンス、オペアンプ、およびコンパレータ
を単一パッケージ内に収容)を使用して、SEPIC
モードで 100:1 のアナログ調光比を実現するよ
う構成された LT3796-1 を図 4 に示します。
200mA∼1A と値の大きい電流範囲では、M2
の RDS(ON) を無視できると仮定すると、ISP/ISN 電
流ループは出力電流を次の値に安定化します。
チ・ドライバ・ピン TG を介して、高性能 PWM
2 列 の 電 流 バランスがくず れると、 通 知ピン
調光機能と堅牢な短絡保護機能も実現します。
(ISMON および CSOUT)には LED 電流の相
ISP/ISN 電流検出アンプ内部の内蔵過電流コン
20 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
ILED =
VCTRL _ IN − 0.2V
20 • (RLED1 || RLED2 )
設計特集
LT3796-1 は 2 つの電流検出ループを内蔵しているので、2 つのループ間で電流レギュレーションの役割を
分担することにより、高いアナログ調光比を実現できます。一方のループは値の小さい検出抵抗で大電流経
路での電力損失を制限することを特長としているのに対して、もう一方のループは、電力損失があまり問題
にはならないため、低電流経路で大きい検出抵抗を使用して精度を向上させています。
図 4.アナログ調光比が 100:1 の
C1
2.2µF
×3
M1: INFINEON BSC16ON1ONS3-G
M2: VISHAY SILICONIX Si7461DP
M3: ZETEX ZXM6IN02F
L1: COILTRONICS DR Q 127-220
D1: DIODES INC PDS5100
D2: NXP PMEG6010CEJ
LED: CREE XLAMP XR-E
L1B
R4
113k
2
R1
499k
R2
97.6k
8
+
1
LTC1541
OP AMP
–
C2
0.1µF
C3
0.1µF
CTRL_IN
5
6
LTC1541
COMP
RLED1
270mΩ
CSOUT
C4
0.1µF
7
ISN
VREF
INTVCC
CTRL
FAULT
R11
200k
M3
+
VC
TGEN SS
全体的にみて 2 つの電流ループの併用により、
ンパレータによって TGEN ピンは強制的に L
100:1 のアナログ調光比を実現しています。
列の電流を検出して安定化するのは CSP/CSN
まとめ
ループのみとなります。CSP/CSN ループが制御
LT3796-1 は、通知機能付きの独立した 2 つの
権を獲得すると、 FB2 ピンの電圧は 1.25V に安
電流検出アンプ、 2 つの FB ピン、およびハイサ
定化されるので、 R6 を介して CSOUT ピンから
イド切断スイッチ・ドライバを特長とする LED コ
電流を引き出すことにより、 CTRL_IN の入力
ントローラです。また、堅牢なフォルト保護機能
電圧で CSP/CSN しきい値を設定します。CSP/
と、高信頼性かつ高性能のアナログ調光など難
CSN の調光範囲は 668mV∼33.4mV なので、
易度の高い LED アプリケーションに対応する豊
200mA∼10mA の範囲の低 LED 電流を検出
富な機能も特長です。n
しつつ、精度を維持します。図 5 に示すように、
INTVCC
R15
100k
R16
100k
FAULT
10 LEDs
VMODE
RT
RC
1k
CC
22nF
VCTRL が 1.2V より低くなると、LTC1541 のコ
になり、M2 は切断されます。したがって、LED
C8
4.7µF
VMODE
C6
0.1µF
1.2V INTERNAL
REFERENCE
M2
TG
PWM
R10
7.87k
–
RLED2
3.32Ω
ISP
R6 10k
4
VREF
R14 6.65k
CSP
FB2
R9 30.1k
C5
0.1µF
VS
LT3796-1
R12
1M
R13
23.7k
VIN GATE SENSE GND
EN/UVLO
FB1
ISMON
C7
2.2µF
×4
50V
CSN
R8 100k
R7
100k
RSNS
15mΩ
RT
19.6k
400kHz
図 5.図 4 の解決策での ILED と CTRL 電圧
1200
1000
800
ILED (mA)
3
R17 10k
•
M1
LED CURRENT
REPORTING
R5 1k
R3 INTVCC
200k
D2
•
VIN
8V TO 20V
VREF
C3
INTVCC
2.2µF ×2 50V D1
L1A
22µH
SEPIC モード LEDドライバ
600
400
200
0
0
2
4
6
8
VCTRL_IN (V)
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 21
超低インダクタ DCR による検出機能と
高速トランジェント応答性能を備えた位相当たり
30A を供給する高効率の PolyPhase 電源
Jian Li / Gina Le
LTC3875 は、現代の高速、大容量データ処理システム、通信システム、
産業用機器、および DC 電力配分システムの電力密度要求を満たす機
能豊富なデュアル出力、同期整流式降圧コントローラです。
LTC3875 の特長は次のとおりです。
3.5V の出力電圧範囲
• 電流検出信号の信号対ノイズ比を高める独自
のアーキテクチャにより、超低 DCR のパワー・
インダクタを使用して効率を最大限に高めつ
レンス(0.6V)許容範囲による高精度のレギュ
レーション
• 6mm×6mm QFN パッケージ内の内蔵ドラ
イバにより、厳しいスペース要件を満足
• 大電流アプリケーションに対応する容易な並
標準的な 4.5V∼14V 入力、デュアル出力の解
は互いに対して 180°
位相のずれた動作を行う
ので、入力 RMS 電流リップルとコンデンサのサ
イズが小さくなります。最大 30A の出力電流を
供給するため、各位相に上側 MOSFET と下側
MOSFET が 1 個ずつ存在します。
LTC3866 と 同 様 に、LTC3875 は 独 自 の 電
列マルチフェーズ動作
つ、スイッチング・ジッタを低減可能
1.5V/30A)
決策を図 1 に示します。LTC3875 の 2 チャネル
• リモート出力電圧検出および ±0.5% のリファ
• 4.5V∼38V の 入 力 電 圧 範 囲および 0.6V∼
デュアル出力コンバータ(1.0V/30A および
流 検 出アーキテクチャを採 用して信 号 対ノイ
ズ比を向上しているので、超低インダクタ DCR
• 高速トランジェント応答により、小さな出力容
(1mΩ 以下)の小検出信号による電流モード制
量で高密度の設計が容易
VIN
4.5V TO 14V
図 1.LTC3875 を特長とするデュアル出力
コンバータ(1.0V/30A および 1.5V/30A)
60k
D1
20k
3.57k
CB1 0.1µF
SW1
EXTVCC
BG1
TAVG
M2
715Ω
220nF
RB1 13.3k
+
COUT3
470µF
×2
IFAST
PHASMD
CLKOUT
PGOOD
MODE/PLLIN
BOOST1
220nF
VOUT1
1V
30A
RUN1,2
INTVCC
ENTMPB
TG1
LTC3875
M1
L1
0.25µH
(0.32mΩ DCR)
VIN
ILIM
COUT4
100µF
×2
RA1
20k
1.5nF
220pF
10k
22 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
M3
D1, D2: CMDSH-3
L1: WÜRTH 744301025 0.25µH DCR = 0.32mΩ
L2: WÜRTH 744301033 0.33µH DCR = 0.32mΩ
M1, M3: BSC050NE2LS
M2, M4: BSC010NE2LSI
L2
0.33µH
(0.32mΩ DCR)
CB2 0.1µF
SW2
M4
BG2
SNS1–
SNS2–
SNSD2+
TCOMP2
VOSNS2+
VOSNS2–
ITH2
FREQ
TK/SS1 TK/SS2
SELECT PIN ABBREVIATIONS
SNSA1+, SNSA2+: Positive AC Current Sense Comparator Inputs
SNSD1+, SNSD2+: Positive DC Current Sense Comparator Inputs
SNS1–, SNS2–: Negative AC and DC Current Sense Comparator Inputs
60k
270µF
50V
BOOST2
PGND
TRSET2
SNSA2+
0.1µF
D2
TG2
TRSET1
SNSA1+
SNSD1+
TCOMP1
VOSNS1+
VOSNS1–
ITH1
10µF
×4
4.7µF
0.1µF
931Ω
4.64k
220nF
220nF
RB2 30.1k
1.5nF
100k
150pF
10k
RA2
20k
VOUT2
1.5V
30A
COUT1
100µF
×2
+
VOSNS1+, VOSNS2+: Positive Inputs of Remote Sensing Differential Amplifiers
VOSNS1–, VOSNS2–: Negative Inputs of Remote Sensing Differential Amplifiers
TK/SS1, TK/SS2: Voltage Tracking and Soft Start Inputs
COUT2
470µF
×2
設計特集
LTC3875 は、PCB レイアウトを入念に行うことにより、最小 0.2mΩ の
DCR 値を検出できます。さらに、追加の温度補償回路を使用して、広
い温度範囲での高精度な電流制限を保証できます。
御が可能です。この結果、効率が大幅に改善さ
95
れ、ジッタが減少します。電流モード制御により、
90
び簡単な帰還補償を実現します。
LTC3875 は、PCB レイアウトを入念に行うこ
とにより、最小 0.2mΩ の DCR 値を検出できま
す。LTC3875 は、2 つの正側検出ピン SNSD+
および SNSA+ を使用して信号を取り込みます。
EFFICIENCY (%)
サイクルごとの高速電流制限、電流分担、およ
85
80
75
DCRと一致する必要があるのに対して、SNSA+
のフィルタの帯域幅は SNSD のフィルタの帯域
+
幅の 5 倍である必要があります。さらに、追加の
70
VOUT1 = 1V
VOUT2 = 1.5V
VIN = 12V
fSW = 400kHz
SNSD のフィルタ時定数は出力インダクタの L/
+
0
5
10
20
15
ILOAD (A)
25
30
VIN = 12V、VOUT1 = 1.0V/30A、VOUT2 = 1.5V/30A、空気流なし
図 2.2 つのチャネルの効率の比較
図 3.熱試験の結果
高速トランジェント機能のイネーブル後、負荷が
ルしてもしなくても同じトランジェント性能を達
15A 増加したときに、スイッチング・サイクル遅
成できますが、イネーブルした場合には出力容
延が 2.18µs から 1.2µs に減少し、電圧アンダー
量の 20% 低減、電力密度の増加、および総コス
温度補償回路を使用して、広い温度範囲での高
精度な電流制限を保証できます。
効率は超低 DCR のインダクタを使用して最適
化できます。図 2 に示すように、この解決策の強
制連続モード(CCM)での全効率は、1.0V/30A
出 力では 87.3% であり、1.5V/30A 出 力では
89.8% です。図 3 に示すように、空気流がない
場合の過熱点(下側 MOSFET)の温度上昇は
シュートが 95mV から 67.5mV に(29%)減少
トの削減を実現できます。他の非線形制御法と
している様子を図 4 に示します。言い換えると、
比較すると、LTC3875 が採用している応答方
LTC3875 は高速トランジェント機能をイネーブ
式は線形で、全体の設計が簡単になっています。
57°
C であり、周囲温度は約 23°
C です。
LTC3875 は高速トランジェント応答を特長とし
ており、独自開発のソリューションによってアン
ダーシュートを最小限に抑えます。ピーク電流
図 4.トランジェント状態の比較
(a)高速トランジェント機能をディスエーブル
(b)高速トランジェント機能をイネーブル
モード制御がスイッチング・コンバータで広く採
用されているのは、そのサイクルごとのピーク電
流制限と容易な補償が理由です。ただし、ピー
ク電流モード制御には本質的にスイッチング・
VOUT
50mV/DIV
95mV
VOUT
50mV/DIV
DOUBLING THE CLK
サイクル遅延が伴うので、負荷が階段状に増加
すると出力電圧に大きなアンダーシュートが生じ
ます。LTC3875 では、動的なスイッチング周波
数調整方式の採用によってアンダーシュートを
克服しています。内蔵のトランジェント検出器は
67.5mV
VSW
10V/DIV
VSW
10V/DIV
IOUT
10A/DIV
0A–15A
IOUT
10A/DIV
0A–15A
大きな電圧アンダーシュートを検出できるので、
LTC3875 は約 20 サイクルの間プリセット・ス
イッチング周波数の 2 倍の周波数でパワー段を
動作させることができます。
10µs/DIV
VIN = 12V
VOUT = 1.5V
15A LOAD STEP
10µs/DIV
VIN = 12V
VOUT = 1.5V
15A LOAD STEP
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 23
VIN
4.5V TO 14V
図 5.コンバータは LTC3875 の 2 つの
チャネルを使用して 60A 定格の 1V 単一
出力を供給
60k
D1
ILIM
20k
L1
0.25µH
(0.32mΩ DCR)
3.57k
INTVCC
PHASMD
CLKOUT
PGOOD
IFAST
MODE/PLLIN
ENTMPB
TG1
LTC3875
CB1 0.1µF
SW1
EXTVCC
BG1
TAVG
M2
715Ω
220nF
VOUT
COUT3
470µF
×2
COUT4
100µF
×2
220pF
LTC3875 は、大電流の解決策向けに 2 相単一
出力コンバータとして容易に構成できます。12V
入力から 1V、60A 出力を生成する降圧コンバー
タを図 5 に示します。必要に応じて、複数の IC
図 6.図 5 に示す 60A 回路例の DC 電流分担
TRSET1
SNSA1+
PGND
TRSET2
SNSA2+
SNS1–
SNS2–
SNSD1+
TCOMP1
VOSNS1+
VOSNS1–
ITH1
SNSD2+
TCOMP2
VOSNS2+
VOSNS2–
ITH2
FREQ
TK/SS1 TK/SS2
715Ω
3.57k
220nF
220nF
RB 13.3k
1.5nF
100k
RA
20k
10k
VOUT
1V
60A
COUT1
100µF
×2
+
COUT2
470µF
×2
VOSNS1+, VOSNS2+: Positive Inputs of Remote Sensing Differential Amplifiers
VOSNS1–, VOSNS2–: Negative Inputs of Remote Sensing Differential Amplifiers
TK/SS1, TK/SS2: Voltage Tracking and Soft Start Inputs
を並列接続して位相を交互に入れ替え、さらな
に示すように、ピーク電流モード制御アーキテク
る大電流に対応できます。
チャのおかげで、動的な電流分担特性も非常に
2 つのチャネル間での DC 電流分担を図 6 に示
します。DCR が 0.32mΩ のインダクタを使用し
た場合、最大負荷時の差は 1.6A 前後です。図 7
良好です。
まとめ
LTC3875 は、信頼性の高い電流モード制御に
よる高い効率、超低 DCR 検出、および強力な
図 7.図 5 に示す 60A 回路例の動的電流分担
内蔵ドライバを 6mm×6mm 40 ピン QFN パッ
ケージで実現しています。このデバイスは、高
い信頼性を確保するため温度補償された DCR
VIN = 12V
VOUT = 1V
30
PHASE CURRENT (A)
M4
BG2
35
検出をサポートしています。高速トランジェント
VOUT
100mV/DIV
応答により、最小出力容量でのトランジェント
応答性能を改善することができます。トラッキ
25
20
ング、マルチチップ動作、および外部同期機能
IOUT
20A/DIV
は、デバイスの一連の特長を充実させています。
15
LTC3875 は、通信システム、データ通信システ
ム、産業用システム、コンピュータ・システムな
10
5
0
L2
0.25µH
(0.32mΩ DCR)
CB2 0.1µF
SW2
SELECT PIN ABBREVIATIONS
SNSA1+, SNSA2+: Positive AC Current Sense Comparator Inputs
SNSD1+, SNSD2+: Positive DC Current Sense Comparator Inputs
SNS1–, SNS2–: Negative AC and DC Current Sense Comparator Inputs
単一出力 2 相大電流コンバータ
D1, D2: CMDSH-3
L1, L2: WÜRTH 744301025 0.25µH DCR = 0.32mΩ
M1, M3: BSC050NE2LS
M2, M4: BSC010NE2LSI
M3
TG2
0.1µF
(入力 12V、出力 1V/6A)
D2
270µF
50V
BOOST2
BOOST1
220nF
+
VIN
RUN1,2
M1
10µF
×4
4.7µF
PHASE 1
PHASE 2
0
10
20
40
30
ILOAD (A)
50
24 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
どの大電流アプリケーションに最適です。n
IL1, IL2
10A/DIV
20µs/DIV
60
VIN = 12V
VOUT = 1V
15A LOAD STEP
設計特集
CISPR クラス 5 の放射性輻射規格に適合しつつ
高い変換効率を維持する Silent Switcher
Tony Armstrong / Christian Kück
EMI を最小限に抑えることが設計上の優先事項である場合、リニア・レギュレータは低ノイズの解決策に
はなりますが、熱放散と効率の要件が妨げとなり、スイッチング ・レギュレータが選ばれることがあります。
EMI の影響を受けやすいアプリケーションでも、スイッチング ・レギュレータは通常は入力の電力バスライ
ンにおける最初の能動部品なので、下流のコンバータに関係なく、コンバータ全体の EMI 性能に大きく影
響します。これまで、パワー IC の選択によって EMI の抑制と効率要件の達成を保証できる確実な方法はあ
りませんでした。これを可能にしたのが、LT8614 Silent Switcher™ レギュレータです。
LT8614 は、現時点での最新式スイッチング ・
この策では必要な基板面積、部品、および組み
その超低ドロップアウト電圧の制限要因は、内
レギュレ ータと比 較して 20dB 以 上 EMI を減
立てに多大なコストがかかる一方で、熱管理と
蔵の上側スイッチだけです。他の解決策とは異
少させています。こうしたレギュレータと比較し
試験が複雑になります。この他に、スイッチング・
なり、LT8614 の VIN-VOUT の制限値は、 最大
て、 LT8614 は 30MHz を超える周波数範囲で
エッジを低速化するという方法もあります。この
デューティ・サイクルおよび最小オフ時間には制
EMI の減少量が 10 倍であり、しかも最小オン
方法には、効率の低下、最小オン時間と最小オ
限されません。図 6 に示すように、このデバイス
時間や最小オフ時間、あるいは同等な基板面積
フ時間の増大、関連するデッドタイムの増大とい
はドロップアウト時にスイッチオフ・サイクルを
での効率を犠牲にすることはありません。部品
う好ましくない影響があり、電流制御ループ速
スキップし、必要な最小のオフ・サイクルのみを
の追加や遮蔽なしでこの数値を実現しているの
度が低下する可能性があります。
実行して、内蔵の上側スイッチ昇圧段電圧を維
で、スイッチング ・レギュレータの設計にとって
持します。
LT8614 Silent Switcher レギュレ ータは、 遮
飛躍的な前進を意味しています。
EMI の問題に対する新しい解決策
EMI の問題に対する実証済みの解決策は、回
路全体の遮蔽箱を使用することです。もちろん、
蔽箱を使わずにその目的とする効果が得られま
同時に、最小動作入力電圧は標準でわずか2.9V
す(図 1 参照)。LT8614 は、無負荷でのレギュ
(最大 3.4V)なので、ドロップアウト状態のデ
レーション時にデバイスが消費する全電源電流
バイスを使用して 3.3V レールに電力を供給で
が 2.5µA という低 IQ を特長としています。これ
きます。LT8614 の全スイッチ抵抗は類似製品
は常時稼働システムでは重要な特性です。
図 1.LT8614 Silent Switcher は EMI/EMC 輻射を最小限に抑えつつ、
図 2.LT8614 の基板は電波暗室で CISPR25
最大 3MHz の周波数まで高い効率を実現します。
放射規格に適合します。ノイズフロアは
LT8614 の放射性輻射と同等です。
60
4.7µF
VIN1
1µF
EN/UV
GND1
PG
10nF
VIN2
GND2
LT8614
SYNC/MODE
TR/SS
BST
41.2k
0.1µF 4.7µH
4.7pF
INTVCC
RT
VOUT
5V
4A
SW
BIAS
1µF
1M
47µF
FB
GND
VIN = 12V
VOUT = 3.3V
IOUT = 2A
fSW = 700kHz
1µF
243k
INTENSITY (dBµV/m)
VIN
5.8V TO 42V
40
20
0
LT8614
NOISE FLOOR
fSW = 1MHz
–20
30
84.1
138.1
192.2
246.2
FREQUENCY (MHz)
300
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 25
LT8614 は、現時点での最新式スイッチング ・レギュレータと比較した場合、20dB 以上 EMI を
減少させています。こうしたレギュレータと比較して、 LT8614 は 30MHz を超える周波数範囲
で EMI の減少量が 10 倍であり、しかも最小オン時間や最小オフ時間、あるいは同等な基板面
積での効率を犠牲にすることはありません。部品の追加や遮蔽なしでこの快挙を成し遂げてい
るので、スイッチング ・レギュレータの設計にとって飛躍的な前進を意味しています。
入力 12V、 出力 3.3V/2A、 固定スイッチング
RADIATED NOISE LEVEL (dBμV)
60
50
周波数 700kHz という条件で電波暗室で行っ
40
た測定結果を図 2 に示します。LT8614 Silent
CISPR22 RADIATED CLASS B LIMITS
30
20
10
0
Switcher 技術を現時点での最新式スイッチン
LT8610
VIN = 14V
VOUT = 3.3V
IOUT = 2A
fSW = 700kHz
グ ・レギュレータと比較するため、LT8614 を
LT8610と対比して測定しました(図 3 参照)。こ
のテストは、両方のデバイスの標準デモ基板で
−10
同じインダクタを使用し、同じ負荷および入力電
−20
図 3.LT8614 および LT8610 の
−30
放射性輻射の比較
−40
30
圧条件にして GTEM セルで実施しました。
LT8614
100
FREQUENCY (MHz)
450
LT8614 Silent Switcher 技術を使用した場合、
既に非常に良好な EMI 性能を持つ LT8610 と
比較して、
(特に、扱うのが最も困難な高周波領
域で)最大 20dB 向上していることが分かります。
より小さいので、大電流時は LT8614 の方が効
リケーションでは、良好なバランスを保つこと
率が高くなります。
が可能であり、LT8614 は、より低い EMI が要
LT8614 は、200kHz∼3MHz で動作する外部
周波数に同期させることができます。このデバ
イスは AC スイッチング損失が小さいので、効
率の損失を最小限に抑えて高いスイッチング周
波数で動作できます。多くの自動車環境でよく
見られるような、 EMI の影響を受けやすいアプ
求される場合には AM 帯域以下で動作するこ
とができますし、 AM 帯域より高い帯域で動作
することもできます。動作スイッチング周波数が
700kHz の構成では、標準の LT8614 デモ基板
が CISPR25、クラス 5 の測定でノイズフロア規
格を超えることはありません。
時間領域では、図 4 および図 5 に示すように、
LT8614 はスイッチ・ノードのエッジで安全な
動作を示します。4ns/div でも、LT8614 Silent
Switcher レギュレ ータが 示すリンギングは最
小限に留まっています。対照的に、LT8610 は
図 4 に示すようにリンギングをうまく減衰させて
いますが、ホット・ループ内に蓄積されたエネル
図 4.LT8614 Silent Switcher および LT8610 のスイッチ・
図 5.LT8614 のほぼ理想的な矩形波スイッチ波形により、
図 6.LT8614 および LT8610 のスイッチ・ノードのドロップ
ノードの立ち上がりエッジの比較
低ノイズ動作が可能
アウト動作
LT8610
VSW
5V/DIV
LT8610
VSW
2V/DIV
LT8614
VSW
5V/DIV
LT8614
VSW
2V/DIV
LT8610
LT8614
LT8610
LT8614
VSW
2V/DIV
4ns/DIV
VIN = 8.4V
VOUT = 3.3V
ILOAD = 2.2A
26 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
100ns/DIV
VIN = 13.2V
VOUT = 3.3V
ILOAD = 2.2A
20µs/DIV
設計特集
ギーが LT8614 と比べて高いことが分かります
(図 4)。
入 力 が 13.2V のとき の ス イッチ・ノードと、
LT8614 がスイッチ・ノードでほぼ理想的な矩
形波を実現している様子を図 5 に示します。図 4、
図 5 および図 6 でのすべての時間領域測定は、
500MHz の Tektronix P6139A プ ロ ー ブ を
使用し、プローブ・チップの遮蔽接続を PCB の
GND プレーンの近くで行いました。どちらのデ
バイスも既成のデモ基板が使用されています。
LT8614 の最 小オン時 間は 30ns と短 いので、
ます。LT8614 Silent Switcher レギュレータは、
スイッチング周波数が高い場合でも降圧比を大
単純にパワー IC を選択することで確実に成功
きくすることができます。その結果、最大 42V の
を収めることができます。LT8614 は、現時点で
入力から 1 回の降圧でロジック・コア電圧を供給
の最新式スイッチング ・レギュレータが変換効
遮蔽は必要ありません。n
システム完成時の EMI 試験に合格するため、コ
ンバータの初期設計時には EMI の検討事項に
細心の注意が必要であることはよく知られてい
LT861x ファミリの入力電圧の絶対最大定格で
環境ではドロップアウト動作です。多くの場合、
上 EMI を低減しています。部品の追加や特別な
まとめ
スイッチング ・レギュレータと EMI
ある 42V は、自動車環境や産業環境にとって重
要です。同様に重要なことは、特に自動車内の
率を高めているにもかかわらず、さらに 20dB 以
できます。
すべての電源の成否はプリント回路基板のレイアウ
表面実装技術での最近の入力フィルタ部品の性能
トによって決まります。レイアウトによって、機能上
は、スルーホール部品より優れています。それでも、
の挙動、電磁干渉(EMI)に対する動作、温度特性が
この改善よりも、スイッチング ・レギュレータの動作
状況を通じてサポートされている必要がありま
決まります。スイッチング電源のレイアウトは特別な
スイッチング周波数が高くなるペースの方が速くなっ
す。LT8614 Silent Switcher レギュレータは、
ことではありませんが、その一方で初期の設計工程
ています。効率が高くなり、最小オン時間と最小オフ
で見落とされることがよくあります。機能上の要件と
時間が短くなると、スイッチの高速遷移によって高調
に近い状態を維持します。代替デバイスでは低
EMI 要件を満足する必要があるので、電源の機能上
の安定性に対して適していることは、通常は EMI 輻
波含有量が多くなります。スイッチング周波数が倍増
電圧ロックアウト電圧が高く、最大デューティ・
射に対しても適しています。最初から優れたレイアウ
や遷移時間など、スイッチング周波数以外の全パラ
サイクル によって制 限されます が、LT8610/
トを設計すれば追加コストはかかりません。それどこ
メータは一定のままです。広帯域 EMI は、スイッチン
ろか、EMI フィルタ、機械的な遮蔽、EMI の試験時間、
グ周波数が 10 倍高くなると輻射量が 20dB 増加する
重要な 3.3V ロジック電源はコールド・クランク
この場合には LT861x ファミリの理想的な動作
LT8611/LT8614 の各デバイスは最小 3.4V ま
するたびに EMI は 6dB 悪化しますが、スイッチ容量
プリント回路基板の修正が不要になることで、コスト
1 次ハイパス・フィルタのように振る舞います。
削減を実現できます。
オフ・サイクルのスキップを開始します。これに
実践知識の豊富な PCB 設計者はホット・ループを
EMI 輻射には、伝導輻射と放射性輻射の 2 種類があ
小さくして、遮蔽グランド層を能動層にできるだけ近
より、図 7 に示すような理想的なドロップアウト
ります。伝導輻射は製品に接続する配線やトレース
づけて使用します。そうは言っても、最小のホット・
で動作し、図 6 に示すように必要になるとすぐに
動作になります。
に乗ります。ノイズは設計回路内の特定の端子また
ループ・サイズは、デカップリング用部品にエネル
はコネクタに集中するので、優れたレイアウトとフィ
ギーを適度に蓄積するために必要なデバイスのピン
ルタ設計により、伝導輻射要件の順守は、多くの場
配列、パッケージ構造、熱設計要件、およびパッケー
合、開発過程の比較的早期に保証できます。
ジ・サイズによって決まります。事態をさらに複雑に
しかし、放射性輻射は別の問題です。電流を伝える
しているのは、標準的な平面プリント回路基板では、
基板上のすべてが電磁界を放射します。基板上のす
図 7.LT8614 のドロップアウト性能。他の LT861x デバイスと
同様、最小 3.4V で動作し、必要になるとすぐにオフ・サイクル
のスキップを開始します。
べてのトレースはアンテナであり、すべての銅プレー
ンは鏡です。純然たる正弦波または DC 電圧以外は、
すべて広い信号スペクトルを発生します。注意深く設
計した場合でも、システムが試験されるまで、放射性
VIN
2V/DIV
VIN
VOUT
複数の DC/DC スイッチ・モード・レギュレータを並
列接続して電流分担を行ったり、より大きな出力電力
質的に完了するまでは正式に実施できません。
を得ようとすると、干渉とノイズの潜在的な問題が悪
多くの場合、特定の周波数での強度または一定範囲
化する可能性があります。すべてのレギュレータがほ
の周波数での強度を減衰することによって EMI を低
減するためにフィルタが使用されます。空間を介して
伝達されるエネルギーの一部(放射性輻射)は、磁気
遮蔽材料としてシートメタルを追加することによって
タを追加することによって弱めます。EMI を除去する
ことはできませんが、他の通信部品やデジタル部品
20Ω LOAD
250mA IN REGULATION
磁気結合またはアンテナ結合の影響が大きくなるこ
とが理由です。
かりません。また、放射性輻射の試験は、設計が実
減衰します。PCBトレース上に乗っている低周波部分
100ms/DIV
することです。これは、周波数が高くなるほど不要な
輻射がどの程度悪化するのか設計者にはまったく分
(伝導輻射)は、フェライトビーズやその他のフィル
VOUT
2V/DIV
30MHz を超えるトレース間の磁気結合またはトラン
ス方式の結合によって、すべてのフィルタ効果が減少
が許容できるレベルまで減衰させることは可能です。
さらに、いくつかの規制機関は、規則の順守を保証
ぼ同じ周波数で動作(スイッチング)していると、回
路内の複数のレギュレータによって生成されたエネ
ルギーの合計がその周波数と高調波に集中します。
このエネルギーが存在することは、特に、プリント回
路基板やその他のシステム基板上にある残りの IC が
互いに近くに配置されていて、この放射エネルギー
の影響を受けやすい場合、懸念材料になります。この
ことは特に、実装密度が高く、多くの場合はオーディ
オ、RF、CAN バスや各種の受信システムに隣接して
いる自動車用システムで問題になります。
するために標準規格を実施しています。
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 27
LTspice IV の最新情報
Gabino Alonso
新着ビデオ「Stability of Op Amp Circuits」
www.linear-tech.co.jp/solutions/4449
Mac OS X でネイティブ化
を知っていたとしても、シミュレーション・ツー
LTspice for Mac OS X 10.7+
ルによって状況と原因を正確に把握できればそ
プ ラ ット フ ォ ー ム が www.
linear-tech.co.jp/LTspice で
入手できるようになりました。こ
の新リリースの性能と特長は Windows 版プラッ
トフォームと同等です。メニューにアクセスする
には、右クリックするか、ショートカットを使用し
れに越したことはありません。このビデオは、AC
解析を使ってオペアンプ帰還回路の開ループ利
得と位相を LTspice IV で観察する方法を示し
ています。このビデオで説明しているのは、オペ
アンプ回路の開ループ伝達関数を求めて位相
余裕を測定できるように、正しい動作点を維持
• LTM4630:高効率 8 相 140A 降圧レギュレータ
(入力:4.5V∼15V、出力:1V/140A)
www.linear-tech.co.jp/LTM4630
フライバック・コントローラ
• LT8302:オプトカプラ不要の µPower フライ
バック・コンバータ(入力:10V∼30V、出力:
5V/2.2A)www.linear-tech.co.jp/LT8302
しながらオペアンプ回路の帰還ループを切断す
LEDドライバ
ラインで入手できます。
る方法です。このビデオは、設計回路の位相余
• LT3955:PWM 調光回路を内蔵した 20W
ブログ更新情報
て、よくあるいくつかの技法についても述べてい
LTspice に関する技術ニュース、 内部関係者
ます。
ます。Mac OS X ショートカットのガイドもオン
のヒント、 および 興 味 深 い 視 点 につ いては、
LTspice の ブ ロ グ(www.linear-tech.co.jp/
裕を改善して回路の勘所を向上する方法につい
厳選デモ回路
昇圧 LEDドライバ(入力:5V∼60V、出力:
67V の LED 列 /300mA)
www.linear-tech.co.jp/LT3955
昇圧レギュレータ
• LTC3788-1 のデモ回路:RSENSE で電流を検出
solutions/LTspice)を参照してください。
リニアテクノロジーのデバイスを使用しているシ
ミュレーション例を網羅する一覧表については、
ブログにアップした新しいビデオ、
「Stability of Op
(入力:4.5V∼24V、出力:24V/5A &
www.linear-tech.co.jp/democircuits にアクセ
12V/10A)
www.linear-tech.co.jp/LTC3788-1
Amp Circuits(オペアンプ回路の安定性)」̶ 最新
のビデオ・トピックは www.linear-tech.co.jp/
solutions/4449 で確認できます。
帰還回路は発振する可能性があることは誰もが
知っています。問題を解決するいくつかの裏技
LTspice IV とは
LTspice® IV は、 電源設計の作業を迅速化す
るための高性能 SPICE シミュレータ、 回路図
入 力プ ログラム、 および 波 形 ビューワで す。
LTspice IV では、SPICE を拡張してモデルを加
えたことにより、標準的な SPICE シミュレータと
スしてください。
リニア・レギュレータ
電流検出アンプ
• LT3007:シャットダウン回路を内蔵した 3.3V、
• LT1999-20:高電圧の双方向電流検出アンプ
20mAリニア・レギュレータ(入力:3.8V∼
45V、出力:3.3V/20mA)
www.linear-tech.co.jp/LT3007
• LT3090:電流モニタ回路を内蔵した負電圧
リニア・レギュレータ(入力:–5V、出力:
–1.25V/600mA)
www.linear-tech.co.jp/LT3090
µModule レギュレータ
比較してシミュレーション時間が大幅に短縮さ
• LTM4620A/LTM4676:パワーシステム・マネー
れており、他の SPICE シミュレータでは数時間
ジメント機能を備えた大電流、並列 µModule
を要するほとんどのスイッチング ・レギュレータ
の波形を数分以内に表示できます。
LTspice IV は、www.linear-tech.co.jp/LTspice
で、リニアテクノロジーから無償で入手できま
す。このダウンロードには、LTspice IV の完全
機能版、リニアテクノロジーのパワー製品のマ
クロ・モデル、200 種類を超えるオペアンプ・モ
デル、ならびに抵抗、トランジスタ、MOSFET
のモデルが含まれています。
28 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
する高効率デュアル 12V/24V 昇圧コンバータ
降圧レギュレータ(入力:4.5V∼16V、出力:
1V/100A)
www.linear-tech.co.jp/LTM4620A
• LTM4676:制御およびモニタ用のデジタル・
インタフェースを備えたデュアル 13A
µModule 降圧レギュレータ(入力:5.75V∼
26.5V、出力:1V/13A & 1.8V/13A)
www.linear-tech.co.jp/LTM4676
(入力:–5V∼80V)
www.linear-tech.co.jp/LT1999
• LT6105:1V 電源(0A∼10A) 用の片方向電
流検出アンプ
www.linear-tech.co.jp/LT6105
A/D コンバータ・ドライバ
• LTC6360:入力信号が ±10V の 5V シングル
エンド A/D コンバータ・ドライバ
www.linear-tech.co.jp/LTC6360
発振器
• LTC6991:低周波数の電圧制御発振器
(250Hz∼1kHz)
www.linear-tech.co.jp/LTC6991
設計上のアイデア
モデル、デモ回路、イベント、およびユーザのヒントに関する
最新情報については、以下の Twitter サイトで @LTspice をフォローしてください。
www.twitter.com/LTspice
Facebook ページ(facebook.com/LTspice)で「いいね !」をクリック
厳選モデル
降圧レギュレータ
• LT8610A/AB:静止電流が 2.5µA の 42V、
2.5A 同期整流式降圧レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/LT8610
• LT8614:静止電流が 2.5µA の 42V、4A 同期
チャージポンプ
理想ダイオードおよび Hot Swap コントローラ
• LTC3255:入力電圧範囲が広くフォルト保護
• LTC4221:デュアル・スピード、デュアル・レベ
機能を備えた 50mA 降圧チャージポンプ
www.linear-tech.co.jp/LTC3255
ルでフォルト保護機能を備えたデュアル Hot
MOSFETドライバ
• LTC4440A-5:高速、高電圧、ハイサイド・
整流式降圧 Silent Switcher™ レギュレータ
ゲート・ドライバ
www.linear-tech.co.jp/LT8614
www.linear-tech.co.jp/LTC4440A-5
• LTC3607:デュアル 600mA、15V モノリシッ
Swap™ コントローラ / パワー・シーケンサ
www.linear-tech.co.jp/LTC4221
• LTC4229:理想ダイオードおよび Hot Swap
コントローラ
www.linear-tech.co.jp/LTC4229
• LTC4280:I2C 互換モニタ機能を備えた Hot
Swap コントローラ
www.linear-tech.co.jp/LTC4280
ク同期整流式降圧 DC/DC レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/LTC3607
パワー・ユーザのヒント
サードパーティ・モデルのインポート
LTspice では、新しいシンボルを最初から作成してサードパーティ・モデルに対応で
3. 必要に応じてシンボルを編集し、保存します。
きますが、時間はかかります。以下の簡単な手順に従って、サブ回路に定義されて
新しいシンボル(と関連付けられたサードパーティ・モデル)を回路図で使用するに
いるサードパーティ・モデルに対して新しいシンボルを生成します(.SUBCKT 文)。
1. サブ回路の定義が格納されているネットリスト・ファイルを LTspice で開きます。
(「File」>「Open」またはファイルを LTspice にドラッグ )
は、部品ライブラリ(F2)の AutoGenerated ディレクトリからシンボルを選択し、回
路図内に配置します。
「Create Symbol」を選択します。
2. サブ回路の名前を含む行を右クリックし、
自動シンボル生成機能を使用すれば、新しいシンボルを作成する必要がなく、シミュ
レーションに集中できます。固有の SPICE デバイスを使用するサードパーティ・モ
デルのインポート方法(.MODEL 文)の詳細については、www.linear-tech.co.jp/
solutions/1083 でビデオをご覧ください。
シミュレーションを楽しんでください !
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 29
15mm×15mm×4.32mm のパッケージに収容された
完全な 20V、20A 高性能 µModule DC/DC レギュレータ
Sam Young
LTM4637 は、15mm×15mm×4.32mm の小型 LGA パッケージに収容された完全な 20A 高性能スイッチ・
モード電源です。コントローラ、パワー MOSFET、インダクタ、および補償回路が低背型パッケージ内にす
べて集積されているので、 PCB の底面での使用が可能です。LTM4637 の入力電圧範囲は 4.5V∼20V で、
0.6V∼1.8V の出力電圧範囲をサポートしています。動作周波数範囲は 440kHz∼770kHz で、わずか数個
の外付け部品で最大 20A を供給できます。
汎用性
期および並列化された位相の交互配置が可能
LTM4637 の特長は、プログラム可能なソフト
で、システム内の電圧リップルおよび電流リップ
が下がったらコントローラを再起動します。これ
ルを最小限に抑えることができます。
らの保護機能は、低リスクの設計を確保するの
スタートによる突入電流の制限、ならびに出力
電圧トラッキングによるシーケンシング要件へ
の対応です。その他に、出力電圧パワーグッド・
インジケータ、効率向上を実現するために内部
LDO をバイパスできるようにする外部 VCC ピン
を備えており、パルス・スキップ・モードおよび
軽負荷時の効率を向上するための Burst Mode
動作を選択可能で、さらには内部温度モニタも
内蔵しています。
137°
C で内部回路をシャットダウンさせ、温度
に役立ちます。さらに、一個一個のモジュールで
保護
実施される厳しい電気試験および信頼性試験に
LTM4637 は、過電圧保護、フォールドバック
より、LTM4637 の信頼性を保証できます。
電流保護、および過熱保護機能を備えています。
最小限の設計労力
出力電圧が設定値の 10% を超える過電圧状態
が発生した場合、上側の MOSFET は強制的に
LTM4637 には完全な電源ソリューションが組
オフになり、下側の MOSFET は過電圧状態が
み込まれているので、高性能の設計回路を構築
解消されるまでオンのままです。出力が短絡した
する労力はほとんどかかりません。アプリケー
場合、出力電圧が公称出力レベルの 50% より
ションの設計を完成させるのに必要な外付け部
容易な補償、容易な並列動作
低くなると、最大出力電流は元の値の 1/3 まで
品はわずか数個なので、回路図と PCB レイアウ
LTM4637 の固定周波数電流モード制御と内
徐々に低下し、電流が短絡箇所へ急激に流れ込
トが簡略化されます。
部帰還ループ補償により、広範囲の出力コンデ
むのを制限します。過熱保護回路は約 130°
C∼
ンサで優れた安定性とトランジェント性能を実
現します。また、LTM4637 は差動リモート検出
アンプを内蔵しており、さらには位相同期ルー
プと電圧制御発振器による外部クロックへの同
期機能も備えています。これらの機能により、
LTM4637 はさらに高い負荷電流の要求を満た
図 1.必要な部品がわずか数個の完全な 1.8V、20A レギュレータ
12V
す並列接続モジュールに最適です。LTM4637
の電流モード制御アーキテクチャにより、バラン
CIN
22µF
25V
×2
0.1µF
スのとれた負荷電流分担が確実になり、効率や
VIN
EXTVCC INTVCC PGOOD
COMP
VOUT
TRACK/SS
VOUT_LCL
熱に関する利点を最大限に引き出すことができ
RUN
DIFF_OUT
ます。差動リモート検出アンプによって、並列接
fSET
VOSNS+
MODE_PLLIN
VOSNS–
続した LTM4637 が 負 荷の近 傍で ±1.5% の
高精度出力電圧を安定化することが可能であ
り、 PCB での IR 電圧降下に起因する誤差を補
償できます。内蔵の位相同期ループにより、同
30 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
124k
TEMP
LTM4637
SGND
GND
VFB
+
82pF
RFB
30.1k
470µF
2.5V
100µF
6.3V
X5R
×2
VOUT
1.8V
20A
設計上のアイデア
LTM4637 は、少ない実装面積で最高水準の性能が要求されるアプリケーション
向けの完全な POL 電源ソリューションで、設計の労力が最小限で済み、ユーザが
調整可能な機能の汎用性を備えています。電力損失と熱抵抗が小さいので、位相
ごとに最大 20A の負荷電流を可能にする一方で、電流モード制御により、並列に
構成して負荷電流を増やすことができます。
図 2.図 1 の 1.8V レギュレータの効率
図 3.図 1 の解決策での最大負荷条件での LTM4637 の熱走査
95
EFFICIENCY (%)
90
85
80
75
70
65
0
2
4
6
8 10 12 14 16 18 20
ILOAD (A)
TA = 25 C、空気流なし、ヒートシンクなし
ILOAD = 20A、VIN = 12V、VOUT = 1.8V
たとえば、各設定ピンとグランドの間に 1 本の
µModule レギュレータの抜群の熱性能を図 3
抵抗を接続して出力電圧とスイッチング周波数
に示します。強制空冷なしで 20A という大量の
をそれぞれ設定し、その後、入力コンデンサと
負荷電流を供給している場合でも、LTM4637
出力コンデンサを選択して電圧リップルと電流
は 0.35in2 未満の実装面積から 36W の大出力
リップルの要件を満たせば、基本設計は完了で
電力を容易に実現し、熱負荷が過剰になるリス
す。LTM4637 は設計の全労力を最小限に抑
クはありません。内部温度をさらに下げるには、
えます。このことは、製品化までの時間が鍵とな
パッケージ上面の露出金属にヒートシンクを取
る場合や、電源の設計リソースが限られている
り付けた上に、強制空冷状態にします。
場合に重要な要素となります。標準的な 12V 入
力、1.8V/20A 出力のアプリケーション回路とそ
まとめ
の効率を図 1 および図 2 に示します。これらは
LTM4637 は、少ない実装面積で最高水準の
LTM4637 を使用した設計が簡単で高性能であ
性能が要求されるアプリケーション向けの完全
るという利点を実証しています。
な POL 電源ソリューションで、設計の労力が最
小限で済み、ユーザが調整可能な機能の汎用
並外れた熱性能
性を備えています。電力損失と熱抵抗が小さい
並外れた熱性能により、電流供給能力が向上し
ので、位相ごとに最大 20A の負荷電流を可能に
ます。これは全ソリューション・コストの削減と
する一方で、電流モード制御により、並列に構成
高電流密度アプリケーションでの信頼性の向上
して負荷電流を増やすことができます。内蔵の
につながります。LTM4637 は最大 20A を供給
保護機能と出荷前の厳しい電気試験により、信
できる一方で、消費電力と熱抵抗が小さいので
頼できる低リスクのソリューションを保証できま
冷却状態を維持できます。図 1 の回路構成での
す。n
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 31
2 次側同期整流器ドライバを内蔵した 5 ピン SOT-23 の
フライバック・コンバータによる電流供給能力の向上と
熱設計の簡素化
Wei Gu
フライバック・コンバータでは、大電流アプリケーションでの電流レベルが、出力整流ダイオードで発生する
熱によって制限されます。この制限を解除する方法は、ダイオードを、電圧降下がはるかに小さい MOSFET
に置き換えて、整流器で発生する熱を大幅に減らすことです。熱放散の減少により、出力電流供給能力と効
率が向上し、熱設計が簡単になります。LT8309 は 2 次側同期整流式 MOSFETドライバで、MOSFET のド
レイン - ソース間電圧を検出して MOSFET のオンまたはオフを決定することで出力ダイオードの動作を再
現するので、効率の低い整流器ダイオードを置き換えることができます。
LT8309 は、リニアテクノロジーのオプトカプラ
ンになり、電流がゼロまで減少したらすぐにオフ
DRAIN ピンの電圧定格は 150V なので、広い
入力電圧設計にも適しています。
不要境界モード・フライバック IC 製品群(1 次側
になる必要があります。LT8309 の高速コンパ
コントローラの LT3748 など)のいずれかと組
レータは、要求されるほぼ瞬時の動作を示しま
み合わせることにより、最小限の部品点数で高
す。この電流検出コンパレータは、MOSFET の
性能の絶縁型電源を作り出すことができます。
ドレイン電圧をモニタします。ボディ・ダイオー
LT8309 の内部 LDO は、INTVCC ピンで 7V 出
力を生成することにより、MOSFET のゲート駆
動に対応します。プルダウン抵抗が 1Ω の強力な
ドが導通し始めると、ドレイン電圧はグランドよ
5V、8A 絶縁型電源
ゲート駆動により、 MOSFET のオンとオフが高
り十分低い電位まで低下するので、コンパレー
速になるので、効率が向上します。
低電圧、大電流、少部品点数のフライバック電
タが作動して MOSFET をオンします。最小オ
源を図 1 に示します。従来の出力ダイオードは、
ン時間経過後、LT8309 は MOSFET のターン
LT8309、1 個の MOSFET、および数個の小型
効率をダイオードだけの設計と比較して図 2 に
オフ作動点に達するのを待って、 MOSFET を
外付け部品で構成される理想ダイオードによっ
示します。図 3 および図 4 に示すように、高い効
オフします。ターンオフ作動点は、デバイスの
て置き換えられています。
率のおかげで、LT8309 ベースの設計回路周辺
DRAIN ピンと MOSFET のドレインの間に接
では、ダイオードだけの設計回路と比べて基板
続している外付け抵抗によって調整できます。
の動作温度がかなり低く保たれています。
ダイオードの機能を果たすMOSFETは、ボディ・
ダイオードが電流の導通を開始したらすぐにオ
図 1.低電圧大電流のフライバック・コンバータ
VIN
36V TO
72V
PA1735NL
10µF
402k
EN/UVLO
15.8k
VIN
D2
LT3748
RFB
RREF
COUT : LMK325ABJ107MM
D1: CMMRIU-02
D2: SMBJ85A
D3: 1N4148
D4: BAV21W-7-F
60.4k
D5: CMZ5920B
M1: BSC900N20NS3
M2: BSC028N06LS3
1µF
TC
GATE
SS
VC
SENSE
GND INTVCC
12.1k
15nF
•
D4
10Ω
147k
2k
M1
M2
VOUT +
5V, 8A
DRAIN
INTVCC
GATE
D5
GND
4.7µF
13mΩ
•
LT8309
VCC
COUT
100µF
×6
1µF
6.04k
D3 100Ω
4.7µF
32 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
•
D1
2.2nF
VOUT–
設計上のアイデア
LT8309 は、リニアテクノロジーのオプトカプラ不要境界モード・フラ
イバック IC 製品群(1 次側コントローラの LT3748 など)のいずれかと
組み合わせることにより、最小限の部品で高性能の絶縁型電源を作り
出すことができます。
VCC ピンの定格は 40V なので、LT8309 は、出
まとめ
力電圧つまり MOSFET の整流後のドレイン電
LT8309 は、SOT-23 パッケージの使いやすい
1 つと組み合わせた場合は、高効率、大電流の
高速 2 次側フライバック同期整流器ドライバで
絶縁型電源の構築に必要な部品点数が最小限
す。LT8309 を、リニアテクノロジーのオプトカ
で済み、熱設計が簡略化されます。n
圧から駆動できます。VCC ピンをフライバック・
コンバータの出力に接続すると、出力短絡状態
時に LT8309 はオフになるので、MOSFET の
ボディ・ダイオードが短絡状態に対処する必要
プラ不要境界モード・フライバック IC 製品群の
があります。このため、MOSFET には余計な熱
的要件が加わります。代わりに、図 1 に示すよう
に VCC を MOSFET のドレイン電圧に接続する
と、短絡時には VCC が VIN/N に等しくなるので、
短絡時にも LT8309 が動作可能になります。短
絡電流はボディ・ダイオードではなくMOSFET
を流れます。
PDS760ショットキ・ダイオード
図 3.ダイオード PDS760 を使用した 5V/5A 出力での熱画像
図 2.LT8309 ベ ース のフライ
バック・コンバータと従来の 2 次
92
90
側ダイオード整流器を使用した
同じコンバータとの効率の比較
EFFICIENCY (%)
88
LT8309 & MOSFET
86
84
82
DIODE
80
VIN = 36V
VIN = 48V
VIN = 72V
78
76
0
1
2
3
4
5
ILOAD (A)
6
7
8
9
LT8309とFET
図 4.LT8309 を使用した方が 5V/5A 出力がはるかに低温で動作することを示す熱画像
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 33
高速 A/D コンバータのサンプリング時トランジェント
Doug Stuetzle
高速アナログ・デジタル・コンバータ(A/D コンバータ)は、アナログ信
号インタフェースの境界ではトラック・ホールド・デバイスです。した
がって、A/D コンバータはサンプリング・コンデンサとサンプリング・ス
イッチを内蔵しています。これらの素子は入力信号を交互に追従して
入力信号電圧を交互に保持するので、これらの素子の動作によって少
量のトランジェント電圧とトランジェント電流が発生します。これらのト
ランジェントによって、A/D コンバータのアナログ入力を駆動する回路
に歪みが生じます。
力から切り離し、コンデンサの電圧を量子化す
るデジタル回路にコンデンサの電圧を与える段
階です。サンプル・クロックのあるエッジ(たとえ
ば、立ち上がりエッジ)からトラック・フェーズが
始まり、次のエッジ(たとえば、立ち下がりエッ
ジ)からホールド・フェーズが始まります。
トラック・フェーズからホールド・フェーズへの遷
移は 2 つの遷移状態から成ることに注意してくだ
さい。遷移状態が存在するのは、3 つのスイッチ
が状態を一度に変更するのではなく、順番に変
これらの影響を特に受けやすいのが高分解能
入力トラック・ホールド・モデル
A/Dコンバータです。入力電圧範囲が2Vピーク・
トラック・ホールド機能を実装するための入力回
フェーズへの遷移を、遷移状態とともに図 2 に示
路を図 1 に示します。これは簡略化されたモデ
します。サンプル容量とスイッチ容量でのトラン
トゥ・ピークの標準的な 16 ビット A/D コンバー
タについて考えます。デジタル出力に 1 ビット分
作用するために必要なアナログ入力電圧の変化
は、約 30µV です。
これらの高性能コンバータはほとんどの場合、
差動入力デバイスですが、ここでの分析は、トラ
ンジェントの影響を示すためにシングルエンド
回路モデルから始めます。これらの影響が正確
な差動設定にどの程度出るかは、 A/D コンバー
タを駆動する信号源と A/D コンバータ自体の同
相除去比に大きく依存します。
更するからです。
トラック・フェーズからホールド・
ルですが、入力波形を歪ませる可能性がある電
ジェント電流の方向に注意してください。場合に
荷移動の影響を説明する役割を果たします。
よっては、スイッチ制御電圧が上昇 / 下降するの
3 つの CMOS スイッチ、サンプル・コンデンサ、
に応じて電流の方向が変わります。
オペアンプがあります。この回路は 100MHz 以
トラック・フェーズからホールド・フェーズへの
上で動作可能なサンプル・クロックによって駆動
遷移時に、サンプル・コンデンサに過渡的な電
されます。サンプル・クロックは 2 つのフェーズ
荷がかかり、ホールド・フェーズの開始時にこの
が交互に出現します。1 つはトラック・フェーズ
コンデンサの最終電圧が変わることがあります。
で、入力アナログ電圧がサンプル・コンデンサに
こうした不規則な電荷が生じる理由は、 CMOS
印加されている段階であり、もう1 つはホールド・
スイッチ に特 有 の チャネル 容 量です。3 つ の
フェーズで、サンプル・コンデンサをアナログ入
CMOS スイッチには、それぞれゲートとチャネ
ルの間に寄生容量が存在します。スイッチの制
御電圧が変化すると、少量の電荷がチャネルに
図 1.シングルエンド信号の場合の
SW3
• スイッチ SW1 および SW2 は閉じています。こ
れらのスイッチの制御電圧は DC1.8V です。
0V
CSAMPLE
RG
SW2
トラック・フェーズでは、状態は以下のとおりです。
0V
VC
VG
移ります。
ROPEN
トラック・ホールド・モデル
NODE B
NODE A
SW1
ROPEN
ROPEN
VC
0V
スイッチのチャネル容量は 1.8V に充電されま
–
+
す。
DIGITIZER
• スイッチ SW3 は開いています。このスイッチ
の制御電圧はDC0Vです。
このスイッチのチャ
ネル容量は 0V に充電されます。
34 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
設計上のアイデア
図 2.トラック・フェーズから遷移状態を経由してホールド・フェーズへの遷移
ROPEN
SW3
(a)
トラック・フェーズ
0V
以下は、トラック・フェーズからホールド・フェー
+
CSAMPLE
+
RG
ズへの遷移を構成する一連の事象です。
1. SW1 の制御電圧 VC1 は、 DC0V に減少して
+
SW2
VG
0V
VC2
NODE A
+
SW1
ROPEN
いきます。
ROPEN
–
NODE B
+
VC1
DIGITIZER
0V
• ノード B の電圧は SW1 の電荷によって低下
します。
ROPEN
• SW1 のチャネル上の電荷の一部はサンプ
ル・コンデンサに流れ込みます。この結果、
サンプル・コンデンサの電荷は増加します。
SW3
(b)遷移状態 1
+
• サンプル・コンデンサ両端の電圧が増加し
0V
ます。
VC2
i
i
CSAMPLE
+
RG
2. SW2 の制御電圧 VC2 は、 DC0V に減少して
いきます。
+
SW2
VG
0V
i
–
NODE B
i
NODE A
+
SW1
ROPEN
• ノード A の電圧は SW2 の電荷によって低下
ROPEN
DIGITIZER
0V
します。
• SW2 のチャネル上の電荷の一部はサンプ
ル・コンデンサに流れ込みます。この結果、
サンプル・コンデンサの電荷は減少します。
• サンプル・コンデンサ両端の電圧が減少し
ROPEN
SW3
(c)遷移状態 2
+
ます。
i
0V
3. SW3 の制御電圧 VC3 は、DC1.8V に増加して
RG
いきます。
• ノード A の電圧は SW3 のチャネル容量に
0V
i
+
i
SW2
VG
CSAMPLE
+
–
NODE B
i
NODE A
+
SW1
ROPEN
よって上昇します。
ROPEN
DIGITIZER
0V
• サンプル・コンデンサ両端の電圧が増加し
ます。
• この一連の事象の最後に、サンプル・コンデ
ンサの電荷(したがって電圧)が変化します。
ROPEN
SW3
(d)ホールド・フェーズ
i
i
0V
RG
SW2
VG
+
i
CSAMPLE
+
+
NODE B
0V
VC3
–
i
NODE A
+
SW1
ROPEN
ROPEN
DIGITIZER
0V
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 35
アナログ信号源と A/D コンバータ入力を結ぶ入力回路網は、ここで説明した過渡的な電荷の影響の
一因となります。特に、電荷を蓄積するか電荷の伝送を遅らせる素子は、スイッチの状態が変わると
余計な副作用が生じることがあります。一般に、入力回路網はドライバ・アンプ、簡単な RC 回路網(通
常はローパス・フィルタ)、およびある程度の長さの伝送線路で構成されます。伝送線路がある程度の
長さになるのは、特に A/D コンバータのパッケージが小型になると避けられません。
図 3.トラッキング・フェーズの終わり、スイッチの寄生容量がある場合
1.2
5
1
4
SAMPLE CAP CURRENT
OP AMP OUT
SAMPLE CAP VOLTAGE
SOURCE IN
SW1, SW2, SW3
0.6
3
2
0.4
1
0.2
0
–1
0
–0.2
CURRENT (mA)
VOLTAGE (V)
0.8
4.5
5
5.5
6
6.5
7
TIME (ns)
7.5
8
8.5
9
9.5
–2
図 4.トラッキング・フェーズの終わり、スイッチの寄生容量、RC 回路網、および 200ps の伝送線路がある場合
1.2
5
1
4
SAMPLE CAP CURRENT
OP AMP OUT
SAMPLE CAP VOLTAGE
SOURCE IN
SW1, SW2, SW3
0.6
0.4
3
2
1
0
0.2
–1
0
–0.2
CURRENT (mA)
VOLTAGE (V)
0.8
4.5
5
5.5
6
6.5
7
TIME (ns)
7.5
8
8.5
9
9.5
–2
1.15
1.14
1.13
1.12
1.11
1.10
1.09
1.08
1.07
1.06
1.05
1.04
1.03
1.02
1.01
1.00
5
4
3
2
SAMPLE CAP CURRENT
SAMPLE CAP VOLTAGE
SW1, SW2, SW3
1
0
–1
4.5
5
5.5
36 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
6
6.5
7
TIME (ns)
7.5
8
8.5
9
9.5
–2
CURRENT (mA)
VOLTAGE (V)
図 5.サンプル・コンデンサの電圧でのトランジェントの詳細
設計上のアイデア
時間領域のモデリング
入るまでにトランジェントが安定化する場合、サ
標準的な入力トラック・ホールド回路の時間領
ンプル・コンデンサの最終的な電圧に与えるトラ
にさらに影響する場合があることも分かったの
ンジェントの影響はなくなります。図 5 では、サ
で、この電圧は、そのサンプリングの間に A/D コ
ンプル・コンデンサ電圧でのこれらのトランジェ
ンバータのデジタル量子化部に伝達されます。
域動作は、PSPICE でモデル化できます。前提と
なるパラメータを以下に示します。
• 入力信号 = 5MHz の正弦波、1V ピーク
ントをより詳細に示します。
• サンプル容量 = 2pF
実際には、3 回のスイッチ切り換え間隔は 2ns で
• スイッチのチャネル容量 = 0.2pF
はなく、100ps 程度です。この短期間では、最後
• スイッチの制御電圧 = 0V/1.8V
のスイッチが閉じてサンプル・コンデンサの電圧
• スイッチのランプ時間 = 100ps
が捕捉されるまでにトランジェントが減衰する時
2ns の間隔でスイッチングを 3 回行うと、スイッ
チングの影響がより明らかになります。最初に
SW1 が 5ns のときに開くそれぞれのスイッチン
グ事象を図 3 に示します。7ns には SW2 が開き、
す。トランジェントのセトリングがこの最終電荷
複数回のサンプリングの影響
ここまでは、1 回のサンプリングに関する副作用
の影響について調べてきました。次の段階では、
視野を広げて、サンプル・コンデンサの電圧が
数回のサンプリングの瞬間での入力電圧とどの
間はほとんどありません。伝送線路構造体から
のエコーに関しては、このことが重要になります。
この挙動を図 6 に示します。
程度異なるかを調べます。この様子を図 8 に示
します。入力信号は 1MHz の正弦波で、サンプ
ル・レートは 20Msps です。各トラック・フェーズ
の終わりは青い縦方向の点線で示しています。
サンプル・コンデンサでのトランジェントの詳細
SW3 が 9ns に閉じます。トラッキング・フェーズ
を図 7 に示します。サンプル・スイッチからの電
が完了すると、オペアンプの出力電圧がサンプ
荷注入がサンプル・コンデンサに蓄積される最
ル・コンデンサの電圧と一致することに注意して
終電荷に影響することを示しています。これはト
ください。ただし、この電圧は入力電圧とは異な
ラック・ホールド回路に関する典型的な問題で
サンプル・コンデンサの誤差電圧は、サンプル・
コンデンサの電圧と入力信号電圧の差として定
義されます。
ります。スイッチによって注入された電荷がその
理由です。
図 6.スイッチの高速切り換え動作
1.2
5
入力回路網は、前述した過渡的な電荷の影響
1
4
の一因となります。特に、電荷を蓄積するか電
0.8
変わると余計な副作用が生じることがあります。
一般に、入力回路網はドライバ・アンプ、簡単
な RC 回路網(通常はローパス・フィルタ)、お
0.6
0.4
に A/D コンバータのパッケージが小型になると
–0.2
避けられません。ディスクリート部品の回路網か
図 4 でこれらの副作用を調べると、入力信号に
ます。SW1 が開くと入力信号は初期トランジェン
トを示し、このトランジェントのエコーが 400ps
間隔で現れます。あまり明確ではありませんが、
サンプル・コンデンサでのトランジェントとその
エコーは引き続き存在しています。スイッチ切り
換えの間隔が十分にあり、ホールド・フェーズに
VOLTAGE (V)
トランジェントが加わっていることが分かります。
パス・フィルタと 200ps の伝送線路で構成され
0
–1
4.6
4.7
4.8
4.9
5
5.1
TIME (ns)
5.2
5.3
5.4
5.5
5.6
–2
図 7.スイッチを高速で切り換えた場合のサンプル・コンデンサでのトランジェントの詳細
す。このため、差動の伝送線路が使用されます。
この場合、入力回路網は π セクション RC ロー
1
0
す。伝送線路がある程度の長さになるのは、特
まま(常に差動で)伝達するには距離が関係しま
2
0.2
よびある程度の長さの伝送線路で構成されま
ら A/D コンバータの入力ピンへ入力信号をその
3
SAMPLE CAP CURRENT
OP AMP OUT
SAMPLE CAP VOLTAGE
SOURCE IN
SW1, SW2, SW3
CURRENT (mA)
荷の伝送を遅らせる素子は、スイッチの状態が
VOLTAGE (V)
アナログ信号源と A/D コンバータ入力を結ぶ
1.13
1.12
1.11
1.10
1.09
1.08
1.07
1.06
1.05
1.04
1.03
1.02
1.01
1.00
0.98
0.97
SAMPLE CAP CURRENT
SAMPLE CAP VOLTAGE
SW1, SW2, SW3
4.6
4.7
4.8
4.9
5
5.1
TIME (ns)
5.2
5.3
5.4
5.5
5.6
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
–1
–2
–3
CURRENT (mA)
入力回路網の影響
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 37
A/D コンバータの入力に配置されるトラック・ホールド回路は、駆動する回路に過渡的な
電荷を必ず注入します。これらの電荷は、サンプリングの瞬間にサンプル・コンデンサに
毎回蓄積される電圧の精度に影響する可能性があります。重要な間隔は、トラック・フェー
ズからホールド・フェーズに遷移するための所要時間です。この時間中にスイッチが切り
換わるので、サンプル・コンデンサに蓄積される電圧は不安定になる可能性があります。
対象となる実際の誤差は、ホールド・フェーズの
図 8.サンプル・コンデンサの値と信号源電圧
終了時のサンプル・コンデンサの電圧とトラック・
1.2
フェーズの終了時の入力電圧の差から成ります。
1
これら一連のサンプリング誤差を信号の 1 周期
0.8
0.6
AMPLITUDE (V)
にわたってプロットした結果を図 9 に示します。
真の入力信号からのずれは、時間変動量である
ことに注意してください。除去したり無視したり
できる DC オフセットを表しているわけではあり
ません。誤差は、ほとんどの場合、デジタル化さ
0.4
0.2
0
–0.2
–0.4
–0.6
れた A/D コンバータ出力の多重高調波信号お
SAMPLE CAPACITOR ERROR VOLTAGE
TRACK PHASE END
VADC(IN)
–0.8
よび多重スプリアス信号として現れます。
–1
–1.2
同相と差動
0
100
200
300
400
500
TIME (ns)
600
700
800
900
1000
ここまでの調査をすべて行うと、出力信号でのト
ランジェントの影響を大幅に低減する重要な要
因があることが分かります。この要因は、A/D コ
ンバータの同相除去性能です。A/D コンバータ
の入力は差動であり、差動入力信号を受け付け
コンデンサに蓄積される電圧は不安定になる可
方向に反射させたりする入力回路素子によって、
能性があります。
電荷の乱れは悪化します。通常、後者の影響は、
ます。ただし、スイッチ切り換えの影響は差動で
幸い、A/D コンバータの入力は通常は差動であ
はありません。影響は入力回路の両側で同じで
り、望ましくないトランジェントは同相です。にも
す。切り換え時の電荷移動は必ず同相なので、
かかわらず、大量の電荷を蓄積したり電荷を両
これは A/D コンバータによって除去されます。デ
120
まとめ
115
重要な間隔は、トラック・フェーズからホールド・
フェーズに遷移するための所要時間です。この
時間中にスイッチが切り換わるので、サンプル・
38 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
ERROR (mV)
A/D コンバータの入力に配置されるトラック・
れる電圧の精度に影響する可能性があります。
端に、伝送線路に対して反射する回路素子があ
図 9.サンプリングの瞬間での誤差電圧
A/Dコンバータの同相除去性能にも依存します。
グの瞬間にサンプル・コンデンサに毎回蓄積さ
る結果として現れます。特に、伝送線路の入力
なります。
な影響は、不規則な電荷の大きさだけではなく、
を必ず注入します。これらの電荷は、サンプリン
とホールド・フェーズの間の遷移時間内に収ま
る場合、これらの素子は反射の大きさの一因と
ジタル表現出力信号でのこうした歪みの最終的
ホールド回路は、駆動する回路に過渡的な電荷
伝送線路の往復の遅延時間がトラック・フェーズ
前述したすべてのモデリングは、LTspice と簡
単な入力回路モデルを使用して行いました。概
説した歪みの大きさやスペクトル分布を推定す
る実用的な方法はありませんが、分析結果から、
過渡的な電荷の蓄積および反射を最小限に抑
110
105
100
100
0 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
TIME (ns)
えれば歪みを減らすことができます。n
新製品の概要
新製品の概要
LTC3255 は、最大 –52V までの逆極性入力電
トランジェント応答、および出力ノイズ(10Hz∼
60V のフォルト保護機能を備えた 50mA 降圧
源電圧および出力短絡に損傷することなく耐え
100kHzの帯域幅で18µVRMS)が維持されます。
チャージポンプ
ることができます。出力電流制限や過熱保護な
LTC3255 は、最大 50mA の出力電流を供給す
どの安全機能を備えているので、堅牢性がさら
る多用途、高電圧のスイッチト・キャパシタ型降
に向上します。
入力電流を倍増して安定化出力を生成する
圧コンバータです。入力電圧が出力電圧の 2 倍
を超えるアプリケーションでは、容量性チャージ
ポンプにより、同等のリニア・レギュレータのほ
ぼ 2 倍の効率を実現すると同時に、スイッチン
グ DC/DC レギュレータに代わる省スペースで
インダクタ不要の代替手段を提供します。
LTC3255 は、60V/–52V に耐える広い入力電
圧(4V∼48V)から安定化出力(2.4V∼12.5V
可 変 )を 生 成します。無 負 荷 時 に は、Burst
Mode 動作により、VIN の静止電流を 16µA に
®
減少させ、 2:1 の容量性チャージポンプ動作に
よって出力電流供給能力を入力電流の約 2 倍に
増強します。LTC3255 は、産業用制御、ファク
トリ・オートメーション、センサ、監視制御とデー
タ収集(SCADA)システム、ハウスキーピング
電源、および電流ループが 4mA∼20mA の電
流増強電圧レギュレータに最適です。
LTC3255 は、 変 換 比 が 2:1 また は 1:1 の 汎
用降圧チャージポンプとして、または電流を倍
増するシャント・レギュレータとして動作しま
す。通常モードでは、VIN、VOUT、および負荷の
条件に基づいて変換比が選択され、変換モー
ド間の切り換えは自動です。分岐モードでは、
LTC3255 は 2:1 のモードを強 制されるので、
電流源入力から安定化出力電圧を供給できるよ
うになり、負荷では入力電流のほぼ 2 倍の電流
を流すことができます。たとえば、この機能によ
り、4mA の電流ループは、3.3V の安定化出力
電圧を使用して 7.4mA の負荷に絶え間なく電
LTC3255 は低背型(0.75mm)で 3mm×3mm
の 10 ピ ン DFN パ ッ ケ ー ジ お よ び 10 ピ ン
MSOP パッケージで供給され、両方とも裏面に
放熱パッドがあります。
レール・トゥ・レール動作、プログラム可能な
電流制限、および出力電流モニタを特長とした
600mA 負電圧リニア・レギュレータ
LT3090 は、低ノイズ、レール・トゥ・レール動作、
プログラム可能な高精度電流制限、および双方
向出力電流モニタを特長とした 600mA 低ドロッ
プアウト負電圧リニア・レギュレータです。この
デバイスはケーブル電圧降下補償が可能で、容
易な並列接続により大電流や PCB の熱拡散に
対応し、 3 端子のフロート・レギュレータとして
LT3090 は、小型で低コストのセラミック・コン
デンサを含む幅広い出力コンデンサにより、優
れた安定性を示します。このデバイスは、最小
4.7µF の出力コンデンサで安定します。
高精度のプログラム可能な電流制限値を 1 本の
抵抗で調整します。このデバイスの両極性電流
モニタは、出力電流に比例したソース電流また
はシンク電流を流すので、システムのモニタリン
グに役立ちます。
LT3090 は双方向のシャットダウン機能により、
正または負のロジック・レベルで動作できます。
さらに、LT3090 は、その高精度シャットダウン
しきい値により、LT3090 の入力電源電圧また
は正のシステム電源電圧に対してプログラム可
能な UVLO しきい値を有効にすることができ
ます。
構成できます。LT3090 は、負電圧のロジック電
LT3090 の内部保護回路には、フォールドバッ
源、低ノイズの計測器電源や RF 電源、堅牢な
ク特性の高精度電流制限回路、およびヒステリ
産業用電源、およびスイッチング電源のポスト・
シスのあるサーマル・シャットダウン回路があり
レギュレータに最適です。
ます。レギュレータの負荷が正電源に戻る両極
LT3090 の 入 力 電 圧 範 囲 は –1.5V∼–36V で
す。0V∼–32V のレール・トゥ・レール可変出
力電圧を 1 本の抵抗により設定し、ドロップアウ
性電源アプリケーションでは、OUT ピンの電圧
を GND より高く(最大で 40V に)することが可
能であり、LT3090 は安全に起動します。
ト電圧はわずか 300mV(最大負荷での標準値)
LT3090 は低 背 型(0.75mm)で 3mm×3mm
です。このデバイスは、トリミングされた ±1%
の 10 ピ ン DFN パ ッ ケ ー ジ お よ び 12 ピ ン
精度の 50µA 電流源リファレンスを特長としてお
MSOP パッケージで供給され、両方とも裏面に
り、入力、負荷、および温度の全範囲で ±2%
放熱パッドがあります。n
の出力電圧許容誤差を実現します。単位利得の
電圧フォロワ・アーキテクチャにより、出力電圧
に関係なく、出力電圧レギュレーション、帯域幅、
力を供給できます。
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 39
circuits.linear-tech.co.jp からのハイライト
温度、電圧、電流を測定するマルチセル・バッテリ・ガスゲージ
1A
LOAD
CHARGER
3.3V
LTC2943は、バッテリの充電状態、バッテリ電圧、バッテリ電流、および携帯型製品アプリケーショ
1µF
ンでのデバイス自体の温度を測定します。入力電圧範囲が広いので、最大 20V までのマルチセ
ル・バッテリと組み合わせて使用できます。高精度のクーロン・カウンタにより、バッテリの正極と
2k
負荷またはチャージャの間の検出抵抗を流れる電流を積分します。電圧、電流、および温度は内
蔵の 14 ビット No Latency ∆∑™ A/D コンバータにより測定されます。測定結果は内蔵の I2C/
SMBus インタフェースを介してアクセス可能な内部レジスタに格納されます。
www.linear-tech.co.jp/solutions/4467
2k
LTC2943
2k
VDD
ALCC
µP
SDA
SENSE+
SENSE–
SCL
RSENSE
50mΩ
+
GND
VIN
2.8V TO 32V
3:1
470pF
10µF
•
SW
EN/UVLO
LT8302
1µH
VOUT
2.8V∼32V 入力、5V/2.9A 出力の絶縁型フライバック・コンバータ
および
4V∼42V 入力、48V/1.4A 出力の昇圧コンバータ
LT8302 は、モノリシックのマイクロパワー絶縁型フライバック・コンバー
タです。絶縁出力電圧を 1 次側のフライバック波形から直接サンプリング
することにより、デバイスは 3 次巻線および光アイソレータ不要でレギュ
レーションが可能です。出力電圧は、2 本の外付け抵抗と第 3 の温度補償
–
154k
RFB
GND
1µF
9µH
39Ω
VIN
•
VOUT+
5V
10mA TO 1.1A (VIN = 5V)
220µF 10mA TO 2.0A (VIN = 12V)
10mA TO 2.9A (VIN = 24V)
INTVCC
RREF
抵抗(オプション)により設定されます。境界モード動作により、負荷レギュ
115k
レーションの優れた小型磁気ソリューションを実現します。低リップルの
10k
Burst Mode 動作により、軽負荷では高い効率を維持しながら、出力電
TC
圧リップルを最小限に抑えます。3.6A、65V DMOS パワー・スイッチの
L1
22µH
VIN
4V TO 42V
VIN
SW
RFB
LT8302
R4 Z1
464k
RREF
INTVCC
C2
1µF
R3
1M
GND
R5
10k
他に、すべての高電圧回路および制御ロジック回路を熱特性の改善され
VOUT
48V/1.4A (VIN = 42V)
48V/0.8A (VIN = 24V)
48V/0.4A (VIN = 12V)
48V/0.15A (VIN = 5V)
D1
EN/UVLO
C1
10µF
MULTICELL
LI-ION
た 8 ピン SO パッケージに集積しています。
www.linear-tech.co.jp/solutions/4465
www.linear-tech.co.jp/solutions/4466
C3
10µF
D1: DIODES PDS560
L1: WÜRTH 7443551221
Z1: CENTRAL CMHZ5262B
12VIN
VIN1
トリプル出力 µModule 降圧レギュレータ
12V 入力で 1.0V、1.5V、および 3.3V(各 10A)を出力
LTM4633 µModule レギュレータは、3 つの完全な 10A スイッチング・モード DC/DC
コンバータを 1 つの小型パッケージにまとめたものです。スイッチング・コントローラ、パ
ワー FET、インダクタ、およびほとんどの支持部品がパッケージに搭載されています。
LTM4633 の 3 つのレギュレータは、4.7V∼16V または 2.375V∼16V(外部 5V バイアス
使用時)の入力レールで動作します。VOUT1とVOUT2 の出力電圧範囲は 0.8V∼1.8V ですが、
VOUT3 の出力電圧範囲は 0.8V∼5.5V です。各出力電圧は 1 本の外付け抵抗で設定します。
www.linear-tech.co.jp/solutions/4468
VIN2 VIN3
EXTVCC
INTVCC FREQ/PLLLPF
CNTL_PWR
13.3k
PGOOD12
PGOOD3
VOUT1
RUN1
RUN2
RUN3
LTM4633
TK/SS1
VFB1
VOUT2
TK/SS2
VFB2
TK/SS3
VOUT3
MODE/PLLIN GND SGND
VFB3
10k
242k
69.8k
19.1k
4.7µF
6.3V
10k
1.0V
10A
1.5V
10A
3.3V
10A
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