昭和 40 年 6 月 3 日 第三種郵便物認可 平成 14 年 10 月 10 日発行(毎月 1 回 10 日発行)富士時報 第 75 巻 第 10 号(通巻第 811 号) 昭和 40 年 6 月 3 日 第三種郵便物認可 平成 14 年 10 月 10 日発行(毎月 1 回 10 日発行)富士時報 第 75 巻 第 10 号(通巻第 811 号) パワー半導体特集 本誌は再生紙を使用しています。 定価525円(本体500円) ISSN 0367-3332 パッケージのスリム化により サーボアンプの薄型, 小型化に貢献。 ■サーボ用600V Econo IPMの特徴 ●600V NPT-IGBT(Tシリーズ)の採用によるスイッチング 「Econo IPMシリーズ」 外形:122(L)×55(W)×17(H)mm 損失の低減 dv / dt の低減 ●MPSダイオードの採用によるFWDリカバリー ●小型スリムパッケージの採用 インバータ部 素子数 型 式 V CES IC (V) (A) ・IPMパッケージスリム化(55mm幅←従来88mm幅) ・プリント板高さ低減(17mm←従来22mm) ・コンバータモジュールとの共通実装 (Econo Diode Moduleをあわせてラインアップ) ●確実な保護動作 ・上アームアラーム出力ピン追加 ・電流センス方式による過電流保護(R-IPMと同様) ・オンチップ温度センサによる過熱保護(R-IPMと同様) ●高信頼性 ・パワーサイクル性能の向上 内蔵する保護機能 ・過電流保護 ・短絡保護 ・IGBTチップ過熱保護 ・制御電源電圧低下保護 ・上下アームアラーム出力 富士インテリジェントパワーモジュール 「Econo IPMシリーズ」 お問合せ先:電子カンパニー パワー半導体事業部 電話(03)5435-7160 V CE(sat) typ.(V) VF typ.(V) 本 社 務 所 北 東 北 中 関 中 四 九 海 道 支 北 支 陸 支 部 支 西 支 国 支 国 支 州 支 事 社 社 社 社 社 社 社 社 北 関 東 支 首 都 圏 北 部 支 首 都 圏 東 部 支 神 奈 川 支 新 潟 支 長 野 支 東 愛 知 支 兵 庫 支 岡 山 支 山 口 支 松 山 支 沖 縄 支 店 店 店 店 店 店 店 店 店 店 店 店 道 北 釧 道 道 青 盛 秋 山 新 福 い 水 茨 栃 金 福 山 長 松 甲 岐 静 京 和 鳥 倉 山 徳 高 小 長 熊 大 宮 南 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 北 営 見 営 路 営 東 営 南 営 森 営 岡 営 田 営 形 営 庄 営 島 営 わ き 営 戸 営 城 営 木 営 沢 営 井 営 梨 営 野 営 本 営 信 営 阜 営 岡 営 滋 営 歌 山 営 取 営 吉 営 陰 営 島 営 知 営 倉 営 崎 営 本 営 分 営 崎 営 九 州 営 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 エ ネ ル ギ ー 製 作 所 変電システム製作所 千 葉 製 作 所 東京システム製作所 神 戸 工 場 鈴 鹿 工 場 松 本 工 場 山 梨 工 場 吹 上 工 場 大 田 原 工 場 三 重 工 場 (株) 富士電機総合研究所 (株) FFC 1(03)5435-7111 1(011)261-7231 1(022)225-5351 1(076)441-1231 1(052)204-0290 1(06)6455-3800 1(082)247-4231 1(087)851-9101 1(092)731-7111 1(048)526-2200 1(048)657-1231 1(043)223-0702 1(045)325-5611 1(025)284-5314 1(026)228-6731 1(0566)24-4031 1(078)325-8185 1(086)227-7500 1(0836)21-3177 1(089)933-9100 1(098)862-8625 1(0166)68-2166 1(0157)22-5225 1(0154)22-4295 1(0155)24-2416 1(0138)26-2366 1(017)777-7802 1(019)654-1741 1(018)824-3401 1(023)641-2371 1(0233)23-1710 1(024)932-0879 1(0246)27-9595 1(029)231-3571 1(029)266-2945 1(028)639-1151 1(076)221-9228 1(0776)21-0605 1(055)222-4421 1(026)228-0475 1(0263)40-3001 1(026)336-6740 1(058)251-7110 1(054)251-9532 1(075)253-6081 1(073)432-5433 1(0857)23-4219 1(0858)23-5300 1(0852)21-9666 1(088)655-3533 1(088)824-8122 1(093)521-8084 1(095)827-4657 1(096)387-7351 1(097)537-3434 1(0985)20-8178 1(099)812-6522 1(044)333-7111 1(0436)42-8111 1(0436)42-8111 1(042)583-6111 1(078)991-2111 1(0593)83-8100 1(0263)25-7111 1(055)285-6111 1(048)548-1111 1(0287)22-7111 1(0593)30-1511 1(0468)56-1191 1(03)5351-0200 〒141-0032 〒060-0042 〒980-0811 〒930-0004 〒460-0003 〒553-0002 〒730-0022 〒760-0017 〒810-0001 〒360-0037 〒330-0802 〒260-0015 〒220-0004 〒950-0965 〒380-0836 〒448-0857 〒650-0033 〒700-0024 〒755-8577 〒790-0878 〒900-0004 〒078-8801 〒090-0831 〒085-0032 〒080-0803 〒040-0061 〒030-0861 〒020-0021 〒010-0962 〒990-0057 〒996-0001 〒963-8033 〒973-8402 〒310-0805 〒311-1307 〒321-0953 〒920-0031 〒910-0005 〒400-0858 〒380-0836 〒390-0852 〒390-0811 〒500-8868 〒420-0053 〒604-8162 〒640-8052 〒680-0862 〒682-0802 〒690-0007 〒770-0832 〒780-0870 〒802-0014 〒850-0037 〒862-0950 〒870-0036 〒880-0805 〒890-0046 〒210-9530 〒290-8511 〒290-8511 〒191-8502 〒651-2271 〒513-8633 〒390-0821 〒400-0222 〒369-0192 〒324-8510 〒510-8631 〒240-0194 〒151-0053 東京都品川区大崎一丁目11番2号(ゲートシティ大崎イーストタワー) 札幌市中央区大通西四丁目1番地(道銀ビル) 仙台市青葉区一番町一丁目2番25号(仙台NSビル) 富山市桜橋通り3番1号(富山電気ビル) 名古屋市中区錦一丁目19番24号(名古屋第一ビル) 大阪市福島区鷺洲一丁目11番19号(富士電機大阪ビル) 広島市中区銀山町14番18号 高松市番町一丁目6番8号(高松興銀ビル) 福岡市中央区天神二丁目12番1号(天神ビル) 熊谷市筑波一丁目195番地(能見ビル) さいたま市宮町一丁目38番1号(野村不動産大宮共同ビル) 千葉市中央区富士見二丁目15番11号(日本生命千葉富士見ビル) 横浜市西区北幸二丁目8番4号(横浜西口KNビル) 新潟市新光町16番地4(荏原新潟ビル) 長野市南県町1002番地(陽光エースビル) 刈谷市大手町二丁目15番地(センターヒルOTE21) 神戸市中央区江戸町95番地(井門神戸ビル) 岡山市駅元町1番6号(岡山フコク生命駅前ビル) 宇部市相生町8番1号(宇部興産ビル) 松山市勝山町一丁目19番地3(青木第一ビル) 那覇市銘苅二丁目4番51号(ジェイ・ツービル) 旭川市緑が丘東一条四丁目1番19号(旭川リサーチパーク内) 北見市西富町163番地30 釧路市新栄町8番13号 帯広市東三条南十丁目15番地 函館市海岸町5番18号 青森市長島二丁目25番3号(ニッセイ青森センタービル) 盛岡市中央通一丁目7番25号(朝日生命盛岡中央通ビル) 秋田市八橋大畑一丁目5番16号 山形市宮町一丁目10番12号 新庄市五日町1324番地の6 郡山市亀田一丁目2番5号 いわき市内郷御厩町二丁目29番地 水戸市中央二丁目8番8号(櫻井第2ビル) 茨城県東茨城郡大洗町桜道304番地(茨交大洗駅前ビル) 宇都宮市東宿郷三丁目1番9号(USK東宿郷ビル) 金沢市広岡一丁目1番18号(伊藤忠金沢ビル) 福井市大手二丁目7番15号(安田生命福井ビル) 甲府市相生一丁目1番21号(清田ビル) 長野市南県町1002番地(陽光エースビル) 松本市島立943番地(ハーモネートビル) 松本市中央四丁目5番35号(長野県鋳物会館) 岐阜市光明町三丁目1番地(太陽ビル) 静岡市弥勒二丁目5番28号(静岡荏原ビル) 京都市中京区烏丸通蛸薬師上ル七観音町637(朝日生命京都ビル) 和歌山市鷺ノ森堂前丁17番地 鳥取市雲山153番地36〔鳥電商事 (株) 内〕 倉吉市東巌城町181番地(平成ビル) 松江市御手船場町549番地1号(安田火災松江ビル) 徳島市寺島本町東二丁目5番地1(元木ビル) 高知市本町四丁目1番16号(高知電気ビル別館) 北九州市小倉北区砂津二丁目1番40号(富士電機小倉ビル) 長崎市金屋町7番12号 熊本市水前寺六丁目27番20号(神水恵比須ビル) 大分市寿町5番20号 宮崎市橘通東三丁目1番47号(宮崎プレジデントビル) 鹿児島市西田一丁目5番1号(GEエジソンビル鹿児島) 川崎市川崎区田辺新田1番1号 市原市八幡海岸通7番地 市原市八幡海岸通7番地 日野市富士町1番地 神戸市西区高塚台四丁目1番地の1 鈴鹿市南玉垣町5520番地 松本市筑摩四丁目18番1号 山梨県中巨摩郡白根町飯野221番地の1 埼玉県北足立郡吹上町南一丁目5番45号 大田原市中田原1043番地 四日市市富士町1番27号 横須賀市長坂二丁目2番1号 東京都渋谷区代々木四丁目30番3号(新宿コヤマビル) パワー半導体特集 目 次 ブロードバンド・ユビキタス情報社会に向けて 550( 2 ) パワーデバイス技術への期待 谷内 利明 パワー半導体の現状と動向 重兼 寿夫 ・ 関 551( 3 ) 康 和 ・ 藤平 龍彦 U シリーズ IGBT モジュールの技術革新 岩室 憲幸 ・ 宮坂 忠志 ・ 関 555( 7 ) 康 和 T,U シリーズ IGBT モジュール(600 V) 559(11) 百田 聖自 ・ 宮下 秀仁 ・ 脇本 博樹 U シリーズ IGBT モジュール(1,200 V) 563(15) 小野澤勇一 ・ 吉渡 新一 ・ 大月 正人 U シリーズ IGBT モジュール(1,700 V) 表紙写真 星 保 幸 ・ 宮 坂 インテリジェントパワーモジュール 「R-IPM 3,Econo IPM シリーズ」 渡 辺 572(24) 学 ・ 楠木 善之 ・ 松田 尚孝 車載用サージ吸収入力 IC 八重澤直樹 ・ 市 村 577(29) 武 ・ 岡本 有人 車載用高機能 MOSFET パワー半導体モジュールはパワーエレクト 567(19) 靖 ・ 村松健太郎 581(33) 梅本 秀利 ・ 山田 昭治 ・ 鳶坂 浩志 ロニクス技術の根幹を担い,新しい電力制御 技術により大小さまざまな容量の各種機器に 適用され社会に貢献している。 富士電機は最先端の半導体技術をもって常 電源用マルチチップパワーデバイス「M-Power 2 シリーズ」 585(37) 太田 裕之 ・ 寺沢 徳保 にこの業界をリードし,高信頼性のパワー半 導体モジュールを市場に供給してきた。最近 では多様な品ぞろえでお客様のニーズに応え 高耐圧ショットキーバリヤダイオード る第五世代 IGBT モジュールを製品化し,そ 北村 祥司 ・ 伊藤 博史 589(41) の優れた特性から市場の注目を集めている。 表紙写真では小容量から大容量までの第五 世代 IGBT モジュールとともにカンパニース パワー MOSFET「SuperFAP-G シリーズ」 とその適用効果 テートメント「Quality is our message」 徳西 弘之 ・ 山田 忠則 ・ 井上 正範 を示し,ゆるぎない品質を追求する富士電機 の意志を表現している。 593(45) ブロードバンド・ユビキタス 情報社会に向けて パワーデバイス技術への期待 谷内 利明(やち としあき) 東京理科大学工学部教授 工学博士 今日の情報通信社会は,1946 年の真空管式コンピュー ブロードバンド・ユビキタスネットワークの発展に伴っ タ ENIAC の開発で幕を開け,ここ五十数年のエレクトロ て,それを構成するサーバーやルーター,さらにはモバイ ニクス技術の発展がその規模の拡大を担ってきた。特に ル機器など端末の消費電力は,急激に増大することが予測 1971 年に登場したマイクロプロセッサの貢献は大きく, される。ネットワークの利用頻度の向上や高度化は,人間 その高度化に伴って情報通信化も一気に加速された。最初 の高度な技術を必要とする,例えば同時通訳や医療診断な のマイクロプロセッサのトランジスタ数は 2,300 個にすぎ どのサービスの電子化をも求め,超高速で動作する情報処 なかったが,昨年発表されたマイクロプロセッサではトラ 理装置や,軽量でパワフルなモバイル機器などを必要とす ンジスタ数が 5,500 万個にも上っている。三十年を経て, る。サービス速度は,マイクロプロセッサの処理速度で決 トランジスタ数は実に 2 万 4,000 倍,同時に動作周波数も まり,CMOS 素子を例にすると,2 桁以上の処理速度が望 2 万倍となっている。 まれれば電源電圧が半減しても,マイクロプロセッサの消 そして今,情報通信社会は新たな質的な発展をみようと 費電力は 25 倍になる。例えば,ノートブックパソコンの している。ネットワークの伝送速度が,100 M ビット/秒 マイクロプロセッサでは,ここ十年で動作電圧を 1/3 に低 のアクセス回線を実現するなど急激に数桁も高速化され, 減したにもかかわらず,消費電力は 100 倍に増大している。 コンピュータの設計が従来のスタンドアロン型アーキテク コンバータの出力電流は,実に 300 倍となっている。マイ チャからネットワーク型アーキテクチャへと変化している。 クロプロセッサの開発は今後もムアーの法則にしたがって 大量の異機種端末がネットワークを通じて相互に協調して 大規模化するとされており,2010 年には 0.5 V で 250 A の 動作する,いわゆるブロードバンド・ユビキタス(高速広 電力供給が必要とされる。 帯域で,いつでも,どこでも)情報社会の幕開けである。 このような要請を受けて,情報処理装置や端末に電力を 21 世紀は,日常生活で利用する多くの機器,例えばパ 供 給 す る コ ン バ ー タ , 特 に VRM( Voltage Regulator ソコン・携帯電話などの情報通信機器は言うに及ばず,テ Module)の研究開発が米国を中心にいま活発に行われて レビ・冷蔵庫などの家電製品,さらには室内や街角の至る いる。2004 年には,スイッチング周波数 2 ∼ 5 MHz で動 所に設置される各種センサまでもが,高速なネットワーク 作する VRM が,2008 年には 10 ∼ 20 MHz で動作する につなぎっ放しになる,ブロードバンド・ユビキタス情報 VRM が期待される。桁違いに高性能な VRM の実現は, 社会になる。ブロードバンド・ユビキタスネットワーク環 ひとえにパワーデバイスの高性能化に係っており,2004 境の実現は,生活スタイルや社会の仕組みを大きく変える 年にはオン抵抗 0.5 mΩ,ゲート容量 2 nF,スイッチング と共に,新たなサービスや新たな装置の需要を生み出し, 速度 20 ns のスイッチデバイスが,2008 年にはオン抵抗 エレクトロニクス産業のより一層の発展を呼び起こす。象 0.2 mΩ,ゲート容量 200 pF,スイッチング速度 5 ns のス 徴的な例が近年の電話で,携帯電話の契約台数がここ数年 イッチデバイスが必要とされる。 で急激な伸びを示し,1999 年末で 2 億 7,000 万台,さらに 日本は,パワーデバイス分野で最も権威のある国際会議 2005 年には約 3 倍の 7 億 7,000 万台になると見込まれてい ISPSD(International Symposium on Power Semiconduc- る。電話は,用件伝達手段からお喋りの道具に変わり,さ tor Devices & ICs)の発祥の地であり,この分野をリー らに出先で画像情報の送信や,特急券の予約購入・運行 ドし支えてきた第一の国でもある。日本のパワーデバイス チェックなどもできるインターネット機器へと大きく変身 技術が,SiC や GaN などのワイドギャップパワー半導体 を遂げつつある。 デバイスをも含めて桁違いに高性能なパワーデバイスを生 多くの技術でこのブロードバンド・ユビキタス情報社会 み出し,ブロードバンド・ユビキタス情報社会の発展に向 は支えられるが,最も重要な技術の一つにエネルギー供給 けて,続けて世界をリードしていくことを期待している。 技術が挙げられる。 550( 2 ) 富士時報 Vol.75 No.10 2002 パワー半導体の現状と動向 重兼 寿夫(しげかね ひさお) 関 康和(せき やすかず) 藤平 龍彦(ふじひら たつひこ) まえがき と題して講演し,パワーエレクトロニクスにおける自らの 開発体験に基づく内容により,参加した多くの研究者やエ (2 ) 長引く不況の中であっても,混迷する経済情勢の中に ンジニアに強い感銘を与えたことは記憶に新しい。 あっても,技術開発への要求は根強く,その開発行為はと 2002 年の ISPSD ’ 02 は,米国ニューメキシコ州サンタ どまることなく着実に前進するものと確信している。特に フェにて 6 月初旬に開催された。ここでは 40 件の口頭発 われわれの明日の社会をよりよくするためのインフラスト 表と,31 件のポスター発表が行われた。富士電機からは 3 ラクチャーの改善には多くの技術開発力を結集し,その目 件の口頭発表が行われた 。 (3)∼(5) 表1 に今回も含め最近 6 年間の ISPSD における分野別 的を達してきた。 現代ではそれを支える最も大きな技術がパワーエレクト 論文件数の推移を示す。この表から分かるように,IGBT ロニクスであり,われわれの生活のほとんどすべての分野 (Insulated Gate Bipolar Transistor)や MOSFET(Met- において用いられているといっても過言ではない。このパ al Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が含ま ワーエレクトロニクス技術の根幹を支え,または相互に補 れる MOS-gated Device の発表件数が群を抜いており, いながら,これまで,パワーデバイス開発の歴史が刻まれ それに Power IC/HVIC(High Voltage IC)が続いている。 てきた。パワーエレクトロニクスが大きく発展する中で, これらパワーデバイス分野での関心の高さを示している原 当然のことながら,パワーデバイスへの要求も,さらなる 動力の一つには LSI のウェーハプロセス技術のパワーデ 高機能化や高性能化にとどまらず,より高い信頼性の実現 バイスへの導入によりパワーデバイスとしての特性向上が にまで及んでいる。 著しいことと,パワーデバイス独自の設計技術やプロセス 富士電機ではこれらの要求に応えるべく,洗練された技 術開発力で,高信頼性の最新鋭のパワーデバイスを社会に 技術において,幾つもの革新的で興味ある報告がなされて いることである。 例えば最近のパワーデバイス分野では,パワー MOS 提供し続けている。 FET でエピタキシャル層を幾重にも重ねたスーパージャ 最近のパワーデバイスの開発動向 ンクション構造の実現や,IGBT でウェーハを極限まで薄 くしたフィールドストップ型 IGBT の開発などが,パワー パワーデバイスの最新動向を知るためには,パワーデバ デバイス固有技術として注目されている。 イスで最も権威のある国際学会「ISPSD」 (International また,もう一つにはパワーデバイスを単体としてのみ扱 Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs)で うのではなく,ドライブ機能や保護機能を集積させること (1) の動向を見るのがよい。ISPSD は 1988 年に電気学会主催 で,コンパクトで信頼性の高いパワー回路ブロックを構成 により日本で発足し,その後パワーデバイスに携わる多く したいというアプリケーション技術者からの要求も原動力 の人たちが大切に育てた国際学会である。現在では毎年, の一つになっており,Power IC/HVIC の論文が続いて多 日本,米国,欧州の持ち回りで開催しており,日本では電 いことの背景となっている。 気学会主催,IEEE 共催,米国と欧州では IEEE 主催,電 また,パワーデバイスにおける期待の新材料として SiC 気学会共催として開催されている。2001 年の ISPSD ’ 01 (Silicon Carbide)の発表も堅調である。特に SiC の最大 は大阪で開催され,Banquet Keynote Address において 電界強度が Si に比較して一けた高い物理的な特徴を生か 富士電機の社長・沢 した高耐圧領域でのパワーデバイスに期待が大きい。反面, 彦が前電気学会会長として,My Experiences in Developments of Power Electronics ーーー 現在の Si パワーデバイスに工業的に置き換わるには,克 What I expect to young researchers and engineers ーーー 服しなければならない技術課題も多く,技術的なブレーク 重兼 寿夫 関 康和 藤平 龍彦 パワー半導体デバイスの研究開発 パワー半導体デバイスの研究開発 パワー半導体デバイスの研究開発 に従事。現在,電子カンパニーパ に従事。現在,松本工場半導体基 に従事。現在,松本工場パワー半 ワー半導体事業部副事業部長兼富 盤技術開発部長。工学博士。電気 導体開発部長兼富士日立パワーセ 士日立パワーセミコンダクタ(株) 学会会員。 ミコンダクタ(株)取締役松本事業 代表取締役副社長。工学博士。電 所長。工学博士。電気学会会員, 気学会会員。 応用物理学会会員。 551( 3 ) 富士時報 パワー半導体の現状と動向 Vol.75 No.10 2002 表1 最近 6 年間の ISPSD における分野別論文件数の推移 開催地 発表分野 ISPSD ’ 97 ワイマール (ドイツ) ISPSD ’ 98 京都 (日本) ISPSD ’ 99 トロント (カナダ) ISPSD ’ 00 ツールーズ (フランス) ISPSD ’ 01 大阪 (日本) ISPSD ’ 02 サンタフェ (アメリカ) Application 4 4 7 8 13 5 Simulation 6 1 1 4 1 2 Bipolar Device 0 1 0 1 1 1 MOS-gated Device 23 29 28 25 37 28 Power IC/HVIC 26 26 11 8 2 11 Power Module 1 3 3 5 0 1 Thyristor/Diode 6 12 10 8 15 4 GTO 5 6 1 0 2 0 SI Device 2 3 0 0 1 0 Material/Process 5 7 8 16 13 7 Packaging 2 0 1 1 6 1 SiC 8 7 6 8 11 11 88 99 76 84 102 71 合 計 スルーが期待されている。 の比率を 2000 年の 28 %から 2002 年には 33 %に引き上げ ようとしている。パワーダイオードなどのパッシブデバイ 富士電機のパワーデバイスの開発方針 スであっても,最先端 MOS ゲートデバイスと組み合わせ て使用することで,新しいアプリケーション上の効果を引 富士電機は IGBT,パワー MOSFET,パワーダイオー き出せることを狙って開発を行っている。 ド製品を産業,自動車,情報,民生の 4 市場分野に絞り込 すなわち,富士電機のパワーデバイスの開発方針は,世 んでワールドワイドにパワー半導体事業を展開している。 界最先端技術で高性能なパワーデバイスを実現するととも 新製品開発は,どこにでも適用されるコモディティデバイ に,顧客と一体となりパワーデバイス技術と IC 技術を融 スを開発するのではなく,上記 4 市場分野を対象に,さら 合することで,ソリューション提案型のスマートパワーデ に限定されたアプリケーション市場セグメントにおいて, バイス・インテリジェントパワーデバイスを提供すること グローバル No.1 かオンリーワンと成りうる製品しか開発 である。富士電機は「顧客の懐の中に入って」新製品の開 しないことが特徴である。このような製品をキラー製品と 発を行うことが基本方針である。 呼んでおり,全パワー半導体の売上高に占める割合を 2000 年の 35 %から 2002 年には 48 %レベルに拡大しよう 富士電機の IGBT としている。 このようなキラー製品を開発するためには,単にパワー 本特集号の前半では特に技術革新の激しいデバイスの第 デバイス技術者が技術を磨くだけでは不十分であり,アプ 五世代 IGBT「U シリーズ」に関する論文を集め,最近開 リケーション側技術者とよく連携することが肝要である。 発した 600 V,1,200 V,1,700 V モジュールについてまと 富士電機では,各市場分野のリーディング顧客と強固で継 めた。Uシリーズの技術革新については次稿(U シリーズ 続的な戦略的パートナーシップを組み,開発することを基 IGBT モジュールの技術革新)を,その他それぞれの耐圧 軸としている。また,徹底した顧客起点で新製品開発を考 別モジュールについてはそれに続く稿(3 編)を参照され えると,顧客はパワーデバイスにお金を払うのではなく, たい。 パワーデバイスを顧客のパワーエレクトロニクス製品に適 用した場合の効果にお金を払っていることが理解できる。 図1は第一世代から第五世代までの IGBT の経緯と適用 技術について表したものである。 したがって,開発する新製品は単なるパワーデバイスでは 第一世代から第三世代までの IGBT では,いわゆるエピ なく,顧客の技術的な悩みを解決するソリューション提案 タキシャルウェーハを用いて,ライフタイムコントロール 型デバイスでなければならない。 技術の最適化を図ることと微細加工技術で特性改善を行っ (6 ) ( 7) 富士電機はこのような観点から,まずソリューション提 てきた。第四世代や第五世代では,これまでのエピタキ 案の基本となるアクティブデバイスである MOS ゲートデ シャルウェーハから FZ(Floating Zone)ウェーハを用い バイスの売上高比率を 2000 年の 52 %から 2002 年には ることで,大幅な特性改善を実現させることになる。これ 55 %に引き上げようとしている。また同時に,これら は,単に使用するウェーハを変更したということばかりで MOS デバイスにドライブ機能や保護機能を内蔵させたス はなく,IGBT の従来の設計方針を大きく転換させること マートパワーデバイス・インテリジェントパワーデバイス になった。エピタキシャルウェーハを用いて IGBT を設計 552( 4 ) 富士時報 パワー半導体の現状と動向 Vol.75 No.10 2002 図1 富士電機製 IGBT の適用技術の推移 1980(年) 1985 第一 世代 1990 第二世代 L,Fシリーズ 1995 第三世代 J,Nシリーズ 図2 600 V IGBT チップ断面の推移 2000 2005 第四世代 第五世代 新構造 Sシリーズ T,Uシリーズ デバイス パンチスルー型 (エピタキシャルウェーハ, ライフタイムコントロール) G E n+ G E p n− n− n+バッファ n+バッファ 薄ウェーハ技術 p+基板 p+基板 C Nシリーズ C Sシリーズ 微細化 n− n− p p C C Tシリーズ NPT構造 Uシリーズ トレンチ構造 微細加工技術 トレンチ技術 GE G E n+ NPT型(FZウェーハ) FS型(FZウェーハ) する場合には,コレクタ側からキャリヤを高注入させ, IGBT ボディに伝導度変調によりキャリヤを充満させ,低 オン電圧化を狙い,電流遮断時には,この伝導度変調によ り充満したキャリヤをライフタイムコントロール技術の適 図3 1,200 V IGBT チップ断面の推移 用により再結合させ消滅させるという基本設計を用いた。 ライフタイムコントロール技術を適用すると,通常のオン G 状態においてもその効果があるためキャリヤの輸送効率は 低い。それを補うだけキャリヤの高注入化を図り,オン電 E n+ p G E GE n+ n− n+バッファ 圧を低減させることになる。すなわち,高注入,低輸送効 n− n− p n p 率というのが基本設計であった。FZ ウェーハを用いて C C IGBT を設計するときには,コレクタ側からのキャリヤの Sシリーズ NPT構造 Uシリーズ トレンチ構造 p+基板 注入を抑制し,注入効率を下げて輸送効率を上げるという 基本設計の変更が必要である。単にキャリヤの注入効率を 低減させれば,オン電圧が上昇してしまうが,ここで IG BT ボディにおけるキャリヤの輸送効率を上げることで, この問題を解決した。すなわち,ライフタイムコントロー C N シリーズ ル技術を適用しない設計である。富士電機ではまず,第四 世代の 1,200 V IGBT からその適用を始めた。NPT(Non Punch Through)構造の「S シリーズ」である。 FZ ウェーハを用いるためには,従来の半導体デバイス 技術をさらにレベルアップさせ,薄いウェーハ状態でのコ レクタ側の FS 層や p 層の形成プロセス技術を開発し,こ 開発技術に加えて,NPT 構造を実現させるためのウェー のデバイスを実現させた。1,200 V,1,700 V の第五世代 ハを薄くする技術が必要である。富士電機ではこの技術開 IGBT Uシリーズである。 発にいち早く取り組み,IGBT の FZ 化を積極的に進めて これらのチップの断面構造を世代別に分かりやすく示し きた。600 V の「T シリーズ」はSシリーズの技術を展開 た の が , 図 2 , 図 3 で あ る 。 そ れ ぞ れ 600 V, 1,200 V し,さらに薄層化を進めて実現させたものである。 IGBT チップの変遷を示した。これらの図から分かるよう また,IGBT の特性改善には不可欠な技術として表面エ に従来の IGBT チップと比較すると,最近の IGBT チップ ミッタ側のトレンチ形成技術がある。トレンチ形成技術の の厚さは非常に薄いものとなっているばかりでなく,トレ IGBT への適用については,オン電圧は低減できるものの, ンチ化や FS 化技術など高レベルな技術が幾つも織り込ま 短絡耐量が問題視された時期もあった。しかしながらそれ れている。 らも現在では,表面構造設計の最適化や NPT 構造などの 適用により克服し,まったく問題のないレベルになってい インテリジェント化 る。600 V 第五世代 IGBT の U シリーズでは,このトレン チ技術を適用し大きな特性改善を果たした。 富士電機では前述した開発方針に従って,パワーデバイ さらに IGBT の特性改善は,NPT 構造から FS(Field スのインテリジェント化を推進してきた。パワーデバイス Stop)構造へと進展する。FS 構造とは,従来の IGBT に 部に加え,ドライブ機能や保護機能,自己診断機能,演算 おけるn+バッファ層を FS 層とし,キャリヤの低注入, 機能などを内蔵させ,このデバイスを使用されるお客様の 高輸送効率という基本動作を用いながら,NPT 構造より 悩みを解決し満足していただけることを最大の開発目的と もベース層を薄くしてさらにトランジスタとしての特性改 して推進してきた。本特集号では,新たに T シリーズの 善を実現させたものである。ここでは,ウェーハの薄層化 IGBT を用いて損失低減ばかりでなく,温度依存性が少な ( 8) 553( 5 ) 富士時報 パワー半導体の現状と動向 Vol.75 No.10 2002 く電流集中を生じにくい「R-IPM 3 シリーズ」と,パッ 流(Ir)が増加するというトレードオフの中で,高耐圧の ケージの小型・薄型化を狙った「Econo IPM シリーズ」 SBD は開発された。 を開発した。ノイズの低減などの効果も含めて総合的にお 客様に使いやすいデバイスを目指している。 あとがき また電源分野においては,すでに「M-Power 1」を製品 化展開し,カラーテレビ,CRT モニタなどに採用されて ここ数年のパワーデバイスにおける技術開発の進展は目 いる。今回新たに,軽負荷時でも高効率な制御が可能な方 覚ましい。激しく動く時流の中で,富士電機では常に最先 式を新規に開発し,これを用いて LCD(Liquid Crystal 端の技術でパワーデバイスをリードしてきた。新製品開発 Display) モ ニ タ な ど の 電 源 を 容 易 に 設 計 で き る 「 M - では,常に絞り込んだ市場セグメントにおいてグローバル Power 2 シリーズ」を提案した。これにより小型,軽量そ No.1 かオンリーワンと成りうるものしか開発しないとい して高効率電源を可能とすることができる。 う方針を貫いている。 富士電機は自動車分野においてもこれまで,高機能 本特集号ではこれらの開発方針に従って開発した富士電 MOSFET やイグナイタ用インテリジェントパワーデバイ 機のパワーデバイス製品を紹介する。特に今回は期待の大 スなどの実績を持っている。今回はランプの点灯やモータ きい第五世代 IGBT(U シリーズ)の製品化にあたり,本 の駆動など負荷の通電開始時に瞬間的な大電流を通流させ 特集号の前半に集めて紹介した。U シリーズの技術革新, る能力を付加させた車載用高機能 MOSFET を開発した。 また 600 V,1,200 V,1,700 V IGBT モジュールについて これはさらにフェイルセイフ設計として過電流検出,過電 詳細な紹介をしたので参照されたい。 流制限そして過熱検出の保護機能を取り込んで多重の安全 設計とした。 IGBT ばかりではなく,特定分野におけるインテリジェ ント化への取組みや,特定アプリケーションにおける専用 このように富士電機では,産業,自動車,情報,民生の デバイスの提案,また個別デバイスでの技術的な大きなブ 絞り込んだ分野で,パワーデバイスのインテリジェント化 レークスルーなど,常に顧客起点で開発された富士電機の を推進させ,顧客と一体になり提案型の新製品開発を行っ パワーデバイスをも本特集号では紹介している。 てきた。 これらの新製品が顧客満足度を十分に向上させるものと 確信している。 個別素子の高性能化 さらにわれわれは品質に対しても「Quality is our message」と宣言し,自らを律し今後とも確かな品質を 2001 年の低 Ron(オン抵抗)と低 Qgd(ゲート - ドレイ 持つ製品をお客様に提供していく所存である。 ン間チャージ容量)を両立させて大幅な損失低減を実現さ せた,パワー MOSFET「SuperFAP-G シリーズ」がある。 すでに 450 ∼ 600 V 耐圧クラスでは約 40 型式を量産して いる。今回は新たに DC-DC コンバータ用に 100 ∼ 250 V の中耐圧クラスと,AC 200 V 入力のスイッチング電源用 参考文献 (1) 関康和.パワーデバイスの最近の動向 2002.平成 14 年電 気学会全国大会シンポジウム.3- S15- 1,2002. (2 ) Sawa, K.My Experiences in Developments of Power- に 700 ∼ 900 V クラスの高耐圧クラスの系列化を行った。 Electronics.Proceedings of ISPSD ’ 01.2001,p.461. SuperFAP-G シリーズは独自の表面設計構造により表面 (3) Otsuki, M. et al.Investigation on the Short-Circuit Ca- での電界を緩和し,シリコン理論限界の 97 %の耐圧を実 pability of 1200 V Trench Gate Field-Stop IGBTs.Pro- 現させ低抵抗ウェーハを使用可能としたもので,パワー MOSFET において大きなブレークスルーを果たした。 スイッチング電源分野では,さらに損失低減を目的とし ceedings of ISPSD ’ 02.2002,p.281. (4 ) Ohnishi, Y. et al.24 mΩcm2 680 V Silicon Super Junc- tion MOSFET.Proceedings of ISPSD ’ 02.2002,p.241. てダイオードへの改善要求がある。実際にはスイッチング (5) Sugi, A. et al.A 30 V Class Extremely Low On-resist- 電源の二次側出力整流ダイオードでは,スイッチング電源 ance Meshed Trench Lateral Power MOSFET.Proceed- 損失の約半分を占めるほどである。これまでは 200∼300 V ings of ISPSD ’ 02.2002,p.297. クラスでは pn 接合ダイオードが用いられてきた。今回は, この損失低減のためにショットキーバリヤダイオード (SBD)の優れた特性に注目し,開発を進めた。特にブ レークスルーしなければならなかった技術は,バリヤメタ ルの最適化であった。バリヤメタルのバリヤハイトが高す ぎれば順方向電圧(VF)は高くなり,低すぎれば漏れ電 554( 6 ) (6 ) 関康和.IGBT の開発動向.電気学会論文誌 C.vol.122- C, no.6,2002,p.1074. (7) 関康和.パワー半導体の現状と動向.富士時報.vol.74, no.2,2001,p.103- 105. (8) 重兼寿夫.パワー半導体の現状と動向.富士時報.vol.72, no.3,1999,p.161- 163. 富士時報 Vol.75 No.10 2002 U シリーズ IGBT モジュールの技術革新 岩室 憲幸(いわむろ のりゆき) 宮坂 忠志(みやさか ただし) 関 康和(せき やすかず) まえがき (Non Punch Through)構造 IGBT(NPT-IGBT)を開発 した。特にこの NPT-IGBT の開発にあたっては,ウェー IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)は,MOS ハ厚を 100 μm 近くになるまで削り素子を作成するという FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transis- 薄ウェーハプロセス技術を新たに開発することで特性改善 tor)の高インピーダンス特性と,バイポーラトランジス に成功し,その結果,1,200 V 系は 1999 年に S シリーズを, タの低オン電圧特性とを兼ね備えたパワーデバイスとして, 600 V 系では 2001 年に T シリーズをそれぞれ製品化した。 1980 年代前半に考案された。その後 1980 年代後半の第一 今回開発した超低損失 U シリーズ IGBT チップ(U- 世代 IGBT の出現により電力変換装置用デバイスとして, IGBT チップ)は,上記 NPT-IGBT チップの開発で培わ 産業,情報,交通などの各分野でのパワーエレクトロニク れた薄ウェーハプロセス技術と,より一層の表面セル微細 ス技術の中で非常に大きな役割を占めてきた。IGBT はバ 化を可能にするトレンチゲート技術を融合させることで, イポーラトランジスタ以上の電圧・電流定格を持つこと, さらなる特性改善を図ったパワー半導体素子である。図1 さらには高速スイッチングができることで年々注目される は 600 V 系 IGBT チップの各世代でのオン電圧ーターンオ ようになり,それに伴ってさらなる低損失化が切望される フ損失トレードオフ特性比較を示したものである。トレン ようになった。その結果,表面セル構造の微細化とそれに チゲート構造と薄ウェーハ NPT 構造により,大きな性能 伴う高性能化の技術革新により第一,第二,第三世代と進 改善が達成できていることが分かる。また上記薄ウェーハ 歩を重ね,装置の小型化・高性能化に大きく寄与してきた。 NPT 技術をさらに進歩させた薄ウェーハ FS(Field Stop) 特に近年,IGBT モジュールの性能向上は目を見張るもの 技術を今回新たに開発し,1,200 V 系ならびに 1,700 V 系 がある。 IGBT チップに適用した。これにより,図2に示すように (1) 本稿では,富士電機が開発した超低損失 U シリーズ オン電圧ーターンオフ損失トレードオフ特性を飛躍的に改 IGBT モジュールの設計コンセプトならびに諸特性を報告 善することに成功した。さらにこの U-IGBT チップは, し,富士電機製 IGBT モジュールの技術革新について紹介 pnp トランジスタの注入効率を下げ,ライフタイムコント する。 ロールをせず輸送効率を上げるという設計コンセプトによ 超低損失 IGBT チップの開発 図1 600 V IGBT トレードオフ比較 富士電機は IGBT の製品化を 1988 年から始め,市場に 率を上げ,ライフタイムコントロールにより輸送効率を 下 げ る と い う 設 計 コ ン セ プ ト を 基 に し た PT( Punch Through)構造 IGBT において,表面セル構造の微細化に よる MOSFET 部からの電子電流の供給増により特性改善 を進め,1988,1990,1994 年に第一,第二,新第三世代 (N シリーズ)IGBT モジュールを製品化した。その後, ターンオフ損失(mJ/pulse) 供給してきた。ワイドベース pnp トランジスタの注入効 T j=125 ℃ 10 さらなる性能向上を目指して,上記 pnp トランジスタの 注入効率を下げ,ライフタイムコントロールしないで輸送 600 V/100 A素子 V CC=300 V I C =100 A V GE=±15 V 8 Sシリーズ 6 Nシリーズ 4 Tシリーズ 2 新型 IGBT (Uシリーズ) 0 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 2.6 コレクタ - エミッタ間飽和電圧 V CE(sat(V) ) 2.8 効 率 を 上 げ る と い う 設 計 コ ン セ プ ト に 基 づ い た NPT 岩室 憲幸 宮坂 忠志 関 康和 パワー半導体素子の研究開発に従 パワー半導体モジュールの開発・ パワー半導体デバイスの研究開発 事。現在,富士日立パワーセミコ 設計に従事。現在,富士日立パ に従事。現在,松本工場半導体基 ンダクタ(株)松本事業所開発設計 ワーセミコンダクタ(株)松本事業 盤技術開発部長。工学博士。電気 部マネージャー。工学博士。IEEE 所開発設計部副グループ長。 学会会員。 Senior Member,電気学会会員。 555( 7 ) 富士時報 U シリーズ IGBT モジュールの技術革新 Vol.75 No.10 2002 り,図3に示すようにオン電圧が正の温度係数を示し,そ ている。図4は 1,200 V/450 A U-IGBT モジュールにおけ の結果,大電流定格品への適用に非常に適した素子となる。 る負荷短絡波形である。負荷短絡時の電流値を定格電流の IGBT の設計において,トレンチゲート構造のような微 細表面セル構造を適用することでオン電圧の低減が実現で 約 5 倍に制限し,125 ℃においても 10 μs 以上もの十分な 耐量が得られていることが分かる。 きることは知られているが,その反面,負荷短絡などの異 常時に大きな電流が流れてしまい,その結果として素子が 新 FWD チップの特徴 破壊しやすくなる問題が生じ,これをブレークスルーする ことが大きな課題となっていた。今回開発した U-IGBT 新 FWD(Free Wheeling Diode)素子はアノード層か チップは,トレンチゲート構造を最適化することでオン電 らの少数キャリヤの注入をコントロールすることで,ソフ 圧を犠牲にすることなく,負荷短絡などの異常時に流れる トな逆回復特性を有する。さらにライフタイムコントロー 電流値を抑えることに成功し,その結果耐量の向上も図れ ルを最適化することで,IGBT 同様,オン電圧が正の温度 係数を示すよう設計されており,大電流定格品への適用に 非常に適した素子となっている。この新 FWD の適用によ 図2 1,200 V,1,700 V IGBT トレードオフ比較 り,図5に示すように IGBT のターンオン時の電流ピーク T j=125 ℃ ターンオフ損失(mJ/pulse) 12 1,200 V/50 A素子 V CC=600 V I C =50 A V GE=±15 V 10 8 減させることが可能となる。 U-IGBT のインバータへの適用時の熱検討 Nシリーズ 6 汎用インバータ分野では IGBT モジュールの適用が一般 新型 IGBT (Uシリーズ) 4 Sシリーズ 的になってきているが,さらなる性能向上と信頼性向上を 達成し,コストパフォーマンスの向上を進めることが大き 2 な課題になっている。図6にチップサイズとインバータ適 0 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 2.6 V CE(sat(V) コレクタ - エミッタ間飽和電圧 ) 2.8 図4 U-IGBT モジュール負荷短絡波形(1,200 V/450 A) T j=125 ℃ 75 ターンオフ損失(mJ/pulse) 値を抑制することができ,その結果,ターンオン損失を低 1,700 V/150 A素子 V CC=900 V I C =150 A V GE=±15 V 50 NPT-IGBT I C:1,000 A/div 新型 IGBT (Uシリーズ) 25 1,200 V/ 450 A 素子 VGE:20 V/div 〔測定条件〕 T j =125 ℃ VCC =800 V +R G =1.1Ω −R G =20 Ω VGE =±15 V VCE:500 V/div 0 1 2 3 4 コレクタ - エミッタ間飽和電圧 V CE(sat(V) ) 5 時間:2 s/div 図3 U-IGBT 出力特性(1,200 V 素子) 図5 U-FWD と従来 FWD 適用時の IGBT ターンオン波形比較 VCE:250 V/div,I F:50 A/div コレクタ電流 I C〔 I C / I C 定格〕 (−) 1.5 1.0 T j=25 ℃ T j=125 ℃ 0.5 0 0 0.5 1.0 1.5 2.0 コレクタ - エミッタ間電圧 VCE(V) 556( 8 ) 2.5 75 A/1,200 V- FWD素子使用 T j =125 ℃ V CC =600 V,I F =75 A 従来 FWD 新FWD VCE IF 時間:0.5 s/div 富士時報 U シリーズ IGBT モジュールの技術革新 Vol.75 No.10 2002 用時の発生損失の関係を示す。従来品のチップサイズを基 準とし 1,200 V/150 A 素子を代表例に 30 kW インバータの 定格負荷時の損失を比較すると,従来品の発生損失に対し ΔTj- c を加算する方法で議論してきている。 図9 に冷却システムを含む温度上昇を有限要素法(FE M)を用い検証した結果を示す。三次元モデル解析により, 同サイズであれば約 30 %の損失低減が可能である。また (1) 放熱器取付け用ベース部の横方向熱広がり チップサイズの依存性が小さく,仮に同一損失とするなら (2 ) チップ間隔の最適化による相互干渉の低減 ば 20 %程度までチップシュリンクの可能性があることを (3) モジュール配置の最適化 示唆している。これは前述のチップ技術の適用により,図 を実施することにより,チップ温度上昇を抑制できる可能 7に示す IGBT の出力特性が大幅に改善され,電流密度を 性があることが分かった。 この解析技術の開発により,信頼性を検証するうえで重 上げてもオン電圧が増加しないためである。 しかし図8に示すようにベース部温度を基準としたチッ プ温度上昇(ΔTj- c)は熱抵抗(Rth(j- c))がチップサイズ 要な温度検討を容易にかつ精度よく実施できるようになっ たと考える。 に反比例するため単純に ΔTj- c =発生損失×Rth で計算す ると,チップサイズをシュリンクした場合,急激に上昇し, 信頼性上パワーサイクル耐量などの課題が生じる。 4.2 パワーサイクル耐量の向上 富士電機では,IGBT モジュールにおけるパワーサイク ル試験素子の解析から,パワーサイクル耐量はチップ下の 4.1 放熱器を含む温度上昇 IGBT チップの温度上昇は放熱器を含む冷却システムに 図8 IGBT ΔTj- c とチップサイズ比較 より確定されるものであるが,従来は冷却システムトータ 150 ルでの検証は容易ではなく簡易的にフィン温度を固定し, 140 ΔT j−c(deg) 図6 IGBT 発生損失とチップサイズ比較 280 条件 三相PWM (3アーム変調) V DC=600 V f C=10 kHz I O=64 A rms cos =0.85 P f O=50 Hz 260 IGBT発生損失(W) 240 220 200 180 条件 三相PWM (3アーム変調) V DC=600 V f C=10 kHz I O=64 A rms cos =0.85 P f O=50 Hz 130 120 110 100 90 80 70 60 50 Sシリーズ 40 30 Uシリーズ 20 160 10 0 Sシリーズ 0.4 0.6 0.8 1.0 IGBTチップサイズ (1,200 V/150 A SシリーズIGBT=1.0として) 140 120 0 0.2 100 Uシリーズ 80 60 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 IGBTチップサイズ (1,200 V/150 A SシリーズIGBT=1.0として) 1,200 V 150 A 2 in1 従来型 IGBT T j =76.0 deg TC =65.6 deg ΔTc-a =40.6 deg 図7 IGBT 出力特性比較 電流密度 (1,200 V/150 A SシリーズIGBT=1.0として) 図9 IGBT チップ温度上昇 FEM 解析結果 2.6 2.4 2.2 V GE=15 V T j=125 ℃ 2.0 1.8 1.6 Uシリーズ 1,200 V 150 A 2 in1 Uシリーズ IGBT T j =76.9 deg TC =63.9 deg ΔTc-a =38.9 deg 1.4 1.2 Sシリーズ 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 1 2 3 VCE(V) コレクタ - エミッタ間電圧 4 557( 9 ) 富士時報 U シリーズ IGBT モジュールの技術革新 Vol.75 No.10 2002 図11 U-IGBT モジュールと従来モジュールの外形比較 ΔT j パワーサイクル耐量(cycle) 図10 パワーサイクル耐量の向上 Sシリーズ,Uシリーズ Sn/Agはんだ 108 107 106 Nシリーズ, Pシリーズ Sn/Pbはんだ 105 104 103 5 10 50 100 500 (a)従来品(2 in1 × 3) (b)U シリーズ(6 in1) ΔT (deg) j はんだとボンディングワイヤの,おのおのの寿命の合成で ゲート構造と薄ウェーハ技術の融合により IGBT としては 求まることを確認し,寿命向上のためチップ下はんだをす 究極に近い姿となり,装置の低損失化ならびに小型化に大 (2 ) ず系の高剛性材料に変更する技術を報告した。 今回Uシリーズではこの技術を全面適用し,図10に示す きく寄与している。IGBT モジュールの性能を最大限生か すためには装置における最悪条件を理解し,その条件にお ように,例えばΔ 40 deg においては従来比 10 倍以上に耐 ける放熱器を含む熱検証をしたうえ,最適な素子を選択す 量を向上させている。逆に従来と同等の耐量であれば,従 ることが現在要求される事項である。そのための要素技術 来 40 deg 以下であった温度変化を 60 deg まで上げること を開発したが,今後さらにレベルを向上させ,製品に適用 が可能である。 していく所存である。 図11は従来品の 1,200 V/150 A 素子とUシリーズとのモ ジュールの比較を示したものであるが,上述技術の適用に よりベース面積で 40 %の小型化を達成している。 参考文献 (1) Laska, T. et al.The Field Stop IGBT(FS- IGBT)ー A New Power Device Concept with a Great Improve- あとがき ment Potential. Proceedings of the 12th ISPSD. 2000, p.355- 358. 超低損失 U シリーズ IGBT モジュールの開発にあたり, (2 ) Morozumi, A. et al.Reliability of Power Cycling for 富士電機のチップ技術ならびにパッケージ技術について概 IGBT Power Semiconductor Module. Conf. Rec. IEEE 略を紹介した。特に U シリーズ IGBT チップはトレンチ Ind. Appl. Conf.36th. 2001,p.1912- 1918. 558(10) 富士時報 Vol.75 No.10 2002 T,U シリーズ IGBT モジュール(600 V) 百田 聖自(ももた せいじ) 宮下 秀仁(みやした しゅうじ) 脇本 博樹(わきもと ひろき) まえがき T シリーズ IGBT モジュール IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)モジュール は,モータコントロールなどのパワーエレクトロニクス分 野では現在最も普及しているパワーデバイスである。それ は駆動の容易性に加え,発生損失低減および破壊耐量向上 2.1 T シリーズ IGBT の特徴と課題 NPT 型 IGBT の単位セル構造を PT(Punch Through) 型 IGBT の単位セル構造と比較して図1に示す。これは以 下のような特徴を持っている。 などによる信頼性改善が進み,市場の評価を受けているた (1) コレクタ側からの注入を抑制できるのでライフタイム めである。特に 600 V IGBT モジュールは国内では 220 V コントロールが不要であり,高温でもスイッチング損失 の産業用電源に,また欧州などの海外では 200 V の一般用 が増加しない。 電源を利用している地域などの広い市場で,欠かすことの (2 ) 出力特性の温度依存性が正(高温でオン電圧が増加) であるので,並列使用に有利である。 できない重要なデバイスとしての役割を果たしている。 このような状況の中,富士電機も 600 V IGBT モジュー (3) 負荷短絡耐量などの破壊耐量が高い。 ルを 1988 年の開発当初から特性改善を進めつつ系列化を (4 ) FZ(Floating Zone)ウェーハを利用できるので安価 行ってきたが,2001 年にはウェーハを薄く加工する技術 であり,また低結晶欠陥であるので信頼性も高い。 の開発により,NPT(Non Punch Through)化技術を 課題としては薄いウェーハの加工技術の確立がある。 600 V 用デバイスにまで適用できるようになった。これに NPT 型デバイスではコレクタ - エミッタ(CE)間耐圧を より低スイッチング損失で,特に高周波用途に適した製品 確保しつつ,オン電圧を低くすることが重要である。それ として「T シリーズ IGBT」を開発し系列化した。 には CE 間に最大電圧が印加された際にも,空乏層端が NPT 化技術の開発が主にチップ裏面構造の開発であっ PT しない厚さとする必要があるが,CE 間耐圧の低いデ たのに対し,2002 年からはチップ表面構造の改善を実施 バイスではその最適厚さは薄くなり,加工は困難となる。 した。その結果,チャネル密度を増加させ,さらに余分な 電圧降下成分を削除することにより,定常損失をも低減す ることができるトレンチ構造の開発を行った。これにより, 図1 単位セル構造の比較 現在このクラスでは最も低損失のデバイスとして「U シ ンプル展開を実施しているところである。 G E G n− また,IGBT モジュールに内蔵されている FWD(Free n− n+ p+ Wheeling Diode)も,損失低減とともに,よりソフトリ その装置自身の誤動作防止だけではなく,放射ノイズが周 C p+ 350 m カバリーな特性が求められている。それは発振などによる E 100 m リーズ IGBT」の開発に成功し,現在系列化を進めつつサ 辺機器や人体へ与える悪影響を懸念しているからである。 この要求に応えるべく,上述の新しい IGBT モジュールに は新構造の FWD の開発も合わせて実施し採用した。本稿 ではこれらの素子技術と製品系列に関して紹介する。 C (a)PT型 IGBT 百田 聖自 (b)NPT型 IGBT 宮下 秀仁 脇本 博樹 IGBT チップの開発に従事。現在, IGBT モジュールの開発・設計お パワーデバイスの研究・開発に従 富士日立パワーセミコンダクタ よび応用技術の開発に従事。現在, 事。現在,富士電機総合研究所デ 富士日立パワーセミコンダクタ バイス技術研究所。電気学会会員。 (株)松本事業所開発設計部チーム リーダー。 (株)松本事業所開発設計部チーム リーダー。電子情報通信学会会員。 559(11) 富士時報 T,U シリーズ IGBT モジュール(600 V) Vol.75 No.10 2002 負荷短絡波形を図5に示す。負荷短絡時には素子はその 発生損失による温度上昇で破壊に至る。しかし n-ドリフ 2.2 NPT 型デバイスへの富士電機の取組み 富士電機は図2に示すように NPT 化の技術には早くか ト層が厚い NPT 型デバイスは電圧をこの広い n-ドリフト ら取り組んできており,より困難な低耐圧デバイスへこの 層で支えるために,温度上昇が緩和され,結果として高い 短絡耐量を得ることができる。PT 型の耐量が 15 μs であ 技術の適用を進めてきた。 600 V IGBT に適用するための最適厚さはさまざまな研 究から 100 μm程度とされていたが,富士電機はウェーハ るのに対し,NPT 型は 22 μs の実力があり,通常必要と される 10 μs に対し十分なマージンを持って保証できる。 仕様の見直しと,バックグラインド加工技術の精度向上に Uシリーズ IGBT より,厚さの設計値を他社より薄く設定することが可能と なった。これは発生損失の要素であるオン電圧とターンオ フ損失の低減に効果があった。 3.1 U シリーズ IGBT の表面セル構造 チップ裏面構造の改善を行った T シリーズ IGBT の性 能をさらに向上させるために,表面構造の改善を行った。 2.3 T シリーズ IGBT の特性 以下にその特性の概要を紹介する。図3は CE 間耐圧で 富士電機ではトレンチ型のパワー MOSFET(Metal Ox- ある VCES 波形の比較であるが,PT 型デバイスと同様に ide Semiconductor Field Effect Transistor)を生産して NPT 型デバイスも最大定格電圧の 600 V 以上で 800 V 程 いるが,これには車両用にも搭載可能な高い信頼性を保証 度の耐圧である。 するための設計とプロセス技術が適用されている。この技 ターンオフ波形の比較を図4に示す。PT 型デバイスで はコレクタ側からの注入が多いので,ターンオフ時にキャ 術を IGBT に応用したのが U シリーズ IGBT である。T シリーズのプレーナ型セル構造との比較を図6に示す。 リヤの再結合を促すために,ライフタイムコントロールを トレンチ型 IGBT ではセル密度を大幅に増加させられる 実施している。この効果は高温では低減するために,ター のでチャネル部の電圧降下を最低限に抑えることができる。 ンオフが遅くなり,損失が増加する傾向がある。一方, また,プレーナ型デバイス特有のチャネル間に挟まれた NPT 型デバイスではライフタイムコントロールを実施し JFET といわれる部分がトレンチ型デバイスでは存在しな ていないためにその温度特性がなく,結果としてターンオ フ波形は高温でも変わらず,ターンオフ損失増加も生じな 図4 ターンオフ波形の比較 い。 図2 富士電機の NPT 技術適用の推移 I C =100 A VCC =300 V Tj = 室温 400 ウェーハ厚さ( m) PT 300 1,800 V-NPT Tj = 125 ℃ 1,400 V-NPT 200 1,200 V-NPT 600 V-NPT 100 デバイス: 600 V/ 100 A R g =24Ω 200 ns 0 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 年 (a)PT型デバイス (Sシリーズ) (b)NPT型デバイス (Tシリーズ) 図5 負荷短絡波形の比較 図3 PT 型デバイスと NPT 型デバイスの VCES 波形の比較 −3 条件 V CC = 400 V V GE = ±15 V R g= 24Ω Tj = 125 ℃ −3 2.0×10 2.0×10 I C(A) I C(A) VCE 1.0×10−3 0 0 200 400 600 800 V CES(V) (a)PT型デバイス (Sシリーズ) 560(12) 1,000 IC 1.0×10−3 0 15 s 0 200 400 600 800 V CES(V) (b)NPT型デバイス (Tシリーズ) 1,000 22 s I C:250 A/div,VCE :100 V/div,時間:5 s/div (a)PT型デバイス (Sシリーズ) (b)NPT型デバイス (Tシリーズ) デバイス: 600 V/ 100 A 富士時報 T,U シリーズ IGBT モジュール(600 V) Vol.75 No.10 2002 いので,この部分の電圧降下を完全に削減できる。しかし, 図8に電流密度を同一にした場合の IGBT の発生損失の 低耐圧用のパワー MOSFET のセル設計をそのままでは適 計算結果の比較を示す。NPT 型構造の適用により T シ 用できないので,600 V IGBT 用に適したセルピッチおよ リーズではターンオフ損失が大幅に低減し,トータルでは びトレンチの深さとする必要があり,U シリーズ IGBT で S シリーズに比べ約 10 %の損失低減となっている。また はシミュレーションおよび実験によりこの最適値を求め適 VCE(sat)の低減により定常損失が低下した U シリーズでは, 用した。 さらに 10 %の損失低減がされている。 FWD の改善 3.2 U シリーズ IGBT の特性 上記内容に基づき設計された U シリーズ IGBT の諸特 性を説明する。まずコレクタ - エミッタ間飽和電圧(VCE IGBT モジュールには IGBT とともに FWD も内蔵され (sat))とコレクタ電流密度(JC)の出力特性の比較を 図7 ているが,FWD には発生損失低減とソフトリカバリー化 に示す。 が要求される。この改善には,ウェーハ仕様の最適化,ア 2 電流密度 185 A/cm (Tj = 125 ℃のとき)での VCE(sat) ノード側からの注入抑制,最適なライフタイムコントロー が 2.15 V から 1.70 V まで大幅に低減した。また室温と高 ルの実施がある。富士電機ではこれらを見直した新設計の 温の出力特性の交点がより低電流域にあり,通常使われる FWD の開発を行った。出力特性を図9に示す。 領域での温度特性が正である。この特性はモジュールを並 結果として,順方向電圧(VF)が低下しており,IGBT 列使用する場合などに素子間の動作アンバランスを低減で と同様に正の温度特性が得られた。またキャリヤの注入を き,製品としての長寿命化が図れる。この特性は前述した 抑制したので,逆回復時のピーク電流が減少し,発生損失 ように NPT 型ウェーハではライフタイムコントロールを が低減しているとともに,ソフトリカバリーな特性も得ら 実施していないことと,n-ドリフト層が厚いためであり, れた。これらにより,低発生損失で低ノイズな FWD が実 T シリーズおよび U シリーズに共通した特徴である。 現し,Uシリーズのモジュールに採用した。 図6 プレーナ型とトレンチ型セル構造の比較 図8 各種デバイスの発生損失比較 エミッタ 電極 :ターンオン損失 :ターンオフ損失 :定常損失 60 n+ ソース ゲート 酸化膜 n+ ソース p− チャネル V-pn R-drift R-acc R-ch p− チャネル R-acc V-pn n−シリコン 基盤 p+層 50 IGBT部発生損失(W) ゲート電極 R-ch R-drift R-JFET 層間絶縁膜 20 Nシリーズ Sシリーズ Tシリーズ Uシリーズ 図9 FWD の出力特性 300 100 125 ℃ 125 ℃ 125 ℃ 125 ℃ 250 Uシリーズ 80 Sシリーズ 200 J a(A/cm2) J C(A/cm2) 30 0 (b)トレンチ型 図7 出力特性の比較 室温 150 室温 100 新構造 従来品 室温 60 室温 40 20 50 0 0 40 10 コレクタ 電極 (a)プレーナ型 インバータ条件 デバイス:600 V /100 A f out=50 Hz I out=50 Arms f c=10 kHz 力率=0.85 0.5 1.0 2.5 1.5 2.0 V CE(sat(V) ) 3.0 3.5 4.0 0 0 0.5 1.0 1.5 2.5 2.0 V F(V) 3.0 3.5 4.0 561(13) 富士時報 T,U シリーズ IGBT モジュール(600 V) Vol.75 No.10 2002 表2 U シリーズ IGBT の主要定格と特性 表1 U シリーズ IGBT の系列 パッケージ 電流定格 8A 10 A 小容量 PIM EP2 EP3 発売時期 (a)絶対最大定格(記述がなければ T c=25℃) 項 目 7MBR8UE060 7MBR10UE060 最大定格 単位 V CES 600 V ゲート - エミッタ間電圧 V GES ±20 V 7MBR15UE060 20 A 7MBR20UE060 IC 連続 400 30 A 7MBR30UE060 I C pulse 1ms 800 20 A 7MBR20UA060 −I C 30 A 7MBR30UA060 − I C pulse 1ms 800 50 A 7MBR50UA060 最 大 損 失 Pc 1デバイス 1,135 W 50 A 7MBR50UB060 接 合 温 度 Tj 150 ℃ 75 A 7MBR75UB060 保 存 温 度 Tstg −40∼+125 ℃ 7MBR100UB060 絶 縁 耐 圧(パッケージ) 2,500 V 20 A 7MBR20UC060 30 A 7MBR30UC060 50 A 7MBR50UC060 75 A 7MBR75UD060 コ 100 A 7MBR100UD060 100 A 7MBI100UD-060 150 A 7MBI150UD-060 200 A 7MBI200UD-060 300 A 7MBI300UD-060 150 A 2MBI150UA-060 200 A 2MBI200UA-060 300 A 2MBI300UB-060 400 A 2MBI400UB-060 2003 年 4 月 M233 600 A 2MBI600UE-060 400 A 6MBI400U-060 レ ク タ 電 流 A V iso AC:1min マウンティング 3.5 ターミナル 3.5 N・m (b)電気的特性(記述がなければ T c=25℃) 特 性 項 目 記 号 条 件 6MBI600U-060 単位 typ. max. I CES V GE =0 V V CE =600 V ー ー 2.0 mA ゲート - エミッタ 間漏れ電流 I GES V CE =0 V V GE =±20 V ー ー 0.4 A ゲート - エミッタ 間しきい値電圧 VGE(th) V CE =20 V I C =400 mA ー 6.0 ー T j =25℃ ー 1.8 ー T j =125℃ ー 1.9 ー T j =25℃ ー 1.6 ー T j =125℃ ー 1.7 ー ー 40 ー ー ー 1.2 ー ー 0.6 ー ー 1.0 VCE(sat) コレクタ エミッタ間 飽和電圧 (Terminal) VCE(sat) V GE = 15 V IC= 400 A (Chip) 入 力 容 量 V GE =0 V V CE =10 V f =1MHz C ies ターンオン時間 V CC =600 V I C =400 A V GE =±15 V R g =0.5 Ω tr t off ターンオフ時間 (Terminal) ダイオード 順方向電圧 IF= 400 A nF s tf VF V V t on 図10 U シリーズ IGBT の代表パッケージ min. コレクタ - エミッ タ間漏れ電流 M629 600 A 400 ね じ 締 め ト ル ク M232 M238 条 件 コレクタ - エミッタ間電圧 HEP3 7in1 (M631 または M621) 記 号 15 A 100 A HEP2 型 名 ー ー 0.35 T j =25℃ ー 1.8 ー T j =125℃ ー 1.7 ー T j =25℃ ー 1.6 ー T j =125℃ ー 1.5 ー ー ー 0.3 V V F(Chip) 逆 回 復 時 間 t rr I F =150 A s (c)熱抵抗特性 特 性 項 目 系列紹介 記 号 デバイスの熱抵抗 (1デバイス) R th(j-c) ケース - フィン間熱抵抗 R th(c-f) 条件 単位 min. typ. max. IGBT ー ー 0.11 FWD ー ー 0.18 ー 0.025 ー ℃/W 表 1 に U シリーズ IGBT の系列と発売時期, 図10に代 表パッケージの外観を示す。また, 表 2 に U シリーズ IGBT モジュールの主要定格と特性を示す。 シリーズと U シリーズの紹介を行った。富士電機では今 後さらに IGBT 独自の技術開発や,他の半導体デバイスの あとがき 技術を取り入れて,その高性能化を進めるとともに,パ ワーエレクトロニクス全体の発展に貢献していく所存であ 600 V IGBT モジュール用として,NPT 型デバイスの T 562(14) る。 富士時報 Vol.75 No.10 2002 U シリーズ IGBT モジュール(1,200 V) 小野澤 勇一(おのざわ ゆういち) 吉渡 新一(よしわたり しんいち) まえがき 大月 正人(おおつき まさひと) ターンオフ損失のトレードオフを,図2に出力特性の比較 を示す。図1から,1,200 V U シリーズ IGBT のトレード 汎用インバータや無停電電源装置(UPS)に代表される オフが,前世代の S シリーズ〔プレーナ NPT(Non Punch 電力変換機器は,常に高効率化・小型化・低価格化・低騒 Through)- IGBT〕に対して飛躍的に改善されていること 音化が要求されている。このため,インバータ回路に用い が分かる。上記の劇的な特性改善は NPT を進化させた られる電力変換用素子にも高性能化・低価格化が求められ フ ィ ー ル ド ス ト ッ プ 構 造 と , MOSFET( Metal Oxide ている。電力変換用素子にはその低損失性,駆動回路の容 Semiconductor Field Effect Transistor)で培われたトレ 易さから,現在では IGBT(Insulated Gate Bipolar Tran- ンチゲート構造の採用によるものである。次節でそれぞれ sistor)が主に使われており,富士電機においても 1988 年 の構造を解説する。 の製品化以来,さらなる低損失化・低価格化を進めてきた。 本稿では,トレンチゲート構造とフィールドストップ 2.1 フィールドストップ構造 (FS)構造の採用により,第四世代 IGBT モジュール(S 図3 にプレーナ NPT-IGBT とプレーナ FS-IGBT の断 シリーズ)に対して,大幅にトレードオフ特性を改善した 面図を示す。NPT-IGBT ではオフ時に空乏層がコレクタ 第五世代 IGBT モジュール(U シリーズ)のうち,主に海 側に接触しないようにドリフト層を厚くする必要があるが, 外の 400 V AC 電源ラインで使用される 1,200 V 系につい FS-IGBT では空乏層を止めるためのフィールドストップ て紹介する。 層が形成されているため,NPT に対してドリフト層の厚 さを薄くできる。このため,VCE(sat)を低減することがで 新型 IGBT の特徴 きる。また FS-IGBT ではドリフト層の厚さが薄いため過 剰キャリヤが少なく,また空乏層が伸びきった状態での中 図 1 に 今 回 開 発 を 行 っ た 新 型 IGBT( ト レ ン チ FS - IGBT)のコレクタ - エミッタ間飽和電圧(VCE(sat))と 図1 VCE(sat)- ターンオフ損失間のトレードオフ 図2 出力特性の比較 160 トレンチFS-IGBT 1,200 V/150 A V CC=600 V,I C=150 A, V G=+15 V/−15 V 125 ℃ 20 125 ℃ 室温 15 プレーナ NPT-IGBT 室温 トレンチ FS-IGBT 10 5 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 ことができる。 コレクタ電流密度 J C(A/cm2) ターンオフ損失(mJ/pulse) 25 性領域の残り幅が少ないため,ターンオフ損失を低減する 2.6 125 ℃ 120 室温 125 ℃ 80 プレーナNPT-IGBT 40 0 0 2.8 室温 トレンチFS-IGBT 0.5 V CE(sat(V) ) 1.0 1.5 2.0 V CE(sat(V) ) 2.5 小野澤 勇一 吉渡 新一 大月 正人 3.0 パ ワ ー 半 導 体 デ バ イ ス , MOS IGBT モジュール開発設計および パ ワ ー 半 導 体 デ バ イ ス , MOS ゲートパワーデバイスの研究開発 応用技術開発に従事。現在,富士 ゲートパワーデバイスの研究開発 に従事。現在,松本工場半導体基 日立パワーセミコンダクタ(株)松 に従事。現在,富士日立パワーセ 盤技術開発部。 本事業所開発設計部。 ミコンダクタ(株)松本事業所開発 設計部。 563(15) 富士時報 U シリーズ IGBT モジュール(1,200 V) Vol.75 No.10 2002 図5 短絡波形 図3 IGBT 単位セルの断面比較 ゲート ゲート エミッタ n+ p 短絡試験( Vcc=800 V,T j =125 ℃のとき) エミッタ n+ p VGE n−(ドリフト層) n−(ドリフト層) VCE VGE =0 フィールドストップ層 コレクタ n p T W =24.6 s E SC=8.36J IC 空乏層端 VCE ,I C =0 p コレクタ (a)プレーナNPT-IGBT 1,200 V/150 Aトレンチ FS- IGBT V CE:200 V/div,I C:500 A/div, 時間:5 s/div,V GE:20 V/div (b)プレーナFS-IGBT 図4 IGBT 単位セルの断面比較 図6 ターンオン波形比較 エミッタ エミッタ 層間絶縁膜 ターンオン ( T j =125 ℃のとき) 1,200 V/50 A 従来型 PiN n+ p n+ p コレクタ コレクタ (a)プレーナFS-IGBT (b)トレンチFS-IGBT T1 n− TR16 ゲート n− VCE :200 V/div I C:25 A/div 時間:200 ns/div 新型 FWD T2 ゲート 層間絶縁膜 図7 FWD の出力特性の比較 2.2 トレンチゲート構造 100 図 4 にトレンチ FS-IGBT の断面図を示す。トレンチ ゲート構造を用いることによって,チャネル密度を向上さ を大幅に低減することができる。 一方でトレンチ IGBT ではチャネル密度が高いため,短 絡耐量が低いことが問題になるが,本構造では MOS の総 チャネル長を最適化することにより,VCE(sat)を犠牲にす 。 ることなく,高い短絡耐量を実現している(図5) 80 1,200 V/75 A FWD 60 40 125 ℃ 室温 20 0 順方向電流(A) と問題になる JFET 部分の抵抗も零にできるため,VCE(sat) 従来型PiN 80 順方向電流(A) せることができるとともに,プレーナでセル密度が上がる 100 新型FWD 60 125 ℃ 40 室温 20 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 順方向電圧(V) 0 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 順方向電圧(V) 新型 FWD の特徴 IGBT の高速化に伴い,スイッチング時の振動が大きな 問題になっている。富士電機では,FWD(Free Wheeling Diode)の表面構造とバルクの不純物プロファイルを最適 また,今回開発した FWD ではライフタイムキラーの最 化することにより,ソフトリカバリー化を実現し,高 適化により出力特性の温度係数を正にしたことにより,並 。 di/dt においても振動を抑制することに成功した(図6) 列運転に適したデバイスとなった(図7) 。 564(16) 富士時報 U シリーズ IGBT モジュール(1,200 V) Vol.75 No.10 2002 表1 1,200 V U シリーズ IGBT モジュールの特性 表2 1,200 V U シリーズ IGBT モジュールの系列概要 (a)絶対最大定格(記述がなければ T c =25 ℃) 項 目 記 号 コレクタ エミッタ間電圧 ゲート エミッタ間電圧 条 件 最大定格 単位 V CES 1,200 V V GES ±20 V IC Tc =25 ℃ 150 Tc =80 ℃ 100 Tc =25 ℃ 300 A 200 1ms − I C pulse Pc 接 合 温 度 Tj 200 1素子 保 存 温 度 Tstg 絶縁耐圧 (パッケージ) V iso EP3 100 −I C 600 W 150 ℃ −40∼+125 ℃ 2,500 V AC:1min マウンティング 3.5 ターミナル 3.5 HEP3 (b)電気的特性(記述がなければ T c =25 ℃) 新型 PC2 特 性 記 号 条 件 typ. max. ー 1.0 I CES V GE =0 V V CE =1,200 V ー ゲート エミッタ間 漏れ電流 I GES V CE =0 V V GE =±20 V ー ー 0.2 ゲート エミッタ間 しきい値電圧 VGE(th) V CE =20 V I C =100 mA ー 7.0 ー T j =25℃ ー 1.95 ー T j =125℃ ー 2.2 ー T j =25℃ ー 1.75 ー T j =125℃ ー mA 1,200 (Terminal) V CE(sat) V GE = 15 V IC= 100 A (Chip) 入 力 容 量 C ies 出 力 容 量 C oes A 2.0 ー 0.8 ー ー t on 1.2 ー ー V CC =600 V I C =100 A V GE =±15 V R g =4.7 Ω ターンオフ時間 nF t rr ー ー 0.6 ー ー 1.0 ー ー 0.3 T j =25℃ ー 2.0 ー T j =125℃ ー 2.0 ー T j =25℃ ー 1.8 ー T j =125℃ ー 1.8 ー ー ー 0.35 R th(j-c) ケース - フィン間熱抵抗 R th(c-f) 7MBR35UA120 35 7MBR35UB120 50 7MBR50UB120 75 7MBR75UB120 10 7MBR10UC120 15 7MBR15UC120 25 7MBR25UC120 35 7MBR35UC120 35 7MBR35UD120 50 7MBR50UD120 75 7MBR75UD120 75 6MBI75UA-120 75 6MBI75UB-120 100 6MBI100UB-120 150 6MBI150UB-120 2003 年 4 月 6MBI75UC-120 100 6MBI100UC-120 150 3MBI150UC-120 150 3MBI150U-120 75 7MBI75UD-120 100 7MBI100UD-120 150 7MBI150UD-120 2MBI75UA-120 100 2MBI100UA-120 150 2MBI150UA-120 150 2MBI150UB-120 200 2MBI200UB-120 200 2MBI200UC-120 300 2MBI300UC-120 M235 300 2MBI300UD-120 300 2MBI300UE-120 450 2MBI450UE-120 225 大容量 モジュール 6MBI225U-120 300 6MBI300U-120 450 6MBI450U-120 s 1,200 V U シリーズ IGBT モジュールの系列 特 性 デバイスの熱抵抗 (1素子) 7MBR25UA120 35 M238 V I F =100 A 記 号 25 M234 1.2 (c)熱抵抗特性 項 目 7MBR15UA120 M233 V F(Chip) 逆 回 復 時 間 15 75 V F(Terminal) IF= 100 A 7MBR10UA120 ー s tf ダイオード 順電圧 7MBR15UE120 10 ー 13.3 ー t off 7in1 (M631 または P611) M232 ー tr V V V GE =0 V V CE =10 V f =1MHz ターンオン時間 15 75 C res 帰 還 容 量 7MBR10UE120 新型 PC3 新型 PC2 コレクタ エミッタ間 飽和電圧 10 発売時期 単位 min. コレクタ エミッタ間 漏れ電流 V CE(sat) 型 名 HEP2 N・m ねじ締めトルク 項 目 電流定格 (A) EP2 1ms Tc =80 ℃ 最 大 損 失 パッケージ 小容量 PIM 連続 I C pulse コ レ ク タ 電 流 電圧定格 (V) 条件 単位 min. typ. max. IGBT ー ー 0.21 FWD ー ー 0.33 ー 0.05 ー ℃/W と特性 1,200 V U シリーズ IGBT モジュールの特性を 表1 ,系 列概要を 表2 に示す。また,1,200 V U シリーズ IGBT の パッケージ一覧を図8,系列相関を図9に示す。 565(17) 富士時報 U シリーズ IGBT モジュール(1,200 V) Vol.75 No.10 2002 図8 1,200 V U シリーズ IGBT モジュールのパッケージ一覧 PIM 6 in 1 EP2 PC3 107.5 7 in 1 HEP2 122 16 107.5 110 M5 2 in 1 M232 16 16 51 50 45 62 34 93 EP3 大容量モジュール 122 30 23.5 17 20.5 17 20.5 92 HEP3 M6 U V 122 W M233 70 110 − + 50 − + 50 162 小容量 PIM1 M631 17 22 30 + 50 23.5 122 137 50 150 92 − 17 20.5 62 45 110 M235 118 62 57 85 31.4 B P N 108 W 20 30 V 22 20.5 U 小容量 PIM2 M238 33.4 80 65.6 30 20.5 110 図9 1,200 V U シリーズ IGBT モジュールの系列相関図 あとがき 定格 電流 系列 小容量 PIM PIM 5A 10A 15A 25A 35A 50A 75A 100A 150A 200A 300A 450A 600A (5.5 kW) (11kW) (22 kW) (40 kW) (75 kW) 1,200V U シリーズについて概略を紹介した。特にこの 小容量PIM シリーズの IGBT は,トレンチゲート構造とフィールドス EP2/HEP2 EP3/HEP3 6 in 1 トップ構造という二つの新しい技術の採用により,非常に 温度センサ付き 新型PC3 (6 in 1) 温度センサ付き M631(7 in 1) 低損失なデバイスとなっており,装置の小型化・低損失化 に大きく貢献できると確信している。 大容量 モジュール (6 in 1) 2 in 1 /1 in 1 M232 M233 新型PC3 PIM/ EP ベクトル制御用 6 in 1 (Nラインオープン) (シャント抵抗付き) M238 M235 今後も,デバイスの高性能化・高信頼性化に取り組み, パワーエレクトロニクスの発展に貢献していく所存である。 M138 参考文献 (1) Laska, T. et al.The Field Stop IGBT(FS IGBT)ーーー A New Power Device Concept with a Great Improvement Potential. Proc. 12th ISPSD.2000,p.355- 358. (2 ) 西村武義ほか.トレンチゲート MOSFET.富士時報. vol.72,no.3,1999,p.180- 182. 566(18) 富士時報 Vol.75 No.10 2002 U シリーズ IGBT モジュール(1,700 V) 星 保幸(ほし やすゆき) 宮坂 靖(みやさか やすし) 村松 健太郎(むらまつ けんたろう) まえがき と Eoff(ターンオフ損失)のトレードオフを悪化させてい た。 近年,電力変換器や可変速モータコントロールインバー 今回の 1,700 V 用 U シリーズ IGBT の定格電流密度は タ用に高耐圧パワーデバイスの要求が高まってきている。 130 A/cm2 以上と高く設定するために,いかにして IGBT IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)は特にスイッ に内蔵されているワイドベーストランジスタのベース電流 チング特性のゲート制御性(電圧制御)や保護の容易性の を増加させるかがポイントであった。このため表面構造の 点でバイポーラトランジスタや GTO(Gate Turn-Off)サ 最適化を図るために表面構造,裏面構造のシミュレーショ イリスタに比べて優れた特性を持っており,これらデバイ ンを行った。その結果,表面構造はトレンチゲート構造を スからの置換えが可能となってきた。特に総合損失の低減 適用した。トレンチゲート構造を適用することにより,プ 技術と安全動作領域の拡大技術など相反する特性をデバイ レーナ構造に存在していた表面の JFET の抵抗をなくし, スデザイン,プロセスデザイン,応用デザインなどによる セル密度の増加に伴い表面からの電子電流を増加させ十分 総合技術によって IGBT の開発が進み,経済性,信頼性な なベース電流を確保した。全電流のうち,電子電流の比率 ど市場の要求に応えていることが評価を高めている要因で を増加させることはターンオフ時の損失低減を可能とした。 ある。今回,装置のさらなる大電流化,小型化,高信頼性 次にさらなる特性向上を図るために FS 構造を開発し適 化の要求に応えるために 1,700 V 用 U シリーズ IGBT モ 用した。FS 構造にすることによって基板ウェーハの抵抗 ジュールの開発を行った。IGBT の総合損失の改善を図る 分を低下することができるため,VCE(sat)の低下と Eoff の ために表面構造はトレンチ構造を適用し,裏面は薄ウェー 低減が同時に可能となる。上記表面トレンチゲート構造と ハ技術を適用した FS(Field Stop)構造を適用し,両者 FS 構造を組み合わせた VCE(コレクタ - エミッタ間電圧) の特性の最適化を図ることで総合損失のきわめて低い と ICE(コレクタ - エミッタ間電流)の出力特性(125 ℃) IGBT の開発に成功した。また高速・低損失の IGBT の開 を図1に示す。 発 に あ た っ て は 周 辺 素 子 , 例 え ば IGBT モ ジ ュ ー ル の 最大の特徴はトレンチゲート構造を適用しているにもか IGBT に逆並列に接続されている FWD(Free Wheeling Diode)の特性向上も同時に求められる。両者は相互作用 図1 U シリーズ IGBT の出力特性(1,700 V/150 A 素子) を及ぼしあっており,むしろ一体のものと考えるべきであ る。今回 1,700 V U シリーズ IGBT モジュールの開発にあ 700 たって FWD の損失低減のほかにノイズ低減のためのソフ 600 V G=15 V T =25 ℃ トリカバリー特性を有した FWD の開発も行った。本稿で 500 I CE(A) は特にデバイスの特徴と製品系列について紹介する。 新型 IGBT の特徴 従来の IGBT の表面構造はプレーナ IGBT で構成されて いるためトータルのセル密度が低いこと,および表面の JFET 抵抗分によってコレクタ - エミッタ間飽和電圧(VCE (sat))を悪化させていた。また,ウェーハの基板は NPT T =125 ℃ 400 300 200 100 0 0 1.0 2.0 3.0 4.0 V CE(V) 5.0 6.0 7.0 (Non Punch Through)構造のため厚くなっており VCE(sat) 星 保幸 宮坂 靖 村松 健太郎 IGBT,FWD の開発設計に従事。 IGBT,FWD の開発設計に従事。 IGBT モジュールの開発設計およ 現在,富士日立パワーセミコンダ 現在,富士日立パワーセミコンダ び応用技術の開発に従事。現在, クタ(株)松本事業所開発設計部 クタ (株) 松本事業所開発設計部。 チームリーダー。 富士日立パワーセミコンダクタ (株) 松本事業所開発設計部。 567(19) 富士時報 U シリーズ IGBT モジュール(1,700 V) Vol.75 No.10 2002 かわらず,飽和電流は定格 150 A に対して定格× 3.6 倍程 (定格電流 150 A) 。VCE(sat) が 2.5 V のとき,Eoff は 34 mJ 度の飽和電流まで抑制されており,かつ飽和電圧を 2.5 V である。図4はターンオン時の波形を示し,di/dt は 2,700 までに低減できていることである。表面構造は単にトレン A/μs である。トレンチゲート構造と FS 構造の効果に チゲート構造にするだけでなく,表面構造のセルピッチお よって高速なターンオン波形を示しており,VCE( sat) が よび特にトレンチの深さ,および Vth(しきい値電圧)を 2.5 V のときの Eon(ターンオン損失)は 31 mJ である(図 最適化するといったプロセスとデバイスの総合的な改善に 5) 。図6に耐圧波形を示す。耐圧は 1,900 V 以上あり,十 よって初めて低抵抗な IGBT を達成できたことである。こ 分な実力を確認した。 の効果によって VCE(sat) -Eoff のトレードオフは従来の構 図 7 に SCSOA(Short Circuit Safe Operating Area) 。 造に比べて大幅な特性改善を達成した(図2) 図3は 125 ℃におけるL負荷時のターンオフ波形を示す 80 E on(mJ) 〔 I c=150 A, T j=125 ℃〕 E off(mJ) 〔 I c=150 A, V CC=900 V, V GE=+15 ∼−15 V〕 図2 U シリーズ IGBT の Von-Eoff 特性 80 70 60 従来品 50 40 30 図5 U シリーズ IGBT の Von-Eon 特性 Uシリーズ 20 70 60 従来品 50 40 30 Uシリーズ 20 10 0 1.5 2.0 10 0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 V on(V) 〔 I c=150 A, T j=125 ℃〕 4.5 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 V on(V) 〔 I c=150 A, T j=125 ℃〕 5.0 5.0 図6 耐圧波形 図3 ターンオフ波形 CH1:200 V/div CH2:50 A/div 時間:500 ns/div V CE E off = 34.3594 mJ t f =490 ns t off =990 ns di /dt = 1,150 A/ s I CE 0V 0A T j =125 ℃ No.1-2 図7 SCSOA 波形 図4 ターンオン波形 t W :18.4 s CH1:200 V/div CH2:100 A/div 時間:500 ns/div I CE E on = 30.2736 mJ t on =640 ns t r =380 ns I peak =332 A di /dt = 2,700 A/ s VG I CE V CE VG 0 V fwd 22GF001 0V 0A 568(20) V CE 0 V,0 A T j =125 ℃ No.45-3 500 V/div 250 A/div 5 s/div U シリーズ IGBT モジュール(1,700 V) Vol.75 No.10 2002 図10 U シリーズ FWD の VF-Err 特性 図8 RBSOA 波形 500 V/div 500 A/div I V E rr(mJ) 〔 I F=150 A, V cc=900 V, T j=125 ℃〕 富士時報 70 60 50 40 30 20 10 0 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 V F(V) 〔 I F=150 A, T j=125 ℃〕 4.0 図9 損失計算結果 図11 U シリーズ FWD の出力特性 600 450 A/1,700 V 素子 T j=125 ℃, V in=690 V AC,f o=50 Hz, I o=210 Arms,cosΦ=0.85 400 T =25 ℃ 350 506 W 400 275 W E off I F(A) 損失(W) T =125 ℃ 300 E on 390 W 250 200 150 200 100 VCE(sat) 0 f c=2 kHz 4 kHz 6 kHz 50 0 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 V F(V) 3.0 3.5 4.0 の波形を示す。短絡時のピーク電流を 600 A 程度(定格× 4 倍)に抑制し SCSOA の実力は約 15μs 以上を有する。 図12 FWD の低電流スイッチング波形 従来,トレンチゲート構造を適用した IGBT は SCSOA の 実力が弱いといった課題があった。今回の 1,700V 用 U シ リーズの IGBT は表面トレンチ構造の最適化を図ることで IF SCSOA の十分な実力を確保できた。図8に 125 ℃の RBS OA(Reverse Bias Safe Operating Area)の実力を示す。 VCE = 1,700 V で定格× 8 倍の実力を有し高破壊耐量を確 認した。図9に各周波数における損失計算結果を示す。 新型 FWD の特徴 0A V CE 500 V/div 5 A/div 100 ns/div 0V FWD は IGBT モジュールでは IGBT に対して逆並列に 接続されて使用されており,FWD の特性改善も重要なポ イントである。IGBT のターンオン時の FWD のリカバ リー特性を改善することはサージ電圧の発生を抑制し, る。従来の FWD の基板設計はエピタキシャルウェーハを IGBT へのダメージおよび周辺回路への悪影響,例えば誤 使用していた。今回 1,700 V 用 U シリーズの開発にあたっ 動作などを抑制し,かつターンオン時の損失低減化を図る て経済性と総合損失を考慮したシミュレーションを行い最 うえで必要である。また,回生時の損失低減なども含める 適化を図り試作を行った。その結果拡散ウェーハでも最適 と FWD の低 VF(順方向電圧)化は製品としての総合損 化設計することによって VF と Err(逆回復損失)のトレー 失の低減に寄与しておりきわめて重要なことである。損失 ドオフはエピタキシャル並みの特性が得られた( 図10)。 低減は重要な項目の一つであるが経済性も最重要項目であ 拡散ウェーハを使用することによって経済性に大きな効果 569(21) 富士時報 U シリーズ IGBT モジュール(1,700 V) Vol.75 No.10 2002 図13 ECONOPACKTM -Plus の外観 表2 1,700 V/450 A モジュールの定格および特性 (a)最大定格(記述がなければ T c =25 ℃) 項 目 記 号 コレクタ エミッタ間電圧 ゲート エミッタ間電圧 最大定格 単位 V CES 1,700 V V GES ±20 V IC コ レ ク タ 電 流 450 A/1,700 V 素子 条 件 Tc =25 ℃ 675 Tc =80 ℃ 450 Tc =25 ℃ 1,350 Tc =80 ℃ 900 A 連続 I C pulse 1ms A − I C pulse 図14 ECONOPACKTM -Plus の外形および等価回路 G1 E1 G3 E3 G5 E5 G2 E2 G4 E4 T1 T2 900 A 2,000 W 最 大 損 失 Pc 接 合 部 温 度 Tj 150 ℃ 保 存 温 度 Tstg −40∼+125 ℃ 絶縁耐圧 (パッケージ) V iso 3,400 V AC AC:1min 450 A/1,700 V 素子 特 性 22 50 22 50 162 22 50 1素子 (b)電気的特性(記述がなければ T c =25 ℃) C1 C3 項 目 150 C5 G6 E6 W V 110 122 137 U A 450 −I C 記 号 条 件 単位 min. typ. max. コレクタ エミッタ間 漏れ電流 I CES V GE =0 V, V CE =1,700 V ー ー 3.0 mA ゲート エミッタ間 漏れ電流 I GES V CE =0 V, V GE =±20 V ー ー 0.6 A ゲート エミッタ間 しきい値電圧 VGE(th) V CE =20 V, I C =450 mA TBD 7 TBD T j =25℃ ー 2.20 TBD T j =125℃ ー 2.50 TBD t on ー ー 1.2 tr ー ー 0.6 ー ー ー ー ー 1.0 ー ー 0.3 T j =25℃ ー 1.75 ー T j =125℃ ー 2.00 ー ー ー 0.35 17 22 (a)外形図 V 〔インバータ部〕 + + + C5 C3 〔サーミスタ部〕 C1 T1 G5 E5 U G3 E3 V G6 E6 G1 E1 W T2 − ターンオン時間 G2 E2 G4 E4 − コレクタ エミッタ間 V CE(sat)-Chip 飽和電圧 t( r i) − t off (b)等価回路図 V GE = 15 V IC= 450 A V V CC =900 V I C =450 A V GE =±15 V R G =TBD Ω s ターンオフ時間 tf ダイオード 順方向電圧 V F-Chip 表1 ラインアップ一覧 項 目 型 式 逆 回 復 時 間 定格電圧 電流定格 t rr V GE = 0V IF = 450 A V I F =450 A (c)熱抵抗特性 6MBI150U-170 150 A 6MBI225U-170 225 A 1,700 V 450 A/1,700 V 素子 特 性 項 目 記 号 条件 300 A 6MBI450U-170 450 A デバイスの熱抵抗 (1素子) R th(j-c) ケース - フィン間熱抵抗 R th(c-f) 単位 min. typ. max. IGBT ー ー 0.06 FWD ー ー 0.10 ー 0.0167 ー M629 6MBI300U-170 s パッケージNo. ℃/W を確認した。 図11に FWD の出力特性を示す。大電流定格品への適用 ではチップを並列接続して使用されるケースが多く,VF の温度特性が負の場合,電流のアンバランスを発生しやす く製品の寿命に影響を与えていた。今回の U シリーズ FWD は VF の温度特性が正になるようなライフタイムキ ECONOPACKTM is a trademark of eupec GmbH, Warstein. 570(22) ラーを適用し改善を図った。図12に定格電流の 1/150 倍の 富士時報 U シリーズ IGBT モジュール(1,700 V) Vol.75 No.10 2002 低電流時の逆回復波形を示す。U シリーズ FWD では表面 の注入を抑制した構造となっており拡散ウェーハを最適化 あとがき することでカソードからのキャリヤを高注入にすることで サージ電圧は 1,700 V 以下に抑えられており良好な特性が 以上,1,700 V 用 U シリーズの IGBT,FWD のチップ 開発およびモジュール製品について紹介した。本 IGBT, 得られた。 FWD は装置の小型化,高性能化,高信頼性化要求に対し 製品紹介 て十分貢献できる製品と確信している。特に高耐圧 IGBT ではトレンチゲート技術による特性改善は難しいと考えら 今回開発した 1,700 V 用 U シリーズ IGBT モジュールは れていたが,デバイス技術の最適化を図ることで大幅な特 従来品のパッケージに対してベース面積を 50 %削減した 性改善が図られた。今後はさらなる技術のレベルアップを TM- ECONOPACK Plus および PIM(Power Integrated Mod- 図り,新製品の開発を行っていく所存である。 ule)の製品に適用される。 図13に ECONOPACKTM-Plus の外観を示す。 図14には ECONOPACKTM-Plus の外形図 および等価回路を示す。 今回開発したラインアップ一覧は表1に,1,700 V/450 A 参考文献 (1) Sze, S. M. MODERN SEMICONDUCTOR DEVICE PHYSICS.1st ed.USA.John Wiley & Sons.1998,557p. モジュールの定格および特性は表2に示すとおりである。 571(23) 富士時報 Vol.75 No.10 2002 インテリジェントパワーモジュール 「R-IPM 3,Econo IPM シリーズ」 渡辺 学(わたなべ まなぶ) 楠木 善之(くすのき よしゆき) 松田 尚孝(まつだ なおたか) R-IPM 3,Econo IPM の系列 まえがき 富士電機の IGBT-IPM(Insulated Gate Bipolar Tran- 表2にR-IPM 3 と Econo IPM の製品系列,特性および sistor-Intelligent Power Module)は,1993 年に J シリー 内蔵機能を示す。IGBT チップは,NPT プレーナを採用 ズ,1995 年に N シリーズ,1997 年に R シリーズの開発量 し,スイッチング損失の低減を図っている。FWD チップ 産化を行った。Jシリーズでは低損失,N シリーズではソ は,アノード構造を最適化しソフトリカバリー性をさらに フトスイッチング,そして R シリーズではオールシリコ 改善した。 ン化による信頼性とコストパフォーマンスの向上および チップ過熱保護機能による保護精度の向上を実現した。 R -IPM 3 シリーズは,従来のR -IPM シリーズと外形, 機能で互換性があり,リプレースに最適である。 近年のパワーエレクトロニクス応用製品のさらなる高周 Econo IPM シリーズは,外形を小型化し,取付面積を 波化,小型化,高効率化,低ノイズ化の要求を背景に,今 R -IPM 比で約 30 %低減した。さらに上アームのアラー 回R-IPM をベースに損失改善を図った「R-IPM 3」およ ム出力を追加することによって,地絡などのトラブルに対 びR-IPM と Econo モジュールのコンセプトを融合した小 して,より確実な保護を可能にしている。 型・薄型の「Econo IPM シリーズ」を新たに開発したの で紹介する。 両シリーズとも,600 V 系で電流定格 50 ∼ 150 A,6個 組,7個組(ブレーキ用 IGBT 内蔵)を用意した。さらに IGBT は薄ウェーハプロセスの確立により実現した 100 20 A 小容量素子については,銅ベースタイプのパッケー μm厚の NPT(Non Punch Through)微細チップ(Tシ ジを適用することで使いやすさを向上させており,豊富な リーズ)を開発し,FWD(Free Wheeling Diode)には ラインアップから,用途にあった製品を提供可能としてい ソフトリカバリー性を向上させた新構造 FWD チップを新 る。図2に各 IPM の外形図を示す。 規に開発し適用している。 表1 に各 IPM シリーズの特徴 を示す。損失改善を実現しつつコストパフォーマンスを向 上させた RTB タイプ,パッケージの小型・薄型化を実現 した Econo IPM,損失低減重視の RTA タイプの 3 系列 を開発した。 図 1 にR -IPM 3,Econo IPM,小容量R - 図1 IPM の外観 IPM 3 の外観を示す。 表1 IPM の特徴 シリーズ 名 項 目 R-IPM 3 Econo IPM RTA RTB Econo IPM 小容量 R-IPM 3 外 形 ™R-IPM シリーズと互換 (標準パッケージ) ™ねじ端子 ™小型,薄型 ™ピン端子 ™銅ベース付き パッケージ ™小型 特 性 ™低損失 ™低損失 (R-IPM 比 (R-IPM 比 18 % 減) 10 % 減) ™コスト パフォー マンス ™低損失 (R-IPM 比 10 % 減) ™コスト パフォー マンス ™ベース付きで 放熱性向上 (ベースレス 比) 小容量 572(24) R-IPM 3 R-IPM 3 渡辺 学 楠木 善之 松田 尚孝 インテリジェントパワーモジュー インテリジェントパワーモジュー インテリジェントパワーモジュー ルの開発に従事。現在,富士日立 ルの開発に従事。現在,富士日立 ルの開発に従事。現在,富士日立 パワーセミコンダクタ(株)松本事 パワーセミコンダクタ(株)松本事 パワーセミコンダクタ(株)松本事 業所開発設計部チームリーダー。 業所開発設計部。 業所開発設計部。 富士時報 インテリジェントパワーモジュール「R-IPM 3,Econo IPM シリーズ」 Vol.75 No.10 2002 表2 IPMの系列,特性および内蔵機能 (a)Econo IPM インバータ部 素子数 型 式 V DC V CES (V) (V) ブレーキ部 IC PC IC PC (A) (W) (A) (W) 内蔵機能 上下アーム共通 上アーム パッケージ 型式 下アーム Dr UV TjOH OC ALM OC ALM TcOH ー 6MBP 50TEA060 50 144 ー ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × 6MBP 75TEA060 75 198 ー ー ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × 6MBP100TEA060 100 347 ー ー ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × 6MBP150TEA060 150 431 ー ー ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × 7MBP 50TEA060 50 144 30 144 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × 7MBP 75TEA060 75 198 50 198 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × 7MBP100TEA060 100 347 50 198 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × 7MBP150TEA060 150 431 50 198 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × 6 in1 450 7 in1 450 P622 600 P622 600 (b)R-IPM 3 インバータ部 素子数 型 式 V DC V CES (V) (V) ブレーキ部 IC PC IC PC (A) (W) (A) (W) 内蔵機能 上下アーム共通 上アーム パッケージ 型式 下アーム Dr UV TjOH OC ALM OC ALM TcOH ー 6MBP 20RTA060 20 103 ー ○ ○ ○ × × ○ ○ × 6MBP 50RTA060 50 198 ー ー ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 6MBP 80RTA060 80 347 ー ー ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 6MBP100RTA060 100 431 ー ー ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 160 500 ー ー ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 6MBP 50 RTB060 50 144 ー ー ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 6MBP 75RTB060 75 198 ー ー ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 6MBP100RTB060 100 347 ー ー ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 6MBP150RTB060 150 431 ー ー ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 7MBP 50RTA060 50 198 30 144 ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 7MBP 80RTA060 80 347 50 198 ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 7MBP100RTA060 100 431 50 198 ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 7MBP160RTA060 160 500 50 198 ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 7MBP 50 RTB060 50 144 30 144 ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 7MBP 75RTB060 75 198 50 198 ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 7MBP100RTB060 100 347 50 198 ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ 7MBP150RTB060 150 431 50 198 ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ P619 P610 P611 6 in1 6MBP160RTA060 450 600 P610 P611 P610 P611 7 in1 450 600 P610 P611 Dr:IGBT 駆動回路,UV:制御電源不足電圧保護,TjOH:素子過熱保護,OC:過電流保護,ALM:アラーム出力,TcOH:ケース温度保護 *6MBP20RTA060は,Nラインでシャント抵抗による検出方式を採用 示す。図から従来 IGBT チップの N シリーズおよび S シ パワー素子の特徴 リーズは,温度依存性が大きいことが分かる。一方,開発 した T シリーズの NPT プレーナチップは,温度依存性が 従 来 の R -IPM に 適 用 し た PT( Punch Through) - 小さく高温でのターンオフ損失を低減することができる。 IGBT と R -IPM 3, Econo IPM に 適 用 し た NPT-IGBT PT プレーナチップと NPT プレーナチップを比較した チップ断面図を図3に示す。 VCE(sat)のばらつきを図5に示す。NPT プレーナは狭い範 NPT-IGBT の主な特徴は次の 3 点である。 囲に分布しており,安定した定常損失特性を示す。 (1) コレクタ - エミッタ間飽和電圧(VCE(sat))が正の温 次に,R-IPM 3 と Econo IPM に採用した FWD につい 度係数を持つため,チップ内の単位セルに電流集中する て述べる。FWD には放射ノイズ低減のため,新構造を採 ことがない。 用した。新構造 FWD と従来の FWD の逆回復時の波形比 (2 ) ターンオフ損失(Eoff)の温度依存性が小さい。 較を図6に示す。新構造 FWD は図6に示すようにアノー (3) ライフタイムコントロールがないため,VCE(sat)のば ドからの正孔注入を抑えて逆回復ピーク電流を小さくし, らつきが小さい。 ソフトリカバリー化を達成している。 VCE(sat)とターンオフ損失のトレードオフ関係を図4に 573(25) 富士時報 インテリジェントパワーモジュール「R-IPM 3,Econo IPM シリーズ」 Vol.75 No.10 2002 図2 IPM の外形図 シリーズ名 R-IPM3 Econo IPM P610,P611 パッケージ名 P619 P622 70 122 109 1 4 7 10 16 1 7 10 15 4 1 P 外形図 P U W V 9 13 19 P W N1N2 V U V W N B U 9 26 17 8 18 9.5 31.2 22 7 8.5 N 5 55 46.5 88 B 寸法 L109×W88×H22(mm) L70×W46.5×H9.5(mm) L122×W55×H17(mm) 質量 450 g 85 g 270 g 図5 VCE(sat)の分布図 図3 IGBT チップの断面比較 NPT-IGBT エミッタ PT-IGBT ゲート エミッタ n− 20 70 m NPT-IGBT n(個) n+ コレクタ n− 350 m p+ V CE(sat) NPT-IGBT/PT-IGBTの ばらつき比較 ゲート n− 100 m 25 15 10 p+ PT-IGBT 5 0 1.4 コレクタ 図4 IGBT チップのトレードオフカーブ 1.6 1.8 2.0 2.2 V CE(sat) (V) 〔条件:25℃,I c(DC) 〕 図6 FWD の逆回復時の波形比較 ターンオフ損失(mJ/pulse) 従来型 FWD 8 V cc =300 V I c =100 A R g =24 Ω V ge =±15 V 600 V/100 A デバイス 2.4 新構造 FWD V r :50 V/div V r :50 V/div 6 0 Sシリーズ (PTプレーナ) 4 Tシリーズ 第三世代 Nシリーズ (Rシリーズ) (PTプレーナ) I f :25 A/div 0 0 I f :25 A/div 0 dv /dt =9.8 kV/ s dv /dt =6.8 kV/ s NPTプレーナ 2 1.2 : 25(℃) :125(℃) 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 V CE(sat) (V) 2.4 2.6 2.8 異なる構造で作られている。従来のパッケージでは端子 バーによる配線方式が取られていたが,バー配線の制約か ら,パッケージ高さを低く抑えることが難しい。そのため, Econo IPM では従来の端子バー構造から,内部結線すべ てをアルミワイヤで行う方式を採用した。またパッケージ パッケージ構造 幅を抑えるために,制御プリント板を 2 階に配置する構造 を採用している。これらにより,従来と比較し大幅にコン Econo IPM は小型・薄型化を達成するため,従来とは 574(26) 。 パクトなパッケージを作ることに成功した(図7参照) 富士時報 インテリジェントパワーモジュール「R-IPM 3,Econo IPM シリーズ」 Vol.75 No.10 2002 図 8 にサイドフィンタイプのサーボアンプへの Econo IPM 搭載例を示す。この図の Econo DiM(Econo Diode にした。これにより顧客装置内のデッドスペースを減らし, 顧客装置の省スペース化へ貢献できることが期待される。 Module)は Econo IPM と同一コンセプト(Econo-Mod- 損失低減 ule Concept)で開発され,共に 17 mm のパッケージ高と なっている。Econo IPM と Econo DiM は同じ高さである ため,同一のプリント基板で接続することができる。この IPM の製品開発コンセプトとして,損失の低減と,こ 二つのモジュールを採用することにより,プリント基板設 れとトレードオフ関係にある放射ノイズレベルの両立が最 計の簡素化が期待できる。また,Econo IPM は薄型の も重要な項目である。 パッケージをさらに有効に生かす工夫として,ふたの一部 今回新たに開発した Econo IPM と R-IPM 3 においても を 下 げ て い る 。 図 に 示 す よ う に プ リ ン ト 基 板 と Econo 上記課題が重要なテーマの一つであった。その中で,前述 IPM のふたとの間隔を 3 mm 確保することにより,プリ の新たに開発した NPT-IGBT を適用することにより, ント基板の裏面にホトカプラなどの電子部品の搭載を可能 IGBT 損失の低減を図り,またソフトリカバリー性を持つ MPS ダイオードを搭載し,さらに駆動条件の最適化を行 図7 Econo IPM の内部構造 総損失(W) 図9 総損失比較 :逆回復損失 :定常損失(FWD) :ターンオフ損失 :ターンオン損失 :定常損失(IGBT) 30.0 25.3 25.0 1.4 2.0 21.6 20.9 20.0 5.9 1.5 1.8 2.3 1.6 1.8 15.0 3.3 4.3 3.3 4.1 10.0 12.7 11.7 10.1 5.0 0 R-IPM Econo IPM R-IPM3 図10 ターンオフ波形 V CE :100 V/div I C:50 A/div T j :125 deg t :200 ns/div IC 0 VCE V CE :100 V/div I C:50 A/div T j :125 deg t :200 ns/div IC 0 VCE R-IPM Econo IPM 図11 放射ノイズスペクトルの比較 図8 Econo IPM の搭載例 顧客プリント板 主端子 R-IPM (7MBP50RA060) ホトカプラ 3mm 17mm 100 Econo DiM Econo IPM 100 放射能 50 ノイズ レベル (dB V/m) センター 80.0 MHz Econo IPM (7MBP50TEA060) 50 スパン 100.0 MHz センター 80.0 MHz スパン 100.0 MHz 冷却フィン 575(27) 富士時報 インテリジェントパワーモジュール「R-IPM 3,Econo IPM シリーズ」 Vol.75 No.10 2002 うことにより,従来品の R-IPM と比べ,同等以下の放射 図12 IPM 回路ブロック図 ノイズレベルを達成することに成功した。 P DC15 V IGBT FWD 図9 に,今回開発した Econo IPM,R-IPM 3 と,従来 の R-IPM との総損失比較を示す。新しい IGBT チップと ドライバ U 8V FWD チップを搭載した結果,従来の R- IPM に対し, Econo IPM は 15 %,R-IPM 3 は 18 %の損失低減を達成 している。特にターンオフ損失の低減が,総損失低減に大 ドライバ V き く 貢 献 し て い る 。 図10に 従 来 品 ( R- IPM) と Econo IPM のターンオフ波形を示す。また, 図11に R-IPM と ドライバ Econo IPM の放射ノイズのスペクトルを示す。放射ノイ W ズスペクトルは,キャリヤ周波数 4 kHz のサーボアンプを 用いて加減速運転を行い,3 m 法により測定したものであ ドライバ り,30 ∼ 130 MHz の範囲で従来品と同等のノイズレベル を保っていることが分かる。 ドライバ IPM のブロック図 ブレーキ内蔵タイプのブロック図を 図12に示す。 が (a) ドライバ B (b) が Econo IPM である。Econo IPM では,上 R-IPM 3, アーム回路のアラームを外部へ出力している。 ドライバ N 1.5 kΩ ドライバ内蔵機能 ①IGBTドライブ 過熱検出回路 ②短絡保護 ③過電流保護 ④制御電源不足電圧保護 ⑤IGBTチップ過熱保護 (a)R-IPM3 IGBT FWD 1.5 kΩ 富士電機のパワーデバイスにおける最新の技術を盛り込 んだ IGBT-IPM を紹介した。これらの IPM は,パワーエ P DC15 V あとがき レクトロニクス応用製品の高効率化,小型化を実現し,市 場の期待に応えられるものと確信する。 ドライバ U 8V 今後とも市場要求に十分応えられるよう,開発,製品化 に注力していく所存である。 1.5 kΩ ドライバ V 参考文献 (1) Kusunoki, Y. et al.A new compact intelligent power 1.5 kΩ module with high reliability for servo drive application. ドライバ W PCIM Europe 2002. (2 ) Matsuda, N. et al.New 600V Compact Intelligent Pow- ドライバ er Module“Econo IPM” .CIPS2002,p.101- 106. ドライバ ドライバ B 1.5 kΩ ドライバ N ドライバ内蔵機能 ①IGBTドライブ ②短絡保護 ③過電流保護 ④制御電源不足電圧保護 ⑤IGBTチップ過熱保護 (b)Econo IPM 576(28) 富士時報 Vol.75 No.10 2002 車載用サージ吸収入力 IC 八重澤 直樹(やえざわ なおき) 市村 武(いちむら たけし) 岡本 有人(おかもと ゆうじん) まえがき 図1 現状のインタフェース回路部構成 ECUコネクタ 近年,自動車電装システムの大規模化が進み,自動車の 電子制御装置(ECU:Electronic Control Units)に搭載 される半導体部品は,従来のディスクリート部品構成を統 サージ吸収入力 IC 合化することで部品点数・実装面積・質量の削減,トータ ルコストの低減が必要になっている。サブミクロン BCD 〔Bipolar/CMOS(Complementary Metal Oxide Semicon- マイクロコンピュータ など サージ吸収部品の実装面積 =60 mm2/チャネル ductor)/ DMOS(Double diffused MOS) 〕 ,SOI(Silicon On Insulator)技術の開発やシステムオンチップなどの技 術開発のアプローチは,ディジタル IC,アナログ IC,ト ランシーバ IC,マイクロプロセッサ,メモリ,A-Dコン 図2 サージ吸収入力 IC 実装面積低減 バータ,D-Aコンバータ,電源 IC,パワーデバイスなど 850 mm2 (60 mm2/チャネル) のワンチップ統合化に成功している。しかしながら,図1 に示すように ECU コネクタからマイクロコンピュータま 低減効果 ⇒1/5 いまだ多数のディスクリート抵抗,コンデンサ,ダイオー 1 cm での入力インタフェース回路におけるサージ保護機能は, 170 mm2 (12 mm2/ チャネル) ドなどによって構成されている。その理由は自動車電装市 場が要求する厳しいサージ耐量を実現することが困難だか らである。 サージ吸収入力 IC 実装面積低減 富士電機では ECU コネクタから入力される静電破壊 サージ(ESD:Electro Static Discharge) ,イグニッショ ンパルスサージ,電磁波ノイズ(EMC:Electro Magnet- (Super Small Outline Package)多ピンパッケージに統合 ic Compatibility)などのサージのみを吸収し,マイクロ 化することで,その実装面積を 850 mm2 から 170 mm2 と コンピュータへの電気的信号・車両の各種状態信号のみを 1/5 に小型化した。また,14 チャネルをワンチップ構成と 伝達することを製品コンセプトとする,車載用サージ吸収 することで,ECU の部品実装点数・工数を削減できる。 入力 IC を開発した。本稿では今回開発したサージ吸収入 その他の特徴について以下に記す。 (1) 高 ESD 耐量(150 pF-150 Ω,+ −25 kV 以上) 力 IC「FP001」について報告する。 (2 ) 電磁波ノイズ耐量(200 V/m,1 ∼ 1,000 MHz) 特 徴 (3) 高イグニッションパルスサージ耐量(−23 kV 以上) チッププロセス・デバイス 図1,図2に示すように,従来の抵抗,コンデンサ,ダ イオードなどのディスクリート部品構成によるサージ・ノ イズ吸収回路およびレベルシフト回路は,プリント板上に サージ吸収 IC は,自己分離 NDMOS〔NMOS(Nega- おいて 60 mm2/チャネルの実装面積を要している。サージ tive channel MOS)/ DMOS〕プロセスを用いてプロセス 吸収入力 IC は従来のディスクリート部品構成を SSOP ステップ数を最小限に抑え,従来の縦型パワー MOSFET 八重澤 直樹 市村 武 岡本 有人 自動車用スマートパワーデバイス 自動車用スマートパワーデバイス 自動車用スマートパワーデバイス の開発・設計に従事。現在,富士 のチップ開発・設計に従事。現在, の開発・設計に従事。現在,富士 日立パワーセミコンダクタ(株)松 富士日立パワーセミコンダクタ 日立パワーセミコンダクタ(株)松 本事業所開発設計部。 (株) 松本事業所開発設計部。 本事業所開発設計部。 577(29) 富士時報 車載用サージ吸収入力 IC Vol.75 No.10 2002 (Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の IN 端子へ印加された ESD のエネルギーは,VB-IN 間 ボディダイオードと同一設計の縦型パワーツェナーダイ のパワーツェナーダイオードによってまず吸収され,さら オードと,NMOS 制御回路の多チャネル構成を同一チッ にレベルシフトを兼ねたポリ Si 高抵抗を通して減衰する。 プ上に集積した。 このようにノイズの侵入をカットするフィルタ回路を通る ことでマイクロコンピュータ側へのサージ侵入が完全に防 回路構成 止される。 GND 端子については,サージ吸収回路部のパワー GND 回路ブロックダイヤグラムを図3に示す。入力サージ吸 (GNDP)とレベルシフト回路および電気的信号変換回路 収回路,ノイズカット&レベルシフト回路,バッファ回路, のアナログ GND(GNDA)を分離することで,IN 端子・ プルアップ・プルダウン抵抗を集積化した構成を 14 チャ VB 端子に入力されるサージ・ノイズを出力段 (CPU 入力) ネル並列に統合構成し,ワンチップ化している。VB 端子 に伝達しない構成としている。 はバッテリーに接続し,VOS 端子は ECU 内で 5 V に変換 された電源電圧に接続される。 VR 端子は入力端子を 10 kΩ(typ.)の入力抵抗にて, プルアップ・プルダウンすることを可能としており,必要 により外付け抵抗を並列接続することで任意の入力抵抗を 図3 回路ブロックダイヤグラム プルアップ・ プルダウン抵抗 実現できる回路構成としている。 パワーツェナーダイオードの素子面積最適化 1チャネル VB VOS パワーツェナーダイオードの素子面積を最適化するため VR 入力サージ 吸収回路 パワーツェナー ダイオード GNDP (パワーGND) に,耐圧を決める結晶条件を変えて 150 pF-150 Ω条件に OUT GNDA (アナログGND) VB VR1 VR2 VR3 VR4 IN1 バッファ 回路 おける ESD 耐量を確認した結果について 図4 , 図5 に示 図4 ESD 耐量(素子面積依存性) VOS 100,000 75V 耐圧 OUT1 IN2 OUT2 IN3 OUT3 IN4 OUT4 IN5 OUT5 IN6 OUT6 IN7 OUT7 IN8 OUT8 IN9 OUT9 90V 耐圧 ESD耐量(V) IN ノイズカット& レベルシフト 回路 10,000 127V 耐圧 1,000 100 0.01 0.1 面積(mm2) 1 図5 ESD 耐量(耐圧依存性) 100,000 OUT10 IN11 OUT11 IN12 OUT12 IN13 OUT13 IN14 OUT14 ESD耐量(V) IN10 素子面積固定 10,000 1,000 100 GNDP 578(30) GNDA 0 50 100 耐圧(V) 150 200 富士時報 車載用サージ吸収入力 IC Vol.75 No.10 2002 図8 入力端子間寄生 pnp トランジスタ断面構造図 図6 サージ吸収入力 IC のチップ外観 VR IN1 VOS IN1 IN2 X OUT1 p+ n−エピタキシャル層 p+ n+基板 VBオープン 図9 寄生 pnp トランジスタ構造 ESD 耐量 100,000 IN14 OUT14 素子面積固定 GNDA ESD耐量(V) GNDP 図7 サージ吸収入力 IC の断面構造 IN ポリSi デバイス NMOS 回路 1,000 OUT p− p+ 10,000 n−エピタキシャル層 100 0 100 200 300 400 500 600 700 距離 X( m) n+基板 VB 量を測定した。本結果を図9に示す。なお,距離 X=0μm の ESD 耐量データは比較のために単独のパワーツェナー す。 図4 は素子面積(mm2)に対する ESD 耐量を, 図5 ダイオードの耐量をプロットしている。実験の結果,60 V はパワーツェナーダイオードの耐圧に対する ESD 耐量を 定格耐圧の結晶条件における ESD 耐量は横方向距離 X に それぞれ示している。これらの結果からパワーツェナーダ 依存せず,単独のパワーツェナーダイオードの ESD 耐量 イオードの耐圧が ESD 耐量に大きく依存し,素子面積を と変わらないことが分かる。 最小にするためにも,パワーツェナーダイオードの耐圧を 小さくすることが必要であることが分かる。 サージ吸収動作 この結果から,各 IN 電極パッドの面積程度のパワー ツェナーダイオード素子面積で最も厳しい条件で ESD 耐 7.1 ESD サージ 量+ −25 kV を達成することができ,IN パッド直下に配置 することでまったく無駄のないチップレイアウトが実現さ +25 kV を印加した際に観測された電圧・電流波形を図10 れた。 に示す。+25 kV の ESD 電圧は 60 V 定格の素子面積に設 サージ吸収入力 IC のチップ外観を図6に,断面構造を 図 7 に示す。入力側は縦型ツェナーダイオード内蔵 IN IN- GNDP 間に 150 pF- 150 Ω条件において ESD 電圧 計されたパワーツェナーダイオードによって 200 V ピーク 電圧レベルに制限される。 パッドを並列に 14 チャネル並べた構成で,回路側との接 OUT 出力ラインに CMOS 入力の論理ゲート IC を接続 続は局所 SOI 構造である高抵抗ポリ Si およびポリ Si ツェ して ESD 実験を試みたが,論理ゲート IC の破壊・誤動 ナーダイオードを用いている。 作は確認されなかった。 IN-VB 間,IN-GNDP 間,IN-IN 間の ESD 耐量はそれ 寄生 pnp トランジスタ構造 ESD 耐量 ぞ れ 電 源 セ ッ ト 状 態 ( V B = 14 V, V OS = 5 V) ま た は オープン状態において,150 pF-150 Ω条件にて ESD 耐 本製品の入力端子間に構成される横方向寄生 pnp トラ ンジスタの ESD 耐量について調査した。具体的には 図8 量+ −30 kV 以上を達成している。その他の ESD 条件にお ける ESD 耐量測定結果を表1に示す。 に示すような同一チップ上において同構造,同素子面積の パワーツェナーダイオードを横方向に距離 X(μm)を置 いた場合の,横方向寄生 pnp トランジスタ構造間 ESD 耐 7.2 電磁波ノイズ 電磁波ノイズ EMC 耐量をテムセル法により,電界 200 579(31) 富士時報 車載用サージ吸収入力 IC Vol.75 No.10 2002 図10 ESD + 25 kV 印加時の IN1 波形 図11 レベルシフト回路とバッファ回路動作波形 40 ns V B =14 V,V OS =5 V 20 sフィルタ V IN Vz V OUT Iz 0 0 0 V Z:50 V/div,I Z:100 A/div,40 ns/div 表2 電気的特性 表1 ESD 耐量測定結果 条 件 C =150 pF R =150Ω ESD 耐量 項 目 IN-GNDP >± 30 kV IN-VB >± 30 kV IN-IN >± 30 kV IN-GNDP C =200 pF R =0Ω V IN :5 V/div,V OUT:5 V/div, 20 s/div 条 件 VB-GNDP >± 20 kV(typ.) IN-IN >± 23 kV(typ.) V V VR-GNDP V VIN-GNDP 75 V V th(H) V =5 V OS V B =14 V V th(L) 4.0 V 3.8 V プルアップ・ プルダウン抵抗 V R =14 V 10 kΩ 入力漏れ電流 V IN = V R =14 V, V OS =0 V,1チャネルあたり 0.7 mA V OUT(H) V IN = V B =14 V,V OS=5 V 4.8 V V OUT(L) V IN =0 V,V B =14 V, V OS=5 V 0.2 V T don V B =14 V 20 s T doff V OS =5 V 20 s 入力しきい値 電圧 作ないことを確認した。 出力電圧 7.3 イグニッションパルスサージ IN-VB 間,IN-GNDP 間のイグニッションパルスサー 75 7 V/m,周波数帯域 1 MHz から 1,000 MHz まで 2 % log ス テップでスイープさせて確認した結果,OUT 出力に誤動 単位 75 端子間クランプ電圧 >± 20 kV(typ.) IN-VB 特性値 (typ.) 出力遅延 時間 ジ耐量は,電源セット状態(VB = 14 V,VOS = 5 V)に VOS-GNDA て−23 kV 以上を達成している。 レベルシフト回路とバッファ回路動作 ジを用いることで,複数の入力端子と複数の出力端子とを 180 度の角度を隔てた方向に振り分け,入力端子に印加さ レベルシフト回路とバッファ回路動作波形を図11に示す。 バッテリー 14 V 電源から IN 端子へ入力された信号は, れるサージやノイズを出力端子に伝搬させないことを可能 としている。 OUT 端子からマイクロコンピュータ 5 V 電源に対する出 力信号に変換される。また,入力しきい値電圧にはヒステ あとがき リシス電圧を設け,さらにバッファ回路部には 20 μs の フィルタを設けることで,イグニッションパルスサージな どの高周波ノイズをカットする設計とした。 表2に電気的特性を示す。今回のサージ吸収入力 IC は 14 チャネルの入力構成としているが,要求によっては入 自動車用スマートパワーデバイスの新製品としてサージ 吸収入力 IC FP001 の概要について紹介した。今後とも富 士電機では,市場要求を満足する新製品開発に注力してい く所存である。 力チャネル数の異なる製品への対応も可能である。 参考文献 SSOP パッケージ (1) Yoshida, K. et. al.Surge Protection IC for the Switch Interface of ECUs.CIPS 2002.2002,p.139- 145. 本製品には SSOP パッケージを用いる。SSOP パッケー 580(32) 富士時報 Vol.75 No.10 2002 車載用高機能 MOSFET 梅本 秀利(うめもと ひでとし) 山田 昭治(やまだ しょうじ) 鳶坂 浩志(とびさか ひろし) まえがき 図2 高機能 MOSFET,IPD の製品マップ 30 現在,自動車業界では環境性能,安全性能,快適性の向 :ローサイドIPD :ハイサイド高機能MOSFET :ローサイド高機能MOSFET 上をキーワードとする電子システムの増加に伴い,ECU (Electronic Control Unit)の大規模化に年々拍車がかかっ F5048 出力電流定格(A) ており,システムメーカーでは ECU の小型化が切望され ている。ECU の小型化を実現するための半導体デバイス として,パワー半導体とその周辺保護回路,状態検出・状 態出力回路,ドライブ回路などを一体化したスマートパ ワーデバイスが注目され,その適用が着実に伸長している。 20 TO-220 F5031 10 Tパック(D2パック) F5019,5043, 5023 F5025 F5018,5042 F5032 Kパック(Dパック) F5020 富士電機においても,パワー半導体と前述した周辺回路 0 F5022 F5045P F5033,5041 をワンチップ化し,ECU の小型・薄型化,高性能化,高 SOP-8 信頼性に応えた半導体製品の開発を行ってきた。その製品 0 (1) 20 40 群としてハイサイド型,ローサイド型の高機能 MOSFET 60 80 100 340 360 V DSS(V) ドレイン - ソース間電圧 380 (Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor), (2 ) イグナイタ駆動用 IPD(Intelligent Power Device)など 。これらの共通の特徴は高いサージ がある( 図1, 図2 ) 耐量(静電気耐量など)と低駆動電圧(3 V)である。表 ( 3) 1はハイサイド型高機能 MOSFET「F5045P」の例である。 これらの中で今回,新たに開発した車載用ローサイド型 表1 F5045P の最大定格と電気的特性 (特に表記ない限り T c = 25 ℃) 高機能 MOSFET「F5048」について紹介する。 記 号 定格 条件 単位 電 源 電 圧 V cc 50 0.25 s V 出 力 電 流 I out 1 ー A 項 目 規格値 項 目 記 号 図1 F5048 パッケージの外観 動作電源電圧 V cc V IN(H) V IN(L) 条 件 Tc =−40∼ 105 ℃ 単位 最小 最大 3 33 V cc =3∼5 V Tc =−40∼ 105 ℃ 0.7×V cc V cc >5 V Tc =−40∼ 105 ℃ 3.5 V V 0.3×V cc 入 力 電 圧 V IN(H) V IN(L) V 1.5 オ ン 抵 抗 R DS(on) V cc =14 V I out =0.5 A 過電流検出 I OC V cc =14 V 2 ー A 過 熱 検 出 Ttrip V cc =14 V 150 ー ℃ 0.60 Ω パッケージ:SOP-8 梅本 秀利 山田 昭治 鳶坂 浩志 インテリジェントパワーデバイス インテリジェントパワーデバイス インテリジェントパワーデバイス の開発・設計に従事。現在,富士 のチップ開発・設計に従事。現在, の開発・設計に従事。現在,富士 日立パワーセミコンダクタ(株)松 富士日立パワーセミコンダクタ 日立パワーセミコンダクタ(株)松 本事業所開発設計部。 (株)松本事業所開発設計部。電気 本事業所開発設計部。 学会会員。 581(33) 富士時報 車載用高機能 MOSFET Vol.75 No.10 2002 表2 F5048 の最大定格と電気的特性・サージ耐量 (a)F5048 の最大定格(特に表記ない限り T c =25 ℃) 製品の紹介 項 目 2.1 製品の特徴 従来製品,特に高機能 MOSFET 製品群と比較した F 定 格 単位 DC 80 V DC −0.3∼+7.0 V 記号 条 件 ドレイン - ソース間電圧 V DSS ゲート - ソース間電圧 V GSS 5048 の設計上の特徴は過電流検出の設計思想にある。F ドレイン電流 ID DC 15 A PD ー 43 W Tj ー 150 ℃ T stg ー −55∼+150 ℃ 5048 では,従来製品の過電流検出設定値が実使用電流の 許容電力損失 2 ∼ 3 倍であったのに対し,素子の電流通電能力,負荷短 接合部温度 絡時の保護を十分考慮し 10 倍以上の設定値とし,通電開 保存温度 始時に大電流が流れる(例:ラッシュ電流など)ような負 荷の制御用として開発している。 なお,本製品は,縦型パワー半導体と横型制御 IC の分 (b)F5048 の電気的特性およびサージ耐量 (特に表記ない限り T c =25 ℃) 規格値 項 目 記号 条 件 造(図3)を採用し,かつ以下に記す特徴を持っている。 (1) 高い通電能力: 27 A(min.) (2 ) 負荷短絡保護機能搭載(過電流,過熱保護) (3) 誘導性負荷逆起電圧保護機能〔ダイナミッククランプ 回路内蔵:クランプ電圧 80 V(min.) 〕 (4 ) 低オン抵抗:125 mΩ(max.) (5) ロジックレベル駆動 (6 ) SMD(Surface Mounted Device)パッケージ(JEDEC ドレイン ソース間 電圧 (7) 高サージ耐量 〔ESD(Electro Static Discharge)耐量:ドレイン - ソー ス間+ −15 kV 以上 at 150 pF,150 Ω〕 2.2 用 途 F5048 は,後述の過電流検出回路設計の最適化により, モータ,ランプなど負荷の通電開始時に瞬間的な大電流を 必要とする用途に最適なデバイスである。 V GS(th) I D =10 mA 保護機能動作 ゲート電圧 範囲 V GS(p) ゼロゲート 電圧 ドレイン電流 I DSS 最大 VGS =0 V 80 100 V VDS =14 V 1.0 2.8 V 3.0 7.0 V ー 25 A ー 250 A I GS(un) V GS =5 V 保護機能動作時 ー 350 A ー 125 mΩ ー 100 s ー 100 s R DS(on) I D =8 A オ ン 抵 抗 ターンオン 時間 t on ターンオフ 時間 t off 過熱検出保護 温度 Ttip 過電流検出 I OC ダイナミック クランプ耐量 ジ(80 V,0.25 s)が直接パワー素子に印加される ECU 用 VGS =0 V V GS =5 V 通常動作時 VGS =5 V V DS =14 V I D =8 A E CL パワー素子の耐圧は 40 V で十分である。しかし本製品は パワーツェナーダイオードを使用せず,ロードダンプサー V DS =16 V I GS(n) また通常,ECU の電源ー GND 間には 27 V あるいは 32 V のパワーツェナーダイオードを併用しているため, I D =1mA ゲート しきい値電圧 ゲート ソース間 電流 規格の TO-263 に類似するパッケージ) V DSS 単位 最小 離構造として,市場において十分な実績を持つ自己分離構 VGS =5 V V DS =14 V VGS =5 V 150 ー ℃ V DS =14 V T j =25 ℃ 27 ー A V GS =5 V T j =85 ℃ 22 ー A T j =150 ℃ I D =8 A 100 ー mJ ±15 ー kV ±5 ー kV ー 150 pF,150 Ω ドレイン - ソース間 ー 150 pF,1.5 kΩ ゲート - ソース間 ESD サージ 耐量 に開発されている。 2.3 製品の特性 (b) F5048 の最大定格と電気的特性を表2 , に,さらに (a) 回路ブロックダイヤグラムを図4に示す。また,主な特性 図4 F5048 の回路ブロックダイヤグラム ダイナミッククランプ ツェナーダイオード 図3 自己分離構造の断面図 低耐圧 n チャネル デプレッション MOSFET n+ n− n+ p 低耐圧 n チャネル MOSFET n+ p 出力段 縦型パワー MOSFET n+ n+ p n+ p ツェナー ダイオード ドレイン スピードアップ ダイオード ゲート パワー MOSFET n+ p 過電流 検出回路 過熱 検出回路 論理 回路 n− n+ 582(34) ソース 富士時報 車載用高機能 MOSFET Vol.75 No.10 2002 を以下に述べる。 2.3.3 ダイナミッククランプ電圧(VDSS) 前述したように ECU の電源ー GND 間には 27 V あるい 2.3.1 用途に適した通電能力設計 F5048 はランプの点灯やモータの駆動など負荷の通電開 は 32 V のパワーツェナーダイオードが設置されるため, 始時に瞬間的な大電流を必要とする用途に適する通電能力 これまで富士電機製高機能 MOSFET の素子耐圧は 40 V を確保するため,下記の2ポイントを考慮した最適デバイ に設定されソレノイドバルブなどの制御に使用されてきた。 ス設計を行っている。 周知のこのパワーツェナーダイオードの役割は,何らかの (1) パワー MOSFET の電流通電能力 理由でバッテリー接続が解除された際に発生する過渡的に 適用するアプリケーションの動作条件に適した出力段パ ワー MOSFET の電流通電能力を確保した。 高エネルギーのロードダンプサージ(例:80 V,τ= 0.25 s)から ECU 内部を保護することである。しかし,ECU (2 ) ワイヤ溶断電流値(I 2 t) の規模あるいは配置場所によりパワーツェナーダイオード 前述の通電能力を確保し,負荷短絡時にボンディングワ イヤが溶断破壊しないワイヤ径とした。 の設置が難しい場合もある。 F5048 はこのような問題に応える素子耐圧を設定(80 V)している。またこの 80 V はチップ上でパワー素子の 2.3.2 最適な保護機能動作 高機能 MOSFET は,負荷が短絡に至った場合,過電流 ドレイン - ゲート間に挿入のツェナーダイオードで決定す 検出と過電流制限,および過熱検出の保護機能を働かせる, るようにし,通常のオンオフ動作で発生する誘導性成分逆 二重のフェイルセイフ設計とし,システム,負荷,素子を 起電力を外付け回路なしで処理できる。本品は 100 mJ 以 破壊から守る役割を果たしている。 上の耐量を有するので安心して使用が可能である。 (1) 短絡保護 F5048 の過電流検出回路は, 図 5 に示すようにドレイ 図6 パワー MOS 部の負荷短絡耐量と電流通電能力および アルミワイヤ溶断電流値の通電時間依存性 ン - ソース間のオン電圧をモニタする電圧検出方式を採用 している。過電流検出方式として,電圧検出タイプは,電 流検出タイプに比べ,検出回路が簡素化できるという利点 アルミワイヤ溶断電流値 がある。短絡直後にオン電圧が設定した過電流値の電圧ま 流制限が働いて素子の破壊を回避している。この過電流検 出値は,負荷短絡耐量の電流値より小さく,アプリケー ションを満足する電流値を考慮して決定している。これら 電流 I(A) で上昇すると論理回路がこれを識別して動作し,同時に電 電流通電能力 (パワーMOS部) 過電流検出設定値 の特性の通電時間依存性を図6に示す。 (2 ) 過熱保護 負荷短絡耐量(パワーMOS部) 過熱保護は上記の過電流検出,電流制限が動作しさらに オン状態が続いた場合に素子を熱破壊から守る機能である。 図7は負荷短絡時に過電流保護から過熱状態に入り,過熱 0 0 通電時間 t (ms) 保護によるターンオフ動作と自己復帰によるターンオン動 作の繰り返す状態を示している。この過熱検出の回路の応 答性を高めるため,過熱検出センサを出力段パワー MOS 図7 短絡保護と過熱保護(負荷短絡時) FET の活性部内に配置することで,同センサを IC 回路部 に配置する場合に比べ,10 倍以上の応答性を実現してい 20 ms/div る。 V GS 図5 短絡保護回路(過電流検出と電流制限) GND V DS ドレイン ID スピードアップ ダイオード ゲート GND 過電流検出 電流制限 電流制限時間 過熱保護期間 過電流検出時 ソース V GS(5 V/div) V DS(5 V/div) I D(10 A/div) 583(35) 富士時報 車載用高機能 MOSFET Vol.75 No.10 2002 表3 F5048 の信頼性試験結果 図8 F5048 の代表的なスイッチング波形 試験時間(h) 試験内容 400 s/div V GS GND サンプル 0 100 200 300 従来品 0/22 0/22 0/22 3/22 F5048 0/22 0/22 0/22 0/22 飽和蒸気加圧試験 温度:121℃ 圧力:2.0×105 Pa 湿度:100 % RH ID 試験サイクル数(サイクル) V DS 試験内容 サンプル 0 500 1,000 2,000 従来品 0/22 0/22 0/22 2/22 F5048 0/22 0/22 0/22 0/22 熱衝撃試験(液体) 温度:−55∼+150 ℃ 各 5 分 GND ID V DS 0 時間 t スイッチング開始 ゲート - ソース間電圧 V GS:5 V/div ドレイン - ソース間電圧 V DS:5 V/div ドレイン電流 I D:5 A/div 間の静電破壊耐量は条件 150 pF,150 Ωにおいて+ − 15 kV を保証している。 2.3.6 高い耐環境性能 F5048 ではさらに表面実装パッケージ製品の耐環境性能 試験条件 V GS:5 V,V DS:16 V,パルス周期 T =1ms, パルス幅 t w =500 s ランプ負荷:20 W(負荷温度−40 ℃),ワイヤ長:2 m の向上を図る目的から,組立条件と部材の選定について最 適化を行っている。具体的には,①はんだ付け条件の最適 化,②低応力・低吸湿の高密着性樹脂適用などの検討を進 め,表3の信頼性試験結果(飽和蒸気加圧試験,熱衝撃試 ところでこの 80 V 耐圧保証は単に外来サージ電圧に対 する対応だけに限定されるものではなく,もちろん 42 V 験)に示すように,表面実装パッケージとしてより高い信 頼性能を得ている。 系バッテリーへの適用を可能としている。 あとがき 2.3.4 最適なスイッチング時間 自動車に対する要求として,安全性向上に加え高級感と 快適性がある。スムーズなモータの始動やランプの調光は 車載用高機能 MOSFET の新製品として F5048 の製品 PWM(Pulse Width Modulation)制御で実現できる。 概要について紹介した。この製品は従来の製品群と同様に PWM 制御性能を支配するスイッチング時間であるが,ス 車両の安全性・高信頼性化に寄与するものと考えている。 イッチングノイズの低減に留意した設定とした。F5048 の 今後とも市場からの要望を大切にしながら,多くの用途に タ ー ン オ ン 時 間 お よ び タ ー ン オ フ 時 間 は と も に 60 μs (typ.)であり,1 kHz 程度の高周波動作にも対応可能であ 対応できるインテリジェントパワー製品の開発を推進して いく所存である。 る。今回の設計では高い電流容量を持つためスピードアッ プダイオードを内部ゲート抵抗と並列に配置してターンオ フ時間を短縮している。図8に代表的なスイッチング波形 を示す。 (2 ) 竹内茂行ほか.自動車イグナイタ用 IPS.富士時報.vol.72, F5048 は従来の高機能 MOSFET の設計手法に基づいて, 回路の配線幅やそのパターン,コンタクト抵抗値,回路の 584(36) (1) 木内伸ほか.インテリジェントパワー MOSFET.富士時 報.vol.70,no.4,1997,p.222- 226. 2.3.5 高静電破壊耐量 レイアウトなどの最適化を行っている。ドレイン - 参考文献 ソース no.3,1999,p.164- 167. (3) 鳶坂浩志ほか.ハイサイド高機能 MOSFET.富士時報. vol.74,no.2,2001,p.118- 121. 富士時報 Vol.75 No.10 2002 電源用マルチチップパワーデバイス 「M-Power 2 シリーズ」 太田 裕之(おおた ひろゆき) 寺沢 徳保(てらさわ のりほ) まえがき 図1 基本回路構成 自励発振動作 近年,スイッチング電源への要求は,小型,軽量だけで I Q2 Q2 なく省エネルギー,高力率が求められており,各種の変換 (1)∼(3) 方式が提案されてきた。その中で,複合共振方式が従来の 変換方式と比較して効率,ノイズ面ともに優れているとい う点で注目され実用化されている。しかしながら,軽負荷 で効率が悪化し,無負荷状態でも損失が数ワット発生する。 したがって,待機運転時には省エネルギー対策として補助 整 流 回 路 ま た は Ed P F C R2 V Q2 VG2 M-Power2 R1 I D1 Cr Tr D1 S1 VP1 P1 制御 IC P2 Q1 V0 S2 D2 + 他励発振動作 I Q1 + I D2 V Q1 + P3 VG1 電源が必要となり,小型化の妨げとなっている。 そこで,複合共振のメリットを生かし,軽負荷でも高効 出力電圧 調整回路 率な制御ができる,複合発振型電流共振コンバータ〔PW 通常-待機 切換信号 M(Pulse Width Modulation)制御と自励制御を組み合わ せた制御方式〕を新たに開発した。また専用パワーデバイ スとして,複合発振型電流共振スイッチング電源を容易に 設計できる「M-Power 2 シリーズ」を製品化したので, 複合発振型電流共振コンバータの動作原理と M-Power 図2 タイミングチャート 2 ② シリーズの紹介をする。 VP2, VG2 0 複合発振型電流共振コンバータの動作原理 図1 に M-Power 2 を適用した DC-DC コンバータの基 本回路構成を示す。また,図2に動作のタイミングチャー VG1 0 電圧指令値, 参照信号値 0 トを示す。 MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)Q1 は制御 IC で駆動される他励発振動作, VQ1, VQ2 ③ ゲート しきい値 電圧 VG2 短絡防止 時間T d 電圧指令値 参照信号値 VQ1 VQ2 0 MOSFET Q2 は絶縁トランス Tr の補助巻線で駆動される I Q1, I Q2 自励発振動作となる。 ④ ① VP2 I Q1 I Q2 0 絶縁トランスは一次巻線 P1 と二次巻線 S1,S2 とを疎 VP1 結合として比較的大きめの漏れインダクタンスを持たせた VP1, VP3 設計とする。本 DC-DC コンバータはこの漏れインダクタ 0 VP3 ンスとコンデンサ Cr の直列共振回路により電流共振動作 をする。Q2 の駆動巻線 P2 と,IC の制御電源を供給する I D1 制御電源巻線 P3 は P1 と密結合とした設計とし,おのお I D1, I D2 の P1 の電圧に比例した電圧を発生させる。駆動巻線 P2 0 I D2 と MOSFET Q2 のゲート端子との間に接続している抵抗 太田 裕之 寺沢 徳保 スマートパワーデバイスの開発・ スマートパワーデバイスの開発・ 設計に従事。現在,富士日立パ 設計に従事。現在,富士日立パ ワーセミコンダクタ(株)松本事業 ワーセミコンダクタ(株)松本事業 所開発設計部。 所開発設計部。 585(37) 富士時報 電源用マルチチップパワーデバイス「M-Power 2 シリーズ」 Vol.75 No.10 2002 とダイオードは,ゲート電圧をターンオン時には緩やかに, 納した。外形は高さ 10 mm,幅 30 mm,厚さ 3.5 mm とコ ターンオフ時には高速に変化させることにより,Q1 と Q2 ンパクトな SIP(Single Inline Package)とし,薄型電源 が同時にオンして短絡電流が流れるのを防ぐように設定す に対応している。このようなコンパクトなパッケージなが る。 ら,放熱フィンなしで F9221L では 100 W 出力,F9222L 制御電源巻線 P3 に並列に接続した抵抗とダイオードの では 150 W 出力のスイッチング電源に適用可能である。 回路は,絶縁トランス一次巻線電圧(VP1)を間接的に P3 複合発振型制御専用に開発した IC は,Q1 を PWM 制 の電圧で検出し,制御 IC の信号レベルに変換する回路で 御する演算機能と,待機機能,保護機能を有している。特 ある。制御 IC は,VP1 が負から正へ零クロスするタイミ に待機機能として待機モード切換機能,待機モード時に ングを検出し,短絡防止期間(Td)を経たのちに Q1 を バースト動作するための演算機能,トランスからの発生音 ターンオンさせる。 対策としてのソフトスタート,ソフトエンド制御機能が内 出力電圧制御は,出力電圧調整回路の信号を電圧指令値 蔵されているのが特徴である。ソフトスタート,ソフトエ として制御 IC にフィードバックして行う。制御 IC は, ンド制御機能については後述の試作電源の説明に詳細を記 その電圧指令値と VP1 が負から正へ零クロスするタイミン 述する。 グから時間に比例して増加する参照信号とを比較し,出力 電圧が一定になるように Q1 をパルス幅制御する。 保護機能としてはラッチ停止機能付きの過電流保護,負 荷短絡保護,過熱保護,過電圧保護と低動作電圧保護を有 また,Q1 オン時に VP1 が正から負へ零クロスするタイ している。さらに MOSFET と端子の配線に直径 300 μm ミングを検出した場合,強制的に Q1 をターンオフさせる のアルミ線を用いて防爆性を確保したことにより,安全性 機能を有しており,Q2 オフと Q1 オンの切換信号,およ の高い電源を設計しやすくしている。また過電流保護には び Q1 オフと Q2 オンの切換信号を絶縁トランスからの指 0.1 秒の不感時間を設けて,出力の急変に対し安定な電源 令として受ける。そのためオン信号からのデッドタイムを を設計できるよう配慮されている。 設けておけば共振はずれによる貫通電流が発生しない。 IC には待機電力低減を狙い CMOS(Complementary MOS)プロセスを採用している。 M-Power 2 シリーズの概要 試作電源の動作波形と電源特性 前記の電源システムを容易に構成するためのパワーデバ イス M-Power 2 シリーズを開発したので紹介する。 表1 に M-Power 2 シリーズの系列表を示す。また, 図 3 に M-Power 2 の外観を, 図4 にはその等価回路図を示 す。 図 5 に M-Power 2 シリーズの F9221L を使用した電源 回路構成を示す。出力は 16 V/4.7 A,5 V/1 A の 2 出力と し,5 V 出力をフィードバック制御し定電圧化する。また, 出 力 電 力 が 80 W と な る た め , 入 力 高 調 波 対 策 と し て 構造はオールシリコンのマルチチップ構成を採用し, DC-DC コンバータ前段に PFC(Power Factor Correc- IC と MOSFET 2 個(Q1,Q2)を一つのパッケージに収 tion)回路を接続している。PFC 用 MOSFET には 2SK ,PFC 用昇圧 3469(富士電機製 SuperFAP-G シリーズ) 表1 系列表 分類 ダイオードには YG963S6(富士電機製 SuperLLD シリー MOSFET(Q1) MOSFET(Q2) ズ) ,PFC 用 IC には FA5501(富士電機製)を使用し, 制御 IC P O(W) 型式 V DS R DS(ON) V DS R DS(ON) V CC(ON) T( j OH) PFC 回路の効率向上を図っている。また,待機信号によ り DC-DC コンバータを待機モードに切り換えると同時に F9221L 500 V 0.9 Ω 0.9 Ω 500 V 16.5 V (最大) (最大) 125∼ 150 ℃ 100 W F9222L 500 V 0.6 Ω 0.6 Ω 500 V 16.5 V (最大) (最大) 125∼ 150 ℃ 120 W 図4 等価回路図 Q2 D 図3 M-Power 2 の外観 23 D2 G S 20 G2 VCC 7 VREF COMP CS CB CON STB VW 586(38) 10 11 12 13 14 15 16 VCCP VCC VREF COMP OUT CS CB CON ISNS STB VW GNDP GND IC Q1 D 19 D1,S2 G S 4 S1 8 GND 富士時報 電源用マルチチップパワーデバイス「M-Power 2 シリーズ」 Vol.75 No.10 2002 図5 試作評価器の電源回路構成 PFC DC-DCコンバータ 23 M-Power2 AC80∼ ノ 288 V イ ズ フ ィ ル タ ︵ F A制 5御 5 I 0C 1 ︶ 15 11 10 12 13 14 + Q2 D1 Cr R2 + P1 20 V0=16 V P0=75 W S1 19 R1 制御 IC 7 P2 Q1 16 8 S2 D2 D3 4 + S3 起動 回路 + P3 V0=5 V P0=5 W S4 D4 出力電圧 調整回路 通常-待機 切換信号 図6 通常モード時の動作波形 VQ1 VQ1 200 V/div 0 200 V/div 0 VQ2 VQ2 200 V/div 0 200 V/div 0 I Q1 0 I Q2 VP1 0 I Q1 0.5 A/div 200 V/div 0 I D1 0.5 A/div VP1 200 V/div I D1 I D2 I D2 4 A/div 0 4 A/div 0 I D3 I Q2 0 I D4 0 4 A/div t:5 s/div (a)定格負荷時(5 V出力5 W,16 V出力75 W) PFC を停止させ,待機時の入力電力を低減している。 I D3 4 A/div I D4 t:5 s/div (b)軽負荷時(5 V出力5 W,16 V出力3 W) 0 図7 スイッチング周波数とオンデューティ特性 る。また,各 MOSFET のターンオン時にはドレイン電流 が負に流れている。この期間にゲート電圧を印加すること により零電圧スイッチングとなり,ターンオン損失が発生 しない。図7にスイッチング周波数とオンデューティ特性 を示す。オンデューティは定格負荷付近で 0.5 となる。 軽負荷時には Q1 のオンデューティだけ小さくなるため, スイッチング周波数は軽負荷になると上昇する。しかし, 定格負荷の 10 %負荷で周波数上昇率は 20 %程度と小さい。 90 0.8 fs 75 0.5 D 60 0 20 40 60 出力電力 P o(W) 80 オンデューティD にオンオフし,負荷側に正弦波状の共振電流を供給してい スイッチング周波数 f s(kHz) 図6に通常モード時の動作波形を示す。Q1,Q2 は交互 0.2 100 図8に通常モード時の効率・力率特性を示す。定格出力で 効率 87 %以上,力率 0.98 以上を達成している。 図 9 に待機モード時の動作波形を示す。図中の VCS は ら耳障りな音が発生するが,その原因はトランスに流れる F9221L に接続するソフトスタートコンデンサの電圧波形 電流変化が急峻(きゅうしゅん)なためである。F9221L である。単純にバースト発振動作させると絶縁トランスか ではトランスに流れる電流(IP1)を緩やかに増加・減少 587(39) 富士時報 電源用マルチチップパワーデバイス「M-Power 2 シリーズ」 Vol.75 No.10 2002 図8 通常モード時の効率・力率特性 100 図10 待機電力特性 1.0 AC100 V 4 AC240 V 力率 0.9 AC200 V AC240 V AC100 V 0.8 80 70 0 20 40 60 出力電力 P o(W) 入力電力 P i(W) AC240 V 力率Φ 効率 η(%) AC100 V 効率 90 3 2 1 0.7 100 80 0 0 0.5 1.0 1.5 出力電力 P o(W) 2.0 2.5 図9 待機モード時の動作波形 製品化し,カラーテレビ,CRT モニタに採用されている。 V cs 2 V/div 今回新しいスイッチング電源回路の開発と専用のパワーデ バイスを製品化し,小型,軽量,高効率,高力率,省エネ 0 ルギーの要求が強い LCD モニタ,LCD テレビなどの電源 を容易に設計できる提案を行った。今後さらに大出力のラ I P1 0 0.8 A/div インアップ化をして適用電源範囲の拡大を予定している。 また,電源へのさらに高度な要求に対応すべく電源システ ムの開発,専用パワーデバイスの製品化に努力する所存で ある。 t:2 ms/div 入力電圧 AC100 V 時 (5 V 出力 0.5 W,16 V 出力 0 W) 参考文献 (1) 渡辺晴夫.複合共振コンバータ用マルチチップモジュール. ’ 98 スイッチング電源シンポジウム.1998.C1- 1- 1 ∼ C1- させる機能を有しており,耳障りな音のまったくないバー スト発振動作が可能である。その電流変化はソフトスター トコンデンサの充放電による電圧変化に比例する。 図10に待機モード時の入力電力特性を示す。無負荷時入 力電力は 0.4 W 以下であり,従来回路で必要であった待機 専用補助電源を省略できる。 1- 10. (2 ) 岡田洋一,永原清和.交流入力電圧広範囲対応共振型電源. ’ 98 スイッチング電源シンポジウム.1998.C1- 2- 1 ∼ C12- 10. 98 スイッチ (3) 細谷裕.ノートパソコン用共振型アダプタ.’ ング電源システムシンポジウム.1998.C1- 3- 1 ∼ C1- 3- 15. (4 ) 鷁頭政和.高効率自励発振型電流共振 DC- DC コンバータ. あとがき 電子技術.vol.43,no.5,2001,p.22- 25. (5) 西川幸廣ほか.ZVS 方式スイッチング電源.パワーエレ 富士電機では,他励フライバック方式のソフトスイッチ ング機能と省エネルギー運転のための待機機能を内蔵した クトロニクス研究会論文誌.vol.25,no.2,2000,p.153- 159. (6 ) 五十嵐征輝ほか.ソフトスイッチング方式マルチチップパ (4 ) パワーデバイス(M-Power 588(40) 1 シリーズ F9209L)をすでに ワーデバイス.電気学会産業応用部門大会.no.288,1999. 富士時報 Vol.75 No.10 2002 高耐圧ショットキーバリヤダイオード 北村 祥司(きたむら しょうじ) 伊藤 博史(いとう ひろし) 表1 スイッチング電源用ダイオード一覧 まえがき 現状適用ダイオード 用 途 近年,電子機器の小型化,高性能化の動向に対し,ス ニーズ SBD イッチング電源では,高効率化,低ノイズ化,小型化対応 LLD AC100 V 入力 専用 300 V 600 V 高効率 れる。特に,スイッチング電源の 50 %弱の損失を占める AC 200 V 入力 ワールドワイド (75 W 以上) 二次側出力整流ダイオードの特性改善が強く望まれている。 出力電圧 3.3 V 30 V 出力電圧 5 V 45 V 200 V 高効率 低ノイズ が進められている。スイッチング電源用パワーデバイスに 一次側 要求される特性としては,低損失化,低ノイズ化があげら パソコン 電源 富士電機では,この要求に対し 20 V から 100 V 耐圧の ショットキーバリヤダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode) ,200 V,300 V 超高速低損失ダイオード(LLD: Low Loss fast recovery Diode)の開発系列化を推進し, 各種出力電圧に対応する最適なダイオードをシリーズ化し ス イ ッ チ ン グ 電 源 PFC 回路 出力電圧 12 V 二次側 整 流 てきた。 高効率 高温動作 AC アダプタ 出力電圧 15∼19 V OA/FA 電源 出力電圧 24 V 300 V 高効率 低ノイズ 出力電圧 28 V 300 V 高効率 低ノイズ 出力電圧 48 V 400 V 高効率 低ノイズ 今回,従来使用されていた 200 ∼ 300 V LLD に対し, 100 V 基地局 電源 電源の 12 ∼ 48 V 出力の整流用に最適な高耐圧 SBD を開 発したので紹介する。 逆 流 防 止 本製品は,低 VF(順方向電圧)であると同時にソフト リカバリー特性を有し,スイッチング時のサージ電圧の抑 Oring 10∼ 20 V 制が期待できる。したがって,従来は 200 V,300 V 耐圧 クラスの LLD を使用していた回路へ1ランク下の耐圧の どでは,CPU の高速化,大容量化,小型化,低ノイズ化 適用が可能となり,低 VF 化による低損失化,高効率化, などのニーズに対応する目的で,二次側整流回路に使用さ スナバ回路の簡素化が期待でき,スイッチング電源の高効 れるダイオードに対し VF による発生損失の低減,逆回復 率化,小型化に寄与できるものと考える。以下に今回開発 特性による跳ね上がり電圧,スイッチングノイズの低減が した高耐圧 SBD を紹介する。 に 200 V LLD を使用した場合の 要求されている。 図1 (a) パソコン用電源(250 W)の 12 V 出力部ダイオードの損 開発の背景 失分析を示す。損失の 90 %以上は VF による損失である (b) にスイッチング時のダイオー ことが分かる。また,図1 今回開発した高耐圧 SBD は,スイッチング電源の二次 ド印加波形を示す。このサージ電圧および急峻(きゅう 側整流,特に高電圧出力整流用に最適なダイオードと考え しゅん)な dv/dt によるノイズを抑制するために,スナバ ている。表1にスイッチング電源に使用されるダイオード 回路やビーズなどを適用しており,部品点数の増加,コス を用途別に示す。二次側整流に注目すると,3.3 V,5 V と トのアップなどを招いている。 いった低電圧出力回路では,低耐圧 SBD(30 V,45 V) 従来使用されている LLD は,pn 接合ダイオードであり, が使用されているが,高電圧出力回路では,耐圧の高い 低 VF 化には限界がある。また一般にソフトリカバリー性 LLD(200 V,300 V,400 V)が使用されていた。12 V 以 と VF にはトレードオフ関係があり,低 VF 化とソフトリ 上の高電圧出力を有するパソコン電源,通信基地局電源な カバリー化の両立が非常に困難であった。そこで SBD の 北村 祥司 伊藤 博史 パワーダイオードの開発設計に従 パワーダイオードの開発設計に従 事。現在,富士日立パワーセミコ 事。現在,富士日立パワーセミコ ンダクタ(株)松本事業所開発設計 ンダクタ(株)松本事業所開発設計 部。 部。 589(41) 富士時報 高耐圧ショットキーバリヤダイオード Vol.75 No.10 2002 低 VF,ソフトリカバリー特性に着目し,従来 pn 型高速 ダイオードを使用している高出力回路に高耐圧 SBD を適 3.2 バリヤメタル選定 用することで低損失化,ソフトリカバリー特性による低ノ 3.1節の検討結果から,150 ∼ 250 V の耐圧を確保する イズ化が同時に達成可能となる。以上から,今回の高耐圧 にはエピタキシャル層の比抵抗を高くし,厚さは 10μm SBD の目標特性は,12 V 出力から 48 V 出力部をターゲッ 以上が必要となる。低耐圧 SBD と同様なユニポーラ動作 トにし,現状の pn 型高速ダイオードと比較して, を仮定すると,VF は pn ダイオードに比べかなり高くな (1) 低 VF 性の確保 るはずだが,ショットキー接合およびガードリングからの (2 ) ソフトリカバリー性の確保 少数キャリヤ(ホール)の注入が起き,VF が抑えられる。 図4に,40 V,150 V,250 V 耐圧仕様のエピタキシャル層 (3) 150 ∼ 250 V 耐圧 に,3 種のバリヤメタルa,b,c(バリヤ高さa<b<c) を加味し,開発を推進した。 を形成したときの順方向特性のシミュレーション結果を示 素子設計 す。150 V,250 V 耐圧の仕様のものではバリヤ高さが高 図2 SBD チップの断面構造 3.1 耐圧設計 図 2 に高耐圧 SBD のチップ構造を示す。耐圧構造は ガードリング ガードリング方式を採用した。素子の耐圧は,エピタキ ショットキー電極 酸化膜 シャル層(n−層)の比抵抗 ρ と厚さ t で決まる。 図3 に, 耐圧 VBR の比抵抗ρ,厚さ t 依存性を示す。高耐圧ほど, 比抵抗ρを上げ,エピタキシャル層厚 t が厚い設計とし, エピタキシャル層 ρ t) (比抵抗 /厚さ さらにガードリングの濃度,拡散深さを最適化し目的の耐 圧を確保した。 Si基板 図1 二次側整流(12 V 出力)の損失分析と印加波形 35 30 V :50 V/div I :1 A/div t :10 ns/div スイッチング損失 図3 エピタキシャル層の仕様と耐圧 300 280 260 20 I 耐圧 V BR(V) 損失( J) 25 15 順損失 10 5 0 V 160 140 120 100 10 200 V LLD (a)損失分析 240 220 200 180 エピタキシャル層の比抵抗 12 (b)印加波形 14 16 エピタキシャル層厚 t 18 20 図4 順方向特性のシミュレーション結果 4.5 5.0 バリヤ高さ a<b<c 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 c ba 5.0 順方向電流密度 J F(A/mm2) abc 順方向電流密度 J F(A/mm2) 順方向電流密度 J F(A/mm2) 5.0 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 c b a 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 順方向電圧 V F(V) 順方向電圧 V F(V) 順方向電圧 V F(V) (a)40 V耐圧 590(42) (b)150 V耐圧 (c)250 V耐圧 富士時報 高耐圧ショットキーバリヤダイオード Vol.75 No.10 2002 いほど,大電流域では VF が低くなる(0.7 ∼ 0.8 V でクロ スイッチング損失が予想され,pn ダイオードと同様のラ スポイントあり) 。ショットキー部からのホール注入は, イフタイムコントロールが必要となる。ライフタイムキ エピタキシャル層の比抵抗が大きいほど,またバリヤ高さ ラーには,荷電粒子,重金属などが考えられるが,静特性 が高いほど多くなる。図5は図4の結果などから VF と IR やソフトリカバリー性を損なうことなく,逆回復損失を低 (逆方向電流)の関係を求めたものを示す(各耐圧クラス 減できるように,工程条件を最適化した。 。40 V 耐圧では, でバリヤ高さを変えたときの VF -IR 特性) 素子特性 従来の VF -IR トレードオフを示すが 150 V,250 V ではバ リヤ高さが高いほど VF は低減する。特に 250 V SBD にお いて pn ダイオードに対し,低 VF 特性を達成するには, 以上の検討結果をもとに,150 V,250 V SBD(電流定 バリヤ高さは,メタル b 以上必要であることが分かる。 格 10 A)を作製した。バリヤメタルとしては,バリヤ高 3.3 ライフタイムコントロール タイプ A,B それぞれの順方向特性を,図8に逆方向特性 さが異なるタイプ A,タイプ B(IR 重視)とした。図7に 3.2節の VF 特性から予想されるように,150 V,250 V を示す。比較のために富士電機製 200 V,300 V LLD も示 耐圧の結晶に,高バリヤ高さのメタルを形成した場合, した。順方向特性の立上り電圧の違いは,バリヤ高さの違 ショットキー部およびガードリング部からのホールの注入 いによる。タイプ A,B ともに LLD より低 VF となって が顕著になり,逆回復が無視できなくなる。図6に,バリ いる。特にタイプ A では,低電流域で低 VF が顕著である。 ヤ高さ b 付近のバリヤメタルを用いた場合の各耐圧クラ 図9に逆回復特性の LLD との比較を示す。最も注入の大 スでの逆回復特性を示す。特に 250 V クラスでは,大きな きな 250 V タイプ B SBD と 300 V LLD を比較した。IRP (逆回復ピーク電流)は同レベルであるがソフトリカバ リーになっていることが分かる。表2には,以上の特性比 図5 VF - I R 相関 40 V 耐圧 10−1 図7 順方向特性(試作結果) 250 V 耐圧 150 V 耐圧 a :150 V SBD A :150 V SBD B :200 V LLD 10−2 c バリヤ高さ a<b<c pnダイオード 10−6 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 順方向電流 I F(A) 100 ℃ 10−4 10−5 :250 V SBD A :250 V SBD B :300 V LLD 10 10 b 10−3 順方向電流 I F(A) J R(A/cm2) 逆方向電流密度 (40 V,150 V,250 V のとき) 1 25 ℃ 1 25 ℃ 0.1 0.1 1.2 100 ℃ 1 2 順方向電圧 V F(V) ( J F =2 A/mm のとき) 0.01 0 図6 結晶仕様と逆回復特性 I F =10 A −di /dt =100 A/ s 室温 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 順方向電圧 V F(V) 1.2 (b)250 V SBD 図8 逆方向特性(試作結果) 10,000 :150 V SBD A :150 V SBD B :200 V LLD 逆方向電流 I R( A) 1,000 250 V 耐圧 0 (a)150 V SBD 1A/div 20 ns/div 150 V 耐圧 0.01 1.2 100 ℃ 100 10 25 ℃ 1 100 ℃ 100 10 1 25 ℃ 0.1 0.1 0.01 :250 V SBD A :250 V SBD B :300 V LLD 1,000 逆方向電流 I R( A) 40 V 耐圧 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 順方向電圧 V F(V) 0 50 100 150 200 逆方向電圧 V R(V) (a)150 V SBD 250 0.01 0 50 100 150 200 250 逆方向電圧 V R(V) 300 (b)250 V SBD 591(43) 富士時報 高耐圧ショットキーバリヤダイオード Vol.75 No.10 2002 表2 特性比較(試作結果) 150 V SBD 項目 250 V SBD 条 件 タイプ A VF 25 ℃ I F =10 A 0.84 タイプ B タイプ A 0.83 1.18 タイプ B 0.93 200 V LLD 0.92 300 V LLD 1.05 単位 I dl F dt IF V Q rr t 0 IR 100 ℃ VR =150/250 V 100 ℃ I F =10 A −di / dt = 100 A/ s t rr I RP S 2,000 27 1,620 14 290 479 A 41 40 100 52 36 39 ns 2.0 2.0 3.8 2.4 2.6 2.4 A 0.55 0.48 1.27 0.63 0.14 0.3 ー 図9 逆回復特性(試作結果) I RP t1 t2 t rr ソフト性 t2 S= t1 図11 二次側整流ダイオードの損失比較(12 V 出力電源) 35 I F =10 A −di /dt =100 A/ s 100 ℃ 300 V LLD I F =10 A −di /dt =100 A/ s 100 ℃ スイッチング損失 30 逆損失 25 損失( J) 250 V SBD タイプ B 20 順損失 15 10 1A/div 20 ns/div 1A/div 20 ns/div 5 0 200 V LLD 150 V SBD タイプA 150 V SBD タイプB 図10 12 V 出力電源実装時の印加波形 V:50 V/div I :1 A/div t :10 ns/div 実装試験結果 パソコンサーバ用電源(250 W,12 V 出力)に実装した 12 V ときの波形比較を 図10に示す。200 V の LLD の代わりに I (d) は評価回路, ∼ は 150 V SBD を実装した。 図10の (b) (a) V RP =129 V (a)12 V 出力回路 フォワード側のダイオードの波形である。跳ね上がりサー ジ電圧が大幅に緩和されている。また,二次側の損失を計 V (b)200 V LLD 算したものが図11である。 タイプ A で 18.3 %の損失低減が図られている。24 V, 48 V 系電源でも同様の検討結果が得られ,約 20 ∼ 30 % I V RP =75 V V (c)150 V SBD タイプA I V RP =86 V の損失低減が期待できる。 あとがき V (d)150 V SBD タイプB 以上,高耐圧 150 V,250 V SBD の概要,スイッチング 電源二次側整流用途への適用などについての概要を紹介し た。今回の開発品の製品化は,10 A,20 A 定格,製品外 形は TO220,TO220-F15 を予定している。 較をまとめた。LLD と比較して低 VF,ソフトリカバリー (S パラメータ大)となっていることが分かる。 592(44) 今後,さらなる低損失化,高性能化のための SBD の特 性改善を進めていく所存である。 富士時報 Vol.75 No.10 2002 パワー MOSFET「SuperFAP-G シリーズ」とその適用 効果 徳西 弘之(とくにし ひろゆき) 山田 忠則(やまだ ただのり) 井上 正範(いのうえ まさのり) まえがき 上をターンオフ損失とオン抵抗損失が占めている。このこ とから,スイッチング電源の高効率化・低損失化を達成す 近年,IT(Information Technology)化の進展に伴い, るためには,オン抵抗損失とターンオフ損失の双方の改善 パソコン,サーバなどのネットワーク関連機器を中心に情 が必要である。一方,待機消費電力にあたる軽負荷時では, 報通信機器の出荷台数は急速に増加しており,省資源,省 ターンオフ損失が全体の約 90 %を占めている。また,情 エネルギー,小型化の観点から情報通信機器の低消費電力 報通信機器の小型化に対応するため,スイッチング電源は 化が強く求められている。これら情報通信機器に使用され スイッチング周波数を高くすることで小型化を図っており, ているスイッチング電源に対しては,高効率化・低損失化 近年,そのスイッチング周波数はさらに高くなる傾向にあ が求められている。また,ファクシミリ,コピー機に代表 る。今後は,ターンオフ損失に代表されるスイッチング損 される待機動作時間の長い OA 機器については待機時消 失の低減の重要性がますます高まることが予想される。 費電力の低減も求められ, 「エネルギーの使用の合理化に 本稿では,これら市場ニーズに応えるべく開発した低損 関する法律」の改正法(改正省エネルギー法)などの法規 失・超高速パワー MOSFET「SuperFAP-G シリーズ」の 制とも相まって,さらに高効率・低損失のニーズは強まる 特徴,また実際のアプリケーションへ適用した場合の効果 傾向にある。 について,その概要を紹介する。 図1に代表的なスイッチング電源であるフォワードコン 特 徴 バータにおけるパワー MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の損失シミュレーション 結果を示す。定常負荷時(出力電流 8 A)では,ターンオ パワー MOSFET のターンオフ損失は,ドレイン - ゲー フ損失が全損失の約 50 %を占めている。次にオン抵抗 ト間の帰還容量(Crss)の充電時定数により決まり,ター (RDS(on))損失が約 32 %となっており,全損失の 80 %以 ンオフ損失を低減するためには,充電時定数であるゲー ト - ドレイン間電荷量(Qgd)を低減する必要がある。Qgd と RDS(on) は,トレードオフの関係にあり,パワー MOS 図1 フォワードコンバータの損失シミュレーション結果 FET の要求仕様であるオン抵抗損失の低減とターンオフ f =100 kHz,P o=100 W, s 発生損失(W) 10 損失の低減を両立させるためには,このトレードオフの改 MOSFET(600 V/0.75Ω) 善が不可欠である。そのため従来 Ron・A(単位面積あた :ターンオン損失 :ターンオフ損失 :オン抵抗損失 :ドライブ損失 :トータル損失 りのオン抵抗)で表現していたパワー MOSFET の性能指 数(FOM:Figure-of-Merit)を RDS( on) と Qgd の積とし て今回新たに規定した。Ron・ Qgd の値が小さいほど高性 能な MOSFET といえる。 5 表1 に SuperFAP-G と同一オン抵抗の従来製品の特性 比較を示す。今回開発した 150 V 耐圧の代表機種における 性能指数は,0.675Ω・nC であり,従来製品に対して,性 能が約 2.5 倍向上している。このように性能指数の向上を 0 0 実現した設計施策について,以下に述べる。 5 出力電流 I o(A) 10 徳西 弘之 山田 忠則 井上 正範 パワー MOSFET の製品開発・設 パワー MOSFET の開発・設計に 宇宙パワー MOSFET の設計,品 計に従事。現在,松本工場パワー 従事。現在,富士日立パワーセミ 質保証に従事。現在,松本工場パ 半導体開発部。 コンダクタ(株)松本事業所開発設 ワー半導体第一品質保証部。 計部。 593(45) 富士時報 パワー MOSFET「SuperFAP-G シリーズ」とその適用効果 Vol.75 No.10 2002 ことにより,きわめて平面に近い接合のセルを実現した。 設計施策 この QPJ 構造により,シリコンの理論限界に対し 97 %の 耐圧を達成し,その結果,n−型シリコンの抵抗率を理論 SuperFAP-G シリーズでは,オン抵抗損失を改善する 限界の 108 %にまで低減し,図3に示すシリコンの理論限 ため,擬平面接合:QPJ(Quasi-Plane-Junction)という 界値に対して 10 %以内の低オン抵抗化を達成している。 新技術を開発した。図2に QPJ の構造を示す。 一方,ターンオフ損失を決めている Qgd を低減するため 中高耐圧パワー MOSFET のオン抵抗の大部分は,エピ は,n−型シリコンの幅(電流経路)を狭く,かつ短くす タキシャル層のn−型シリコンの抵抗率で制限されている。 る必要がある。しかし,Qgd と RDS(on)にはトレードオフ よって,低オン抵抗を実現しようとした場合,n−型シリ の関係があり,この電流経路を狭くするとオン抵抗が上 コンの抵抗率を下げることで可能となるが,この方法では, がってしまう問題がある。QPJ 構造では,浅い p−ウェル ドレイン - ソース間耐圧が低下する問題がある。理論的に により電流経路を短くしていることに加え,n−型シリコ Ron・A は耐圧の 2.5 乗に比例するため,パワー MOSFET ンの電流経路に高濃度の n 型ドーピングを行い,オン抵 のオン抵抗を極限まで下げるためには,この理論限界に近 抗を上げずにn−型シリコンの電流経路を極限まで狭くし い低比抵抗のn−型シリコンを使用する必要がある。従来 ている。その結果,従来の同一オン抵抗製品に対し,約 のパワー MOSFET は,セルの構造が三次元的な凹凸を多 60 %の Qgd 低減を実現している。 く含むため,電界強度の高い箇所ができて,シリコンの理 論限界に対して 80 %程度の耐圧しか得られていなかった。 3.1 SuperFAP-G シリーズ SuperFAP-G シリーズでは,すでに 450 ∼ 600 V 耐圧 これを補うためにはn−型シリコンの抵抗率を理論限界値 の 175 %以上に高めることが必要であり,結果として Ron・A を小さくできなかった。SuperFAP-G シリーズの 図3 Vb と Ron・A の関係 QPJ 構造では,従来の高濃度で深い p+ウェルに代えて, オン抵抗(面積抵抗率)R on・A(mΩ・cm2) 表1 SuperFAP-G の特性比較 項目 系列 型式 SuperFAP-G 2SK3474-01 従来製品 2SK2226-01 V DS 150 V 150 V ID 33 A 20 A PD 150 W 80 W V GS(th) 3∼5 V 1∼2.5 V R DS(on) (typ.) 54 mΩ 55 mΩ Qg 34 nC 100 nC Q gd 12.5 nC 30 nC 0.675 Ω・nC 1.65 Ω・nC 性能指数 R on・Q gd 200 100 80 60 従 来 の S パ up ワ er ー FA シ M リ P O -G コ S ン FE シ の リ T 理 ー 論 ズ 限 界 値 400 低濃度で浅い p−ウェルを稠密(ちゅうみつ)に配置する 40 20 400 800 1,000 600 耐圧 V B(V) 図2 SuperFAP-G のチップ構造(QPJ 構造) n+ p+ p n+ p n+ n+ p p+ p n+ p+ p p− n+ n+ p+ p− n+ n+ p+ p− n+ 594(46) エピタキシャル層 n− サブストレート層 n+ エピタキシャル層 サブストレート層 (a)従来設計MOSFET n+ n+ p+ p− 電流経路 電流経路 n− n+ n+ p+ p− (b)SuperFAP-G n+ n+ p+ p− 富士時報 パワー MOSFET「SuperFAP-G シリーズ」とその適用効果 Vol.75 No.10 2002 表2 SuperFAP-Gシリーズ(新規追加分) 耐圧 BV DSS 100 V 150 V ゲートチャージ パッケージ 定格電流 ID オン抵抗 R DS(on(max.) ) QG Q gd TO-220 TO-220F T-PACK TFP TO-247 29 A 62 mΩ 22 nC 6 nC 2SK3598 2SK3599 2SK3600 2SK3601 ー 41 A 44 mΩ 32 nC 9 nC 2SK3644 2SK3645 2SK3646 2SK3647 ー 73 A 25 mΩ 52 nC 18 nC 2SK3586 2SK3587 2SK3588 2SK3589 ー 23 A 105 mΩ 21 nC 6 nC 2SK3602 2SK3603 2SK3604 2SK3605 ー 33 A 70 mΩ 34 nC 12.5 nC 2SK3648 2SK3649 2SK3650 2SK3474 ー 57 A 41mΩ 52 nC 18 nC 2SK3590 2SK3591 2SK3592 2SK3593 ー 18 A 170 mΩ 21nC 5 nC 2SK3606 2SK3607 2SK3608 2SK3609 ー 45 A 66 mΩ 51nC 16 nC 2SK3594 2SK3595 2SK3596 2SK3597 ー 14 A 260 mΩ 21nC 5 nC 2SK3610 2SK3611 2SK3612 2SK3613 ー 37 A 100 mΩ 44 nC 16 nC 2SK3554 2SK3555 2SK3556 2SK3535 ー 10 A 1.18 Ω 35 nC 10 nC ー 2SK3673 ー ー ー 12 A 0.93 Ω 31nC 9 nC ー 2SK3677 ー ー ー 7A 1.9 Ω 25 nC 7 nC 2SK3529 2SK3530 ー ー ー 6A 2.5 Ω 25 nC 7 nC 2SK3531 2SK3532 2SK3676 ー ー 7A 2.0 Ω 28 nC 8 nC 2SK3533 2SK3534 2SK3674 ー 2SK3675 9A 1.58 Ω 32 nC 7 nC 2SK3678 2SK3679 ー ー ー 10 A 1.4 Ω 37 nC 10 nC ー ー ー ー 2SK3549 200 V 250 V 700 V 800 V 900 V 図4 SuperFAP-G シリーズの外観 図5 電流連続モード PFC 回路損失シミュレーション結果 パワーデバイス損失 シミュレーション条件: V DC=380 V,PO=300 W, f C=71 kHz,T a=100 ℃ ダイオード V F 損失(2 %) ダイオード逆回復損失(21 %) MOSFETオン抵抗損失(9 %) MOSFETターンオフ損失(34%) MOSFETターンオン損失(34%) クラスで約 40 型式の製品開発を完了し量産を行っている。 機器において,入力高調波電流規制に対応するために昇圧 今回,加えて DC 12 ∼ 72 V 入力対応の DC-DC コンバー 型コンバータを応用した PFC 回路が搭載されている。こ タ用途に 100 ∼ 250 V の中耐圧クラス,および AC 200 V の PFC 回路を付加することにより,電力変換部が 2 回路 入力のスイッチング電源用に 700 ∼ 900 V 耐圧クラスのシ となるため,PFC 回路部での損失低減,効率向上が強く リーズ化を行った。 表 2 に新しくシリーズ化した Super 求められている。 図5に電流連続モード PFC 回路におけ FAP-G シリーズの代表定格を示す。図4に SuperFAP-G るスイッチングデバイスの発生損失解析結果を示すが,約 シリーズのパッケージ外観を示す。 70 %をパワー MOSFET の損失で占めており,このうち の約 90 %がターンオン,ターンオフの両スイッチング損 SuperFAP-G シリーズの適用とその効果 失で占めている。 電流連続モード PFC 回路では, 図6の波形に示すよう SuperFAP-G シリーズの参考使用例として,PFC(力 にパワー MOSFET のターンオン損失は,出力ダイオード コンバータ回路の代表的な回路で の逆回復特性の影響を強く受け,ターンオン損失低減のた 率改善)回路,DC-DC の適用効果について以下に紹介する。 めには,ダイオードの逆回復電流(Irp)を低減すること が重要である。富士電機では,この逆回復特性を改善し電 4.1 PFC 回路への適用 スイッチング電源などのコンデンサインプットタイプの 流連続モード PFC 用に最適設計を行った超高速ダイオー ド SuperLLD シリーズを開発し製品化した。SuperLLD 595(47) 富士時報 パワー MOSFET「SuperFAP-G シリーズ」とその適用効果 Vol.75 No.10 2002 図6 電流連続モード PFC 回路(ターンオン波形) シリーズを適用することにより,パワー MOSFET のター ンオン損失は,従来型ダイオードに比べ約 40 %の低減と (評価条件:V in =AC100 V,Po ≒250 W) (a)従来 MOSFET/従来ダイオード 一方,ターンオフ損失は図7の波形に示すようにパワー t:20 ns/div MOSFET 自 身 の ス イ ッ チ ン グ 特 性 で 決 ま る 。 Super ダイオード V R:200 V/div ダイオード I F:5 A/div 0 なっている。 FAP-G シリーズを適用することにより,同定格の従来型 パワー MOSFET に比べ,ターンオフ時間が約 60 %高速 化されており,発生損失については約 80 %の低減となっ ている。 この SuperFAP-G シリーズ,SuperLLD シリーズを組 MOSFET I D:5 A/div 0 MOSFET V DS:200 V/div み合わせて使用することにより市販されている電流連続 モード PFC 回路搭載スイッチング電源にて, 図8 , 図9 に示すように,ヒートシンク温度上昇 6 ℃低減と効率約 1%向上の結果が得られた。 (b)SuperFAP-G/SuperLLD 電流連続モード PFC 回路での SuperFAP-G シリーズ, t:20 ns/div SuperLLD シリーズの推奨組合せ例を表3に示す。 ダイオード V R:200 V/div 4.2 DC-DC コンバータ回路への適用 ダイオード I F:5 A/div 0 MOSFET I D:5 A/div 情報通信機器のオンボード電源には,ブリックタイプの DC-DC コンバータが使用される。現在主流となっている 図8 電流連続モード PFC(温度上昇測定結果) MOSFET V DS:200 V/div 0 図7 電流連続モード PFC 回路(ターンオフ波形) (評価条件:V in =AC100 V,Po ≒250 W) (a)従来 MOSFET/従来ダイオード t:50 ns/div ダイオード I F:5 A/div ヒートシンク温度 T HS(℃) 60 55 50 従来MOSFET,従来ダイオード 45 40 35 SuperFAP-G,SuperLLD 30 50 ダイオード V R:200 V/div 0 評価条件( V in=AC100 V,f C=63.7 kHz,T a=25 ℃ 同一ヒートシンク上に,PFC用MOS,PFC用ダイオード, DC-DC用MOS実装状態 100 150 出力電力 PO(W) 200 250 MOSFET V DS:200 V/div MOSFET I D:5 A/div 0 図9 電流連続モード PFC(変換効率測定結果) 70 評価条件( V in=AC100 V,f C =63.7 kHz,Ta =25 ℃) (b)SuperFAP-G/SuperLLD 69 t:50 ns/div ダイオード I F:5 A/div 0 ダイオード V R:200 V/div MOSFET V DS:200 V/div 変換効率 η AC-DC(%) SuperFAP-G,SuperLLD 68 従来MOSFET,従来ダイオード 67 66 65 64 63 0 596(48) MOSFET I D:5 A/div 62 50 100 150 出力電力 PO(W) 200 250 富士時報 パワー MOSFET「SuperFAP-G シリーズ」とその適用効果 Vol.75 No.10 2002 表3 電流連続モード PFC 用 SuperFAP-G/SuperLLD 電源容量 PO 型 式 電気的特性 パッケージ 2SK3504-01 V DS =500 V I D =14 A R DS(on)=0.46 Ω(max.) Q gd =10.5 nC(typ.) TO-220 YA961S6 V R =600 V I P =8 A V F =2.0 V(typ.) t rr =23 ns(max.) TO-220 2SK3522-01 V DS =500 V I D =21A R DS(on)=0.26 Ω(max.) Q gd =20 nC(typ.) TO-247 YA962S6 V R =600 V I P =10 A V F =1.6 V(typ.) t rr =25 ns(max.) TO-220 2SK3680-01 V DS =500 V I D =43 A R DS(on)=0.11Ω(max.) Q gd =50 nC(typ.) TO-247 YA963S6 V R =600 V I P =15 A V F =1.7 V(typ.) t rr =30 ns(max.) TO-220 ∼150 W ∼250 W ∼350 W 図10 DC-DC コンバータ実装評価結果(低出力時) スイッチングデバイスの低損失化については,スイッチ ング周波数が 300 kHz を超える高周波で動作していること V in=48 V, V o=2.5 V,アクティブリセット方式 から,スイッチング損失およびドライブ損失を低減するこ 70 とが必要となる。 65 SuperFAP-G 変換効率η(%) 60 55 今回開発を行った 150 V/70 mΩの SuperFAP-G シリー 従来品 ズを市販されている代表的なクウォータブリックタイプ 50 45 DC-DC コンバータ(48 V 入力/2.5 V 出力/150 W)に実装 40 評価した結果を図10,図11に示す。 35 同定格の従来型パワー MOSFET に比べ,ゲートチャー 30 ジが約 60 %低減されており,変換効率最大 4 %の向上の 25 20 0 2 3 4 5 6 7 出力電力(W) 8 9 10 結果が得られた。また,小型化のニーズに応えるため小型 面実装の TFP パッケージでの系列化も行っている。 あとがき 図11 DC-DC コンバータ実装評価結果(高出力時) 以上,富士電機が低損失・超高速スイッチングパワー V in=48 V, V o=2.5 V,アクティブリセット方式 MOSFET として開発した SuperFAP-G シリーズの設計 78 概要とアプリケーションへの適用効果について紹介した。 SuperFAP-G 76 変換効率η(%) 従来品 この SuperFAP-G シリーズをスイッチング電源,DC-DC 74 コンバータに適用することにより変換効率の向上,消費電 72 力の低減,温度上昇の低減が可能になり,機器の省エネル 70 ギー化,小型化に貢献できるものと確信している。 68 今後もさらに広範囲な電源仕様にマッチすべくシリーズ の拡充をしていく所存である。 66 64 10 20 30 40 50 60 70 出力電力(W) 80 90 100 参考文献 (1) Kobayashi, T. et al. High-Voltage Power MOSFETs Reached Almost to the Silicon Limit.Proceedings of the DC-DC コンバータは,従来のフルブリックタイプのもの から同一電力容量ながら外形の小さくなるハーフブリック (1/2)以下へと小型化と電力密度の増加が同時に進んで 13th ISPSD.2001,p.435- 438. (2 ) 北村祥司ほか.600 V スーパー LLD.富士時報.vol.74, no.2,2001,p.141- 144. いる。小型化と電力密度の向上を実現するためには,ス (3) 山田忠則ほか.低損失・超高速パワー MOSFET「Super イッチング周波数の高周波化による受動部品の小型化と, FAP- G シリーズ」富士時報.vol.74,no.2,2001,p.114- スイッチングデバイスの低損失化が必要となる。 117. 597(49) カンパニー別営業品目 電機システムカンパニー 情報・通信・制御システム,水処理・計測システム,電力システム,放射線管理システム,FA・物流システム,環境シス テム,電動力応用システム,産業用電源,車両用電機品,クリーンルーム設備,レーザ機器,ビジョン機器,電力量計, 変電システム,火力機器,水力機器,原子力機器,省エネルギーシステム,新エネルギーシステム 機器・制御カンパニー 電磁開閉器,操作表示機器,制御リレー,タイマ,ガス関連機器,配線用遮断器,漏電遮断器,限流ヒューズ,高圧受配 電機器,汎用モールド変圧器,電力制御機器,電力監視機器,交流電力調整器,検出用スイッチ,プログラマブルコント ローラ,プログラマブル操作表示器,ネットワーク機器,インダクションモータ,同期モータ,ギヤードモータ,ブレーキ モータ,ファン,クーラントポンプ,ブロワ,汎用インバータ,サーボシステム,加熱用インバータ,UPS,ミニ UPS 電子カンパニー 磁気記録媒体,パワートランジスタ,パワーモジュール,スマートパワーデバイス,整流ダイオード,モノリシック IC, ハイブリッド IC,半導体センサ,サージアブソーバ,感光体およびその周辺装置 流通機器システムカンパニー 自動販売機,コインメカニズム,紙幣識別装置,貨幣処理システム,飲料ディスペンサ,自動給茶機,冷凍冷蔵ショーケー ス,ホテルベンダシステム,カードシステム 富 士 時 報 第 75 巻 第 10 号 平 成 平 成 14 年 9 月 30 日 14 年 10 月 10 日 印 刷 発 行 定価 525 円 (本体 500 円・送料別) 編集兼発行人 原 嶋 発 行 所 富 社 室 〒141 -0032 東 京 都 品 川 区 大 崎 一 丁 目 1 1 番 2 号 (ゲートシティ大崎イーストタワー) 編 集 室 富士電機情報サービス株式会社内 「富士時報」編集室 〒151 -0053 東京都渋谷区代々木四丁目 30 番 3 号 (新宿コヤマビル) 電 話(03)5388 − 7826 FAX(03)5388 − 7369 印 刷 所 富士電機情報サービス株式会社 〒151 -0053 東京都渋谷区代々木四丁目 30 番 3 号 (新宿コヤマビル) 士 電 孝 機 技 株 術 一 式 企 会 画 電 話(03)5388 − 8241 発 売 元 株 式 会 社 オ ー ム 社 〒101 -8460 東京都千代田区神田錦町三丁目 1 番地 電 話(03)3233 − 0641 振替口座 東京 6−20018 2002 Fuji Electric Co., Ltd., Printed in Japan(禁無断転載) 598(50) 富士時報論文抄録 パワー半導体の現状と動向 重兼 寿夫 富士時報 関 康和 U シリーズ IGBT モジュールの技術革新 藤平 龍彦 Vol.75 No.10 p.551-554(2002) 岩室 憲幸 富士時報 宮坂 忠志 関 康和 Vol.75 No.10 p.555-558(2002) パワー半導体の最近の動向について,ISPSD ’ 02 の状況を踏まえ 600 V,1,200 V,1,700 V 超低損失 U シリーズ IGBT モジュール 解説する。IGBT,スーパージャンクション構造,SiC などが注目 を開発した。IGBT チップは新たに開発したトレンチゲート技術と されている。富士電機の U シリーズ IGBT と,これまでの IGBT 薄ウェーハ技術により,発生損失を大幅に低減することに成功した。 開発に適用した技術について述べる。また,FZ ウェーハを用いた FWD チップはアノード構造とライフタイム制御法の最適化により, NPT 型や,さらに特性改善をした FS 型などを概説する。その他, 逆回復電流の低減に成功し,低損失化を実現した。組立技術におい 富士電機の産業用,自動車用,電源用などへの適用デバイス,イン ては,すず系はんだ技術の開発によってパワーサイクル耐量を大幅 テリジェント化や個別デバイスのブレークスルーなどについても述 に向上させた。これら技術の融合により,従来モジュールに対して べる。 40 %のベース面積の小型化を達成できた。 T,U シリーズ IGBT モジュール(600 V) U シリーズ IGBT モジュール(1,200 V) 百田 聖自 小野澤 勇一 富士時報 宮下 秀仁 脇本 博樹 Vol.75 No.10 p.559-562(2002) 富士時報 吉渡 新一 大月 正人 Vol.75 No.10 p.563-566(2002) 600 V 用 IGBT モジュールとして T シリーズおよび U シリーズ 汎用インバータや無停電電源に代表される電力変換機器は,常に の開発を行った。T シリーズはおよそ 100μm 厚のウェーハ加工技 高効率化・小型化・低価格化・低騒音化が要求されており,このイ 術の確立により,NPT 化技術をこの 600 V 製品にまで適用し,低 ンバータ回路に用いられる電力交換用素子にも高性能化・低価格化 スイッチング損失,高破壊耐量,低コスト化を達成した。また U が求められている。本稿では,トレンチゲート構造とフィールドス シリーズでは,トレンチ加工技術により定常損失をも極限まで低減 トップ構造の採用により,従来素子に対して大幅な低損失化を実現 し,このクラスでは最も低損失の IGBT モジュールである。 した U シリーズ IGBT モジュールのうち,1,200 V 系の素子につい て紹介する。 U シリーズ IGBT モジュール(1,700 V) インテリジェントパワーモジュール「R-IPM 3, Econo IPM シリーズ」 星 保幸 渡辺 学 富士時報 宮坂 靖 村松 健太郎 Vol.75 No.10 p.567-571(2002) 富士時報 楠木 善之 松田 尚孝 Vol.75 No.10 p.572-576(2002) 1,700 V U シリーズの IGBT,FWD の開発を行った。IGBT の表 インバータやサーボの電力変換部に適用される IPM は,低損失 面構造はトレンチゲート構造を有し,裏面は FS 構造を採用した。 化・小型化が市場から要求されている。R-IPM の外形と機能を継 その結果,VCE(sat)-Eoff は 125 ℃で 2.5 V-34 mJ(150 A)(電流密 承し,損失の低減を図った R-IPM 3 と,R-IPM と Econo モジュー 度:133 A/cm2)の特性が得られた。FWD は DW の基板で設計を ルのコンセプトを融合して小型・薄型化を図った Econo IPM を開 行い,表面からの注入を最適化した構造とし,最適ライフタイムコ 発した。600 V 系 20 ∼ 150 A の容量で,17 機種の R-IPM 3 と,8 ントロールを適用しソフトリカバリーな構造とした。 機種の Econo IPM を系列としてそろえた。 車載用サージ吸収入力 IC 車載用高機能 MOSFET 八重澤 直樹 富士時報 市村 武 岡本 有人 Vol.75 No.10 p.577-580(2002) 梅本 秀利 富士時報 山田 昭治 鳶坂 浩志 Vol.75 No.10 p.581-584(2002) + −25 kV 以上の高静電破壊耐量(ESD:条件 150 pF-150 Ω)を備 えた 60 V 縦型パワーツェナーダイオードなどによるサージ吸収回 半導体に周辺回路を内蔵したスマートパワーデバイスの系列化とし 路と,NMOS 構成によるバッファ回路,レベルシフト回路,入力 てローサイド高機能 MOSFET F5048 を開発した。この製品はラン 自動車電装システムの小型化・大規模化に対応するため,パワー プルアップ・プルダウン抵抗の 14 チャネル分を統合化し,同一 プやモータなど負荷の通電開始時に大電流を必要とする用途に最適 チップ上に集積させ,SSOP パッケージに収めたサージ吸収入力 なデバイスであり,その特徴は次のとおりである。①過電流検出・ IC を開発した。本製品により,自動車電装用 ECU(Electronic 過熱検出機能内蔵,②高ダイナミッククランプ電圧 80 V,③ス Control Units)において,従来のディスクリート構成に対し大幅 ,④高静電破破壊耐量,⑤表面実装 イッチング時間 60 μs(typ.) なプリント板実装面積の低減と部品点数の低減が可能となる。 パッケージ。 Abstracts (Fuji Electric Journal) Technological Innovation for Super-low-loss U-series IGBT Modules Trends of Power Semiconductor Devices Noriyuki Iwamuro Hisao Shigekane Tadashi Miyasaka Yasukazu Seki Yasukazu Seki Tatsuhiko Fujihira Fuji Electric Journal Vol.75 No.10 p.555-558 (2002) Fuji Electric Journal Vol.75 No.10 p.551-554 (2002) The super-low-loss U-series of 600 V, 1,200 V and 1,700 V IGBT modules has been developed. Newly developed trench-gate and thin wafer technologies have resulted in a large decrease in the loss generated by IGBT chips. Through optimized anode construction and lifetime control, the FWD (free wheeling diode) chip has achieved lower reverse recovery current and lower loss. In regard to fabrication technology, the development of tin solder technology has dramatically increased power cycle endurance. Combining these technologies has enabled the production of modules having a 40% smaller footprint than previous models. The recent trends of power semiconductor devices are discussed based on the conditions described at the International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs (ISPSD) 2002. Technologies being closely watched include IGBT, super junction structure, and SiC technologies. Fuji Electric’s U-series IGBTs and techniques applicable to IGBT development thus far are also described. Additionally, an overview is presented of the NPT-type devices that use FZ wafers and the FS-type devices that have enhanced characteristics. Moreover, Fuji Electric’s devices for industrial, automotive and power supply-use, efforts to increase device intelligence, and technical innovations for individual devices are described. U-series IGBT Modules (1,200 V) T-series and U-series IGBT Modules (600 V) Yuichi Onozawa Shinichi Yoshiwatari Masahito Otsuki Seiji Momota Syuuji Miyashita Hiroki Wakimoto Fuji Electric Journal Vol.75 No.10 p.563-566 (2002) Fuji Electric Journal Vol.75 No.10 p.559-562 (2002) While demands have continued for the higher efficiency, smaller size, lower cost and lower noise of power converters, as typified by general-purpose inverters and uninterruptible power supplies, higher performance and lower cost are also being required of the power conversion elements used in inverter circuits. This paper introduces the 1,200 V U-series IGBT modules, which achieve dramatically less loss than conventional devices due to the adoption of trench-gate and fieldstop structures. The T-series and U-series of IGBT modules have been developed for 600 V applications. The T-series is highly resistant to damage and achieves low switching loss and low cost, enabled by the establishment of process technology for wafers having a thickness of the order of 100 μm and the application of NPT technology to this 600 V product. The U-series IGBT modules achieve the lowest loss in this class due to trench process technology that enables the steady-state loss to be minimized. R-IPM 3 and Econo IPM Series of Intelligent Power Modules U-series IGBT Modules (1,700 V) Manabu Watanabe Yasuyuki Hoshi Yoshiyuki Kusunoki Naotaka Matsuda Yasushi Miyasaka Kentarou Muramatsu Fuji Electric Journal Vol.75 No.10 p.572-576 (2002) Fuji Electric Journal Vol.75 No.10 p.567-571 (2002) The marketplace is demanding lower loss and smaller size of the IPMs that are utilized in inverter and servo power converter units. In response to market needs, Fuji Electric has developed the R-IPM 3 and Econo IPM. The R-IPM 3 inherits the external shape and functions of the R-IPM and achieves low loss, and the Econo IPM achieves a small size and thin profile by combining concepts of the R-IPM and Econo modules. A line-up of 17 models of the R-IPM 3 and 8 models of the Econo IPM having 600 V, 20-150 A capacity has been prepared. 1,700 V U-series IGBTs and FWDs have been developed. The IGBTs have adopted a trench-gate structure on their surface, and a field-stop layer on their backside. As a result, the tradeoff relationship between VCE(sat) and Eoff is improved to 2.5 V-35 mJ at 125℃ and 150 A (current concentration 133 A/cm2). FWDs were designed with DW wafers and have adopted a structure that optimizes carrier injection from the surface. Further-more, soft recovery is realized by a novel lifetime control. Intelligent Power MOSFET for Automobiles Surge Protection IC for the Switch Interface of ECUs Hidetoshi Umemoto Naoki Yaezawa Shoji Yamada Hiroshi Tobisaka Takeshi Ichimura Yujin Okamoto Fuji Electric Journal Vol.75 No.10 p.581-584 (2002) Fuji Electric Journal Vol.75 No.10 p.577-580 (2002) The low-side, intelligent power MOSFET F5048 has been developed to support the smaller sizes and larger scales of electronic systems installed in automobiles. This intelligent power MOSFET was developed as a part of a series of smart power devices in which peripheral circuits is integrated into a power semiconductor. This device is suitable for applications having a load such as lamp or motor that requires a large current at the start of conduction. Features of this device include built-in overcurrent detection and overheat detection functions, high dynamic clamp voltage of 80 V, switching time of 60 µs typ., high electric discharge capability, and a surface mounted package. Fuji Electric has developed a surge protection IC fitted in a SSOP, monolithically integrated with 14 channel input using an NMOS buffer circuit, level-shift circuit, and an input pull-up/pull-down resister for each channel input. This IC also integrates a surge absorption circuit having an ESD capability of more than ±25 kV (under the condition of 150 pF-150 Ω for each channel input), enabled by an integrated vertical power Zener diode rated at 60 V. When used in the switch interface of an ECU (electronic control unit), this surge protection IC makes it possible to decrease the area required for mounting surge protection circuits on printed-circuit boards and also reduces the number of parts to be mounted, compared with conventional construction that uses discrete components. 電源用マルチチップパワーデバイス「M-Power 2 シリーズ」 高耐圧ショットキーバリヤダイオード 太田 裕之 北村 祥司 富士時報 寺沢 徳保 Vol.75 No.10 p.585-588(2002) スイッチング電源は低消費電力,小型化,軽量化などが求められ ている。そのため複合発振型電流共振コンバータを開発し,専用の 富士時報 伊藤 博史 Vol.75 No.10 p.589-592(2002) スイッチング電源の高電圧二次側整流用に最適なダイオードとし て,150 V,250 V 耐圧のショットキーバリヤダイオード(SBD) パワーデバイス「M-Power 2 シリーズ」を製品化した。特徴は次 を開発した。バリヤメタルやエピタキシャル層の最適化により,従 のとおりである。 来用いられてきた pn ダイオードと比較して,低 VF(順方向電圧) (1) 待機時入力電力 0.5 W 以下でエナジー 2001 適合 かつソフトリカバリーを実現し,スイッチング電源の高効率化・小 (2 ) 昇圧チョッパ回路併用でフィンなし 100 W 出力 型化に寄与できると考える。 (3) 30 mm × 10 mm × 3.5 mm の小型サイズ パワー MOSFET「SuperFAP-G シリーズ」とその適用効果 徳西 弘之 富士時報 山田 忠則 井上 正範 Vol.75 No.10 p.593-597(2002) 情報通信機器の低消費電力化に応えるべく低損失・超高速パワー MOSFET「SuperFAP-G シリーズ」を開発した。SuperFAP-G シ リーズは,新開発した平面接合に限りなく近い QPJ 技術により, 性能指数(Ron・Qgd)で従来品比約 2.5 倍の性能向上を実現してい る 。 こ の 技 術 を 用 い て 開 発 し た 100 ∼ 250 V 耐 圧 の 中 耐 圧 SuperFAP-G シリーズについて紹介する。また,SuperFAP-G シ リーズをアプリケーションに適用した効果について,代表例を紹介 する。 High-voltage Schottky Barrier Diodes M-Power 2 Series of Multiple-chip Power Device for Power Supplies Shoji Kitamura Hiroyuki Ota Hiroshi Ito Fuji Electric Journal Vol.75 No.10 p.589-592 (2002) 150 V and 250 V Schottky barrier diodes (SBDs) have been developed as diodes suitable for the rectification circuit on the high-voltage secondary side of switching power supplies. Compared to the pn diodes used in the past, low forward-voltage (VF) and soft reverse reovery have been realized due to optimization of the barrier metal and epitaxial layer. It is believed that these SBDs will contribute to the development of switching power supplies having higher efficiency and smaller size. Noriho Terasawa Fuji Electric Journal Vol.75 No.10 p.585-588 (2002) Switching power supplies are required to have low power dissipation and to be small size and lightweight. For this reason, Fuji Electric has developed a multi-oscillated current resonant converter and put the “M-Power 2 Series” on the market as application specific power device. The outstanding features are as follows. (1) Standby input power is 0.5 W or less, in conformance with Energy 2001 (2 ) 100 W output when used in combination with a PFC (power factor correction) circuit and no heatsink (3)Small dimensions of 30 mm × 10 mm × 3.5 mm SuperFAP-G Series of Power MOSFETs Hiroyuki Tokunishi Tadanori Yamada Masanori Inoue Fuji Electric Journal Vol.75 No.10 p.593-597 (2002) The SuperFAP-G Series of low-loss, ultra high-speed power MOSFETs has been developed in response to the trend toward lower consumption loss of IT equipment. Our SuperFAP-G Series is designed with newly developed QPJ (quasi-plane-junction) technology. Our new QPJ technology has almost reached to the “silicon unipolar limit” which enables to improve the FOM (figure-of-merit=Ron× Qgd) approximataly 2.5 times to that of conventional one. This paper introduces the 100 V-250 V medium-voltage SuperFAP-G Series that was developed using this technology. The results of a typical application of the SuperFAP-G Series are also described. パッケージのスリム化により サーボアンプの薄型, 小型化に貢献。 ■サーボ用600V Econo IPMの特徴 ●600V NPT-IGBT(Tシリーズ)の採用によるスイッチング 「Econo IPMシリーズ」 外形:122(L)×55(W)×17(H)mm 損失の低減 dv / dt の低減 ●MPSダイオードの採用によるFWDリカバリー ●小型スリムパッケージの採用 インバータ部 素子数 型 式 V CES IC (V) (A) ・IPMパッケージスリム化(55mm幅←従来88mm幅) ・プリント板高さ低減(17mm←従来22mm) ・コンバータモジュールとの共通実装 (Econo Diode Moduleをあわせてラインアップ) ●確実な保護動作 ・上アームアラーム出力ピン追加 ・電流センス方式による過電流保護(R-IPMと同様) ・オンチップ温度センサによる過熱保護(R-IPMと同様) ●高信頼性 ・パワーサイクル性能の向上 内蔵する保護機能 ・過電流保護 ・短絡保護 ・IGBTチップ過熱保護 ・制御電源電圧低下保護 ・上下アームアラーム出力 富士インテリジェントパワーモジュール 「Econo IPMシリーズ」 お問合せ先:電子カンパニー パワー半導体事業部 電話(03)5435-7160 V CE(sat) typ.(V) VF typ.(V) 本 社 務 所 北 東 北 中 関 中 四 九 海 道 支 北 支 陸 支 部 支 西 支 国 支 国 支 州 支 事 社 社 社 社 社 社 社 社 北 関 東 支 首 都 圏 北 部 支 首 都 圏 東 部 支 神 奈 川 支 新 潟 支 長 野 支 東 愛 知 支 兵 庫 支 岡 山 支 山 口 支 松 山 支 沖 縄 支 店 店 店 店 店 店 店 店 店 店 店 店 道 北 釧 道 道 青 盛 秋 山 新 福 い 水 茨 栃 金 福 山 長 松 甲 岐 静 京 和 鳥 倉 山 徳 高 小 長 熊 大 宮 南 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 北 営 見 営 路 営 東 営 南 営 森 営 岡 営 田 営 形 営 庄 営 島 営 わ き 営 戸 営 城 営 木 営 沢 営 井 営 梨 営 野 営 本 営 信 営 阜 営 岡 営 滋 営 歌 山 営 取 営 吉 営 陰 営 島 営 知 営 倉 営 崎 営 本 営 分 営 崎 営 九 州 営 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 エ ネ ル ギ ー 製 作 所 変電システム製作所 千 葉 製 作 所 東京システム製作所 神 戸 工 場 鈴 鹿 工 場 松 本 工 場 山 梨 工 場 吹 上 工 場 大 田 原 工 場 三 重 工 場 (株) 富士電機総合研究所 (株) FFC 1(03)5435-7111 1(011)261-7231 1(022)225-5351 1(076)441-1231 1(052)204-0290 1(06)6455-3800 1(082)247-4231 1(087)851-9101 1(092)731-7111 1(048)526-2200 1(048)657-1231 1(043)223-0702 1(045)325-5611 1(025)284-5314 1(026)228-6731 1(0566)24-4031 1(078)325-8185 1(086)227-7500 1(0836)21-3177 1(089)933-9100 1(098)862-8625 1(0166)68-2166 1(0157)22-5225 1(0154)22-4295 1(0155)24-2416 1(0138)26-2366 1(017)777-7802 1(019)654-1741 1(018)824-3401 1(023)641-2371 1(0233)23-1710 1(024)932-0879 1(0246)27-9595 1(029)231-3571 1(029)266-2945 1(028)639-1151 1(076)221-9228 1(0776)21-0605 1(055)222-4421 1(026)228-0475 1(0263)40-3001 1(026)336-6740 1(058)251-7110 1(054)251-9532 1(075)253-6081 1(073)432-5433 1(0857)23-4219 1(0858)23-5300 1(0852)21-9666 1(088)655-3533 1(088)824-8122 1(093)521-8084 1(095)827-4657 1(096)387-7351 1(097)537-3434 1(0985)20-8178 1(099)812-6522 1(044)333-7111 1(0436)42-8111 1(0436)42-8111 1(042)583-6111 1(078)991-2111 1(0593)83-8100 1(0263)25-7111 1(055)285-6111 1(048)548-1111 1(0287)22-7111 1(0593)30-1511 1(0468)56-1191 1(03)5351-0200 〒141-0032 〒060-0042 〒980-0811 〒930-0004 〒460-0003 〒553-0002 〒730-0022 〒760-0017 〒810-0001 〒360-0037 〒330-0802 〒260-0015 〒220-0004 〒950-0965 〒380-0836 〒448-0857 〒650-0033 〒700-0024 〒755-8577 〒790-0878 〒900-0004 〒078-8801 〒090-0831 〒085-0032 〒080-0803 〒040-0061 〒030-0861 〒020-0021 〒010-0962 〒990-0057 〒996-0001 〒963-8033 〒973-8402 〒310-0805 〒311-1307 〒321-0953 〒920-0031 〒910-0005 〒400-0858 〒380-0836 〒390-0852 〒390-0811 〒500-8868 〒420-0053 〒604-8162 〒640-8052 〒680-0862 〒682-0802 〒690-0007 〒770-0832 〒780-0870 〒802-0014 〒850-0037 〒862-0950 〒870-0036 〒880-0805 〒890-0046 〒210-9530 〒290-8511 〒290-8511 〒191-8502 〒651-2271 〒513-8633 〒390-0821 〒400-0222 〒369-0192 〒324-8510 〒510-8631 〒240-0194 〒151-0053 東京都品川区大崎一丁目11番2号(ゲートシティ大崎イーストタワー) 札幌市中央区大通西四丁目1番地(道銀ビル) 仙台市青葉区一番町一丁目2番25号(仙台NSビル) 富山市桜橋通り3番1号(富山電気ビル) 名古屋市中区錦一丁目19番24号(名古屋第一ビル) 大阪市福島区鷺洲一丁目11番19号(富士電機大阪ビル) 広島市中区銀山町14番18号 高松市番町一丁目6番8号(高松興銀ビル) 福岡市中央区天神二丁目12番1号(天神ビル) 熊谷市筑波一丁目195番地(能見ビル) さいたま市宮町一丁目38番1号(野村不動産大宮共同ビル) 千葉市中央区富士見二丁目15番11号(日本生命千葉富士見ビル) 横浜市西区北幸二丁目8番4号(横浜西口KNビル) 新潟市新光町16番地4(荏原新潟ビル) 長野市南県町1002番地(陽光エースビル) 刈谷市大手町二丁目15番地(センターヒルOTE21) 神戸市中央区江戸町95番地(井門神戸ビル) 岡山市駅元町1番6号(岡山フコク生命駅前ビル) 宇部市相生町8番1号(宇部興産ビル) 松山市勝山町一丁目19番地3(青木第一ビル) 那覇市銘苅二丁目4番51号(ジェイ・ツービル) 旭川市緑が丘東一条四丁目1番19号(旭川リサーチパーク内) 北見市西富町163番地30 釧路市新栄町8番13号 帯広市東三条南十丁目15番地 函館市海岸町5番18号 青森市長島二丁目25番3号(ニッセイ青森センタービル) 盛岡市中央通一丁目7番25号(朝日生命盛岡中央通ビル) 秋田市八橋大畑一丁目5番16号 山形市宮町一丁目10番12号 新庄市五日町1324番地の6 郡山市亀田一丁目2番5号 いわき市内郷御厩町二丁目29番地 水戸市中央二丁目8番8号(櫻井第2ビル) 茨城県東茨城郡大洗町桜道304番地(茨交大洗駅前ビル) 宇都宮市東宿郷三丁目1番9号(USK東宿郷ビル) 金沢市広岡一丁目1番18号(伊藤忠金沢ビル) 福井市大手二丁目7番15号(安田生命福井ビル) 甲府市相生一丁目1番21号(清田ビル) 長野市南県町1002番地(陽光エースビル) 松本市島立943番地(ハーモネートビル) 松本市中央四丁目5番35号(長野県鋳物会館) 岐阜市光明町三丁目1番地(太陽ビル) 静岡市弥勒二丁目5番28号(静岡荏原ビル) 京都市中京区烏丸通蛸薬師上ル七観音町637(朝日生命京都ビル) 和歌山市鷺ノ森堂前丁17番地 鳥取市雲山153番地36〔鳥電商事 (株) 内〕 倉吉市東巌城町181番地(平成ビル) 松江市御手船場町549番地1号(安田火災松江ビル) 徳島市寺島本町東二丁目5番地1(元木ビル) 高知市本町四丁目1番16号(高知電気ビル別館) 北九州市小倉北区砂津二丁目1番40号(富士電機小倉ビル) 長崎市金屋町7番12号 熊本市水前寺六丁目27番20号(神水恵比須ビル) 大分市寿町5番20号 宮崎市橘通東三丁目1番47号(宮崎プレジデントビル) 鹿児島市西田一丁目5番1号(GEエジソンビル鹿児島) 川崎市川崎区田辺新田1番1号 市原市八幡海岸通7番地 市原市八幡海岸通7番地 日野市富士町1番地 神戸市西区高塚台四丁目1番地の1 鈴鹿市南玉垣町5520番地 松本市筑摩四丁目18番1号 山梨県中巨摩郡白根町飯野221番地の1 埼玉県北足立郡吹上町南一丁目5番45号 大田原市中田原1043番地 四日市市富士町1番27号 横須賀市長坂二丁目2番1号 東京都渋谷区代々木四丁目30番3号(新宿コヤマビル) 昭和 40 年 6 月 3 日 第三種郵便物認可 平成 14 年 10 月 10 日発行(毎月 1 回 10 日発行)富士時報 第 75 巻 第 10 号(通巻第 811 号) 昭和 40 年 6 月 3 日 第三種郵便物認可 平成 14 年 10 月 10 日発行(毎月 1 回 10 日発行)富士時報 第 75 巻 第 10 号(通巻第 811 号) パワー半導体特集 本誌は再生紙を使用しています。 定価525円(本体500円) ISSN 0367-3332